JP3565053B2 - 汚染検出装置及び汚染検出装置を備えた空気調和装置 - Google Patents

汚染検出装置及び汚染検出装置を備えた空気調和装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば喫煙等によって発生する空気の汚染の検出に用いられる汚染検出装置及び汚染検出装置を備えた空気調和装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、例えば空気清浄機に室内空気の汚染を検出する汚染検出装置を設け、この検出装置での検出信号に基づいて運転の開始や停止を自動的に行うようになってきている。このような汚染検出装置を備えた空気清浄機の具体例が特公平6−7897号公報に記載されている。この空気清浄機に設けられた汚染検出装置は、SnO等の金属酸化物半導体を感ガス素子とするガスセンサを備えている。上記の感ガス素子は、その抵抗値が空気中のHやCO等の還元性ガスの濃度に伴って変化し、この抵抗値の変化、すなわち空気中のガス濃度の変化に応じてレベルが変化する信号が、上記ガスセンサから出力されるようになっている。
【0003】
ところで、室内空気の汚染の主要因は喫煙である。この喫煙時には、煙に伴ってHやCO等のガスが発生し、これによって、上記ガスセンサからの出力信号が大きく変化する。そこで、ガスセンサの出力を、清浄空気に対応した基準値と比較して、この基準値との差または比が所定範囲を超えたことが検出されたときに、室内空気の汚染が生じたとして、空気清浄機の運転を自動的に開始するように構成されている。
【0004】
一方、運転を継続して室内空気が清浄化された後の運転の停止については、上記公報記載の装置ではガスセンサ出力の時間的変化が飽和したことを検出して行われる。つまり、空気清浄機による空気の清浄化は、高圧放電による集塵やエアフィルターによるろ過、或いは活性炭等の吸着剤への吸着によって行われるが、この場合の浄化能力は煙に対してはかなり高いものの、HやCO等のガスは殆ど除去されない。したがって、喫煙時の煙やこれに付随する臭気成分等が運転の継続に伴って充分に除去された後でも、HやCO等のガス成分はいつまでも残存し、センサ出力には汚染側から清浄側への低下があまり生じない。そこで、煙やこれに付随する臭気成分等の除去後にガスセンサ出力に殆ど変化が生じなくなった飽和状態を検出して運転を停止させるようになっている。
【0005】
なお、前記した清浄空気に対応した基準値については、ガスセンサの出力が温度や湿度の変化に伴って変動し易いことから、所定のサンプリング期間毎のガスセンサ出力の最小値を清浄空気に対応した基準値として適宜更新していくようになっている。
【0006】
さらに、喫煙等によって室内空気の汚染が生じ、これによって前記したように空気清浄機の運転を行った後には、上記公報記載の装置では、この終了時点でのガスセンサ出力に基準値を変更する制御が行われる。すなわち、この時点でのガスセンサ出力は、煙や臭気成分が除かれた後にも残存するHやCO等のガス濃度に対応したものとなっており、このため、先の基準値のままではこの終了時点でも室内空気は汚染状態にあると判断することになって、不要な運転が継続されることになる。そこで、上記のように運転終了時点でのガスセンサ出力を新たな基準清浄状態に対応する基準値とし、これにより、その後に喫煙等が行われて新たにHやCO等のガスが発生し、このガス成分の濃度の増加に伴うガスセンサ出力の変化が検出されたときに、新たな室内空気の汚染が生じたことを検出するようになっている。
【0007】
なおこの場合に、例えば窓を開けることによって残存するHやCO等が屋外に拡散し、これによって室内空気中のガス濃度が低下してガスセンサ出力が清浄側に変化した場合には、この清浄側に変化した出力レベルを新たな基準清浄状態に対応する基準値とする変更が行われる。
【0008】
このように、従来は、清浄状態に対応する基準値に対し、室内汚染が検出されて清浄化の運転が終了した時点でこのときのガスセンサ出力の値、もしくはこの値に近づけた値とする制御が行われ、また、その後にガスセンサ出力が基準値よりも清浄側に変化した場合には、このときのガスセンサ出力に基準値を変更して、新たな室内汚染の発生を検出するようになっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように基準値を変更する従来の制御では、窓の一時的な開閉等が行われた後に、室内汚染が生じていないにもかかわらず汚染状態になったとの誤判定を生じ易いという問題を有している。
