JP3559659B2 - 電子ビーム冷却装置 - Google Patents

電子ビーム冷却装置 Download PDF

Info

Publication number
JP3559659B2
JP3559659B2 JP28830296A JP28830296A JP3559659B2 JP 3559659 B2 JP3559659 B2 JP 3559659B2 JP 28830296 A JP28830296 A JP 28830296A JP 28830296 A JP28830296 A JP 28830296A JP 3559659 B2 JP3559659 B2 JP 3559659B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
solenoid coil
electron beam
water
magnetic field
superconducting
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP28830296A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH10134999A (ja
Inventor
昌幸 星野
健 吉行
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toshiba Corp filed Critical Toshiba Corp
Priority to JP28830296A priority Critical patent/JP3559659B2/ja
Publication of JPH10134999A publication Critical patent/JPH10134999A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3559659B2 publication Critical patent/JP3559659B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Particle Accelerators (AREA)
  • Containers, Films, And Cooling For Superconductive Devices (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、イオン蓄積リング又はイオンサイクロトロンリングに設置して周回しているイオンビームの運動量の広がりを減少させることを目的とした電子ビーム冷却装置に係り、特に均一速度の電子ビームを射出する電子ビーム射出機器を備えた電子ビーム冷却装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の水冷ソレノイドコイルを用いた電子ビーム冷却装置については、図4の一部切り欠き正面図に示すように、電子ビーム射出機器1における電子銃2により生成された電子は、加速管3で加速されて所定の速度を持つ電子ビーム4となる。
イオンとの相互作用をさせるイオンビーム軌道部分を含めて前記電子ビーム4の通る部分には、電子の電荷による発散を防ぐために、射出側ソレノイドコイル5によりソレノイド磁界を発生させている。
【0003】
電子ビーム4は射出側トロイドコイル6により偏向され、イオンビーム中に入射されてイオンビームを冷却する。次いでイオンビームを冷却した電子ビーム4は、回収側トロイドコイル7により再び偏向され、減速管8に導かれてエネルギーを回収した後にコレクタ9によって回収される。
この電子ビーム4をイオンビームに入射する際には、電子ビーム4の運動量の広がりが小さいほど、イオンビームの運動量の広がりを小さくすることができることから、電子ビーム射出機器1においては、できるだけ電子ビーム運動量の広がりを小さくする必要がある。
【0004】
電子ビーム4を生成して運動量を与える電子銃2及び加速管3部において、前記射出側ソレノイドコイル5によるソレノイド磁界が、加速方向と一致しなかったり、または変化することは、電子に進行方向と垂直方向の運動量成分を発生させることになる。
従って、この結果は運動量の広がりを大きくすることから、電子銃2及び加速管3部においては、ソレノイド磁界は高い均一度が要求されると共に、加速方向とソレノイド磁界方向が一致している必要がある。
【0005】
また、射出側ソレノイドコイル5においては、射出側トロイドコイル6との接合部10における磁界の急激な変化は、電子の運動量の広がりをもたらすことから、前記射出側トロイドコイル6との接合部10におけるソレノイド磁界の一様性が要求されている。
このソレノイド磁界の変化については、次の式(1)に示す断熱パラメータχが1より十分小さい必要がある。
【0006】
【数1】
Figure 0003559659
【0007】
ここでBは磁界、λは電子のサイクロトロン波長である。また、この電子のサイクロトロン波長λは次の式(2)で求められることから、ソレノイド磁界に対して断熱パラメータχは次の式(3)に示すような形にまとめられる。
【0008】
【数2】
Figure 0003559659
【0009】
【数3】
Figure 0003559659
【0010】
なお、磁界変化を少なくするために、ソレノイドコイル及びトロイドコイルは巻線が連続するように構成されている。
【0011】
射出側ソレノイドコイル5は、イオンビーム軌道に不正な磁界を発生しないために磁性体による磁気シールドで覆われている。また、磁界を加速管3部から射出側トロイドコイル6までの間で減少させて断熱膨張させることにより、さらに電子ビーム運動量の広がりを小さくできることが分かっている。
この時のソレノイド磁界変化も上記式(3)の断熱パラメータχが、1より十分小さい必要がある。また、断熱膨張効率は磁界の大きさの変化量が大きい方が高い。
【0012】
しかしながら、電子の発散を防ぐために電子ビーム軌道中のソレノイド磁界は、最低数百ガウスが必要なことから磁界の大きさの変化量を大きくするには、加速管3部の磁界を大きくする必要がある。
このためには、水冷ソレノイドコイルを使用したものではコイル形状が大きくなることから、この対策として超電導ソレノイドコイルの採用が考えられる。
【0013】
超電導ソレノイドコイルの例としては、図5の縦断面図を示すように、均一磁界が必要で漏洩磁界を小さくした超電導コイルの電磁石としては、磁気共鳴現象を用いた磁気共鳴撮像(Magnetic Resonanse Image,以下MRIと略称する)用超電導磁石11がある。
このMRI用超電導磁石11は、同軸上に配置された複数の超電導コイル12と、この超電導コイル12に対して同軸に配置されている磁気シールド13とから構成されている。
【0014】
前記磁気シールド13及び超電導コイル12は磁界の高均一度を得るために、超電導コイル12の中心に対して対称な形状をしているが、しかし、磁気シールド13の円筒部には設置用の磁気シールド脚13aが設けられている。
【0015】
さらに、超電導コイル12を囲って冷熱するための超電導クライオスタット14には、この重量を支えるクライオスタット脚14aが設けられていることから、前記磁気シールド13の円筒部には、クライオスタット脚14aが貫通するクライオスタット脚用穴13bや、別途冷媒と電流の供給ポート15を貫通させることから、供給ポート用穴13cと、輻射シールド用の冷凍機ポート等があけられている。
【0016】
なお、磁気シ一ルド13の両側のフランジ部は磁界を効率的にシールドするために、超電導クライオスタット14のフランジ部に対して間隔16をあけて配置している。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
電子ビーム射出機器1において、射出側のソレノイドコイル5に超電導ソレノイドコイルを用いることは、加速管3部の磁界を高くしてソレノイド磁界の大きさの変化を大きくすることができ、より運動量の広がりの小さい電子ビーム冷却装置が得られる可能性がある。
【0018】
しかしながら、超電導ソレノイドコイルにおいては、前記のように各部に間隔16や断熱空間が必要なために、射出側トロイドコイル6との接合部10との間に巻線のない領域ができて、上記断熱パラメータχが確保できなくなるという支障があった。
【0019】
また、前記したMRI用超電導磁石11等に比較してコイル径が小さいために、超電導クライオスタット14における各ポート用の穴が大きくなり、磁気シールド13の円筒部にあけられた穴がコイル径に対して相対的に大きくなることから、この磁気シールド13の円筒にあけられた穴によってソレノイド磁界が乱されて、電子ビームの運動量の広がりが増加するという問題があった。
【0020】
さらに、超電導コイル12によりソレノイド磁界の変化量が大きくなることにより、断熱パラメータχが大きくなったり、超電導コイル12からの磁界がなかなか小さくならず、結果的に射出側トロイドコイル6と加速管3の間の距離を長くすることから、電子ビーム冷却装置1の大きさが大きくなる等の支障があった。
【0021】
本発明の目的とするところは、電子ビーム射出機器に磁界の大きな超電導ソレノイドコイルと水冷ソレノイドコイルを併用して、運動量の広がりの少ない電子ビームを発生させることにより、イオンビームの運動量の広がりを小さくすることのできるコンパクトな電子ビーム冷却装置を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1記載の発明に係る電子ビーム冷却装置は、イオン蓄積リング又はイオンサイクロトロンリングに設置して均一速度の電子ビームを射出する電子ビーム射出機器と射出された電子ビームを回収する電子ビーム回収機器からなる電子ビーム冷却装置において、前記電子ビーム射出機器の電子銃及び加速管部に磁界を発生させるコイルが超電導ソレノイドコイルで、前記イオン蓄積リング等に入射するために前記電子ビームを曲げるトロイドコイルとの間に磁界を発生させるコイルの水冷ソレノイドコイルを設けて、前記超電導ソレノイドコイル及び水冷ソレノイドコイルの全体を連続した円筒形状の磁性体からなる磁気シールドで覆い、前記超電導ソレノイドコイル部磁性体と水冷ソレノイドコイル部磁性体の境界において前記水冷ソレノイドコイル部磁性体に超電導ソレノイドコイル部磁性体の内径に対して小径の磁性体部分を形成すると共に、水冷ソレノイドコイルの反対側に超電導ソレノイドコイルに対する電流供給ポートと冷熱供給ポート及びクライオスタットの真空排気ポートを配置して前記磁気シールドにおける回転対称性を保持したことを特徴とする。
