JP3563753B2 - 管式加熱炉の加熱方法と装置 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、燃焼した後の排気ガスの熱を燃焼用空気等の酸化剤の加熱に使用するようにした管式加熱炉に関する。
【0002】
【従来の技術】
管式加熱炉は、石油精製、石油化学、一般化学を含めた各種のプロセスにおいて用いられ、管内を流れる被加熱流体を直火により加熱するものである。
【0003】
従来から使用されている管式加熱炉は、図8に示すように、鋼板製ケーシングの内側を耐火断熱材により内張した燃焼室100内に加熱管101を配置するとともに燃焼装置102を設け、この燃焼装置102により加熱管101内を流れるナフサやガソリン等の被加熱流体を加熱するようにしたものである。
【0004】
この管式加熱炉は、従来から火炎の輻射と対流を利用して加熱することが多く、主として輻射伝熱により加熱される部分を輻射部103、主として対流伝熱により加熱される部分を対流部104とし、被加熱流体の流れは、熱効率を高める観点から、通常燃焼ガスの流れと向流式としている。各加熱管101は、U型継手によりシリーズに連結し、いわゆるコイルパスが形成されており、被加熱流体は最初に入口管106から対流部104に流れ、予熱された後に輻射部103内に入り、所定の温度まで加熱されると出口管107より流出する。なお、図8において、符号「105」は煙突である。
【0005】
このような管式加熱炉の熱効率としては、通常60〜85%であるが、図9(図8に示す部材と同一部材には同一符号を付している)に示すような、大型の管式加熱炉でも、前記対流部104による予熱に流体入口温度の制約があることから90%の熱効率を得ることは困難である。したがって、この管式加熱炉に、燃焼用空気等からなる酸化剤を予熱する予熱器108や廃熱ボイラーを付設して熱効率を90%以上まで上げることもある。
【0006】
ここに、「酸化剤」とは、一般に純酸素、空気、酸素富化空気等のような分子状酸素を総称するものである。しかし、特別の場合には酸化剤としてハロゲン、一酸化窒素のような酸化性元素あるいは化合物を用いても良い。
【0007】
なお、図9において、符号「109」は押込送風機、「110」は誘引送風機である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような管式加熱炉は、対流部104の伝熱面積が輻射部103の2倍以上多いにも拘らず、熱吸収量は輻射部103の半分以下であるため、小型加熱炉にあっては投資効果の点から、対流部104を廃止し輻射部103のみとすることがあり、この結果、予熱が不十分となり熱効率の低い管式加熱炉となることがある。
【0009】
また、管式加熱炉には、例えば、接触改質装置用加熱炉のように、炉全体としては大きな吸収熱量を必要とするものの、プロセス上の要求から、被加熱流体の入口流体温度が高い温度(440℃前後)でしかも管内許容圧力損失を著しく小さく(0.2〜0.3Kg/cm)設定しなければならないことがある。この場合には、対流部104に輻射部103と同じ被加熱流体を流すことができず、輻射部103のみにより加熱しなければならないため、達成できる熱効率には自ずから限界が生じ、性能向上を図ることができないという不具合がある。
【0010】
さらに、図9に示す大型の管式加熱炉は、酸化剤予熱器108や廃熱ボイラー等を付設しているので、炉の長手方向長さLはともかく、横方向の長さLが大きくなり、広い敷地が必要となり、しかもこの酸化剤予熱器108等は炉本体並みの建設費が必要となり、結果的に装置全体のコストがアップするという不具合もある。
【0011】
