JP3565628B2 - 照明灯 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス容器内部に発光部を有する照明灯であって、表面において特に優れた油脂分解機能に基づく自己クリーニング性を有する照明灯に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から酸化チタンを中心とする光触媒を利用して大気中の汚染物質を除去分解しようとする試みは種々行なわれている(例えば、特開平6ー385号公報特開平6−49677号公報など)。また、放電灯の外表面に光触媒粉末を塗布して脱臭作用を持たせる試み(特開平1ー169866号公報)や、照明灯の外周に光触媒を焼き付けたガラスフィルターの網をかぶせ照明灯により近い光の強い場所での光触媒作用による脱臭を行わせようとした試み(特開平1ー139139号公報)もなされている。また、スパッタ法により眼鏡レンズの表面に酸化チタン膜をつけて、周囲の悪臭成分を分解させようという試み(特開平2ー223909号公報)等も行なわれている。
【0003】
【発明が解決すべき課題】
前記特開平1−169866号公報に記載された放電灯では、放電容器の外表面に粒径500オングストロームのアナターゼ型酸化チタンの粉末を塗布しただけのもので、光透過率や耐摩耗性が劣っている。仮に、塗布した酸化チタン粉末を焼き付けたとしても高温が必要な上に光透過性に劣るものしか得られないことは明らかである。従って得られる光触媒効果も小さく、表面に粉末が付いた凹凸の激しい状態であるため汚れや埃がつきやすい構造となっていた。
【0004】
また、特開平2ー223909号公報に記載されている空気浄化眼鏡では、イオンプレーティング法などの物理的方法により酸化チタン薄膜をガラスレンズ表面に設けているものの、酸化チタンの同定や薄膜の結晶構造、脱臭効果の判定等について客観的構成やデータの開示が十分になされていない。
【0005】
また、従来は、酸化チタンを薄膜状に形成して実用レベルの光触媒作用を得るには、酸化チタンゾルを基板上に焼結形成するか、酸化チタンの微粉末をバインダーとともに塗布焼成する以外に適当な方法はないと考えられていた。しかし、前者では高い活性を有しある程度光透過性のあるものが得られても実用に耐える膜強度を得るには焼結温度をガラス軟化点以上の温度に設定する必要があり、照明灯への応用は困難だった。また、後者の場合は微粉末化した酸化チタンのため光透過性が低い上に前述したように汚れや埃がつきやすいものであった。
【0006】
さらに、スパッタ法などの物理的成膜方法による薄膜では実用的な光触媒作用を起こさせ得る膜厚を得るには、成膜時間を相当長く取る必要があり生産性や品質の安定性に問題が生じるため、汎用の工業製品の製造プロセスとはなりにくい欠点があった。
【0007】
また、従来の酸化チタンを付けた照明灯は、粉末を使用したものであるため実質的に不透明で光透過性が低く、照明灯内部からの光は大気中の汚染物質が最も付着しやすい酸化チタン層の最外表面へ到達しにくい欠点があった。そのため、利用できる光の量も透明な酸化チタン薄膜が付いている場合と比較すると格段に少なく汚染物質の分解量も少ない上に、表面の凹凸に起因する汚れが付きやすいという欠点があった。
【0008】
なお、前述の特開平1ー169866号公報や特開平2ー223909号公報に記載されている光触媒を利用した放電灯や眼鏡では、いずれも分解対象物として、悪臭成分を主としたものであり、油脂や油分の分解を主たる目的としたものではなかった。
【0009】
本発明は上述の背景のもとでなされたものであり、表面に付着する油脂分などを照明灯自身の光によって効率良く分解できるという自己クリーニング性を有する新規な照明灯を提供することを目的としたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために本発明にかかる照明灯は、
(構成1) ガラス容器内部に、照射目的とする主たる光成分のほかに紫外光成分も含む光を放射する発光部を有する照明灯において、
前記ガラス容器表面に、紫外光吸収による光触媒活性を有すると同時に前記発光部から放射されて前記ガラス容器を通過してきた照射目的とする光成分を通過させる酸化チタン薄膜を形成し、
前記酸化チタン薄膜の膜厚を、通常の生活空間でその表面に付着する油脂成分を分解して除去することができる程度以上の光触媒活性を有するために必要な膜厚以上で、かつ、前記ガラス容器を通過してきた照射目的とする光成分を照射目的を満たす程度以上に通過させる膜厚以下に設定したことを特徴とする構成、
又は、
(構成2) ガラス容器内部に、可視光を主たる成分とするが紫外光成分も含む光を放射する発光部を有する照明灯において、
前記ガラス容器表面に、紫外光吸収による光触媒活性を有すると同時に前記発光部から放射されて前記ガラス容器を通過してきた波長550nmを中心とする可視光を50%以上通過させる酸化チタン薄膜を形成してなることを特徴とする構成とし、
この構成2の態様として、
(構成3) 前記発光部が、可視光のほかに少なくとも波長365nmを中心とする紫外光をも含む光を発光する螢光体を有するものであり、
