JP3561618B2 - 有機物分解合成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、海水などの魚類、貝類が生息する被処理水に含まれる有機物を分解あるいは合成する有機物分解合成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
海水、湖沼水、河川水あるいは水槽水などには、魚貝類の排泄物の他に、微生物の死骸や排泄物など、多様な有機物が含まれている。この有機物の含有量の多少は、魚類や貝類の生育に重大な影響を与える。このため、この有機物を除去あるいは分解する技術の開発が求められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の技術では、良好な有機物の分解が達成されていなかった。例えば、有機物を分解する薬剤を投入する方法では、有機物を分解した後に薬剤が残り、これが新たな汚染を引きおこす。特に、魚類や貝類が生息する環境下での薬物汚染は、これらの生育を阻害するだけでなく、これらを食用に供することが不可能になる。
【0004】
また、TiO2などの半導体光触媒を用いる方法も考えられるが、この方法では、TiO2を触媒活性させるのが容易ではない。なぜなら、TiO2を光励起するためには紫外線などの短波長光の照射が必要になるが、これは水によって吸収されるため、TiO2に紫外線を照射する特別の工夫が必要になる。
【0005】
そこで本発明は、被処理水に含まれる有機物を効率よく分解あるいは合成でき、しかも魚類や貝類に悪影響を与えることのない有機物分解合成装置を提供することを目的とする。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、被処理水に含まれる有機物を分解・合成する有機物分解合成装置において、GeとSiとがヘテロ接合又は接触し、SiがSiC、SiO 2 及びCのうち少なくともいずれか1つからなる触媒機能増強材と接触又は接合するものを含んで構成され、前記被処理水中に設置される半導体光触媒と、半導体光触媒にGeのバンドギャップエネルギー以上のエネルギーを有する光を投射する投光手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、半導体光触媒はバンドギャップエネルギー;Eg=0.67eVのGeを含んでいるので、水中で吸収されることの少ない波長1.85μmより短い近赤外線や可視光で光励起される。ここで、Geは光励起キャリアが再結合で消滅する確率の低い間接遷移型半導体であるため、半導体光触媒は容易に触媒活性され、これに接触する有機物は容易に酸化・還元反応で分解・合成される。また、Geは魚類や貝類に全く無害であり、不均一系の触媒として作用するため、被処理水を汚染させることもない。
【0011】
Siを含むこととしており、可視光による光励起は更に促進される。また、SiCやC(例えばグラファイト、アモルファスカーボン、木炭、ダイヤモンドなど)などを含むこととしており、これら半導体材料のバンド構造は禁制帯中に有機物の酸化・還元準位を有しているので、光励起による光キャリアを効率よく有機物に授受し、その分解を促進する。特に、Ge半導体とSi半導体がヘテロ接合(または接触)し、Si半導体がSiCやC、SiO2からなる触媒機能増強材と接触または接合しているので、光キャリアの生成効率と生成した光キャリアの有機物に対する授受効率を高め、良好な有機物の分解が実現できる。
【0012】
さらに、本発明の有機物分解装置は、投光手段に電力を供給する太陽電池を更に備えることを特徴としてもよい。
【0013】
近海あるいは海岸の海水中で使用するときは、太陽光エネルギーにより発電電力を得ることができ、この電力で投光手段を発光させれば、経済性に優れている。また、微生物が異常発生しやすい夏期には発電量が多く、したがって半導体光触媒をより強く触媒活性して有機物をより多く分解し、清浄な海水にできる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明のいくつかの実施形態を説明する。なお、図中において、同一要素には同一の符号を付する。
【0015】
図1は、本発明を真珠貝などの養殖筏に適用した第1実施形態を示す。海上で潮位に応じて浮動する養殖筏100は、一対のフロート101A,Bと、これらに掛け渡された連結板材102とを有し、これと垂直に交叉するように、棒材103の一端が連結板材102に固定されている。棒材103の大半は海中に没しており、その先端には養殖ネット104が固定されている。また、棒材103の上部には電源箱106が固定され、棒材103の先端には水平方向に伸びる支持棒51の基端が固定され、その先端にはランプ15が固定されている。
