JP3565829B2 - 電極、その製造方法、及び金属蒸気放電ランプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は金属蒸気放電ランプの発光管に好ましく用いることができる電極とその製造方法に関する。また、本発明は金属蒸気放電ランプに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高演色性、省エネルギーを実現するために耐熱性の高いセラミック発光管を採用した金属蒸気放電ランプが開発されており、これに伴って製造プロセスの複雑化が進んでいる。
【0003】
以下に放電ランプに使用される電極の従来の製造方法について説明する。
【0004】
図9は2つの棒状の電極部品を溶接する、従来の電極の製造方法の概略を示す側面断面図である。図9において、3a,3bは溶接される2つの棒状の電極部品であり、20a,20bは抵抗溶接機の一対の電極である。一対の電極20a,20bで電極部品3a,3bをそれぞれ保持し、電極部品3a,3bの各端部を互いに突き合わせる。一対の電極20a,20bを介して電極部品3a,3b間に相互に押し合う方向のアプセット力F0を付与しながら、電極20a,20bを通じて電流を電極部品3a,3b間に流す。両電極部品3a,3bの突き合わせ部分の境界の抵抗発熱で突き合わせ部分が溶融し、接合される。この際、両電極部品3a,3bの突き合わせ部分に高純度アルゴンガスを常時吹きかける。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような抵抗溶接方法は、電極部品3a,3bがともに金属からなる場合は有効であったが、少なくとも一方が金属ではないサーメットである場合、確実な接合ができないという問題があった。サーメットはアルミナと金属との焼結体であるため、セラミックの性質と金属の性質とを併せ持つ。従って、上記の抵抗溶接の瞬間的な加熱だけでは確実に境界面を溶融させて接合させることが困難であった。
【0006】
また、上記のような抵抗溶接法とは別に、電極部品3a,3bの端部同士を突き合わせて保持した状態で、突き合わせ部分にCO2レーザやYAGレーザなどのレーザ光を照射して溶接する方法も提案されている。しかしながら、このようなレーザ光による溶接方法では、レーザビームの断面形状が略円形であるために、レーザ光を突き合わせ部分に照射すると周方向に加熱ムラが生じ、境界面を確実に接合することが困難であった。また、電極部品の長手方向において突き合わせ部分以外の部分まで加熱されてしまうので、電極部品の材料がタングステンを含む場合、タングステンが脆化し、電極としての強度が確保できなかった。
【0007】
本発明は上記従来の問題点を解決するもので、金属とサーメットとを接合する場合のように、融点の異なる2つの電極部品の接合を確実に行うことができる電極の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、このような製造方法により得られた電極を含む放電ランプを提供することを目的とする。更に、本発明は、十分な接続強度を備えた電極とこれを備えた放電ランプを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明の電極の製造方法は、導電性サーメットからなる棒状の第1の電極部品と前記第1の電極部品より融点が高い棒状の第2の電極部品とを、それぞれの端部同士を突き合わせて溶接して電極を製造する方法であって、前記第1の電極部品を上側とし、前記第2の電極部品を下側として、それぞれの長手方向を鉛直方向に一致させて、前記第1の電極部品の端部と前記第2の電極部品の端部とを相互に押圧させながら突き合わせる工程と、次いで、前記両電極部品の突き合わせ部分又はその近傍にレーザ光を照射して前記両電極部品を溶接する工程とを含み、前記レーザ光のビーム形状が、鉛直方向を短軸方向とし、水平方向を長軸方向とする細長形状であることを特徴とする。
本発明の電極の製造方法の他の構成は、棒状の第1の電極部品と前記第1の電極部品より融点が高い棒状の第2の電極部品とを、それぞれの端部同士を突き合わせて溶接して電極を製造する方法であって、前記第1の電極部品の端部と前記第2の電極部品の端部とを相互に押圧させながら突き合わせる工程と、次いで、前記両電極部品の突き合わせ部分又はその近傍にレーザ光を照射して前記両電極部品を溶接する工程とを含み、前記レーザ光の照射位置が、前記両電極部品の突き合わせ面より前記第2の電極部品側であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の電極は、棒状の第1の電極部品と、前記第1の電極部品より小径の棒状の第2の電極部品とを備え、前記第1及び第2の電極部品の端部同士が突き合わされて溶接されて一体化した電極であって、前記第1の電極部品は導電性サーメットからなり、前記第2の電極部品はタングステンからなり、前記第1の電極部品と前記第2の電極部品との溶接部において、前記第1の電極部品の前記導電性サーメットを構成するモリブデンと前記第2の電極部品のタングステンとからなる合金層が前記第2の電極部品の端面の全面に形成されていることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
上述したように、本発明の電極の製造方法では、第1の電極部品を上側とし、これより高融点の第2の電極部品を下側として、それぞれの長手方向を鉛直方向に一致させて、第1の電極部品の端部と第2の電極部品の端部とを相互に押圧させながら突き合わせる。次いで、両電極部品の突き合わせ部分又はその近傍にレーザ光を照射して前記両電極部品を溶接する。
【0011】