前記酸化チタン薄膜は、該酸化チタン薄膜を通過する波長365nmを中心とする紫外光を80%以上減少させるとともに、前記発光部が発光している状態で該酸化チタン薄膜表面に付着するリノール酸を1cm2 あたり1日に0.5μg以上分解するものであることを特徴とする構成、
及び、
(構成4) 前記発光部が、可視光のほかに少なくとも波長365nmを中心とする紫外光をも含む光を発光するハロゲン元素を含むものであり、
前記酸化チタン薄膜は、該酸化チタン薄膜を通過する波長365nmを中心とする紫外光を80%以上減少させるとともに、前記発光部が発光している状態で該酸化チタン薄膜表面に付着するリノール酸を1cm2 あたり1日に0.5μg以上分解するものであることを特徴とする構成とし、
さらに、本発明にかかる照明灯は、
(構成5) ガラス容器内部に、主として波長365nmを中心とする紫外光を発光する発光部を有する照明灯において、
前記ガラス容器表面に、紫外光吸収による光触媒活性を有し、かつ、前記発光部から放射されて前記ガラス容器を通過してきた波長365nmを中心とする紫外光を50〜80%減少させて通過させ、かつ、前記発光部が発光している状態で該酸化チタン薄膜表面に付着するリノール酸を1cm2 あたり1時間に1μg以上分解するものであることを特徴とする構成とし、
これら構成1ないし5のいずれかの態様として、
(構成6) 前記酸化チタン薄膜の膜厚は0.1〜5μmであることを特徴とする構成とし、
構成1ないし6のいずれかの態様として、
(構成7) 前記酸化チタン薄膜は少なくともアナターゼ結晶を含むものであることを特徴とする構成とし、
構成1ないし7のいずれかの態様として、
(構成8) 前記照明灯のガラス容器と酸化チタン薄膜との間にプレコート薄膜を設けたことを特徴とする構成とし、
この構成8の態様として、
(構成9) 前記プレコート薄膜の膜厚が0. 02〜1μmであることを特徴とす留構成とし、
構成8または9の態様として、
(構成10) 前記プレコート薄膜がSiO2 を主成分とする材料からなることを特徴とする構成とし、
構成8ないし10のいずれかの態様として、
(構成11)前記プレコート薄膜が複数の層からなり、その少なくとも一層には酸化インジウムおよび/または酸化錫を主成分とする材料からなる薄膜が含まれることを特徴とす構成としたものである。
【0011】
【作用】
上述の構成2によれば、ガラス容器内部に、ガラス容器表面に、紫外光吸収による光触媒活性を有すると同時に前記発光部から放射されて前記ガラス容器を通過してきた照射目的とする光成分を通過させる酸化チタン薄膜を形成し、この酸化チタン薄膜の膜厚を、通常の生活空間でその表面に付着する油脂成分を分解して除去することができる程度以上の光触媒活性を有するために必要な膜厚以上で、かつ、前記ガラス容器を通過してきた照射目的とする光成分を照射目的を満たす程度以上に通過させる膜厚以下に設定したことにより、照明機能を確保した上で自己クリーニング機能を有する照明灯を得ることができる。
【0012】
また、上述の構成2によれば、ガラス容器表面に、紫外光吸収による光触媒活性を有すると同時に発光部から放射されてガラス容器を通過してきた波長550nmを中心とする可視光を50%以上通過させる酸化チタン薄膜を形成したことによって、表面に付着する油汚れやタバコヤニ等に代表される油脂分をも照明灯自身の光によって効率良く分解できるという極めて優れた自己クリーニング性を有する照明灯を得ている。この光触媒作用に優れた本発明にかかる酸化チタン薄膜では、油脂分解機能だけではなく、抗菌、脱臭機能も合わせ持つものとなっている。したがって、例えば、室内蛍光灯などに付着する油煙、タバコのヤニなどが蛍光灯などの照明灯自身の光によって比較的容易に分解されるため、結果としてゴミや埃の付着しにくい防汚機能に優れたものとなることは容易に推察される。また、室内空間に微量含まれる悪臭成分や居住空間に浮遊する雑菌なども本発明にかかる照明灯のガラス管表面に付着すれば容易に分解または死滅するという長所も兼ね備えているため、構成1の照明灯は特に病院、医院、診療所、老人ホーム、長期療養施設、ホテル、オフィス、食品工場など清潔にしておく必要のありかつ多数の人が集まる場所、電車やバスなどの輸送機器の車内やトンネル、道路での照明用など幅広い用途に使用できる。
【0013】
また、構成3〜4によれば、実用上において極めて有用な自己クリーニング機能を有する螢光灯、ハロゲンランプを得ることができる。ここで、ガラス容器表面に酸化チタン薄膜を設けた点は、これによってガラス容器表面の比較的強い光を利用して十分な光触媒作用を得ることを可能にすると同時に、この酸化チタン薄膜によってガラス容器表面で有害な紫外線をほぼ吸収してカットして外部に放出することを防止するという利点をも備えているものである。また、蛍光灯の場合には、従来ガラス容器内に塗布する蛍光体に紫外線吸収剤を添加するのが通例であったが、こうした措置を不要にすることが可能となる。この場合は、蛍光灯容器の外表面に設けられた酸化チタン薄膜に到達する波長400nm以下の紫外光は一層増加するため、より一層高い油脂分解機能を発揮することになる。
【0014】
またハロゲンランプの場合においても油脂分解活性が極めて高いので厨房の近傍など、通常のハロゲンランプの使用環境以外の場所でも特に汚れの付きやすい環境での使用にも適している。