【0010】
つまり、室内汚染が検出されて清浄化の運転が行われると、この運転の終了時にこのときのガスセンサ出力値、若しくはこの値に近い値に基準値が変更されるが、その後にガスセンサの取付位置近傍の窓が開かれ、これによって、ガスセンサ近傍の空気が局部的に清浄になると、基準値はこの清浄雰囲気に対応するレベル値にさらに変更される。そしてこの窓がすぐに閉められ、したがって、室内全体のガス濃度には窓の開閉前後で殆ど変化が生じていないような場合には、一旦清浄な状態となったガスセンサ取付位置近傍の雰囲気は、窓を閉めた後に室内全体の雰囲気と同等レベルに戻り、これに伴ってガスセンサ出力は元の出力レベルに向かって変化する。このとき、基準値は窓の開放時に清浄側のレベル値に変更されているため、この基準値に対してガスセンサ出力は汚染側に大きく変化することになる。この結果、窓の開閉前後で室内のガス濃度に殆ど変化が生じていないにもかかわらず、室内が汚染状態になったとの誤判定が生じてしまう。
【0011】
この発明は上記した問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、汚染の発生に対する誤判定を抑制することができ、これによって、空気清浄化運転等をより的確に開始させ得る汚染検出装置及び汚染検出装置を備えた空気調和装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
そこで請求項1の汚染検出装置は、空気中のガス濃度の上昇に伴って清浄側から汚染側に出力信号レベルLが変化するガスセンサ1と、基準清浄状態での上記ガスセンサ1の出力信号レベルLを基準値Lとして記憶する基準値記憶手段12と、ガスセンサ1の出力信号レベルLを上記基準値Lと比較して汚染の発生を判別する汚染判別手段11とを備える汚染検出装置であって、ガスセンサ1の出力信号レベルLに上記基準値Lよりも清浄側への変化が生じたとき、上記基準値Lをこのガスセンサ1の出力信号レベルLの変化から遅らせて清浄側のレベル値に変更する基準値変更手段13と、この基準値変更手段13による清浄側への基準値Lの変更制御中に、ガスセンサ1の出力信号レベルLに基準値Lよりも汚染側への変化が生じたとき、上記基準値Lの変更制御を中断させる基準値変更中断手段14とを設けていることを特徴としている。
【0013】
すなわち、この構成によれば、ガスセンサ1の出力信号レベルLが基準値Lよりも清浄側に変化したときには、この変化に遅れて基準値が清浄側に変更され、また、このような変更制御中に出力信号レベルLに基準値Lよりも汚染側への変化がさらに生じた場合には、基準値の変更が中断される。したがって、前記のように一時的な窓の開放等によりガスセンサ1の出力信号レベルLが一時的に清浄側に変化した後に元のレベルに戻るような変化が生じる場合に、この間における基準値Lの清浄側への変更幅はより小さなものとなり、或いはこの間での基準値Lの変更が生じないようにすることができる。この結果、窓を閉めた後でのガスセンサ1の出力信号レベルLと基準値Lとの差が窓の開放前の状態に近いものとすることができるので、このような一時的な窓の開閉時等に従来生じていた誤判定の発生を抑制することができる。
【0014】
なお、基準値Lをガスセンサ1の出力信号レベルLの変化から遅らせて清浄側のレベル値に変更する基準値変更手段13としては、例えば請求項2のように、ガスセンサ1の出力信号レベルLの清浄側への変化時点から基準値Lを段階的に清浄側に逐次変更して上記出力信号レベルLに近づける制御を行うように構成することが可能であり、また、請求項3のように、ガスセンサ1の出力信号レベルLの清浄側への変化時点から所定の時間経過後に、基準値Lを上記出力信号レベルLに近づける制御を行うように構成することが可能である。この請求項3の構成の場合には、所定時間が経過する前にガスセンサ1の出力信号レベルLに基準値Lよりも汚染側変化が生じた場合には基準値の変更制御がこの時点で中断され、したがって、基準値Lは変更されずに元のレベル値で保持される。
【0015】
