JP3563209B2 - 液体クロマトグラフィー用充填剤及びそれを用いた分離方法 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は、新規な液体クロマトグラフィー用充填剤及びそれを用いた分離方法に係り、特に逆相液体クロマトグラフィー用充填剤による分離特性と、ボロン酸誘導体だけを特異的に保持する分離特性を併せ有し、更に逆相液体クロマトグラフィーにおいて、従来のアルキル基結合型充填剤では分離出来ない化合物の分離をも可能とする液体クロマトグラフィー用充填剤と、そのような充填剤を用いた分離方法に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、液体クロマトグラフィー手法は、広範囲の分離条件の適用が可能であり、試料を高温にさらす必要もなく、室温程度の低い温度条件下でも、化合物の分離が可能であると共に、高い分離能を発揮し得るところから、生体関連物質から有機化合物の全般に至る、種々の化合物の精製、分離等に広く利用されてきている。そして、この液体クロマトグラフィー手法による物質の分離特性は、カラムに充填される充填剤の特性によって大きく影響されるところから、分離対象に合わせて充填剤を選択することによって、様々な化合物の分離を行なうことが可能となるのである。
【0003】
ところで、一般に、そのような液体クロマトグラフィー手法に用いられる充填剤としては、アルキル基を有する官能基で化学修飾されたシリカゲルからなるアルキル基結合型シリカゲル充填剤に代表される、逆相液体クロマトグラフィー(以下、逆相クロマトグラフィーと言う)用充填剤が、広く用いられているが、この逆相クロマトグラフィー用充填剤は、目的とする化合物を、主に疎水性相互作用によって保持して、その相互作用の違いによって分離するものであり、生体関連物質から炭化水素化合物まで、非常に広範囲に亘る化合物を分離するために適用されている。
【0004】
しかしながら、かかる逆相クロマトグラフィー用充填剤は、種々の化合物を保持し得る汎用性の高い充填剤であるが故に、試料中に存在する目的とする化合物と、それ以外の化合物とを同程度に保持する場合があり、該目的化合物のみを保持することが困難となることが少なくない。従って、従来の逆相クロマトグラフィー用充填剤にあっては、それを用いて、生体関連試料の如き、非常に多くの夾雑物を含む試料中から、目的とする微量の有用成分を短時間で分離しようとする場合には、適切な分離が得られ難いという問題を有しているのである。
【0005】
また、逆相クロマトグラフィー手法において、従来から汎用されているアルキル基結合型充填剤を用いる場合にあっては、そのような充填剤が主に疎水性相互作用によって分離特性を発揮するものであるところから、疎水性の異なる化合物を効果的に分離し得るものの、疎水性の類似している化合物同士を分離することが困難となるという問題が生じるのである。
【0006】
そこで、上述の如き逆相クロマトグラフィー用充填剤の問題点を改善するために、目的とする化合物だけを特異的に保持、分離し得る充填剤の開発が試みられているが、充填剤によって、該目的化合物だけが特異的に保持、分離されるためには、それら充填剤と目的化合物とが特異的に相互作用することが必要となる。そして、そのように特異的に相互作用するものとしては、酵素と基質、抗原と抗体、或いはホルモンとレセプター等の生体関連物質同士の組合わせを例示することが出来る。
【0007】
より詳細には、例えば、基質と酵素との相互作用を利用する場合であって、分離したい目的化合物が酵素であるとすると、先ず、分離したい酵素の基質が固定相として担体に結合せしめられてなる充填剤を用意する。次いで、この充填剤を用いて、通常の液体クロマトグラフィー手法の手順に従って、分離したい酵素を含んだ試料溶液を分離する。そうすると、前記固定相たる基質には、目的とする酵素だけが特異的に相互作用するものであるところから、目的とする酵素のみが充填剤に保持され、その他の化合物は充填剤にて保持されない。その状態で移動相溶媒を流し続けると、充填剤に保持された酵素を除く他の化合物は、カラムから除去されることとなる。そして、他の化合物のカラムからの除去が完了した後に、適当な手段を用いて、前記酵素と基質との相互作用を抑制することによって、目的とする酵素を分離することが出来るのである。
【0008】
ところが、かくの如き目的とする化合物だけを特異的に保持し得る充填剤は、該目的化合物の分離には最適である反面、目的化合物以外の化合物の分離には利用することが出来ないところから、充填剤としての適用範囲が著しく狭くなり、利用価値が殆どなくなるという問題を有しているのである。
【0009】
このように、従来から用いられている逆相クロマトグラフィー用充填剤にあっては、広範囲の化合物の分離に適用し得る反面、特定の化合物を高い効率で分離することが困難となるのであり、他方、特定の化合物だけを特異的に保持し得るような充填剤にあっては、特定の化合物を高い効率で分離することが可能となる反面、分離可能な化合物の範囲が著しく狭くなるのである。つまり、それら二種類の充填剤は、互いに相反する特性を有するものであるところから、それぞれ一長一短を有しているのである。従って、それら二種類の充填剤の長所を併せ持つような充填剤は、従来の逆相クロマトグラフィー用充填剤よりも、特定の化合物を高効率に分離することが出来、また、特定の化合物だけを特異的に保持し得る充填剤よりも、多くの化合物の分離に適用することが可能となり、互いの問題点を克服し得る、優れた充填剤となることが期待されるのである。
【0010】
一方、近年におけるファインケミカル技術の台頭により、分離精製が必要とされる化合物が増加しているが、ボロン酸基が結合せしめられたボロン酸誘導体も、そのような分離精製の対象とされるようになって来ている。即ち、このボロン酸誘導体は、ボロン酸基がシスジオール構造に対して特異的な識別能を有するところから、シスジオール構造を有する糖質を認識するためのインターフェースとして利用されているものであり、また、癌細胞へボロン酸誘導体を取り込ませて、そこへ低エネルギー中性子を照射することで、特定の細胞を死滅させる等の医学的用途にも利用されているものである。そして、ボロン酸誘導体は、そのような先端技術に利用されるに際して、その特性を充分に発揮し得るために、高度に精製されている必要がある。
【0011】
ところで、そのようなボロン酸誘導体を、液体クロマトグラフィー手法を用いて精製する場合には、充填剤として、従来の逆相クロマトグラフィー用充填剤が採用されることとなるのであるが、今後、ボロン酸誘導体に関する研究が更に発展すると、逆相クロマトグラフィー用充填剤では、充分に分離することが出来ないボロン酸誘導体が出現することが予想されるため、ボロン酸基との特異的な相互作用を利用して、ボロン酸誘導体だけを高効率に分離する充填剤が必要であると考えられる。
【0012】
しかしながら、ボロン酸誘導体のように、生体内に存在しない化合物にあっては、酵素と基質等の生体関連物質由来の相互作用を利用することが出来ないために、ボロン酸誘導体だけを特異的に保持する充填剤は、現在までのところ、実現されていないというのが現状である。
【0013】
従って、特異的にボロン酸誘導体を保持し得て、従来の逆相クロマトグラフィー用充填剤よりも効率的にボロン酸誘導体を分離することが可能であると共に、ボロン酸誘導体のみだけでなく、ボロン酸誘導体以外の化合物の分離にも適用することが可能であり、しかも、逆相クロマトグラフィーで汎用されているアルキル基結合型充填剤では分離出来ない化合物をも分離することが可能となる新規な充填剤の開発が望まれているのである。
