JP3564054B2 - 超音波探触子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は超音波探触子に関し、特に音速制御素子を備えた超音波探触子に関する。
【0002】
【従来の技術】
超音波診断においては、一般に、超音波探触子が生体表面に当接され、その状態で超音波の送受波がなされる。特開平11−123188号公報には、音速制御素子を有する新しいタイプの超音波探触子が開示されている。かかる超音波探触子において、超音波の送受波を行う圧電素子の上面に音速制御素子が設けられ、その上面には1又は複数の整合層が設けられる。
【0003】
音速制御素子は、圧電素子と同様に圧電材で構成され、その圧電体に接続された外部回路の電気的インピーダンスを制御することにより、音速制御素子の超音波伝搬特性(音速)が変化し、それによって音速制御作用の程度を調整することが可能である。つまり、そこを通過する超音波の音速を変化させて、従来の電子的な遅延制御とは異なる機械音響的な遅延制御を行える。
【0004】
複数の圧電素子からなるアレイ振動子の生体側に、そのアレイ方向と直交するエレベーション方向に沿って、1圧電素子当たり複数個の音速制御素子を設ければ、当該エレベーション方向において音響レンズと同様の超音波集束作用のみならず、超音波ビームの偏向・走査作用を得ることができる。その場合においては、各圧電素子に個別的にシグナル側リードが設けられ、アレイ方向に沿った音速制御素子列ごとに個別的に音速制御側リードが設けられ、また、複数の圧電素子と複数の音速制御素子との間でグランド側リードが共用される。この構成によれば、アレイ方向及びエレベーション方向の両方向において超音波ビームのフォーカス形成だけではなく、超音波ビームの偏向・走査を実現でき、いわゆる2Dアレイ振動子や1.5Dアレイ振動子と同様の作用を得られる。しかも、従来よりも、信号線の本数を著しく削減できるという利点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の超音波探触子によると、音速制御素子の音響インピーダンスが変化するので、条件によっては、音速制御素子、整合層、生体間で音響インピーダンス的に整合が不十分となる。かかる整合が不十分となると、巨魁面で超音波の繰り返し反射が無視できなくなり、送信波及び受信波のリンキング(尾引き)が生じ、距離分解能が低下する。そして、形成されたフォーカスやビームパターンの劣化が生じ、その結果、超音波画像の画質が低下する。また、整合層の段数が2から3段階と少ない場合には、整合的に不十分となり、上記同様の問題が生じる。
【0006】
図7の従来例を用いて上記問題について具体的に説明する。図7の(B)にはアレイ振動子における1素子部分が拡大図として示されている。圧電素子10の非生体側にはシグナル側リード14を介してバッキング12が設けられ、圧電素子10の生体側には共通のグランド側リード16を介して音速制御素子18が設けられる。その音速制御素子18の生体側には音速制御側リード20を介して第1整合層22及び第2整合層24が設けられる。その第2整合層24の生体側の面が生体26に当接される。音速制御素子18は上記説明のようにそれを通過する超音波の音速を制御し、音響的な遅延制御を遂行する手段である。
【0007】
シグナル側リード14とグランド側リード16との間には送受信器36が接続され、音速制御側リード20とグランド側リード16との間にはインピーダンス制御部38が接続されている。このインピーダンス制御部38はそれが有する電気的なインピーダンスを可変することによって、それと閉回路を構成する音速制御素子18における音速を間接的に可変する手段である。
【0008】
図7(A)には、各位置における音響インピーダンスが示され、図示されるように、音速制御素子18は全体として一定の音響インピーダンスを有し、その音響インピーダンスは音速制御の程度に応じて変化する。例えば、符号32は最大の音響インピーダンスとなった場合を示し、符号34は最小の音響インピーダンスとなった場合を示し、符号30はその変化幅を示している。図7(B)に示す従来例では、2つの問題がある。まず第1に、音速制御素子18の生体側端部の音響インピーダンスが音速制御に伴って変化するので、音響インピーダンスが動的に変化しない整合層を使用した場合には、いかなる整合層を使用しても必ず不整合が生じ、不整合によって無視できない反射波が発生する。次に第2に、仮に上記第1の問題がないとしても、整合層が2から3段と少ない場合には、音速制御素子18と整合層22,整合層22と整合層24,整合層24と生体26の間において、無視できない反射波が生じる。なお、図7において、超音波の反射の様子が模式的に符号28で示されている。