請求項4の汚染検出装置を備えた空気調和装置は、請求項1、請求項2又は請求項3の汚染検出装置を備え、前記汚染判別手段11からの信号に基づいて空気清浄に関連する所定の動作を行うことを特徴としている。
【0016】
このような空気調和装置においては、汚染判別手段11からのより的確な汚染判別信号に基づいて空気清浄に関連する所定の動作が行われるので、例えば一時的な窓の開放時等での開放前後で室内空気のガス濃度に殆ど変化がないにもかかわらず、窓を閉めた後に不要な空気清浄化運転が開始されるのが防止される。なお、空気清浄に関連する所定の動作とは、上記した空気清浄化運転の他、汚染度合いの表示などが該当する。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の具体的な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
図3に、本実施形態に係る汚染検出装置の制御ブロック図を示している。この汚染検出装置は、セパレート形空気調和機における室内機(図示ぜず)内に設けられ、半導体式のガスセンサ1を備えている。このガスセンサ1は、上記室内機内における室内空気の吸込口近傍に取付けられている。
【0019】
このガスセンサ1は、例えば図4に示すように、セラミックスやアルミナ製の絶縁基板2上に固定された後述する感ガス素子3を設けて構成され、この感ガス素子3の上下各面には、それぞれ上部電極4および下部電極5が付設されている。さらに、感ガス素子3の表面側には、粉塵等からこの素子3を保護するために例えば多孔質セラミックスからなる保護膜6が設けられており、また、絶縁基板2の下面に、感ガス素子3を所定の動作温度まで加熱して保持するためのヒータ7が設けられている。
【0020】
感ガス素子3は、SnOやFe等を基材とする酸化物半導体で形成されている。この感ガス素子3は、清浄な空気中にあるときには表面に酸素が吸着し、この酸素の電子親和力によって酸化物半導体中の自由電子の流れが妨げられて、電気抵抗値が大きくなる。一方、空気中にHやCO等の還元性ガスが存在すると、酸化物半導体の表面で上記のガスと吸着酸素との酸化反応が生じる。これにより、吸着酸素量が減少して電子が動き易くなり抵抗値が小さくなる。このように、感ガス素子3の抵抗は空気中のガス濃度に応じて変化する。
【0021】
そこで、上記ガスセンサ1には、図示してはいないが、感ガス素子3の抵抗変化を電圧変化に変換して出力させる検出回路が付設されている。すなわち、感ガス素子3に直列に負荷抵抗を接続し、これら直列回路の両端間に一定電圧を印加した状態で、感ガス素子3の両端間、或いは負荷抵抗の両端間に生じる電圧を出力させる回路が設けられている。以下では、上記負荷抵抗の両端間に生じる電圧がこのガスセンサ1から出力されるものとして説明する。したがってこの場合、室内空気中のガス濃度が上昇し、これに伴って感ガス素子3の抵抗が小さくなると、上記負荷抵抗の両端間電圧、すなわち出力電圧は大きくなる。
【0022】
なお、上記のようなガスセンサ1からの出力信号に基づいて、後述するように、前記室内機で空気清浄化の運転を行うようにもなっており、このためにこの室内機内には、図示してはいないが、その吸込口に装着されたプレフィルタの背後に、さらに、電気集塵フィルタと、紫外線の照射により活性化して臭気成分を除去する光触媒フィルタとが順次設けられている。
【0023】
上記ガスセンサ1からの出力信号に基づいて室内空気の汚染の発生を判別するため、室内機における例えばマイクロコンピュータから成る空調制御装置(図示せず)内に、図3に示すように、温湿度補正部10・汚染判別部(汚染判別手段)11・基準値記憶部(基準値記憶手段)12、基準値変更部(基準値変更手段)13・基準値変更中断部(基準値変更中断手段)14が設けられている。
【0024】
温湿度補正部10は、ガスセンサ1における前記感ガス素子3の抵抗が温度変化および湿度変化に伴って変動することから、前記室内機内に設けられている室温センサ15および湿度センサ16の各検出室温・検出湿度に基づいて、ガスセンサ1からの前記した出力信号を補正する処理を行う。基準温湿度状態(例えば20℃、65%RH)からの温度変化および湿度変化に応じたガスセンサ1の出力変化から、温度変化に対する補正係数、および湿度変化に対する補正係数を予め求めて温湿度補正部10に記憶させており、この温湿度補正部10では、これら各補正係数をガスセンサ1の出力信号に順次乗ずるような処理が行われる。