【0014】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景として為されたものであって、その課題とするところは、ボロン酸誘導体を特異的に保持し得ると共に、逆相クロマトグラフィー用充填剤としても用いられ得る液体クロマトグラフィー用充填剤を提供することにあり、また、そのような優れた充填剤を用いて、ボロン酸誘導体を有利に分離し得る分離方法、更には逆相クロマトグラフィー手法により、ボロン酸誘導体以外の様々な物質を有利に分離し得る分離方法を提供することにある。
【0015】
【解決手段】
そして、本発明者等が、このような課題を解決すべく、種々、官能基の探索と評価とを重ねた結果、芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に水酸基が結合せしめられている芳香族官能基で化学修飾した多孔性担体より構成されている充填剤を用いることにより、逆相クロマトグラフィー用充填剤としての分離特性を有するだけでなく、ボロン酸誘導体を特異的に保持する分離特性をも有することを見出したのである。また、これに加えて、そのような構造の充填剤は、単に疎水性相互作用だけではなく、電子吸引性基を有する化合物や水素結合性の化合物との間に強い相互作用を有するところから、逆相クロマトグラフィーで汎用されるアルキル基結合型充填剤で分離できない化合物の分離が可能となるということを見出して、新規な逆相クロマトグラフィー用充填剤及びそれを用いた分離方法を構築するに到ったのである。
【0016】
すなわち、本発明は、その充填剤に係る発明として、芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に水酸基が結合せしめられている芳香族官能基にて化学修飾された多孔性担体より構成されていることを特徴とする液体クロマトグラフィー用充填剤を、その要旨とするものである。
【0017】
このような本発明に従う液体クロマトグラフィー用充填剤にあっては、かかる所定の構造を有していることによって、充填剤とボロン酸誘導体との相互作用が増大せしめられることとなるところから、ボロン酸誘導体をより強く保持し得るようになるのである。
【0018】
また、かかる充填剤は、疎水性相互作用により化合物を保持し得るところから、逆相クロマトグラフィー用充填剤として有利に用いることが出来、以て広範囲の化合物の分離に有利に適用され得るものである。
【0019】
さらに、本発明に従う液体クロマトグラフィー用充填剤には、芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に水酸基が結合せしめられている芳香族官能基が所定の担体に導入されていることにより、保持する化合物との相互作用が、単に疎水性相互作用だけではなくなるところから、従来の逆相クロマトグラフィー用充填剤ではうまく分離することの出来なかった疎水性の類似する化合物に対しても有利に適用され得るのである。
【0020】
なお、本発明に従う液体クロマトグラフィー用充填剤の好ましい態様の一つによれば、前記多孔性担体は、シリカゲル或いは多孔性ポリマーとされる。
【0021】
また、本発明は、液体クロマトグラフィー手法によってボロン酸誘導体を分離するに際して、かかるボロン酸誘導体を特異的に保持する充填剤として、芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に水酸基が結合せしめられている芳香族官能基にて化学修飾された多孔性担体より構成される充填剤を用いることを特徴とする分離方法をも、その要旨とするものである。そして、このように、液体クロマトグラフィー手法によってボロン酸誘導体を分離するに際して、ボロン酸誘導体を特異的に保持し得る充填剤が用いられているところから、ボロン酸誘導体が有利に分離され得るのである。
【0022】
さらに、本発明は、逆相液体クロマトグラフィー手法による分離に際して、充填剤を、芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に水酸基が結合せしめられている芳香族官能基にて化学修飾された多孔性担体にて構成した分離方法をも、その要旨とする。
【0023】
そして、そのような本発明に従う分離方法の好ましい態様の一つによれば、前記多孔性担体は、シリカゲル或いは多孔性ポリマーとされる。
【0024】
【発明の実施の形態】
ところで、本発明に従う充填剤としては、前述したように、芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に水酸基が結合せしめられている構造の芳香族官能基(以下、単に芳香族官能基という)にて、多孔性担体が化学修飾されたものであれば、如何なる形態のものが用いられても、何等差支えないが、一般には、Ar−A−多孔性担体材料(但し、Ar:芳香族官能基、A:スペーサー基)にて表される構造を有する化学結合型の充填剤が用いられることとなる。
【0025】
そして、かかる芳香族官能基が所定のスペーサー基(A)を介して結合せしめられて、目的とする充填剤を与える多孔性担体材料としては、前記した芳香族官能基が化学的に結合せしめられて保持され得るものであれば、公知の如何なる多孔性担体材料も用いられ得、通常、シリカゲル、多孔性ガラス、ガラスビーズ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の無機担体や、ポリスチレンゲル、デキストランゲル、ポリアクリルアミドゲル、アガロースゲル、ポリ酢酸ビニルゲル、ポリメチルメタクリレートゲル等の多孔性ポリマーが用いられることとなるが、中でも、シリカゲルや多孔性ポリマーが好んで用いられる。何故なら、シリカゲルは、シラノール基の反応性が高いところから、容易に化学修飾され得ることに加えて、大きな機械的強度を有しており、容易に入手され得るものであるからであり、また、多孔性ポリマーは、酸やアルカリに対して安定であるからである。
【0026】
また、前記多孔性担体材料を化学修飾する芳香族官能基としては、その芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に水酸基が結合せしめられている限りにおいて、如何なるものも採用され得るものである。そして、そのような芳香族官能基を構成する芳香環は、単環であっても、多環であっても、何等差支えなく、本発明の効果が得られる範囲内で、芳香環上において置換基を有していても構わない。そして、そのような芳香環の例としては、ベンゼン、ペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、アセナフチレン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、フルオラセン、アセフェナントリレン、アセアントリレン、トリフェニレン、ピレン、ナフタセン、プレイアデン、ピセン、ペリレン、ペンタフェン、ペンタセン、テトラフェニレン、ベンゾフルオランチン、ヘキサフェン、ヘキサセン、ルビセン、コロネン、トリナフチレン、ヘプタフェン、ヘプタセン、ピランスレン、デカシクレン、オバレン等を挙げることが出来る。
【0027】
