JP3559218B2 - 移動通信用基地局アンテナ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動通信用の基地局アンテナに関する。
【0002】
【従来の技術】
移動通信に用いられる基地局においては複数ユーザの同時接続を可能にするために次のような手法が提案されており、商用のシステムに既に導入されている。(1)通信周波数を分割しユーザ毎に異なる周波数を割り当てる(周波数分割多重アクセス:FDMA)。
【0003】
(2)時間を分割して複数のタイムスロットを形成し、ユーザ毎に異なるタイムスロットを割り当てる(時間分割多重アクセス:TDMA)。
(3)ユーザ毎に異なる符号を割り当て、送信側では符号を用いて比較的広い周波数帯域に信号を拡散し、受信側では拡散された信号を送信側と同じ符号を用いて合成する(符号分割多重アクセス:CDMA)。
【0004】
しかし、近年の移動通信の普及に伴うユーザの急激な増加のため、移動通信システムに割り当てられた周波数チャネルの許容量以上の通話要求が生じ、電話がかかりにくいなどの問題が生じている。
そこで、さらに周波数の利用効率を上げてチャネル容量の拡大を実現するために、空間分割多重アクセス(SDMA)が提案されている。空間分割多重アクセスでは、基地局アンテナの指向性の主ビーム方向を希望ユーザの方向に向け、他のユーザ方向には指向性のヌル方向を向ける。すなわち、基地局アンテナの指向性によって空間を分割し、空間の違いによって複数のユーザを分離する。
【0005】
図5に示す例では、ユーザ#1とユーザ#2とが互いに異なる位置に存在するので、2種類の指向性パターンP1,P2を同時に形成している。すなわち、ユーザ#1に対して形成した指向性パターンP1においては、ユーザ#1の方向に主ビームが形成され、ユーザ#2の方向にはヌルが形成されている。また、ユーザ#2に対して形成した指向性パターンP2においては、ユーザ#2の方向に主ビームが形成され、ユーザ#1の方向にはヌルが形成されている。このため、同一の周波数を複数のユーザに同時に割り当てることができる。
【0006】
図5のような空間分割多重アクセスを実現する場合、基地局の受信部は図11のように構成される。図11において、各々のアンテナ素子51で受信された信号は、それぞれ周波数変換部52でベースバンド信号に変換され、A/D(アナログ/ディジタル)変換部53に入力される。A/D変換部53は、入力された信号からその受信電力を検出する。複数のアンテナ素子51のそれぞれの受信電力が、指向性制御部54に入力される。
【0007】
指向性制御部54は、複数のアンテナ素子51のそれぞれの振幅及び位相に対する重み係数を決定し、重み付けされた複数の受信信号を合成して所望信号を生成する。つまり、指向性制御部54がこのアンテナアレー全体の指向性パターンを決定する。図11の例では、独立した二人のユーザ#1,#2に対して同時に異なる指向性を形成するために2つの独立した指向性制御部54(1),54(2)が設けてある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図5のようにアンテナの指向性を用いて所望ユーザと不要ユーザとを分離しようとする場合、実際の分離特性はアンテナの配置や間隔に依存するので、条件によっては複数ユーザの分離ができない場合もある。
具体例として、図12の場合について説明する。図12の例では、N素子の直線アレーアンテナに0度方向からユーザ#1の電波が到来し、30度方向からユーザ#2の電波が到来する場合を示している。図7に示すように、アレーアンテナのアンテナ素子の間隔が2λ(λ:波長)の場合には、30度方向から到来する波の隣接アンテナ素子間の経路差がちょうど1λになるため、各アンテナ素子がそれぞれ受信する信号の相対位相差は0度方向から到来する波と全く同じになる。
【0009】
このため、図12の例では不要ユーザの信号を除去するようにアンテナの指向性を制御すると、所望信号も同時に除去されることになり、所望ユーザと不要ユーザとを分離することができない。
上記のように、空間分割多重アクセスを実現する場合には、アンテナの配置と到来波との関係から複数のユーザを分離できない場合が生じるという問題があった。
