JP3558946B2 - アンテナ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射素子および半導体能動素子が一体化されたアンテナ装置に関する。本発明は、マイクロ波を用いて、装置相互間の屋内通信あるいは屋内移動通信を行うために開発されたものであるが、このほかの用途にも広く利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
放射素子および半導体能動素子が一体化されたアンテナ装置について従来例装置を説明すると、その従来装置の第一例は図5に示すものである。図5(a)はこの装置全体の上面図であり、同(b)は単素子の詳細図である。この装置は〔J.Birkeland and T.Itoh:A 16 Elements Quasi−optical FET Oscillator Power Combining Array with External Injection Locking, IEEETrans. on MicrowaveTheory and Techniques, Vol.40,No3, pp475−481,March1992 〕に発表されたものである。この構造では、給電線路により構成される入力端子20から引込用励起入力信号(Locking Signal) が与えられる。この励起入力信号は、ウィルキンソン・デバイダ21により順次分岐されて、それぞれ発振器を構成する16個の単素子23に分配される。この単素子23にはそれぞれ1個のFET(電界効果トランジスタ)22が設けられ、このFET22のドレイン電極に現れる信号が、オープンスタブ24により共振するマイクロストリップ・アンテナ素子を励振するように構成されている。この構造の装置では、複数(16個)の素子が送出する高周波電力を空間で合成するものであり、個々の素子が分担する電力を小さくすることができる。図5(a)に破線で示す部分は裏面の接地導体部分である。
【0003】
従来装置の第二例として図6に示すものがある。図6(a)は装置全体の構造を示す斜視図、同図(b)は装置の断面構造図である。この装置は
〔K.Kamogawa,T.Tokumitsu,M.Akikawa:A Novel Microstrip Antenna Using Alumina−ceramic/Polyimide Multilayer Dielectric Sunstrate, IEEE MTT−S Int.Microwave Symp.Dig.,1996,pp71−74〕にて発表されたものである。この装置はポリイミド・セラミック多層基板を用いて、利用周波数の異なるアンテナ素子を同一基板に複数実装するものである。この構造では、能動素子チップ38が複数個設けられ、それぞれ層構造内に実装された給電線路40から、スロット35を介して平面放射素子32を励起するものである。符号34はアース板、符号36はポリイミド、符号37はアルミナセラミック、符号41はビアホールである。この構造は、複数の平面放射素子を複数の能動素子で励振するから利用可能な比帯域を広くすることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来装置の第一例も第二例も、能動素子を放射素子と一体的に構成するものであり、装置に付帯して屋内を移動するアンテナ装置として設計することができる可能性がある。しかし、上記従来装置の第一例は送信専用である。また、多数の放射素子が放射する信号電力を伝搬空間で合成するものであるから、放射素子の数を大きくすると、送出ビームが狭くなり必ずしも移動通信用アンテナ装置としては向かないことになる。
【0005】
上記従来装置の第二例は、平面放射素子の配置位置の設定に自由度が小さく、特定の放射パターンを設定することができない。また利用周波数以外のスプリアス周波数に対して無防備である。
【0006】
本発明は、このような背景に行われたものであって、同一屋内を装置に付帯して移動するに適する、効率のよい、小型のアンテナ装置を提供することを目的とする。本発明は、能動素子の電力分担を小さくし、しかも伝搬空間ではなく放射素子上で電力合成が行われる構造のアンテナ装置を提供することを目的とする。本発明は、放射パターンの広いアンテナ装置を提供することを目的とする。本発明は、放射素子を共振構造にすることができるとともに、スプリアス周波数の放射が少ないアンテナ装置を提供することを目的とする。本発明は、送信用にも受信用にも利用できるアンテナ装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、能動素子と放射素子を一つに集積化するアンテナ装置であって、一つの放射素子に設定された二点を二つの能動素子により逆位相で励振することを最大の特徴とする。
【0008】
すなわち本発明は、一つの入出力端子(1)と、この入出力端子に接続された分岐回路(2)と、この分岐回路の分岐路側にそれぞれ接続された特性の等しい2個の能動素子(3、4)と、この2個の能動素子にそれぞれ接続された2個の給電通路(5、6)と、この2個の給電通路と二つの給電点(7、8)により接続された一つの平面放射素子(9)とが一体的に実装され、前記分岐回路(2)の分岐点からそれぞれ前記能動素子(3、4)を経てそれぞれ前記二つの給電点にいたるまでの二つの信号通路の長さが、前記二つの給電点(7、8)を互いに逆位相で励振するように設定されたことを特徴とする。
