JP3560285B2 - 汚染土壌の不溶化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、汚染土壌から溶出する重金属の量を減少させるため、汚染土壌に不溶化剤を混入し不溶化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
六価クロム、砒素、カドミウム、水銀、鉛、セレン等の重金属で汚染された土壌の処理には、汚染土壌を浄化処理する方法や、原位置でまたは掘削除去後に封じ込め処理する方法がある。そして、封じ込め処理を行なう場合、対象となる汚染土壌から溶出する重金属の溶出量値(以下、汚染土壌溶出量値ともいう。)が、「土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針」に定める「溶出量値II」を超過するようであれば遮断工を行なう必要があるが、「溶出量値II」以下であれば遮水工で足り、さらに、土壌環境基準値(平成3年8月23日環境庁告示第46号)以下であれば特段の工法を必要としないとされる。
【0003】
この点、これらの処理方法をコストという観点からみると、浄化処理方法よりも封じ込め処理する方法の方が有利であり、又、封じ込め処理する方法のうちでも、遮水工の方が、さらには、当然、特段の施工をしない方が有利である。したがって、汚染土壌溶出量値をできるだけ下げて、遮水工、あるいは、特段の施工をしないで済むようにするための方法の発明が望まれている。
【0004】
そこで、これを解決する方法として、一般に、掘削した汚染土壌に地上で不溶化剤を混入し、あるいは、汚染土壌に原位置で深層機械攪拌工法などによって不溶化剤を混入し不溶化することが行なわれている。特に、特開平7−31955号公報が開示するように、汚染土壌に水硬性セメントを混入する不溶化方法は好適なものとされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この方法によっても、いまだ、汚染土壌溶出量値を下げるに充分とは言えず、土壌環境基準値以下とするには至っていない。特に、砒素の溶出量値を下げるには問題がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、掘削し地上で処理する場合であると、深層機械攪拌工法などによる原位置で処理する場合であると、にかかわらず、砒素等の重金属の溶出量値を下げることができる汚染土壌の不溶化方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明は、次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
汚染土壌に不溶化剤を混入し、前記汚染土壌が含有する砒素を不溶化する方法であって、
前記不溶化剤が、スラグ含有量31〜60%の高炉セメント、水及び塩化第二鉄からな り、水セメント比(W/C)が80〜120%とされ、前記高炉セメントが前記汚染土壌1m 3 あたり100kg以上とされ、前記塩化第二鉄が前記汚染土壌1m 3 あたり0.73kg以上とされる、ことを特徴とする汚染土壌の不溶化方法。
【0008】
(作用効果)
本発明及びその作用効果は、本発明者らが種々の実験を行ったことにより明らかになったものである。そこで、以下、かかる実験の経緯を説明することにより、本発明とその作用効果のつながりを説明する。なお、以下において、不溶化効果と記載する場合は、特別の記載がない限り、重金属の溶出濃度を下げる効果を意味するものとする。
【0009】
汚染土壌を不溶化するために用いる不溶化剤としては、いかなるものが好適であるかを選定するにつき、本発明者らは、最初に高炉セメントとナトリウムベントナイトとの混合剤(以下、CB混合剤ともいう)を使用してみることにした。ここにナトリウムベントナイトは、膨潤性に優れ、膨潤後は疎水性を示す。他方、高炉セメントは、安価な材料であり、普通ポルトランドセメントと比較して化学抵抗性に優れ、長期強度の発現が認められる。しかも、含有する硫化物、アルミニウム、鉄系化合物等のスラグが、重金属類の溶出を抑制する働きをもつとされる。
【0010】
