JP3567837B2 - 絞り圧延機の管端肉厚制御開始時間学習方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、安定した肉厚制御を可能とし、圧延される素管の管端不良を著しく低減することができる、絞り圧延機の管端肉厚制御開始時間学習方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
継目無鋼管の仕上げ圧延として用いられる絞り圧延機(ストレッチレヂューサー)は、2ロールまたは3ロールのハウジングからなるロールスタンドを連続的に20数台程度まで配列し、外径を順次圧延しながら、隣接するロールスタンド間で圧延ロール周速に差を与えることによって、圧延中の管軸方向に引張力を加えて圧延される素管の肉厚を制御している。このため、数種類の素管を準備すれば、種々の寸法の鋼管を仕上げることができることから、継目無鋼管の製造に際して、絞り圧延機が多用されている。
【0003】
この絞り圧延機で素管の管端部を圧延する場合には、中間部の圧延に比べ、管軸方向に加わる引張力が小さいため、圧延ロールの回転速度を一定のままとすると、素管管端部の肉厚が中間部の肉厚より厚くなる。このように肉厚が厚くなった部分は、寸法不良として廃棄され、歩留まり低下の要因となっている。
【0004】
通常、このような管端部の肉厚増加による歩留まり低下を防止するため、素管の管端部を圧延する際に、圧延ロールの回転速度を制御する方法が採用されている。しかし、有効に管端部の肉厚を制御し、歩留まり低下を図るには、管端部の肉厚制御を開始する時間を適切に選択することが重要になる。
【0005】
従来、管端での肉厚制御を開始するタイミングを決定する方法として、種々の方法が開示されているが、管検出器を設け、この検出結果から決定する方法が主力であった(例えば、特開昭56−77010号公報、特開昭61−108414号公報)。しかし、一般に絞り圧延機は多数のロールスタンドで構成されていることから、多数の管検出器を設けなければならず、設備費用が高価になるとともに、故障頻度も高くなることから、安定した制御圧延が望めなかった。
【0006】
そこで、本願出願人は、安定した管端肉厚制御が可能になる絞り圧延機の制御開始タイミングを決定する方法を提案した(特開平3−42108号公報、参照)。具体的には、圧延ロールを駆動するモータの駆動電流および回転速度から圧延トルクを求め、この圧延トルクから素管の噛込みまたは尻抜けのタイミングを検出し、検出された噛込みまたは尻抜けのタイミングを用いて、予め定めた管端肉厚制御の開始時間を修正し、この修正結果を学習して次に圧延する素管の肉厚制御に用いるようにしている。
【0007】
提案した方法を採用すれば、管端の肉厚制御を開始すべき時間と噛込みまたは尻抜けのタイミングとの差を少なくすることができ、安定した管端の肉厚制御が可能になる。ここで、上述の管端肉厚制御の開始タイミング学習方法を実際に適用することができる、絞り圧延機の構成を簡単に説明する。
【0008】
図1は、管端肉厚制御の開始タイミング学習方法を適用する場合の絞り圧延機の構成を説明する図である。同図に示すように、絞り圧延機は複数のロールスタンド2を連続して配列し、素管1は白抜矢印で示される圧延軸方向に搬送されて、圧延ロール21で圧延加工される。絞り圧延機の入側には、HMD等の管端検出器8が配設され、素管1の管端検出結果は圧延制御器7およびタイミング演算器6に入力される。
【0009】
各ロールスタンド2に設けられた圧延ロールは21は、ロール駆動モータ3によって減速機31を介して駆動される。このときのロール駆動モータ3の駆動電流を検出するための電流検出器32と、モータの回転速度を検出する回転速度検出器33が設けられ、これらで検出された結果はモータ駆動制御器4に入力され、さらに圧延トルク演算器5まで伝達される。圧延トルク演算器5では圧延トルクを算出して、その算出結果が素管の噛込みまたは尻抜けのタイミングとしてタイミング演算器6に伝達される。
【0010】
タイミング演算器6では、圧延トルクの算出結果、管端検出器8の管端検出信号、および圧延制御器7からの管端制御信号に基づいて、制御開始のタイミングが演算され、この演算結果は修正信号として、圧延制御器7に伝達される。
【0011】
次いで、圧延制御器7では、タイミング演算器6から与えられた修正信号に基づいて、管端制御開始のタイミングが設定され、管端検出器8の管端検出時を始点として計時を開始する。この計時結果が管端制御開始タイミングの設定値に達した時点で、管端制御開始信号が各モータの駆動制御器4に伝えられ、管端肉厚制御が開始される。
【0012】