さらに、前記Aにて表される、芳香族官能基と多孔性担体材料との間に結合せしめられるスペーサー基としては、充填剤による化合物に対する保持力、特にボロン酸に対する保持力の大部分が、芳香族官能基を構成する芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に結合せしめられている水酸基にて発現されるものであり、スペーサー基の違いによる影響を殆ど受けないところから、公知の各種の原子団が用いられ得る。そして、そのようなスペーサー基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の直鎖状炭化水素基が挙げられるが、それらに、エーテル結合、アミド結合、エステル結合、カルボニル基等の他、硫黄原子、窒素原子を含む官能基等が導入された原子団が用いられても、何等差し支えない。また、ここでは、スペーサー基を有する構造のものを例示したが、これだけに限定されるものではなく、前記芳香族官能基が、スペーサー基を介さずに、直接多孔性担体材料に結合せしめられていても、何等差し支えない。
【0028】
ところで、本発明に従う充填剤中の固定相(芳香族官能基)の量は、溶質の保持時間に影響を与えるものであるが、一般に、その量が増加すると、溶質と固定相との相互作用が大きくなり、その結果として、溶質の保持力が増大する。従って、そのような固定相が多く結合せしめられてなる充填剤の使用により、目的とする化合物、例えばボロン酸誘導体に対する強い保持力が発揮され、その結果、それら化合物の分離が効果的に為され得ることとなる。つまり、目的とする化合物に対する、より大きな保持力を有する充填剤を得るためには、出来るだけ多くの芳香族官能基が多孔性担体に結合せしめられることが望ましいのである。一方、本発明に従う充填剤中の固定相の量の下限は、条件によって異なり、一義的に決定されるものではないが、一般に、目的とする化合物に対する保持力が有効に発揮されるのに充分な量であればよい。
【0029】
また、芳香族官能基に結合せしめられる水酸基の結合数は、多くなる程、固定相と化合物との疎水性相互作用が弱くなるが、その反面、水酸基が導入されることによって、電子吸引性基を有する化合物との相互作用が強くなる等の、疎水性相互作用以外の作用が発現されることにより、充填剤の保持力が低下しないところから、水酸基の結合数は、特に制限されるものではない。
【0030】
ここにおいて、上述の如き本発明に従う液体クロマトグラフィー用充填剤は、公知の各種の反応を利用して、多孔性担体に対して芳香族官能基が結合せしめられることにより、製造され得るものであり、例えば、シリカゲルを多孔性担体として用いる場合には、一般に、1)芳香族官能基を有するシリル化剤をシリカゲル担体に反応せしめる方法、2)芳香族官能基を有する有機金属化合物をシリカゲル担体と反応せしめる方法、3)反応性を有する官能基をシリカゲル担体に導入した後、その官能基に芳香族官能基を結合せしめる方法等の反応を利用して製造されることとなる。
【0031】
より詳細には、前記1)のシリル化剤を用いる方法では、先ず、目的とする芳香族官能基を有する化合物と二重結合を有する化合物とを反応させ、次いで、二重結合を有するアルケンの炭素−炭素二重結合部分に、白金触媒を用いてヒドロシラン(H−Si)を付加させることによって、シリル化剤を得る。この反応においては、反マルコフニコフ型の付加が主として進行し、アルケン分子の末端に珪素原子が結合するように反応する。この方法は、シリル化剤への転化率が大きく、副反応も少ないために、目的とする構造のシリル化剤が得られ易いという利点があるが、二重結合を有する化合物は重合する場合があり、特に高分子合成等に用いられるような重合性の高いモノマ−類似の二重結合を持つ化合物では、付加反応よりも重合反応が進行する場合もある。また、シリル化剤の合成に際しては、ヒドロシランの付加反応を用いないシリル化剤の合成方法である、2つ以上の反応性の官能基(主として塩素)を持つ有機塩素化ケイ素化合物とグリニャール試薬等の有機金属試薬を反応させる方法も、利用することが出来る。
【0032】
なお、上記で得られるシリル化剤において、珪素原子に結合している4つの置換基の内、少なくとも一つは、塩素、臭素、メトキシ基、エトキシ基、アルキルアミノ基等の、シリカゲル担体の表面に存在するシラノール基と反応する官能基でなければならない。また、2つ或いは3つの反応性の官能基を持つシリル化剤も存在し、何れも、芳香族官能基によるシリカゲル担体の化学修飾に適用することが出来る。
【0033】
そして、上記で得られた芳香族官能基を有するシリル化剤を、シリカゲル担体の表面に存在するシラノール基と反応せしめることにより、目的とする、芳香族官能基にて化学修飾されてなる多孔性担体(シリカゲル)を、容易に得ることが出来るのである。
【0034】
また、前記2)の有機金属化合物を用いる方法は、Locke 等が報告している方法〔D.C. Locke, J.J. Schermud and B. Banner, ”Anal.Chem.”, 44, 90 (1972)〕であり、この方法では、先ず、シリカゲル担体のシラノール基に対して、塩化チオニル等の、水酸基を塩素置換することの出来る試薬を作用させて、かかるシラノール基を塩素で置換する。次いで、この塩素置換されたシリカゲル担体に対して、目的とする芳香族官能基を有するグリニャール試薬とされた有機金属化合物を作用させることにより、該芳香族官能基をシリカゲル担体に結合させて導入せしめることが出来、以てシラノール基における水酸基を芳香族官能基で置換することが出来るのである。
【0035】
さらに、前記3)の、反応性を有する官能基を担体に導入した後に、その官能基に芳香族官能基を結合せしめる方法は、上記2)で示した、有機金属化合物を担体と反応させる方法と類似するが、この方法では、先ず、予めアミノ基のような反応性官能基を有する化合物をシリカゲル担体のシラノール基と反応、結合せしめ、次いで、このアミノ基と反応し得る官能基、例えば、カルボキシル基を有する芳香族官能基と、前記反応性官能基の導入されたシリカゲル担体とを、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド等の縮合剤にて縮合せしめることにより、目的とする充填剤を得ることが出来るのである。なお、この例では、最終的にアミド結合が形成されることとなるが、その他エステル結合やエーテル結合等が形成される官能基の組合せの反応についても、同様に行なわれ得るのである。
【0036】
このように、芳香族官能基にてシリカゲル担体が化学修飾されてなる充填剤は、各種の合成方法によって製造され得るものであるが、反応性官能基が導入されているシリカゲル担体(充填剤)が市販されている場合には、合成工程を簡略化出来るところから、前記3)の方法により製造することが望ましい。
【0037】
また、多孔性ポリマーを多孔性担体として用いる場合には、前記シリカゲル担体を芳香族官能基にて化学修飾する方法における3)の方法と同様の方法により、目的とする充填剤を製造することが出来る。より詳細には、先ず、予めアミノ基のような反応性官能基を有する化合物を多孔性ポリマーと反応、結合せしめて、多孔性ポリマーに反応性官能基を導入する。次いで、このアミノ基と反応し得る官能基、例えば、カルボキシル基を有すると共に、芳香族官能基を有する化合物を用意し、それに前記反応性官能基の導入された多孔性ポリマーを、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドやN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド等の縮合剤を用いて縮合せしめることにより、目的とする充填剤を得ることが出来るのである。
【0038】
そして、本発明では、かくの如き本発明に従う液体クロマトグラフィー用充填剤を用いて、ボロン酸誘導体を分離することも、その特徴とするものであり、これにより、効果的にボロン酸誘導体を分離することが出来るようになったのであるが、そのようなボロン酸誘導体の液体クロマトグラフィー手法による分離操作には、従来と同様な操作乃至は条件が採用されることとなる。
【0039】