【0023】
トロイドコイルと超電導ソレノイドコイルの間に水冷ソレノイドコイルが設置されており、トロイドコイルに対して巻線が連続する構成となっていることから、トロイドコイルと水冷ソレノイドコイルの間でのソレノイド磁界の変化が抑制される。
【0024】
また、水冷ソレノイドコイルの反対側は、イオンビーム軌道から離れる方向であり、磁界が少々漏洩しても影響が少ない位置に超電導ソレノイドコイルの冷熱等の供給ポートや、クライオスタット真空排気ポートを配置したので、磁気シールドには各ポート等の貫通穴がない。
従って、磁気シールドの回転対称が保持されて電子銃及び加速管部での不正磁界の発生が抑制される。なお、超電導ソレノイドコイルの冷熱は冷凍機により発生して超電導ソレノイドコイルに効率良く供給される。
【0025】
さらに、超電導ソレノイドコイルに対する磁気シールドを、水冷ソレノイドコイル側で内径が小さくなる部分を形成したことにより、超電導ソレノイドコイルにより水冷ソレノイドコイル部分に発生する磁界が小さくしたことから、加速管とトロイドコイルの距離を短くすることができる。
【0026】
また、前記のように超電導ソレノイドコイルにより水冷ソレノイドコイル部分に発生する磁界を小さくして、磁界の小さい水冷ソレノイドコイル部分の磁界勾配が緩やかとなり断熱パラメータが小さい。従って、電子銃及び加速管部でのソレノイド磁界均一度を高くしたままで、水冷ソレノイドコイルにより断熱パラメータを小さくした磁界勾配が生成できる。
【0027】
請求項2記載の発明に係る電子ビーム冷却装置は、電子ビーム射出機器の磁気シールドにおいて、超電導ソレノイドコイル部磁性体を水冷ソレノイドコイル部磁性体と一体の磁性体フランジにおいて嵌合等により結合すると共に、前記水冷ソレノイドコイル部磁性体と水冷ソレノイドコイルは樹脂含浸等により固定し、また超電導ソレノイドコイルのクライオスタットを前記磁性体フランジに嵌合等により固定したことを特徴とする。
【0028】
超電導ソレノイドコイルのクライオスタットと超電導ソレノイドコイル部磁性体を、水冷ソレノイコイル部磁性体に対して固定しているので、超電導ソレノイドコイル部磁性体にクライオスタット支持のための穴をあけていない。
【0029】
これにより、超電導ソレノイドコイルのクライオスタットが嵌合等により同軸で強固に固定できるので、電子銃及び加速管部での磁界均一度をさらに確実にできる。
また、全てのソレノイドコイルが磁気シールドに対して固定されているために、超電導ソレノイドコイル及び水冷ソレノイドコイルをーつのマグネットとして取扱うことができる。
【0030】
請求項3記載の発明に係る電子ビーム冷却装置は、電子ビーム射出機器の水冷ソレノイドコイルにおいて、巻枠の内外径を同軸に形成して磁気シールドの水冷ソレノイドコイル部磁性体の内径と同軸に樹脂含浸等で固定すると共に、前記磁性体フランジの当たり面を水冷ソレノイドコイルの巻枠内径軸に対して垂直に形成することを特徴とする。
【0031】
水冷ソレノイドコイルを水冷ソレノイドコイル部磁性体の内径に同軸で固定すると共に、前記水冷ソレノイドコイル部磁性体と一体で同軸の磁性体フランジの当たり面を垂直に形成している。
【0032】
これにより、水冷ソレノイドコイルは超電導ソレノイドコイルと同軸になると共に、クライオスタットも同軸にすることができる。従って、超電導ソレノイドコイルによるソレノイド磁界軸と水冷ソレノイドコイルの磁界軸とを容易に同軸に近づけることができる。
このために、ソレノイド磁界の湾曲により電子ビームが曲げられる量が減少して、電子ビームにおいて進行方向と垂直な方向の運動量の発生が減少し、運動量の広がり増加を抑制する。
【0033】
請求項4記載の発明に係る電子ビーム冷却装置は、電子ビーム射出機器において、超電導ソレノイドコイルのクライオスタット真空容器内筒に超電導ソレノイドコイルの両端部分で片方に3箇所以上の測定穴をあけて超電導ソレノイドコイルとクライオスタット真空容器内筒との位置及び傾きの測定をして同軸調整後に閉塞することを特徴とする。
【0034】
超電導クライオスタットの真空容器内筒にあけた測定穴により、超電導ソレノイドコイルと超電導クライオスタットの真空容器内筒の位置及び傾きを測定して、必要に応じて超電導ソレノイドコイルと真空容器内筒を同軸に調整した後に測定用穴を閉塞する。
これにより、超電導クライオスタットの真空容器内筒と超電導ソレノイドコイルが同軸となるので、超電導ソレノイドコイルによるソレノイド磁界の湾曲が抑制されて、電子ビーム運動量の広がり増加を抑制することができる。
【0035】
請求項5記載の発明に係る電子ビーム冷却装置は、電子ビーム射出機器の超電導ソレノイドコイルにおいて、電子銃カソードと加速管電極端間の中心に対して超電導ソレノイドコイル中心を水冷ソレノイドコイルと反対側にずらすと共に、外周あるいは内周にノッチを設けてこのノッチ中心を超電導ソレノイドコイル中心に対して水冷ソレノイドコイル側にずらして配置することを特徴とする。
【0036】
超電導ソレノイドコイルの磁気シールドの形状が水冷ソレノイドコイル側とその反対側で異なり、超電導ソレノイドコイルの水冷ソレノイドコイル側では磁気シールドによって磁気抵抗が小さくなるためソレノイド磁界が強くなる。
これに対して超電導クライオスタットの各種ポートを設置した水冷ソレノイドコイルと反対側では、磁気シールドが少ないために磁気抵抗が大きくなりソレノイド磁界が小さくなる。
【0037】
従って、電子銃のカソードと加速管電極端間の中心に対して、超電導ソレノイドコイル中心が水冷ソレノイドコイルと反対側にずらして配置すると共に、超電導ソレノイドコイルにノッチを設けて、このノッチの中心を前記超電導ソレノイドコイル中心に対して水冷ソレノイド側にずらして配置している。
【0038】
これにより、超電導ソレノイドコイルによる発生磁界は、超電導ソレノイドコイル中心からコイル端部に向かって小さくなるので、均一磁界領域中心より磁界の小さくなる水冷ソレノイドコイルと反対側に超電導ソレノイドコイル中心をずらす。
【0039】
この結果、磁気シールドにより水冷ソレノイドコイルに向かって超電導ソレノイド磁界が大きくなることと、超電導ソレノイドコイル中心からコイル端部に向かって磁界が小さくなることとが相殺されて、小さな超電導ソレノイドコイルによって広い均一磁界が得られる。
【0040】
なお、得られた磁界もやはり均一磁界の中央部で大きく、端部側に向かって小さくなるので、超電導ソレノイドコイル中心から水冷ソレノイドコイル側にずれたノッチを超電導ソレノイドコイルに設置することにより、均一磁界中央部の磁界を小さくして、結果的に電子銃部から加速管電極端までのソレノイド磁界の均一度が高くなる。
【0041】
請求項6記載の発明に係る電子ビーム冷却装置は、電子ビーム射出機器の超電導ソレノイドコイルにおいて、水冷ソレノイドコイル側に主磁界巻線と逆方向の磁界を発生する逆磁界巻線を設けたことを特徴とする。
【0042】
超電導ソレノイドコイルの水冷ソレノイドコイル側に設けた逆磁界巻線により、加速管電極端から水冷ソレノイドコイルに向かってソレノイド磁界を急激に減少させることができる。
加速管電極端部のように磁界の高い領域では、磁界勾配が大きくても断熱パラメータが小さいので、この部分で磁界を急激に小さくすることにより、磁界の小さいトロイドコイルに近い部分での磁界変化を小さくし、断熱パラメータが小さいままで加速管電極端とトロイドコイルまでの距離を短くすることができる。
【0043】
これにより、電子ビーム射出機器がコンパクトになり、前記逆磁界巻線により水冷ソレノイドコイル側の磁気シールドによるソレノイド磁界が大きくなることを打ち消す効果もある。
【0044】
請求項7記載の発明に係る電子ビーム冷却装置は、電子ビーム射出機器の超電導ソレノイドコイルにおいて、主磁界巻線と逆磁界巻線の間に金属製リングを設けると共に、前記逆磁界巻線の外周に金属体を設けて水冷ソレノイドコイル側に配置した電磁力支持用フランジを介して水冷ソレノイドコイルと反対側のクライオスタット真空容器フランジに前記超電導ソレノイドコイルの外周に設けた断熱支持体により支持したことを特徴とする。
【0045】
超電導ソレノイドコイルに対して磁気シールドが非対称な形状であり、水冷ソレノイドコイルが一方のみに設置されるために軸方向に強大な電磁力が発生する。
また、円筒形状の磁気シールドの磁性体に対して軸方向で中心をずらした超電導ソレノイドコイルを励磁した場合に、前記磁性体に吸引される方向の電磁力が働き、さらに、同軸上に中心位置をずらして配置した超電導ソレノイドコイルを同一方向に励磁した場合に、超電導ソレノイドコイルの中心が一致する方向に電磁力が働く。
【0046】
この二つの電磁力は同一方向となることから強大な電磁力が、水冷ソレノイドコイルに向かって発生するが、この電磁力は逆磁界巻線の水冷ソレノイドコイル側に設けた電磁力支持用フランジと断熱支持体を介して、クライオスタット真空容器フランジで支持される。
なお、前記逆磁界巻線は主磁界巻線に比べて機械的に弱いが、逆磁界巻線の周囲に配置された金属製リング及び金属体により、強大な電磁力は直接逆磁界巻線に加わらない。
【0047】
請求項8記載の発明に係る電子ビーム冷却装置は、電子ビーム射出機器の水冷ソレノイドコイルにおいて、超電導ソレノイドコイル側に高密度巻回部を形成したことを特徴とする。
水冷ソレノイドコイルの超電導ソレノイドコイル側で内径を小さくして、この部分の巻線を多くして高密度巻回部を形成しているので、磁気シールド及び逆磁界巻線により超電導ソレノイドコイル側で不足するソレノイド磁界を補うことができる。
【0048】
この時に、電子ビームは磁界の大きい領域でビーム断面積が小さく、磁界が小さくなると断面積が大きくなる。従って、水冷ソレノイドコイルの超電導ソレノイドコイル側では磁界が大きいのでコイル内径を小さくしても電子ビームに接触することなく、電子ビームの外周空間を有効に利用できる。
【0049】