絞り圧延機に上記の構成を採用して、提案の管端肉厚制御の開始タイミング学習方法を適用すれば、絞り圧延毎に素管の噛込みまたは尻抜けのタイミングを検出し、検出されたタイミングを用いて予め定められた素管の先、後管端制御開始タイミングを修正できる。そして、この修正結果を学習して次材の圧延に用いることができるので、管端肉厚制御の開始時間と実際の素管の噛込みまたは尻抜け時間との時間差を少なくすることが可能になる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
前述の通り、先に提案した絞り圧延機の管端肉厚制御の開始タイミング学習方法によっても、安定した管端肉厚制御が可能であり、所定の効果を達成することができる。しかし、HMD等を用いて管端検出を行う場合や、圧延トルクから素管の噛込みまたは尻抜けのタイミングを検出する場合であっても、過誤検出によってレベルが相違する異常データが発生することがある。また、例えば、素管の搬送速度に誤りがあり、制御開始タイミングが一定の傾きを有してずれる場合もある。
【0014】
このような場合に、単に、異常データか否かの判断を、制御開始タイミングのズレが一定の範囲内か否かで判断しようとすると、異常データが顕在化せず、次材の管端制御開始のタイミング設定に大きな誤差が発生したり、学習制御が正常に動作しない事態が発生することがある。このような事態になると、予想もしていない肉厚変動が生じて、寸法不良が多量に発生するという問題も生ずる。
【0015】
本発明は、従来の絞り圧延の管端肉厚制御の問題点に鑑みてなされたものであり、管端肉厚制御の開始タイミングの修正、および次材の圧延への適用に際し、発生要因に応じて異常データを適切に取り除き、最適な制御開始時間を学習して、安定した管端制御を行うことができる絞り圧延機の管端肉厚制御開始時間学習方法を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の課題を解決するために、異常データの発生メカニズムについて検討した結果、それぞれの発生要因に応じた2以上の判断基準に基づいて判断することによって、有効に異常データを摘出することができ、次材の圧延に適用する学習データから排除できることを知見した。
【0017】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、下記の絞り圧延機の管端肉厚制御開始時間学習方法を要旨とするものである。
【0018】
すなわち、「複数のロールスタンドで圧延される素管の先端および後端の管端部が通過する際に圧延ロールの回転速度を制御する開始時間を圧延状況から学習する絞り圧延機の管端肉厚制御方法であって、前記の各スタンドにおける予測管端通過時間と、実測された管端通過時間との時間差を算出し、この時間差が異常データか否かを下記(a)および(b)の判断基準に基づいて判断し、異常データと判断された前記時間差のデータを除去し、異常データを除去した残りの時間差のデータから平均値を算出し、該平均値を制御開始時間が一様にずれる要因による時間差と判断し、各ロールスタンドにおける前記時間差と前記平均値との差を換算値として算出し、この換算値から最小二乗法を用いて各ロールスタンド番号と換算値との関係を一次関係式により求め、該一次関係式により計算される各ロールスタンドの時間差を制御開始時間がロールスタンド番号に対して一定の傾きを有してずれる要因による時間差と判断して、前記制御開始時間が一様にずれる要因による時間差と、制御開始時間がロールスタンド番号に対して一定の傾きを有してずれる要因による時間差とを学習することを特徴とする絞り圧延機の管端肉厚制御開始時間学習方法。
(a)上記時間差が予め定められた基準範囲を外れる場合には、当該基準範囲を外れるデータを異常データとする。
(b)上記時間差と、他ロールスタンドにおける時間差の平均値との差が、予め上記(a)の基準範囲より狭く定められた基準範囲を外れる場合には、当該基準範囲を外れるデータを異常データとする。ただし、他ロールスタンドにおける時間差には、上記(a)において、異常データとされた他ロールスタンドでの時間差は含まない。」である。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の管端肉厚制御開始時間学習方法では、各スタンドにおける予め定められた予測管端通過時間と、実測された管端通過時間との時間差を、判断レベルの全く相違する2以上の判断基準に基づいて予め定められた範囲内か否かを判断し、これから外れると、異常データとして取り扱い、次材の予測管端通過時間の学習データには用いないことを特徴としている。さらに、具体的な異常データの判断に際しては、発生メカニズムを考慮して、制御開始タイミングが一様にずれる場合と、制御開始タイミングが一定の傾きを有してずれる場合とに区分することができる。
【0020】
