JP3556303B2 - 車両用渦電流制動装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は車両を制動するための渦電流制動装置に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
この型式の装置は、慣行により、車両のシャシに固定されかつ誘導子巻線を含む一部分(固定子)と、電機子を含みかつ車両の回転要素、一般的には、その伝動軸と結合された可動部分(回転子)とを備えている。本発明を適用することができるある渦電流制動装置においては、誘導子巻線が回転子により担持され、かつ電機子が固定子により担持されている(例えば、フランス特許公開第2,667,741号明細書参照)。
【0003】
「誘導子巻線」または単に「巻線」という用語は、この明細書においては、誘導子巻線本体と、直列にかつ/または並列に恒久的に相互に接続されたこのような巻線のグループとの両方を包含するために使用されている。このように定義した各々の巻線は車両の蓄電池により給電されたときに磁界を発生する。
【0004】
電機子は励磁された巻線に対して移動するときに「渦」電流として知られている電流が誘導される強磁性体からなる本体である。電機子の抵抗率のために、これらの渦電流のエネルギーが散逸し、その結果、回転子の速度が低下し、従って、車両の速度が低下する。このエネルギーは熱の形態で散逸するので、回転子は一般に前記熱を放出させるために好適なフィンが付いた形状に形成されている。
【0005】
車両の運転手は車両制動作用を得るために多位置制御レバーを作動することができ、その制動トルクは制御レバーに対して選択された位置により変化する。このトルクの変化性は各々が巻線のうちの1個の巻線を励磁する作用をする1組の継電器により得られ、閉回路位置における継電器の数は制御レバーの位置により左右される。代表的な制動装置においては、4個の誘導子巻線が設けられ、そしてレバーは閉ざされる継電器の0、1、2、3および4に相当する5つの位置を有し、その位置に対応した比例した制動トルクが得られる。
【0006】
本発明の出願人は、上記の出願、フランス特許公開第2,667,741号明細書に回転誘導子巻線を有する制動装置により得られる制動トルクを決定する方法を記載しており、制動トルクの決定は固定電機子の二つの点の間の電圧の測定された変化に基づいてなされる。その技術は固定誘導子巻線と回転電機子とを有する制動装置に容易に転移することができない。それに加えて、この技術は誘導子の励磁作用を測定することに基づいているので、実際に適用される以外の電力供給設定のために得られる制動トルクを決定することができない。しかしながら、この型式の情報は車両の種々の制動源(電磁ブレーキ、ディスクブレーキ、エンジンブレーキ等)の情報処理機能管理に関連して極めて有用である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の一つの目的は実際の制動トルクおよび/または利用できる制動トルクに関する情報を簡単に提供するために好適な制動装置を提供することにある。
【0008】
従って、本発明は車両用渦電流制動装置にして、固定子組立体と、車両の伝動軸に取り付けられるようになった回転子組立体とを備え、前記組立体のうちの一方の組立体が誘導子巻線を含み、他方の組立体が誘導子巻線に面する電機子を含み、さらに、電力供給設定に応じて車両の電源から誘導子巻線を選択的に励磁するための励磁装置を含む制動装置において、該制動装置により回転組立体の回転速度、電機子の温度、誘導子巻線の温度および電力供給設定のための少なくとも一つの値の関数として与えることができる制動トルクを予測するためにプロセッサ装置が設けられていることを特徴とする車両用渦電流制動装置を提供する。
【0009】
本発明の出願人は、驚くべきことには、制動トルクを決定するために限られた数の計算変数で十分であることを観察することができた。トルクをこれらの変数の関数として変化させる方法は考慮される制動装置のモデルの物理的な例に対してテストを行うことにより予め決定することができる。テスト中、制動装置により発生せしめられたトルクが計算変数の異なる値において測定される。その後、記録されたデータはトルクと計算変数との間の関係に近似した関数を導き出すためにディジタル処理することができる。その後、問題のモデルのブレーキに含められたプロセッサ装置は所望の予測を行うことが可能であるように機能するようにプログラムされる。別の一つの方法はテスト結果を問題のモデルの各々のブレーキのプロセッサ装置と組み合わされた記憶装置に記憶することからなり、テスト結果へのアクセスは計算変数に基づいて発生したアドレスの制御によりなされる。
【0010】
一般に、本発明の制動装置は固定されるか、または回転する誘導子巻線を有することができる。
【0011】
本発明の装置の特定の実施例は、さらに、複数の位置を有する制御部材と、特に制御部材の位置の関数としての電力供給設定を確立するための制御装置とを備え、プロセッサ装置は制動装置により実際に発生せしめられた制動トルクを予測するために回転組立体の回転速度、電機子の温度、誘導子巻線の温度および制御装置により確立された電力供給設定値の関数としての制動トルクを予測するようになっている。
【0012】