そして、高炉セメントは、一般に、スラグ含有量が5〜30%の高炉セメントA種と、スラグ含有量が31〜60%の高炉セメントB種と、スラグ含有量61〜70%の高炉セメントC種と、さらにスラグ含有量が80%に調整されたスラグセメントに区分される。したがって、これらの区分に従い、高炉セメントを粉体状で、重金属類を含有する汚染土壌(以下、試験土壌ともいう。)に混入し、不溶化に及ぼす影響を測定した。
【0011】
試験土壌としては、鉛(Pb)、クロム(Cr)、砒素(As)、セレン(Se)、水銀(Hg)及びカドミウム(Cd)の各重金属を佐原砂1kgにつき50mg添加したものを使用した。この場合の添加は、PbはPb(NO3)2として、CrはK2Cr2O7として、AsはNa2HAs4として、SeはSeO3として、HgはHgCl2として、CdはCd(NO3)2として行なった。又、高炉セメントは、試験土壌1m3あたりに100kg混入することとした。
【0012】
図1は、この試験での材令28日(本発明の図面におけるσは、材令を示す。)における各重金属の溶出濃度を示したものである。結果は、この図1から明らかなとおり、砒素を除き、高炉セメントC種、高炉セメントB種、スラグセメントの順に重金属類の溶出濃度が高くなっていった。したがって、不溶化剤としては、スラグ含有量31〜60%の高炉セメントが、より好ましくは、スラグ含有量61〜70%の高炉セメントが適しているものと判明した。
【0013】
次に、本発明者らは、ナトリウムベントナイトの不溶化への影響を調べることにした。この実験においては、特に、不溶化が難しいとされる六価クロムを重金属として使用することにした。具体的には、六価クロムの濃度を100mg/Lに調整した2Lの溶液に、φ50×100mmに成形した材令7日の高炉セメントB種を単体で、及びナトリウムベントナイトとの混合体として浸漬させた。図2は、この実験の結果を示すものであり、六価クロム濃度の変化とpHの変化を表している。なお、材令7日における高炉セメントB種単体の透水係数は5×10-7m/secであり、CB混合体の透水係数は2×10-7m/secであった。
【0014】
実験の結果、高炉セメントB種単体は、透水係数が高いにもかかわらず、浸漬170時間での溶出濃度が43mg/Lもあった(図2中の●のうち、浸漬200時間を示すラインのすぐ左の●がこの濃度を示している。)これに対し、CB混合体は、同じ浸漬時間でも溶出濃度5mg/L以下にまで低下した(図2の▲のうち、浸漬200時間を示すラインのすぐ左の▲がこの濃度を示している。)。このことから、本発明者らは、六価クロムの不溶化処理においては、不溶化剤にナトリウムベントナイトを混合する必要があるのではないかと考えた。
【0015】
そこで、次に、本発明者らは、高炉セメントB種とナトリウムベントナイトとの混合剤を不溶化剤とした不溶化実験を行なうことにした。この場合、試験土壌としては、六価クロムを含有した7号珪砂を使用することにした。7号珪砂を使用したのは、六価クロムが7号珪砂に吸着されにくいため、不溶化剤の不溶化効果を確認しやすいことによる。
【0016】
六価クロムを含有した7号珪砂からなる土壌は、乾燥土量300gの7号珪砂に、蒸留水及び蒸留水ベースの六価クロム溶液を添加し、含水比23%の飽和状態に調整した。この調整に際しては、土粒子マトリックスに六価クロムが取り込まれ溶出量が減少してしまうことを懸念し、ある程度蒸留水を加え吸水させた後、六価クロム溶液を加えるという2回に分けた操作とした。又、六価クロム溶液としては、六価クロムの濃度が50mg/Lの重クロム酸カリウム(K2Cr2O7)試薬を使用した。
【0017】
このようにして生成した試験土壌に、先に述べた、高炉セメントB種とナトリウムベントナイトとの混合剤を不溶化剤として混入し、試料とした。CB混合剤の配合は、深層機械攪拌工法における圧送を考慮し、ファンネル粘度25秒以下となるよう、高炉セメントB種250kgに対し、ナトリウムベントナイト60Kg、水道水1000kgの割合で配合した(表1参照)。
【0018】
【表1】
【0019】
