JP3559550B2 - 超電導限流モジュールおよび超電導限流ユニット - Google Patents

超電導限流モジュールおよび超電導限流ユニット Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の超電導限流素子を用いて電路に流れる短絡電流などの過大な電流を瞬時に抑制する超電導限流モジュールおよび複数の超電導限流モジュールを電気的に接続した超電導限流ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
落雷や倒木などにより送電線や配電線などの電線が電気的に大地に接触したり、また電線どうしが接触したりするといった事故が発生すると非常に大きな事故電流が流れ、この電力系統に接続してある変圧器、ケーブルなどの電力機器に対し温度上昇などの悪影響を及ぼすことになる。そこで、このような事故電流から電力システムを保護するため、高速で事故電流を抑制することのできる機器(限流器)の研究がすすめられている。事故電流を抑制する手段としては、GTOなどのパワー半導体を利用するもの、アーク放電現象を利用するもの、またはダイオードブリッジを使用したものなどいろいろな種類が検討されている。そのなかでも、超電導体に臨界電流(以下、Icと記す)を大きく超える電流が流れるとその超電導体が瞬時に超電導状態から常電導状態へ変化し抵抗を発生する現象を利用した素子(以下、超電導限流素子と略記)は、限流動作開始のための制御装置が不要で、かつ電力系統に直列に接続するという単純な構成のために信頼性が高く実現が期待されている機器である。
【0003】
しかし、いわゆる金属系超電導体は超電導状態になる温度が10K程度と非常に低いため、これを用いた場合には超電導限流素子を動作させるための冷却コストが高く、経済的に見合った価格での限流器作製が困難であった。そこで、最近では、金属系超電導体よりも超電導転移温度が高く、安価な値段で使用できる液体窒素による冷却でも超電導状態となる、いわゆる酸化物超電導体を用いた超電導限流素子の研究が進められている。また、超電導限流素子を小型に作製するためには臨界電流密度が大きいことが重要であるが、一般にバルク超電導体よりも単結晶基板などのように絶縁基板の上に成膜した超電導薄膜の方が高い臨界電流密度を持つことから超電導限流素子開発は主に超電導薄膜を用いて行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
高特性の超電導薄膜は基板や製造方法などにより大きさの制限を受け、超電導限流素子の作製に適した超電導薄膜の幅は現状では1cm程度である。このような超電導薄膜を液体窒素で冷却した場合、臨界電流の値は約50−100A程度となる。また、1つの超電導限流素子に印加できる電圧は100−1kV程度である。一方、限流器を必要とする送電線や配電線を流れる典型的な電流は1kA以上であり、また電圧は最も低い配電系統でも6.6kVである。したがって、限流器を構成するためには電流容量を増やす必要があり、複数の超電導限流素子を使用して電気的に並列に接続しなければならない。また、印加可能電圧も大きくする必要があり、そのためには超電導限流素子を直列に接続した超電導限流モジュールの作製、または超電導限流モジュールをさらに複数枚接続した超電導限流ユニットを構成することが考えられている。
【0005】
しかし、超電導限流素子を電気的に並列に接続した場合には通常通電時および限流動作開始時に以下のような問題が発生することが知られている。
【0006】
(a)通常通電時の損失の増大
並列に接続した超電導体に交流電流を流した場合、一般に電流は各超電導体を均一には流れず、超電導限流素子によって流れる電流の値が異なる。これにより発生電圧はすべての超電導限流素子に均一に電流が流れた場合よりも大きな値となってしまう。そのために並列接続超電導体の通常通電損失は、一枚の超電導限流素子に交流通電を行った場合の損失を枚数分足し上げたものよりも増大してしまうという問題が発生する。また、仮に各超電導限流素子に均一に電流が流れたとしても超電導限流素子を複数枚接続することにより通電時の電流が大きくなり、その結果、各超電導限流素子に印加される自己磁界は、素子の並列数を増やすと大きくなる。この印加磁界増大の影響によって超電導体の臨界電流値は低下し、並列化素子の臨界電流値は1素子の場合よりも小さくなってしまう。一方、超電導体の交流損失の一種であるヒステリシス損失は(通電電流/臨界電流)の値が大きいほど大きくなる。すなわち、1素子に通電した場合と並列化素子に通電した場合とでヒステリシス損失を比較すると、並列化素子を流れる電流がすべて1素子の通電と等しい場合でも臨界電流値の低下の影響でヒステリシス損失は増大し、その結果限流器の効率は低下してしまう。
【0007】
(b)限流開始時のクエンチ現象
超電導薄膜内部を局所的に観測した場合、現状の成膜技術においては完全に均質な膜を得ることはできず、ある程度の特性ばらつきが生じてしまう。これに起因して超電導限流素子が過電流により常伝導状態へと転移する際には全素子のうち最もIcの小さい領域から転移が始まることになる。これにより電流は他の超電導限流素子へと転流する。次に、転流によって急に電流が増えた超電導限流素子が局所的に常伝導転移を始め、さらに元の超電導限流素子または他の超電導限流素子へと電流を転流するという現象が発生する。並列化した超電導限流素子はこのようなことを繰り替えしながら常伝導領域を拡大していき、最終的に大きな抵抗を発生するわけである。このような現象は以前より実験的に知られている(例えば平成10年電気学会全国大会講演論文集1211中の図2.2参照)。一方、このような現象が発生すると、電流は振動することになり、1素子の場合には流れなかった大きな電流が1素子に集中し、これにもとづく過大な発熱により限流開始時に超電導限流素子が損傷してしまうといった現象がしばしば発生する。