【0025】
これによって、この温湿度補正部10から、温度変化および湿度変化に影響されずに、室内空気中のガス濃度の変化に対応する電圧レベルに換算された信号が出力される。以下では、この温湿度補正部10で補正された後の信号の電圧値を、ガスセンサ1からの出力信号レベルLと称して説明する。
【0026】
前記汚染判別部11は、上記出力信号レベルLを、基準値記憶部12に記憶されている後述する基準値Lと比較し、LとLとの差(L−L)、或いは比(L/L)が所定の値を超えた時に、室内空気の汚染が発生したと判別し、汚染判別信号を前記空調制御装置の空調制御部に出力する。これにより、空調制御部は空気清浄に関連する以下の動作を開始させる。
【0027】
まず空気清浄について自動運転モードが利用者によって選択され、また、暖房や冷房の室内温調運転を行っているときに上記の汚染判別信号が空調制御部に入力されると、前記した電気集塵フィルタに所定の電圧を印加し、また、光触媒フィルタに紫外線を照射するための紫外線ランプを点灯させる。これにより、前記プレフィルタ通過時に粗塵が除去された室内空気から、電気集塵フィルタ通過時に煙草の煙などの微細な塵埃も除去され、さらに、紫外線の照射により活性化された光触媒フィルタで空気中の臭気成分も除去される。こうして清浄化された室内空気が、室内機内で室内熱交換器通過時に加温又は冷却されて室内機の吹出口を通して室内に吹き出され、したがって室内空気は徐々に清浄化されていく。
【0028】
また、上記のような温調運転を停止した状態で、前記汚染判別部11から汚染発生信号が空調制御部に入力されたときには、室内機内の室内ファン(図示せず)を駆動して送風運転を開始させ、同時に、上記同様に電気集塵フィルタへの電圧の印加と紫外線ランプの点灯とを開始させて、室内空気を浄化する運転を行う。一方、空気清浄についての自動運転モードが利用者によって選択されていない場合には、室内機の前面に設けられている汚染度表示ランプを点灯させる制御等を行う。
【0029】
ところで、室内空気の汚染の主要因は喫煙時に発生する煙である。そして、この煙中には水蒸気の他に、HやCO等のガスが多量に発生する。したがって、このHやCO等のガス成分の濃度上昇が前記ガスセンサ1で検出されることで、喫煙による室内空気の汚染発生が判別される。そして、このような汚染が生じたときに、上記のような空気清浄化運転を行うことで、喫煙に伴って発生した煙やこれに付随して発生する臭気成分が除去されて室内空気が清浄化される。
【0030】
しかしながら、前記のような電気集塵フィルタや光触媒フィルタによって煙や臭気成分は比較的速やかに除去されるものの、上記したHやCO等のガス成分に対する浄化能力は小さく、このため、煙や臭気成分が充分除去された後でも、ガスセンサ1の出力信号にはわずかなレベル低下しか生じない。したがって、前記基準値が喫煙による汚染発生時と同じ値のままでは、煙や臭気成分が充分除去されて清浄化された状態でも、このときには残存するHやCO等のガス濃度に応じた出力信号レベルLと基準値とに大きな差が生じたままとなることから、汚染判別信号の出力状態が継続したままとなって、新たな喫煙に伴う汚染を検出できないことになる。
【0031】
そこで、上記のような基準値を、空気の清浄化運転時に変更する制御を前記基準値変更部13で行うようになっており、以下、この基準値変更部13によって行われる制御内容について、図1を参照して説明する。
【0032】
まず同図(a)には、室内空気が清浄な状態で喫煙による室内空気の汚染が生じ、これによって空気の浄化運転が行われた後に窓が開放されたときの出力信号レベルLの変化を実線太線で示している。
【0033】
同図のように、喫煙時t以前の期間Tでは、出力信号レベルLは低く、このとき、図中実線細線で示す基準値Lとの差又は比を求めた値(以下、比較結果という)は所定の範囲内にあって、前記汚染判別部11からは清浄状態であるとの判別信号が出力されている。なお、このときの基準値Lは、例えば清浄な外気雰囲気中におけるガスセンサ1の出力信号レベルを予め求め、当初はこのレベル値が基準清浄状態に対応する基準値として設定されて、前記基準値記憶部12に記憶されている。
【0034】