【0010】
本発明は、上記のような空間分割多重アクセスを実現する移動通信用基地局アンテナにおいて、複数ユーザの分離能力を改善することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1は、直線上に並べて配置された複数のアンテナ素子で構成されるアンテナアレーと、前記複数のアンテナ素子の信号に対してそれぞれ振幅及び位相の重み付けを行って合成し前記アンテナアレーの指向性を形成する指向性形成部と、前記複数のアンテナ素子の少なくとも1つの受信電力を検出する受信電力検出部と、前記指向性形成部の振幅及び位相の重み付けを制御する振幅位相制御部とを備える移動通信用基地局アンテナにおいて、前記アンテナアレーを構成する複数のアンテナ素子の間隔を通信に用いる波長の[(0.4+0.5(n−1))±0.05]倍に定めた(nは自然数)ことを特徴とする。
【0012】
移動通信基地局に2ユーザが同時にアクセスする場合、アンテナ指向性による2ユーザの分離能力は、移動通信基地局に2ユーザからそれぞれ到来する2波の空間相関で評価でき、空間相関が低いほど分離能力が高くなる。
【0013】
例えば、図4に示すように素子数がN、素子間隔がdの直線アレーアンテナに対して2ユーザからの到来波r1,r2がそれぞれ角度θ1,θ2の方向から到来する場合には、素子間の相互結合を無視すれば到来する2波の間の空間相関ρは次式で表される。
但し、
z:(sinθ1−sinθ2)
ここで、それぞれのユーザからの到来波の到来方向が空間的に一様である場合を想定すると、2ユーザからの到来波の平均的な空間相関ρaveの絶対値は次の第(2)式で表される。
【数3】
また、2ユーザの分離能力が最大になるのは、空間相関ρaveの絶対値が最小になる場合であると考えられる。ここで、第(2)式の積分を容易にするために、空間相関の2乗の積分を考える。すなわち、空間相関の絶対値は0から1の範囲内の値になるため、それの2乗についても最小を与える条件は変わらない。そこで、第(2)式を変形して得られる平均2乗空間相関fは次の第(3)式で表される。
【数4】
前記第(3)式におけるアンテナ素子の間隔dと平均2乗空間相関fとの関係は図3の実線(2素子の場合)及び点線(4素子の場合)のようになる。なお、図3における各点は計算機シミュレーションにより得られたデータを表している。この計算機シミュレーションでは、一様に生成したユーザについて平均2乗空間相関fを求めた。
【0014】
図3を参照すると、計算機シミュレーションの結果と第(3)式の特性とがほぼ一致しているため、第(3)式の妥当性が確認できる。図3から明らかなように、平均2乗空間相関fは、アンテナ素子の間隔dの変化に対して周期的に変動し、間隔dが特定の値(0.4λ,0.9λ,1.4λ,1.9λ,2.4λ,2.9λ,・・・)の位置でそれぞれ平均2乗空間相関fが極小値になる。
【0015】
つまり、空間分割多重アクセスを行う場合にはアンテナ素子の間隔dを波長λの[(0.4+0.5(n−1)±0.05)]倍に定めることにより、複数ユーザを分離する能力を最大にすることができる。また、図3からも分かるように平均2乗空間相関fが極小値になる間隔dはアンテナアレーのアンテナ素子数の影響は受けないので、素子数とは無関係に間隔dを決定することができる。
また、例えば図3において、平均2乗空間相関fが極小値になる各点(d=0 . 4λ,0 . 9λ,1 . 4λ,1 . 9λ,2 . 4λ,2 . 9λ,・・・)に着目すると、(極小値±0.05)の波長の範囲内では平均2乗空間相関fの値の変動は0.01程度であり、この範囲内であれば出力SINR(干渉信号抑圧度)はほとんど変化せず信号品質の劣化は無視できる。
【0016】
請求項2は、請求項1の移動通信用基地局アンテナにおいて、前記アンテナアレーを構成する複数のアンテナ素子の間隔を通信に用いる波長の(0.9±0.05)倍に定めたことを特徴とする。
実際のアンテナアレーにおいては、アンテナ素子間の間隔dが小さい(例えば0.4波長の場合)と、互いに隣接するアンテナ素子の相互結合が平均2乗空間相関fに影響を及ぼす可能性がある。しかし、0.9波長程度の間隔であれば相互結合の影響は無視できるので、請求項2によれば複数ユーザを分離する能力を最大にすることができる。