また、この部分は超電導ソレノイドコイルによる磁界と水冷ソレノイドコイルによる磁界が結合する部分で、微細な磁界の整形が必要であるが、水冷ソレノイドコイルの内径を小さくすることにより、軸方向に広がりの小さい磁界が生成できるので、微細な磁界の調整が可能となる。
【0050】
請求項9記載の発明に係る電子ビーム冷却装置は、電子ビーム射出機器の磁気シールドにおいて、水冷ソレノイドコイル部磁性体の周方向厚さに比べて磁性体フランジの軸方向厚さ及び超電導ソレノイドコイル部磁性体の周方向厚さを厚くしたことを特徴とする。
【0051】
磁気シールドにおいて水冷ソレノイドコイル部磁性体の円周方向厚さに比べて、超電導ソレノイドコイル側に設けられた磁性体フランジの軸方向厚さ及び超電導ソレノイドコイル部磁性体の円周方向厚さを厚くしている。
これにより、磁界の大きい超電導ソレノイドコイルから漏洩する磁界を磁気シールド内に納めて、イオンビーム軌道への磁界漏洩を防ぐと共に、磁気抵抗が小さくなることから超電導ソレノイドにより発生する磁界が大きくなり、より断熱膨張効率を高くして電子ビームの運動量の広がりが小さくなる。
【0052】
請求項10記載の発明に係る電子ビーム冷却装置は、電子ビーム射出機器の磁気シールドにおいて、超電導ソレノイドコイル部磁性体の周方向厚さを超電導ソレノイドコイル中心に近い部分で厚くしたことを特徴とする。
【0053】
磁気シールドにおける超電導ソレノイドコイル部磁性体が、超電導ソレノイドコイルの中心近くの周方向厚さを両端に比べて厚くしたので、磁界の大きい超電導ソレノイドコイルから漏洩する磁界を磁気シールド内に納めて、イオンビーム軌道への磁界漏洩を防ぐと共に、磁気抵抗が小さくなることから超電導ソレノイドにより発生する磁界が大きくなり、より断熱膨張効率を高くして電子ビームの運動量の広がりが小さくなる。
【0054】
請求項11記載の発明に係る電子ビーム冷却装置は、電子ビーム射出機器の磁気シールドにおいて、超電導ソレノイドコイル部磁性体及び磁性体フランジに透磁率及び飽和磁界の大きな磁性材料を用いたことを特徴とする。
【0055】
磁気シールドにおける磁性体フランジ及び超電導ソレノイドコイル部磁性体を、透磁率及び飽和磁界の高い磁性材料を使用している。
これにより、磁性体を比較的薄い厚さとして磁界の大きい超電導ソレノイドコイルから漏洩する磁界をより確実に磁気シールド内に納めることができる。
【0056】
従って、イオンビーム軌道への磁界漏洩が防止されると共に、磁気抵抗が小さく超電導ソレノイドにより発生する磁界が大きくなるので、より断熱膨張効率を高くして電子ビームの運動量の広がりを小さくすることができる。
【0057】
請求項12記載の発明に係る電子ビーム冷却装置は、電子ビーム射出機器の水冷ソレノイドコイルにおいて、トロイドコイル側に水冷巻線と独立した水冷補助巻線を設けたことを特徴とする。
【0058】
水冷ソレノイドコイルのトロイドコイル側に水冷巻線と独立して電流を変えられる水冷補助巻線を設けている。
これにより、トロイドコイルとの接合部におけるソレノイド磁界を水冷巻線に影響を与えずに調整できると共に、トロイドコイル及びイオンビームとの相互作用のソレノイド磁界が変化した場合にも、磁界勾配を緩やかにしたソレノイド磁界を発生させることができる。
【0059】
請求項13記載の発明に係る電子ビーム冷却装置は、電子ビーム射出機器において超電導ソレノイドコイルの冷熱発生源を冷凍機としたことを特徴とする。
超電導ソレノイドコイルを冷却する冷熱を冷凍機が発生する極低温冷媒から得ているので、電子ビーム射出機器の構造がコンパクトになり冷却効率が良い。
【0060】
請求項14記載の発明に係る電子ビーム冷却装置は、電子ビーム射出機器の超電導ソレノイドコイルにおいて、主磁界巻線と逆磁界巻線の内径を同一に形成して内側を軸方向に連続した良伝熱体で結合すると共に、前記良伝熱体を介して冷熱を伝達することを特徴とする。
【0061】
超電導ソレノイドコイルは、主磁界巻線と逆磁界巻線の内径を同じにしたことで、内径側を軸方向に連続した共通の良伝熱体で互いを結合して、この良伝熱体に冷熱を伝える。
これにより、冷却効果が高くなり熱容量の少ない逆磁界巻線部が常電導転移した場合にも、磁界が大きく温度マージンの小さい主磁界巻線の内周側に、前記良伝熱体により即時に熱を伝達して、主磁界巻線部も常電導に転移させることができる。
【0062】
またこれにより、超電導ソレノイドコイル全体で蓄積エネルギーが吸収されるために、逆磁界巻線に前記蓄積エネルギーをバイパスする等の保護手段を備える必要がないので、超電導ソレノイドコイルがコンパクトになる。
さらに、磁界の大きい内周側を冷熱により良伝熱体を介して冷却することから、臨界電流を大きく取ることができ、超電導ソレノイドコイルがコンパクトになることから、電子ビーム冷却装置もコンパクトにできる。
【0063】
請求項15記載の発明に係る電子ビーム冷却装置は、電子ビーム射出機器の磁気シールドにおいて、超電導ソレノイドコイル部分で水冷ソレノイドコイルと反対側にジャッキボルトを設けて超電導ソレノイドコイルのクライオスタットと磁気シールドの傾きを調整可能として、電子銃及び加速管が超電導ソレノイドコイル部磁性体に対して同軸に支持することを特徴とする。
【0064】
磁気シールドの超電導ソレノイドコイル部磁性体において、水冷ソレノイドコイルの反対側に設けたジャッキボルトにより、超電導ソレノイドコイルを収容したクライオスタットと磁気シールドの傾きを調整する。
これにより、超電導ソレノイドコイルによるソレノイド磁界軸と電子ビ一ム加速方向を一致させることにより、電子ビームの進行方向に垂直な方向の運動量発生が抑制されて、電子ビーム運動量の広がりが小さくなる。
【0065】
請求項16記載の発明に係る電子ビーム冷却装置は、電子ビーム射出機器の超電導ソレノイドコイルにおいて、主磁界巻線と逆磁界巻線の間に金属製リングを設けると共に、前記逆磁界巻線の外周に金属体を設けて水冷ソレノイドコイル側に配置した電磁力支持用フランジを介して水冷ソレノイドコイル側のクライオスタット真空容器フランジに前記超電導ソレノイドコイルの軸方向に設けた多重円筒形状の断熱支持体により支持したことを特徴とする。
【0066】
超電導ソレノイドコイルからの電磁力は、電磁力支持フランジと多重円筒形状の断熱支持体を介して、磁気シールドと当接している水冷ソレノイドコイル側のクライオスタット真空容器フランジにより支持される。また、逆磁界巻線は周囲の金属製リングと金属体により機械的に保護される。
【0067】
請求項17記載の発明に係る電子ビーム冷却装置は、電子ビーム射出機器において、超電導ソレノイドコイルの冷熱発生源を極低温冷媒としたことを特徴とする。
超電導ソレノイドコイルの冷熱を液体へリウムまたは液体窒素等の極低温冷媒により得て超電導コイルを冷却する。直接電子ビーム射出機器に冷凍機を設置しないので構成が簡素化する。
【0068】
請求項18記載の発明に係る電子ビーム冷却装置は、電子ビーム射出機器の水冷ソレノイドコイルにおいて、巻線の口出しを前記磁気シールドのトロイドコイル及び超電導ソレノイドコイルとの接合面に設けたことを特徴とする。
【0069】
水冷ソレノイドコイルの口出しを磁気シールドで厚さの厚い超電導ソレノイドコイル及びトロイドコイルとの接合面に設けたので、口出し用の溝加工が容易で磁気シールドにおける回転対称性に与える影響が少ない。
従って、ソレノイド磁界の不正分の発生が小さいので、ソレノイド磁界の乱れが小さく電子ビームの運動量の広がりが抑制できる。
【0070】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。なお、上記した従来技術と同じ構成部分については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
第1実施の形態は請求項1乃至請求項14に係り、図1の縦断面図に示すように電子ビーム冷却装置における電子ビーム射出機器17は、真空容器内の電子銃2及び加速管3の周囲に、極低温冷熱発生源の冷凍機18と電流供給ポート19及び真空排気ポート20を備えた超電導クライオスタット21が配置されている。
【0071】
この超電導クライオスタット21の内部には、前記電子銃2及び加速管3の周囲に同軸で、例えば高純度の銅やアルミニウム等の良伝熱材22を介して超電導ソレノイドコイル23が設置されている(請求項13,14)。
この超電導ソレノイドコイル23は、外周にノッチ24を形成した主磁界巻線25と、この主磁界巻線25と同軸で金属製リング26を介して配置された急激に磁界を減少させることができる逆磁界巻線27から構成されている(請求項5,14)。
【0072】
前記逆磁界巻線27の外周に設けた金属体28と、端部に設けた電磁力支持用フランジ29は、前記超電導ソレノイドコイル23の外周に配置した断熱支持体30と結合されて、前記超電導クライオスタット21の真空排気ポート側真空容器フランジ21aに支持されている(請求項6,7)。
【0073】
また、前記超電導ソレノイドコイル23の外周には、円筒形状の磁性体による磁気シールド31が設けられていて、この磁気シールド31は、前記超電導ソレノイドコイル23部における超電導ソレノイドコイル部磁性体32と、水冷ソレノイドコイル部磁性体33とから構成されている。
【0074】
さらに、磁気シールド31においては、前記超電導ソレノイドコイル部磁性体32と水冷ソレノイドコイル部磁性体33の境界において、水冷ソレノイドコイル部磁性体33の内径の少なくとも一部を、前記超電導ソレノイドコイル部磁性体32の内径より小さく形成する。
【0075】
なお、図1では水冷ソレノイドコイル部磁性体33と一体に形成した磁性体フランジ34を含めて、内径の全部を前記超電導ソレノイドコイル部磁性体32より小さく形成した例を示している。
また、前記超電導磁気シールド32と水冷ソレノイドコイル部磁性体33とは、前記磁性体フランジ34の接合面34aにて嵌合等により同軸で結合される(請求項2,3)。
【0076】
前記磁気シールド31における水冷ソレノイドコイル部磁性体33の内部には、内径と外径が同軸に形成された巻枠35に、前記超電導ソレノイドコイル23と同軸とした水冷ソレノイドコイル36が設けられている。
これにより、前記超電導ソレノイドコイル23から、上記図4に示す射出側トロイドコイル6に対する巻線が同軸で連続した構成となっている。
【0077】