【0008】
(c)直列化に伴う課題
さらに直列化により印加可能電圧を向上していった場合には電気絶縁の問題や、あらたに直列化による超電導限流素子間の電流分布の不均一が生じる。一般に電力系統に事故が発生し限流器が動作した場合、限流器の両端間には系統電圧に匹敵する電圧またはサージ電圧などによりそれ以上の電圧が印加される。この電圧に対する電気絶縁設計をするためには限流器動作時に内部で発生する電圧はなるべく一方向に変化していくことが望ましい。金属系超電導体を用いた場合には超電導線材をコイル形状に巻くことでこの実現が可能であった。すなわち、超電導線がコイルの1ターンで発生する電圧は系統電圧と比較して小さいので発生する電圧はコイルの軸方向に沿って変化するわけである。一方、絶縁基板を用いた超電導限流素子は曲げることができないため、金属系超電導体で可能であったようにコイル状に巻くことによりコンパクトな空間に収めることが困難である。また、複数の超電導限流モジュールを接続部分で折り曲げてコンパクトな空間に収納することも考えられる。しかし、仮に1つの超電導限流モジュールだけを考えていた場合には均一に電流を流せるとしても、直列接続により折り曲げられて配置された次の超電導限流モジュールの発生する磁界はその前の超電導限流モジュールに対して均一には印加されない。その結果、直列化により電流分布が不均一になってしまう。
【0009】
本発明の目的は、通常通電時には複数の超電導限流素子に対し均一に電流を流すことができ、限流動作開始時の素子損傷を抑制できる超電導限流モジュールを提供するとともに、複数の超電導限流モジュールを直列接続しても均一に電流を流せる超電導限流ユニットを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様に係る超電導限流モジュールは、絶縁基板とその上に形成された超電導薄膜とを有する超電導限流素子の1つまたは直列接続した複数を一部品として用い、複数の前記部品を並列接続した超電導限流モジュールであって、前記部品に含まれる超電導限流素子はある中心軸の周りに放射状に配置され、かつ各超電導限流素子に設けられた通電用の2つの電流パッドが前記中心軸から異なる距離に位置することを特徴とする。
【0011】
本発明の他の態様に係る超電導限流ユニットは、上記の超電導限流モジュールの複数を、各超電導限流モジュールの中心軸を一致させて配置して、直列に接続したことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態に係る超電導限流モジュールおよび超電導限流ユニットについて説明する。
【0013】
本発明の実施形態に係る超電導限流モジュールは、並列接続された複数の超電導限流素子(または複数の超電導限流素子を直列接続した部品を用いてもよい)を含む。
【0014】
ここで、並列に接続された電気伝導体に交流電流を流す場合、電流は各々の電気伝導体の抵抗と各々の電気伝導体の自己インダクタンスおよび並列接続された電気伝導体相互の位置関係により決まる相互インダクタンスの大きさにより決定される。
【0015】
通常の金属で形成された電気伝導体(電線)はその抵抗値が比較的大きいため、商用周波数程度の交流通電の場合には並列に接続した各電線を流れる電流はほとんど抵抗成分により決定される。したがって、並列接続された通常の電線に電流を流す場合には、抵抗値の等しい電線を用いることにより比較的簡単に電流値を均一にすることができる。
【0016】
これに対し、ほとんど抵抗成分を持たない超電導体の並列回路を流れる交流電流は主にインダクタンス成分により決まる。このような場合、以下のような考察から並列接続された超電導体には電流が均一に流れない理由がわかる。
【0017】
いま、図1に示すように、N個の超電導素子の並列回路に交流電圧Vを印加した場合を考える。それぞれの超電導素子に1からNの番号をつけ、それぞれの超電導素子を流れる電流をI、I、・・・、Iとする。また、電源を含み超電導素子iを通る閉回路をCとおく。このときの回路方程式は、各超電導素子の抵抗成分R、回路Cの自己インダクタンスL、回路Cと回路Cとの相互インダクタンスMi,jを用いて、式(1)で表すことができる(ここでは、超電導素子以外の抵抗成分はないものと仮定している)。
【0018】
【数1】
Figure 0003559550
【0019】
一方、式(1)の左辺の2項、3項の和は閉回路Cを貫く磁束Φの時間微分となっている。したがって式(1)は式(2)に書き直すことができる。
【0020】
【数2】
Figure 0003559550
【0021】
式(2)は電流Iについての回路方程式である。この式(2)からIについての回路方程式を引くと式(3)が得られる。
【0022】
【数3】
Figure 0003559550
【0023】
したがって、超電導体に臨界電流値以下の電流を流したときのようにR=0と近似できる場合には式(4)が得られる。
【0024】
【数4】
Figure 0003559550
【0025】
この式(4)よりΦ−Φは時間によらない定数であることが導かれるが、この定数は零と考えても一般性を失わないために以下の議論では式(5)のようにこの定数は零とおいた。
【0026】
【数5】
Figure 0003559550
【0027】