また、例えば図3において、(d=0 . 9λ)の点に着目すると(極小値±0.05)の波長の範囲内では平均2乗空間相関fの値の変動は0.01程度であり、この範囲内であれば出力SINR(信号対干渉雑音比)はほとんど変化せず信号品質の劣化は無視できる。
【0020】
請求項3は、3以上のアンテナ素子で構成されるアンテナアレーと、前記アンテナ素子の信号に対してそれぞれ振幅及び位相の重み付けを行って合成し前記アンテナアレーの指向性を形成する指向性形成部と、前記アンテナ素子の少なくとも1つの受信電力を検出する受信電力検出部と、前記指向性形成部の振幅及び位相の重み付けを制御する振幅位相制御部とを備える移動通信用基地局アンテナにおいて、前記アンテナアレーの形状を複数のアンテナ素子の配置間隔が等間隔になる配置形状に限定し、前記アンテナアレーに対して互いに異なる2つの方向から到来する2波の空間相関の二乗積分値を表す評価関数が極小値になるように、複数のアンテナ素子の配置間隔を決定したことを特徴とする。
【0021】
移動通信基地局に2ユーザが同時にアクセスする場合、アンテナ指向性による2ユーザの分離能力は、移動通信基地局に2ユーザからそれぞれ到来する2波の空間相関で評価でき、空間相関が低いほど分離能力が高くなる。
例えば、図6に示すように素子数がNで、各素子が2次元平面上の任意の位置に配列されたアレーアンテナに対して2ユーザからの到来波x1,x2がそれぞれ角度θ1,θ2の方向から到来する場合には、素子間の相互結合を無視すれば到来する2波の間の空間相関ρは次式で表される。
【数5】
ここで、それぞれのユーザからの到来波の到来方向が空間的に一様である場合を想定すると、2ユーザからの到来波の平均的な空間相関ρaveの絶対値は次の第(5)式で表される。
【数6】
また、2ユーザの分離能力が最大になるのは、空間相関ρaveの絶対値が最小になる場合であると考えられる。ここで、第(5)式の積分を容易にするために、空間相関の2乗の積分を考える。すなわち、空間相関の絶対値は0から1の範囲内の値になるため、それの2乗についても最小を与える条件は変わらない。そこで、第(5)式を変形して得られる平均2乗空間相関fは次の第(6)式で表される。
【数7】
第(6)式の平均2乗空間相関fは沢山の変数を含んでいるため、これをそのまま評価関数として利用することはできない。そこで、前記アンテナアレーの形状を複数のアンテナ素子の配置間隔が等間隔になる配置形状に限定する。これにより第(6)式の変数を減らすことができ、2ユーザの分離能力の評価に利用可能な評価関数が得られる。
【0022】
例えば、N個のアンテナ素子が半径rの同一の円周上に等間隔で配置されている場合を想定すると、各素子の2次元平面上の座標(xi,yi)は次の第(7)式で表される。
【数8】
この場合、前記第(6)式を次の第(8)式のように変形することができる。
【数9】
第(8)式の平均2乗空間相関fは、素子数N,半径r及び波数kに応じて定まるので、第(8)式の関数を用いてアレーアンテナの最適な構成を評価し、望ましい半径r及びアンテナ素子の間隔を決定することができる。
また、例えば複数のアンテナ素子が1つの直線上に等間隔で配置される場合を想定すると、平均2乗空間相関fは次の第(9)式で表される。
【数10】
第(9)式の平均2乗空間相関fは、素子数N,間隔d及び波数kに応じて定まるので、第(9)式の関数を用いてアレーアンテナの最適な構成を評価し、望ましいアンテナ素子の間隔dを決定することができる。
請求項4は、請求項3の移動通信用基地局アンテナにおいて、複数のアンテナ素子を同一の円周上に等間隔で配置し、前記円周の半径をrで表し、前記アンテナアレーのアンテナ素子数をNで表し、波数(2π/λ)をkで表し、J0を0次第一種ベッセル関数とする場合に、
【数11】
を前記評価関数として採用したことを特徴とする。
【0023】
この評価関数を用いることにより、複数のアンテナ素子を円形に配置した場合のアレーアンテナの最適な構成を評価し、望ましい半径r及びアンテナ素子の間隔を決定することができる。