なお、前記水冷ソレノイドコイル36は、前記超電導ソレノイドコイル23側の一部に他の部分より巻回数が多い高密度巻回部37aを形成した水冷巻線37と、この水冷巻線37の外周で、射出側トロイドコイル6との接合部10側に設けた、前記水冷巻線37と独立して別電源により励磁することのできる水冷補助巻線38とで構成されている(請求項8,12)。
【0078】
また、水冷ソレノイドコイル36は、水冷ソレノイドコイル部磁性体33の内側に巻枠35と共に、エポキシ等の樹脂含浸により同軸で固定すると共に、水冷ソレノイドコイル部磁性体33の一方に形成した磁性体フランジ34を介して、前記超電導ソレノイドコイル部磁性体32同軸で強固に結合されるように、嵌合する磁性体フランジ34の接合面34aを軸心と垂直に形成している(請求項3)。
【0079】
なお、前記超電導ソレノイドコイル23を収容した超電導クライオスタット21においては、水冷ソレノイドコイル側真空容器フランジ21bが、前記水冷ソレノイドコイル磁性体33に設けられた磁性体フランジ34と嵌合等により同軸に固定されている(請求項2)。
【0080】
さらに、超電導クライオスタット21の真空容器内筒21cで、前記超電導ソレノイドコイル23の両端部において片側の3箇所以上に、超電導ソレノイドコイル23と真空容器内筒21cの位置及び傾きの測定と、超電導ソレノイドコイル23と真空容器内筒21cとの同軸調整用の測定穴39を設けている。なお、この測定穴39は同軸調整後に閉塞する(請求項4)。
【0081】
前記超電導ソレノイドコイル23については、図2の模式断面図に示すように、電子銃カソードと加速管電極端間で均一磁界範囲40における均一磁界範囲中心40aに対して、超電導ソレノイドコイル23における主磁界巻線25の主磁界巻線中心25aを、水冷ソレノイドコイル側41(矢印)と反対側にずらすと共に、ノッチ24のノッチ中心24aを主磁界巻線中心25aに対して、水冷ソレノイドコイル側41(矢印)にずらして配置している(請求項5)。
【0082】
また前記磁気シールド31については、前記水冷ソレノイドコイル部磁性体33の周方向厚さに比べて、超電導ソレノイドコイル部磁性体32の周方向厚さ及び磁性体フランジ34の軸方向厚さを厚く形成する(請求項9)。
さらに、超電導ソレノイドコイル部磁性体32については、超電導ソレノイドコイル23の中心に近い部分を厚く形成する(請求項10)。
【0083】
また、前記磁性体フランジ34と超電導ソレノイドコイル部磁性体32において、例えば電磁軟鋼等の透磁率及び飽和磁界の大きな磁性材料を用いている(請求項11)。
前記超電導クライオスタット21において、水冷ソレノイドコイル36の反対側に、前記冷凍機18と電流供給ポート19及び真空排気ポート20等を配置することにより、前記磁気シールド31の円周部に磁気遮蔽の回転対称性を損なうような貫通部や貫通穴等を形成しない(請求項1)。
【0084】
次に、上記構成による作用について説明する。電子ビーム冷却装置の電子ビーム射出機器17においては、電子銃2で生成された電子ビ一ム4が加速管3によって運動量を与えられるが、この加速管3部には周囲から磁界の大きな超電導ソレノイドコイル23によって均一なソレノイド磁界が加えられている。
【0085】
さらに電子ビーム4は、水冷ソレノイドコイル36の領域で断熱膨張され、運動量の広がりを減少させて射出側トロイドコイルト6ヘ射出される。なお、イオンビーム軌道への不正磁界の発生を抑制するためには、前記超電導ソレノイドコイル23と水冷ソレノイドコイル36の外周に連続した磁気シールド31が設けられている。
【0086】
また、前記超電導ソレノイドコイル23は、超電導クライオスタット21に設けられた冷凍機18によって内周の良伝熱体22等を介して冷却されるが、前記磁気シールド31は、水冷ソレノイドコイル36と反対側で開放した形状で、超電導クライオスタット21の排気ポート20や冷凍機18及び電流供給ポート19等は、この開放側に設置されている。
【0087】
従って、円筒形状の磁気シールド31は、周囲に磁界を乱す貫通穴等が形成されてないので回転対称性を保ち、前記加速管3部におけるソレノイド磁界に最も有害な垂直磁界の発生を引き起こすことがない。
また、前記磁気シールド31は、水冷ソレノイドコイル36側と反対側で対称ではないことから、図2に示すように電子銃2部と加速管3部の均一磁界範囲中心40aに対して、超電導ソレノイドコイル23の主磁界巻線中心25aを前記水冷ソレノイドコイル側41の反対側にずらしている。
【0088】
さらに、前記主磁界巻線25に設けたノッチ中心24aを主磁界巻線中心25aに対して、水冷ソレノイドコイル側41にずらして設置していることから、水冷ソレノイドコイル側41と反対側で磁気シールド31が開放されていることによる磁界の減少が補なわれると共に、ノッチ24により均一磁界範囲40における均一度が向上する。
【0089】
また、前記超電導ソレノイドコイル23においては、主磁界巻線25の水冷ソレノイドコイル側41にて、逆磁界巻線27と磁気シールド31の磁性フランジ34により、磁界の大きいところから急激に磁界を減少させることができる。
【0090】
なお、水冷ソレノイドコイル36においては、巻枠35の一部で内径を小さくして、この部分で巻線数を多くした高密度巻回部37aを形成し、これにより、ソレノイド磁界の急激な減少を滑らかに変化させている。
さらに、水冷ソレノイドコイル36においては、上記図4に示す射出側トロイドコイル6側に設けた水冷巻線37と独立して、別の電源により励磁される水冷補助巻線38により、前記射出側トロイドコイル6に対してソレノイド磁界の変化を少なくして接続することができる。
【0091】
超電導ソレノイドコイル23の水冷ソレノイドコイル側41への強大な電磁力は、断熱支持体30により超電導クライオスタット21に支えられ、超電導クライオスタット21は磁性体フランジ34を介して磁気シールド31で支持される。
なお、巻厚の薄い逆磁界巻線27については、主磁界巻線25の電磁力が金属製リング26と金属体28を介して電磁力支持用フランジ29へ伝えられることにより電磁力から保護されている。
【0092】
以上のように電子ビーム射出機器17によれば、コンパクトな形状で生成した電子ビーム4が運動量の広がりを少ないものとすることができるので、イオンビーム冷却効率の良い電子ビーム冷却装置が得られる。
【0093】
さらに、詳細について次に説明する。電子ビーム射出機器17は、上記図4に示す射出側トロイドコイル6と磁界の大きな超電導ソレノイドコイル23との間に、水冷ソレノイドコイル36を設置して、前記射出側トロイドコイル6に対して巻線が連続する構成としている。このために射出側トロイドコイル6と水冷ソレノイドコイル36との間でのソレノイド磁界の変化を抑えることができる。
【0094】
また、水冷ソレノイドコイル36を配置した側の反対側は、イオンビーム軌道から離れる方向であり、ソレノイド磁界が少々漏洩しても電子ビーム冷却装置における機能への影響が少ない。
そこで、超電導ソレノイドコイル23の冷熱と、電流の供給ポート19及び超電導クライオスタット21の真空排気ポート29を配置し、磁気シールド31をこれらの各ポートが入る部分で回転対称に除去して、磁気シールド31の回転対称性を確保したことから、電子銃2及び加速管3部における不正磁界の発生が抑制される。
【0095】
なお、前記超電導ソレノイドコイル23に対する冷熱は、冷凍機18による液体へリウム又は液体窒素等の極低温冷媒により発生して、前記超電導クライオスタット21により伝熱される。
このように、極低温冷媒の発生源である冷凍機18を超電導クライオスタット21に設置することにより、超電導ソレノイドコイル23に対する冷凍機18からの距離が、極めて短縮されるので冷熱の損失を少なくできると共に、電子ビーム射出機器17としてコンパクトに形成することができる。
【0096】
さらに、前記磁気シールド31は、超電導ソレノイドコイル23部分の超電導ソレノイドコイル部磁性体32に対して、水冷ソレノイドコイル36側で内径が小さくなる部分(ここでは、磁性体フランジ34と水冷ソレノイドコイル部磁性体33の全体の内径を小さくした場合を示す)を設けている。
これにより、超電導ソレノイドコイル23により水冷ソレノイドコイル37部分に発生する磁界を小さくすることができるので、加速管2と射出側トロイドコイル6との距離を短くすることができる。
【0097】
前記のように、この部分の超電導ソレノイドコイル23による磁界が小さくなるために、電子銃2及び加速管4部分でのソレノイド磁界均一度を高くしたままで、水冷ソレノイドコイル37により断熱パラメータχを小さくした磁界勾配を生成することができる。
なお、断熱パラメータχを小さくするためには、上記式(3)で分かるように、比較的磁界の小さい水冷ソレノイドコイル37部分の磁界勾配を緩やかにする必要がある。
【0098】
また電子ビーム射出機器17は、超電導クライオスタット21と超電導ソレノイドコイル部磁性体32を、水冷ソレノイドコイル部磁性体33に対して磁性体フランジ24において固定することにより、超電導ソレノイドコイル部磁性体32にクライオスタット21を支持するための穴等をあけることなく強固に固定している。
【0099】
これにより、電子銃2及び加速管3部での磁界均一度をさらに確実にすることができる。さらに、全てのソレノイドコイルが磁気シールド31に対して固定されているために、超電導ソレノイドコイル23及び水冷ソレノイドコイル36をーつのマグネットとして扱うことができる利点もある。
【0100】
なお電子ビーム冷却装置17は、前記水冷ソレノイドコイル36の巻枠35の内径と外径を同軸に形成すると共に、水冷ソレノイドコイル部磁性体33及び、例えば一体として冶金的に結合した磁性体フランジ34の内径を嵌合部としている。
前記水冷ソレノイドコイル部磁性体33及び磁性体フランジ34の嵌合部には、巻枠35に巻回した水冷ソレノイドコイル37を例えばエポキシ等による樹脂含浸により固定した後に、前記巻枠35の内径に対して同軸で、また磁性体フランジ34の接合面34aを前記巻枠軸に対して垂直に加工する。
【0101】
これにより、水冷ソレノイドコイル36と超電導クライオスタット21は同軸にすることができる。従って、超電導ソレノイドコイル23によるソレノイド磁界軸と、水冷ソレノイドコイル36のソレノイド磁界軸を同軸に近づけられる。