そして、このCB混合剤は、まず、水道水にナトリウムベントナイトを添加し、次に高炉セメントB種を添加することにした。又、各材料の添加に際しては、3分間の攪拌を行った。この手順は、ナトリウムベントナイトが十分に膨潤していない状態で高炉セメントを混入すると、CaイオンとナトリウムベントナイトのNa基が置換し、膨潤性の低いCa型ベントナイトへと変質してしまうので、これを避けるためのものである。なお、このようにして生成したCB混合剤を試験土壌に混入するに際しては、試料間にばらつきが生じないよう5分間の攪拌を行った。又、不溶化効果の測定は、土壌環境基準環境庁告示第46号「土壌中重金属等の溶出量分析方法(1991)」に定める溶出試験に準拠して行った。溶出試験によって得られた溶出液は、所定の前処理を行い、その後、溶出濃度を測定した。前処理及び溶出濃度の測定は、工業用水試験方法(1998)及び工業排水試験方法(1998)に準拠し、電気加熱原子吸光法によるものとした。
【0020】
以上による測定の結果を示したのが図3である。図3は、CB混合剤を試験土壌1m3につき105kg、524kg及び1048kg混入し、それぞれの場合について、材令7日及び材令28日における六価クロムの溶出濃度を示している。なお、図中の●は材令7日の場合を示すものであり、○は材令28日の場合を示すものである。また、それぞれの場合における、高炉セメントB種の添加量は、20kg、100kg、200kgの3種類である。そして、CB混合剤を添加していないときの、六価クロムの初期溶出濃度は、4.63mg/Lであった。
【0021】
実験の結果、CB混合剤105kg/m3の混入では、六価クロムの溶出濃度が材令7日で3.58mg/Lを示し不溶化効果があまり認められなかった(図中の一番左側の●がこの場合を示す。)。しかし、CB混合剤524kg/m3及び1048kg/m3の混入では、六価クロムの溶出濃度が材令7日でそれぞれ、0.44mg/L、0.09mg/Lを示した。したがって、CB混合剤の添加量の増加に伴い溶出濃度が減少することが判明した。又、材令7日より材令28日での溶出濃度が高く、材令経過により再溶出することも判明した。
【0022】
ところで、CB混合剤の添加によって六価クロムの溶出濃度が減少するのは、六価クロムが、(1)高炉セメントB種の水和反応で生成されたC−S−Hに吸着されること、(2)アルミン酸三石灰水和物(エトリンガイト、モノサルフェート水和物)とイオン交換すること、(3)水和物の形成に伴い緻密化したセメントマトリックス中へ封じ込められることが、要因になっていると考えられる。詳しく説明すれば、高炉セメントなどのセメント系固化材は、水と接触後、水和反応によりC−S−H、Ca(OH)2、エトリンガイト、モノサルフェート水和物等の水和物を生成するが、これらの水和物は時間経過とともに生成、消失を繰り返す。特に、アルミン酸三石灰水和物のエトリンガイトは、材令14日ごろを境にして、その一部がモノサルフェート水和物、さらには二水石膏へと変化する。又、高炉セメントB種は、含有するスラグから溶出したCa、Al、SiがC−S−H及びモノサルフェート水和物の生成に寄与することで、内部構造が緻密化する。したがって、CB混合剤の混入量増加に伴う六価クロム溶出濃度の減少は、上記(1)〜(3)が要因と考えられるのである。とともに、六価クロムの再溶出は、エトリンガイトが材令14日ごろを境に消失することと、関連性を有するのではないかと考えられる。
【0023】
そこで、次に、本発明者らは、試験土壌の不溶化におけるエトリンガイトの影響を調べることとした。この点、3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2Oの組成式で示されるエトリンガイトの消失は、水和反応過程でセメント中のSO3が欠乏することにより生じる。したがって、SO3をセメントに添加し、エトリンガイトの生成量を増加させる実験を行なうことにした。SO3を含む材料としては、セメントの化学組成に類似したCaO、SO3、Al2O3を主成分とした粉末材料(以下、CSAという。なお、CSAと高炉セメントB種との化学組成の対比を表2に示した。CSAは、高炉セメントB種と比較してSiO2の含有量が少なく、SO3の含有量が多い材料である。)と、液状のAl2(SO4)3とを使用した。
【0024】
【表2】
【0025】
CSAは、高炉セメントB種を、質量比で5、10、50及び100%置換(以下、CSA置換率ともいう。)するように添加した。又、Al2(SO4)3は、CSA置換率5、10、50及び100%のCB混合剤と比較し、SO3の量が等しくなるように添加した。この場合、SO3の量が等しいので、Al2(SO4)3添加による見かけのCSA置換率という。