請求項5は、請求項4の移動通信用基地局アンテナにおいて、前記評価関数がその極小値と該極小値よりも0.01大きい値との範囲内である場合のアンテナ素子数N及び半径rに従って複数のアンテナ素子の配置間隔を決定したことを特徴とする。
【0024】
例えば、3つのアンテナ素子を同一の円周上に等間隔で配置したアレーアンテナの場合には、半径rと平均2乗空間相関fとの関係が図9,図10のようになる。図10は図9の一部分を拡大して示している。
図9,図10における各点は計算機シミュレーションにより得られたデータを表している。また、図9,図10の出力SINRは2ユーザからの信号が一様に到来した場合にSDMAを適用した結果の信号対雑音干渉比(2ユーザのうち悪い方)を表している。さらに、この出力SINRはユーザの到来方向を一様な確率で発生させて1000回計算を繰り返して得られた出力SINRの累積確率が30%の値を示している。
【0025】
図9を参照すると、平均2乗空間相関には周期的に極小値が存在することが分かる。また、SDMAを適用した場合の出力SINRの特性は、前記第(10)式の評価関数が極小値になる半径rである場合に極大になることが分かる。
複数のアンテナ素子は円周上に等間隔で配置されるので、半径rが決まればアンテナ素子の間隔も定まる。従って、前記第(10)式の評価関数が極小値になる半径rにより定まる位置に各アンテナ素子を配置すれば、SDMA適用時のユーザ分離能力を極大にできる。
【0026】
また、図10において平均2乗空間相関fが極小値になる各点の近傍に注目すると、平均2乗空間相関fが極小値から(極小値+0.01)の範囲内では出力SINRの極大値からの劣化は0.5dB程度でほとんど劣化がないことが分かる。
従って、前記評価関数がその極小値と該極小値よりも0.01大きい値との範囲内になる半径rを採用すれば、SDMA適用時の出力SINRを極大にすることができ、信号品質を最良にすることができる。
【0027】
請求項6は、請求項3の移動通信用基地局アンテナにおいて、複数のアンテナ素子を同一の直線上に等間隔で配置し、複数のアンテナ素子の配置間隔をdで表し、アンテナ素子数をNで表し、波数(2π/λ)をkで表し、J0を0次第一種ベッセル関数とする場合に、
【数12】
を前記評価関数として採用したことを特徴とする。
【0028】
この評価関数を用いることにより、複数のアンテナ素子を1つの直線上に等間隔で配置した場合のアレーアンテナの最適な構成を評価し、望ましいアンテナ素子の間隔dを決定することができる。
請求項7は、請求項6の移動通信用基地局アンテナにおいて、複数のアンテナ素子の配置間隔dを通信に用いる波長の[(0.4+0.5(n−1))±0.05]倍に定めた(nは自然数)ことを特徴とする。
【0029】
図3から明らかなように、直線上に等間隔でアンテナ素子を並べた場合の平均2乗空間相関fは、アンテナ素子の間隔dの変化に対して周期的に変動し、間隔dが特定の値(0.4λ,0.9λ,1.4λ,1.9λ,2.4λ,2.9λ,・・・)の位置でそれぞれ平均2乗空間相関fが極小値になる。
また、極小値の近傍±0.05λの範囲では、平均2乗空間相関fの変動は0.01程度であり、出力SINRはほとんど変化せず、信号品質の劣化は無視できる。
【0030】
つまり、空間分割多重アクセスを行う場合にはアンテナ素子の間隔dを波長λの(0.4+0.5(n−1))倍の±0.05の範囲内に定めることにより、複数ユーザを分離する能力を最大にすることができる。また、図3からも分かるように直線アレーアンテナの場合、平均2乗空間相関fが極小値になる間隔dはアンテナアレーのアンテナ素子数の影響は受けないので、素子数とは無関係に間隔dを決定することができる。
【0031】
請求項8は、請求項6の移動通信用基地局アンテナにおいて、複数のアンテナ素子の配置間隔dを通信に用いる波長の(0.9±0.05)倍に定めた(nは自然数)ことを特徴とする。
実際のアンテナアレーにおいては、アンテナ素子間の間隔dが小さい(例えば0.4波長の場合)と、互いに隣接するアンテナ素子の相互結合が平均2乗空間相関fに影響を及ぼす可能性がある。しかし、0.9波長程度の間隔であれば相互結合の影響は無視できるので、請求項8によれば複数ユーザを分離する能力を最大にすることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