図2、図3は後述する実施例で示す、各ロールスタンドにおける予測管端通過時間と実測された管端通過時間との時間差(制御開始タイミングのズレ)の分布状況を示す図である。これらはいずれも、制御開始タイミングが一様にずれている場合を示しており、図2はズレが小さい場合を、図3はズレが大きい場合を示している。このような制御開始タイミングのズレが生じるのは、管端検出器の検出遅れ等の機械的な誤差の他に、圧延トルクから素管の噛込みまたは尻抜けのタイミングを検出する場合での演算リレーの作動遅れによる場合がある。
【0021】
従来の判断基準によれば、図2、図3に示す時間差の分布状況であれば、いずれも第4スタンドに現れる時間差データA4、B4は異常データとして取り扱い、次材の予測管端通過時間の学習データとしては用いないものである。しかし、第3スタンドに現れる時間差データA3、B3も、操業中に何らかの要因によって発生する異質なデータと認識することができ、これらも異常データとして取り扱わなければ、精度の良い管端肉厚制御を実行することができない。
【0022】
そこで、本発明方法では、(a)時間差が、例えば±1000msecの範囲を外れる場合には、また(b)当該ロールスタンドの時間差と、他ロールスタンドにおける時間差の平均値との差が、例えば±100msecの範囲を外れる場合にも、当該データを異常データとして取り扱うこととしている。すなわち、2つのレベルの異なる判断基準に基づいて、異常データに該当するか否かを判断している。
【0023】
まず、(a)の判断基準で、時間差が、例えば±1000msecの範囲を外れる場合を異常データとしているのは、各ロールスタンド間の素管の通過時間を基準にして定めるものであり、ロールスタンド間の通過時間を超えるようなズレが時間差データにある場合には、異常データとして取り扱うこととした。
【0024】
次に、(b)の判断基準で、他ロールスタンドにおける時間差の平均値との差によって判断しようとしているのは、(a)の判断基準によるズレの絶対値から判断するだけでなく、他のデータとの関係で相対的に判断する必要があるからである。ここで、差が、例えば±100msecの範囲を外れる場合に異常データとしているのは、対象とする絞り圧延機の特性から、経験的にばらつきとして把握できる範囲を基準として定めたことによる。また、(b)の判断基準では、(a)の判断基準において、既に異常データとされた他ロールスタンドにおける時間差データは、他ロールスタンドにおける時間差の平均値には含めないこととしている。
【0025】
図4は後述する他の実施例で示す、各ロールスタンドにおける予測管端通過時間と実測された管端通過時間との時間差(制御開始タイミングのズレ)の分布状況を示す図であり、制御開始タイミングがロールスタンド番号に対して一定の傾きを有してずれている場合を示している。このような制御開始タイミングのズレが生じるのは、素管の搬送速度の設定、またはその認識に誤りがあり、各ロールスタンドの制御開始タイミングおよびロールスタンド間の通過時間の設定に誤差があることに起因している。
【0026】
図4に示す時間差の分布状況であれば、第4スタンドに現れる時間差データC4は異常データとして取り扱うとともに、傾きを有するズレを一律に修正する必要がある。このためには、上記(a)および(b)の判断基準に基づいて異常データか否かを判断したのち、対象となる時間差データが有するロールスタンド番号に対する傾きを算出して、算出結果に基づいてズレを一律に修正することになる。
【0027】
まず、絶対的、または相対的な誤差を取り除くため、上記(a)および(b)の判断基準に基づいて、これらの基準に該当する時間差データは、異常データとして取り除く。そののち、該当ロールスタンドの時間差と他ロールスタンドにおける時間差の平均値との差を換算値として、この換算値から最小二乗法によって修正すべき傾きを算出する。
【0028】
具体的には、後述する実施例3で説明するように、図4に示す時間差の分布状況では、データC4は上記(a)の判断基準によって異常データとして取り除かれ、さらに、データC1およびC6も上記(b)の判断基準によって異常データとして取り除かれる。他のデータC2、C3およびC5の換算値は次のように求められる。
【0029】
データC2の換算値: C2−{(C2+C3+C5)/3}
データC3の換算値: C3−{(C2+C3+C5)/3}
データC5の換算値: C5−{(C2+C3+C5)/3}
次に、独立変数xとして第2、第3、第5スタンドを変化させたときの特性値yとして、算出されたC2、C3、C5の換算値を用い、最小二乗法の統計的処理によって、修正すべき傾きを算出する。
【0030】
すなわち、独立変数xと特性値yとの関係は、下記(a)式で表される。
【0031】
y=α+βx ・・・(a)
さらに、切片αおよび傾き(回帰係数)βは、次の(b)式および(c)式から求めることができる。ただし、下記の(b)式、(c)式において、kは独立変数xの水準数を示している。
【0032】
【数1】
【0033】