一方、図2に示すように、Φ−Φは電流Iの流れる線路と電流Iの流れる線路とが作る閉ループを貫く磁束である。式(5)から、複数の超電導素子を並列に接続した場合には、2つの超電導素子が作る閉ループに磁束が貫かないように電流が流れることがわかる。これが超電導素子を並列に接続した場合の大きな特徴である。
【0028】
このとき、並列素子間で電流が均一に流れないことを、図3を参照して検討する。図3には、並列に接続された3つの超電導素子を示している。まず、(a)仮に各超電導素子に均一に電流が流れたとする。この場合、(b)領域Xについて考えると、超電導素子1aと超電導素子1bとが作る磁束が完全打ち消しあう。したがって領域Xでは超電導素子1cが作る磁束が貫く。(c)このような状態は式(5)を満たさない。したがって(d)超電導素子1aと超電導素子1bの作る磁束の差で超電導素子1cの作る磁束を打ち消しあう必要がある。そこで最終的に(e)超電導素子1aの方が超電導素子1bよりも電流が多く流れる。すなわち、複数の超電導素子を並列に接続した場合に一般に電流が均一に流れない理由は、均一に電流が流れるとすると複数の超電導素子が作る閉ループを貫く磁束が生じるためであると考えてもよい。
【0029】
以上の考察より、各超電導素子を流れる電流を均一にするためには、仮に均一に電流が流れるとしたときに各超電導素子間に形成される閉ループを貫く磁束がなるべく少なくなるように各超電導素子の空間的配置を決めればよいことがわかる。
【0030】
この観点から再度前記の例を考えると電流が均一に流れない理由は、閉ループの左右にある超電導素子の数が異なることが原因であることがわかる。したがって、超電導素子に流れる電流を均一にしたい場合には、2つの超電導素子が作る閉ループの左右にある素子数がどの閉ループについてもあまり異ならないようにすればよい。このためには超電導素子を並列接続する場合に、図3のように端がある配置は避けなければならず、超電導素子をある中心軸の周りに放射状に配置することが有効である。
【0031】
図4(a)および(b)に、本発明の一実施形態に係る超電導限流モジュールの平面図および斜視図を示す。図4(a)および(b)においては、絶縁基板とその上に形成された超電導薄膜とを有する超電導限流素子1を一部品として用いている。そして、部品としての超電導限流素子1の複数を中心軸3の周りに放射状に配置し、複数の超電導限流素子1の中心部および周辺部にそれぞれ並列接続用のブリッジ2、2を設けることにより、これらの超電導限流素子1を並列接続している。ブリッジ2、2の超電導限流素子1との接続点が各超電導限流素子1への通電用の2つの電流パッドとなり、これらは中心軸3から異なる距離に位置する。
【0032】
図4(b)は、この超電導限流モジュールに対して、中心から外側に向かって電流を流した場合に発生する磁界10を示す。すなわち、複数の超電導限流素子1を放射状に配列することにより、複数の超電導限流素子1の作る閉ループを貫く磁束を低減することができ、その結果、超電導限流素子1に流れる電流を均一にすることができる。
【0033】
さらに、より厳密に複数の超電導限流素子に流れる電流の均一性を高めるためには、複数の超電導限流素子をある中心軸の周りに配置し、かつ任意の2つの超電導限流素子が中心軸の周りでの回転によって、超電導限流モジュール全体の空間的配置を変えずに移り変われる対称性を有することが好ましい。図5に、本発明の他の実施形態に係る対称性の高い配置を持つ超電導限流モジュールの平面図を示す。この場合に各超電導限流素子に電流が均一に流れる理由を以下に示す。
【0034】
上述したように、それぞれの超電導素子に1からNの番号をつけた場合、i番目の超電導素子に流れる電流Iは、式(1)より式(6)と表すことができる(ここでは、既に抵抗成分は十分に小さいと考えて0とおいた)。
【0035】
【数6】
Figure 0003559550
【0036】
また、この図5の超電導限流モジュールでは中心軸の周りでの回転により、部品である超電導限流素子の位置が移り変わることができ、かつ全体の幾何学的配置が変化しない。そこで、このような回転の1つにより、それぞれの部品の位置が、
部品1→部品1’、部品2→部品2’、・・・、部品N→部品N’
と変わるものとする。
【0037】
このとき1’の位置にある超電導限流素子をあらためて1、2’の位置にある超電導限流素子をあらためて2、N’の位置にある部品をあらためてNとする別の番号付けを考える。すると、この番号付けによるi番目の超電導限流素子は前の番号付けでi番目だった超電導限流素子とは異なるため、一般にはその自己インダクタンス値が変化し、L’となる。同様に相互インダクタンスもMi,jからM’i,jへと変わる。したがって、あらたな番号付けによる回路方程式は式(7)で与えられる。
【0038】
【数7】
Figure 0003559550
【0039】
しかし、一般に超電導限流素子の自己インダクタンスの大部分は、並列接続のために電線が分岐する前の回路部分により決まるため、超電導限流素子間であまり異ならず、LとL’はほぼ等しいと考えてよい。また、M’i,jはあらたな番号付けによるi番目の電流経路Cとj番目の電流経路Cとが作る相互インダクタンスであるが、回転によって全体の配置が変化しないので、あらたな番号付けによる超電導限流素子iと超電導限流素子jとの相互の位置関係は、元の番号付けによるi番目の超電導限流素子とj番目の超電導限流素子との相互の位置関係と等しくなっている。したがって、相互の位置関係によって決まる相互インダクタンスは等しくなる。これを式で表すとM’i,j=Mi,jとなる。以上のことより式(7)は式(8)と表すことができる。
【0040】
【数8】
Figure 0003559550
【0041】