すなわち、そのような分離操作にあっては、本発明に従う充填剤を充填せしめたカラムに対して、ボロン酸誘導体は、所定の溶媒に溶解させた溶液として供給せしめられることとなる。ところで、ここで用いられる所定の溶媒としては、通常、メタノール、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、水等が用いられる。
【0040】
また、この分離カラム内に溶液形態において供給されたボロン酸誘導体は、充填剤にて保持され、続いて、分離カラム内に流通せしめられる移動相溶媒にて、ボロン酸誘導体が順次溶出せしめられて、分離されることとなる。なお、ここで用いられる移動相溶媒としては、通常の逆相液体クロマトグラフィー手法において用いられる溶媒、即ち極性溶媒が用いられ、そのような極性溶媒の具体例としては、水、メタノール、アセトニトリル、ホルムアミド、或いはそれらを混合した溶媒等を挙げることが出来る。
【0041】
さらに、本発明は、逆相クロマトグラフィー手法による分離に際して、前述の如き充填剤を用いることも、その特徴とするものであり、それによって、各種の化合物を逆相クロマトグラフィー手法によって効果的に分離することができるようになったのであるが、そのような逆相クロマトグラフィー手法による分離操作にも、また従来と同様な操作乃至は条件が採用されることとなるのである。
【0042】
【実施例】
以下に、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の幾つかの実施例を示すこととするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0043】
実施例 1
───各種液体クロマトグラフィー用充填剤の合成───
前述したように、本発明に従う液体クロマトグラフィー用充填剤は、従来から公知の様々な手法を用いて合成され得るものであるが、本実施例では、市販のアミノ基結合型シリカゲル充填剤を多孔性担体として利用することが出来て、充填剤の合成工程の簡略化を図り得るところから、アミノ基結合型多孔性担体と、かかるアミノ基と反応可能な官能基を有する芳香族官能基とを結合させることにより、目的とする充填剤を合成する方法を採用することとする。また、アミノ基と芳香族官能基との結合形態には、アミド結合、尿素結合、ウレタン結合等の種々の結合形態を選択し得るが、カルボキシル基を酸無水物とした後に、アミノ基と反応させてアミド結合を形成する方法が簡便であるため、アミド結合の形態を適用することとする。
【0044】
しかし、そのようなアミド結合を形成する方法において、フェノール性水酸基を有するカルボン酸誘導体をアミノ基に結合させる場合には、アミド結合を形成する下記化1の(a)に示される主反応(アミド化反応)の他に、フェノール性水酸基と酸無水物とが反応して、エステル結合を形成する、下記化1の(b)に示される副反応の進行が予想される。そこで、アミド結合を形成する際に惹起される副反応を抑制するための条件について、検討することとする。なお、下記化1において、Arは、芳香環を表わしている。
【0045】
[化1]
(a)HO−Ar−COOH + H2 N−(担体)→ HO−Ar−CONH−(担体)
(b)HO−Ar−COOH + HO−Ar−COOH → HO−Ar−COO−Ar−COOH
【0046】
より詳細には、先ず、フェノール性水酸基を有する化合物としてフェノールを用い、またカルボキシル基を有する化合物として安息香酸を用い、更にアミノ基結合型多孔性担体の代わりにアミノ基を有するヘキシルアミンを用意して、それらを反応させた。より具体的には、フェノール:0.47g、安息香酸:0.61g及びヘキシルアミン:0.51gを、N,N’−ジメチルホルムアミド:20mLに溶解した後、縮合剤として、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド:0.63gを添加して、均一溶液条件下において、縮合反応(アミド化反応)を進行せしめた(反応溶液A)。また、縮合反応時に、更に1−ヒドロキシベンゾトリアゾール:0.68gを添加したものについても、反応を進行せしめた(反応溶液B)。なお、この1−ヒドロキシベンゾトリアゾールは、アミド化反応を促進することが一般的に知られている。
【0047】
次に、上記のそれぞれで得られた反応生成液を、高速液体クロマトグラフィーにより分析して、生成したエステル化体のピーク面積値及びアミド化体のピーク面積値を測定した。なお、高速液体クロマトグラフィーによる分析は、カラムとしてCosmosil 5C18−MS(内径:4.6mmφ、長さ:150mm)を用い、移動相溶媒としてメタノール:0.1%トリフルオロ酢酸水溶液=60:40(容量比)の混合溶媒を用いて行なった。
【0048】
そして、上記で測定されたアミド化体のピーク面積値及びエステル化体のピーク面積値を用い、以下の数式に従って、アミド化体の生成比率及びエステル化体の生成比率を算出し、その結果を、下記表1に示す。
アミド化体の生成比率 =アミド化体のピーク面積値÷(アミド化体のピーク面積値+エステル化体のピーク面積値)×100(%)
エステル化体の生成比率=100−アミド化体の生成比率(%)
【0049】
【表1】
【0050】
かかる表1に示される結果から明らかなように、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールを添加せずに、縮合反応を進行せしめた場合には、副反応の生成物であるエステル化体が6.7%生成した。一方、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールを添加して、縮合反応を進行させた場合には、副反応の生成物であるエステル化体が殆ど生成せず、略定量的に主反応の生成物であるアミド化体が99.8%生成した。このように、アミノ基とフェノール性水酸基を有するカルボン酸とを反応せしめて、アミド化合物を合成する場合には、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールを添加することによって、アミド化体の生成が促進され、その結果、望ましくない副反応(エステル化反応)が、効果的に抑制され得ることが確認されたのである。
【0051】
従って、本実施例においては、液体クロマトグラフィー用充填剤を合成するために、アミノ基結合型多孔性担体に対して、カルボン酸誘導体を反応させる際には、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールを添加する反応条件を採用することとした。
【0052】
次いで、上記の実験結果を踏まえて、アミノプロピル基がシリカゲルに導入された市販の担体(充填剤)であるCosmosil 5NH2 (ナカライテスク株式会社製)に、対応するカルボン酸誘導体を反応せしめることにより、下記表2に示される固定相の構造を有する各充填剤(2,3−OH型充填剤、3,4−OH型充填剤、3,4,5−OH型充填剤、3,4−OH−1型充填剤、CH3 型充填剤、3,5−OH型充填剤)を合成した。具体的には、3,4−OH型充填剤を合成する場合を例に挙げて、充填剤の合成方法の詳細について、以下に説明する。なお、下記表2において、2,3−OH型充填剤、3,4−OH型充填剤、3,4,5−OH型充填剤、3,4−OH−1型充填剤、CH3 型充填剤、3,5−OH型充填剤の担体側の「Si・」にて表わされる構造は、正確には、「Si≡」、「Si(OC2 H5 )=」、「Si(OH)=」、「Si(OC2 H5 )2 −」、「Si(OH)(OC2 H5 )−」、「Si(OH)2 −」の何れかである。
【0053】
【表2】