本発明の移動通信用基地局アンテナの1つの実施の形態について、図1及び図2を参照して説明する。この形態は請求項1〜請求項3,請求項6〜請求項8に対応する。
【0033】
図1はこの形態の移動通信用基地局アンテナの構成を示す斜視図である。図2は基地局装置の内部構成を示すブロック図である。
図1に示す移動通信用基地局アンテナは、4つのアンテナ素子31と、給電線32,基地局装置33,支柱34及びベース部材35とで構成されている。もちろん、アンテナアレーを構成するアンテナ素子31の数は必要に応じて変更してもよい。
【0034】
この例では、ベース部材35に支持される4つのアンテナ素子31は、1つの直線上に並ぶように一定の間隔で配置してある。また、空間分割多重アクセスを行うことを想定し、アンテナ素子31同士の間隔は、図1に示すように0.9λ(λ:通信に用いる信号の波長)に定めてある。
前述の第(3)式及び図3の内容から明らかなように、直線上に複数のアンテナ素子31を並べたアンテナアレーの場合には、アンテナ素子31の間隔を特定の値0.4λ,0.9λ,1.4λ,1.9λ,2.4λ,2.9λ,・・・のいずれかの近傍に定めれば、平均2乗空間相関fが極小値になるため、複数ユーザを分離する能力を最大にすることが可能である。
【0035】
しかしながら、例えば間隔を最小の0.4λに定めると、互いに隣接するアンテナ素子31同士の距離が近すぎるため、隣接するアンテナ素子31同士の相互結合の影響が現れ、実際には平均2乗空間相関fが極小値にならない可能性もある。
図1に示すようにアンテナ素子31の間隔を0.9λにする場合には、隣接するアンテナ素子31同士の相互結合は無視できる程度に小さくなるので、平均2乗空間相関fを最小化することができる。また、間隔を1.4λ,1.9λ,2.4λ,・・・のいずれかに定める場合と比べてアンテナ全体の大きさを小さくすることができる。
【0036】
4つのアンテナ素子31のそれぞれは、給電線32を介して基地局装置33と接続されている。
基地局装置33の内部には、図2に示すようにアンテナ素子31毎に独立した受信回路及び送信回路を備えている。すなわち、基地局装置33にはサーキュレータ11(1)〜11(4),周波数変換部12(1)〜12(4),13(1)〜13(4),A/D(アナログ/ディジタル)変換部14(1)〜14(4),D/A(ディジタル/アナログ)変換部15(1)〜15(4),送信用指向性形成部16,受信用指向性形成部17,指向性制御部18が備わっている。
【0037】
各ユーザが送信した電波は、4つのアンテナ素子31のそれぞれによって受信される。各々のアンテナ素子31の受信信号は、サーキュレータ11を通って周波数変換部12に入力される。周波数変換部12は無線周波数の受信信号をベースバンド信号に変換する。このベースバンド信号は、A/D変換部14でディジタル信号に変換され、受信用指向性形成部17に入力される。
【0038】
受信用指向性形成部17は、4つのアンテナ素子31によって構成されるアンテナアレーに受信指向性を形成するために、各々のアンテナ素子31から入力された受信信号の振幅及び位相に対して個別に重み付けを行ってからそれらの信号を合成する。
また、空間分割多重アクセスを可能にするために、複数のユーザが存在する場合には、受信用指向性形成部17は同時に複数種類の受信指向性を形成する。したがって、指向性に応じて合成された信号は複数種類の受信指向性のそれぞれについて出力される。すなわち、ユーザ毎に独立した受信信号が同時に受信用指向性形成部17から出力される。
【0039】
一方、各ユーザが送信する信号は、送信用指向性形成部16に入力され4系統に振り分けられる。また、アンテナアレーに送信指向性を形成するために、送信用指向性形成部16から出力される信号には、振幅及び位相に系統毎にユーザに対応した重み付けが与えられる。
【0040】