【0009】
以上の問題に対処するため、音速制御を行うとともに音響インピーダンス整合を図ることが要望されている。
【0010】
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、音速制御素子を有する超音波探触子において、超音波の伝搬特性を改善できるようにすることにある。
【0011】
本発明の他の目的は、超音波画像の画質を向上させることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、送受波素子と、前記送受波素子の生体側に設けられ、前記送受波素子で送受波される超音波が通過する素子であって、当該素子内で超音波の音速を調整する機能を有する音速制御素子と、前記音速制御素子の生体側に設けられた整合層と、を含み、前記音速制御素子は、超音波通過方向としての厚み方向の全範囲又は一部範囲において、当該厚み方向に沿って音速制御作用が徐々に変化する傾斜特性を有することを特徴とする。
【0013】
望ましくは、音速制御素子における厚み方向の音速制御作用が生体側に向かって徐々に低下し、生体側端部においてゼロに近づく。音速制御素子の生体側端部の音響インピーダンスは、音速制御の程度によらずに、ほぼ一定の値となるので、音響インピーダンスが動的に変化しない整合層でも音響的に整合させることができる。
【0014】
上記の送受波素子は例えば圧電材料(PZT、複合材料など)で構成され、これと同様に、上記の音速制御素子も例えば圧電材料(PZT、複合材料など)で構成される。
【0015】
上記の厚み方向に沿って音速制御作用を変化させる場合には、連続的に変化させるのが望ましいが、段階的に変化させてもある程度の効果を得られる。
【0016】
各部材間に介在配置される電極、リードなどの部材の厚みは、超音波の波長λに比べて無視できるほど薄く設定するのが望ましい。そのような構成によれば、当該部分での音響インピーダンスの不整合を無視することができる。
【0017】
また、本発明は、1Dアレイ型(エレベーション方向に固定フォーカスを設定する場合)、1.5Dアレイ型(エレベーション方向に可変フォーカスを実行する場合)、2Dアレイ型(エレベーション方向にもビーム走査を行う場合)などの様々なタイプのアレイ振動子に対して適用することができる。また、本発明は、電子リニア走査、電子セクタ走査などの各種の電子走査方式が利用される場合にも適用可能である。
【0018】
望ましくは、前記音速制御素子の生体側端部の音響インピーダンスと生体の音響インピーダンスに基づいて、前記整合層の音響インピーダンス構成が設定される。この構成によれば、音速制御素子、生体間において、音響的に整合させることができ、超音波の反射を軽減できる。
【0019】
望ましくは、前記音速制御素子の音速制御作用は前記厚み方向における非生体側から生体側端部にかけて徐々に減少し、前記整合層の音響インピーダンスが前記音速制御素子の生体側端部の音響インピーダンスに相当する。
【0020】
望ましくは、前記音速制御素子は圧電材料からなり、前記音速制御素子は前記厚み方向に沿って圧電定数が変化する特性を有する。厚み方向に沿って圧電定数を変化させれば、厚み方向に沿って音速調整量を可変させることができ、同時に、音速制御に伴う音響インピーダンスの変化量も調整できる。
【0021】
なお、音速制御素子を製造する場合、例えば、最初に圧電材料の全体を分極処理し、次に圧電材料の両面に薄い電極層を形成した後、圧電材料の一方面に冷却媒体に接合させつつ、圧電材料の他方面を加熱媒体に接合させて、分極消失処理を行うようにしてもよい。その場合、他方面近傍では分極率がゼロとなり、そこから一方面側へ連続的な分極率の勾配が形成される。すなわち、圧電材料の他方面近傍では、圧電定数がほぼゼロとなり、そこから一方面側へ圧電定数の勾配が形成される。
【0022】
望ましくは、前記音速制御素子の生体側端部での圧電定数がゼロにされる。つまり、その端部では、音速制御にかかわらず音速は変化せず、同時に音響インピーダンスも変化しない。そこで、整合層の音響インピーダンスをその端部の音響インピーダンスに一致させておけば、音速制御にかかわらず音響インピーダンスの整合状態を維持できる。
【0023】
望ましくは、前記音速制御素子の圧電定数は、前記厚み方向において中間部から生体側端部にかけて徐々に減少する。厚み方向の全体に亘って圧電定数が変化するようにしてもよいが、音響インピーダンスを整合させるためには、部分的に圧電定数を減少させるだけで十分である。なお、圧電定数を変化させる代わりに、音速制御素子に対して高誘電率の非圧電材を一定勾配をもって混入しても同様の作用効果を得られる。