レーザ光を照射して加熱することで、電極部品の突き合わせ部分の温度管理が容易になり、従来の抵抗発熱の場合のような瞬間的な加熱とは異なり、予熱、溶接、冷却という温度のプロセスを導入することができる。従って、電極部品の少なくとも一方が、アルミナと金属の焼結体であり、セラミックの性質と金属の性質とを併せ持つサーメットであっても確実に境界面を溶融させて、安定かつ確実な接合ができる。この結果、溶接不良をなくし、安定した高品質、歩留の向上が望める。
【0012】
また、従来の抵抗発熱の場合のような、電極部品を保持するとともに電極部品に電流を流すための部材(図9の電極20a,20b)が存在しない。即ち、電極部品の加熱を非接触で行なうために、従来の抵抗溶接機における溶接用電極(図9の電極20a,20b)の磨耗という問題も発生せず、頻繁なメンテナンスが不要となるので高いメンテナンス性が確保できる。
【0013】
レーザ光のビーム形状は、鉛直方向を短軸方向とし、水平方向を長軸方向とする細長形状である。これにより、レーザ光を、突き合わせ部分又はその近傍に、電極部品の周方向に広く、長手方向に狭い範囲で照射させることができる。従って、周方向の温度ムラを少なくし、突き合わせ部分のみを効率よく加熱することができる。また、レーザ照射ユニットを2台以上使用する場合には、少ない個数のレーザ照射ユニットで突き合わせ部分又はその近傍の全周を照射することができる。
【0014】
更に、第1,第2の電極部品を鉛直方向に突き合わせて、融点の低い第1の電極部品を上側に配するので、溶融した第1の電極部品の材料が下側に移動して第2の電極部品の外周を覆うようにして接合部分が形成される。その結果、周方向において接合強度が均一になり、かつ向上する。
【0015】
上記において、前記第2の電極部品がタングステンからなることが好ましい。また、前記レーザ光の照射位置が、前記両電極部品の突き合わせ面より下側であることが好ましい。
本発明の電極の製造方法の他の構成において、前記第1の電極部品が導電性サーメットからなり、前記第2の電極部品がタングステンからなることが好ましい。また、前記突き合わせる工程において、前記第1の電極部品を上側とし、前記第2の電極部品を下側として、それぞれの長手方向を鉛直方向に一致させて、前記第1の電極部品の端部と前記第2の電極部品の端部とを相互に押圧させることが好ましい。
また、上記いずれかの製造方法において、前記第1の電極部品の断面積が前記第2の電極部品の断面積より大きいことが好ましい。例えば、前記第1の電極部品及び前記第2の電極部品がいずれも円筒形状であり、前記第1の電極部品の直径が前記第2の電極部品の直径より大きいことが好ましい。これにより、溶融した第1の電極部品の材料が第2の電極部品の外周を覆いやすくなり、周方向の接合強度がより一層均一になる。
【0017】
また、照射される前記レーザ光の照射位置が、前記両電極部品の突き合わせ面より0.3〜1.0mm低いことが好ましい。これにより、レーザ光により下側の高融点の第2の電極部品が最初に加熱され、その熱が上側の第1の電極部品に伝達されて、第1の電極部品が溶融を開始する。従って、低融点の第1の電極部品にレーザ光を照射する場合に比べて、高融点の第2の電極部品も高温に加熱されるため、確実な接合面が形成され、接合強度を向上させることができる。
【0018】
また、前記第2の電極部品の、少なくとも前記突き合わせ部分とは反対側の端部にコイルが巻回されていても良い。このとき、前記コイルが前記第2の電極部品の前記突き合わせ部分側の端部又はその近傍にまで巻回されていても良い。
【0019】
また、複数のレーザ光を水平面内において異なる方向から前記突き合わせ部分又はその近傍に同時に照射することが好ましい。これにより、複数のレーザ光が電極部品の突き合わせ部分又はその近傍を異なる角度から同時に照射することで、電極部品を回転などさせることなく、突き合わせ部分を全周にわたって短時間でほぼ均一に加熱することができる。従って、突き合わせ部分の温度管理が容易となり、また、作業効率が向上する。
【0020】
また、複数のレーザ照射ユニットを用い、前記各レーザ照射ユニットから出射された前記複数のレーザ光が他のレーザ照射ユニットのレーザ発光部を相互に照射しないように、前記複数のレーザ照射ユニットを前記突き合わせ部分の回りに配置することが好ましい。各レーザ照射ユニットから出射されたレーザ光が互いに他のレーザ照射ユニットのレーザ発光部を照射しないように配置することで、レーザ照射ユニットの損傷を防止できる。このためには、レーザ照射ユニットの数は偶数ではなく、奇数であることが好ましい。これにより、各レーザ光が他のレーザ照射ユニットのレーザ発光部を照射することなく、複数のレーザ照射ユニットを突き合わせ部分の回りに等角度間隔に配置することができ、周方向に効率よく均一に加熱することができる。
【0021】
また、前記レーザ光を照射する際に、突き合わされた前記両電極部品を回転させても良い。これにより、レーザ照射ユニットの個数を少なくしながら、突き合わせ部分の全周をほぼ同時に加熱することができる。
【0022】
また、前記レーザ光を照射する時、前記突き合わせ部分の周囲を不活性ガス雰囲気に維持することが好ましい。これにより、接合部分の酸化を防止できる。
【0023】
また、不活性ガス雰囲気に維持したチャンバー内に前記第1及び第2の電極部品を配置し、前記チャンバーの外よりレーザ光を照射することが好ましい。チャンバーの外側からレーザ光を導入することにより、レーザ照射ユニットをチャンバー外に配置することができ、チャンバーの容積を小さくすることができる。その結果、不活性ガスの使用量を少なくできるので、低コスト化が可能になる。
【0024】
また、前記第1の電極部品と前記第2の電極部品とを突き合わせたときの両電極部品間の押力が5〜20Nであることが好ましい。押力がこれより小さいと良好な溶接部を形成することが困難となる。また、押力がこれより大きいと溶接部の改善効果が低減するのみならず、電極が挫屈するなどの問題が生じる場合がある。
【0025】