【0016】
電源箱106の上部には太陽電池パネル14が設けられ、これからリード線が棒材103に沿ってランプ15に延びている。そして、発光ダイオード等からなるランプ15は、養殖ネット104を臨むようにセットされている。なお、太陽電池パネル14は常に海面下に位置するように、固定する位置が調整されている。また、電源箱106などはエポキシ樹脂などで十分な防水処理が施されている。
【0017】
図2は本実施形態の要部を示している。棒材103の先端に取り付けられた一対のバー41A,Bは鉛直方向に互いに平行に延び、これに掛けられた保持ネット42で触媒プレート43を保持することにより養殖ネット104が構成されている。そして、触媒プレート43の表面には貝類(例えば真珠具)が付着して生息している。なお、ランプ15からの光は海水を透過し、触媒プレート43に照射される。ここで、ランプ15の先端に光ファイバを取り付け触媒プレート43の近傍に光を導くようにしてもよい。
【0018】
触媒プレート43は後に詳述するように、Geを含む半導体光触媒である。
【0019】
図3は電源箱106の詳細な構成を示している。長方体形状のハウジング61の上部開口には、ガラス板62が嵌め込まれて内部は気密にされている。ハウジング61の下部にはバッテリー18が置かれ、この上部には充放電回路19がセットされている。そして、ガラス板62の下部には太陽電池パネル14が固定されている。さらに、ハウジング61の側部からリード線63が導かれ、この先端にはランプ15が接続されている。
【0020】
図4は電気系統の回路図を示している。昼間には、太陽電池パネル14に太陽光が照射され、その発電電力は光源(ランプ)15に与えられる。そして、余剰電力は充放電制御回路19を経てバッテリー18に与えられ、蓄電される。夜間は、充放電制御回路19を経てバッテリー18の電力が光源15に与えられる。このため、1日24時間の連続投光が可能になる。
【0021】
ここで、太陽電池パネル14A,Bの受光面は海面下にあるので、受光面は常に海水で洗われるため、塩分が結晶化することはない。このため、太陽光の入射率が低下することはなく、長期にわたって太陽光発電を一定に維持できる。また、海面と受光面の距離は潮位に変化に拘らず常に一定なので、受光効率も一定に保たれる。
【0022】
次に、図2に示す触媒プレート43について詳細に説明する。触媒プレート43はGeの微粒子をプロピレン樹脂中に分散させて固化・成型した樹脂板であり、不均一系の半導体光触媒として機能する。ここで、Geに代えてSi粒子を含んでいてもよく、またGe粒子に加えて、Si粒子を含んでいてもよく、さらにGe粒子またはSi粒子に加えてSiC粒子やカーボン粒子を含んでいてもよい。さらに、Si粒子の表面には極薄のSiO2が形成されていてもよい。
【0023】
これら触媒の構成要素のエネルギー準位と、各種の有機物の酸化・還元準位を図示すると、図5のようになる。半導体としてのSiCやカーボン結晶(グラファイトやダイヤモンド)の禁制帯の範囲内には、多くの有機物の酸化・還元準位が位置している。したがって、Geに加えてSiCやカーボン粒子を触媒プレート43に含ませておくと、触媒活性が著しく高まることがわかる。
【0024】
すなわち、第1に、GeやSiは間接遷移型半導体であってバンドギャップエネルギーが小さいため、近赤外光や赤色光などの可視光によって効率よく酸化・還元作用のための電子/正孔対を形成する。第2に、SiCやCはその禁制帯の範囲が有機物の酸化・還元準位を含んでいるため、電子/正孔の授受が容易である。以上の2つの理由により、本実施形態の触媒プレート43プロピレンなどのは樹脂板中に、光励起が容易なGeやSiなどの半導体と、触媒機能を増強させるSiCまたはCなどの半導体を含んでいることが望ましい。
【0025】
さらに望ましくは、Ge粒子とSi粒子が半導体ヘテロ接合(または接触)し、Si粒子とSiCまたはC粒子がヘテロ接合(接触)しているときには、光励起によるキャリアの移送(Ge→Si→SiC,Cへの移送)が容易になり、励起光の伝搬(SiC,C→Si→Geへの伝搬)も容易になるので、触媒活性は更にに高まる。
【0026】