送信用指向性形成部16が出力するディジタル信号は、D/A変換部15によってアナログのベースバンド信号に変換され、周波数変換部13に入力される。周波数変換部13は、入力されるベースバンド信号の周波数を所定の無線周波数に変換し電力増幅する。周波数変換部13が出力する信号は、サーキュレータ11を通り各アンテナ素子31から電波として放射される。
【0041】
指向性制御部18は、複数ユーザのそれぞれの指向性を形成するのに必要とされる振幅及び位相の重み係数を算出してユーザ毎に送信用指向性形成部16及び受信用指向性形成部17に与える。
したがって、図1に示す移動通信用基地局アンテナは例えば図5に示すようにユーザ毎に異なる指向性パターンを形成し、複数のユーザを空間の違いによって分離することができる。
【0042】
(第2の実施の形態)
本発明の移動通信用基地局アンテナのもう1つの実施の形態について、図7及び図8を参照して説明する。この形態は請求項3〜請求項5に対応する。
図7はこの形態の移動通信用基地局アンテナの構成を示す斜視図である。図8はこの形態の基地局装置の内部構成を示すブロック図である。
【0043】
この形態は第1の実施の形態の変形例である。第1の実施の形態と同一の部分については、以下の説明を省略する。
この形態では、アンテナアレーを構成するアンテナ素子31の素子数,素子の間隔及びその配置形状が変更されている。また、基地局装置33の基本的な構成及び動作は第1の実施の形態と同一であるが、アンテナ素子31の素子数の変化に合わせて図8に示すように構成要素の数が変更されている。
【0044】
図7に示すように、ベース部材35は水平面の形状が略正三角形に形成され、三角形の3つの頂部の近傍にそれぞれアンテナ素子31が配置されている。また、3つのアンテナ素子31(1),31(2),31(3)の間隔は等間隔であり、3つのアンテナ素子31(1),31(2),31(3)は1つの円周上に配置されている。この円周の半径rは0.5λ(λ:通信に用いる波長)の大きさに定めてある。
【0045】
同一の円周上に3つのアンテナ素子31を並べたアンテナアレーの場合には、前述の第(8)式で表される評価関数(f)の値が図10の点線のようになる。つまり、3つのアンテナ素子31が配列される円周の半径rが0.2波長,0.5波長,・・・の近傍にある場合に評価関数(f)が極小値になる。
従って、図7に示すように半径rを0.2波長,0.5波長,・・・のいずれかの近傍に定めてアンテナ素子31を円周上に等間隔で配置すれば、平均2乗空間相関fが極小値になるため、複数ユーザを分離する能力を最大にすることが可能である。
【0046】
しかしながら、例えば半径rを最小の0.2波長に定めると、互いに隣接するアンテナ素子31同士の距離が近すぎるため、隣接するアンテナ素子31同士の相互結合の影響が現れ、実際には平均2乗空間相関fが極小値にならない可能性もある。
図7に示すように、半径rを0.5波長に定めた円周上にアンテナ素子31を配置する場合には、隣接するアンテナ素子31同士の相互結合は無視できる程度に小さくなるので、平均2乗空間相関fを最小化することができる。また、半径rを0.5波長の近傍に定める場合には、アンテナ全体の大きさを比較的小さくすることができる。
【0047】
なお、アンテナアレーを構成するアンテナ素子31の素子数(N)を変更してもよいが、素子数(N)が変わると第(8)式で表される評価関数(f)が極小値になる半径rが変わるので、アンテナ素子31を配列する円周の半径を変更する必要がある。
図7に示す3つのアンテナ素子31は、それぞれ給電線32を介して基地局装置33と接続されている。
【0048】
基地局装置33の指向性制御部18は、複数ユーザのそれぞれの指向性を形成するのに必要とされる振幅及び位相の重み係数を算出してユーザ毎に送信用指向性形成部16及び受信用指向性形成部17に与える。
したがって、図7に示す移動通信用基地局アンテナは例えば図5に示すようにユーザ毎に異なる指向性パターンを形成し、複数のユーザを空間の違いによって分離することができる。