また、前記第1の電極部品と前記第2の電極部品とを突き合わせる際に、前記第2の電極部品に0.7±0.2Nの水平方向の押圧力を付与することにより前記第2の電極部品を水平面内で位置決めすることが好ましい。押圧力がこれより小さいと両電極部品の中心軸が互いにずれた状態で溶接されてしまう場合がある。また、押圧力がこれより大きいと、両電極部品間の上記の突き合わせ押力が低下して、良好な溶接部が得られない場合がある。
【0026】
次に、本発明の金属蒸気放電ランプは、上記本発明の製造方法により得られた電極を具備することを特徴とする。これにより、安定かつ長寿命の放電ランプを提供することができる。
【0027】
次に、本発明の電極は、導電性サーメットからなる第1の電極部品と、これより小径でタングステンからなる第2の電極部品とを、端部同士を突き合わせて溶接一体化されている。そして、第1の電極部品と第2の電極部品との溶接部において、第1の電極部品の導電性サーメットを構成するモリブデンと第2の電極部品のタングステンとからなる合金層が第2の電極部品の端面の全面に形成されている。これにより、溶接部の溶接強度が向上するとともに、そのばらつきが低減する。
【0028】
上記において、前記第1の電極部品の前記導電性サーメットを構成するアルミナが前記溶接部近傍の外周に析出していることが好ましい。これにより、アルミナ層が溶接部の機械的強度を更に向上させる。
【0029】
また、本発明の金属蒸気放電ランプは、放電空間を備える本管と、前記本管の両端に接続された細管と、前記各細管にそれぞれ挿入された給電体とを備える発光管を有する金属蒸気放電ランプであって、前記給電体が上記の本発明の電極であり、前記第2の電極部品を前記本管側にして前記電極が前記細管内に挿入されていることを特徴とする。これにより、安定した品質の金属蒸気放電ランプを提供できる。
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0031】
図7は金属蒸気放電ランプの一例を示した正面図である。図7に示すように、外管55内にアルミナセラミック製の発光管51が、電力供給線53a,53bによって所定の位置に保持されている。外管55内には所定圧の窒素が封入されており、封止部付近に口金56が装着されている。
【0032】
発光管51は、紫外線をカットする効果を有する石英ガラス製スリーブ52内に配置されている。スリーブ52は、発光管51を保温し、十分な蒸気圧を保ちつつ、発光管51の破損時に外管55が割れることを防止する役割も兼ねている。スリーブ52はスリーブ支持板54a,54bを介して電力供給線53aに保持されている。
【0033】
図8は、発光管51の構成を示した断面図である。図8に示すように、放電空間を形成する本管(発光部)57の両端に、細管58a,58bが接続されている。本管57の放電空間内には、水銀と、希ガスと、発光金属とが封入されている。
【0034】
細管58a,58bの各々には、コイル60a,60b、電極ピン59a,59b、及び電極支持体61a,61bからなる給電体65a,65bが挿入されている。
【0035】
電極支持体61a,61bは細管58a,58b内にガラスフリット(シール材)62a,62bによって封着されている。ガラスフリット62a,62bは酸化金属、アルミナ、及びシリカ等からなる。
【0036】
コイル60a,60bはタングステンからなり、電極ピン59a,59bの先端に巻回され、本管57の放電空間内で対向するように配置される。電極ピン59a,59bは、タングステンからなる。電極支持体61a,61bは導電性サーメットからなる。導電性サーメットとは、例えばモリブデンなどの金属粉末とアルミナ粉末とを混合し、焼結させたものであり、その熱膨張係数はアルミナとほぼ等しい。
【0037】
本発明は、以上のような放電ランプにおいて、棒状の電極支持体(第1の電極部品)61a,61bと、これより融点の高い棒状の電極ピン(第2の電極部品)59a,59bとを溶接により接合して給電体(電極)65a,65bを製造する際に好ましく使用することができる電極の製造方法を提供する。また、本発明は、棒状の電極支持体61a,61bと棒状の電極ピン59a,59bとが接続された給電体65a,65bとして使用可能な電極を提供する。
【0038】
(実施の形態1)
図1Aは本発明の実施の形態1に係る電極の製造方法に使用される装置の概略構成を示した上面図、図1Bは図1Aにおける1B−1B線での矢視断面図である。
【0039】
図1A及び図1Bにおいて、1はレーザ照射ユニット、2はレーザ照射ユニット1から照射されたレーザ光、3a,3bは溶接される第1,第2の電極部品、4は第1,第2の電極部品3a,3bの端部同士を芯合わせして突き合わせた状態で、電極部品3a,3bを軸心ずれのないように精度良く保持する保持部、5は第1,第2の電極部品3a,3bの突き合わせ部分がレーザ照射ユニット1からのレーザ光2の高さとほぼ一致するように、第1,第2の電極部品3a,3bを保持する保持部4を上下して位置合わせするための上下機構である。7は第1,第2の電極部品3a,3bの周囲に不活性ガス充満状態の環境を提供するベルジャーであり、6はベルジャー7の外側に設置されたレーザ照射ユニット1からのレーザ光2をベルジャー7の内部に導くためのガラス窓である。8はベルジャー7に取り付けられた不活性ガスの導入口である。9はベルジャー7に取り付けられた不活性ガスの排出口であり、不活性ガスは溶接時に発生した金属蒸気とともに排出口9を介してベルジャー7の外へ排出される。10はレーザ照射ユニット1、保持部4、ベルジャー7が取り付けられたステージである。
【0040】
以上のように構成された装置を用いた本実施の形態1の電極の製造方法について説明する。
【0041】
