JP3571081B2 - フェイスマスクの固定用ストラップ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、病気や事故等により意識を失い呼吸の停止した患者の、肺に強制的に空気または酸素を送り込んで換気をする人工呼吸や、外科手術時の麻酔等に使用するフェイスマスクの固定用具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
人は呼吸が停止しても直ちに死亡するわけではなく、多くの場合、心臓はしばらくの間動き続ける。このような患者に対しては、直ちに人工呼吸を施さなければならない。特別な器具を必要とせずに直ちに行える人工呼吸法としては、呼気吹込みによる人工呼吸(マウスツーマウス/口対口)法や、人の手で行う用手的人工呼吸法があるが、気道が確実に開いていなければ、肺に空気を送り込むことは出来ない。また、救急車等で病院や救命救急センターに搬送する場合でも、長時間、例えば30分以上かかる場合も少なくなく、この間確実に気道(エアウエイ)を確保できる人工呼吸法が必要となる。
【0003】
用具を用いる人工呼吸法としては、患者の顔面に鼻と口を覆うフェイスマスクを被せ、左手で気道確保しながらマスクを保持し、右手でフェイスマスクの頂部に接続したバッグを握りしめて加圧、送気するバッグマスク法がある。また、このような目的に適した機械的な人工呼吸法としては、気管内挿管(経口、または経鼻)、ツーウェイチューブ(食道、気管合体チューブ)ラリンゲアルマスク、食道閉鎖式エアウエイ、食道胃チューブエアウエイ(食道閉鎖式エアウエイの改良型)などにより気道を確保し、これにバッグバルブを接続して空気または酸素を送り込んで換気を行う方法がある。
【0004】
これらの内、食道閉鎖式エアウエイは、図4に示すように、フェイスマスク(30)に接続されたチューブ(31)を患者の食道(40)内に挿入し、フェイスマスク(30)を患者の顔面に密着させて先端部のバルーン(32)を膨張させることによって食道を閉鎖し、ここでフェイスマスク(30)頂部のバッグ接続口(33)にバッグバルブ(34)を接続して空気を送入するものである。フェイスマスク(30)内に入った空気は、患者の鼻腔や口腔を通って気管(41)に入り、肺(43)の換気を行う。このとき、食道(40)はバルーン(32)によって閉鎖されているので、空気が胃(42)に入って胃が膨満することはない。
【0005】
フェイスマスクは、一般に卵形の外形をなし、盛り上った丘背部にはチューブやバッグバルブを接続するための開口部が設けられたプラスチック製のマスク本体と、その裾部周縁に接合され、患者の顔面に密着させる際のクッションとなるドーナツ型形状のバルーンとで構成されている。このような形状のマスクは、酸素吸入や、外科手術時の麻酔の分野でも使用されている。
【0006】
フェイスマスクを患者の顔面に装着する場合、前記のように手で保持したり、紐で患者の頭部に括りつける他、より固定し易くするため、図5に示すようなフェイスマスク固定用のストラップが使用されている。図5(a)に示したストラップは伸縮性のある布製で、その中央部を患者の後頭部に当て、両端部をフェイスマスクの両脇に付設されたストラップ取付具表面のマジックテープ(登録商標)に貼り付けることにより、フェイスマスクを固定する。しかし、このストラップは、患者の頭部の姿勢変化により、例えば、顎を突き出して頭部を後へ倒した場合、ストラップが首側へずれるなど、不安定でずれ易い欠点がある。
【0007】
また、図5(b)に示したストラップはゴム製で、その中央部を患者の後頭部に当て、多数の小孔(50)を設けた両側の4本のベルト(51)を、フェイスマスクに設けた4本の爪にそれぞれ引っ掛けて固定する。これはゴム製で形が定まらないため、患者の後頭部に正しく当てる操作は容易ではなく、また、ベルトを1本づつ引っ張ってフェイスマスクの爪に掛ける手間は繁雑であり、特に緊急時には使いずらい問題がある。また、装着が不安定でややずれ易いと言う問題もある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、人工呼吸用等のフェイスマスクの装着、固定方法のこのような現状に鑑みてなされたもので、その目的とする所は、緊急時においても、迅速、容易で確実に装着できて取扱い易く、且つフェイスマスクの顔面に対する装着、固定が安定で、長時間ずれることのない、フェイスマスク固定用のストラップを提供することにある。
【0009】
