JP3560220B2 - 非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法および該方法によって得られた非水系電解質二次電池用正極活物質 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は負極にリチウム、リチウム合金またはカーボンを用いる非水系電解質二次電池用の正極活物質の製造方法に関するものであり、特に電池の生産時において初期不良の少いサイクル安定性に優れた非水系電解質二次電池用の正極活物質の製造方法および該方法によって得られた非水系電解質二次電池用正極活物質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯機器の普及に伴い、高いエネルギー密度を有する小型、軽量で高い容量を持つ二次電池の開発が強く望まれている。このようなものとしてリチウム、リチウム合金あるいはカーボンを負極として用いるリチウムイオン二次電池があり、現在その研究開発が盛んに行われている。
【0003】
リチウムコバルト複酸化物(LiCoO2)を正極活物質に用いたリチウムイオン二次電池は4V級の高い電圧が得られるため、高エネルギー密度を持つ電池として期待され、実用化が進んでいる。
これまでリチウムコバルト複酸化物を用いた電池では優れたサイクル特性および電子導電率を得るための開発はこれまで数多く提案されており、すでに多くの成果が報告されている。
【0004】
リチウムコバルト複酸化物(LiCoO2)からなる非水系電解質二次電池用の正極活物質の製造方法の一例を挙げると、炭酸リチウムと酸化コバルトをLi/Coモル比で0.98〜1.0の範囲になるように精秤し混合してなる原料粉100重量部に対して20〜30重量部のバインダーとしてのビニルアルコール樹脂水溶液を加えて混合しつつ造粒し、ついで酸素含有雰囲気で850〜1000℃の温度範囲で前記造粒物を焼成した後、該焼成物を粉砕して得られるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこれらの研究開発の成果を踏まえても工業的に量産を考える場合には、十分とはいえず解決すべき課題が残った。特に量産工程中に使用する各種処理装置から不純物としてのFeが混入し、リチウムコバルト複酸化物の正極活物質としての本来の特性が発揮されないことがあった。
【0006】
本発明の目的は、生産時において初期不良の少ないサイクル安定性に優れた非水電解質電池の供給が可能となるリチウムコバルト複酸化物からなる非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法およびこの方法により得られた非水系電解質二次電池用正極活物質を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明の第1の実施態様は、炭酸リチウムと酸化コバルトを精秤し混合してなる原料粉にバインダーを加えて混合しつつ造粒し、ついで酸素含有雰囲気下で前記造粒物を焼成した後、該焼成物を粉砕してリチウムコバルト複酸化物からなる非水系電解質二次電池用正極活物質を製造するに際して、前記焼成物の粉砕を超硬合金製のピンおよび表面硬化されたステンレス鋼製の円盤より構成されるピンミルを用いて行う非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法を特徴とするものである。
【0008】
また本発明の第2の実施態様は、平均粒径が10μm以下、かつ比表面積が1.0m2/g以上の炭酸リチウム(Li2Co3)と、比表面積が1.0〜3.5m2/gの酸化コバルト(Co3O4)とを原料粉として用いて前記第1の実施態様に係る製造方法により得られ、かつ比表面積が0.3〜3.8m2/gで、Fe含有量が100ppm以下である非水系電解質二次電池用正極活物質を特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明者らはリチウムコバルト複酸化物の開発を進めるに当たって、初期特性を調べるための電池試験において測定不良の試作電池が活物質の作製ロットにより異なることがあることを見出した。すなわち大量に活物質の合成を行う場合、最適と考えられる同一条件で合成したとしても、容量の確認試験用の試作電池では不良率が異なる事態が発生することがあった。この点に関してさらに詳細な検討を加えた結果、これは工程中に混入するFeの活物質中の含有量に依存していることを見出した。
【0010】