【0026】
これらの実験の結果(六価クロムの溶出濃度)を示したのが、図4及び図5である。まず、CSAで置換した場合は、図4に示すとおり、CB混合剤の添加量を105kg/m3とした場合、溶出濃度が3.69〜4.12mg/Lとなり(図中の●(材令7日)及び○(材令28日)がこの結果を示す。)、CSA置換率によって大きな差が現れなかった。しかしながら、CB混合剤の添加量を524kg/m3とした場合、及び1048kg/m3とした場合は、CSA置換率が0〜50%で溶出濃度に大きな差異がなく、50%を超えると溶出濃度の増加が確認された(図中の▲(材令7日、CB混合剤の添加量524kg/m3)、△(材令28日、CB混合剤の添加量524kg/m3)、◆(材令7日、CB混合剤の添加量1048kg/m3)及び◇(材令28日、CB混合剤の添加量1048kg/m3)がこの結果を示す。)。したがって、CSA置換率の増加によって、不溶化効果は向上しないことが確認された。又、材令7日より材令28日の溶出濃度が高く、再溶出することも確認された。さらに、図5に示すとおり、Al2(SO4)3で置換した場合も、CSA置換の場合とほぼ同様の結果となった(図中の記号の意味は、CSA置換の場合と同様である。)。
【0027】
以上、エトリンガイトの生成量を増加させても、六価クロムの再溶出が認められたので、エトリンガイトのイオン交換作用、消失が土壌の不溶化に与える影響は小さいことが判明した。逆に、CB混合剤の添加量を増加させると六価クロムの溶出濃度が大きく減少することから、六価クロムの溶出濃度の減少は、セメントマトリック中への封じ込めによる影響が大きいものと判明した。この点、高炉セメントB種は、含有スラグの鉄系化合物、アルミニウム系化合物が水和反応において微細なセメント水和物を形成し内部構造が緻密化するので、これにより、六価クロムの封じ込め効果が大きくなるものと考えられる。
【0028】
そこで、本発明者らは、CB混合剤としてではなく、高炉セメントB種を単体で使用しても好適な不溶化効果を得られるのではないかと考え、実験をすることにした。
【0029】
まず、実験に用いる高炉セメントB種としては、粉状体及びスラリー状のものを使用することにした。これは、深層機械攪拌工法では、コンプレッサーからの吐出及びポンプ圧送の点から、通常、セメント系固化材を粉体状あるいはスラリー状で使用していることによる。又、これらのうちスラリー状で用いる場合は、水セメント比(W/C)を80〜120%として使用しているので、本実験では、高炉セメントB種をスラリー状で用いる場合、水セメント比(W/C)100%とすることにした。
【0030】
この実験の結果を示したのが、図6である。図6は、土壌1kgにつき六価クロム50mgを添加して試験土壌とし、この試験土壌に、高炉セメントB種を粉体状及びスラリー状で、それぞれ土壌1m3につき20〜300kg混入した場合の、材令7日及び材令28日における六価クロムの溶出濃度を示している。
【0031】
この実験の結果、(1)高炉セメントB種を粉体状で添加するよりもスラリー状で添加する方が溶出濃度が低くなること、(2)材令7日よりセメント水和反応が進行した材令28日の方が溶出濃度が低くなることが確認された。又、(3)高炉セメントB種の添加量が100kg/m3以下の場合は、粉体状、スラリー状とも添加量増加に従い溶出濃度が大きく減少し、添加量が100kg/m3を超えると溶出濃度はあまり減少しなくなることも確認された(図中の▲(材令7日、スラリー状)、△(材令28日、スラリー状)、●(材令7日、粉体状)及び○(材令28日、粉体状)がこの結果を示す。)。
【0032】
しかしながら、粉体状の場合は、高炉セメントB種の添加量を300kg/m3とすると、六価クロムの溶出濃度は、材令7日及び材令28日で、それぞれ0.05及び0.04mg/Lにまで減少し、スラリー状の場合は、高炉セメントB種の添加量を200kg/m3とすると、材令7日及び材令28日ともに0.02mg/Lにまで減少した。これらの値は、土壌環境基準値0.05mg/Lを下回るものである。この点については、さらに表3に詳細に示した。
【0033】
【表3】
【0034】