上述の通り、制御開始タイミングが一様にずれる場合であっても、制御開始タイミングが一定の傾きを有してずれる場合であっても、最適な制御開始時間を学習することによって、安定した管端制御を実行することができる。以下に、本発明方法の具体的な効果を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【0034】
【実施例】
前記図1に示す構成からなり、20基のロールスタンドを有する絞り圧延機を用いて、対象を炭素鋼とし、圧延前寸法が外径151mm×肉厚4.25mm×長さ28000mmの素管を、圧延後に外径60.3mm×肉厚3.91mm×長さ84000mmに圧延した。このとき、圧延機入側にHMD検出器を設けるとともに、20基のロールスタンドのうち入側から第5、7、9、11、13、15番目の計6基に管端検出装置を設置して、管先端側の管端制御開始タイミングの修正学習を実施した。ロールスタンドに設置される管端検出装置は、前記図1で説明した圧延トルクから検出する方式であっても、HMD等による検出方式であっても良い。なお、2つの基準として、(a)の基準を±1000msecの範囲とし、(b)の基準を±100msecの範囲として、これらの範囲を外れる場合は異常とした。
【0035】
本実施例では、制御開始タイミングが一様にずれる場合と、制御開始タイミングがロールスタンド番号に対して一定の傾きを有してずれる場合とで、実施例1〜3に区分して実施した。
【0036】
(実施例1)ここでは、図2に示すように、時間差の分布状況が比較的小さい場合を対象とした。従来例1では、異常データか否かの判断を前記(a)の判断基準のみ、すなわち、時間差が±1000msecの範囲を外れる場合に該当するか否かで判断している。このときの学習状況を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表中の計測No.は管端検出装置を設置したロールスタンドを示しており、入側から順に1〜6−Std.と表記している。管端通過時間(msec)は圧延機入側のHMDによって検出された素管管端の通過後の経過時間であり、予測管端通過時間と計測された管端通過時間との時間差はB−Aとして表される。この結果から4−Std.の時間差データは異常データとして取り扱われる。
【0039】
表中の学習値(1)は、異常データを除いた、1〜3−Std.および5〜6−Std.の時間差データの平均値(55msec)として算出される。算出された学習値(1)を用いて、次材の管端通過時間を修正する。例えば、次材の1−Std.での予測値Aは(985msec+55msec)として1040msecに修正される。しかし、従来例1では、このような管端通過時間の修正にも拘わらず、次材での管端通過時間の絶対誤差は55.8msecと大きいものであった。
【0040】
(実施例2)対象とした時間差の分布状況は、図3に示すように、比較的大きくずれた場合である。まず、従来例2では、異常データか否かの判断を前記(a)の判断基準のみとし、このときの学習状況を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
各ロールスタンドの時間差データを(a)の判断基準で判断して、4−Std.の時間差データを異常データとして取り扱う。そして、学習値(1)は、異常データを除いた、1〜3−Std.および5〜6−Std.の時間差データの平均値(355msec)として算出される。算出された学習値(1)を用いて、次材の管端通過時間を各ロールスタンドで修正する。しかし、このような修正値の学習にも拘わらず、次材での管端通過時間の絶対誤差は55.8msecとなる。
【0043】
(実施例3)次に、図4に示すように、時間差がロールスタンド番号に対して一定の傾きを有してずれている場合を対象とした。従来例3では、異常データか否かの判断を前記(a)の判断基準のみとし、このときの学習状況を表3に示す。
【0044】
【表3】
【0045】
各ロールスタンドの時間差データを(a)の判断基準で判断して、4−Std.の時間差データを異常データとして取り扱う。そして、学習値(1)は、異常データを除いた、1〜3−Std.および5〜6−Std.の時間差データの平均値(2.8msec)として算出される。算出された学習値(1)を用いて、次材の管端通過時間を各ロールスタンドで修正する。しかし、次材での管端通過時間の絶対誤差は51.7msecとなる。
【0046】
実施例4では、各ロールスタンドの時間差に一定の傾きがある場合に、上記(a)および(b)の判断基準に基づいて異常データを排除した後、時間差と他ロールスタンドにおける時間差との平均値との差を換算値として、この換算値から最小二乗法を用いて傾きを算出して、その算出結果から傾きを一律に修正することにしている。本発明例4における学習状況を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