時刻tにおいて喫煙が行われると、煙と共にHやCO等のガス成分が発生し、これに伴ってガスセンサ1の出力信号レベルLに、汚染側への急激なレベル変化が生じる。この過程で、出力信号レベルLと基準値Lとの比較結果が所定の範囲を超え、これによって、汚染判別部11から、前記のように室内空気に汚染が発生したとの判別信号が出力され、空気の清浄化運転が開始される。
【0035】
そして、この清浄化運転の開始とほぼ同時に、基準値Lを段階的に上昇させて逐次変更していく制御が前記基準値変更部13によって開始され、変更後の基準値Lと出力信号レベルLとの比較結果が所定の範囲内となった時点tに、室内空気の汚染が解消されたとして、汚染判別部11からの出力がそれまでの汚染判別信号から清浄判別信号に切替わり、これによって空気の清浄化運転が停止される。また、基準値Lの変更はこの時点で中止され、このときの値が新たな基準清浄状態に対応する基準値として前記基準値記憶部12に保持される。
【0036】
つまり、空気の清浄化運転期間Tには、この運転の継続に伴い、喫煙によって発生した煙や臭気成分が次第に除去されるが、前記したように、このとき同時に発生したHやCO等のガス成分は殆ど除去されず、したがって、上記の清浄化運転中に出力信号レベルLはわずかに低下するものの、煙や臭気成分が充分に除去された後も、期間Tでの出力信号レベルLに比べてレベルの高い出力状態が継続する。そこで清浄化運転を停止させるに当たっては、この運転による単位時間当たりの煙や臭気成分の除去速度を予め求め、この除去速度にほぼ見合う速度で基準値Lを段階的に上昇させ、この過程で基準値Lと出力信号レベルLとの比較結果が所定の範囲内となった時に運転を停止させる。これにより、喫煙時(時刻t)の出力信号レベルLの変化度合い、すなわち、汚染度合いに見合う清浄化の運転時間Tが確保され、煙や臭気成分についてはこれをほぼ完全に除去した清浄状態として運転が停止される。
【0037】
このような制御に伴い、清浄化運転が行われた後の基準値Lは、このときに残存するHやCO等のガス濃度に応じた出力信号レベルLに近いレベル値に変更されて保持される(期間T)。
【0038】
この状態で、室内機近くの窓が開放され、これによって、それまで室内に残存していたHやCO等のガス成分が室外に拡散し、室内雰囲気が室外の清浄空気と同等になると、出力信号レベルLも清浄側に大きく変化する(時刻t)。このように出力信号レベルLが基準値Lよりも清浄側に変化したときには、従来は同図中に破線Aで示すように、基準値Lもこのような出力信号レベルLに追随させて変更し、出力信号レベルLの最小値に置き換えて保持するような制御が行われていた。
【0039】
これに対し本実施形態においては、図中実線細線Bで示すように、基準値Lを段階的に清浄側に低下させ、したがって、出力信号レベルLの清浄側への変化に遅れて基準値Lを出力信号レベルLに近づけて、最終的にこの出力信号レベルLとほぼ同じレベル値になるように変更する基準値変更制御が、前記基準値変更部13によって行われる。そして、この基準値変更制御の過程で、出力信号レベルLが基準値Lよりも大きくなるような変化が生じると、前記基準値変更中断部14によって、基準値Lの変更制御が中断されるようになっており、このときの制御内容について同図(b)を参照して説明する。
【0040】
同図(b)は、前記同様に時刻tで喫煙が行われ、期間Tで空気の清浄化運転が行われた後、室内機近くの窓が時刻tから時刻tの短時間、開放されたときの出力信号レベルLの変化を実線太線で示している。すなわちこのときには、窓を開放した時点tで出力信号レベルLの低下が前記同様に生じるものの、この場合の窓の開放時間が室内機周辺でのガス濃度を局部的に低下させる程度の短時間で、室内全体のガス濃度が殆ど変化しない場合には、窓を閉じた時点tから、出力信号レベルLは室内に残留するガス濃度に応じて次第に上昇し、元のガス濃度に対応する出力状態となる。
【0041】
このときの時刻tでの出力信号レベルLの低下時に、同図中破線Aで示すような従来の基準値変更制御が行われる場合には、窓の開放期間T中に、この間での出力信号レベルLの最小値に基準値Lが変更される。したがって、その後に窓が閉められて出力信号レベルLが元のレベルまで上昇していく過程で、出力信号レベルLと基準値Lとの比較結果によって汚染判別信号が新たに発生されることになり、これに伴って空気清浄化運転が再開されることになる。すなわち、窓を開ける前の清浄状態に対し、窓を一次的に開けることで新たに汚染状態になったとの判別結果が出力されることになって、利用者に違和感を与えてしまう。