まず、溶接しようとする第1,第2の電極部品3a,3bを、両者の中心軸を一致させてその各端部を上下方向から突き合わせた状態で保持部4に保持させる。このとき、融点の低い第1の電極部品3a(例えば、電極支持体61a,61b)を上側とし、融点の高い第2の電極部品3b(例えば、電極ピン59a,59b)を下側とする。
【0042】
図2Aに保持部4の概略構成を示す。また、図2Bは図2Aにおける2B−2B線での矢視断面図である。ベース40上に、第1の電極部品3a及び第2の電極部品3bをそれぞれ保持する第1の保持機構41a及び第2の保持機構41bが設けられている。第2の保持機構41bは、図2Bに示すように、V字状の溝を備えるV字ブロック42bと、支点44bの周りに揺動可能に保持された押圧板43bと、押圧板43bの一方の端部に付勢力を付与する圧縮コイルバネ45bとを備える。第2の電極部品3bは、V字ブロック42bのV字溝に当接し、押圧板43bの他方の端部からの押圧力F2により、水平面内(図2Bの紙面と平行な面内)における所定の位置に位置決めされる。第1の保持機構41aも、図2Bに示した第2の保持機構41bと同様に、V字状の溝を備えるV字ブロック42aと、支点44aの周りに揺動可能に保持された押圧板43aと、押圧板43aに付勢力を付与する圧縮コイルバネ45a(図示せず)とを備え、第1の電極部品3aを水平面内における所定の位置に位置決めする。図2Aにおいて、46は雄ねじを備えたボルト、47はベース40上に設けられ、ボルト46と噛み合う雌ねじである。ボルト46の下端に第1の電極部品3aの上端を当接させることにより、第1の電極部品3aを保持部4に対して軸11(ステージ10の開口を通る鉛直方向の中心軸、図1B参照)方向に位置決めする。48は、軸11方向に摺動可能に保持されたスライド部材、49はスライド部材48を図2Aの紙面の上方向に付勢する圧縮コイルバネである。圧縮コイルバネ49の付勢力F’がスライド部材49を介して第2の電極部品3bに作用することにより、第1の電極部品3aと第2の電極部品3bとを、両者間に所定の押力を作用させながら突き合わせることができる。具体的な数値例を示す。図2Aにおいて、押圧板43a、押圧板43bの軸11方向の幅W1,W2はいずれも4mm、第1の電極部品3aの押圧板43aからの突き出し長さL1、第2の電極部品3bの押圧板43bからの突き出し長さL2はいずれも4mmである。また、図2Bにおいて、第2の電極部品3bに対して押圧板43bが付与する押圧力F2は0.7±0.2Nが好ましく、0.7±0.1Nがより好ましい。押圧力F2が0.5Nより小さいと、第2の電極部品3bの水平面内の位置決め精度が低下して、第2の電極部品3bと第1の電極部品3aとを、両者の中心軸を一致させて溶接するのが困難となる。また、押圧力F2が0.9Nを超えると、第1の電極部品3aと第2の電極部品3bとの間に作用する押力が低下して、後述するような良好な溶接部が得られにくくなる。なお、上記の数値例は一例であって、使用する第1,第2の電極部品3a,3bの寸法等により適宜変更してもよいことは言うまでもない。
【0043】
図3Aに端部同士が突き合わされて保持された第1,第2の電極部品3a、3bの側面図を示す。このとき、第1の電極部品3aと第2の電極部品3bとの間には、上記の圧縮コイルバネ49の付勢力F’による相互に押し合う力Fが印加されている。押力Fは5N〜20Nが好ましい。
【0044】
図1A、図1Bに示すように、この保持部4は上下機構5に搭載されている。保持部4を介して電極部品3a,3bを保持固定した上下機構5を、3つのレーザ照射ユニット1とベルジャー7とが搭載されたステージ10の中央の開口に下側から取り付ける。3つのレーザ照射ユニット1は、それぞれから射出されたレーザ光2がステージ10の開口を通る鉛直方向の中心軸11上の共通する一点で交差するように、中心軸11を中心として120度間隔で放射状に配置されている。第1,第2の電極部品3a,3bの中心軸はステージ10の中心軸11と略一致する。第1,第2の電極部品3a,3bの突き合わせ部分の中心軸11方向の位置(高さ)が3つのレーザ照射ユニット1からのレーザ光の交差点とほぼ一致するように、上下機構5を用いて保持部4に保持された電極部品3a,3bを中心軸11方向に位置決めする。上下機構5の昇降機構はどのようなものでも良く、例えば、モータと送りネジによる移動機構を用いることができる。
【0045】
次いで、不活性ガス導入口8よりベルジャー7内に不活性ガス(例えば、Ar)を導入し、ベルジャー7内を不活性ガスで充満させる。このとき、ベルジャー7内の酸素濃度は200ppm以下であることが好ましい。
【0046】
充満後、3つのレーザ照射ユニット1からのレーザ光2をガラス窓6を透過させて電極部品3a,3bの突き合わせ部分又はその近傍に同時に照射する。
【0047】
図3Bにレーザ光が照射されている第1,第2の電極部品3a、3bの側面図を示す。図中、斜線を付した領域15はレーザ光の照射部分を示す。レーザ光の照射領域15は、第1,第2の電極部品3a、3bの突き合わせ面17と一致していても良いが、好ましくは、図示したように突き合わせ面17よりやや下側の部分である。より詳細には、突き合わせ面17とレーザ光の照射領域との間隔Dは0.3〜1.0mmであることが好ましい。
【0048】
レーザ照射ユニット1の出力を調整して、電極部品3a,3bの突き合わせ部分近傍を加熱し、溶融させる。突き合わせ部分の加熱温度は、例えば2600℃±600℃である。
【0049】
レーザ光の照射条件は特に限定されないが、例えば、直径(第1,第2の電極部品3a,3bの直径が異なる場合は太い方の直径)約2mmの電極部品3a,3bを突き合わせ溶接する場合、各レーザ照射ユニット1として波長808nm、出力300Wの半導体レーザ光源を用い、レーザ光照射時間は約10秒である。また、直径(第1,第2の電極部品3a,3bの直径が異なる場合は太い方の直径)約0.5mmの電極部品3a,3bを突き合わせ溶接する場合であれば、各レーザ照射ユニット1として波長808nm、出力100Wの半導体レーザ光源を用い、レーザ光照射時間は約1秒である。このように、電極部品3a,3bの直径に比例してレーザ光源の出力とレーザ光の照射時間とを変更するのが好ましい。