【0009】
前記二つの給電点(7、8)は、前記平面放射素子(9)の中心点に対して対称の位置に設定することが望ましい。
【0010】
上記括弧内の数字は、あとから説明する実施例図面の参照数字であり、これは本発明の構成を理解しやすいように付すものであって、本発明を実施例に限定して理解するためのものではない。
【0011】
さらに具体的には、利用周波数に対応するこの装置内における実効波長をλgとするとき、前記二つの信号通路の長さの差がλg/2またはその奇数倍になるように構成することにより実現することができる。
【0012】
この構造により、ひとつのマイクロストリップ・アンテナ放射素子である平面放射素子を2箇所で逆位相により励起することになり、一点励起の放射素子とする場合より安定な定在波を発生させ、良好な放射パターンを得ることができる。逆位相の信号を得るために、信号通路の長さの差がちょうどλg/2またはその奇数倍になるように形成することにより、複雑な移相回路を設ける必要がなくなり、構成が簡単化される。また複数の能動素子が発生する電力を一つの放射素子の上で合成するので、電力合成のための特別の回路を必要とすることがなく構成が簡単になる。これは空間で電力を合成するものに比べて、その放射パターンを所望のように設計制御しやすくなる利点がある。
【0013】
また、本発明のアンテナ装置は、その能動素子を一つの引込用励起信号(ロッキング信号)により同期動作する2個の発振素子とすることができる。
【0014】
このアンテナ装置は、能動素子の接続向きにより、送信用アンテナ装置にも受信用アンテナ装置にも利用できるが、能動素子は、前記平面放射素子に接続される側を出力端子とし、分岐回路に接続される側を送信信号入力端子とする増幅素子または発振素子とすることにより、送信用アンテナ装置として利用する形態が望ましい。
【0015】
本発明の装置は、上述のように入出力端子から放射素子までの信号通路の長さを設定するものであるが、そのうえに、能動素子から放射素子までの距離を適当に設定することにより、放射素子の上で二次高調波あるいは三次高調波を打ち消すように設定することができる。すなわち、前記2個の能動素子(3、4)からそれぞれ前記二つの給電点(7、8)までの信号通路の長さの差が、利用周波数の二次高調波に対して逆相になるように設定する、あるいは、前記2個の能動素子(3、4)からそれぞれ前記二つの給電点(7、8)までの信号通路の長さの差が、利用周波数の三次高調波に対して相になるように設定することによりこれを実現することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
(第一実施例)
図1は本発明第一実施例装置の立体構造を示す斜視図である。図1は、全体の構造が理解しやすいように、外形状から内部を透視できる斜視図として表わすものである。図2はこの第一実施例の断面構造図である。この装置は2枚の誘電体基板10、12間に接地導体11をはさみ、たがいにはり合わされるようにして一体化された構造をなす。平面放射素子9が装置表面に導体材料により形成される。そして装置裏面には、一つの入出力端子1と、この入出力端子1に接続された分岐回路2と、この分岐回路2の分岐路側にそれぞれ接続された特性の等しい2個の能動素子(この実施例では増幅素子)3、4と、この2個の能動素子3、4にそれぞれ接続された2個の給電通路5、6とが形成される。
【0017】
表面の平面放射素子9には、その中心点を対称に二つの給電点7、8が設定され、この給電通路5、6はそれぞれビアホール16に充填された導体を経由してこの二つの給電点7、8に接続される。ここで、分岐回路2の分岐点からそれぞれ能動素子3、4を経てそれぞれ二つの給電点7、8にいたるまでの二つの信号通路の長さが、二つの給電点7、8を互いに逆位相で励振するように設定される。符号13はビアカバーパッド、符号14はビアホールクリアランスである。
【0018】
図3は給電回路の説明図である。図3に示すように、給電点7から能動素子3までの距離をA、能動素子3から分岐回路2の分岐点までの距離をB、この分岐点から能動素子4までの距離をC、能動素子4から給電点8までの距離をDとすると、利用周波数に対応するこの装置内における実効波長をλgとするとき、
(A+B)−(C+D)|=(2n−1)λg/2 (1)
となるようにそれぞれ距離A,B,C,Dが設定される。ここでnは1以上の整数である。
【0019】
この構成により、一つの平面放射素子9に設けた2個の給電点7、8をちょうどプッシュプル回路で励振することと等価になり、二つの能動素子3、4の出力がこの平面放射素子9のうえで合成される。そして、平面放射素子9の形状や2個の給電点7、8の位置にしたがって、この平面放射素子9の放射パターンを設計変更することができる。この構成では特別な位相反転素子を利用することなく一つの放射素子の二点を逆位相で励振することができる。
【0020】