従って、電子ビーム冷却装置17では、ソレノイド磁界の湾曲により電子ビーム4が曲げられる量が減少し、電子ビーム4の進行方向に垂直な方向の運動量の発生が減少して、イオンビームの運動量の広がりが増加することを抑制する。
【0102】
さらに電子ビーム冷却装置17では、超電導クライオスタット21の真空容器内筒21cで、超電導ソレノイドコイル23の両端部分に設けた片方3箇所以上の測定穴39を用いて、超電導ソレノイドコイル23と超電導クライオスタット21における真空容器内筒21cの位置及び傾きを測定する。
その後に、超電導ソレノイドコイル23と真空容器内筒21c筒を同軸に調整してから測定穴39を塞いでから、前記磁性体フランジ34と水冷ソレノイドコイル側真空容器フランジ21bを嵌合する。
【0103】
これにより、真空容器内筒21cは水冷ソレノイドコイル37と同軸に固定することができるので、前記真空容器内筒21cと超電導ソレノイドコイル23との同軸調整と併せて、超電導ソレノイドコイル23と水冷ソレノイドコイル36との同軸を確実にした組み立てが容易に行える。
従って、ソレノイド磁界の湾曲抑制が、さらに確実に行えるので、電子ビーム4の運動量の広がり増加を大きく抑制することができる。
【0104】
電子ビーム冷却装置17において、超電導ソレノイドコイル部磁性体32は水冷ソレノイドコイル36側と、その反対側で形状が異なることから、超電導ソレノイドコイル23の水冷ソレノイドコイル36側では、磁気シールド31により磁気抵抗が小さくなるために超電導ソレノイドコイル23によるソレノイド磁界が強くなる。
【0105】
これに対して、超電導クライオスタット21の各種ポートを設置した前記水冷ソレノイドコイル36と反対側では、磁気シールドが少ないために磁気抵抗が大きくなりソレノイド磁界が小さくなる。
そこで、一般の高均一度マグネットにおいては、磁界を均一にする領域の中心に対してコイル中心を配置している。また、ノッチや複数のコイルによって構成する場合にも、コイル中心に対して対称に構成している。
【0106】
しかしながら本発明においては、図2に示すように均一磁界範囲40である電子銃カソードと加速管電極端間の中心に対して、均一磁界を生成する超電導ソレノイドコイル23における主磁界巻線25の主磁界巻線中心25aを、水冷ソレノイドコイル側41と反対側にずらして配置している。
【0107】
また、主磁界巻線25に設けたノッチ24のノッチ中心24aを、前記主磁界巻線中心25aに対して水冷ソレノイドコイル側41にずらして配置しことにより、主磁界巻線25による発生磁界は、主磁界巻線中心25aからコイル端部に向かって小さくなる。
【0108】
このために、均一磁界範囲40の均一磁界範囲中心40aより、磁界の小さくなる水冷ソレノイドコイル36と反対側に主磁界巻線中心25aをずらすことにより、磁気シールド31により水冷ソレノイドコイル36に向かってソレノイド磁界が大きくなる。
【0109】
これにより、前記主磁界巻線中心25aからコイル端部に向かって磁界が小さくなることが相殺されて、小さな超電導ソレノイドコイル23でも広い均一磁界が得られる。この結果から得られた磁界も、やはり均一磁界の中央部で大きく端部側に向かって小さくなる。
【0110】
そこで、主磁界巻線中心25aから水冷ソレノイドコイル側41にずれたノッチ24を、超電導ソレノイドコイル23の主磁界巻線25に設置することにより、均一磁界中央部の磁界を小さくして、結果的に電子銃2部から加速管電極端までのソレノイド磁界の均一度を高くすることができて、運動量の広がりの少ない電子ビームが得られる。
【0111】
また電子ビーム冷却装置17では、超電導ソレノイドコイル23において、水冷ソレノイドコイル36に主磁界巻線25による主磁界と反対の磁界を発生する逆磁界巻線27を設けていることから、加速管2の電極端から水冷ソレノイドコイル36に向かってソレノイド磁界を急激に減少させることができる。
【0112】
上記式(3)より加速管電極端部のように磁界の高い領域では、磁界勾配が大きくても断熱パラメータχが小さく、この部分で磁界を急激に小さくすることにより、磁界の小さい射出側トロイドコイル6に近い部分での磁界変化を小さくすることができる。
【0113】
これにより、前記断熱パラメータχを小さいまま加速管電極端と射出側トロイドコイル6までの距離を短くできるので、電子ビーム冷却装置17をコンパクトに構成することができる。
また、前記逆磁界巻線27においては、水冷ソレノイドコイル36側の水冷ソレノイドコイル部磁性体33によるソレノイド磁界が大きくなることを打ち消す効果もある。
【0114】
なお電子ビーム冷却装置17は、超電導ソレノイドコイル23に対して磁気シールド31が非対称な形状であり、水冷ソレノイドコイル36が一方のみに設置されていることから、超電導ソレノイドコイル23により軸方向に発生する電磁力を支持する必要がある。
【0115】
磁気シールドである円筒形状の磁性体に対して、軸方向で中心をずらしたソレノイドコイルを励磁した場合には、前記磁性体に吸引される方向の電磁力が働く。また、同軸上に中心位置をずらして配置したコイルを同一方向に励磁した場合には、ソレノイドコイル中心が一致する方向に電磁力が働く。
【0116】
従って、本発明の超電導ソレノイドコイル23においては、前記二つの電磁力が同一方向となるために、強大な電磁力が水冷ソレノイドコイル36側に向かって発生する。
また、超電導ソレノイドコイル23における逆磁界巻線27は、主磁界巻線25に比べて巻厚さが薄いことから、主磁界巻線25から水冷ソレノイドコイル側にある逆磁界巻線27に、主磁界巻線25の電磁力が全て加わった場合には、逆磁界巻線27が大きく変形したり破壊する可能性がある。
【0117】
しかしながら、主磁界巻線25により発生する電磁力は、主磁界巻線25と逆磁界巻線27との間の金属製リング26及び、逆磁界巻線27の外周に配置した金属体28を介して、逆磁界巻線27の水冷ソレノイドコイル36側の電磁力支持フランジ29に伝えられるので、逆磁界巻線27には主磁界巻線25による電磁力は加わらない。
また、逆磁界巻線27においても磁界分布により、水冷ソレノイドコイル36側に電磁力が発生するが、この電磁力も電磁力支持フランジ29によって受け止められる。
【0118】
さらに、前記電磁力支持フランジ29は、超電導ソレノイドコイル23の周囲に配置した複数の断熱支持体30により、水冷ソレノイドコイル36と反対側の真空排気ポート側真空容器フランジ21aに伝えると共に、クライオスタット真空容器外筒を経由して磁気シールド31との当たり面で支持される。
【0119】
さらに電子ビーム冷却装置17は、水冷ソレノイドコイル36において、超電導ソレノイドコイル23側の内径を小さくし、この部分の巻線を多く巻回した高密度巻回部37aを形成しているので、磁気シールド31及び超電導ソレノイドコイル23の逆磁界巻線27により、超電導ソレノイドコイル25側で不足するソレノイド磁界を補うことができる。
【0120】
この時に電子ビーム4は、磁界の大きい領域でビーム断面積が小さく、磁界が小さくなると断面積が大きくなる。なお、水冷ソレノイドコイル36の超電導ソレノイドコイル23側では磁界が大きいので、水冷ソレノイドコイル36の内径を小さくしても電子ビーム4に接触することがないので、電子ビーム4の外周空間が有効に利用できる。
【0121】
また、この部分は超電導ソレノイドコイル23による磁界と、水冷ソレノイドコイル36による磁界が結合する部分であり、微細な磁界の整形が必要である。しかしながら、水冷ソレノイドコイル36の内径を小さくすることにより、軸方向に広がりの小さい磁界が生成できるので、前記微細な磁界調整が可能となる。
【0122】
前記電子ビーム冷却装置17では、磁気シールド31において水冷ソレノイドコイル部磁性体33の周方向厚さに比べて、超電導コイルソレノイドコイル部磁性体32の周方向厚さ及び磁性体フランジ34の軸方向厚さを厚くしている。
これにより、磁界の大きい超電導ソレノイドコイル23から漏洩する磁界を、磁性体フランジ34と超電導コイルソレノイドコイル部磁性体32において納めて、イオンビーム軌道へ前記磁界が漏洩することを抑制する。
【0123】
また、磁気抵抗が小さくなることから超電導ソレノイドコイル23により発生する磁界を大きくして、より高い断熱膨張効率により電子ビーム4の運動量の広がりが小さくできる。
さらに、超電導ソレノイドコイル部磁性体32においては、主磁界巻線25の中心付近の周方向厚さを両端部に比べて厚くしているので、前記水冷ソレノイドコイル部磁性体33に比べて、超電導コイルソレノイドコイル部磁性体32及び磁性体フランジ34を厚くした場合と同様の作用と効果を得ることができる。
【0124】
また、磁気シールド31における超電導ソレノイドコイル部磁性体32、及び磁性体フランジ34に、例えば電磁軟鋼等の透磁率及び飽和磁界の高い磁性材料を用いることにより、ソレノイドコイルによる磁界の漏洩防止と、磁気抵抗が減少することから磁界を大きくする機能が向上する。
【0125】
なお、磁性機能を従来と同様とするならば、磁気シールド31における超電導コイルソレノイドコイル部磁性体32の周方向厚さ、及び磁性体フランジ34の軸方向厚さが、一般の磁性材料である例えば炭素鋼を使用した場合に比べて薄くすることができる。
【0126】
これにより、電子ビーム冷却装置17を小型化と軽量化によりコンパクトにできると共に、前記水冷ソレノイドコイル部磁性体33に比べて、超電導コイルソレノイドコイル部磁性体32及び磁性体フランジ34を厚くした場合や、主磁界巻線25の中心付近の周方向厚さを両端部に比べて厚くした場合と同様の作用と効果を得ることもできる。
なお、上記3つの構成は適宜組み合わせることにより、それぞれを兼ね揃えた作用と効果を容易に得ることができるものである。
【0127】
また電子ビーム冷却装置17には、水冷ソレノイドコイル36において射出側トロイドコイル6側に、水冷巻線37と独立した水冷補助巻線38が設けてあり、この水冷補助巻線38は前記水冷巻線37と別に電流を変えることができる。
従って、射出側トロイドコイル6との接合部10で水冷ソレノイド磁界を他の部分に影響を与えずに調整できると共に、射出側トロイドコイル6及びイオンビームとの相互作用部のソレノイド磁界が変化した場合でも、磁界勾配を緩やかにして水冷ソレノイド磁界を発生することができる。