【0015】
なお、油脂分の日常空間における発生量としては、例えば、電気化学および工業物理化学vol63 No.1 p11(1995)に記載されているように、一般家庭の厨房のレンジ上部の換気扇付近という極めて大量の油脂の付着が予想される場所でも0.1mg/日・cm2 (約4μg/Hr・cm2 )であり、一般家庭の居間でのたばこのヤニやタールの汚染量は1μg/日・cm2 以下であると報告されていることから、通常の居住空間を考えた場合は0.5μg/日・cm2 という値は付着する油脂分の想定量として妥当な値であると言える。また、室内空間に微量含まれる悪臭成分、室内の空間に浮遊する雑菌なども本発明にかかる自己クリーニング性の照明灯のガラス容器表面に付着すれば容易に分解し死滅するという長所も兼ね備えている。
【0016】
また、構成5によれば、ガラス容器表面に形成された酸化チタン薄膜は、該酸化チタン薄膜を通過する波長365nmを中心とする紫外光を50〜80%減少させるとともに、前記発光部が発光している状態で該酸化チタン薄膜表面に付着するリノール酸を1cm2 あたり1時間に1μg以上分解するものであるようにしたことにより、表面に付着した油脂等を強力に分解すると同時に、殺菌等を行うに必要な紫外線を外部に放出させることができる。この場合、油脂分解活性が極めて高いので厨房近傍で使用しても汚染されにくいものとすることが可能で、通常の紫外線ランプ使用環境の中でも特に食品工場、外食産業、仕出し料理店、社員食堂などの食品を取り扱う厨房での付着油脂による汚れ防止に好適なものである。
【0017】
構成6によれば、酸化チタン薄膜の膜厚を0.1〜5μmにすることによって十分な光触媒活性を有し、同時に波長550nmを中心とする可視光を50%以上透過するものを確実に得ることができる。膜厚を0.1μm未満にすると十分な光触媒活性が得られなくなる場合があり、また、膜厚を5μmを超えたものとすると、波長550nmを中心とする可視光を50%以上透過するものにできなくなる場合が生ずるとともに酸化チタン薄膜の強度や耐摩耗性が劣るため好ましくない。
【0018】
構成7によれば、酸化チタン薄膜をアナターゼ結晶が含まれるものとすることにより、より触媒活性の高いものとすることができる。
【0019】
構成8によれば、照明灯のガラス容器と酸化チタン薄膜との間にプレコート薄膜を設けることにより、ガラス容器の成分の一部が酸化チタン薄膜に拡散浸透することにより酸化チタン薄膜の光触媒作用が低下する等の弊害を防止することができ、また、これによりガラス容器の材質の選択の幅を拡大することが可能となり、安価なソーダライムガラス等の使用が可能となった。さらには、ガラス容器に直接酸化チタン薄膜を形成する場合には、ガラス容器の物質が酸化チタン薄膜に浸透してもそれが電荷分離作用を行う酸化チタンには至らない程度に酸化チタンの膜厚を厚くする必要があったが、その必要がなくなったことで、ガラス容器の材質如何にかかわらず酸化チタン薄膜の膜厚を著しく薄くしても十分な光触媒作用を得ることが可能となった。
【0020】
プレコート薄膜の膜厚は、構成9のように0.02〜1μmであれば、プレコト薄膜として採用可能な物質一般を考慮した場合でも、十分な光透過性を確保した上で照明灯のガラス容器からの阻害物質の浸透を防止する効果を得ることができる。逆に、0.02μm未満では十分な浸透阻止効果が得られず、1.0μmを超えた膜を形成しても浸透阻止効果にはそれ以上有利な点は生じないばかりでなく、成膜操作が煩雑になると共に、材料によっては光透過性を確保できなくなる場合があるからである。
【0021】
ガラス容器には通常は、構成10のようにSiO2 を主成分とする材料でプレコート薄膜を構成すれば、最良の光透過性と物質浸透阻止効果を確保できる。
【0022】
構成11によれば、前記プレコート薄膜の少なくとも一層には酸化インジウムおよび/または酸化錫を主成分とする材料からなる薄膜が含まれているため、SiO2 薄膜と同様な基体の照明灯ガラス容器からの物質浸透阻止効果だけではなく、酸化インジウムおよび/または酸化錫薄膜に由来する導電性により、この照明灯のガラス容器に電磁波シールド機能を持たせることが可能である。照明灯の点灯に伴って発生する静電気や有害電磁波の空間への放射を防ぐことができるため、室内の埃の付着防止や、室内の電子機器へ悪影響を及ぼすノイズを減少させる利点がある。
【0023】
【発明の実施の形態】
<実施例1>
図1は本発明の実施例1にかかる照明灯の断面図である。以下、図1を参照にしながら実施例1の照明灯を説明する。なお、この実施例は、照明灯を約10Wの螢光灯で構成した例である。
【0024】
図1において、符号1は円筒状のガラス容器であり、このガラス容器1の内壁面には蛍光体層4が塗布され、外壁、すなわち、ガラス容器表面には酸化チタン薄膜が形成されている。また、ガラス容器1の内部には、公知の螢光灯と同様に必要なガスが封入され、さらに、図示しないが、ガラス容器の両端部、すなわち、図中紙面に垂直な方向の両端部は密封されて公知の螢光灯を構成するために必要な電極等が設けられている。これら螢光体層4及び封入ガス等によって発光部が構成されている。