患者の顔面を正中位にした状態では比較的安定であるが、顔面を横向きにしたり、首を屈曲位にした状態では、フェイスマスクがずれ易くなる問題がある。特に救急車等による搬送時には、場所が狭く、自動車の走行による振動もあり制約が多いため、フェイスマスクがずれてバッグバルブ等で送入した空気や酸素の漏れが生じ易く、漏れが生じないようにフェイスマスクを長時間確実に保持することは、施術者にとって大変な苦痛となる。本発明は、このような緊急を要する医療現場における諸問題の解決に資するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、湾曲形状の帯状体であって、中心線が半径15〜40cmの円弧状をなし、1個もしくは複数個の開口窓を設けた本体部と、該本体部の両端部から、円弧の接線方向に直線状に延びた2つの耳部とからなり、本体部の中心線と、本体部両端部から、円弧の接線方向に直線状に延びた2つの耳部の軸が100〜170度の角度で交差することを特徴とするフェイスマスクの固定用ストラップである。
【0011】
以下、図面により本発明を詳しく説明する。図1及び図2は本発明の一実施例となるフェイスマスクを示す図で、図3は本発明のフェイスマスクの使用方法を説明するための図である。
【0012】
本発明によるフェイスマスクの固定用ストラップは、全体が湾曲した形状の帯状体であって、その中心線が円弧状をなす本体部(1)と、本体部の両端部から円弧の接線方向に直線状に延びた2つの耳部(2)とからなり、本体部(1)には1個または複数個の開口窓(3)が設けられている。
【0013】
そして、後にさらに詳しく述べるが、少なくとも耳部(2)の内面側は起毛布で調製するが、またはベルベット式ファスナーの係合片が取りつけてあり、図3(b)に示すように、本体部(1)の円弧の外周側を上にして、患者の後頭部を包み込むようにして装着し、図3(a)に示すようにフェイスマスク(30)の両脇に付設されたストラップ固定具(34)に、両側の耳部(2)をそれぞれ係合させて、フェイスマスク(30)を患者の顔面に装着、固定する。
【0014】
本体部(1)の中心線(4)が描く円弧の曲率半径rは、15〜40cmの範囲とするが、一般的には20〜33cm程度とするのが好ましい。また、本体部(1)の両脇部から直線状に延びた2つの耳部(2)の軸が互いに交差する角度Rは、100〜170度の範囲、好ましくは110〜130度とするのがよい。図2から分かるように一般に、曲率半径rが小さくなれば、交差角度Rも小さくなり、逆にrが大きくなればRも大きくなる。また、本体部(1)のサイズ(長さ)が大きくなれば、耳部(2)の軸の交差角度Rは一般的に小さくなる。使用可能な範囲は、曲率半径r、交差角度Rと本体部(1)のサイズの3つの要素によって決まるが、実際的には、サイズの異なる固定用ストラップを製作する場合、本体部(1)のサイズと曲率半径rを変えることで対応し、交差角度Rはあまり大きく変えないのが、使い易く好ましい。
【0015】
患者の頭部の大きさや、後頭部の形状によっても異なるが、本体部(1)のrが15cmより小さくなり、あるいは耳部(2)のRが100度より小さくなると、患者の頭部に装着したとき、耳部(2)が頬、または顎側に来て、フェイスマスクとの位置がずれて装着し難くなり、装着できてもストラップは頭部の上側に寄ってはずれ易くなる。一方、rが40cmより大きく、あるいはRが170度より大きくなると、全体の形が従来のストラップのような直線状に近い形状になり、装着したときストラップは後頭部の下方寄りに位置し、頭部の姿勢の変化により首側にずれ落ち易くなる。
【0016】
ストラップの本体部(1)に設ける開口窓(3)は、患者の頭部に装着したとき、空気の流通をよくしてうっとおしさを防ぐと共に、ストラップがずれ難くする効果を持たせるものである。その形状や個数は、特に限定されるものではないが、図1(b)のように本体部(1)の中央部に開口窓(3)を1個だけ設けたものは、患者の頭部に装着したとき、患者の両耳をストラップで押えつけるようになる。これに対して図1(a)に示すように、本体部(1)の両端部近くまで3個の開口窓を設けたものは、図3(b)のように、装着したとき患者の耳を開口窓(3)から外に出すことにより、耳を押えつけられるうっとおしさをなくすと共に、ストラップをよりずれ難くする効果が得られる。
【0017】
本発明によるフェイスマスク固定用のストラップは、全体がゴムまたはプラスチック製の多孔質体シートの両面に起毛布、織布、不織布、または編布を貼付け、さらにその本体部(1)の両面に軟質プラスチックシートを貼付けて一体化した素材で作られている。織布、不織布、または編布を用いた場合は、両側耳部(3)の内面側に、多数のループを表面に露出させた、マジックテープ(登録商標)等のベルベット式ファスナーの係合片を取りつけるが、起毛布を用いたものは、起毛布自体が布地の表面を毛羽立たせたもので、鉤状やきのこ状の多数の突起部を表面に露出させたベルベット式ファスナーの他方の係合片と係合し易い性質を有しているので、マジックテープ等を取りつける必要がなく好都合である。