【0050】
また、レーザ光2の進行方向に直交する断面でのレーザビーム形状は、中心軸11方向(鉛直方向)を短軸方向とし、これと直交する方向(水平方向)を長軸方向とする細長形状である。ここで、「細長形状」とは、長方形、楕円形、長円形、及び、長方形の対向する2対の辺のうちの少なくとも一方(即ち、一対の長辺及び/又は一対の短辺)を外側に凸の円弧又はこれに近似した曲線で置き換えたような形状を含む。このとき該細長形状の長軸方向の長さWLが、レーザ光が照射される第2の電極部品3bの直径φよりやや大きく(約2mmほど大きく)設定されていることが好ましい。より好ましくはWL≧1.2φ、特に好ましくは1.2φ≦WL≦2.0φである。また、細長形状の短軸方向の長さWSについては、その上限は上記第2の電極部品3bの直径φ以下であることが好ましく、またその下限は0.05mm以上であることが好ましい。ビーム形状が細長形状を有しているので、突き合わせ部分のみを効率よく加熱させることができる。また、細長形状の長軸が中心軸11方向と直交しているので、レーザ照射ユニット1を放射状に複数個配置して同時に照射することと相まって、電極部品3a,3bの突き合わせ部分のほぼ全周をほぼ均一に加熱することが可能になる。従って、突き合わせ部分の温度制御が容易になり、また、後述する実施の形態2のような回転駆動部が不要になる。このようなレーザビーム形状は例えば、レーザ照射ユニット1のレーザ光射出窓にレンズを付与するなどの周知の方法で実現可能である。
【0051】
レーザ光の照射により、第2の電極部品3bの照射領域15の部分が加熱され、その熱が突き合わせ面17を介して第1の電極部品3aに伝達される。その結果、融点が相対的に低い第1の電極部品3aが溶融し始める。このとき、第1の電極部品3aの材料であるサーメット中のアルミナが外方向に移動しその一部は蒸発し、残部は結晶化する。また、サーメット中のモリブデンと、第2の電極部品3bの材料であるタングステンとが合金を形成する。
【0052】
また、このような溶接の過程において、第1,第2の電極部品3a,3bに印加された押力Fにより、小径の第2の電極部品3bが溶融した大径の第1の電極部品3a内に貫入する。更に、第1の電極部品3aが上側に配置されていることにより、突き合わせ面17近傍の溶融した第1の電極部品3aの材料(特にアルミナ)が下方に変形し移動する。その結果、図3Cに示すように、第1の電極部品3aの下端部が下側に凸のドーム状(半球状)に変形し、その中に第2の電極部品3bが挿入された状態の溶接部18が形成される。溶接部18において、第2の電極部品3bの全周囲を第1の電極部品3aの構成材料がほぼ均一に覆うので、接合強度が周方向において安定し、また向上する。
【0053】
溶接完了後、上下機構5をステージ10から取り外し、溶接され一体化した第1,第2の電極部品3a,3bを保持部4から取り出す。このようにして溶接された電極(給電体)が得られる。
【0054】
[実施例1]
実施の形態1に対応した具体的な実施例を示す。
【0055】
第1の電極部品3aとして、組成がアルミナ50%、モリブデン50%(質量比)の導電性サーメットからなる、直径1.2mm、長さ8.25mmの棒状の部品を用いた。また、第2の電極部品3bとして、タングステンからなる、直径0.71mm、長さ22.3mmの棒状の部品を用いた。
【0056】
レーザ照射ユニット1として、半導体レーザー(波長800nm、出力130W)を用いて、これを、中心軸11を中心として水平面上に120度間隔で放射状に3台配置した。それぞれから長方形状(WL:3mm×WS:0.5mm)の断面形状を有するレーザ光2を、第1の電極部品3aと第2の電極部品3bとの突き合わせ面17から下側に距離D=0.5mm離れた第2の電極部品3b上の位置に照射した。レーザー光の照射時間は1.3秒とした。
【0057】
得られた電極の溶接部18の模式的断面図を図4に示す。図4において、81はMo(モリブデン)層、83はMo(モリブデン)−W(タングステン)合金層、85はアルミナ層である。これらは以下のようにして生成されれたと考えられる。レーザ光の照射により第2の電極部品3bが加熱され、その熱が第1の電極部品3aに伝達された。その結果、第1の電極部品3aが溶融し、サーメットがアルミナとモリブデンとに分解された。アルミナは周辺部に拡散して、溶接部18の外周部で偏析してアルミナ層85を形成した。一方、モリブデンは中央部で偏析してモリブデン層81を形成するとともに、第2の電極部品3bとの接合界面に、第2の電極部品3bのタングステンとMo−W合金層83を、第2の電極部品3bの端面全面に形成した。細長形状のレーザ光2を3方向から突き合わせ部分の近傍の第2の電極部品3bに照射することにより、周方向の加熱ムラが減少するので、中心軸11(図1参照)に対して略対称のMo−W合金層83及びアルミナ層85が形成された。また、短時間で加熱されたので、アルミナ層85の形成を抑えることができた。その結果、溶接部18の外径の増大が抑えられ、電極の寸法精度(本実施例では、外径精度が1.2mm±0.2mm)を実現できた。また、電極ごとの溶接部18の特性のばらつきも少なかった。
【0058】