【0054】
先ず、3,4−ジヒドロキシ安息香酸:0.86g、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール:0.76gを、N,N’−ジメチルホルムアミド:20mLに溶解せしめた。この溶液に、Cosmosil 5NH2 :2.0gを加え、分散させた後、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド:0.71gを加え、室温で撹拌した。そして、そのような反応液から、一晩経過後に得られるゲルを、N,N’−ジメチルホルムアミド、メタノール及びクロロホルムで吸引濾過洗浄した後、50℃で乾燥することにより、ベンゼン環上の互いに隣合う3位と4位の炭素原子に二つの水酸基が結合せしめられた官能基で化学修飾されている3,4−OH型充填剤を得た。なお、Cosmosil 5NH2 は、粒子径:5μm、細孔径:12nmの多孔性球状のシリカゲルがアミノプロピルトリエトキシシランで化学修飾された後、更にヘキサメチルジシラザンで化学修飾された充填剤である。
【0055】
また、かかる3,4−OH型充填剤を合成した場合と同様にして、2,3−OH型充填剤、3,4,5−OH型充填剤、3,4−OH−1型充填剤、CH3 型充填剤、及び3,5−OH型充填剤についても、3,4−ジヒドロキシ安息香酸の代わりに、それぞれ対応した構造の水酸基置換カルボン酸誘導体を用いて、合成した。
【0056】
ところで、同じく表2に示される3,4−OH−P型充填剤は、Cosmosil 5NH2 :2.0gの代わりに、アミノ基が導入された多孔性のポリマー担体を用いる以外は、3,4−OH型充填剤を合成する場合と同様にして得られた充填剤である。なお、そこで用いられるアミノ基が導入された多孔性ポリマー担体は、グリシジルメタクリレートと架橋剤としてのエチレングリコールジメタクリレートとを、希釈剤としてのトルエン、重合開始剤としてのα、α’−アゾビスイソブチロニトリル及び懸濁安定剤としてのポリビニルアルコールを溶解させた水溶液の存在下において、共重合せしめて、多孔性球状ポリマーを得、更にそれをアンモニア中で加熱還流することにより、得られたものである。
【0057】
また、C18型充填剤(オクタデシル基結合型充填剤;Cosmosil 5C18−MS:ナカライテスク株式会社製)及びDiol型充填剤(ジオール型充填剤;Cosmosil 5Diol:ナカライテスク株式会社製)は、従来から用いられている充填剤であり、比較のために、表2に併せ示した。
【0058】
なお、この表2において示される充填剤略号において、「−OH」の前に記載されている数字は、芳香環のカルボニル基が結合している位置を1位としたときの水酸基の結合位置を示している。また、「−OH」以降に示される数字は、スペーサーであるメチレン基の数を示している。更に、「−OH」以降に示されるPは、ポリマー担体を用いた充填剤であることを示している。更にまた、「CH3 」は、水酸基置換ベンゼン環の代わりにCH3 基が用いられた充填剤であることを示している。
【0059】
そして、下記表3には、上記で合成した各種充填剤(3,4−OH−P型充填剤を除く)の炭素含有率と、充填剤に結合した芳香族官能基の結合量を示す。なお、比較のために、Cosmosil 5NH2 型充填剤の炭素含有率及び充填剤の表面に結合しているアミノ基量も、併せ示した。
【0060】
【表3】
【0061】
この表3に示されるように、本発明例の2,3−OH型充填剤、3,4−OH型充填剤、3,4,5−OH型充填剤や比較例のCH3 型充填剤、3,5−OH型充填剤の如きCosmosil 5NH2 型充填剤から合成した充填剤は、Cosmosil5NH2 型充填剤に導入されているアミノ基に対して、15〜70%の割合で芳香族官能基が結合せしめられているが、その結合量は、結合せしめられた芳香族官能基により差が認められた。例えば、ベンゼン環の2位に水酸基が結合している2,3−OH型充填剤や、ベンゼン環上に3個の水酸基が結合している3,4,5−OH型充填剤では、芳香族官能基の結合量の減少が認められた。これは、芳香族官能基の立体的な大きさに基づく立体障害により担体への結合量が減少したためであると考えられる。
【0062】
実施例 2
───ベンゼンボロン酸に対する保持特性───
本実施例では、前記実施例1で合成した各液体クロマトグラフィー用充填剤を、それぞれ、内径:4.6mmφ、長さ:150mmのクロマト管に充填して、それを用いて、アセトニトリル:0.02Mリン酸緩衝液(pH4)=50:50(容量比)の混合溶媒を移動相として、液体クロマトグラフィー手法により、ベンゼンとベンゼンボロン酸誘導体とを実際に分離した。
【0063】
より詳細には、液体クロマトグラフィー装置は、送液ポンプ(LC−6A型:株式会社島津製作所製)と、前記各充填剤が詰められたカラムと、試料注入器(7125型:レオダイン社製)と、紫外吸収検出器(SPD−6A型UV検出器:株式会社島津製作所製)とから構成されており、移動相溶媒の送液速度を、全て1.0mL/分の流速とした。また、紫外吸収検出器の検出感度を、0.16AUFSに設定し、更に検出波長を、254nmに設定して、測定を行なった。なお、カラム温度を恒温水槽により調節して、30℃となるようにした。更に、溶出時間の計測には、データ処理装置(CR−5A型:株式会社島津製作所製)を用いた。
【0064】
そして、各充填剤のベンゼン及びベンゼンボロン酸に対する保持特性を、k’値を指標として、下記表4に示した。
【0065】
なお、一般に、カラム(充填剤)の保持特性を示す場合、試料をカラムに注入してから、カラムから溶出されたピークの頂上までの時間(保持時間)が用いられるが、この保持時間は、送液する移動相溶媒の流速が同一で、しかも用いられるカラムが同一である場合においてのみ、その相対的な評価が可能となるものであるために、充填剤が異なる複数のカラムの比較やカラムの大きさが違う場合、あるいは移動相溶媒の送液速度が異なる場合などにおいては、前記保持時間を比較しても、相対的な比較を行なうことが不可能となる。そのために、異なる条件のクロマトグラフィー分離の結果の比較においては、通常、次式のk’で表される値、即ち保持されない溶質の溶出時間に対する保持される溶質のカラム内に滞留する時間の割合で、各溶質の保持特性(保持力)が評価されることとなる。
k’=(tr −t0 )/t0
【0066】
但し、tr :保持される溶質の保持時間、t0 :保持されない溶質の溶出時間である。そして、かかるk’値を用いることにより、カラムの長さや太さ或いは流速の違い等による影響を無視することが出来るのであり、以て純粋に充填剤の特性評価を行なうことが可能となるのである。
【0067】
そして、ベンゼン環にボロン酸基が一つ結合した構造のベンゼンボロン酸に対する、各充填剤による保持の特異性は、充填剤によるベンゼンの保持特性(k’A )に対する充填剤によるベンゼンボロン酸の保持特性(k’B )の比:分離係数(α=k’B /k’A )によって評価した。具体的には、ベンゼンは、ボロン酸基を有さず、主として疎水性相互作用によって保持される化合物であるところから、分離係数が大きな値を示すほど、ベンゼンボロン酸に対して特異的に保持する力を有する充填剤であることを示している。
【0068】
【表4】
【0069】