なお、触媒プレート43については、図6に示すようにGe粒子とSi粒子とSiC粒子を混ぜて焼結によりプレート状等に成形してもよい。また、図7に示すように、Ge粒子とSi粒子、Ge粒子とSiC粒子、Si粒子とSiC粒子が互いに接触するように、樹脂中に分散させてプレート状に成型してもよい。さらに、図8に示すように、Ge粒子とSi粒子とSiC粒子が相互にダブルヘテロ接合(接触)するように、樹脂中に分散させてもよい。さらに、図9に示すように、GeとSiとSiCが相互にヘテロ接合した粒子を得て、これを樹脂でプレート状にしてもよい。ここで、GeやSiに代えてGeSi混晶を用いてもよく、SiCに代えてC粒子を用いてもよい。
【0027】
次に、上記第1実施形態の作用と効果を、特に図1,2を参照して説明する。図1,2に示すにように、触媒プレート43とランプ15を海中にセットし、触媒プレート43に生きた真珠貝をセットしておく。昼間は太陽の光で太陽電池パネル14は発電し、これによりランプ15は点灯する。夜間はバッテリーの放電によりランプ15が発光し、したがって1日24時間にわたって触媒プレート43はランプ15により光励起されている。
【0028】
ここで、触媒プレート43はGe半導体(Eg=0.67eV)を含んでおり、ランプ15の発光ダイオードからは赤色光を含む可視光が投射されている。このため、波長1.85μmより短波長の光により触媒プレート43中のGeで電子/正孔対が生成される。また、触媒プレート43中のSi(Eg=1.1eV)では、波長1.13μmより短波長の光により電子/正孔が生成され、SiCやC粒子中でも青色等の短波長光で電子/正孔が生成される。
【0029】
上記の電子/正孔のうち、特にGeやSi中で生成されたものは、隣接するSiCやC粒子に移送され、これに接触する有機物の酸化・還元準位との間で授受される。つまり、海水中に含まれた有機物は、触媒プレート43に接することで酸化あるいは還元されて分解される。このため、真珠貝の生育環境で有機物は取り除かれ、清浄に保たれる。また、微生物が異常発生したりすることもないので、真珠貝の養殖に最適な環境を実現できる。
【0030】
また、本実施形態では太陽電池パネル14を用いて発電しているため、季節に応じた最適の海水コントロールが可能になる。すなわち、海水の有機物汚染や微生物の異常発生は、低温の冬期よりも高温の夏期の方が可能性が高い。一方、太陽光発電のパワーは冬期よりも夏期の方が大きい。したがって、夏期には冬期よりも強い励起光をランプ15から触媒プレート43に与えることができ、より触媒活性を高めることができる。このため、夏期にも冬期にも、有機物の発生状況に応じた有機物分解が可能になる。
【0031】
図10は第2実施形態を示している。図1の実施形態と異なる点は、電源箱106から太陽電池パネル14が取り外され、太陽電池パネル14のみが海中に置かれていることである。この実施形態によれば、電源箱106に完全な防水処理を施すことが不要になり、操作や保守等が容易である。また、電源箱106の上面のサイズよりも大きい面積の太陽電池パネル14を用いることができ、したがって発電量を多くすることが可能になる。なお、太陽電池パネル14は海面上に設けるようにしてもよい。
【0032】
図11は第3実施形態を示している。図1の実施形態と異なる点は、太陽光の集光/投光システムが用いられていることである。連結板材102上には集光装置の本体30が設けられ、本体30に備えられた駆動部31には凹面鏡32が取り付けられ、本体30から延びる保持バー33の先端には受光器34が取り付けられている。この駆動部31は時刻と共に凹面鏡32と受光器34を回転駆動し、凹面鏡32で集光された太陽光は常に受光器34に入射されるようになっている。一方、受光器34には光ファイバ35の一端が接続され、その他端は投光器115に導かれている。
【0033】
この実施形態によれば、太陽光を光電変換することなく投光器115に導くことができる。したがって、太陽光を養殖ネット104に直接に照射できる。また、海中に電気系統がセットされることはないので、特別な防水処理が不要になる。また、夏期には冬期よりも強く半導体光触媒を光励起できる。なお、この光ファイバ方式に加えて、太陽電池によるLEDの投光方式(例えば第1実施形態)を併用してもよい。
【0034】
図12は第4実施形態を示している。ガラス製の水槽20には淡水が満たされ、金魚が飼われている。水槽20の上部には商用電源で点灯する蛍光灯21が置かれ、底部には人造砂利22と人造植物23がセットされている。ここで、人造砂利22と人造植物23は共に、樹脂中にGe,Si,SiC,C粒子などを分散させた樹脂状の半導体光触媒から成型されており、これらには蛍光灯21からの光が照射される。