【0128】
さらに電子ビーム冷却装置17は、超電導ソレノイドコイル23においてノッチ24を主磁界巻線25の外周に設置する(内周でも可)と共に、逆磁界巻線27の内径を主磁界巻線25と同じに形成しているので、主磁界巻線25と逆磁界巻線27の内径を軸方向に連続して良伝熱材22で結合し、この良伝熱材22に冷凍機18から冷熱を伝えている。
【0129】
従って、主磁界巻線25に比べて小型なことから熱容量の少ない逆磁界巻線27が常電導転移した場合にも、磁界が大きく温度マージンの小さい主磁界巻線25の内周側に、良伝熱材22を介して即時に熱が伝達されることから、主磁界巻線25も常電導転移させることができる。
【0130】
これにより、磁界に蓄積されたエネルギーは、超電導ソレノイドコイル23の全体で吸収されるために、前記熱容量の少ない逆磁界巻線27を対象とした、前記蓄積エネルギーをバイバスする等の保護装置を特に設ける必要がない。
従って、超電導ソレノイドコイル23の信頼性が向上すると共に、コンパクトに構成することができる。
【0131】
また、磁界の大きい超電導ソレノイドコイル23の内周側を冷却するために、臨界電流を大きく取ることができて、超電導ソレノイドコイル23をコンパクトにすることができるので、電子ビーム冷却装置17としてもコンパクト化できる。
【0132】
以上により電子ビーム冷却装置の電子ビーム冷却装置17においては、磁界の大きい超電導ソレノイドコイル23の採用によりコンパクトで、水冷ソレノイドコイル36を含めた磁気シールド31の回転対称性を維持している。
これにより、ソレノイド磁界軸と電子ビ一ム加速方向を一致させると共に、電子ビーム4の進行方向に垂直な方向の運動量が発生することを抑制して、電子ビーム運動量の広がりが小さく、従って、イオンビームの運動量の広がりを減少させることができる。
【0133】
第2実施の形態は請求項4と請求項7及び請求項13を除く請求項1乃至請求項18に係り、図3の縦断面図に示すように、その主たる構成と作用及び効果は上記第1実施の形態と同様である。従って、上記第1実施の形態と同様部分は説明を省略し、特徴部分の請求項15乃至請求項18について重点的に説明する。
【0134】
電子ビーム冷却装置における電子ビーム射出機器42は、電子銃2と加速管3の周囲で冷熱発生源である極低温冷媒の例えば、液体ヘリウムあるいは液体窒素の冷媒容器43と、電流供給ポート19を設けた超電導クライオスタット44の内部に、電子銃2及び加速管3と同軸の良伝熱材22を介して超電導ソレノイドコイル23を設置している(請求項17)。
【0135】
なお、この超電導ソレノイドコイル23は、主磁界巻線25とこの主磁界巻線25と同軸で、急激に磁界を減少させることができる逆磁界巻線27とから構成されている。
【0136】
前記逆磁界巻線27の水冷ソレノイドコイル36側に設けられた電磁力支持用フランジ29は、軸方向で円周状に複数配置された多重円筒形の断熱支持体45と結合して前記超電導クライオスタット44の水冷ソレノイドコイル側真空容器フランジ44bに支持されている(請求項16)。
【0137】
なお、前記超電導ソレノイドコイル23の外周には、円筒形状の磁性体による磁気シールド31が設けられていて、この磁気シールド31は、前記超電導ソレノイドコイル23部における超電導ソレノイドコイル部磁性体32と、水冷ソレノイドコイル36部における水冷ソレノイドコイル部磁性体33とから構成されている。
また、前記超電導ソレノイドコイル部磁性体32においては、前記水冷ソレノイドコイル36と反対側に、前記超電導ソレノイドコイル23を収容した超電導クライオスタット44の傾きを調整するジャッキボルト46を設けている(請求項15)。
【0138】
さらに、前記水冷ソレノイドコイル36における口出し36aを、超電導ソレノイドコイル23側は磁性フランジ34の接合面34aに、また、射出側トロイドコイル6側は、射出側トロイドコイル6との接合部10に設けた構成としている(請求項18)。
【0139】
次に、上記構成による作用について説明する。電子ビーム冷却装置の電子ビーム射出機器42では、超電導ソレノイドコイル23の冷熱発生源として、超電導クライオスタット44に設置した冷媒容器43に液体ヘリウムあるいは液体窒素等の極低温冷媒を貯溜して、超電導ソレノイドコイル23の冷却を行う。
【0140】
この極低温冷媒は、図示しないプラント内で共通の大型冷凍機、あるいは冷媒貯溜槽から必要量を冷媒容器43に随時供給することにより、上記第1実施の形態と異なり、極低温冷媒の供給量が電子ビーム射出機器17に設置した冷凍機18の発生容量に影響されないので、冷却機能として余裕が大きく得られることから信頼性が向上する。
さらに、冷凍機18が超電導クライオスタット44に設置されていないので、電子ビーム射出機器42が簡素化される。
【0141】
また電子ビーム射出機器42は、磁気シールド31に設けられているジャッキボルト46により、超電導ソレノイドコイル23が収容されている超電導クライオスタット44の傾きを調整することができる。
【0142】
従って、加速管3部における磁界の大きな超電導ソレノイドコイル23によるソレノイド磁界を、加速方向と平行に調整することが容易に可能なことから、電子ビーム4の進行方向に垂直な方向の運動量発生を抑制し、電子ビーム4の運動量の広がりを小さくすると共に、イオンビームの運動量の広がりを減少させることができる。
【0143】
さらに、電子ビーム射出機器42においては、超電導ソレノイドコイル23から水冷ソレノイドコイル36の方向に発生する強大な電磁力を、電磁力支持用フランジ29から多重円筒形状の断熱支持体45を介して、超電導クライオスタット44の水冷ソレノイドコイル側真空容器フランジ44bで支持している。
【0144】
前記多重円筒形状の断熱支持体45は、前記電磁力支持用フランジ29と水冷ソレノイドコイル側真空容器フランジ44bとの間に、軸方向で円周状に複数配置されていることから、上記第1実施の形態に比べて電子ビーム射出機器42の外径を小さく形成することができる。
なお、前記水冷ソレノイドコイル側真空容器フランジ44bは、磁気シールド31の磁気フランジ34と嵌合により固定されるているので、超電導ソレノイドコイル23からの電磁力は磁気フランジ34を介して磁気シールド31にて支持される。
【0145】
電子ビーム射出機器42においては、水冷ソレノイドコイル36の口出し36aを、超電導ソレノイドコイル23側は磁性フランジ34の接合面34aで、射出側トロイドコイル6側は射出側トロイドコイル6との接合部10から引出している。
これにより、口出し36aのために磁気シールド31の円周方向に貫通される穴は、水冷ソレノイドコイル磁性材33の両端で、磁性材フランジ34a等の円周方向に厚い部分の合せ面に浅い溝加工をするだけで済む。
【0146】
従って、この口出し36aと浅い溝の近傍の磁界は、前記口出し36a及び浅い溝を迂回しても磁気抵抗は上昇しないので、磁気シールド31の回転対称性からのずれは少なく、ソレノイド磁界の不正分の発生と、ソレノイド磁界の乱れを小さくすることができるので、電子ビーム4の運動量の広がりを抑制できる。
また、前記口出し36aの位置は、磁性体フランジ34の接合面34aあるいは、射出側トロイドコイル6との接合部10のどちらか一方で引き出すか、対称位置に設ける等、その回転対称性を保持する範囲内で適宜行える。
【0147】
なお、その他の部分については上記第1実施の形態と同様の作用と効果が得られるが、上記第1実施の形態と本第2実施の形態における各構成部分は、必要に応じて適宜、相互に適用することは容易である。
【0148】
【発明の効果】
以上本発明によれば、電子ビーム冷却装置の電子ビーム射出機器において、磁界を大きく得られる超電導ソレノイドコイルを用いて断熱膨張効率を大きくすると共に、トロイドコイルとの間に水冷ソレノイドコイルを設けて断熱パラメータを小さくすることにより、加速管電極端とトロイドコイルとの間を短く構成することができる。
【0149】
従って、電子ビーム射出機器はコンパクトな形状で、電子ビームの運動量の広がりが小さくなることから、イオンビーム冷却効率の良い電子ビーム冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1実施の形態の電子ビーム冷却装置における電子ビーム射出機器の縦断面図。
【図2】本発明に係る第1実施の形態の電子ビーム射出機器で、ソレノイド磁界均一空間に対する超電導ソレノイドコイルとノッチ位置を示す模式断面図。
【図3】本発明に係る第2実施の形態の電子ビーム冷却装置における電子ビーム射出機器の縦断面図。
【図4】従来の電子ビーム冷却装置の一部切り欠き正面図。
【図5】従来のMRI用超電導磁石の縦断面図。
【符号の説明】
1,17,42…電子ビーム射出機器、2…電子銃、3…加速管、4…電子ビーム、5…射出側ソレノイドコイル、6…射出側トロイドコイル、7…回収側トロイドコイル、8…減速管、9…コレクタ、10…射出側トロイドコイルとの接合部、11…MRI用超電導磁石、12…超電導コイル、13…磁気シールド、13a…磁気シールド脚、13b…クライオスタット脚用穴、13c…供給ポート用穴、14,21,44…超電導クライオスタット、14a…クライオスタット脚、15…冷媒と電流の供給ポート、16…間隔、18…冷凍機、19…電流供給ポート、20…真空排気ポート、21a…真空排気ポート側真空容器フランジ、21b,44b…水冷ソレノイドコイル側真空容器フランジ、21c…真空容器内筒、22…良伝熱材、23…超電導ソレノイドコイル、24…ノッチ、24a…ノッチ中心、25…主磁界巻線、25a…主磁界巻線中心、26…金属製リング、27…逆磁界巻線、28…金属体、29…電磁力支持用フランジ、30…断熱支持体、31…磁気シールド、32…超電導ソレノイドコイル部磁性体、33…水冷ソレノイドコイル部磁性体、34…磁性体フランジ、34a…磁性体フランジの接合面、35…巻枠、36…水冷ソレノイドコイル、36a…水冷ソレノイドコイルの口出し、37…水冷巻線、37a…高密度巻回部、38…水冷補助巻線、39…測定穴、40…均一磁界範囲、40a…均一磁界範囲中心、41…水冷ソレノイドコイル側(矢印)、43…冷媒容器、45…多円筒形状の断熱支持体、46…ジャッキボルト。