この式(8)は式(6)と同じ形をしている。すなわち、式(8)のIと式(6)のIとは同じ値となる。一方、式(8)のi番目の超電導限流素子は元の番号付けではi’の超電導限流素子である。以上のことより、I=I’となることがわかる。また、図5の超電導限流モジュールでは、任意の部品間を移し変える回転が存在することから、結局すべての電流値が等しいことが導かれる。
【0042】
一方、上記のように各超電導限流素子間に形成される閉ループを貫く磁束が少なくなるような空間的配置は、たとえば図6(a)のように、複数の超電導限流素子1を正多角形柱の側面に配置することによっても実現することができる。しかし、このような構造では、多角形柱の内部に使用することのできない空間が生じてしまい、コンパクトな超電導限流モジュールを作製するには障害となる。さらに、図6(b)に示すように、印加可能電圧の向上を目指して、複数の超電導限流モジュールを直列接続用のブリッジ4を介して直列化した場合、その全長は直列数に比例して長くなり、コンパクトな限流器を作製することが困難となる。また、コンパクトな空間に収納するためには、図6(c)に示すように、直列接続用のブリッジ4の一部を折り曲げて接続することが考えられる。しかし、この構造では、1つの超電導限流モジュール内では複数の超電導限流素子が幾何学的に等しい位置にあっても、たとえば図6(c)の超電導限流素子1aと超電導限流素子1bとでは、他の線路からの影響に差がでるため、均等に電流を流すことができなくなる。
【0043】
ここで、先に考察したように並列化超電導限流素子どうしが作る閉ループ間には磁束が貫かないという性質は、磁界がどのような電流によって発生しているのかに依存しない。したがって、直列接続された他の超電導限流モジュールが発生する磁界が、ある超電導限流モジュールを構成する並列素子の作る閉ループを貫こうとするとき、これを遮蔽するように電流分布が変化する。すなわち、他の超電導限流モジュールの発生する磁界がある超電導限流モジュールに不均一に印加される場合には、1つの超電導限流モジュールでは均一に電流が流せたとしても、複数の超電導限流モジュールを直列化した超電導限流ユニットでは電流が不均一となる。
【0044】
これに対し、本発明の他の実施形態においては、たとえば図7(a)の斜視図に示すように、上記の超電導限流モジュールを複数用い、その中心軸を一致させて配置し、互いに直列接続した超電導限流ユニットを提供することにより上記の問題を解消する。図7(b)は、図7(a)の超電導限流ユニットを、中心軸を含む平面で切断した断面図である。この図に示されるように、複数の超電導限流モジュールは、ブリッジ4によって直列に接続されている。このような超電導限流ユニットでは、1つの超電導限流モジュールに含まれる超電導限流素子に対して、他の超電導限流モジュールの作る磁界の影響を均一化でき、どの超電導限流素子に対しても均一電流を流すことができるようになる。
【0045】
図8に、本発明の実施形態に係る超電導限流モジュールを、中心軸を含む平面で切断した断面図を示す。この図に示されるように、ある中心軸の周りに超電導限流素子を配置し、1つの超電導限流素子1に設けられる通電用の2つの電流パッド6が中心軸から異なった距離に位置するようにすれば、素子長7よりも超電導限流モジュールの厚さ8を小さくすることができ、均一に電流が流せる直並列接続とコンパクト性の両方を実現することができる。
【0046】
また、図4(b)に示したように、超電導限流素子に電流が流れることにより発生する自己磁界の大部分は膜面に平行になる。しかし、厳密にいえば、並列接続された超電導限流素子間に隙間があるために、小さいとはいえ超電導薄膜の膜面に対し垂直な磁界が印加される。図9にこの様子を示す。この図は、本発明の実施形態に係る超電導限流モジュールの部品である超電導限流素子1の端部を拡大した斜視図である。各超電導限流素子1に電流Iが流れることにより超電導限流モジュールで発生する主要な磁界成分はHで表している。この図に示されるように、超電導限流素子1間に隙間があるために、個々の超電導限流素子1に電流が流れることによって個々の超電導限流素子1が磁界成分Hを発生し、超電導限流素子1の膜面垂直に小さな磁界成分Hが印加される。一般に超電導体は磁界を印加するとIcなどの値が低下し通電損失が増大するため、このような垂直磁界がなるべく印加されないようにすることが望ましい。
【0047】
この問題を解消するためには、板状支持体の両面にそれぞれ保持された複数の超電導限流素子を有し、板状支持体の表面および裏面の超電導限流素子を、互いに逆方向の電流が流れるように直列接続した部品を用いて、超電導限流モジュールを作製することが好ましい。図10に、このような超電導限流モジュールに用いられる部品の端部の斜視図を示す。板状支持体の両面にそれぞれ保持された複数の超電導限流素子1を直列接続するには、たとえば図11(a)および図11(b)に示したように、板状支持体5の周辺部または中心部に直列接続用のブリッジ2を設け、板状支持体5の表裏の超電導限流素子どうしを接続すればよい。
【0048】
図10からわかるように、互いに逆方向に電流が流れる超電導限流素子1が板状支持体(図10には図示せず)を介して上下に近接して配置されていると、表面の超電導限流素子による磁界成分Hと裏面の超電導限流素子による磁界成分H1’とが互いに打ち消しあうため、超電導限流素子1の膜面垂直に磁界成分が印加されるのを抑制することができる。この効果は上下の超電導限流素子間の距離が近いほど大きいので、一面のみに超電導限流素子が形成されている2つの超電導限流モジュールを直列接続する場合と比較すると、板状支持体の両面に超電導限流素子を配置して直列接続する場合の方が望ましいといえる。