比較例として、上記の実施例と同一の第1及び第2の電極部品3a,3bを図9に示した従来の抵抗溶接法により溶接した。溶接部18の模式的断面図を図5Aに示す。また、図5Aの部分5Bの拡大図を図5Bに示す。本比較例では、中央に空洞87が形成され、この空洞87を囲むように、モリブデン層81と、第1の電極部品3aから偏析したモリブデンと第2の電極部品3bのタングステンとから形成されたMo−W合金層83とが形成されていた。即ち、Mo−W合金層83は、上記の実施例のように第1の電極部品3aの端面全体に亘るものでなく、第1の電極部品3aと第2の電極部品3bとは、実質的には局所的ないわゆる点接合に近い状態で接続されていることがわかった。また、第1の電極部品3aから偏析したアルミナ層85が、溶接部18の外周を包囲し且つ膨らむように偏析していた。この結果、溶接部18の外径が増大し、仕上り寸法精度(直径1.2±0.2mm)を達成できなかった。また、Mo−W合金層83及びアルミナ層85は中心軸に対して明らかに非対称であった。
【0059】
上記の実施例及び比較例により得た電極の溶接部18の機械的強度を測定した。測定方法は以下の通りである。電極を、第1の電極部品3aの部分で片持ち支持し、第2の電極部品3bの側面に長手方向と直角方向の外力付与した。外力の大きさを徐々に増加させていき、溶接部18が破損したときの外力の大きさを測定することで、溶接部18の機械的強度を評価した。その結果、実施例で得た電極の溶接部18の機械的強度は規格値を満足し、且つサンプル間のばらつきも少なかった。これに対して、比較例で得た電極の溶接部18の機械的強度は各サンプル間で大きく変動し、平均強度で比較すると、比較例は実施例に比べて0.98N以上低かった。実施例では、溶接部18の機械的強度に大きな影響を及ぼすMo−W合金層83が第2の電極部品3bの端面全面に形成されたことにより、溶接部18の溶接強度が向上し、且つ強度が安定化したと考えられる。一方、比較例では、Mo−W合金層83が第2の電極部品3bの端面の一部に、中心軸に対して非対称に形成されたため、強度値及びそのばらつきともに劣っていたと考えられる。
【0060】
以上のように、本実施の形態に示した電極の製造方法を用いることにより、溶接部の機械的強度と仕上り寸法精度とが改善し、且つ特性のばらつきを少なくすることができる。
【0061】
(実施の形態2)
図6Aは本発明の実施の形態2に係る電極の製造方法に使用される装置の概略構成を示した上面図、図6Bは図6Aにおける6B−6B線での矢視断面図である。
【0062】
図6A及び図6Bにおいて、図1A及び図1Bと同一の機能を有する部材には同一の符号を付して、それらの詳細な説明を省略する。
【0063】
本実施の形態2の装置が実施の形態1の装置と異なるのは、レーザ照射ユニット1が1つのみであること、第1,第2の電極部品3a,3bを保持する保持部4を搭載した上下機構5を中心軸11の回りに回転させる駆動部12を備えることである。
【0064】
以上のように構成された装置を用いた本実施の形態2の製造方法について説明する。
【0065】
実施の形態1と同様に、第1,第2の電極部品3a,3bを上下方向から突き合わせた状態で保持部4に保持させる。保持部4を介して第1,第2の電極部品3a,3bを保持固定した上下機構5を、レーザ照射ユニット1とベルジャー7とが搭載されたステージ10の開口に下側から取り付ける。レーザ照射ユニット1は、これから射出されたレーザ光2がステージ10の開口を通る中心軸11と交差するように、中心軸11に向かって配置されている。第1,第2の電極部品3a,3bの各中心軸は中心軸11と略一致する。第1,第2の電極部品3a,3bの突き合わせ部分又はその近傍がレーザ照射ユニット1からのレーザ光で照射されるように、上下機構5を用いて保持部4に保持された第1,第2の電極部品3a,3bを中心軸11方向に位置決めする。
【0066】
次いで、不活性ガス導入口8よりベルジャー7内に不活性ガスを導入し、実施の形態1と同様にベルジャー7内を不活性ガスで充満させる。
【0067】
充満後、駆動部12を駆動して、上下機構5および第1,第2の電極部品3a,3bを保持している保持部4を回転させる。回転速度は50〜60rpm程度である。そして、レーザ照射ユニット1からのレーザ光2をガラス窓6を透過させて第1,第2の電極部品3a,3bの突き合わせ部分又はその近傍に照射する。このとき、実施の形態1と同様に、レーザ光の照射領域は、第1,第2の電極部品3a,3bの突き合わせ面よりやや下側の部分とするのが好ましい。保持部4の回転により第1,第2の電極部品3a,3bが中心軸11を回転中心として回転し、第1,第2の電極部品3a,3bの突き合わせ部分又はその近傍のほぼ全周にレーザ光2を照射させることができる。レーザ照射ユニット1の出力を調整して、実施の形態1と同様にして第1,第2の電極部品3a,3bを接合させる。
【0068】
その後、上下機構5をステージ10から取り外し、溶接され一体化した第1,第2の電極部品3a,3bを保持部4から取り出す。このようにして溶接された電極(給電体)が得られる。
【0069】
[実施例2]
実施の形態2に対応した具体的な実施例を示す。
【0070】
実施の形態1に示した実施例1と同じ導電性サーメットからなる第1の電極部品3aと、タングステンからなる第2の電極部品3bとを用いて、実施の形態2の溶接方法に従って両電極部品を溶接した。
【0071】
得られた電極の溶接部は、実施例1の溶接部18を模式的に示した図4と同様に、Mo−W合金層が第2の電極部品3bの端面全面に形成され、溶接部の外周部にアルミナ層が形成されていた。溶接部の外径は電極の寸法精度(1.2mm±0.2mm)を満足していた。また、溶接部の機械的強度及びそのばらつきは実施例1の電極と同程度であった。
【0072】
上記の実施の形態1,2では、コイル60a,60bは電極ピン(第2の電極部品)59a,59bの一方の端部にのみ設けられ、コイル60a,60bが設けられていない他方の端部で電極支持体(第1の電極部品)61a,61bと接合した。しかしながら、本発明は、コイル60a,60bが電極ピン59a,59bのほぼ全長にわたって設けられている場合にも適用することができる。この場合、電極支持体61a,61bとの接合部分では、電極ピン59a,59bの材料(例えばタングステン)のみならず、コイル60a,60bの材料(例えばタングステン)が電極支持体61a,61bの材料(例えば導電性サーメット)と溶接される。また、この場合、電極ピン59a,59bのほぼ全長にわたって設けられたコイル60a,60bの巻回ピッチは一定でなくても良く、例えば電極支持体61a,61bとの溶接部側でピッチが拡大していても良い。