Claims (18)

  1. イオン蓄積リング又はイオンサイクロトロンリングに設置して均一速度の電子ビームを射出する電子ビーム射出機器と射出された電子ビームを回収する電子ビーム回収機器からなる電子ビーム冷却装置において、前記電子ビーム射出機器の電子銃及び加速管部に磁界を発生させるコイルが超電導ソレノイドコイルで、前記イオン蓄積リング等に入射するために前記電子ビームを曲げるトロイドコイルとの間に磁界を発生させるコイルの水冷ソレノイドコイルを設けて、前記超電導ソレノイドコイル及び水冷ソレノイドコイルの全体を連続した円筒形状の磁性体からなる磁気シールドで覆い、前記超電導ソレノイドコイル部磁性体と水冷ソレノイドコイル部磁性体の境界において前記水冷ソレノイドコイル部磁性体に超電導ソレノイドコイル部磁性体の内径に対して小径の磁性体部分を形成すると共に、水冷ソレノイドコイルの反対側に超電導ソレノイドコイルに対する電流供給ポートと冷熱供給ポート及びクライオスタットの真空排気ポートを配置して前記磁気シールドにおける回転対称性を保持したことを特徴とする電子ビ一ム冷却装置。
  2. 前記電子ビーム射出機器の磁気シールドにおいて、超電導ソレノイドコイル部磁性体を水冷ソレノイドコイル部磁性体と一体の磁性体フランジにおいて嵌合等により結合すると共に、前記水冷ソレノイドコイル部磁性体と水冷ソレノイドコイルは樹脂含浸等により固定し、また超電導ソレノイドコイルのクライオスタットを前記磁性体フランジに嵌合等により固定したことを特徴とする請求項1記載の電子ビーム冷却装置。
  3. 前記電子ビーム射出機器の水冷ソレノイドコイルにおいて、巻枠の内外径を同軸に形成して磁気シールドの水冷ソレノイドコイル部磁性体の内径と同軸に樹脂含浸等で固定すると共に、前記磁性体フランジの当たり面を水冷ソレノイドコイルの巻枠内径軸に対して垂直に形成することを特徴とする請求項2記載の電子ビーム冷却装置。
  4. 前記電子ビーム射出機器において、超電導ソレノイドコイルのクライオスタット真空容器内筒に超電導ソレノイドコイルの両端部分で片方に3箇所以上の測定穴をあけて超電導ソレノイドコイルとクライオスタット真空容器内筒との位置及び傾きの測定をして同軸調整後に閉塞することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電子ビーム冷却装置。
  5. 前記電子ビーム射出機器の超電導ソレノイドコイルにおいて、電子銃カソードと加速管電極端間の中心に対して超電導ソレノイドコイル中心を水冷ソレノイドコイルと反対側にずらすと共に、外周あるいは内周にノッチを設けてこのノッチ中心を超電導ソレノイドコイル中心に対して水冷ソレノイドコイル側にずらして配置することを特徴とする請求項1記載の電子ビーム冷却装置。
  6. 前記電子ビーム射出機器の超電導ソレノイドコイルにおいて、水冷ソレノイドコイル側に主磁界巻線と逆方向の磁界を発生する逆磁界巻線を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項5記載の電子ビーム冷却装置。
  7. 前記電子ビーム射出機器の超電導ソレノイドコイルにおいて、主磁界巻線と逆磁界巻線の間に金属製リングを設けると共に、前記逆磁界巻線の外周に金属体を設けて水冷ソレノイドコイル側に配置した電磁力支持用フランジを介して水冷ソレノイドコイルと反対側のクライオスタット真空容器フランジに前記超電導ソレノイドコイルの外周に設けた断熱支持体により支持したことを特徴とする請求項6記載の電子ビーム冷却装置。
  8. 前記電子ビーム射出機器の水冷ソレノイドコイルにおいて、超電導ソレノイドコイル側に高密度巻回部を形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の電子ビーム冷却装置。
  9. 前記電子ビーム射出機器の磁気シールドにおいて、水冷ソレノイドコイル部磁性体の周方向厚さに比べて磁性体フランジの軸方向厚さ及び超電導ソレノイドコイル部磁性体の周方向厚さを厚くしたことを特徴とする請求項1乃至請求項4及び請求項15記載の電子ビーム冷却装置。
  10. 前記電子ビーム射出機器の磁気シールドにおいて、超電導ソレノイドコイル部磁性体の周方向厚さを超電導ソレノイドコイル中心に近い部分で厚くしたことを特徴とする請求項1乃至請求項4及び請求項15又は請求項16記載の電子ビーム冷却装置。
  11. 前記電子ビーム射出機器の磁気シールドにおいて、超電導ソレノイドコイル部磁性体及び磁性体フランジに透磁率及び飽和磁界の大きな磁性材料を用いたことを特徴とする請求項9又は請求項10記載の電子ビーム冷却装置。
  12. 前記電子ビーム射出機器の水冷ソレノイドコイルにおいて、トロイドコイル側に水冷巻線と独立した水冷補助巻線を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4及び請求項7記載の電子ビーム冷却装置。
  13. 前記電子ビーム射出機器において、超電導ソレノイドコイルの冷熱発生源を冷凍機としたことを特徴とする請求項1記載の電子ビーム冷却装置。
  14. 前記電子ビーム射出機器の超電導ソレノイドコイルにおいて、主磁界巻線と逆磁界巻線の内径を同一に形成して内側を軸方向に連続した良伝熱体で結合すると共に、前記良伝熱体を介して冷熱を伝達することを特徴とする請求項6記載の電子ビーム冷却装置。
  15. 前記電子ビーム射出機器の磁気シールドにおいて、超電導ソレノイドコイル部分で水冷ソレノイドコイルと反対側にジャッキボルトを設けて超電導ソレノイドコイルのクライオスタットと磁気シールドの傾きを調整可能として、電子銃及び加速管が超電導ソレノイドコイル部磁性体に対して同軸に支持することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電子ビーム冷却装置。
  16. 前記電子ビーム射出機器の超電導ソレノイドコイルにおいて、前記主磁界巻線と前記逆磁界巻線の間に金属製リングを設けると共に、前記逆磁界巻線の外周に金属体を設けて水冷ソレノイドコイル側に配置した電磁力支持用フランジを介して水冷ソレノイドコイル側のクライオスタット真空容器フランジに前記超電導ソレノイドコイルの軸方向に設けた多重円筒形状の断熱支持体により支持したことを特徴とする請求項6記載の電子ビーム冷却装置。
  17. 前記電子ビーム射出機器において、超電導ソレノイドコイルの冷熱発生源を極低温冷媒としたことを特徴とする請求項1記載の電子ビーム冷却装置。
  18. 前記電子ビーム射出機器の水冷ソレノイドコイルにおいて、巻線の口出しを前記磁気シールドのトロイドコイル及び超電導ソレノイドコイルとの接合面に設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の電子ビーム冷却装置。
JP28830296A 1996-10-30 1996-10-30 電子ビーム冷却装置 Expired - Fee Related JP3559659B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP28830296A JP3559659B2 (ja) 1996-10-30 1996-10-30 電子ビーム冷却装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP28830296A JP3559659B2 (ja) 1996-10-30 1996-10-30 電子ビーム冷却装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH10134999A JPH10134999A (ja) 1998-05-22
JP3559659B2 true JP3559659B2 (ja) 2004-09-02