【0049】
また、板状支持体の両面に超電導限流素子を配置すれば、上記のように外部への発生磁界を小さくすることができるので、複数の超電導限流モジュールを直列接続して作製された超電導限流ユニット全体の電流均一化にも効果がある。すなわち、図10に示した超電導限流モジュールの複数を、図7(a)のように配置して直列接続することにより超電導限流ユニットを作製すると、各超電導限流素子に印加される膜面垂直磁界を低減できることに加えて、個々の超電導限流モジュールが外部へ発生する磁界を小さくできるので、互いの影響をさらに小さくすることができ、超電導限流ユニット全体で電流を均一化できる。したがって、図10に示した超電導限流モジュールは特性の向上にも寄与できる。
【0050】
図12の断面図に示すように、一般的な超電導限流素子は絶縁基板17の片面(表面)に超電導薄膜16を有する。このような超電導限流素子を板状支持体の両面に設けるために板状支持体に対して絶縁基板側を接着した場合、複数の超電導限流モジュールを直列接続する際に、互いに近接する超電導限流モジュール間で超電導限流素素子が向かいあうことになり、電気的な絶縁が課題となる。
【0051】
この問題を解消するためには、図13に断面図で示す超電導限流ユニットのように、超電導限流モジュール1間に固体の絶縁体11を挟んで電気絶縁を確保することが好ましい。
【0052】
次に、並列接続した超電導限流素子が過電流により限流動作する際に、超電導限流素子間で電流が振動する理由について説明する。
【0053】
いま、図14のように2つの超電導限流素子1a、1bが並列に接続されている場合を考える。このとき超電導限流素子1aの常伝導転移する電流値が小さく、ある電流値で局所的に常伝導転移を始め、抵抗を発生したとする。このとき超電導限流素子1bはまだ抵抗成分を持たないために、電流は超電導限流素子1aから超電導限流素子1bに転流しようとする。しかし、回路のインダクタンスLがあるため、電流は超電導限流素子1bに急激に転流することはできず、少しの時間遅れを生じて超電導限流素子1bへと転流(転流電流I)する。このあいだ超電導限流素子1aでは常伝導領域の拡大や温度上昇の影響で発生電圧が大きくなり、発生電圧から決まる転流しなければならない電流量が増大する。その後、超電導限流素子1bの電流が増大し、局所的に常伝導転移して超電導限流素子1aと同じ電圧を発生しても、電流が急激に零になることはなく、超電導限流素子1bの電流は増大し続ける。これは、転流にともなうインダクタンスLの影響により、転流電流Iが急激に零になることはないためである。したがって、転流電流Iが流れる閉ループのインダクタンスLが大きいほど、並列接続された超電導限流モジュールが限流動作を開始する際に振動する電流の振幅は大きいと考えられる。したがって、複数の超電導体間での転流に関係するループは小さいほどよい。
【0054】
上記のように転流に関係するループを小さくするためには、図15(a)に示す超電導限流モジュールのように超電導限流素子1を両端だけで並列に接続した構造よりも、図15(b)に示す超電導限流モジュールのように超電導限流素子1どうしを3個所以上(両端で接続されている部分を除くと一箇所以上)で接続した構造とすることが好ましい。これらの図において局所クエンチ部12が生じたときに転流に関係するループの面積を比較すると、図15(a)のループ13aよりも図15(b)のループ13bの方が小さく、その結果ループインダクタンス成分が小さくなる。したがって、図15(b)のように、同一の超電導限流モジュールに含まれる複数の超電導限流素子が少なくとも3個所以上で並列接続されていると、限流開始時の電流振動現象を抑制でき、素子破壊をすることなしに大電流を抑制することができる。
【0055】
【実施例】
実施例1
本実施例では図16(a)および(b)に示す超電導限流モジュールを作製した。
【0056】
まず、幅1cm、長さ8cmの単結晶サファイア基板上に、YBCO系の超電導薄膜を形成して超電導限流素子を作製した。この超電導限流素子は、液体窒素温度でほぼ80Aの臨界電流値(臨界電流は発生電圧1μV/cmで定義している)を持つ。このような超電導限流素子を8個用意した。図16(a)に示すように、これらの超電導限流素子1を、厚さ5mm、長径24cm、短径20cmの楕円状FRP板からなる支持体5上に放射状に配置し、FRPの板とビスを用いて固定した。超電導限流素子1の両端部(中心部および周辺部の1cmの部分)に並列接続用のブリッジ2、2を接続して超電導限流モジュールを作製した。ブリッジ2、2の超電導限流素子1との接続点が各超電導限流素子1への通電用の2つの電流パッドとなり、これらは支持体5の中心軸から異なる距離に位置する。この超電導限流モジュールは、支持体5の中心軸の周りで180°回転しても全体の空間的配置が変わらないという対称性を有する。
【0057】
なお、本実施例では8個の超電導限流素子を用いて超電導限流モジュールを作製している。しかし、超電導限流素子1が放射状に配置され、各超電導限流素子1に設けられた通電用の2つの電流パッドが中心軸から異なる距離に位置し、任意の2つの超電導限流素子1が対称性をもって配置されているという条件を満たしていれば、超電導限流素子1の枚数は特に限定されない。
【0058】
次に、通電試験を実施するために、図16(b)に示すように、中心部のブリッジ2および周辺部2のブリッジ2に配線15を接続した。このとき、超電導限流モジュール内の電流分布が乱されないように、配線15が発生する磁界の影響をなるべく均等になるようにしている。
【0059】