【0024】
望ましくは、前記音速制御素子は、前記厚み方向において中間部から生体側端部及び非生体側端部にかけて圧電定数が徐々に減少する特性を有する。また、望ましくは、前記音速制御素子は、生体側端部及び非生体側端部での圧電定数がゼロにされる。
【0025】
望ましくは、前記整合層は、非生体側端部から生体側端部にかけて徐々に音響インピーダンスが変化する傾斜特性を有する。このように整合層についても傾斜特性をもたせれば、超音波の不要反射をより防止して、超音波画像の画質を高められる。
【0026】
望ましくは、前記整合層の非生体側端部の音響インピーダンスは前記音速制御素子の生体側端部の音響インピーダンスに適合し、前記整合層の生体側端部の音響インピーダンスは生体の音響インピーダンスに適合する。
【0027】
望ましくは、前記整合層は互いに音響インピーダンスが異なる第1材料及び第2材料を含み、前記第1材料と前記第2材料の単位体積当たりの存在比が前記厚み方向に沿って変更される。
【0028】
望ましくは、前記第1材料は前記音速制御素子の生体側端部の音響インピーダンスと等しい音響インピーダンスを有し、前記第2材料は前記生体の音響インピーダンスと等しい音響インピーダンスを有する。第1材料は例えば音速制御素子と同様の材料(但し、非分極の材料)で構成することもできる。第2材料は、例えば液状のシリコーン(基材)にシリカ(添加材)などを添加した複合材料であってもよく、その場合においは、添加材の添加量によって第2材料の音響インピーダンスを調整することができる。
【0029】
望ましくは、前記第1材料は生体側に向けて尖塔形を有する複数の角錐要素を形成し、前記第2材料は前記複数の角錐要素の間の隙間に充填される。角錐要素は四角錐、六角錐の形状をもったものであってもよい。各角錐要素間のピッチは超音波の波長λに比べて十分に小さいのが望ましいが、例えば、λ/5以下であってもよい。複数の角錐要素は、例えば、板状の第1材料を縦横にV字型に研削することによって形成可能であるし、型抜き、エッチングなどの手法を利用して形成するようにしてもよい。
【0030】
なお、音速制御素子についても同様の構造をもたせることができる。すなわち、圧電材料で複数の角錐要素を形成し、それらの隙間に非圧電性高誘電率材料を充填するものである。
【0031】
(2)また、上記目的を達成するために、本発明は、N個の送受波素子と、前記N個の送受波素子の生体側に1送受波素子当たりM個設けられ、各送受波素子で送受波される超音波が通過する素子群であって、当該素子内で超音波の音速を調整する機能を有するN×M個の音速制御素子と、前記N×M個の音速制御素子の生体側に設けられたN×M個の整合層と、を含み、前記各音速制御素子は、超音波通過方向としての厚み方向の全範囲又は一部範囲において、当該厚み方向に沿って音速制御作用が徐々に変化する特性を有することを特徴とする。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
図1には、本発明に係る超音波探触子の原理が示されている。本発明に係る超音波探触子は、後に図4に示すようなアレイ振動子構造を有しているが、図1においてはそのアレイ振動子における一素子部分のみが拡大図として示されている。ちなみに(B)にはその一素子の断面図が模式的に示されており、(A)には各位置における音響インピーダンスの大きさが示されている。
【0034】
図1(B)において、圧電素子10は超音波の送受波を行う素子であり、この圧電素子10は例えばPZTあるいは複合圧電材料などによって構成されるものである。その非生体側にはシグナル側リード14を介してバッキング12が設けられている。バッキング12は圧電素子10から後方に放射される不要な超音波を吸収するための公知の部材である。
【0035】
圧電素子10の生体側には、グランド側リード16を介して音速制御素子50が設けられている。この音速制御素子50は、上述したように、それを通過する超音波の音速を調整可能な部材であり、具体的には後に説明するインピーダンス制御部38が有する電気的な内部インピーダンスを可変することにより、そのインピーダンス制御部38と閉回路を構成する音速制御素子50に関して、その音響的な特性を調整することができ、つまり、そこを通過する超音波の音速を制御することができる。この音速制御素子自体については上述したように例えば特開平11−123188号公報などにも開示されている。本実施形態において、音速制御素子50は、圧電素子10と同様の材料、例えばPZTや複合圧電材料などによって構成されている。