本発明による非水系電解質二次電池用正極活物質の合成法は、従来とほぼ類似した工程を経るもので、まず炭酸リチウム(Li2Co3)および酸化コバルト(Co3O4)をLi/Coモル比で0.98〜1.0の範囲になるように精秤し混合し、得られた原料粉100重量部に対して20〜30重量部のバインダーとしてのビニルアルコール樹脂水溶液を加えて混合しつつ造粒し、ついで酸素含有雰囲気で850〜1000℃の温度範囲で6時間以上で20時間以下の時間に亘って前記造粒物を焼成し、これを粉砕して非水系電解質二次電池用正極活物質を得るものであって、本発明では前記焼成物の粉砕に際して超硬合金製のピンおよび表面硬化されたステンレス鋼製の円盤より構成されるピンミルを用いて行うことを特徴とするものである。
【0011】
このような構成を有するピンミルによる粉砕工程を含む本発明の製造方法を実施するに際して、リチウム原料として平均粒径が10μm以下で、かつ比表面積が1.0m2/g以上の炭酸リチウム(Li2Co3)を用い、さらにコバルト原料として比表面積が1.0〜3.5m2/gの酸化コバルト(Co3O4)を用いると、得られた非水系電解質二次電池用正極活物質は比表面積が0.3〜0.8m2/gとなり、Fe含有率が100ppm以下となるものである。
なお非水系電解質二次電池用正極活物質の比表面積を0.3〜0.8m2/gとした理由は、0.3m2/g未満では該活物質の反応性が悪化するために電池の容量が低下することとなり、一方0.8m2/gを超えると活物質を電池に組み込む際の粉体のハンドリング性、具体的には活物質をスラリー化し基体に塗布して電極にする際のハンドリング性が悪化し、また電池の寿命が劣化することになるからである。また非水系電解質二次電池用正極活物質におけるFe含有率が100ppmを超えると、電池の不良率が急激に上昇するからである。
そして非水系電解質二次電池用正極活物質の比表面積を0.3〜0.8m2/gとするためにはリチウム原料として平均粒径が10μm以下で、かつ比表面積が1.0m2/g以上の炭酸リチウム(Li2Co3)を用いるとともに、コバルト原料として比表面積が1.0〜3.5m2/gの酸化コバルト(Co3O4)を用いる必要があり、この範囲を外れると所望の比表面積を得ることができない。
【0012】
つぎに本発明に係る製造方法を詳述すると、炭酸リチウム(Li2Co3)および酸化コバルト(Co3O4)をLi/Coモル比で0.98〜1.0の範囲になるように精秤し混合し、得られた原料粉100重量部に対して20〜30重量部のビニルアルコール樹脂水溶液を加えて混合した原料粉末を混合造粒機に投入する際に、炭酸リチウム(Li2Co3)および酸化コバルト(Co3O4)をそれぞれ単独で混合槽内に投入して差し支えないが、より好ましくは予め混合粉とする。また造粒工程でのビニルアルコール樹脂からなるバインダー添加時は撹拌羽の回転速度を遅くし、さらに少量づつ滴下して所望の平均粒径(通常5mm以下程度)以上の大きな造粒物を生成させないことが望ましい。
【0013】
引き続いて前記造粒物を酸素含有雰囲気で850〜1000℃の温度範囲で焼成し得られた焼成物を粉砕する際に用いる従来のピンミルは、高速で回転する2つの円盤に多数のピンを取り付け、その噛み合わせにより試料を粉砕するものである。しかし従来ノピンミルでは粉砕時にピンは被粉砕物との衝突により摩耗し、また円盤は高速で回転しているため被粉砕物との摩擦により摩耗する。このため通常の材質のピンミルの場合、ピンおよび円盤の摩耗により該ピンおよび円盤からの金属Feの粉砕物への混入が避けられない。
【0014】
したがって本発明では粉砕工程において使用するピンミルを以下のように構成した。すなわちピンを超硬合金製、例えばWC鋼などで形成し、一方円盤は被粉砕物と接する部分に耐摩耗性に優れた硬化層を持つステンレス鋼で形成する。このようなステンレス鋼は超硬合金で作製した場合と同様な効果が得られ、かつ経済性に優れているため最適である。このような構成を有するピンミルを用いることにより、非水系電解質二次電池用正極活物質に含有するFeの量を100ppm以下にすることができ、これにより電池の不良率の発生を大幅に減少させることができるのである。
【0015】
そして上記の耐摩耗性に優れた硬化層は、例えば特開平8−35075号公報記載のアンモニアガスと水素ガスの雰囲気中でグロー放電を行いイオン窒化を行って、この窒化層上にPVD法で硬質被膜を形成させる方法によりステンレス鋼上に形成することが可能である。
【0016】
【実施例】
以下本発明の実施例を、比較例とともに説明する。
[実施例]
(合成)