この超電導限流モジュールに対し560Aの連続通電を行い、各超電導限流素子を流れる電流値を測定した。この際、回路に抵抗成分が入らないように各超電導限流素子の周りにロゴスキーコイルを配置して電流を測定した。図17(a)に測定結果を示す。また、図17(b)に、図17(a)のピーク付近の拡大図を示す。これらの図から、各超電導限流素子にはほぼ均等に電流が流れていることがわかる。各超電導限流素子での電流のばらつきを計算したところ、約3%以内に収まっていた。
【0060】
比較のために、図16に図示した超電導限流モジュールを分解して、8個の超電導限流素子を取り出し、図18に示すように支持体平面上に1cm間隔で横並びに配置した超電導限流モジュールを作製した。この超電導限流モジュールに対し上記と同様にして560Aの連続通電を行った。図19(a)に測定結果を示す。また、図19(b)に、図19(a)のピーク付近の拡大図を示す。各超電導限流素子での電流のばらつきを計算したところ、10%以上であった。このことから、図18のように超電導限流素子を配置した場合には、各超電導限流素子に流れる電流の均一性が大きく劣化することがわかる。
【0061】
実施例2
実施例1と同じ超電導限流素子を8個用いて、図5と同様に、直径22cmの円形FRP板からなる支持体上に放射状に配置し、超電導限流素子の両端部に並列接続用のブリッジを接続して超電導限流モジュールを作製した。この超電導限流モジュールは、支持体の中心軸の周りで45°の整数倍の回転をすることにより、全体の空間的配置を変えずに任意の2つの超電導限流素子が移り変われる対称性を有する。
【0062】
この超電導限流モジュールに対し560Aの連続通電を行い、各超電導限流素子を流れる電流値を測定した。その結果は、各超電導限流素子を流れる電流のばらつきは約2%以内に収まり、実施例1と比べてさらに均一性が向上した。
【0063】
実施例3
実施例1で用いたものと同じ超電導限流素子を4枚用意した。まず、図20(a)に示すように、4枚の超電導限流素子1を厚さ5mm、幅10cm、長さ10cmの板状FRPからなる支持体5上に配置し、直列接続して部品を作製した。次に、図20(b)に示すように、この部品を4枚用いて、中心軸の周りで90°の整数倍の回転をすることにより、全体の空間的配置を変えずに任意の2つの部品が移り変われる対称性を有するように組み合わせた。さらに、各部品を互いに並列接続して超電導限流モジュールを作製した。
【0064】
この超電導限流モジュールを液体窒素で冷却し、ピーク電流280Aの連続通電を行い、各部品を流れる電流を測定した。その結果、各部品を流れる電流のばらつきは2%以内であった。
【0065】
比較のために、図20(c)のように、4枚の部品を平行に配置し、各部品を互いに並列接続して超電導限流モジュールを作製した。この超電導限流モジュールに対して上記と同じ条件で通電試験を行った。その結果、外側の2枚の部品どうしまたは内側の2枚の部品どうしでは流れる電流値は等しかったが、それぞれの電流ピーク値は79Aおよび61Aとなり、10%以上のばらつきがあった。
【0066】
実施例4
図21に示すように、実施例1と同じ超電導限流素子1を16個(臨界電流値はすべて約80A)用い、直径22cmの円形FRP板からなる支持体の表面および裏面に8個ずつ放射状に配置した。支持体の表面および裏面での超電導限流素子1の配置のし方は実施例2、図5と同じである(図21には支持体の裏面は示されていない)。また、支持体の表面および裏面において、超電導限流素子1の両端部に並列接続用のブリッジ2、2を接続した。さらに、支持体の表面および裏面で重なる1対の超電導限流素子1どうしをそれぞれ支持体の周辺部で直列接続用のブリッジ4により直列接続した。このようにして、超電導限流モジュールを作製した。
【0067】
次に、通電試験を実施するために、表面中心部の並列接続用ブリッジ2および裏面中心部の並列接続用ブリッジ(図21には示されていない)を用いて通電し、表面の超電導限流素子1についてだけ電流を測定し、表面中心部の並列接続用ブリッジ2と表裏を接続する直列接続用ブリッジ4との間で発生電圧を測定するようにした。この状態で、ピーク電流80A×8個=640Aの連続通電を行った。
【0068】
参考のために、実施例2と同様に8個の超電導限流素子を支持体の表面にのみ配置した超電導限流モジュールを作製し、図16(b)と同様に配線を接続して通電試験を行った。
【0069】
図22に測定結果を示す。この図において、1番上のグラフが通電電流を示し、2番目のグラフが実施例4の超電導限流モジュールでの発生電圧を示し、3番目のグラフが実施例2の超電導限流モジュールでの発生電圧を示している。なお、発生電圧としては、超電導薄膜の長さ1cmあたりで規格化した電圧を示している。
【0070】
上述した臨界電流の定義から、1つの超電導限流素子は約80Aの電流を通電したときに1μV/cmの電圧を発生する。図22の2番目のグラフから、実施例4の場合には通電電流ピークでの発生電圧が上記の定義に相当する1μV/cm程度であり、各超電導限流素子に均一に電流が流れていると判断することができる。一方、図22の3番目のグラフから、実施例2の場合には発生電圧が約4倍の値となっている。これは実施例2の超電導限流モジュールでは、膜面垂直磁界が相殺されず、若干のIc低下が生じることによると判断できる。また、発生ジュール熱を計算によって求めたところ、実施例4は実施例2の約1/4であった。このことから、実施例4では実施例2と比較してジュール損失を大きく低減できることが確認された。
【0071】
実施例5