【0018】
多孔質体シートの両面に布を貼付けたものは、柔らかくて伸び易く、固定の目的には強度が足りないため、その本体部(1)の両面に軟質プラスチックシートを貼付けて補強をするのであるが、プラスチックのシートは肌に触れたとき冷たい感触を与えるため、ストラップの全体または本体部の、内面側または両面に布を貼付ける。多孔質体シートの両面に織布、不織布、または編布を貼付けたものでも、軟質プラスチックシート上の、少なくとも内面側全体に起毛布を貼付ければ、耳部(2)にマジックテープ等を取りつける必要はない。
【0019】
また、耳部(2)には軟質プラスチックシートが貼付けられていないので、伸び易い性質を残しているが、ストラップ全体として適度の伸縮性を持つ結果になり、患者の頭部に装着したとき適度の弾力性を示し、頭部に過度の圧迫を加えることなく、フェイスマスクをしっかりと装着、固定することが出来る。軟質プラスチックシートの材質としては、塩化ビニル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン等、適度の柔軟性と強度を持ち、熱熔着法などによる加工のし易いものが使用される。
【0020】
【発明の効果】
本発明のフェイスマスク固定用ストラップを使用すれば、緊急時にも人工呼吸用等のフェイスマスクを極めて簡単に、正しく装着することが出来ると共に、過度の圧迫を加えることなくしっかりとフェイスマスクを固定することが出来、長時間使用し、また患者の姿勢が変わってもずれることがなく、フェイスマスクを安定して確実に保持できるだけでなく、患者の装着感にも優れていて、医療用フェイスマスクの固定用具として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例となるフェイスマスクの固定用ストラップの形状を示す図である。
【図2】本発明によるフェイスマスクの固定用ストラップの形状を説明するための図である。
【図3】本発明によるフェイスマスクの固定用ストラップの使用方法を説明するための図である。
【図4】医療用フェイスマスクの用途の一つである、食道閉鎖式エアウエイを説明するための図である。
【図5】従来のフェイスマスク固定用のストラップを示す図である。
【符号の説明】
1 本体部
2 耳部
3 開口窓
30 フェイスマスク
34 ストラップ固定具
r 本体部の曲率半径
R 耳部の軸の交差角度
Claims (6)
- 湾曲形状の帯状体であって、中心線が半径15〜40cmの円弧状をなし、1個もしくは複数個の開口窓を設けた本体部と、該本体部の両端部から、円弧の接線方向に直線状に延びた2つの耳部とからなり、本体部の中心線と、本体部両端部から、円弧の接線方向に直線状に延びた2つの耳部の軸が100〜170度の角度で交差することを特徴とするフェイスマスクの固定用ストラップ。
- 帯状体が、ゴムもしくはプラスチック製多孔質体シートの両面に、起毛布を貼付けて一体化した素材よりなり、さらに、その本体部の両面に軟質プラスチックシートを貼付けたことを特徴とする、請求項(1)記載のフェイスマスクの固定用ストラップ。
- 帯状体の全体、もしくは軟質プラスチックシートを貼付けた本体部の、内面側もしくは両面に起毛布を貼付けたことを特徴とする、請求項(2)記載のフェイスマスクの固定用ストラップ。
- 帯状体が、ゴムもしくはプラスチック製多孔質体シートの両面に、織布、不織布、もしくは編布を貼付けて一体化した素材よりなり、さらに、その本体部の両面に軟質プラスチックシートを貼付けると共に、その両側耳部の内面側に、多数のループを表面に露出させたベルベット式ファスナーの係合片を付設したことを特徴とする、請求項(1)のフェイスマスクの固定用ストラップ。
- 軟質プラスチックシートを貼付けた本体部の、内面側もしくは両面に織布、不織布、もしくは編布を貼付けたことを特徴とする、請求項(4)記載のフェイスマスクの固定用ストラップ。
- 帯状体が、ゴムもしくはプラスチック製多孔質体シートの両面に、織布、不織布、もしくは編布を貼付けて一体化した素材よりなり、その本体部の両面に軟質プラスチックシートを貼付けると共に、さらに、帯状体全体の内面側もしくは両面に起毛布を貼付けたことを特徴とする、請求項(1)記載のフェイスマスクの固定用ストラップ。
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