かかる表4の結果から明らかなように、アミノ基結合型シリカゲル充填剤を多孔性担体として用いて合成した、本発明例の2,3−OH型充填剤、3,4−OH型充填剤、3,4,5−OH型充填剤、及び3,4−OH−1型充填剤は、分離係数が20以上であり、ベンゼンボロン酸に対して特異的に強い保持力を有することが示された。また、多孔性ポリマー担体を用いて合成した、本発明例の3,4−OH−P型充填剤にあっても、10.88という大きな分離係数を示し、ベンゼンボロン酸に対して特異的に強い保持力を有することが示された。一方、芳香環や水酸基を有していないCH3 型充填剤や二つの水酸基を芳香環上に有するものの、互いに隣合わない炭素原子に結合している芳香族官能基にて担体が化学修飾されてなる3,5−OH型充填剤は、分離係数が1以下であり、ベンゼンボロン酸に対して微弱な保持力しか持たないことが示された。また、従来から用いられる、広範囲の化合物の分離に適用され得る充填剤であるC18型充填剤や、互いに隣合う炭素原子に水酸基が結合しているものの、芳香環上に水酸基が結合していない有機官能基にて担体が化学修飾されてなるDiol型充填剤にあっても、2以下の分離係数を示し、弱い保持力しか示さなかった。一般に、ボロン酸基は、ジオール性官能基を有する化合物に対して特異的な相互作用を示すことが知られているが、Diol型充填剤における分離係数は小さかったことから、ベンゼンボロン酸に対する特異的な保持力は、芳香環以外の互いに隣合う炭素原子に結合した水酸基を有する充填剤では、得られないと考えられる。
【0070】
また、2,3−OH型充填剤の分離係数と3,4−OH型充填剤の分離係数との比較から、芳香環内の互いに隣合う炭素原子に結合している二つの水酸基の結合位置の違いによる分離係数の格差は約3倍であり、3,4−OH型充填剤の分離係数と3,4,5−OH型充填剤の分離係数との比較から、芳香環内の炭素原子に結合している水酸基の数の違いによる分離係数の格差は約1.7倍であり、更に、3,4−OH型充填剤の分離係数と3,4−OH−1型充填剤の分離係数との比較から、水酸基を持つ芳香環官能基とシリカゲル充填剤とを結合するスペーサーの長さの違いによる分離係数の格差は約1.1倍であることが示された。更に、3,4−OH型充填剤の分離係数と3,4−OH−P型充填剤の分離係数との比較から、芳香族官能基で化学修飾される、多孔性担体の違いによる分離係数の格差は約2.6倍であることが示された。
【0071】
これらのことから、芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に結合している水酸基の結合位置、水酸基の結合数、水酸基を持つ芳香環官能基と多孔性担体とを結合するスペーサーの長さ、或いは官能基で化学修飾された担体の違いにより、ベンゼンボロン酸に対する特異性は、3倍未満程度の格差を生ずると考えられる。しかし、複数の水酸基が芳香環内の互いに隣合う炭素原子に結合している官能基で化学修飾された本発明例の充填剤の分離係数(10.88〜80.42)と、比較例の充填剤の分離係数(0.12〜1.64)との比較において、本発明例の充填剤の分離係数は、比較例の充填剤の分離係数の6〜670倍の値を与えるところから、ベンゼンボロン酸に対する特異的な保持特性は、主として、芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に水酸基が結合している構造により発現されているものと考えられ、その他の要因の寄与は、相対的に小さいものであると考えられる。
【0072】
従って、以上の結果から、本実施例で用いられた充填剤以外の充填剤であっても、芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に水酸基が結合している芳香族官能基で担体が化学修飾されてなる充填剤であれば、ベンゼンボロン酸に対する高い特異性が得られると考えられるのである。
【0073】
実施例 3
───ベンゼンボロン酸の保持に対するpHの影響───
芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に水酸基が結合している芳香族官能基で化学修飾されてなる充填剤の、ベンゼンボロン酸に対する特異的に強い保持力は、ボロン酸基が解離して生じるボロン酸陰イオンと、充填剤の芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に結合せしめられている水酸基との相互作用に基づくと考えられる。このため、ボロン酸基及び芳香環上の水酸基の解離に影響を与えると予想される移動相のpH値と、充填剤によるベンゼンボロン酸誘導体に対する分離係数との関係について調べた。
【0074】
詳細には、下記表5に示されるような各pH値を与えるリン酸緩衝溶液とアセトニトリルとの50:50(容量比)混合溶媒を移動相として、3,4−OH型充填剤を用いて、ベンゼン及びベンゼンボロン酸を分離して、それらの保持特性(k’値)を測定し、その結果を、下記表5に示した。また、それら保持特性から、ベンゼンに対するベンゼンボロン酸の分離係数を算出して、その結果を、下記表5に併せ示した。なお、表5中のpH値の後の括弧内の数字は、リン酸緩衝溶液とアセトニトリルとを混合した後に測定した、実際の移動相のpH値を示している。
【0075】
【表5】
【0076】
この表5に示される結果から明らかなように、ベンゼンに対するベンゼンボロン酸の分離係数は、pHの変化によって、大きく変化することが示されたのである。より詳細には、移動相のpHの違いによってベンゼンの保持特性(k’値)は変化しないが、ベンゼンボロン酸の保持特性(k’値)はpH9〜10で大きな値を示し、それに伴い分離係数もpH9〜10で最大値を示した。その理由としては、ボロン酸基は、アルカリ性になる程、解離し易くなることが知られており、酸性移動相中では、ボロン酸の解離が少なくなり、芳香環上の水酸基との相互作用が形成され難いためであると考えられる。また、pH11以上で分離係数の減少が観察されたが、それは、芳香環上の炭素原子に結合せしめられている水酸基が解離して、ボロン酸陰イオンとの結合が形成され難くなったためと考えられる。
【0077】
また、pH10における分離係数は、pH3における分離係数の150倍以上に達し、ボロン酸誘導体を分離する際に、用いる移動相のpH値を変化させることにより、充填剤によりベンゼンボロン酸を特異的に保持させることと、保持しているベンゼンボロン酸を溶出させることが容易に制御し得ることが理解されるのである。
【0078】
実施例 4
───各種ボロン酸誘導体に対する保持特性───
3,4−OH型充填剤を用いて、アセトニトリル:0.02Mリン酸緩衝溶液(pH3)=50:50(容量比)或いはアセトニトリル:0.02Mリン酸緩衝溶液(pH4)=50:50(容量比)を移動相として、下記表6に示される各種ボロン酸誘導体を分離し、それぞれの保持特性を測定し、それを、下記表6に併せ示した。
【0079】
【表6】
【0080】
この表6の結果から、ボロン酸誘導体の保持特性は、前記実施例3の場合と同様に、移動相のpHの上昇に伴って増加する傾向を示し、従って本発明に従う充填剤は、ベンゼンボロン酸以外のボロン酸誘導体をも、特異的に保持するものであると考えられる。
【0081】
また、保持特性に対するボロン酸誘導体の置換基の影響について見ると、ニトロ基のような電子吸引性基で置換されたボロン酸誘導体は、ベンゼンボロン酸より大きな保持特性を示したのに対して、メチル基のような電子供与性基で置換された誘導体は、ベンゼンボロン酸よりも小さな保持特性を示した。これは、同じ移動相条件であっても、電子吸引性の官能基で置換されたボロン酸誘導体は、ボロン酸陰イオンがより安定化されて、充填剤と相互作用し易くなるために、充填剤による保持力が増大するのに対して、電子供与性の官能基で置換されたボロン酸誘導体は、充填剤と相互作用し難くなるために、充填剤による保持力が減少するためであると考えられる。従って、表6に示される各ボロン酸誘導体に対する保持特性の違いは、主として保持される化合物の化学的性質の違いにより生じていると考えられ、本発明に従う充填剤によれば、ボロン酸誘導体同士を効果的に分離することが可能であることが示唆されるのである。
【0082】
実施例 5
───ベンゼンボロン酸の保持に対する酸或いは塩基の影響───
リン酸緩衝液を用いずに、下記表7に示される酸や塩基を用いて調製された溶媒を移動相として、3,4−OH−P型充填剤を用いて、ベンゼンとベンゼンボロン酸を分離した際の保持特性を測定し、また、その保持特性からベンゼンに対するベンゼンボロン酸誘導体の分離係数を求め、その結果を、下記表7に併せ示した。
【0083】
【表7】
【0084】
かかる表7に示される結果から明らかなように、トリフルオロ酢酸、酢酸、N−メチルモルホリン、トリエチルアミンの如き有機酸や有機塩基を用いて調製した溶媒からなる移動相であっても、前記実施例3で示した、リン酸緩衝液を用いた場合と同様に、pH値の変化に拘らず、ベンゼンの保持特性(k’値)は略同じであるが、ベンゼンボロン酸の保持特性(k’値)は、ボロン酸陰イオンと芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に結合している水酸基との相互作用が形成され易いpH値を与える移動相を用いて分離した時程、より長くベンゼンボロン酸が保持されるのであり、pH値の変化によるボロン酸誘導体の保持特性の変化は、リン酸緩衝液を用いずにpH値を調製した場合でも惹起されることが確認された。更に、ベンゼンボロン酸は、水を用いずに調製した有機溶媒を移動相として用いて分離した場合では、トリフルオロ酢酸を添加した有機溶媒を移動相として用いた場合には、保持特性が比較的小さくなるのに対して、N−メチルモルホリンを添加した有機溶媒を移動相として用いた場合には、保持特性が比較的大きくなるのである。従って、芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に水酸基が結合している芳香族官能基で化学修飾された本発明に従う充填剤は、非水系の移動相を用いた場合でも、ボロン酸誘導体を効果的に分離し得ることが理解されるのである。
【0085】
このように、前記実施例2、3、4及び5の結果から、芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に水酸基が結合している芳香族官能基で化学修飾された本発明に従う充填剤は、移動相のpH値を調整することにより、ボロン酸誘導体に対する保持特性を制御することが可能であり、従って、移動相のpH値を調整して、充填剤によりボロン酸誘導体をより特異的に保持するようにしたり、逆に充填剤に保持されているボロン酸誘導体を溶出し易くしたり出来る特性を有する充填剤であることが示されたのである。
【0086】
実施例 6
───一置換ベンゼンの保持特性の評価───
ここでは、芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に水酸基が結合している芳香族官能基で化学修飾された本発明に従う充填剤を、逆相クロマトグラフィー用充填剤として用いた場合の分離特性について調べることとする。
【0087】
より詳細には、3,4−OH型充填剤、或いは従来から逆相クロマトグラフィー手法に用いられるC18型充填剤を用いて、各種一置換ベンゼンを分離し、その保持特性を求めた。そして、その対数値を求めて、下記表8に示した。また、各種一置換ベンゼンのLog Pの値も、下記表8に併せ示した。ここにおいて、Log Pの値とは、化合物のオクタノールと水との分配係数であり、この値が大きい程、疎水性が大きい化合物であることを示す。なお、両充填剤の疎水性の大きさには、著しい差があることから、3,4−OH型充填剤で各種一置換ベンゼンを分離する際には、移動相としてメタノール:水=30:70(容量比)の混合溶媒を用い、またC18型充填剤で各種一置換ベンゼンを分離する際には、移動相としてメタノール:水=60:40(容量比)の混合溶媒を用いた。
【0088】
【表8】
【0089】
この表8に示された結果から、ベンゼン(置換基:−H)、トルエン(置換基:−CH3 )及びエチルベンゼン(置換基:−CH2 CH3 )の保持特性の対数(Log k’値)の比較から、3,4−OH型充填剤、C18型充填剤共に、疎水性基であるメチレン基(−CH2 −)を多く有する化合物程、より強く保持し得る、逆相クロマトグラフィー用充填剤の特徴的な性質を有するところから、本発明に従う充填剤は、逆相クロマトグラフィー用充填剤としての分離特性を発揮し得ることが確認されたのである。
【0090】
また、一置換ベンゼンの保持特性の対数と、Log P値との相関をみると、C18型充填剤のように、アルキル基をシリカゲルに結合した充填剤では、相関係数が0.99となり、C18型充填剤の分離特性が、主として疎水性相互作用により支配されていることが示されたのに対して、本発明に従う3,4−OH型充填剤では、相関係数は0.69と、比較的低い値となり、3,4−OH型充填剤の保持特性が疎水性のみによるものでないことが示唆された。また、化合物の疎水性の大きさから予測される保持特性よりも、ニトロ基やエステル、或いはシアノ基等の電子吸引性の官能基が結合している化合物の保持特性がより大きいことから、本発明に従う充填剤は、疎水性相互作用の他にも、電子的相互作用による分離特性を有するものであると考えられる。
【0091】
実施例 7
───電子吸引性基を有する化合物に対する保持特性───
メタノール:水=20:80(容量比)を移動相として、3,4−OH型充填剤、3,4,5−OH型充填剤、CH3 型充填剤、及びC18型充填剤のそれぞれを用いて、ベンゼン及びニトロベンゼンを分離して、それらベンゼンの保持特性(k’A )、電子吸引性基であるニトロ基が結合したニトロベンゼンに対する保持特性(k’C )、並びにベンゼンに対するニトロベンゼンの分離係数(k’C /k’A )を求め、それを、下記表9に示した。ここで、ベンゼンは電荷移動を与える官能基を持たない化合物であることから、分離係数(k’C /k’A )の値が大きい程、電子吸引性基を有する化合物に対して強く相互作用する充填剤であると考えられる。
【0092】
【表9】
【0093】
この表9に示されるように、3,4−OH型充填剤の分離係数は、C18型充填剤の分離係数の3.4倍、芳香環や水酸基を有していないCH3 型充填剤の分離係数の1.8倍という高い値を与え、芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に水酸基が結合している芳香族官能基の作用により、電子吸引性基を有する化合物と強く相互作用する特性が発揮され得ることが示唆されるのである。また、3,4−OH型充填剤と3,4,5−OH型充填剤とを比較すると、3,4,5−OH型充填剤のように、芳香環上の水酸基の数が増加した芳香族官能基で化学修飾されてなる充填剤は、疎水性が低下し易くなる反面、電子吸引性基を有する化合物との相互作用が増大するところから、むしろ分離係数が大きくなって、分離能が向上することが示された。なお、表9においては、全ての充填剤において、同一の移動相を用いて分離を行なったが、移動相に含有するメタノールの濃度を低下させて、3,4−OH型充填剤における保持を増大させることにより、疎水性相互作用の増大に基づいて、ベンゼンとニトロベンゼンとの実質的な分離能は、C18型充填剤のそれよりも増大するものであると考えられる。
【0094】
実施例 8
───充填剤の水素結合性───
分子内にカルボニル基や含窒素複素環の構造を有するカフェインは、水素結合性の化合物であるところから、このカフェインに対する保持特性を調べることにより、充填剤の水素結合性化合物に対する相互作用の評価が可能となる。従って、本実施例では、カフェインに対する保持特性を検討することとする。