【0035】
一方、水槽20の内側面には、励起ランプ115と樹脂プレート24が並行にセットされ、それぞれ一対の吸盤により固定されている。ここで、励起ランプ115は水槽20の淡水を温める機能を有すると共に、可視光を樹脂プレート24に投射する役割を有している。また、樹脂プレート24は人造砂利22や人造植物23と同様に、樹脂状の半導体光触媒で成形されている。
【0036】
この第4実施形態によれば、人造砂利22と人造植物23に含まれる半導体光触媒は、主に蛍光灯21からの光により触媒活性され、金魚の排泄物などの有機物を分解する。また、樹脂プレート24に含まれる半導体光触媒は、主に励起ランプ115からの光により触媒活性され、有機物を分解する。特に励起ランプ115は水中に設けられているため樹脂プレート24に接近しており、したがって効率よく半導体光触媒が触媒活性される。
【0037】
次に、本発明者による具体的実施例を説明する。本発明者は、Ge,Si,カーボンの各粒子を含む樹脂製の触媒プレートを用いて、真珠貝の養殖場で海水浄化の実験した。光源にはR(赤)、G(緑)、B(青)の三色のLEDを用い、電力は太陽電池から供給した。
【0038】
ここで、光源(投光器)は7種類とし、Rのみ、Gのみ、Bのみの3種の単色投光器と、RとG、GとB、BとRの3種の二色投光器と、RとGとBの三色(白色)投光器を用意した。そして、昼夜を問わず投光し続けたところ、特にR(赤)の単色投光器について顕著な結果を確認した。
【0039】
すなわち、GやBの投光器では、稚貝などによる汚れが投光器の前面(投光面)に付着し、投光効率が時間と共に低下したが、Rの投光器ではこの様な汚れは生じなかった。本発明では、半導体光触媒はGeまたはSiを含んでおり、これらはR(赤)の光で十分に励起できるので、この汚れが付着しないという作用と相まって、赤色光または赤色光を含む光源を魚類または貝類が生息する被処理水中に設置したときには、長期にわたる安定した有機物の分解合成が可能になることが判明した。
【0040】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、被処理水中にGeまたはSiを含む半導体光触媒が設けられ、これを光励起するランプ等の投光手段が設けられるので、有機物の酸化・還元反応を促進し、海水や淡水中に含まれる有機物を効率よく分解できる。このため、魚類や貝類の生息に適した環境を実現することができる。特に赤色光または赤色光を含む光を投光する構成とすれば、長期にわたる安定した有機物の分解あるいは合成が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の全体構成図。
【図2】第1実施形態の要部構成図。
【図3】第1実施形態に用いられる電源箱の図。
【図4】第1実施形態の電気系統図。
【図5】半導体の準位と酸化・還元準位を示す図。
【図6】半導体光触媒の一例を示す図。
【図7】半導体光触媒の他の例を示す図。
【図8】半導体光触媒の他の例を示す図。
【図9】半導体光触媒の他の例を示す図。
【図10】第2実施形態の構成図。
【図11】第3実施形態の構成図。
【図12】第4実施形態の構成図。
【符号の説明】
100…養殖筏、101A,B…フロート、102…連結板材、103…棒材、104…養殖ネット、15…ランプ、14…太陽電池パネル、15…ランプ、,…触媒プレート、18…バッテリー、19…充放電制御回路
Claims (2)
- 被処理水に含まれる有機物を分解・合成する有機物分解合成装置において、
GeとSiとがヘテロ接合又は接触し、SiがSiC、SiO 2 及びCのうち少なくともいずれか1つからなる触媒機能増強材と接触又は接合するものを含んで構成され、前記被処理水中に設置される半導体光触媒と、
前記半導体光触媒にGeのバンドギャップエネルギー以上のエネルギーを有する光を投射する投光手段と
を備えることを特徴とする有機物分解合成装置。 - 前記投光手段に電力を供給する太陽電池を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の有機物分解合成装置。
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Publications (2)
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