【0036】
この音速制御素子50は、音速制御に伴ってそれが有する音響インピーダンスが変化するが、本実施形態の音速制御素子50においては、中間部分から生体側の端部にかけて圧電定数が徐々に減少されており、その結果、音速制御の作用はその中間部から生体側端部にかけて減少している。そして、その生体側端部においては圧電定数がゼロとされており、すなわち音速制御によっても当該端部における音響インピーダンスは一定値に維持されている。その結果、図1(A)に示すように、音速制御を行うと音速制御素子50における音響インピーダンスがその厚み方向に沿って符号54及び符号56に示すような変化を生ずるが、その場合においてもその中間部分から生体側端部にかけて圧電定数に勾配付けがなされているため、後に説明する整合層52との間における音響インピーダンスの段差を解消でき、すなわち、音速制御素子の状態がどのようなものであっても、その音速制御素子50から整合層52にかけて音響インピーダンスを連続させることが可能である。ちなみに、図1(A)において符号30は音速制御に伴う音響インピーダンスの変化量を示している。
【0037】
なお、圧電素子10とグランド側リード16を介して接する音速制御素子50の非生体側端部においては、音速制御素子50が圧電素子10と同質の材料で構成されていても、音響インピーダンスが音速制御に伴って変化することになるので、反射超音波の発生を回避できない。そこで、望ましくは、音速制御素子50の非生体側においても、圧電定数の勾配付けを施して非生体側端部における音響インピーダンス変動をなくし、音響インピーダンスの整合を図る。
【0038】
また、本実施形態においては、音速制御素子50の厚み方向における中央部分から生体側端部にかけて連続的に圧電定数を変化させたが、その厚み方向の全体にわたって非生体側端部から生体側端部にかけて圧電定数を連続的に変化させるようにしてもよい。また、完全に連続的に変化させるのではなく、段階的に変化させても一定の効果を得ることができる。
【0039】
図1(B)において、音速制御素子50の生体側には、音速制御側リード20を介して整合層52が設けられている。この整合層52は音速制御素子50と生体26との間において音響インピーダンスのマッチングを行うための部材であり、本実施形態においては、その整合層52についても圧電定数が厚み方向に沿って連続的に可変設定されている。具体的には、整合層52の非生体側端部においては音速制御素子50の生体側端部と同じ音響インピーダンスが設定され、一方、整合層52の生体側端部においては生体26と同じ音響インピーダンスが設定されている。したがって、音速制御素子50及び整合層52の両者について傾斜型の音響インピーダンス特性が設定されているため、圧電素子10から送波される超音波を内部反射を極力防止して効率的に生体26へ伝達することが可能であり、また生体26から帰ってくる超音波を内部反射を極力排除して効率的に圧電素子10に伝達することが可能である。したがって上述した各種の問題、すなわちリングダウンなどを効果的に抑制してシャープな超音波画像を形成することが可能となる。
【0040】
ちなみに、グランド側リード16及び音速制御側リード20においては、それが銅などの金属によって構成されることから、理論的には音響インピーダンスの大きな段差が生じることになるが、それらの厚みを超音波の波長に比べて無視できるほど薄くしておけば、事実上、そこにおける音響インピーダンスの段差は問題とならない。
【0041】
なお、図1に示す構成例では、1つの整合層のみが利用されていたが、2つの整合層を利用し、そのうちの一方又は両方について上述した傾斜型の音響インピーダンス特性を付与するようにしてもよい。さらに、図1に示す実施形態では音響レンズが設けられていないが、必要に応じて音響レンズを設けるようにしてもよい。
【0042】
図1(B)において、圧電素子10の一方面及び他方面には図示されていない薄い電極層が形成されており、それらには上記の通りシグナル側リード14及びグランド側リード16が電気的に接続されている。そして、それらのリード14,16の間には送受信器36が接続されており、この送受信器によって圧電素子10に送信信号が供給され、また圧電素子10にて超音波が受波された場合に生ずる受信信号が送受信器36によって受信されている。
【0043】