【0042】
これに対し、同図中実線細線Bで示す本実施形態での基準値変更制御では、時刻tでの出力信号レベルLの低下時から、段階的に基準値Lを低下させる制御が行われるが、この間、前記基準値変更中断部14で、基準値Lと出力信号レベルLとの大小関係を監視しており、これによって、出力信号レベルLが再度上昇して基準値Lよりも大きくなると、基準値Lの変更がその時点で中断される。
【0043】
この結果、この一次的な窓の開放期間Tでの基準値Lの変更幅は小さく抑えられ、したがって、窓を閉めた後に出力信号レベルLが元のガス濃度に対応する出力レベルに戻ったとしても、このときの出力信号レベルLと基準値Lとの比較結果は所定の範囲内に維持されて、前記汚染判別部11からは、窓の一時的な開放の前後を通じて清浄との判別出力状態が継続される。これによって、従来生じていた不要な清浄化運転の再開等が防止される。
【0044】
なお同図では、基準値Lを一段階低下させたときに出力信号レベルLがこの時の基準値Lよりも大きくなり、これによって、基準値Lの変更が中断された状態を示しているが、その後、基準値Lを再度一段階上昇させている。このように、出力信号レベルLと基準値Lとの比較結果が清浄状態の範囲内であっても、そのときの出力信号レベルLに基準値Lを所定の範囲まで近づけるような制御を行うことで、その後の汚染の発生に伴うガス濃度の上昇変化をより感度良く検出することができる。
【0045】
以上の説明のように、上記実施形態(以下、第1実施形態という)においては、ガスセンサ1の出力信号レベルLに基準値Lよりも清浄側への変化が生じたとき、この変化時点から基準値Lを段階的に清浄側に変更することによって、この基準値Lが出力信号レベルLの変化に遅れて清浄側のレベル値に変更されるようになっている。そして、このような基準値Lの変更制御中に、ガスセンサ1の出力信号レベルLに基準値よりも汚染側への変化が生じたときには、上記基準値Lの変更が中断される。これにより、一時的な窓の開閉等に伴ってガスセンサ1の出力信号レベルLが清浄側に一旦変化した後に元に戻っても、この時に新たに汚染が発生したとの誤判別が生じることが抑えられ、これにより、利用者感覚により合致した判別結果が得られると共に、不要な空気清浄運転等が行われることが防止される。
【0046】
なお、図1(a)(b)中には、第2実施形態および第3実施形態での基準値変更制御による制御例を、一点鎖線C、二点鎖線Dでそれぞれ示している。第2実施形態での基準値変更部13は、同図(a)に示すように、まず、ガスセンサ1の出力信号レベルLが基準値Lよりも清浄側に低下した時点tから所定の待機時間tを計測し、この時間tが経過した時に、この時点での出力信号レベルLを基準値Lとする制御を行う。また、第3実施形態での基準値変更部13は、上記同様に、ガスセンサ1の出力信号レベルLが基準値Lよりも清浄側に低下した時点tから所定の待機時間tを計測し、この時間tが経過した時点から、基準値Lをガスセンサ1の出力信号レベルLとほぼ同一のレベル値まで段階的に清浄側に変更する制御を行う。
【0047】
これらの各基準値変更制御によれば、同図(b)に示すように、一時的な窓の開閉等に伴ってガスセンサ1の出力信号レベルLが清浄側に一旦変化しても、上記待機時間tが経過する前に出力信号レベルLが再度上昇して基準値Lよりも大きくなると、この待機時間tの計測段階で基準値変更部13による基準値変更制御がそれぞれ中断され、したがって、基準値Lの変更は行われないことになる。これにより、窓を閉めた後に新たな汚染が発生したとの誤判別を生じることはなく、不要な空気清浄運転等が行われることが防止される。
【0048】
図2には、新築住宅等において窓が一時的に開放されたときのガスセンサ1の出力信号レベルLの変化の一例を示している。このような新築住宅では、建材や家具等から揮発性ガスが発生している場合があり、この場合に、窓を開けた時(時刻t)に、前記同様に出力信号レベルLの低下が生じる。そして窓を閉めると(時刻t)、その後に建材等から発生するガスによって次第に出力信号レベルLが上昇し、窓開放以前のレベルに落ち着くことになる。
【0049】