平面放射素子9の形状は、この実施例では正方形に近い長方形であるが、この形状はこの装置の用途に応じてさまざまに設計することができる。さらに細長い長方形にすることもできるし、かならずしも長方形でなくともよい。この平面放射素子9の形状を適当に設計することにより、また二つの給電点7、8の位置を適当に設定することにより、利用周波数において共振状態となる放射素子を得ることができる。このとき、能動回路側からみたインピーダンスは虚数成分が小さくなり、アンテナ利得をダイポールアンテナの利得に近づけることができる。
【0021】
ここで上記(1)式を満足したうえで、距離Aおよび距離Dについて、その差分(A−D)が利用周波数の二次高調波周波数において給電点7および8の間で逆相になるように能動素子3、4の位置を選ぶと、能動素子3および4で発生する二次高調波を逓減するように構成することができる。またこの差分(A−D)が利用周波数の三次高調波周波数において給電点7および8の間で同相になるように能動素子3、4の位置を選ぶと、能動素子3および4で発生する三次高調波を逓減するように構成することができる。
【0022】
(第二実施例)
図4は本発明第二実施例装置の構造図である。この第二実施例装置は、能動素子3および4を分岐回路2の分岐点から等しい距離の位置に配置するのではなく、能動素子3および4を分岐点から異なる距離の位置に配置したものである。この場合にも上記(1)式の条件を満足するように回路を構成することにより、同様に2個の給電点7、8を逆位相で励振することができる。
【0023】
各要素については上記第一実施例と同一の符号を付してあるので、構造についての説明を省略する。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、一つの装置内に集積実装された能動素子および放射素子により、小型で効率のよい移動装置に適するアンテナ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明第一実施例装置の構造説明図。
【図2】本発明第一実施例装置の断面構造図。
【図3】本発明第一実施例装置の給電通路の距離を説明するための図。
【図4】本発明第二実施例装置の構造説明図。
【図5】従来例装置の構造説明図。(a)は全体平面図、(b)は要部平面図。
【図6】従来例装置の構造説明図。(a)は斜視図、(b)は断面図。
【符号の説明】
1 入出力端子
2 分岐回路
3、4 能動素子
5、6 給電通路
7、8 給電点
9 平面放射素子
10 誘電体基板
11 接地導体
12 誘電体基板
13 ビアカバーパッド
14 ビアホールクリアランス
16 ビアホール
20 入力端子
21 ウィルキンソン・デバイダ
22 FET(電界効果トランジスタ)
23 単素子
24 オープンスタブ
32 平面放射素子
34 アース板
35 スロット
36 ポリイミド
37 アルミナセラミック
38 能動素子チップ
40 給電線路
41 ビアホール

Claims (6)

  1. 一つの入出力端子と、この入出力端子に接続された分岐回路と、この分岐回路の分岐路側にそれぞれ接続された特性の等しい2個の能動素子と、この2個の能動素子にそれぞれ接続された2個の給電通路と、この2個の給電通路と二つの給電点により接続された一つの平面放射素子とが誘電体基板に一体的に実装され、前記分岐回路の分岐点からそれぞれ前記能動素子を経てそれぞれ前記二つの給電点にいたるまでの二つの信号通路の長さが、前記二つの給電点を互いに逆位相で励振するように設定され
    前記2個の能動素子からそれぞれ前記二つの給電点までの信号通路の長さの差が、利用周波数の二次高調波に対して逆相になるように設定された
    ことを特徴とするアンテナ装置。
  2. 一つの入出力端子と、この入出力端子に接続された分岐回路と、この分岐回路の分岐路側にそれぞれ接続された特性の等しい2個の能動素子と、この2個の能動素子にそれぞれ接続された2個の給電通路と、この2個の給電通路と二つの給電点により接続された一つの平面放射素子とが誘電体基板に一体的に実装され、前記分岐回路の分岐点からそれぞれ前記能動素子を経てそれぞれ前記二つの給電点にいたるまでの二つの信号通路の長さが、前記二つの給電点を互いに逆位相で励振するように設定され、
    前記2個の能動素子からそれぞれ前記二つの給電点までの信号通路の長さの差が、利用周波数の三次高調波に対して同相になるように設定された
    ことを特徴とするアンテナ装置。
  3. 利用周波数に対応するこの装置内における実効波長をλgとするとき、前記二つの信号通路の長さの差はλg/2またはその奇数倍である請求項1または2記載のアンテナ装置。
  4. 前記二つの給電点は、前記平面放射素子の中心点に対して対称の位置に設定された請求項1または2記載のアンテナ装置。
  5. 前記能動素子は、前記平面放射素子に接続される側を出力端子とし、分岐回路に接続される側を送信信号入力端子とする増幅素子である請求項1または2記載のアンテナ装置。
  6. 前記能動素子は前記平面放射素子に接続される側を出力端子とし、分岐回路に接続される側を引込用励起信号の入力端子とする発振素子である請求項1または2記載のアンテナ装置。
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