Family

ID=17728418

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP28830296A Expired - Fee Related JP3559659B2 (ja) 1996-10-30 1996-10-30 電子ビーム冷却装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3559659B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100328325B1 (ko) * 1999-12-17 2002-03-13 (주)이레 엔지니어링 플라즈마 발생장치
CN103198996B (zh) * 2013-03-18 2015-05-20 核工业理化工程研究院 用于控制强流电子束高频交变磁场的真空装置

Also Published As

Publication number Publication date
JPH10134999A (ja) 1998-05-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5818058A (en) Particle beam irradiation apparatus
TWI566645B (zh) 小型的、冷的、弱聚焦的超導迴旋加速器
CN103766006B (zh) 紧凑型冷超导等时性回旋加速器
JP2572250B2 (ja) 磁場発生装置
US20170120074A1 (en) Combined mri and radiation therapy equipment
JPH0711998B2 (ja) シンクロトロン放射源
JP2000294399A (ja) 超電導高周波加速空胴及び粒子加速器
JP2007260222A (ja) 荷電粒子線偏向装置および荷電粒子線照射装置
GB2259773A (en) Superconducting MR magnet with integrated cryogenic gradient coils
US20090242785A1 (en) Super conducting beam guidance magnet, which can rotate and has a solid-state cryogenic thermal bus
CN106098290B (zh) 超导磁体
US20090091409A1 (en) Curved beam control magnet
JP3559659B2 (ja) 電子ビーム冷却装置
Sun et al. Progress on the development of key technologies for the fourth generation ECR ion source FECR
JP3824412B2 (ja) 結晶引上装置用超電導磁石装置
JPH0974012A (ja) 超電導多層複合体を用いた超電導磁石装置と着磁方法
JPH0219430B2 (ja)
EP0460601B1 (en) Superconducting magnet apparatus having circulating path for coolant
JP7209489B2 (ja) 超伝導電磁石
JP3693439B2 (ja) 2重構造ビームチャンバを有する超電導ウィグラ
JP3414660B2 (ja) ジャイロトロン装置
JP3720968B2 (ja) 電子ビーム冷却装置並びにそれを備えたイオン蓄積リング及びイオンシンクロトロン
JP3097993B2 (ja) 超電導ウィグラ用マグネット構造
Borovikov et al. Proposal of superconducting 7 Tesla wiggler for LSU-CAMD
JP2744672B2 (ja) 超電導マグネット装置

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20040322

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20040330

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20040406

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20040518

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20040524

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090528

Year of fee payment: 5

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees