JP3563092B2 - セルフバイアス・プラズマcvdコーティング法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、半導体、ガラス、プラスチック等の表面に窒化シリコン(Si3N4)或いは酸化シリコン(SiO2)をコーティングする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化シリコン(Si3N4)膜は、高硬度であること、屈折率が高いこと、防湿性に優れること等の優れた特性により、半導体、光学ガラス、プラスチックの表面コーティングに広く用いられている。
【0003】
Si3N4のコーティングは、主にプラズマCVD法により行なわれている。従来の平行平板電極形プラズマCVD装置を図9により説明する。密閉室から成る反応室51内に下部電極52と上部電極53を平行に配置する。上部電極53には整合回路57を介して高周波電源59を接続する。下部電極52は接地すると共に、被コーティング物を加熱するためのヒータ54を設ける。反応室51には、原料ガス(Si3N4コーティングの場合、モノシランSiH4及びアンモニアNH3等)が被コーティング物58の上面を均一に流れるような適当な位置に原料ガス導入路55及び排出路56を設ける。コーティングを行なうときは、被コーティング物58を下部電極52上に置き、反応室51を密閉した後、ガス導入路55から原料ガスを反応室51内に導入し、上部電極53より13.56MHzの高周波電力を投入する。これにより原料ガスは励起、プラズマ化され、シリコン及び窒素の原子・分子ラジカルやイオンが被コーティング物58の表面で反応して吸着し、コーティング層が生成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のプラズマCVD法では、プラズマを使用しない場合よりは低温でよいが、それでも被コーティング物58を300℃程度に加熱しなければならない。このため、装置にはヒータ54を備えなければならず、また、高温に加熱すると変質する被コーティング物58(例えば、プラスチック等)に対してはコーティングを行なうことができなかった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、被コーティング物を加熱することなく窒化シリコン及び酸化シリコンをコーティングすることのできる方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために成された本発明に係るセルフバイアス・プラズマCVDコーティング法は、
a)反応室内で上部電極及び下部電極を略平行に設け、
b)上部電極を接地し、下部電極に整合回路を介して高周波電源を接続し、
c)反応室内にモノシランを含む原料ガスを導入し、
d)下部電極の近傍に被コーティング物を配置し、
e)下部電極を冷却しつつ下部電極より高周波電力を投入する、
ことにより、被コーティング物の表面に窒化シリコン又は酸化シリコンの皮膜を堆積することを特徴とする。
【0007】
【作用】
従来の方法と異なり、本発明に係る方法では下部電極を電気的に浮遊状態として上下電極間にプラズマを生成するため、下部電極が負となるセルフバイアスが生成されるとともに、下部電極(カソード)近傍にイオンシースが生成される。これによりプラズマ中のシリコンイオンが加速され、下部電極近傍に置いた被コーティング物の表面で、原料ガスとしてモノシラン及びアンモニアを用いた場合には窒化シリコン、モノシランと酸素、N2Oを用いた場合には酸化シリコンの皮膜が生成される。
【0008】
【実施例】
本発明の第1の実施例であるバッチ式のプラズマCVD装置の構成を図1により説明する。密閉された反応室11中に上部電極12及び下部電極13を略平行に配し、上部電極12は接地し、下部電極13は整合回路14を介して高周波電源15(13.56MHz)に接続する。上部電極12を吊り下げる棒18にはガス通路を設け、上部から原料ガスを反応室11内に導入するようにする。下部電極13の下には冷却装置17を設け、外部からの冷却水により下部電極13を冷却する。下部電極13及び冷却装置17を支えるステム19にはガス排出口20を設け、ポンプ16により反応室11内の圧力を調整する。
【0009】
本実施例のCVD装置を用いて窒化シリコンSi3N4をコーティングする場合、下部電極13上に被コーティング物21を載せ、原料ガスとしてモノシランSiH4とアンモニアNH3を反応室11内に導入しつつ下部電極13に高周波電力を投入する。これにより上記の通り下部電極13の近傍にイオンシースが生成され、加速されたイオンが被コーティング物21上に堆積して薄膜が形成されてゆく。
【0010】
下部電極13の電位を電圧計22で測定しつつ、高周波電力の大きさを変化させると、図2に示すように、下部電極13のセルフバイアスは約250〜700Vの間で変化する。なお、このときの原料ガス組成はSiH4:NH3=2.6:6、圧力は0.14Torrである。そこで、以下に、セルフバイアスを種々の値に変化させたときの成膜の各種性質の変化を示す。
【0011】
まず、成膜速度であるが、図3に示すように、セルフバイアス電圧を大きくするに従って成膜速度は大きくなる。従来の(図9)アノード結合プラズマCVD装置では、被コーティング物(シリコンウェハ)を300℃に加熱しても成膜速度は約40nm/min程度(矢印)でしかないのに対し、本発明の方法によると、約200V以上のセルフバイアス電圧が掛かるようにする(投入高周波電力では、約100W以上)ことにより、従来の方法よりも大きい成膜速度が得られる。
【0012】
窒化シリコンはその高屈折率が特徴であるが、原料ガスの混合比(SiH4:NH3)を変えた場合に、形成された窒化シリコン膜の屈折率がどのように変化するかを調べたのが図4である。屈折率はエリプソメータで測定した。図4に示される通り、本発明の方法ではν=1.8〜2.1の高屈折率が得られている。
【0013】
生成された窒化シリコン層のウェットエッチングに対する強さを調べるため、25℃、1%HF(フッ化水素)水溶液中でのエッチング速度を測定した。その結果、図5に示す通り、セルフバイアス電圧を大きくするに従ってエッチング速度は低下することがわかる。従来の方法(アノード結合)で形成した窒化シリコン膜のエッチング速度は約40nm/min(矢印)程度であるため、本発明の方法では、約400V以上のセルフバイアス電圧が掛かる状態で成膜することにより、従来よりもウェットエッチングに強い窒化シリコン膜を形成することができる。
【0014】
次に、形成された窒化シリコン膜中の水素濃度をIR(赤外線)分光光度計で測定したところ、図6に示すように、セルフバイアス電圧が大きい程水素濃度が低くなっていた。従来の方法(アノード結合)で形成した窒化シリコン膜の水素濃度は約22×1021/cm(矢印)であるため、本発明の方法に従って約400V以上のセルフバイアス電圧が掛かる状態で成膜することにより、従来よりも水素濃度の低い窒化シリコン膜を形成することができる。
【0015】
以上の各特性の測定結果からも予想できる通り、窒化シリコン膜の硬さ(動硬さ計で測定した値)についても、図7に示す通り、セルフバイアス電圧を大きくすることにより硬さが上昇し、約700V以上のセルフバイアス電圧で成膜することにより、従来の方法(アノード結合)で形成した窒化シリコン膜の硬さ約690kg/mm(矢印)を上回る硬さを得ることができる。
【0016】
本発明の第2実施例として、連続処理型のプラズマCVD装置を図8に示す。本実施例のCVD装置では、本発明に従い、下部電極42は整合回路を介して高周波電源と接続され、下部電極42の近傍にイオンシース46が生成するように構成されている。ただし、本実施例のCVD装置では特に上部電極を設けず、反応室41自体を接地することにより、下部電極42に対向する反応室41の天井部分を陽極(アノード)として作用させている。
【0017】
本CVD装置は、磁気テープ等のプラスチックフィルム45に窒化シリコンのコーティングを連続的に行なうための装置であり、被コーティング物であるフィルム45は2個のローラ43、44によって、下部電極(カソード)42上に生成されるイオンシース空間46(厚さ数mm〜10数mm程度)内で伸張され、移動するように設定されている。そして、プラスチックフィルム45に伸び、歪等が生じないように、本CVD装置では下部電極42は外部から導入、循環される冷却水によって常に冷却される。
【0018】
【発明の効果】
本発明に係る方法では、被コーティング物を加熱する必要がないため、加熱により変質或いは破壊する恐れのあるプラスチックや電子部品等に対しても窒化シリコン、酸化シリコンのコーティングを行なうことができる。従って、本発明に係る方法は、例えば記録テープ、光学素子(レンズ、プリズム等)等のコーティングに特に適している。また、装置にヒータを必要としないため、装置の小型化、低コスト化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例であるバッチ式プラズマCVD装置の構造を示す断面図。
【図2】第1実施例のプラズマCVD装置の高周波投入電力とセルフバイアス電圧との関係を示すグラフ。
【図3】同装置のセルフバイアス電圧と窒化シリコン成膜速度との関係を示すグラフ。
【図4】原料ガスのモノシラン/アンモニア構成比と生成された窒化シリコン膜の屈折率の関係を示すグラフ。
【図5】セルフバイアス電圧と生成された窒化シリコン膜のウェットエッチング速度との関係を示すグラフ。
【図6】セルフバイアス電圧と生成された窒化シリコン膜の水素濃度との関係を示すグラフ。
【図7】セルフバイアス電圧と生成された窒化シリコン膜の動硬さの関係を示すグラフ。
【図8】本発明の第2実施例である連続式プラズマCVD装置の構造を示す断面図。
【図9】従来のアノード結合プラズマCVD装置の構造を示す断面図。
【符号の説明】
11…反応室、 12…上部電極、 13…下部電極、 14…整合回路、 15…高周波電源、 17…冷却装置、 20…ガス排出口、 21…被コーティング物、 41…反応室、 42…下部電極、 43、44…ローラ、 45…被コーティング物(プラスチックフィルム)、 46…イオンシース

Claims (3)

  1. a)反応室内で上部電極及び下部電極を略平行に設け、
    b)上部電極を接地し、下部電極に整合回路を介して高周波電源を接続し、
    c)反応室内にモノシランを含む原料ガスを導入し、
    d)下部電極の近傍に被コーティング物を配置し、
    e)下部電極を冷却しつつ下部電極より高周波電力を投入する、
    ことにより、被コーティング物の表面に窒化シリコン又は酸化シリコンの皮膜を堆積するセルフバイアス・プラズマCVDコーティング法。
  2. a)反応室内の下部に略水平に設けられ、整合回路を介して高周波電源に接続され、冷却装置を備えた、被コーティング物を載置する下部電極と、
    b)反応室内の上部に、下部電極に略並行に設けられ、電気的に接地された上部電極と、
    c)反応室内にモノシランを含む原料ガスを導入するための原料ガス導入管と、
    を備えることを特徴とする、被コーティング物の表面に窒化シリコン又は酸化シリコンの皮膜を堆積するためのセルフバイアス・プラズマCVDコーティング装置。
  3. a)電気的に接地された反応室と、
    b)反応室内の下部に設けられ、略水平部分を有し、整合回路を介して高周波電源に接続され、冷却装置を備えた下部電極と、
    c)テープ状の被コーティング物を下部電極の上記略水平部分の直上に掛け渡して走行させるべく設けられた1対のローラと、
    d)反応室内にモノシランを含む原料ガスを導入するための原料ガス導入管と、
    を備えることを特徴とする、テープ状の被コーティング物の表面に窒化シリコン又は酸化シリコンの皮膜を連続的に堆積するためのセルフバイアス・プラズマCVDコーティング装置。
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