図23に示す超電導限流モジュールを作製した。まず、実施例1と同様に、幅1cm、長さ8cmの単結晶サファイア基板上にYBCO系の超電導薄膜を形成して超電導限流素子を作製した。このような超電導限流素子1を8個用いて、実施例2(図5)と同様に直径22cmの円形FRP板からなる支持体上に放射状に配置し、超電導限流素子1の両端部(各1cmの部分)に並列接続用のブリッジ2、2を接続するとともに、電流パッド部分を除いた有効長6cmのYBCO薄膜どうしを互いに3個所において並列接続するようにブリッジ2を設け、超電導限流モジュールを作製した。なお、ブリッジとしては直径1mmのインジウム線を用い、このインジウム線をYBCO薄膜に機械的に押し付けて電気的な接続を取っている。この超電導限流モジュールでは、各超電導限流素子1のYBCO薄膜は両端の接続を含めて合計5個所で他のYBCO薄膜と接続されている。
【0072】
この超電導限流モジュールに対し、短絡電流5kA、電源電圧2kVの回路を用いて限流試験を行った。この試験では、回路インピーダンスを調整することにより印加電圧を徐々に上げ限流動作を測定した。図24(a)に試験結果を示す。図24(a)からわかるように、印加ピーク電圧が700Vを超えても素子の破壊を招くことなく限流に成功している。また、印加電圧を徐々に増加して試験を行ったところ、印加電圧ピークが1200Vまでは限流に成功したが、さらに高い印加電圧では限流試験中に超電導限流素子が破損した。
【0073】
参考のために、実施例2と同様に、超電導限流モジュールを構成する超電導限流素子どうしが両端のみで並列接続されている超電導限流モジュールを作製し、上記と同じ試験条件で限流試験を行った。図24(b)に試験結果を示す。図24(b)からわかるように、印加電圧ピークが700Vの場合には図24(a)と同様に限流に成功しているが、印加電圧を徐々に増加して試験を行ったところ図24(a)よりも700Vよりすこし上の電圧で限流試験中に超電導限流素子が破損した。同様の超電導限流モジュールを複数作製して同様の試験を複数回行ったが、試験結果はほとんど同じであった。
【0074】
また、印加電圧ピーク700Vで各超電導限流素子に流れる電流をロゴスキーコイルで測定したところ、実施例5では実施例2と比べて電流振動の振幅が約半分に抑制できていることが判明した。
【0075】
以上の結果から、実施例5では実施例2と比べて印加可能電圧を少なくとも(1200/700)=1.7倍に向上でき、その原因は限流開始時の電流振動現象を抑制できるためであると考えられる。
【0076】
実施例6
図25(a)および(b)に示す超電導限流ユニットを作製した。図25(a)に示すように、実施例5の超電導限流モジュールを4枚用い、各超電導限流モジュールの中心軸が重なるように1cm間隔で直列に接続した。図25(a)では図示を省略しているが、各超電導限流モジュールの中心部には穴をあけている。図25(b)に示すように、各超電導限流モジュールどうしは直列接続されている。すなわち、電流リード14を最上面の超電導限流モジュールの中心部に接続し、最上面の超電導限流モジュールと2枚目の超電導限流モジュールを周辺部のブリッジ4で接続し、2枚目の超電導限流モジュールと3枚目の超電導限流モジュールを中心部で接続し(図25(b)では示されていない)、3枚目の超電導限流モジュールと4枚目の超電導限流モジュールを周辺部のブリッジ4で接続し、4枚目の超電導限流モジュールの中心部にもうひとつの電流リード14を接続している。
【0077】
この超電導限流ユニットに対し、ピーク電流560Aで連続通電を行い、各超電導限流モジュール内の各超電導限流素子に流れる電流値を測定した。その結果、各超電導限流素子に流れる電流値はほとんど均一でばらつきは3%以内であり、1枚の超電導限流モジュールに対する試験結果とほぼ同じであった。
【0078】
比較のために、この超電導限流ユニットを分解して、各超電導限流素子を取り出し、以下のようにして図26に示す超電導限流ユニットを作製した。厚さ5mm、幅が約1cmのFRPを組み合わせて8角柱を作製し、その側面にそれぞれ超電導限流素子をエポキシ系接着剤で固定し、超電導限流モジュールを作製した。このような超電導限流モジュールを4本用意し、1cm間隔で横並びに配置して、図26のように電流リード14およびブリッジ4により直列接続して超電導限流ユニットを作製した。
【0079】
この超電導限流ユニットに対し、ピーク電流560Aで連続通電を行い、図26の一番左側の超電導限流モジュールを構成する超電導限流素子を流れる電流を測定した。その結果、各超電導限流素子を流れる電流はばらついていた。特に、隣の超電導限流モジュールから一番近い面の超電導限流素子と一番遠い面の超電導限流素子において、電流が均等に流れた場合の値70Aからのズレが大きく、そのばらつきは約7%であった
以上の結果から、本実施例における超電導限流モジュールを直列化した超電導限流ユニットにおいても、各超電導限流素子を流れる電流を均一化できることがわかる。
【0080】
実施例7
支持体の表面および裏面にサファイア基板側を接着して超電導限流素子を配置した実施例3の超電導限流モジュール(図21)を4枚用意した。図21に示すように、各超電導限流モジュールの表面および裏面の超電導限流素子は、周辺部に設けられた直列接続用のブリッジ4で接続されている。図13に示したように、各超電導限流モジュールの間に、厚さ2mm、半径10cmの円盤状FRP板からなる絶縁体11を挟み、各超電導限流モジュール間を1cm離して積層した。なお、絶縁体11の中心部には上下の超電導限流モジュールを接続するリードが挿通される直径2cmの穴をあけている。さらに、各超電導限流モジュール間を直列に接続して超電導限流ユニットを作製した。