リチウム/コバルトのモル比を1.0となるように、一次粒子を平均粒径が10μm以下に粉砕した炭酸リチウム(Li2Co3:純度99%、比表面積1.3m2/g)を2.588kg、酸化コバルト(CO3O4;Co含有量:73.3重量%、比表面積3.4m2/g)を5.554kgを精秤、混合して混合粉とした後、混合造粒機「ハイスピードミキサー」(深江工業株式会社製)を用いて底部回転羽の回転数を180rpmとし5分間予備混合を行った。
さらに前記回転数を120rpmとし4重量%のPVA(ポリビニルアルコール)水溶液を2.4kgを加え、滴下後回転数を180rpmに上げ、1mm程度の種粒子を作った。さらに回転数を120rpmに下げ造粒し、1〜3mmの造粒物を作製した。
この造粒物を100℃で2時間乾燥し、さらにマグネシアセッターを用いて酸素流量3リットル/分で加熱速度5℃/分により900℃まで昇温し、15時間程度保持して焼成した。
このように焼成したリチウムコバルト複酸化物を30μm以下に超硬合金製ピンおよび硬化層を有する円盤により構成されるピンミルにより解砕し、BET吸着等温法により比表面積を測定し、かつ含有するFeの量を求めた。
【0017】
(電池評価)
得られた活物質を用いて以下のように電池を作製し、充放電容量を測定した。活物質粉末120mgにアセチレンブラック22mgおよびポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)8mgを混合し、200MPaの圧力で直径11mmにプレス成型し、これを真空乾燥器中120℃で真空乾燥を行い正極とした。そして図1にように正極ペレット5と、負極としてLiメタルのペレット2を用い、さらに電解液には1MのLiPF6を支持塩とするエチレンカーボネイト(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合溶液を用いた。なおセパレータ3には膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を2枚重ねて用いてガスケット4によりシールして2032型コイン電池をAr雰囲気のグローブボックス中で組み立てた。
なお図1において1は負極缶、6は正極缶であり、図示していないが電解液は電池内部の空隙に存在する。
【0018】
このように作製した電池を10時間程度放電し、開回路電圧(OCV)が安定した後、正極に対する電流密度を1.0mA/cm2として、カットオフ電圧4.3〜3.0Vの条件で充放電試験を行った。
電池は全部で100個作製して充放電試験を行って、充放電サイクル数が20回以下で内部短絡などにより試験できなくなった電池を不良電池として数えた。
その結果を下記する表1に示す。
【0019】
[比較例1]
実施例と同様に作製し、焼成後のピンミル粉砕時に超硬合金製ピンと表面硬化層を持たないステンレス鋼製の円盤により構成されるピンミルを用いて粉砕した。
得られた活物質の比表面積およびFe含有量を求め、さらに実施例と同様に電池を作製し、電池試験を行い不良電池の数を求め、その結果を表1に示す。
【0020】
[比較例2]
実施例と同様に作製し、焼成後のピンミル粉砕時にステンレス製ピンと表面硬化層を持たないステンレス鋼製の円盤により構成されるピンミルを用いて粉砕した。
得られた活物質の比表面積およびFe含有量を求め、さらに実施例と同様に電池を作製し、電池試験を行い不良電池の数を求め、その結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
以上の結果から本発明による製造方法により合成されたリチウムコバルト複酸化物はFeの含有量が低いため、活物質として用いた場合は初期不良の少ない優れた電池を得られることが分かった。
【0023】
【発明の効果】
以上述べた通り本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法および該方法により得られた非水系電解質二次電池用正極活物質によれば、好ましい比表面積を有し、かつFeの含有量の低い非水系電解質二次電池の正極活物質を得ることができ、また初期不良の少ない電池の作製が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】電池試験に用いた2032型コイン電池の一部破断斜視図である。
【符号の説明】
1 負極缶
2 リチウム金属ペレット
3 セパレータ
4 ガスケット
5 正極ペレット
6 正極缶
【発明の属する技術分野】
本発明は負極にリチウム、リチウム合金またはカーボンを用いる非水系電解質二次電池用の正極活物質の製造方法に関するものであり、特に電池の生産時において初期不良の少いサイクル安定性に優れた非水系電解質二次電池用の正極活物質の製造方法および該方法によって得られた非水系電解質二次電池用正極活物質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯機器の普及に伴い、高いエネルギー密度を有する小型、軽量で高い容量を持つ二次電池の開発が強く望まれている。このようなものとしてリチウム、リチウム合金あるいはカーボンを負極として用いるリチウムイオン二次電池があり、現在その研究開発が盛んに行われている。