【0073】
また、上記の実施の形態1,2では、第1,第2の電極部品3a,3bが中実の円柱形状である場合を説明したが、本発明の第1,第2の電極部品は「棒状」である限り上記の例に限定されない。例えば、断面形状は円形である必要はなく、各種多角形や楕円形であってもよい。また、その断面積が長さ方向に一定である必要はない。また、中空であってもよい。
【0074】
また、上記の実施の形態1,2では、第1の電極部品3aが導電性サーメットからなり、第2の電極部品3bがタングステンからなる場合を説明したが、各電極部品3a,3bの材料はこれに限定されない。第2の電極部品の材料の融点が第1の電極部品の材料の融点より高ければ、本発明の製造方法を適用することが可能である。
【0075】
【発明の効果】
以上のように、本発明の電極部品の溶接方法によれば、レーザ光を照射して加熱することで、電極部品の突き合わせ部分の温度管理が容易になり、従来の抵抗発熱の場合のような瞬間的な加熱とは異なり、予熱、溶接、冷却という温度のプロセスを導入することができる。従って、電極部品の少なくとも一方が、アルミナと金属の焼結体であり、セラミックの性質と金属の性質とを併せ持つサーメットであっても確実に境界面を溶融させて、安定かつ確実な接合ができる。この結果、溶接不良をなくし、安定した高品質、歩留の向上が望める。
【0076】
また、従来の抵抗発熱の場合のような、電極部品を保持するとともに電極部品に電流を流すための部材(図9の電極20a,20b)が存在しない。即ち、電極部品の加熱を非接触で行なうために、従来の抵抗溶接機における溶接用電極(図9の電極20a,20b)の磨耗という問題も発生せず、頻繁なメンテナンスが不要となるので高いメンテナンス性が確保できる。
【0077】
また、レーザ光のビーム形状が、鉛直方向を短軸方向とし、水平方向を長軸方向とする細長形状であることにより、レーザ光を、突き合わせ部分又はその近傍に、電極部品の周方向に広く、長手方向に狭い範囲で照射させることができる。従って、周方向の温度ムラを少なくし、突き合わせ部分のみを効率よく加熱することができる。また、レーザ照射ユニットを2台以上使用する場合には、少ない個数のレーザ照射ユニットで突き合わせ部分又はその近傍の全周を照射することができる。
【0078】
更に、第1,第2の電極部品を鉛直方向に突き合わせて、融点の低い第1の電極部品を上側に配するので、溶融した第1の電極部品の材料が下側に移動して第2の電極部品の外周を覆うようにして接合部分が形成される。その結果、周方向において接合強度が均一になり、かつ向上する。
【0079】
また、本発明の電極によれば、第1の電極部品と第2の電極部品との溶接部において、第1の電極部品の導電性サーメットを構成するモリブデンと第2の電極部品のタングステンとからなる合金層が第2の電極部品の端面の全面に形成されているから、溶接部の溶接強度が向上するとともに、そのばらつきを低減することができる。
さらに、本発明の金属蒸気放電ランプによれば、十分な接続強度を有する電極を備えたランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1Aは本発明の実施の形態1に係る電極の製造方法に使用される装置の概略構成を示した上面図、図1Bは図1Aにおける1B−1B線での矢視断面図である。
【図2】図2Aは、図1Aに示した装置の保持部の概略構成を示した一部断面正面図、図2Bは図2Aにおける2B−2B線での矢視断面図である。
【図3】図3A〜図3Cは、本発明の実施の形態1の製造方法を順に示した側面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1の実施例1に従って溶接して得られた電極の溶接部の模式的断面図である。
【図5】図5Aは従来の抵抗溶接法により溶接された電極の溶接部の模式的断面図、図5Bは図5Aの部分5Bの拡大断面図である。
【図6】図6Aは本発明の実施の形態2に係る電極の製造方法に使用される装置の概略構成を示した上面図、図6Bは図6Aにおける6B−6B線での矢視断面図である。
【図7】本発明の金属蒸気放電ランプの一例を示した正面図である。
【図8】図7の金属蒸気放電ランプに装着される発光管の構成を示した断面図である。
【図9】従来の電極の製造方法の概略を示した断面図である。
【符号の説明】
1…レーザ照射ユニット
2…レーザ光
3a…第1の電極部品
3a…第2の電極部品
4…保持部
5…上下機構
6…ガラス窓
7…ベルジャー
8…不活性ガス導入口
9…不活性ガス排出口
10…ステージ
11…中心軸
12…回転駆動部
20a,20b…抵抗溶接機の電極
51…発光管
52…スリーブ
54a,54b…スリーブ支持板
53a,53b…電力供給線
55…外管
56…口金
57…本管
58a,58b…細管
59a,59b…電極ピン
60a,60b…コイル
61a,61b…電極支持体
62a,62b…ガラスフリット
65a,65b…給電体
81…Mo(モリブデン)層
83…Mo(モリブデン)−W(タングステン)合金層
85…アルミナ層
Claims (21)
- 導電性サーメットからなる棒状の第1の電極部品と前記第1の電極部品より融点が高い棒状の第2の電極部品とを、それぞれの端部同士を突き合わせて溶接して電極を製造する方法であって、
前記第1の電極部品を上側とし、前記第2の電極部品を下側として、それぞれの長手方向を鉛直方向に一致させて、前記第1の電極部品の端部と前記第2の電極部品の端部とを相互に押圧させながら突き合わせる工程と、