本発明例4では、(a)および(b)の判断基準によって、1−Std.、4−Std.および6−Std.の時間差データが異常データと判断され、これらを除いた時間差データで学習値(3)が算出される。学習値(3)の基礎となる換算値は、当該ロールスタンドの時間差と異常データを除く時間差の平均値との差として算出される。例えば、2−Std.における換算値は、{2−Std.の時間差データ(55msec)}−{2−Std.、3−Std.および5−Std.の時間差データの平均値(2.33msec)}として算出される。
【0049】
次いで、独立変数xを2−Std.、3−Std.、5−Std.として、そのときの特性値yを算出された換算値を用い、最小二乗法により前記(a)〜(c)式に基づいて、傾きを算出する。この算出された傾きから導き出される当該スタンドの値から、1〜6−Std.の学習値(3)を算出する。算出された学習値(3)を用いて、次材の管端通過時間を修正することによって、次材での管端通過時間の絶対誤差は、9.17msecまで向上させることが可能になる。
【0050】
図5は、絞り圧延機における管端制御タイミングの誤差(予測管端通過時間と計測された管端通過時間との時間差)発生状況を示す図である。同図(a)は従来例1〜3を対象とした状況であり、(b)は本発明例4を対象とした状況を示している。図5から明らかなように、従来例では、管端制御タイミング誤差のバラツキはσ=16.7msecと大きいものであったが、本発明例では、σ=5.7msecと著しく改善されている。この結果、寸法不良率は、従来例では2.75%であったのが、本発明例では0%となっている。
【0051】
【発明の効果】
本発明の絞り圧延機の管端肉厚制御開始時間学習方法によれば、制御開始タイミングが一様にずれる場合であっても、また、一定の傾きを有してずれる場合であっても、次材の圧延への適用に際し、発生要因に応じて異常データを適切に取り除き、最適な制御開始時間を学習して、安定した管端制御を行うことができる。これにより、圧延素管の管端不良を著しく低減して、歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】管端肉厚制御の開始タイミング学習方法を適用する場合の絞り圧延機の構成を説明する図である。
【図2】実施例1に示す、各ロールスタンドにおける予測管端通過時間と実測された管端通過時間との時間差(制御開始タイミングのズレ)の分布状況を示す図である。
【図3】実施例2に示す、各ロールスタンドにおける予測管端通過時間と実測された管端通過時間との時間差(制御開始タイミングのズレ)の分布状況を示す図である。
【図4】実施例3に示す、各ロールスタンドにおける予測管端通過時間と実測された管端通過時間との時間差(制御開始タイミングのズレ)の分布状況を示す図である。
【図5】絞り圧延機における管端制御タイミングの誤差(予測管端通過時間と計測された管端通過時間との時間差)発生状況を示す図である。
【符号の説明】
1:素管、 2:ロールスタンド、 3:ロール駆動モータ、
4:モータ駆動制御器、 5:圧延トルク演算器、 6:タイミング演算器、
7:圧延制御器、 8:管端検出器
Claims (1)
- 複数のロールスタンドで圧延される素管の先端および後端の管端部が通過する際に圧延ロールの回転速度を制御する開始時間を圧延状況から学習する絞り圧延機の管端肉厚制御方法であって、前記の各スタンドにおける予測管端通過時間と、実測された管端通過時間との時間差を算出し、この時間差が異常データか否かを下記(a)および(b)の判断基準に基づいて判断し、異常データと判断された前記時間差のデータを除去し、異常データを除去した残りの時間差のデータから平均値を算出し、該平均値を制御開始時間が一様にずれる要因による時間差と判断し、各ロールスタンドにおける前記時間差と前記平均値との差を換算値として算出し、この換算値から最小二乗法を用いて各ロールスタンド番号と換算値との関係を一次関係式により求め、該一次関係式により計算される各ロールスタンドの時間差を制御開始時間がロールスタンド番号に対して一定の傾きを有してずれる要因による時間差と判断して、前記制御開始時間が一様にずれる要因による時間差と、制御開始時間がロールスタンド番号に対して一定の傾きを有してずれる要因による時間差とを学習することを特徴とする絞り圧延機の管端肉厚制御開始時間学習方法。
(a)上記時間差が予め定められた基準範囲を外れる場合には、当該基準範囲を外れるデータを異常データとする。
(b)上記時間差と、他ロールスタンドにおける時間差の平均値との差が、予め上記(a)の基準範囲より狭く定められた基準範囲を外れる場合には、当該基準範囲を外れるデータを異常データとする。ただし、他ロールスタンドにおける時間差には、上記(a)において、異常データとされた他ロールスタンドでの時間差は含まない。
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