【0003】
リチウムコバルト複酸化物(LiCoO2)を正極活物質に用いたリチウムイオン二次電池は4V級の高い電圧が得られるため、高エネルギー密度を持つ電池として期待され、実用化が進んでいる。
これまでリチウムコバルト複酸化物を用いた電池では優れたサイクル特性および電子導電率を得るための開発はこれまで数多く提案されており、すでに多くの成果が報告されている。
【0004】
リチウムコバルト複酸化物(LiCoO2)からなる非水系電解質二次電池用の正極活物質の製造方法の一例を挙げると、炭酸リチウムと酸化コバルトをLi/Coモル比で0.98〜1.0の範囲になるように精秤し混合してなる原料粉100重量部に対して20〜30重量部のバインダーとしてのビニルアルコール樹脂水溶液を加えて混合しつつ造粒し、ついで酸素含有雰囲気で850〜1000℃の温度範囲で前記造粒物を焼成した後、該焼成物を粉砕して得られるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこれらの研究開発の成果を踏まえても工業的に量産を考える場合には、十分とはいえず解決すべき課題が残った。特に量産工程中に使用する各種処理装置から不純物としてのFeが混入し、リチウムコバルト複酸化物の正極活物質としての本来の特性が発揮されないことがあった。
【0006】
本発明の目的は、生産時において初期不良の少ないサイクル安定性に優れた非水電解質電池の供給が可能となるリチウムコバルト複酸化物からなる非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法およびこの方法により得られた非水系電解質二次電池用正極活物質を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明の第1の実施態様は、炭酸リチウムと酸化コバルトを精秤し混合してなる原料粉にバインダーを加えて混合しつつ造粒し、ついで酸素含有雰囲気下で前記造粒物を焼成した後、該焼成物を粉砕してリチウムコバルト複酸化物からなる非水系電解質二次電池用正極活物質を製造するに際して、前記焼成物の粉砕を超硬合金製のピンおよび表面硬化されたステンレス鋼製の円盤より構成されるピンミルを用いて行う非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法を特徴とするものである。
【0008】
また本発明の第2の実施態様は、平均粒径が10μm以下、かつ比表面積が1.0m2/g以上の炭酸リチウム(Li2Co3)と、比表面積が1.0〜3.5m2/gの酸化コバルト(Co3O4)とを原料粉として用いて前記第1の実施態様に係る製造方法により得られ、かつ比表面積が0.3〜3.8m2/gで、Fe含有量が100ppm以下である非水系電解質二次電池用正極活物質を特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明者らはリチウムコバルト複酸化物の開発を進めるに当たって、初期特性を調べるための電池試験において測定不良の試作電池が活物質の作製ロットにより異なることがあることを見出した。すなわち大量に活物質の合成を行う場合、最適と考えられる同一条件で合成したとしても、容量の確認試験用の試作電池では不良率が異なる事態が発生することがあった。この点に関してさらに詳細な検討を加えた結果、これは工程中に混入するFeの活物質中の含有量に依存していることを見出した。
【0010】
本発明による非水系電解質二次電池用正極活物質の合成法は、従来とほぼ類似した工程を経るもので、まず炭酸リチウム(Li2Co3)および酸化コバルト(Co3O4)をLi/Coモル比で0.98〜1.0の範囲になるように精秤し混合し、得られた原料粉100重量部に対して20〜30重量部のバインダーとしてのビニルアルコール樹脂水溶液を加えて混合しつつ造粒し、ついで酸素含有雰囲気で850〜1000℃の温度範囲で6時間以上で20時間以下の時間に亘って前記造粒物を焼成し、これを粉砕して非水系電解質二次電池用正極活物質を得るものであって、本発明では前記焼成物の粉砕に際して超硬合金製のピンおよび表面硬化されたステンレス鋼製の円盤より構成されるピンミルを用いて行うことを特徴とするものである。
【0011】