次いで、前記両電極部品の突き合わせ部分又はその近傍にレーザ光を照射して前記両電極部品を溶接する工程とを含み、
前記レーザ光のビーム形状が、鉛直方向を短軸方向とし、水平方向を長軸方向とする細長形状であることを特徴とする電極の製造方法。 - 前記第2の電極部品がタングステンからなることを特徴とする請求項1に記載の電極の製造方法。
- 前記レーザ光の照射位置が、前記両電極部品の突き合わせ面より下側であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電極の製造方法。
- 棒状の第1の電極部品と前記第1の電極部品より融点が高い棒状の第2の電極部品とを、それぞれの端部同士を突き合わせて溶接して電極を製造する方法であって、
前記第1の電極部品の端部と前記第2の電極部品の端部とを相互に押圧させながら突き合わせる工程と、
次いで、前記両電極部品の突き合わせ部分又はその近傍にレーザ光を照射して前記両電極部品を溶接する工程とを含み、
前記レーザ光の照射位置が、前記両電極部品の突き合わせ面より前記第2の電極部品側であることを特徴とする電極の製造方法。 - 前記第1の電極部品が導電性サーメットからなり、前記第2の電極部品がタングステンからなることを特徴とする請求項4に記載の電極の製造方法。
- 前記突き合わせる工程において、前記第1の電極部品を上側とし、前記第2の電極部品を下側として、それぞれの長手方向を鉛直方向に一致させて、前記第1の電極部品の端部と前記第2の電極部品の端部とを相互に押圧させることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の電極の製造方法。
- 前記第1の電極部品の断面積が前記第2の電極部品の断面積より大きいことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の電極の製造方法。
- 照射される前記レーザ光の照射位置が、前記両電極部品の突き合わせ面より0.3〜1.0mm低いことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の電極の製造方法。
- 前記第2の電極部品の、少なくとも前記突き合わせ部分とは反対側の端部にコイルが巻回されていることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の電極の製造方法。
- 前記コイルが前記第2の電極部品の前記突き合わせ部分側の端部又はその近傍にまで巻回されていることを特徴とする請求項9に記載の電極の製造方法。
- 複数のレーザ光を水平面内において異なる方向から前記突き合わせ部分又はその近傍に同時に照射することを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の電極の製造方法。
- 複数のレーザ照射ユニットを用い、前記各レーザ照射ユニットから出射された前記複数のレーザ光が他のレーザ照射ユニットのレーザ発光部を相互に照射しないように、前記複数のレーザ照射ユニットを前記突き合わせ部分の回りに配置することを特徴とする請求項11に記載の電極の製造方法。
- 前記レーザ光を照射する際に、突き合わされた前記両電極部品を回転させることを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれかに記載の電極の製造方法。
- 前記レーザ光を照射する時、前記突き合わせ部分の周囲を不活性ガス雰囲気に維持することを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれかに記載の電極の製造方法。
- 不活性ガス雰囲気に維持したチャンバー内に前記第1及び第2の電極部品を配置し、前記チャンバーの外よりレーザ光を照射することを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれかに記載の電極の製造方法。
- 前記第1の電極部品と前記第2の電極部品とを突き合わせたときの両電極部品間の押力が5〜20Nであることを特徴とする請求項1〜請求項15のいずれかに記載の電極の製造方法。
- 前記第1の電極部品と前記第2の電極部品とを突き合わせる際に、前記第2の電極部品に0.7±0.2Nの水平方向の押圧力を付与することにより前記第2の電極部品を水平面内で位置決めすることを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれかに記載の電極の製造方法。
- 請求項1〜17のいずれかに記載の製造方法により得られた電極を具備することを特徴とする金属蒸気放電ランプ。
- 棒状の第1の電極部品と、前記第1の電極部品より小径の棒状の第2の電極部品とを備え、前記第1及び第2の電極部品の端部同士が突き合わされて溶接されて一体化した電極であって、
前記第1の電極部品は導電性サーメットからなり、
前記第2の電極部品はタングステンからなり、
前記第1の電極部品と前記第2の電極部品との溶接部において、前記第1の電極部品の前記導電性サーメットを構成するモリブデンと前記第2の電極部品のタングステンとからなる合金層が前記第2の電極部品の端面の全面に形成されていることを特徴とする電極。 - 前記第1の電極部品の前記導電性サーメットを構成するアルミナが前記溶接部近傍の外周に析出していることを特徴とする請求項19に記載の電極。
- 放電空間を備える本管と、前記本管の両端に接続された細管と、前記各細管にそれぞれ挿入された給電体とを備える発光管を有する金属蒸気放電ランプであって、
前記給電体が請求項19又は20に記載の電極であり、前記第2の電極部品を前記本管側にして前記電極が前記細管内に挿入されていることを特徴とする金属蒸気放電ランプ。
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