この表3からも明らかなように、高炉セメントB種単独でも、水セメント比(W/C)80〜120%のスラリー状で、土壌1m3につき150kg以上を添加すれば、不溶化剤として使用できることが判明した。
【0035】
ところで、以上の実験は、7号珪砂を試験土壌として使用した場合のものである。これは、7号珪砂は六価クロムの吸着性が低いため、7号珪砂に適用可能な不溶化方法であれば、他のあらゆる土壌に適用可能であると考えてのことであった。しかしながら、本発明者らは、さらに、異なる土壌についても実験することにした。ここに異なる土壌としては、細粒分を調整した砂質土と有機質土とを選定した。
【0036】
まず、細粒分調整砂質土としては、木更津砂に木節粘土を混入し、細粒分を10、30及び50%に調整したものを使用した。含水比調整は、細粒分10、30及び50%の砂質土の最大乾燥密度を求め、このとき砂質土の間隙に満たすことのできる水の量を基準として行った。この操作は、細粒分調整に使用した木節粘土の吸水が瞬時に完了しない可能性を考慮したものである。この操作によって得られた含水比は、細粒分10%及び30%の砂質土で24%、細粒分50%の砂質土で25%を示し、細粒分の違いによる含水比の違いはほとんどなかった。又、六価クロムの含有量は、7号珪砂のときと同様、土壌1kgにつき50mgとした。この場合、六価クロムの初期溶出濃度は、細粒分10%の場合が4.32mg/L、細粒分30%の場合が4.47%、細粒分50%の場合が4.46mg/Lであった。
【0037】
以上を用いた実験の結果を示したのが、図7〜9である。図7、図8及び図9は、細粒分をそれぞれ10、30、50%に調整した試験土壌に、高炉セメントB種を粉体状及びスラリー状で、試験土壌1m3につき20、50、100、200及び300kg添加した時の、材令7日及び材令28日における六価クロムの溶出濃度を示している。この結果、細粒分調整砂質土の場合も7号珪砂を用いた場合と同様、粉体状、スラリー状とも材令経過に伴って溶出濃度が減少すること、粉体状よりスラリー状の方が好適であることがわかった。又、高炉セメントB種をスラリー状で添加するのであれば、ほぼ150kg/m3で、土壌環境基準値の0.05mg/Lを下回ることが判明した。
【0038】
次に、有機質土壌についてであるが、これには、千葉県四街道市物井で採取した黒ぼく土を使用した。採取した黒ぼく土は含水比327%であったことから、最終的な含水比を350%に調整した。又、この黒ぼく土のpHは、5.6であり、弱酸性を示していた。六価クロムの含有量は、細粒分調整砂質土の場合と同様、試験土壌1kgにつき50mgとした。この場合、六価クロムの初期溶出濃度は、1.36mg/Lであり、六価クロムの吸着による溶出量の減少が確認された。
【0039】
この実験の効果を示したのが、図10である。有機質系土壌は、セメントによる硬化が乏しいため、セメントマトリックス内への封じ込め硬化が小さく、不溶化効果は若干少なくなるものと考えられた。しかし、高炉セメントB種100kg/m3の添加においても土壌環境基準値を下回る溶出量(0.018mg/L以下)であることが確認された。
【0040】
以上の実験から、汚染土壌から溶出する六価クロムの量を減少させるためには、不溶化剤が、スラグ含有量31〜60%の高炉セメントを、汚染土壌1m3につき150kg以上含有し、水セメント比(W/C)80〜120%とされると好適であることが判明した。又、スラグ含有量が31〜60%の高炉セメントを、スラグ含有量が、61〜70%の高炉セメントに代えると、より好適であることも判明した。
【0041】
そして、本発明者らは、さらに不溶化する重金属の対象を広げて実験を行なうことにした。重金属としては、汚染物質として代表される、砒素(As)、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)、鉛(Pb)、セレン(Se)を使用した。
【0042】
まず、砒素を対象とした実験であるが、これは、7号珪砂1kgにつき50mgの砒素を含有させたものを試験土壌とし、この試験土壌に、高炉セメントB種を水セメント比(W/C)100%のスラリー状で混入することにした。この場合の初期溶出濃度は、5mg/Lであった。
この実験の結果は、表4に示した。
【0043】
【表4】
【0044】