このような構成を有するピンミルによる粉砕工程を含む本発明の製造方法を実施するに際して、リチウム原料として平均粒径が10μm以下で、かつ比表面積が1.0m2/g以上の炭酸リチウム(Li2Co3)を用い、さらにコバルト原料として比表面積が1.0〜3.5m2/gの酸化コバルト(Co3O4)を用いると、得られた非水系電解質二次電池用正極活物質は比表面積が0.3〜0.8m2/gとなり、Fe含有率が100ppm以下となるものである。
なお非水系電解質二次電池用正極活物質の比表面積を0.3〜0.8m2/gとした理由は、0.3m2/g未満では該活物質の反応性が悪化するために電池の容量が低下することとなり、一方0.8m2/gを超えると活物質を電池に組み込む際の粉体のハンドリング性、具体的には活物質をスラリー化し基体に塗布して電極にする際のハンドリング性が悪化し、また電池の寿命が劣化することになるからである。また非水系電解質二次電池用正極活物質におけるFe含有率が100ppmを超えると、電池の不良率が急激に上昇するからである。
そして非水系電解質二次電池用正極活物質の比表面積を0.3〜0.8m2/gとするためにはリチウム原料として平均粒径が10μm以下で、かつ比表面積が1.0m2/g以上の炭酸リチウム(Li2Co3)を用いるとともに、コバルト原料として比表面積が1.0〜3.5m2/gの酸化コバルト(Co3O4)を用いる必要があり、この範囲を外れると所望の比表面積を得ることができない。
【0012】
つぎに本発明に係る製造方法を詳述すると、炭酸リチウム(Li2Co3)および酸化コバルト(Co3O4)をLi/Coモル比で0.98〜1.0の範囲になるように精秤し混合し、得られた原料粉100重量部に対して20〜30重量部のビニルアルコール樹脂水溶液を加えて混合した原料粉末を混合造粒機に投入する際に、炭酸リチウム(Li2Co3)および酸化コバルト(Co3O4)をそれぞれ単独で混合槽内に投入して差し支えないが、より好ましくは予め混合粉とする。また造粒工程でのビニルアルコール樹脂からなるバインダー添加時は撹拌羽の回転速度を遅くし、さらに少量づつ滴下して所望の平均粒径(通常5mm以下程度)以上の大きな造粒物を生成させないことが望ましい。
【0013】
引き続いて前記造粒物を酸素含有雰囲気で850〜1000℃の温度範囲で焼成し得られた焼成物を粉砕する際に用いる従来のピンミルは、高速で回転する2つの円盤に多数のピンを取り付け、その噛み合わせにより試料を粉砕するものである。しかし従来ノピンミルでは粉砕時にピンは被粉砕物との衝突により摩耗し、また円盤は高速で回転しているため被粉砕物との摩擦により摩耗する。このため通常の材質のピンミルの場合、ピンおよび円盤の摩耗により該ピンおよび円盤からの金属Feの粉砕物への混入が避けられない。
【0014】
したがって本発明では粉砕工程において使用するピンミルを以下のように構成した。すなわちピンを超硬合金製、例えばWC鋼などで形成し、一方円盤は被粉砕物と接する部分に耐摩耗性に優れた硬化層を持つステンレス鋼で形成する。このようなステンレス鋼は超硬合金で作製した場合と同様な効果が得られ、かつ経済性に優れているため最適である。このような構成を有するピンミルを用いることにより、非水系電解質二次電池用正極活物質に含有するFeの量を100ppm以下にすることができ、これにより電池の不良率の発生を大幅に減少させることができるのである。
【0015】
そして上記の耐摩耗性に優れた硬化層は、例えば特開平8−35075号公報記載のアンモニアガスと水素ガスの雰囲気中でグロー放電を行いイオン窒化を行って、この窒化層上にPVD法で硬質被膜を形成させる方法によりステンレス鋼上に形成することが可能である。
【0016】
【実施例】
以下本発明の実施例を、比較例とともに説明する。
[実施例]
(合成)
リチウム/コバルトのモル比を1.0となるように、一次粒子を平均粒径が10μm以下に粉砕した炭酸リチウム(Li2Co3:純度99%、比表面積1.3m2/g)を2.588kg、酸化コバルト(CO3O4;Co含有量:73.3重量%、比表面積3.4m2/g)を5.554kgを精秤、混合して混合粉とした後、混合造粒機「ハイスピードミキサー」(深江工業株式会社製)を用いて底部回転羽の回転数を180rpmとし5分間予備混合を行った。
さらに前記回転数を120rpmとし4重量%のPVA(ポリビニルアルコール)水溶液を2.4kgを加え、滴下後回転数を180rpmに上げ、1mm程度の種粒子を作った。さらに回転数を120rpmに下げ造粒し、1〜3mmの造粒物を作製した。
この造粒物を100℃で2時間乾燥し、さらにマグネシアセッターを用いて酸素流量3リットル/分で加熱速度5℃/分により900℃まで昇温し、15時間程度保持して焼成した。