このような場合に、窓を開けた時点tでの出力信号レベルLの低下に伴う基準値Lの変更が、図中破線Aで示す従来の基準値変更制御で行われると、窓を閉めた時点tでは、窓開放時の出力信号レベルLの最小値に変更されているために、それ以降に次第に出力信号レベルLが上昇していく過程で汚染が発生したとの判別結果が出力される。すなわち、窓を開放して換気したにもかかわらず、室内空気が汚れたとの判別結果が出力されることになって、利用者感覚にそぐわない判別結果が窓開放時間の長短にかかわらず出力される。
【0050】
これに対し、図中実線細線Bや一点鎖線C、二点鎖線Dで示すように、前記した各第1〜第3実施形態での基準値変更制御がこのような新築住宅で行われる場合には、窓の開放時間に応じて基準値の低下幅は小さくなる。このため、窓の開放時間が長い場合には上記と同様の傾向を示すものの、窓の開放時間が比較的短かければ、この窓の開放前後で室内空気は清浄であるとの判別状態が継続されることになる。これにより、従来の制御Aに比べて、より利用者感覚に合致した判別結果が出力され、窓の開放毎に空気の清浄化運転等が不要に開始される頻度が低減される。
【0051】
以上にこの発明の具体的な実施形態について説明したが、この発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更することができる。例えば前記第2・第3実施形態では、ガスセンサ1の出力信号レベルLが基準値Lよりも清浄側に低下した時点から所定の待機時間tの経過を計測した後に、基準値Lを清浄側に低下させる基準値変更部13を設けて構成したが、所定の待機時間tの経過を計測する制御に代えて、例えば出力信号レベルLの低下が所定の基準速度よりも大きい速度で低下していくことが検出されたときに、この変化を生じる直前の出力信号レベルLからそのレベル値を上記基準速度で実際よりも緩やかに低下させ、これが基準値Lと同等レベルに低下した時点を、ガスセンサ1の出力信号レベルLが基準値Lよりも清浄側に低下したとして、この時点から基準値Lを清浄側に低下させる等の制御構成とすることも可能である。これにより、出力信号レベルLが基準値Lよりも清浄側に低下したと認識して基準値Lの変更を開始するタイミングが遅れ、この間に、実際の出力信号レベルLが再度汚染側に上昇したときには基準値Lの変更が行われなくなるので、一時的な窓の開放等による誤判別が防止される。
【0052】
また前記第1実施形態では、ガスセンサ1の出力信号レベルLが基準値Lよりも清浄側に低下した時点から段階的に基準値Lを低下させる制御構成を示したが、この場合の各段階毎の低下幅や保持時間については格別限定されるものではなく、例えば窓の開放が室内空気全体に及ぼす影響度合いや、窓の開放時において予測される出力信号レベルLの低下速度等に応じて、各段階毎の低下幅や保持時間を設定すれば良い。また、請求項1の範囲においては、基準値を段階的に低下させる制御に代え、窓の開放時において予測される出力信号レベルLの低下速度よりも遅い速度で連続的に基準値を低下させる等の構成とすることも可能である。
【0053】
また上記各実施形態では、ガスセンサ1の出力信号レベルLが基準値Lよりも清浄側に変化した状態が継続する場合に、基準値Lを低下させてこれが最終的に出力信号レベルLとほぼ同一のレベル値になるように制御する例を挙げたが、このときの基準値Lの最終的な値が、出力信号レベルLより幾分汚染側あるいは清浄側の所定範囲内のレベル値となるような制御構成とすることも可能である。
【0054】
一方、上記各実施形態では、汚染の発生が判別されて空気の清浄化運転を開始した後、基準値Lを段階的に上昇させて出力信号レベルLと基準値Lとの差又は比が所定の範囲内となったときに清浄化の運転を停止し、また、このときの基準値Lを保持するような制御例を挙げて説明したが、例えば清浄化運転をタイマーによって所定時間行い、この清浄化運転終了時の出力信号レベルLを新たな基準清浄状態に対応する基準値Lとするような制御構成とすることも可能である。
【0055】
また上記実施形態では、温度変化や湿度変化に伴うガスセンサ1の出力変動を補正する温湿度補正部10を設け、清浄な外気雰囲気中でのガスセンサ1の出力信号レベルを当初の基準値Lとしたが、上記のような温湿度補正部10を設けることなく、室内における所定のサンプリング期間での出力信号レベルLの最小値を、逐次基準値Lとして更新していくような制御構成等とすることも可能である。