本発明の目的は、上述した従来技術に伴う課題を解決し、被加熱流体が管式加熱炉の加熱装置内に流入するときの入口流体温度あるいは管内許容圧力損失値の制約を受けることのない高い熱効率と低公害性を有し、炉内圧力変動の少ないコンパクトで低廉な管式加熱炉を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成する本発明は、内部に被加熱流体が流通する加熱管を燃焼室内に配置するとともにこの燃焼室内に火炎を噴射する燃焼装置を設け、この燃焼装置から噴射される火炎の熱により前記加熱管を介して内部の被加熱流体を加熱する管式加熱炉において、前記燃焼装置は、バーナーと、このバーナーに酸化剤を供給する酸化剤供給通路および、燃焼した後の排気ガスを燃焼室 (H) 外に排出する排気ガス排出通路を有するダクト部と、前記バーナーを囲むように設けられ前記排気ガスの顕熱により前記酸化剤を加熱する通気性のある蓄熱体と、前記酸化剤供給通路より吐出された酸化剤が前記蓄熱体の一部を通過する酸化剤通過領域が経時的に変化するように前記ダクト部と蓄熱体を相対的に駆動する駆動部と、を有するものにより構成し、前記燃焼室内で、端部が前記燃焼室の炉床部に設けられた多数の逆U字状をした前記加熱管により空間を形成し、当該空間内に前記炉床部に設けた前記蓄熱体からの火炎を噴射し、前記加熱管内を流れる被加熱流体を火炎の輻射熱により加熱する輻射部を形成したことを特徴とする。
【0015】
【作用】
本発明に係る焼却炉にあっては、対流部がなく輻射部のみを有する管式加熱炉の加熱装置となるので、バーナーの火炎からの熱は、輻射部及び蓄熱体においてすべて吸収され、加熱管全長は短くでき、管内許容圧力損失も小さくなる。したがって、プロセス上の要求から流体入口温度あるいは管内許容圧力損失値による制約を受けることなく、所定の加熱を行うことができる。
【0016】
また、排気ガスが燃焼室外に排出される時には、相対的に回転する蓄熱体とダクト部とを通って排出されるので、排気ガスの熱の大部分が燃焼酸化剤の加熱に利用され、排気ガスは低温になり系外に排出される。しかも、酸化剤予熱器とバーナーとが一体となった燃焼装置であるため、ダクト部での熱放散がなく、熱効率は構造的にも向上する。
【0017】
さらに、排気ガスは、蓄熱体に対し相対的に回転するダクト部とを通って排出されるので、蓄熱体部分の熱交換作用により排気ガスの熱の大部分が燃焼用酸化剤の加熱に利用され、排気ガスの温度も時間によらず一定となり、低温で系外に排出される。しかも燃焼が連続して行われるため、燃焼に伴なう炉内圧力変動も無視できる程度にまで少なくなる。また、排気ガスは外部に排出されるときに火炎の周囲より蓄熱体に吸引されるので、排気ガスと火炎が混合する、所謂排気ガス内部再循環作用が発生し、この結果NO値が激減し、低公害性が発揮される。
【0018】
加えて、酸化剤予熱器や廃熱ボイラー等の付設も不要となるので、炉全体の大きさは小さくなり、広い敷地は不要となり建設費も低減でき、コンパクトで低廉な管式加熱炉となる。
【0019】
【実施例】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施例に係る管式加熱炉の概略断面図、図2は図1の2−2線に沿う断面図、図3は燃焼装置の断面図、図4は図3の4−4線に沿う断面図、図5は、本発明の燃焼装置の実験結果を示すグラフ、図6は同燃焼装置のNO排出値に係る実験結果を示すグラフ、図7は同燃焼装置の炉内圧力変動に係る実験結果を示すグラフである。
【0021】
図1において、管式加熱炉10は、接触改質装置に用いられる箱型の加熱炉であり、管式加熱炉10の内部には、所定の高さの仕切壁11によって仕切られた4つの燃焼室H〜H(符号HはH〜Hの総称)が形成されている。各燃焼室H〜Hは、紙面と直交する長手方向の寸法L(図2参照)が十数mと長く、これら各燃焼室H〜H内には、長手方向に所定の間隔をもって配置された逆U字状の加熱管Pが複数本設けられ、これら複数の加熱管Pによって輻射部が構成されている。各加熱管Pの端部は、燃焼室の壁の一部である炉床部12を貫通して伸延され、この炉床部12の下部に配置されて長手方向に伸びるヘッダーとして機能する入口管Iと出口管Oとにそれぞれ接続されている。入口管Iは、各加熱管Pにプロセス流体を供給するもので、図示しない熱交換器を介してプロセス流体が供給されるようになっており、隣接する燃焼室Hの出力管Oと図示しない配管及びリアクタを介して相互に接続されている。なお、入口管I及び出口管Oは、基台13上に支持されている。