音速制御素子50についても、上記の圧電素子10と同様に、その一方面及び他方面に図示されていない薄い電極層が形成され、それらにはグランド側リード16及び音速制御側リード20が電気的に接続されている。それらのリード16,20の間にはインピーダンス制御部38が接続されている。このインピーダンス制御部38は上述したようにそれが有する内部インピーダンスを可変することによって、音速制御素子50の機械音響的な特性を制御するものである。具体的には、その電気的インピーダンスの調整により音速制御素子50の内部における音速に関わる作用を制御することができる。
【0044】
本実施形態においては、図1(B)に示されるように、グランド側リード16が共通のグランドを構成しており、その結果、外部に引き出される信号線の本数を削減することができる。図2には、音速制御素子50における厚さ方向に沿った圧電定数の変化がグラフとして表されている。圧電素子側すなわち非生体側の端部においては圧電定数は所定値Kであり、厚み方向の中間部分から整合層側すなわち生体側の端部にかけて圧電定数が徐々に減少しており、最終的に生体側の端面においては圧電定数がゼロとされている。このような傾斜特性を設定する方法については、後に図5及び図6を用いて説明する。
【0045】
図3には、図1に示した整合層52の一例が示されている。図3(A)は整合層52の縦断面を示しており、図3(B)は整合層52を生体側から見た様子が示されている。本実施形態においては、整合層52が2つの材料によって構成されており、具体的には第1部材と第2部材とによって構成されている。
【0046】
ここで、第1部材は生体側に頂部を向けた複数の角錐要素60を構成しており、例えば角錐要素60は四角錐である。それらの隙間には第2部材62が充填されている。この場合において、第1部材の音響インピーダンスを音速制御素子50の生体側端部における音響インピーダンスと同等の音響インピーダンスをもった部材で構成するのが望ましく、また第2部材62としては、生体の音響インピーダンスと同等の音響インピーダンスをもった部材で構成するのが望ましい。そのように構成すれば、整合層52における非生体側端部において、音速生後素子50の生体側端部と同じインピーダンスを実現することができ、また整合層52における生体側端部において、生体と同じインピーダンスを実現することが可能となる。ここで、第1部材60は、例えばPZTや複合材料などの音速制御素子50と同等の材料で構成することもできる。また第2部材62としては、ポロウレタンやシリコンゴムなどの基材にシリカ粉末や酸化チタンなどの添加物を混入することによって構成することができ、その場合においては基材への添加物の添加量を調整することにより、被検体と同一の音響インピーダンスを実現することができる。
【0047】
例えば図3に示す音響整合層を製造する場合、平板状の圧電材料に対して縦及び横の両方向からV字型の溝をマトリックス状に形成する。その場合においては、例えばその圧電材料を傾けた状態でカッティングを行うことによりV字斜面の一方を形成し、また逆に傾けた状態でカッティングを行うことによりV字斜面の他方を形成するようにしてもよい。そして、そのような加工によって複数の角錐要素60が形成された後に、それらの隙間に上述した第2部材を流し込み、その後、真空中で気泡を除去した後に常温、常湿、常圧下で自然放置し、第2部材を固化させる。もちろん、複数の角錐要素60を形成する場合には、切削に代えて各種の形成法を用いるようにしてもよい。角錐要素60の相互間のピッチは超音波の波長(λ)に比較してできるだけ小さい方が望ましく、例えばλ/5程度であってもよい。
【0048】
図4には、本発明に係る超音波探触子の好適な実施形態として2Dアレイ振動子が示されている。ここで、(A)にはその2Dアレイ振動子の上面図が示され、(B)には2Dアレイ振動子の正面図が示されており、(C)には2Dアレイ振動子の側断面図が示されている。
【0049】
各図を参照すれば理解されるように、この2Dアレイ振動子は、Y方向に沿って配列された短冊状の複数の圧電素子10と、その上方においてX方向及びY方向にマトリックス状に配列された複数の音速制御素子50と、その上方にマトリックス状に設けられた複数の整合層52と、複数の圧電素子10の下面側に設けられたバッキング12とで構成されている。ここで、圧電素子10とバッキング12との間には、各圧電素子10ごとにシグナル側リード14が設けられており、また圧電素子10と複数の音速制御素子50との間には各圧電素子10ごとにグランド側リード16が設けられている。すなわちシグナル側リード14及びグランド側16は図においてX方向に伸長しており、かつY方向に整列しているものである。
【0050】