【0049】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、空間分割多重アクセスを行う場合に複数ユーザの分離特性を改善することができる。したがって、同一セル内で同一周波数を同時に使用することが可能となり、移動通信システムの周波数利用効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の移動通信用基地局アンテナの構成を示す斜視図である。
【図2】第1の実施の形態の基地局装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施の形態の素子間隔dと平均2乗空間相関fとの関係を示すグラフである。
【図4】基地局アンテナの構成及び複数ユーザの配置の例を示す平面図である。
【図5】基地局アンテナの指向性及び複数ユーザの配置の例を示す斜視図である。
【図6】基地局アンテナの構成及び複数ユーザの配置の例を示す平面図である。
【図7】第2の実施の形態の移動通信用基地局アンテナの構成を示す斜視図である。
【図8】第2の実施の形態の基地局装置の内部構成を示すブロック図である。
【図9】第2の実施の形態のr,f,出力SINRの関係を示すグラフである。
【図10】第2の実施の形態のr,f,出力SINRの関係を示すグラフである。
【図11】空間分割多重アクセスを実現する基地局の受信部の構成例を示すブロック図である。
【図12】基地局アンテナの構成及び複数ユーザの配置の例を示す平面図である。
【符号の説明】
11 サーキュレータ
12,13 周波数変換部
14 A/D変換部
15 D/A変換部
16 送信用指向性形成部
17 受信用指向性形成部
18 指向性制御部
31 アンテナ素子
32 給電線
33 基地局装置
34 支柱
35 ベース部材
51 アンテナ素子
52 周波数変換部
53 A/D変換部
54 指向性制御部
Claims (8)
- 直線上に並べて配置された複数のアンテナ素子で構成されるアンテナアレーと、前記複数のアンテナ素子の信号に対してそれぞれ振幅及び位相の重み付けを行って合成し前記アンテナアレーの指向性を形成する指向性形成部と、前記複数のアンテナ素子の少なくとも1つの受信電力を検出する受信電力検出部と、前記指向性形成部の振幅及び位相の重み付けを制御する振幅位相制御部とを備える移動通信用基地局アンテナにおいて、
前記アンテナアレーを構成する複数のアンテナ素子の間隔を通信に用いる波長の[(0.4+0.5(n−1))±0.05]倍に定めた(nは自然数)ことを特徴とする移動通信用基地局アンテナ。 - 請求項1の移動通信用基地局アンテナにおいて、前記アンテナアレーを構成する複数のアンテナ素子の間隔を通信に用いる波長の(0.9±0.05)倍に定めたことを特徴とする移動通信用基地局アンテナ。
- 3以上のアンテナ素子で構成されるアンテナアレーと、前記アンテナ素子の信号に対してそれぞれ振幅及び位相の重み付けを行って合成し前記アンテナアレーの指向性を形成する指向性形成部と、前記アンテナ素子の少なくとも1つの受信電力を検出する受信電力検出部と、前記指向性形成部の振幅及び位相の重み付けを制御する振幅位相制御部とを備える移動通信用基地局アンテナにおいて、
前記アンテナアレーの形状を複数のアンテナ素子の配置間隔が等間隔になる配置形状に限定し、
前記アンテナアレーに対して互いに異なる2つの方向から到来する2波の空間相関の二乗積分値を表す評価関数が極小値になるように、複数のアンテナ素子の配置間隔を決定したことを特徴とする移動通信用基地局アンテナ。 - 請求項4の移動通信用基地局アンテナにおいて、前記評価関数がその極小値と該極小値よりも0.01大きい値との範囲内である場合のアンテナ素子数N及び半径rに従って複数のアンテナ素子の配置間隔を決定したことを特徴とする移動通信用基地局アンテナ。
- 請求項6の移動通信用基地局アンテナにおいて、複数のアンテナ素子の配置間隔dを通信に用いる波長の[(0.4+0.5(n−1))±0.05]倍に定めた(nは自然数)ことを特徴とする移動通信用基地局アンテナ。
- 請求項6の移動通信用基地局アンテナにおいて、複数のアンテナ素子の配置間隔dを通信に用いる波長の(0.9±0.05)倍に定めた(nは自然数)ことを特徴とする移動通信用基地局アンテナ。
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