【0025】
ガラス容器1は、外径25.5mm、内径23.0mm、長さ330mmの10W蛍光灯用ガラス管である。
【0026】
酸化チタン薄膜2はアナターゼ結晶を含む膜厚4.7μmの酸化チタン薄膜である。
【0027】
この照明灯は次のようにして作製した。
【0028】
まず、外径25.5mm、内径23.0mm、長さ330mmの10W蛍光灯用ガラス容器1をパイロゾル成膜装置にセットして、チタンテトライソプロポキシド0.5molをアセチルアセトン1Lに溶かした原料溶液を超音波により霧化させて20ml/minで上記装置へ導入して500℃で約80分間成膜することにより、蛍光灯用ガラス容器1の上に酸化チタン薄膜2を形成した。
【0029】
この酸化チタン薄膜2は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察とエネルギー分散型特性X線分光解析(EDS)により膜厚4.7μmの酸化チタン薄膜であることが確認された。また、このガラス容器の一部を切断し薄膜を薄膜X線回折で分析したところ、アナターゼ結晶を含むものであった。
【0030】
次に、得られた酸化チタン薄膜2を付けたガラス容器1の内壁に蛍光体を塗布して螢光体層2を形成し、両端部に電極を差し込んで封入し、排気用細管より真空排気した後、5Torrのアルゴンと微量の水銀を封入して熱プレスによりシールして実施例の照明灯を得た。
【0031】
次に、このようにして得られた照明灯の可視光照度および紫外光強度、並びに、油脂分解機能を測定し、また、酸化チタン薄膜2等の有無や膜厚等が異なるほかは実施例と同一の構成を有する照明灯(比較例)を用いて同様の測定を行ない、両者を比較することによって、実施例の特性や光触媒活性の性能評価の指標とした。この測定結果は、後述する他の実施例の測定結果ととともに、図2に表にして掲げた。
【0032】
なお、可視光照度および紫外光強度並びに油脂分解機能は以下に述べる方法で測定した。
【0033】
可視光照度測定
照明灯を点灯用器具にセットし通電して点灯し、(株)カスタム製デジタル照度計LXー1330(シリコンフォトダイオードの波長ー感度特性は図5に示す)でセンサー部と照明灯との距離を15cmとして、波長550nmを中心とする可視光の照度を測定した。
【0034】
紫外光強度測定
同様に、照明灯を点灯用器具にセットし通電して点灯し、ウルトラバイオレット社製デジタル式紫外線強度計UVXー36型(UVセンサーの波長ー感度特性を図6に示す)を使用して測定距離5cmとし、365nmを中心とする光の強度を求めた。
【0035】
油脂分解機能測定法
防汚機能を評価する指標として、表面に付着する油脂分をどの程度早く分解できるかを測定するためリノール酸を主成分とするサラダ油を使用して照明灯点灯時の分解量を定量することとした。各々の照明灯の表面に紙で薄くサラダ油を1cm2 当たり0.1〜0.15mgになるように塗布した。塗布量は塗布前後の重量を精密天秤により測定して求めた。照明灯を点灯後、経過時間と重量減少量の関係を求めるため所定時間における照明灯の重量を測定し、分解活性の指標とした。
【0036】
図2の表に示した通り、上述の測定方法による実施例1の測定結果は、サラダ油分解活性が5.4μg/日・cm2 であり、波長550nmを中心とする可視光照度は1240lux、波長365nmを中心とする紫外光強度は0.003mW/cm2 であった。
【0037】
これに対して、酸化チタン薄膜2が形成されていないほかは実施例1と同一の構成を有する照明灯(図4の表に示した比較例4参照)では、サラダ油分解活性が0.3μg/日・cm2 以下であり、波長550nmを中心とする可視光照度は1520lux、波長365nmを中心とする紫外光強度は0.036mW/cm2 であった。
【0038】
この結果を比較すると明らかなように、実施例1においては、通常の生活空間での汚れを十二分に分解できる分解活性を有すると共に、有害な紫外光を8%になるまでカットする(減少率として92%)にもかかわらず、酸化チタン薄膜2を設けたことによる可視光照度は82%にしか減少しておらず(減少率として18%)、極めて優れた性能を有していることがわかる。
【0039】
<実施例2〜4>
これらの実施例は、酸化チタン薄膜2の膜厚を変えたほかは実施例1と同様の構成を有し、同様の方法で製造したものであるので、各実施例の膜厚、サラダ油分解活性測定結果及び550nmの可視光照度と365nmの紫外光強度の測定結果を、図2に表にして掲げてその詳細説明は省略する。
【0040】
図2の表に示されるように、各実施例とも優れた油脂分解活性と十分な光透過性を有していることが分かる。
【0041】
<実施例5〜7>
これらの実施例は、図3に示したように実施例1における酸化チタン薄膜2とガラス容器1との間に、SiO2 膜からなるプレコート層3をディップコートによって形成したほかは実施例1と同様の構成を有し同様の方法で製造したものであるので、各実施例の膜厚、並びにサラダ油分解活性測定結果及び可視光照度、紫外光強度測定結果を、図2の表に掲げてその詳細説明は省略する。
【0042】