【0056】
また上記実施形態では、ガスセンサ1の形態として図4を参照してその一例を例示したが、その他任意の形態のガスセンサを採用して構成することが可能である。またガスセンサ1の出力信号レベルLはガス濃度の上昇に伴って大きくなるような回路構成を負荷したガスセンサ1を例に挙げたが、逆にガス濃度の上昇に伴って出力信号レベルが小さくなるようなガスセンサを設けて構成することも可能である。
【0057】
また上記実施形態では、セパレート形空気調和機の室内機を例に挙げたが、その他の形式の空気調和機や空気清浄機、さらに自動車等に搭載される汚染検出装置や空気調和装置にも本発明を適用して構成することが可能である。
【0058】
【発明の効果】
以上のように、請求項1〜請求項3の汚染検出装置においては、ガスセンサの出力信号レベルに基準値よりも清浄側への変化が生じたとき、この変化に遅れて基準値を清浄側に変更し、かつ、この基準値変更制御の間に出力信号レベルに基準値よりも汚染側への変化が生じたときには、上記基準値変更制御を中断するようになっているので、一時的な窓の開閉時等に新たに汚染が発生したとの誤判別が生じることを抑制することができる。
【0059】
請求項4の汚染検出装置を備えた空気調和装置においては、上記汚染検出装置からのより的確な汚染判別信号に基づいて空気清浄に関連する所定の動作が行われるので、例えば一時的な窓の開放時等での開放前後で室内空気のガス濃度に殆ど変化がないにもかかわらず、窓を閉めた後に不要な空気清浄化運転が開始されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1〜第3実施形態における汚染検出装置の基準値変更制御の一例を示すもので、同図(a)は喫煙後に窓を開けたときの制御例を示すタイムチャート、同図(b)は喫煙後に一時的に窓を開けたときの制御例を示すタイムチャートである。
【図2】新築住宅での上記汚染検出装置の基準値変更制御の一例を示すタイムチャートである。
【図3】上記汚染検出装置の制御ブロック図である。
【図4】上記汚染検出装置に設けられているガスセンサの構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 ガスセンサ
11 汚染判別部(汚染判別手段)
12 基準値記憶部(基準値記憶手段)
13 基準値変更部(基準値変更手段)
14 基準値変更中断部(基準値変更中断手段)
出力信号レベル
基準値

Claims (4)

  1. 空気中のガス濃度の上昇に伴って清浄側から汚染側に出力信号レベル(L)が変化するガスセンサ(1)と、基準清浄状態での上記ガスセンサ(1)の出力信号レベル(L)を基準値(L)として記憶する基準値記憶手段(12)と、ガスセンサ(1)の出力信号レベル(L)を上記基準値(L)と比較して汚染の発生を判別する汚染判別手段(11)とを備える汚染検出装置であって、ガスセンサ(1)の出力信号レベル(L)に上記基準値(L)よりも清浄側への変化が生じたとき、上記基準値(L)をこのガスセンサ(1)の出力信号レベル(L)の変化から遅らせて清浄側のレベル値に変更する基準値変更手段(13)と、この基準値変更手段(13)による清浄側への基準値(L)の変更制御中に、ガスセンサ(1)の出力信号レベル(L)に基準値(L)よりも汚染側への変化が生じたとき、上記基準値(L)の変更制御を中断させる基準値変更中断手段(14)とを設けていることを特徴とする汚染検出装置。
  2. 上記基準値変更手段(13)が、ガスセンサ(1)の出力信号レベル(L)の清浄側への変化時点から基準値(L)を段階的に清浄側に逐次変更して上記出力信号レベル(L)に近づける制御を行うことを特徴とする請求項1の汚染検出装置。
  3. 上記基準値変更手段(13)が、ガスセンサ(1)の出力信号レベル(L)の清浄側への変化時点から所定の時間経過後に、基準値(L)を上記出力信号レベル(L)に近づける制御を行うことを特徴とする請求項1の汚染検出装置。
  4. 請求項1、請求項2又は請求項3の汚染検出装置を備え、前記汚染判別手段(11)からの信号に基づいて空気清浄に関連する所定の動作を行うことを特徴とする汚染検出装置を備えた空気調和装置。
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