このように焼成したリチウムコバルト複酸化物を30μm以下に超硬合金製ピンおよび硬化層を有する円盤により構成されるピンミルにより解砕し、BET吸着等温法により比表面積を測定し、かつ含有するFeの量を求めた。
【0017】
(電池評価)
得られた活物質を用いて以下のように電池を作製し、充放電容量を測定した。活物質粉末120mgにアセチレンブラック22mgおよびポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)8mgを混合し、200MPaの圧力で直径11mmにプレス成型し、これを真空乾燥器中120℃で真空乾燥を行い正極とした。そして図1にように正極ペレット5と、負極としてLiメタルのペレット2を用い、さらに電解液には1MのLiPF6を支持塩とするエチレンカーボネイト(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合溶液を用いた。なおセパレータ3には膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を2枚重ねて用いてガスケット4によりシールして2032型コイン電池をAr雰囲気のグローブボックス中で組み立てた。
なお図1において1は負極缶、6は正極缶であり、図示していないが電解液は電池内部の空隙に存在する。
【0018】
このように作製した電池を10時間程度放電し、開回路電圧(OCV)が安定した後、正極に対する電流密度を1.0mA/cm2として、カットオフ電圧4.3〜3.0Vの条件で充放電試験を行った。
電池は全部で100個作製して充放電試験を行って、充放電サイクル数が20回以下で内部短絡などにより試験できなくなった電池を不良電池として数えた。
その結果を下記する表1に示す。
【0019】
[比較例1]
実施例と同様に作製し、焼成後のピンミル粉砕時に超硬合金製ピンと表面硬化層を持たないステンレス鋼製の円盤により構成されるピンミルを用いて粉砕した。
得られた活物質の比表面積およびFe含有量を求め、さらに実施例と同様に電池を作製し、電池試験を行い不良電池の数を求め、その結果を表1に示す。
【0020】
[比較例2]
実施例と同様に作製し、焼成後のピンミル粉砕時にステンレス製ピンと表面硬化層を持たないステンレス鋼製の円盤により構成されるピンミルを用いて粉砕した。
得られた活物質の比表面積およびFe含有量を求め、さらに実施例と同様に電池を作製し、電池試験を行い不良電池の数を求め、その結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
以上の結果から本発明による製造方法により合成されたリチウムコバルト複酸化物はFeの含有量が低いため、活物質として用いた場合は初期不良の少ない優れた電池を得られることが分かった。
【0023】
【発明の効果】
以上述べた通り本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法および該方法により得られた非水系電解質二次電池用正極活物質によれば、好ましい比表面積を有し、かつFeの含有量の低い非水系電解質二次電池の正極活物質を得ることができ、また初期不良の少ない電池の作製が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】電池試験に用いた2032型コイン電池の一部破断斜視図である。
【符号の説明】
1 負極缶
2 リチウム金属ペレット
3 セパレータ
4 ガスケット
5 正極ペレット
6 正極缶
Claims (2)
- 炭酸リチウムと酸化コバルトを精秤し混合してなる原料粉にバインダーを加えて混合しつつ造粒し、ついで酸素含有雰囲気下で前記造粒物を焼成した後、該焼成物を粉砕してリチウムコバルト複酸化物からなる非水系電解質二次電池用正極活物質を製造するに際して、前記焼成物の粉砕を超硬合金製のピンおよび表面硬化されたステンレス鋼製の円盤より構成されるピンミルを用いて行うことを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 平均粒径が10μm以下、かつ比表面積が1.0m2/g以上の炭酸リチウム(Li2Co3)と、比表面積が1.0〜3.5m2/gの酸化コバルト(Co3O4)とを原料粉として用いて請求項1記載の製造方法により得られ、かつ比表面積が0.3〜3.8m2/gで、Fe含有量が100ppm以下であることを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質。
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