表4から明らかなとおり、高炉セメントB種を試験土壌1m3につき、20kg、100kg、200kg添加しても、土壌環境基準値である、0.01mg/Lを下回る結果を得ることができなかった。
【0045】
しかしながら、不溶化剤に塩化第二鉄(FeCl3・6H2O)を試験土壌1m3につき、0.73kgとなる割合で添加すると、土壌基準値を下回る結果を得られることが判明した。
【0046】
次に、カドミウムを対象とした実験であるが、これは、7号珪砂1kgにつき50mgのカドミウムを含有させたものを試験土壌とし、この試験土壌に、高炉セメントB種を水セメント比(W/C)100%のスラリー状で混入することにした。この場合の初期溶出濃度は、5mg/Lであった。
この実験の結果は、表5に示した。
【0047】
【表5】
【0048】
表5から明らかなとおり、高炉セメントB種を試験土壌1m3につき、125kg添加すれば、土壌環境基準値である、0.01mg/Lを下回る結果を得られることが判明した。
【0049】
次に、水銀を対象とした実験であるが、これは、7号珪砂1kgにつき50mgの水銀を含有させたものを試験土壌とし、この試験土壌に、高炉セメントB種を水セメント比(W/C)100%のスラリー状で混入することにした。この場合の初期溶出濃度は、5mg/Lであった。
この実験の結果は、表6に示した。
【0050】
【表6】
【0051】
表6から明らかなとおり、高炉セメントB種を試験土壌1m3につき、20kg添加してさえ、土壌環境基準値である、0.0005mg/Lを下回る結果を得られることが判明した。
【0052】
次に、鉛を対象とした実験であるが、これは、7号珪砂1kgにつき100mgの鉛を含有させたものを試験土壌とし、この試験土壌に、高炉セメントB種を水セメント比(W/C)100%のスラリー状で混入することにした。この場合の初期溶出濃度は、10mg/Lであった。
この実験の結果は、表7に示した。
【0053】
【表7】
【0054】
表7から明らかなとおり、高炉セメントB種を試験土壌1m3につき、50kg、100kg、200kg添加しても、土壌環境基準値である、0.01mg/Lを下回る結果を得ることができなかった。
【0055】
しかしながら、不溶化剤に液体キレートを不溶化剤に対する質量比0.50%となる割合で添加すると、土壌基準値を下回る結果を得られることが判明した。
【0056】
最後に、セレンを対象とした実験であるが、これは、7号珪砂1kgにつき100mgのセレンを含有させたものを試験土壌とし、この試験土壌に、高炉セメントB種を水セメント比(W/C)100%のスラリー状で混入することにした。この場合の初期溶出濃度は、10mg/Lであった。
この実験の結果は、表8に示した。
【0057】
【表8】
【0058】
表8から明らかなとおり、高炉セメントB種を試験土壌1m3につき、200kg添加すれば、土壌環境基準値である、0.01mg/Lを下回る結果を得られることが判明した。
【0059】
以上の実験から、汚染土壌から溶出する重金属の量を減少させるためには、不溶化剤が、スラグ含有量が31〜60%の高炉セメントを、汚染土壌1m3につき200kg以上含有し、水セメント比(W/C)80〜120kg%とされ、さらに、塩化第二鉄を汚染土壌1m3につき0.73kg以上、液体キレートを高炉セメント100kgにつき0.50kg以上含有すると、好適であることが判明した。又、スラグ含有量が31〜60%の高炉セメントを、スラグ含有量が、61〜70%の高炉セメントに代えた場合は、表9に示すように、添加する高炉セメントの量を減らすことができ、より好適であることも判明した。
【0060】
【表9】
【0061】
【発明の実施の形態】
以下、図面を使って、本発明の実施の形態を説明する。
(不溶化剤)
まず、処理対象となる汚染土壌に対して混入する不溶化剤としては、高炉セメントの他、ナトリウムベントナイトを含有するものを用いることができる。ただ、ナトリウムベントナイトは含有させないこともできる。高炉セメントとしては、スラグ含有量が31〜60%の高炉セメントB種を使用するのがよい。スラグ含有量が61〜70%の高炉セメントC種であればさらによい。高炉セメントは、粉体状でもよいが、スラリー状であるとなおよい。スラリー状とする場合は、水セメント比(W/C)を80〜100%とするのがよい。