【0022】
前記燃焼室Hの直上には、天井壁14に通路15が開設され、この通路15に排気ガスダンパー16が回動自在に設けられている。
【0023】
前記燃焼室Hに設けられた燃焼装置30は、後に詳述するが、多数の逆U字状の加熱管Pにより区画形成された空間S(符号Sは空間S〜Sの総称)内に向かって火炎を噴射し、火炎の輻射熱により加熱管Pを介して内部の被加熱流体を加熱するもので、図には各燃焼室Hに対して1つの燃焼装置30のみを示している。この燃焼装置30への燃焼用酸化剤は、本実施例では空気であり、押込送風機17および酸化剤供給管18により供給され、燃焼装置30からの排気ガスは、誘引送風機19および排出管20により排出される。
【0024】
図3に示すように、燃焼装置30は、いわば回転式蓄熱型バーナーと称することができるもので、上方に向かって火炎を噴射するバーナー31と、前記燃焼室Hの壁体である前記炉床部12に取付けられた熱交換部材として機能する蓄熱体32と、ダクト部33とを有している。
【0025】
まず、前記蓄熱体32は、圧力損失が低くて熱容量の大きい耐熱性材料であって通気性のあるもの、例えばハニカム状の孔が多数開設されたセラミックス等により構成することが好ましい。このようにすれば、排気ガスから熱回収する際に排気ガスが酸露点温度以下に低下しても、セラミックス自体の耐蝕性のため蓄熱体を低温腐蝕させることがない。
【0026】
ここに、耐熱性材料としては、使用条件によって適宜選択される。各種の酸化物、窒化物、炭化物などのセラミックスのほかにステンレス鋼やハステロイのような耐熱耐酸化性金属材料やセラミックスと金属材料あるいはセラミックスと高融点材料との複合材料を用いることができる。セラミックスとしては、アルミナ、シリカ、炭化珪素、窒化珪素、サイアロン等を用いても良いが、本発明においては、耐熱強度、加工し易さ、熱容量等の点からコージェライト及びムライトが特に好ましい。
【0027】
そして、前記蓄熱体32の取付けは、炉床部12に開設された開口部34内に設置し、固定リング35により支持する。
【0028】
この蓄熱体32の反燃焼室側には、バーナー31に対し燃焼用酸化剤を供給ための酸化剤供給通路36と、燃焼室H内で燃焼した後の排気ガスを外部に排出するための排気ガス排出通路37が形成された前記ダクト部33が、前記蓄熱体32と連通するように設けられている。
【0029】
前記酸化剤供給通路36は、1個以上の出口部分から前記蓄熱体32に向かって酸化剤を吐出するようにしており、蓄熱体32の中心に設けられたバーナー31は、通常のガスあるいは油バーナーであり、その先端が燃焼室H内に臨んでいる。燃焼用酸化剤は、前記酸化剤供給管18からダクト部33内に形成された酸化剤供給通路36を通り、バーナー31を囲むように設けられた蓄熱体32を経て、バーナー31の周囲から噴出されるようになっている。
【0030】
また、前記開口部34の外側口縁部には、バーナー31を支持するためのプレート38が設けられ、このプレート38に本体ケース39のフランジ40がガスケットGを介してボルト41により連結され、本体ケース39と蓄熱体32が連通するようになっている。
【0031】
この本体ケース39は、前記酸化剤供給管18からの燃焼用酸化剤が導入される酸化剤入口部42と、排気ガスを前記排出管20に排出する出口部43と、前記酸化剤入口42と前記蓄熱体32との間に設けられたダクト部33と、このダクト部33を回転させる駆動部45とを有している。
【0032】