図示されるように、1つの圧電素子10には、その長手方向すなわちX方向に沿って複数の音速制御素子50が設けられており、各音速制御素子50ごとに整合層52が設けられている。音速制御素子50と整合層52との間にはY方向に沿って伸長する音速制御側リード20が設けられている。すなわち、この音速制御側リード20は、Y方向に沿って整列する音速制御素子列ごとに設けられている。
【0051】
上記構成において、圧電素子10の間、音速制御素子50の間及び整合層52の間には超音波伝搬面でのギャップが形成されており、それによって相互間におけるクロストークが防止されている。そのようなギャップには音響的にみて隔絶作用をもった充填材を充填するようにしてもよい。
【0052】
図4に示す構成例においても、音速制御素子50及び整合層52の両者が上述した傾斜特性を有しているため、アレイ振動子内部における超音波の反射を極力防止して超音波の伝搬効率を良好にすることが可能となる。ちなみに、図4に示す構成例では、Y方向に沿ってN個の圧電素子10が設けられ、これに対応して各圧電素子10ごとにM個の音速制御素子50が設けられ、その結果、トータルでN×M個の音速制御素子50が設けられている。また、これに対応してN×M個の整合層52が設けられている。このような構成によれば、Y方向すなわちアレイ方向に沿って超音波ビームを走査できると共に、X方向についても超音波ビームの走査を行えるという利点がある。またその場合においても信号線の本数は従来の2Dアレイ振動子が(N×M)本必要であるのに対して、N本で済み、著しく削減することが可能である。
【0053】
図5には、図1に示した音速制御素子50の製造方法がフローチャートとして示されている。まずS101では、板状の圧電体が用意され、その圧電体が所定の寸法に加工される。その後、各面の平面度を向上して厚さ精度を確保するため当該圧電体の一方面及び他方面に対してラッピングを行う。
【0054】
次に、S102において、圧電体の一方面及び他方面に対して電極層を形成する。その場合においては、下地としてニッケルクロム層を0.1μm程度の厚さにスパッタ法などを利用して形成して、その上に金層を0.5μm程度の厚さに同じくスパッタ法などを利用して形成する。
【0055】
S103では、分極処理が行われる。キューリー温度が150℃と低いPZTなどを用いる場合には、厚さ1mmあたり直流電圧1500V程度を5分間加えることによって分極処理を行う。その後、圧電体における分極状態を安定化させるために、常温、常湿、常圧の状態において3日間程度放置する。
【0056】
次に、S105においては、上述した傾斜特性を設定するための処理を行う。具体的には図6に示すように、圧電体68の一方面に形成された電極層70に対して冷却媒体64を接触させ、一方、圧電体68の他方面に形成された電極層72に対して加熱媒体66を接触させ、その状態において加熱冷却処理を行う。ここで、冷却媒体64としては、中に水を通した銅板体などを用いることができ、また加熱媒体としては内部にヒーターを内蔵した銅板体などを利用することができる。その場合においては加熱温度がキューリー温度以上に設定される。分極率の勾配は加熱時間と加熱温度によって制御することが可能である。また傾斜特性を設定する極性は正極及び負極のどちらでもよい。上記のような手法によれば、音速制御素子50の冷却媒体側における分極を消失させることなくその加熱媒体側における分極を消失させることができる。すなわち、このような処理により、冷却媒体側から加熱媒体側に徐々に圧電定数が減少する傾斜特性を有し、加熱媒体端部においてゼロとなる圧電体を得ることができる。また、さらにこの圧電体に対し冷却媒体側と加熱媒体側を入れ換えて同様な加熱冷却を行うこともできる。この場合には、中央部から両端部にかけて圧電定数が徐々に減少する傾斜特性を有し、両端部においてゼロとなる圧電体を得ることができる。その後、その圧電体について必要に応じて縦横のV溝入れ処理がなされ、また他の部品がそれに組み付けられることになる。そして最終的に図4に示したようなアレイ振動子が構成される。なお、上記実施形態においては、分極処理を行った後に部分的に分極消失処理を行っていたが、例えば高誘電率の非圧電材料を圧電体に対して混入し、その混入割合を厚み方向に沿って連続的に変化させることにより上記同様の特性を得ることもできる。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、音速制御素子を有する超音波探触子において、内部での超音波の反射などの問題を軽減して超音波画像の画質を向上できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る超音波探触子の原理を説明するための図である。