【0062】
不溶化剤として高炉セメントB種を用いる場合、その混入量は、不溶化の対象が六価クロムのみであれば、汚染土壌1m3につき150kg以上、不溶化の対象が六価クロムの他、カドミウム、水銀、セレンをも含むのであれば、200kg以上とする必要がある。
【0063】
不溶化剤として高炉セメントC種を用いる場合、その混入量は、不溶化の対象が六価クロムのみのときは、汚染土壌1m3につき100kg以上、不溶化の対象が六価クロムの他、カドミウム、水銀、セレンを含むときは、120kg以上とすれば足りる。
【0064】
以上に対し、不溶化の対象として、砒素を含む場合は、高炉セメントの他、さらに、塩化第二鉄を含有させる必要がある。塩化第二鉄の含有量としては、汚染土壌1m3につき0.73kg以上とするのがよい。又、不溶化の対象として、鉛を含む場合は、高炉セメントの他、液体キレートを含有させる必要がある。液体キレートの含有量としては、高炉セメントに対し質量比0.50%以上とするのがよい。
【0065】
(混入方法)
このようにして生成する不溶化剤を汚染土壌に混入するについては、汚染土壌を掘削し、地上において行なうことができる。しかし、地上で行なうには、広いスペースが要求されるなど、立地条件に左右される。また、汚染土壌が深層に位置するときは、コストがかかり、又、作業時間もかかる。
そこで、汚染土壌が深層に位置する場合は、汚染土壌を掘削することなく、原位置において、不溶化剤を添加し、攪拌するのがよい。
この攪拌方法としては、種々の方法が考えられるが、図11に示すような、深層機械攪拌装置を用いることができる。これは、先端吐出口11を有し、かつ、これよりも基端側に間隔をおいて複数の攪拌翼12,12…を有する貫入時吐出型攪拌混合ロッド10を備えるものである。攪拌ロッド10は、回転しながら土壌内を推進するものであり、汚染土壌Xに到達すると先端吐出口11から汚染土壌Xに向けて不溶化剤を吐出する。そして、この不溶化剤と重金属を含有する汚染土壌を攪拌し、重金属を不溶化することになる。
【0066】
【発明の効果】
本発明に係る汚染土壌の不溶化方法によれば、重金属の溶出量値を下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】スラグ含有量の異なる高炉セメントを用いた場合における、各種重金属の溶出濃度を棒グラフにした図である。
【図2】高炉セメントB種単体の六価クロム吸着能力と、CB混合体の六価クロム吸着能力との比較図である。
【図3】CB混合剤を用いた場合における、六価クロム含有土壌の不溶化効果を示した図である。
【図4】高炉セメントB種をCSA置換した場合における、六価クロム含有土壌の不溶化効果を示した図である。
【図5】高炉セメントB種をAl2(SO4)3で置換した場合における、六価クロム含有土壌の不溶化効果を示した図である。
【図6】高炉セメントB種を単体で使用した場合における、六価クロム含有土壌(7号珪砂)の不溶化効果を示した図である。
【図7】高炉セメントB種を単体で使用した場合における、六価クロム含有土壌(細粒分10%)の不溶化効果を示した図である。
【図8】高炉セメントB種を単体で使用した場合における、六価クロム含有土壌(細粒分30%)の不溶化効果を示した図である。
【図9】高炉セメントB種を単体で使用した場合における、六価クロム含有土壌(細粒分50%)の不溶化効果を示した図である。
【図10】高炉セメントB種を単体で使用した場合における、六価クロム含有土壌(有機質土)の不溶化効果を示した図である。
【図11】汚染土壌が深層に位置する場合における、不溶化剤の混入方法を示した模式図である。
【符号の説明】
10…攪拌ロッド、11…先端吐出口、12…攪拌翼。
Claims (1)
- 汚染土壌に不溶化剤を混入し、前記汚染土壌が含有する砒素を不溶化する方法であって、
前記不溶化剤が、スラグ含有量31〜60%の高炉セメント、水及び塩化第二鉄からなり、水セメント比(W/C)が80〜120%とされ、前記高炉セメントが前記汚染土壌1m 3 あたり100kg以上とされ、前記塩化第二鉄が前記汚染土壌1m 3 あたり0.73kg以上とされる、ことを特徴とする汚染土壌の不溶化方法。
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