前記出口部43の胴部43a内には、ダクト部33の大径部33aが設けられている。この大径部33aは、酸化剤供給通路36の一部であり、図4に示すように、断面が例えば鋭角扇状とされている。この胴部43a内は、1個以上の酸化剤供給通路36により分割された状態となっており、この本体ケース39内を挿通するバーナー31の周囲に、周方向に酸化剤供給通路36と排気ガス排出通路37が交互に所定間隔に配置されている。なお、酸化剤供給通路36の出口部分には、多数の小孔が開設された端板により閉塞し、吐出する酸化剤の流速を高めても良い。
【0033】
この酸化剤供給通路36と排気ガス排出通路37とは、蓄熱体32内で独立の通路となるように形成され、例えば、酸化剤供給通路36は、酸化剤入口部42から流れて来る酸化剤をダクト部33を経て小径部33bから次第に拡開された大径部33aを通って蓄熱体32に向って流出するようにしている。
【0034】
また排気ガス排出通路37は、蓄熱体32から排出された排気ガスを断面が、例えば鈍角扇状とされた部分を通って出口部43における胴部43aの内部空間43bに導くように構成されている。
【0035】
前記駆動部45は、出口部43における胴部43aの反蓄熱体側の端部を閉塞するように設けられた閉塞板49の内端部と、ダクト部33における小径部33bの右端部に設けられた支持板50の内端部とにそれぞれ設けられたシール部材Sと軸受Jによりダクト部33を回動可能に支持し、両軸受J,J間に固着されたスプロケット51とモータMにより回転される駆動歯車52とをチェーン53を介して連結したものである。
【0036】
このように、本実施例では、ダクト部33を2つの軸受J,Jによりバランス良く支持しているので、ダクト部33は比較的高速で回転させることができ、回転速度を速くすれば熱効率は向上する。ダクト部33の回転速度と熱効率との関係を実験により調べた結果、図5に示すようになった。
【0037】
実験は、燃料としてLPG を使用し、本実施例の燃焼装置を使用して燃焼させたとき、ダクト部33の回転速度に対する排気ガスの温度、排気ガスの残存酸素濃度、炉内温度等を測定することにより行なった。図5の横軸はダクト部33の回転速度、縦軸は温度である。
【0038】
この実験結果では、ダクト部33の回転速度が1r.p.m.以下であれば、排気ガスの温度は急激に上昇し、1r.p.m.以上となると、排気ガス温度の低下する割合が少なくなることが判明した。
【0039】
ここに、熱効率は、入熱量と排気ガスの熱損失量との関係から求めることができ、次の式により与えられる。
【0040】
η=(Q−C・G・T)・100/Q
ここに、η:熱効率
Q:LPG ガスの熱容量
:排気ガスの比熱
G:排気ガスの量
T:排気ガスの温度
この式に前記実験により得られた結果を代入して熱効率を求める。例えば、2r.p.m.という比較的高速で回転しているときを選択すれば、これに対応する排気ガスの温度は250℃である。したがって、このときの熱効率は、
η=(25000 −0.32・26・250 )×100 /25000
=91.68(%)
という値となり、90%を越える優れた熱効率を発揮することが判明する。
【0041】
このように比較的高速回転しているときに優れた熱効率を発揮するのは、ダクト部33の回転速度を上げると、ダクト部33から吐出される酸化剤によって蓄熱体32が大きく温度低下しない状態で排気ガスにより加熱されることになるので、吸入酸化剤の温度はより高くすることができ、熱効率は向上することになるものと考えられる。
【0042】
前記酸化剤入口部42は、基管54と分岐管55とをT字状に連結したもので、この基管54の一端は蓋体56により閉塞され、他端は、前記ダクト部33の小径部33bの端部に設けられた支持板50に取付けられている。なお、図3中の符号「57」は、整流板である。
【0043】
さらに、ダクト部33の中心軸に沿って前記バーナー31に燃料を供給する燃料パイプ58が設けられているが、バーナー31に対してモーティブ空気を供給するパイプ59を設け、このパイプ59から放出されるモーティブ空気の量を調節することによりバーナー31から放射される火炎の大小あるいはシャープさなどを調節している。
【0044】
モーティブ空気は、理論空気量に対する比率が2〜15%とすることが好ましい。
【0045】
なお、モーティブ空気の代わりにパイプ59から蒸気を放出しても良い。この場合、図6に示す通り、モーティブ空気を放出したときと同様の火炎安定性を維持したままNO排出値は低下する。モーティブ蒸気の量は、燃料に対する比率が燃料の発熱量10,000Kcal当たり0.1〜0.8Kgとすることが好ましい。
【0046】
また、炉内圧力の時間経過による変動の程度を調べたところ、実験炉は1台のバーナーを取付けた炉内変動が最も発生しやすい状況にあったにも拘らず、図7に示す通り、その変動は僅かである。
【0047】
次に実施例の作用を説明する。
【0048】
まず、排気ガスダンパー16を作動し、炉頂部の通路15を閉塞した状態で、押込送風機17及び誘引送風機19を起動し、モータM(図3参照)を回転しつつバーナー31に着火すると、燃料パイプ58を通りバーナー31より噴射された燃料流は、酸化剤供給通路36及び蓄熱体32を通って流れてきた燃焼用酸化剤により酸素補給を受け火炎を形成し、この火炎は、加熱管Pにより区画形成された空間S内に噴射され、その輻射熱により加熱管P内を流れる被加熱流体が加熱される。
【0049】
本実施例の接触改質装置に用いられる管式加熱炉10は、対流部がなく輻射部のみを有するものとして構成されているので、火炎の輻射熱は輻射部や蓄熱部において大部分吸収されることになる。
【0050】
しかして、この輻射部の熱流束は、一般に既述の対流部のそれよりも大きいので、加熱管Pの全長は対流部を有する従来の加熱炉のものよりも短くでき、この結果、全長が短くできる分だけ管内許容圧力損失も小さくなる。
【0051】
したがって、接触改質装置に用いられる管式加熱炉のように、プロセス上の要求から被加熱流体の入口流体温度が高温で、管内許容圧力損失も小さくしなければならない場合でも、輻射部による加熱のため入口流体温度は高温にでき、また前述のように管内許容圧力損失も小さくできるので、これら流体入口温度あるいは管内許容圧力損失値による制約を受けることがなく、所定の加熱を行うことができる。
【0052】
燃焼室H内で加熱管Pを加熱した後の高温の排気ガスは、燃焼室H外に排出されるが、この排気ガスは、蓄熱体32を通って排気ガス排出通路37より排出される。この蓄熱体32は、排気ガスの流通により加熱され高温となっているので、この蓄熱体32に回転する酸化剤供給通路36から吐出された燃焼用酸化剤を流入させると、この燃焼用酸化剤は蓄熱体32により加熱される。この加熱は、蓄熱体32に向って酸化剤供給通路36から酸化剤を吹出して直ちに燃焼用酸化剤を加熱するという、いわば即時加熱方式となっているので、排気ガスの熱の大部分が燃焼用酸化剤の加熱に利用され、熱のロスがなく、高温の燃焼用酸化剤が効率良く作られ、排気ガスの温度も時間によらず一定となり、排気ガスは低温になり系外に排出される。
【0053】
また、燃焼と排気ガスの排出が連続して行われるため、燃焼に伴なう炉内圧力変動も無視できる程度にまで少なくなる。
【0054】
このようにして燃焼室H内で燃焼した後の排気ガスが外部に排出されるが、この場合、排気ガスは火炎の周囲より蓄熱体32に吸引されることになるので、排気ガスは火炎と混合し、所謂排気ガス内部再循環作用が発生し、この結果NO値が激減し、低公害となる。
【0055】
この燃焼装置30は、酸化剤予熱器とバーナーとが一体となったものであるため、接続ダクトに起因する熱損失がなく、構造的にも熱効率の向上に寄与するものとなり、しかも酸化剤予熱器や廃熱ボイラー等の付設も不要となるので、炉全体の大きさは小さくなり、広い敷地も不要で、コンパクトな管式加熱炉の加熱装置となり、また建設費も低減でき、コスト的にも有利となる。
【0056】
本実施例の管式加熱炉と従来の加熱炉とを定量的に評価した結果、下記する表1に示すような結果が得られた。
【0057】
ここにおいて使用した管式加熱炉の性能は、次の通りである。
【0058】
設計吸収熱量 ; 30×10Kcal/H
流体入口/出口温度 ; 260/400℃
燃料 ; 燃料ガス
熱効率 ; 90%
加熱管材質 ; 低合金鋼
許容平均熱流束 ; 27,100Kcal/m
また、従来の管式加熱炉については、輻射部に加え流体を予熱するための対流部を付設しているもので、しかも対流部のみでは流体入口温度の制約から90%の熱効率を達成できないため酸化剤予熱システムを設置するものとする。
【0059】
【表1】
Figure 0003563753
【0060】
本実施例の管式加熱炉は、この表の加熱炉平面図の項に示すように、加熱炉本体は本発明のものが多少大きい。これは、被加熱流体のコーキングを回避するには、平均熱流束あるいは流体境膜温度に上限が存在しており、本実施例の管式加熱炉でも平均熱流束あるいは境膜温度は、従来の管式加熱炉と同じ制限値となることから、その分輻射部の伝熱面積が増し、加熱炉本体の敷地は大きくなる。
【0061】
しかし、本実施例の管式加熱炉は、酸化剤予熱器が燃焼装置と一体化しているので、酸化剤システムを含む従来の管式加熱炉全体と比較すれば、両者の必要となる敷地は、本発明の必要敷地面積を100とした場合には、従来の管式加熱炉は200となる。これは、接触改質装置用の管式加熱装置のように許容圧力損失の制約から輻射部だけに加熱管を設置する場合に著しく有効となる。そして、概略建設費に示すように、伝熱面積が少なくてすむ分、高価な加熱管が減り、建設費が従来の管式加熱炉に比し安くなる。
【0062】
本発明は、上述した実施例のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲内で適宜変更使用することができる。
【0063】
前記実施例は、蓄熱体に対し酸化剤供給通路側、つまりダクト部を回転させる方式であるが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、蓄熱体とダクト部が相対的に回転するものであればよく、蓄熱体を回転させるようにしてもよい。
【0064】
また、回転ダクト部33の中心にモーティブ空気あるいはモーティブ蒸気を供給するパイプを設けたが、このパイプは必ずしも設ける必要はない。
【0065】
さらに、燃焼室に臨むように設けられる燃焼装置も図2に示すように1列のみでなく表の加熱炉平面図の項に示すような複数列としても良い。
【0066】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、次の効果が得られる。
【0067】
対流部がなく輻射部のみを有する管式加熱炉となるので、バーナーの火炎からの熱は、輻射部及び蓄熱体においてすべて吸収され、加熱管全長は短くでき、管内許容圧力損失も小さくなる。したがって、プロセス上の要求から流体入口温度あるいは管内許容圧力損失値による制約を受けることなく、所定の加熱を行うことができる。
【0068】
また、排気ガスが燃焼室外に排出される時には、相対的に回転する蓄熱体とダクト部とを通って排出されるので、排気ガスの熱の大部分が燃焼酸化剤の加熱に利用され、排気ガスは低温になり系外に排出される。しかも、酸化剤予熱器とバーナーとが一体となった燃焼装置であるため、ダクト部での熱放散がなく、熱効率は構造的にも向上する。
【0069】
さらに、排気ガスは、蓄熱体に対し相対的に回転するダクト部とを通って排出されるので、蓄熱体部分の熱交換作用により排気ガスの熱の大部分が燃焼用酸化剤の加熱に利用され、排気ガスの温度も時間によらず一定となり、低温で系外に排出される。しかも燃焼が連続して行われるため、燃焼に伴なう炉内圧力変動も無視できる程度にまで少なくなる。また、排気ガスは外部に排出されるときに火炎の周囲より蓄熱体に吸引されるので、排気ガスと火炎が混合する、所謂排気ガス内部再循環作用が発生し、この結果NO値が激減し、低公害性が発揮される。
【0070】