図2の表に示されるように、プレコート層がない実施例1〜4に比較して、酸化チタン薄膜2を薄くしても優れたサラダ油分解活性を示すことから、より高い可視光照度を確保できることが分かる。
【0043】
<実施例8>
この実施例8は、図3に示されるように実施例1における酸化チタン薄膜2とガラス容器1との間に、SiO2 膜からなるプレコート層3をディップコートによって形成し、さらにその上に酸化チタン薄膜2を同じくディツプコート法により形成したものである。そのほかの構成は実施例1と同様である。
【0044】
酸化チタン薄膜2は次のようにして形成した。すなわち、端部を封じてプレコート層3を形成したガラス容器1をチタンテトライソプロポキシド0.5molをアセチルアセトン1Lに溶かした原料溶液に、浸漬した後、0.5cm/秒の引き上げ速度でゆっくりと引き上げ、室温下乾燥後、450℃で焼成する操作を16回繰り返して膜厚1.5μmの酸化チタン薄膜2を形成した。
【0045】
実施例8のサラダ油分解活性測定及び可視光照度、紫外光強度を測定した結果は図2の表に掲げた通りである。
【0046】
<実施例9>
この実施例は、プレコート層3を2層の薄膜によって構成した例であり、このプレコート層3の構成を除くほかの構成は実施例5〜7とほぼ同じであるのでそれらの説明は省略する。
【0047】
この実施例は、上述の実施例5〜7と同様な方法により酸化チタン薄膜2とガラス容器1との間にSiO2 膜からなる第1のプレコート層をディップコートによって形成し、次に、その上に第2のプレコート層として酸化錫を8%含む酸化インジウム薄膜(ITO膜)よりなる薄膜を0.2μmの膜厚で前記パイロゾル装置によって成膜し、その後、実施例1と同様の方法により酸化チタン薄膜2を設けた構成としたものである。第1、第2のプレコート層の膜厚、並びにサラダ油分解活性測定結果及び可視光照度測定結果を、図2の表に掲げる。
【0048】
図2の表からも分かるように、実施例5〜7の場合と同様にプレコートのない酸化チタン薄膜の場合より薄い膜で高いサラダ油分解活性を示すものが得られている。また、この実施例9の場合、透明導電膜がプレコートされているため、照明灯(蛍光灯)からの電磁波も弱くなっており、更に、静電気によるゴミの付着も少なかった。
【0049】
<実施例10>
この実施例は、ハロゲンランプのガラス容器表面に酸化チタン薄膜を形成したものである。ここでは、ハロゲンランプとして、東芝ライテック株式会社製のハロゲンランプJD100V/250W(東芝ライテック株式会社の商品名)を用いた。
【0050】
酸化チタン薄膜の膜厚は4.2μmとした。酸化チタン薄膜の構成及び製造方法等は、実施例8と同様であるのでその詳細説明は省略する。
【0051】
また、この実施例の膜厚、サラダ油分解活性測定結果及びハロゲンランプから15cmの距離で測定した550nmの可視光照度と365nmの紫外光強度の測定結果は、図2に表にして掲げた通りである。
【0052】
図2の表から明らかなように、この実施例10におけるサラダ油分解活性は10.8μg/日・cm2 と高く、波長365nmを中心とする紫外光強度は、酸化チタン膜が形成されていないほかは同一の構成を有するハロゲンランプ(比較例5)の9.6%である(減少率;90.4%)であり、優れた油脂分解活性を有すると同時に紫外光を極めて効果的にカットできることが確認できた。
【0053】
<実施例11〜12>
これらの実施例は、酸化チタン薄膜の膜厚を変えたほかは実施例10と同様の構成を有し、各実施例の膜厚、サラダ油分解活性測定結果及び550nmの可視光照度と365nmの紫外光強度の測定結果を、図2に表にして掲げてその詳細説明は省略する
<実施例13〜14>
これらの実施例は、ハロゲンランプのガラス容器と酸化チタン薄膜の間にSiO2 からなるプレコート層を設けたもので、プレコート層および酸化チタン薄膜の膜厚を変えたほかは実施例10と同様の構成を有し、同様の方法で製造したものであるので、各実施例の膜厚、サラダ油分解活性測定結果及び550nmの可視光照度と365nmの紫外光強度の測定結果を、図4に表にして掲げてその詳細説明は省略する。ハロゲンランプのガラス容器は石英ガラスの場合が多いが、SiO2 からなるプレコート層を設けることにより、酸化チタン薄膜との密着性及び可視光透過率の向上に効果が認められた。
【0054】
サラダ油分解活性が1.7〜11.0μg/日・cm2 と高く、波長365nmを中心とする紫外光強度は、酸化チタン膜が形成されていないほかは同一の構成を有するハロゲンランプ(比較例5)の7〜19%(減少率;81〜93%)であり、優れた油脂分解活性を有すると同時に紫外光を極めて効果的にカットできることが確認できた。
【0055】
<実施例15>
この実施例は、紫外線ランプのガラス容器表面に酸化チタン薄膜を形成したものである。なお、ここでは、紫外線ランプとして、東芝ライテック株式会社製のブラックライト螢光ランプFL10BLB(東芝ライテック株式会社の商品名)を用いた。
【0056】
酸化チタン薄膜の膜厚は0.8μmとした。酸化チタン薄膜の構成及び製造方法等は、実施例1と同様であるのでその詳細説明は省略する。
【0057】