【0095】
より詳細には、メタノール:水=20:80(容量比)の混合溶媒をを移動相として、3,4−OH型充填剤、3,4,5−OH型充填剤、CH3 型充填剤及びC18型充填剤のそれぞれを用いて、フェノール及びカフェインを分離して、フェノールの保持特性(k’D )及びカフェインの保持特性(k’E )を測定し、更にフェノールに対するカフェインの分離係数(k’E /k’D )を求めた。そして、その結果を、下記表10に示した。なお、フェノールは、カフェインと比較して水素結合の作用を受け難く、主として疎水性相互作用により保持される化合物であるところから、フェノールに対するカフェインの分離係数が大きい程、水素結合性の化合物に対して強く相互作用する充填剤であると考えられる。
【0096】
【表10】
【0097】
この表10に示される結果から明らかなように、3,4−OH型充填剤の分離係数は、CH3 型充填剤の約64倍であり、C18型充填剤の分離係数の約22倍という非常に大きな値となったのである。従って、本発明に従う充填剤は、水素結合性の化合物に対して、より強い相互作用を発揮することが示唆されたのである。このように、本発明に従う充填剤は、疎水性相互作用や電子吸引性基を有する化合物に対する相互作用の他にも、水素結合性の化合物に対する相互作用をも有する充填剤であると考えられる。また、3,4−OH型充填剤と3,4,5−OH型充填剤の分離係数を比較すると、前記実施例7で得られた結果と同様に、3,4,5−OH型充填剤は、芳香環上の水酸基の数が増加することにより、疎水性が低下する反面、水素結合性の化合物との相互作用が増大するところから、むしろ分離係数が大きくなって、分離能が向上することが示された。更に、表10に示される充填剤の内で、カフェインの保持特性とフェノールの保持特性との差が最も大きいのは、3,4−OH型充填剤であり、C18型充填剤よりも有利に、カフェインとフェノールを分離し得ることが示されたのである。
【0098】
実施例 9
───異性体の分離───
3,4−OH型充填剤、CH3 型充填剤、及びC18型充填剤のそれぞれを用いて、下記表11に示される混合溶媒を移動相として、官能基の結合位置の違いにより、3つの異性体が存在するメチルアセトフェノンの分離を行なって、保持特性を測定し、それから各異性体同士の分離係数を求めて、下記表11に示した。なお、下記表11中において、移動相の混合割合は、容量比で示している。また、表11において、m−体/o−体は、o−異性体に対するm−異性体の分離係数、p−体/o−体は、o−異性体に対するp−異性体の分離係数、p−体/m−体は、m−異性体に対するp−異性体の分離係数を表わしている。
【0099】
【表11】
【0100】
かかる表11の結果から明らかなように、CH3 型充填剤或いはC18型充填剤のメチルアセトフェノンのオルト異性体に対するメタ異性体の分離係数(m−/o−)は、それぞれ1.11及び1.00であり、殆ど分離することが出来ないのに対して、3,4−OH型充填剤のオルト異性体に対するメタ異性体の分離係数(m−/o−)は、1.22であり、オルト異性体とメタ異性体とを分離することが出来ることが示された。オルト異性体に対するパラ異性体の分離係数(p−/o−)も、同様に、3,4−OH型充填剤を用いて分離した時に、最も高い値が得られた。また、メタ異性体に対するパラ異性体の分離係数(p−/m−)については、3,4−OH型充填剤は、C18型充填剤と同等(0.96の逆数は1.04)の分離係数を与えた。従って、本発明に従う充填剤を用い液体クロマトグラフィー手法を行なえば、従来から広範囲の化合物の分離に適用されているアルキル基結合型充填剤であるC18型充填剤では分離が困難である異性体を、有利に分離し得ることが確認されたのである。
【0101】
ところで、前記の各実施例では、カラムとして、内径:4.6mmφ、長さ:150mmのものを使用しているが、何等、このようなものに限定されるわけではなく、カラムの内径や長さは、目的とする化合物の分離が行なわれる範囲において、適宜に選定され得るものである。また、移動相溶媒の送液方法についても、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の如き送液ポンプを使用する方法に限定されることなく、圧縮空気による加圧送液方法を採用するフラッシュクロマトグラフィー手法、重力を利用した自然流下を利用するオープンカラムクロマトグラフィー手法、或いは毛細管現象によって溶媒の移動を利用する薄層クロマトグラフィー手法にも適用出来ることは、言うまでもないことである。
【0102】
また、本発明に従う液体クロマトグラフィー用充填剤は、液体クロマトグラフィー手法に利用されるだけでなく、ボロン酸誘導体に対する吸着剤として使用され得るものである。
【0103】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に従う液体クロマトグラフィー用充填剤によれば、それを用いて液体クロマトグラフィー分離を行なうことにより、有利にボロン酸誘導体を保持、分離することが出来るのである。また、かかる充填剤は、汎用的な逆相クロマトグラフィー用充填剤としても用いることが出来、各種の化合物を有利に保持、分離することが出来る。更に、本発明に従う充填剤にあっては、芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に水酸基が結合せしめられていることにより、その保持特性は、疎水性相互作用のみでなく、電子的相互作用や水素結合性相互作用によって、発現されるのである。
【0104】
また、本発明に従うボロン酸誘導体の分離方法によれば、充填剤として、ボロン酸誘導体を有利に保持し得る液体クロマトグラフィー用充填剤が用いられているところから、ボロン酸誘導体を効率的に分離することが出来るのである。
【0105】
さらに、本発明に従う逆相クロマトグラフィー手法による分離方法にあっては、前記の如き優れた特性を有する充填剤を用いるところから、従来の逆相クロマトグラフィー用充填剤を用いた場合には分離することが出来なかった、疎水性の類似する化合物でも、電子的相互作用や水素結合性相互作用の相違によって、効率的に分離し得るのである。
Claims (5)
- 芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に水酸基が結合せしめられている芳香族官能基にて化学修飾された多孔性担体より構成されていることを特徴とする液体クロマトグラフィー用充填剤。
- 前記多孔性担体が、シリカゲル或いは多孔性ポリマーである請求項1に記載の液体クロマトグラフィー用充填剤。
- 液体クロマトグラフィー手法によってボロン酸誘導体を分離するに際して、かかるボロン酸誘導体を特異的に保持する充填剤として、芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に水酸基が結合せしめられている芳香族官能基にて化学修飾された多孔性担体より構成される充填剤を用いることを特徴とする分離方法。
- 逆相液体クロマトグラフィー手法による分離に際して、充填剤を、芳香環上の少なくとも一組の隣合う炭素原子に水酸基が結合せしめられている芳香族官能基にて化学修飾された多孔性担体にて構成したことを特徴とする分離方法。
- 前記多孔性担体が、シリカゲル或いは多孔性ポリマーである請求項3又は請求項4に記載の分離方法。
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