加えて、酸化剤予熱器や廃熱ボイラー等の付設も不要となるので、炉全体の大きさは小さくなり、広い敷地は不要となり建設費も低減でき、コンパクトで低廉な管式加熱炉となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る管式加熱炉の概略断面図である。
【図2】図1の2−2線に沿う断面図である。
【図3】燃焼装置の断面図である。
【図4】図3の4−4線に沿う断面図である。
【図5】本発明の燃焼装置の実験結果を示すグラフである。
【図6】同燃焼装置のNO排出値に係る実験結果を示すグラフである。
【図7】同燃焼装置の炉内圧力変動に係る実験結果を示すグラフである。
【図8】従来の管式加熱炉を示す端面を破断した斜視図である。
【図9】従来の他の管式加熱炉を示す平面図である。
【符号の説明】
30…燃焼装置、 31…バーナー、
32…蓄熱体、 36…酸化剤供給通路、
37…排気ガス排出通路、 39…本体ケース、
58…燃料パイプ、 59…空気パイプ、
H…燃焼室、 P…加熱管。

Claims (9)

  1. 内部に被加熱流体が流通する加熱管(P)を燃焼室(H)内に配置するとともにこの燃焼室(H)に燃焼装置(30)を設け、この燃焼装置(30)から噴射される火炎の熱により前記加熱管(P)を介して内部の被加熱流体を加熱する管式加熱炉において、
    前記燃焼装置(30)は、バーナー(31)と、このバーナー(31)に酸化剤を供給する酸化剤供給通路(36)および、燃焼した後の排気ガスを燃焼室(H)外に排出する排気ガス排出通路(37)を有するダクト部(33)と、前記バーナー(31)を囲むように設けられ前記排気ガスの顕熱により前記酸化剤を加熱する通気性のある蓄熱体(32)と、前記酸化剤供給通路(36)より吐出された酸化剤が前記蓄熱体(32)の一部を通過する酸化剤通過領域が経時的に変化するように前記ダクト部(33)と蓄熱体(32)を相対的に駆動する駆動部と、を有するものにより構成し、
    前記燃焼室(H)内で、端部が前記燃焼室(H)の炉床部(12)に設けられた多数の逆U字状をした前記加熱管(P)により空間(S)を形成し、当該空間(S)内に前記炉床部(12)に設けた前記燃焼装置(30)からの火炎を噴射し、前記加熱管(P)内を流れる被加熱流体を火炎の輻射熱により加熱する輻射部を形成したことを特徴とする管式加熱炉。
  2. 前記酸化剤供給通路(36)は、1個以上の出口部分から前記蓄熱体(32)に向かって酸化剤を吐出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の管式加熱炉。
  3. 前記酸化剤供給通路(36)は、前記蓄熱体(32)に連通するように設けられた本体ケース(39)内に、前記排気ガス排出通路(37)とは蓄熱体内で独立に形成したことを特徴とする請求項1に記載の管式加熱炉。
  4. 前記本体ケース(39)は、内部に設けられた前記1個以上の酸化剤供給通路(36)により分割され、この酸化剤供給通路(36)の間が前記排気ガス排出通路(37)としたことを特徴とする請求項3に記載の管式加熱炉。
  5. 前記酸化剤供給通路(36)は、前記本体ケース(39)内を挿通するバーナー(31)の周囲に、前記排気ガス排出通路(37)と交互に配置されるように所定間隔に配置したことを特徴とする請求項4に記載の管式加熱炉。
  6. 前記酸化剤供給通路(36)は、前記出口部分を多数の小孔が開設された端板により閉塞されたものにより構成したことを特徴とする請求項1に記載の管式加熱炉。
  7. 前記バーナー(31)は、内部にモーティブ空気を供給する空気パイプ(59)を有する請求項1に記載の管式加熱炉。
  8. 前記バーナー(31)は、内部にモーティブ蒸気を供給するパイプ(59)を有する請求項1に記載の管式加熱炉。
  9. 前記蓄熱体(32)は、セラミックス製である請求項1に記載の管式加熱炉。
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