【0081】
この超電導限流ユニットに対し限流試験を行った。その結果、印加電圧6kVで試験を行っても、超電導限流モジュール内または超電導限流モジュール間での放電を招くことなく限流動作が可能であった。
【0082】
比較のために、超電導限流モジュール間の絶縁体を取り外して限流試験を行った。その結果、印加電圧ピークが3kVまでは限流試験に成功したが、さらに印加電圧を上げると、1番目と2番目の超電導限流モジュール間でアーク放電が発生して超電導限流素子が損傷した。
【0083】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、並列接続された複数の超電導限素子を流れる電流を均一化して、通電損失の抑制するとともに限流動作開始時の素子損傷を抑制できる超電導限流モジュールを提供できる。また、本発明によれば、上記の超電導限流モジュールを直列接続して各超電導限流素子を流れる電流を均一化できる超電導限流ユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】超電導素子の並列回路を示す回路図。
【図2】電流Iの流れる線路と電流Iの流れる線路とが作る閉ループを貫く磁束を示す図。
【図3】超電導素子の並列回路において電流が均一に流れない理由を説明する図。
【図4】本発明の一実施形態に係る超電導限流モジュールの平面図および斜視図。
【図5】本発明の他の実施形態に係る対称性の高い配置を持つ超電導限流モジュールの平面図。
【図6】多角柱の側面に超電導限流素子を配置した超電導限流モジュールを示す斜視図。
【図7】本発明の他の実施形態に係る超電導限流ユニットを示す斜視図および断面図。
【図8】本発明の実施形態に係る超電導限流モジュールを、中心軸を含む平面で切断した断面図。
【図9】並列接続された超電導限流素子の膜面垂直に印加される磁界成分を説明する斜視図。
【図10】本発明の他の実施形態に係る、板状支持体の表面および裏面に超電導限流素子を設け互いに逆方向に電流が流れるように接続した超電導限流モジュールの斜視図。
【図11】図10における板状支持体の表面および裏面の超電導限流素子を直列接続するためのブリッジを示す断面図。
【図12】本発明の実施形態に係る超電導限流素子の断面図。
【図13】本発明の他の実施形態に係る超電導限流ユニットの断面図。
【図14】転流電流に関係するループを示す回路図。
【図15】2つの超電導限流素子の接続方法と、転流に関係するループを示す断面図。
【図16】実施例1における超電導限流モジュールを示す図。
【図17】実施例1の超電導限流素子の通電特性を示す図。
【図18】実施例1に対する比較例の超電導限流モジュールを示す平面図。
【図19】図18の超電導限流モジュールの通電特性を示す図。
【図20】実施例3における超電導限流モジュールを示す図。
【図21】実施例4における超電導限流モジュールを示す斜視図。
【図22】実施例4の超電導限流モジュールの通電特性を示す図。
【図23】実施例5における超電導限流モジュールを示す平面図。
【図24】実施例5および実施例2の超電導限流モジュールの限流特性を示す図。
【図25】実施例6における超電導限流ユニットを示す斜視図。
【図26】実施例6に対する比較例の超電導限流ユニットを示す斜視図。
【符号の説明】
1…超電導限流素子
2…並列接続用のブリッジ
3…中心軸
4…直列接続用のブリッジ
5…支持体
6…電流パッド
7…超電導限流素子の長さ
8…超電導限流モジュールの厚さ
10…磁界
11…絶縁用固体
12…局所クエンチ部分
13a、13b…ループ
14…電流リード
15…配線
16…超電導薄膜
17…絶縁基板

Claims (6)

  1. 絶縁基板とその上に形成された超電導薄膜とを有する超電導限流素子の1つまたは直列接続した複数を一部品として用い、複数の前記部品を並列接続した超電導限流モジュールであって、前記部品に含まれる超電導限流素子はある中心軸の周りに放射状に配置され、かつ各超電導限流素子に設けられた通電用の2つの電流パッドが前記中心軸から異なる距離に位置することを特徴とする超電導限流モジュール。
  2. 任意の2つの前記部品が、前記中心軸の周りでの回転によって、超電導限流モジュール全体の空間的配置を変えずに移り変われる対称性を有することを特徴とする請求項1に記載の超電導限流モジュール。
  3. 前記部品は板状支持体の両面にそれぞれ保持された複数の超電導限流素子を有し、前記板状支持体の表面および裏面の超電導限流素子が互いに逆方向の電流が流れるように直列接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の超電導限流モジュール。
  4. 同一の超電導限流モジュールに含まれる複数の超電導限流素子が互いに3個所以上で並列接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の超電導限流モジュール。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載の超電導限流モジュールの複数を、各超電導限流モジュールの中心軸を一致させて配置して、直列に接続したことを特徴とする超電導限流ユニット。
  6. 前記超電導限流モジュールは板状支持体の両面にそれぞれ絶縁基板側を接着して保持された複数の超電導限流素子を有し、中心軸を一致させて配置された各超電導限流モジュールの間に固体の絶縁体を挟んだことを特徴とする請求項5に記載の超電導限流ユニット。
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