この実施例のサラダ油分解活性測定結果及び550nmの可視光照度と365nmの紫外光強度の測定結果を図2の表に掲げる。図2の表に示されるように、この実施例15におけるサラダ油分解活性は8.7μg/Hr・cm2 と極めて高いにもかかわらず、波長365nmを中心とする紫外光強度は、酸化チタン膜が形成されていないほかは同一の構成を有する紫外線ランプ(=ブラックライト;比較例6)の35%で(減少率65%)であって紫外線ランプとして十分な強度の紫外線を放射できるものであることがわかる。
【0058】
<実施例16〜19>
これらの実施例は、実施例15の紫外線ランプ(ブラックライト)のガラス容器と酸化チタン薄膜との間にSiO2 からなるプレコート層を設けたもので、プレコート層を設けた点及び酸化チタン薄膜の膜厚を変えたほかは実施例15と同様の構成を有し、同様の方法で製造したものである。なお、プレコート層は実施例5におけるプレコート層と同じである。
【0059】
各実施例でのプレコート層の膜厚、酸化チタン薄膜の膜厚、サラダ油分解活性測定結果及び365nmの紫外光強度の測定結果は図2の表に掲げた。図2の表から明らかなように、サラダ油分解活性が5.4〜12.2μg/Hr・cm2と極めて高いにもかかわらず、波長365nmを中心とする紫外光強度は、酸化チタン膜が形成されていないほかは同一の構成を有する紫外線ランプ(=ブラックライト;比較例6)の22〜48%(減少率52〜78%)であって紫外線ランプとして十分な強度の紫外線を放射できるものであることがわかる。
【0060】
<比較例1>
この比較例は、実施例1における酸化チタン薄膜2の膜厚を0.05μmと薄くしたほかは実施例1と同様の構成を有し同様の方法で作成したものであるので、この比較例の膜厚、光照度、光触媒による油脂分解活性を図4の表に掲げてその詳細説明は省略する。図4の表からも分かるように、この比較例では可視光照度は良いが、殆ど光触媒活性を示さないことが分かる。
【0061】
<比較例2>
この比較例は、実施例1における酸化チタン薄膜2の成膜時の温度を380℃としたほかは実施例1と同様の構成を有し同様の方法で作成したものであるので、この比較例の膜厚、光照度、光触媒による油脂分解活性を図4の表に掲げて詳細説明は省略する。なお、この比較例の場合、酸化チタン薄膜2にはアナターゼ結晶が全く含まれないことが薄膜X線回折によって確認された。更に、有機物の不完全燃焼に由来すると思われるカーボンが薄膜中に残存しており、そのため光透過率も低く光触媒活性も非常に低いものと推察される。
【0062】
<比較例3>
この比較例は、実施例5における酸化チタン薄膜2とガラス容器1との間に設けたSiO2 のプレコート層4の膜厚を0.01μmにし、この上に膜厚0.1μmの酸化チタン薄膜2を実施例5と同様の方法で作成したものであるので、この比較例の光照度、光触媒による油脂分解活性を図4の表に掲げ詳細説明は省略する。なお、この比較例の場合、SiO2 のプレコート層及び酸化チタン薄膜の膜厚が薄いため光活性が低いものと推察される。
【0063】
<比較例4>
この比較例は、酸化チタン薄膜を設けていないほかは実施例1と同一の構成を有する照明灯(螢光灯)である。可視光の照度及び365nmの波長の光を中心とする紫外光の強度の測定結果、並びに、サラダ油分解活性は図4の表に示した通りである。
【0064】
<比較例5>
この比較例は、酸化チタン薄膜を設けていないほかは実施例10と同一の構成を有する照明灯(250Wのハロゲンランプ)である。可視光の照度及び365nmの波長の光を中心とする紫外光の強度の測定結果、並びに、サラダ油分解活性は図4の表に示した通りである。
【0065】
<比較例6>
この比較例は、酸化チタン薄膜を設けていないほかは実施例15と同一の構成を有する照明灯(10Wのブラックライト)である。可視光の照度及び365nmの波長の光を中心とする紫外光の強度の測定結果、並びに、サラダ油分解活性は図4の表に示した通りである。
【0066】
なお、本発明に使用するガラス容器は、通常の蛍光灯管、ハロゲンランプ管、もしくはブラックライト管に使用されているものであれば特に制限はない。
【0067】
また、酸化チタン薄膜の油脂分解活性は、ガラス容器がソーダライムガラス等の場合、ガラス容器のガラスから拡散してくるナトリウム等のアルカリ成分により阻害されるので、こうした成分の拡散防止のため、ガラス容器表面にプレコート層を設けることが望ましい。この場合、安価なソーダライムガラス等のアルカリ成分が拡散する恐れのあるガラスでも有利に使用できる。
【0068】
さらに、酸化チタン薄膜の膜厚が0.1μm未満であると光透過性はあるが活性が低いため実用性に乏しくなり、逆に5μmを超えると活性を高く維持できる上に光の干渉による着色も減少する利点はあるものの、膜が白濁傾向となり膜の剥離が起きたり成膜時間が長くなるなどの欠点が発生しやすくなるので好ましくない。
【0069】
また、ソーダライムガラス等の上に酸化チタンを設けるばあいであっても、膜厚を例えば0.3μm〜5μmと厚くし、酸化チタン薄膜中のナトリウム濃度がガラス容器に接する側から表面に向かって傾斜的に低下するようにすれば、酸化チタン薄膜表面近傍においての光触媒活性を確保することが可能となり、この場合、プレコート層を省略することも可能となる。
【0070】
プレコート層の膜厚を0.02μm未満にすると、アルカリ拡散は防止能力が低くなり、逆に1μmを超えるとアルカリ拡散防止能力には支障ないものの、光透過性が低下し、成膜条件が煩雑となるため好ましくない。プレコート層を設けることでガラス容器からのナトリウム等のアルカリ成分の拡散を防止できるので、酸化チタン薄膜自体の膜厚を薄くすることができ、より可視光領域で光透過性の高い酸化チタン膜を形成することができる。
【0071】
プレコート層の組成は、可視光透過率が高く、ガラス容器からのナトリウムの拡散を押さえることが可能な薄膜なら制限はなく、例えばSiO2 薄膜、酸化錫薄膜、インジウム添加酸化錫薄膜、酸化インジウム薄膜、錫添加酸化インジウム薄膜、酸化ゲルマニウム薄膜、アルミナ薄膜、ジルコニア薄膜、SiO2 +MOx(MOxはP2 O5 、B2 O3 、ZrO2 、TiO2 、 Ta2 O5 、 Nb2 O5 から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物)薄膜をその例として挙げることができるが、アルカリ拡散防止能の見地から、酸化珪素薄膜、またはSiO2 にP2 O5 を5重量%程度添加した薄膜が特に望ましい。
【0072】
また、特に電磁波シールド機能を付与するため、プレコート層を複数の層で構成し、その中の一層に導電性薄膜を設ける場合は、可視光に対する光透過性と導電性を併せ持つ酸化錫薄膜、インジウム添加酸化錫薄膜、酸化インジウム薄膜、錫添加酸化インジウム薄膜などが望ましく、中でも酸化錫を5〜10%含有する酸化インジウムの透明薄膜は高い可視光透過率と優れた導電性を有しているので好ましい。
【0073】
さらに、光触媒活性の高い酸化チタン薄膜を得るための必要条件は、少なくともアナターゼ結晶を含むことが必要である。アナターゼ結晶は、成膜温度または成膜後の熱処理温度が高いと相転移して一部がルチル結晶に変化するのでルチル結晶を含んだアナターゼ結晶の酸化チタン薄膜も好適に用いられる。しかし、高温でアナターゼ結晶のすべてをルチル結晶にすると相転移による酸化チタンの白濁が生じるので可視光透過率を減少させるため好ましくない。
【0074】
本発明において酸化チタン薄膜及びプレコート層の成膜法としては、通常用いられている成膜法はすべて使用可能である。即ち、化学的気相析出法(CVD法)やスプレー法、ゾル溶液の吹き付け法、超音波によるミストを熱分解させるパイロゾル法、ディップ法、スピンコート法、印刷法などの化学的成膜方法だけではなく、物理的成膜法としてのスパッター法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、微粉末やゾルを用いた溶射法など様々の成膜法が採用可能である。中でも、蛍光灯管への成膜を考えると、CVD法、スプレー法、パイロゾル法などのガラス管製造工程中へ組み込みが可能な成膜法が工業生産を考えた場合には有利である。但し、ガラス容器の基体をガラス軟化点以上の高温例えば600℃以上の高温に保つ必要のある成膜法は、基体であるガラス管の変形や基体からのナトリウム等のアルカリ成分の拡散を促進するため、好ましくない。
【0075】
プレコート層を製造する薬剤としては、SiO2 を生成するものとしては、Si(OCH 3) 4 、Si(OC 2 H 5 ) 4 、 SiCH 3 (OCH 3 ) 3 などのシリコンアルコキシド及びその縮合物やSiCl 4などのシリコンハロゲン化物などがあり、酸化錫を形成するものとしては、Sn(OCH 3) 4 、 Sn(OC 2 H 5 ) 4 、 Sn(OC 4 H 9 ) 4 、 Sn(AcAc) 4、 Sn(OCOC 7 H 15) 4 、 SnCl 4、 などがあり、酸化インジウムを生成するものとして、In(OCH 3) 3 、 In(OC 2 H 5 ) 3、 InCl 3、 In(AcAc) 3、 In(NO 3 ) 3 ・ nH 2 Oなどがあり、酸化ゲルマニウムを生成するものとしては、Ge(OC 2 H 5 ) 4 、 Ge(OC 4 H 9 ) 4 、 GeCl 4などがあり、アルミナを生成するものとしては、Al(OC 2 H 5 ) 3 、 Al(OC 3 H 7−i ) 3 、 Al(OC 4 H 9 ) 3 、 In(AcAc)3、 In(NO 3 ) 3 ・ nH 2 Oなどがあり、五酸化リンを生成するものとして、P(OC2 H 5 ) 3、 PO(OCH 3 ) 3、 PO(OC 2 H 5 ) 3 、 H 3 PO 4、 P 2 O 5 などがあり、酸化ほう素を生成するものとして、 B(OCH 3 ) 3 、 B(OC 2 H 5) 3 、 B(OC 4H 9 ) 3 、 B(AcAc) 3 、 BCl 3 、 H 3 BO 3などがあり、これら通常使用可能な化合物またはそれらの混合物が使用できる。なお、化学式中、AcAcはCH 3 COCHCOCH 3 (アセチルアセトナート)を示す。
【0076】
酸化チタン薄膜を製造する薬剤としては、Ti(OC 2 H 5 ) 4 、 Ti(OC 3 H 7−i ) 4 、 Ti(OC 4 H 9 ) 4、 Ti(OC 4 H 9 ) 2 Cl 2 などのチタンアルコキシド、チタンアルコキシドにエチレングリコールなどのグリコール類、酢酸や乳酸などのカルボン酸類、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類、アセチルアセトンなどのβ−ジケトン類との付加反応物や錯体、及びTiCl 4などの塩化物をエタノールなどの汎用アルコール、酢酸エステルやβ−ジケトンなどの溶剤に溶解したものまたはそれらの混合物などが使用できる。
【0077】
光触媒反応を促進させるために公知の方法により種々の添加物を加えることも可能である。例えば光透過性を失わない程度に、微量の金属(金、白金、パラジウム、銀、銅、亜鉛)を光触媒反応を利用した光電着法により酸化チタン薄膜に均一に担持させて、油分解活性の向上による高い自己クリーニング性を持たせたり、高い抗菌活性を持たせたりすることも可能である。
【0078】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明にかかる照明灯は、ガラス容器表面に、紫外光吸収による光触媒活性を有すると同時に発光部から放射されてガラス容器を通過してきた照射目的とする光成分を通過させる酸化チタン薄膜を形成し、その酸化チタン薄膜に、通常の生活空間でその表面に付着する油脂成分を分解して除去することができる程度以上の光触媒活性を有し、同時に、照射目的とする光成分を照射目的を満たす程度以上に通過させる機能を持たせるようにしたものであり、これにより、照明機能を確保しつつ優れた自己クリーニング性を備えた照明灯を得ているものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1にかかる照明灯の断面図である。
【図2】実施例1〜12の特性の測定結果を表にして示した図である。
【図3】実施例5にかかる照明灯の断面図である。
【図4】実施例13〜19及び比較例1〜6の特性の測定結果を表にして示した図である。
【図5】可視光照度測定用のセンサーの波長ー感度曲線である。
【図6】紫外光強度測定用のセンサーの波長ー感度曲線である。
【符号の説明】
1…ガラス容器、2…酸化チタン薄膜、3…プレコート層、4…蛍光体層。
Claims (8)
- ガラス容器内部に、可視光を主たる成分とするが紫外光成分も含む光を放射する発光部を有する照明灯において、
前記ガラス容器表面に、紫外光吸収による光触媒活性を有すると同時に前記発光部から放射されて前記ガラス容器を通過してきた波長550nmを中心とする可視光を50%以上通過させる酸化チタン薄膜を形成してなり、
前記発光部が、可視光のほかに少なくとも波長365nmを中心とする紫外光をも含む光を発光する螢光体を有するものであり、
前記酸化チタン薄膜は、該酸化チタン薄膜を通過する波長365nmを中心とする紫外光を80%以上減少させるとともに、前記発光部が発光している状態で該酸化チタン薄膜表面に付着するリノール酸を1cm2あたり1日に0.5μg以上分解するものであり、
前記ガラス容器と酸化チタン薄膜との間にプレコート薄膜を設けたことを特徴とする照明灯。 - 前記発光部が、可視光のほかに少なくとも波長365nmを中心とする紫外光をも含む光を発光するハロゲン元素を含むものであり、
前記酸化チタン薄膜は、該酸化チタン薄膜を通過する波長365nmを中心とする紫外光を80%以上減少させるとともに、前記発光部が発光している状態で該酸化チタン薄膜表面に付着するリノール酸を1cm2あたり1日に0.5μg以上分解するものであることを特徴とする請求項1に記載の照明灯。 - ガラス容器内部に、主として波長365nmを中心とする紫外光を発光する発光部を有する照明灯において、
前記ガラス容器表面に、紫外光吸収による光触媒活性を有し、かつ、前記発光部から放射されて前記ガラス容器を通過してきた波長365nmを中心とする紫外光を50〜80%減少させて通過させ、かつ、前記発光部が発光している状態で該酸化チタン薄膜表面に付着するリノール酸を1cm2あたり1時間に1μg以上分解するものであり、
前記ガラス容器と酸化チタン薄膜との間にプレコート薄膜を設けたことを特徴とする照明灯。 - 前記酸化チタン薄膜の膜厚が0.1〜5μmであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の照明灯。
- 前記酸化チタン薄膜は少なくともアナターゼ結晶を含むものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の照明灯。
- 前記プレコート薄膜の膜厚が0.02〜1μmであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の照明灯。
- 前記プレコート薄膜がSiO2を主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の照明灯。
- 前記プレコート薄膜が複数の層からなり、その少なくとも一層には酸化インジウムおよび/または酸化錫を主成分とする材料からなる薄膜が含まれることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の照明灯。
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