【図2】音速制御素子の厚み方向における圧電定数を示す図である。
【図3】整合層の構成例を示す図である。
【図4】本発明に係る2Dアレイ型振動子を示す図である。
【図5】音速制御素子の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【図6】分極消失処理を説明するための図である。
【図7】従来の振動子における問題を説明するための図である。
【符号の説明】
10 圧電素子、12 バッキング、14 シグナル側リード、16 グランド側リード、20 音速制御側リード、26 生体、36 送受信器、38 インピーダンス制御部、50 音速制御素子、52 整合層。
Claims (14)
- 送受波素子と、
前記送受波素子の生体側に設けられ、前記送受波素子で送受波される超音波が通過する素子であって、当該素子内で超音波の音速を調整する機能を有する音速制御素子と、
前記音速制御素子の生体側に設けられた整合層と、
を含み、
前記音速制御素子は、超音波通過方向としての厚み方向の全範囲又は一部範囲において、当該厚み方向に沿って音速制御作用が徐々に変化する傾斜特性を有することを特徴とする超音波探触子。 - 請求項1記載の超音波探触子において、
前記音速制御素子の生体側端部の音響インピーダンスと生体の音響インピーダンスに基づいて、前記整合層の音響インピーダンス構成が設定されたことを特徴とする超音波探触子。 - 請求項1記載の超音波探触子において、
前記音速制御素子の音速制御作用は前記厚み方向における非生体側から生体側端部にかけて徐々に減少し、
前記整合層の音響インピーダンスが前記音速制御素子の生体側端部の音響インピーダンスに相当することを特徴とする超音波探触子。 - 請求項1記載の超音波探触子において、
前記音速制御素子は圧電材料からなり、
前記音速制御素子は前記厚み方向に沿って圧電定数が変化する特性を有することを特徴とする超音波探触子。 - 請求項4記載の超音波探触子において、
前記音速制御素子の圧電定数は、前記厚み方向において中間部から生体側端部にかけて徐々に減少することを特徴とする超音波探触子。 - 請求項5記載の超音波探触子において、
前記音速制御素子の生体側端部での圧電定数がゼロにされたことを特徴とする超音波探触子。 - 請求項4記載の超音波探触子において、
前記音速制御素子は、前記厚み方向において中間部から生体側端部及び非生体側端部にかけて圧電定数が徐々に減少する特性を有することを特徴とする超音波探触子。 - 請求項7記載の超音波探触子において、
前記音速制御素子は、生体側端部及び非生体側端部での圧電定数がゼロにされたことを特徴とする超音波探触子。 - 請求項1記載の超音波探触子において、
前記整合層は、非生体側端部から生体側端部にかけて徐々に音響インピーダンスが変化する傾斜特性を有することを特徴とする超音波探触子。 - 請求項9記載の超音波探触子において、
前記整合層の非生体側端部の音響インピーダンスは前記音速制御素子の生体側端部の音響インピーダンスに適合し、
前記整合層の生体側端部の音響インピーダンスは生体の音響インピーダンスに適合することを特徴とする超音波探触子。 - 請求項10記載の超音波探触子において、
前記整合層は互いに音響インピーダンスが異なる第1材料及び第2材料を含み、
前記第1材料と前記第2材料の構成比が前記厚み方向に沿って変更されたことを特徴とする超音波探触子。 - 請求項11記載の超音波探触子において、
前記第1材料は前記音速制御素子の生体側端部の音響インピーダンスと等しい音響インピーダンスを有し、
前記第2材料は前記生体の音響インピーダンスと等しい音響インピーダンスを有することを特徴とする超音波探触子。 - 請求項12記載の超音波探触子において、
前記第1材料は生体側に向けて尖塔形を有する複数の角錐要素を形成し、
前記第2材料は前記複数の角錐要素の間の隙間に充填されることを特徴とする超音波探触子。 - N個の送受波素子と、
前記N個の送受波素子の生体側において1送受波素子当たりM個設けられ、各送受波素子で送受波される超音波が通過する素子群であって、当該素子内で超音波の音速を調整する機能を有するN×M個の音速制御素子と、
前記N×M個の音速制御素子の生体側に設けられたN×M個の整合層と、
を含み、
前記各音速制御素子は、超音波通過方向としての厚み方向の全範囲又は一部範囲において、当該厚み方向に沿って音速制御作用が徐々に変化する特性を有することを特徴とする超音波探触子。
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