プロセッサ装置は、別の態様として、または付加的に、制動装置により電力供給設定の所定値に対して発生せしめられる制動トルクの少なくとも一つの値を予測するように適合させることができる。
【0013】
一つまたはそれ以上の電力供給設定において利用できるトルクを予測するこの便宜はトルクを計算するときに使用される変数の各々をブレーキの実際の作動と関係なく測定し、または求値することができる事実のために得られる。
【0014】
特に有利な一実施例において、プロセッサ装置は連続する瞬間において電機子の温度を実時間で求値するようになっており、連続する各々の瞬間における電機子の温度はプロセッサ装置により連続する以前の瞬間に求値される電機子の温度と、回転子組立体の回転速度と、励磁装置に適用される電力供給設定とを含む複数の計算変数の関数として求値され、この方法で予測された電機子の温度は制動トルクを予測するときに考慮に入れられる。電機子が回転組立体に含められるときに、この装置は取り付けることが困難でありかつ信頼できない測定値を提供することがあるセンサを使用する必要なく、電機子の温度を決定することが可能である。
【0015】
【実施例】
本発明のその他の特徴および利点は添付図面と関連して読まれるべきである好ましい非制限的な一実施例の以下の説明から明らかになろう。
【0016】
本発明の実施例を内部の電機子が回転するブレーキについて説明する。4個の誘導子巻線3が固定子組立体1内に含まれ、かつ電機子6が回転子組立体2に含まれている。
【0017】
各々の巻線3は1対のコイルにより構成され、例えば、8個のコイルのすべては車両の歯車箱からの伝動軸(図示せず)のまわりに配置され、かつこれらのコイルの軸線は前記軸に平行に配置されている。回転子2は伝動軸に固定されるように設計された中央の穴4を有する鋳鋼片により構成されている。回転子2は伝動軸に垂直に配置されて、該回転子の電機子6を構成する1個またはそれ以上のディスクを含む。ディスクの各々は、慣行により、電機子6と穴4との間に、伝動軸が回転する間に通風を行うフィン付き構造体7を含む。この装置が車両上に取り付けられるときに、電機子6が固定子1の巻線3に面するように位置決めされる。代表的な一実施例においては、回転子2は固定子1の各々の側に1個のディスクを含み、それにより各々の回転する電機子ディスク6が巻線3により確立された磁極から磁極まで交番する極性を有する磁極リングと面するようになっている。伝動軸が回転すると、巻線3のうちの少なくとも1個の巻線が車両の電池8により給電されているときは必ず、電機子6内に渦電流が発生する。その結果、励磁される巻線の数と共に増大する制動トルクが発生し、そして同時に電機子6はフィン7からの通風により部分的に補償される程度に昇温する。
【0018】
この制動装置は蓄電池8から巻線3に選択的に給電する励磁装置9を含み、この蓄電池8は代表的には24ボルトの公称電圧を有する。励磁装置9は4個の継電器11により構成され、各々の継電器11は蓄電池8の正の端子とそれぞれの巻線3の一端部との間に取り付けられており、各々の巻線3の他端部は蓄電池8の負の端子と接続されている。4個の継電器11は制御装置12により送られる4つの信号により独立して制御される。
【0019】
制御装置12は記憶装置14ならびにインタタフェース回路16および17と組み合わされたプロセッサ13を備えたマイクロコントローラの型式の電子装置により構成することができる。入力インタフェース16は5位置手動制御部材18、例えば、該車両の運転手により接近可能なレバーからの信号であって、前記部材の位置Pを表す信号と、回転子2の回転速度Vを測定するために伝動軸と組み合わされた回転速度計19(図1においてダイヤルとして例示した)からの信号と、固定子1に取り付けられた、巻線3の温度Tsに応答する温度センサ21からの信号とを含む種々の電気信号を受ける。
【0020】
制御装置12は、また、本発明と直接に関係しないので、この明細書では説明されないその他の機能を行うためのその他の信号を受けることができる。
【0021】
入力インタフェース16は上記の信号を整形して、対応した値をプロセッサ13に印加する。プロセッサ13はインタフェース16により受け入れられた値P、VおよびTsに基づいて電力供給設定(power feed setting)Cを確立するようにプログラムが作成されている。プロセッサ13は、設定Cにより、継電器11の各々を開閉するために、その出力インタフェース17を経て4つの信号を送る。設定Cは5つの値0、1、2、3または4のうちの一つの値をとることができ、対応した数の継電器11を閉ざし、すなわち、対応した数の誘導子巻線3を励磁させる。
【0022】
電力供給設定Cを確立するために、電機子6の温度Trに関する指示値が考慮に入れられる。この指示値は、本発明によれば、プロセッサ13により実時間により得られる前記温度Trの求値(evaluation)により構成される。
【0023】
求値は電機子6の温度が変化しそうである時間尺度と比較して十分に小さい所定の時間間隔Δt(例えば、Δt=1秒)だけ隔置された連続した瞬間において行われる。連続した各々の瞬間tにおいて、電機子6の温度Trは次の計算変数の関数として求値される。すなわち、
−連続した以前の瞬間tn−1 =t−Δtにおいて求値された電機子6の温度Trn−1 と、
−回転速度計19により提供される回転子2の回転速度Vと、
−測定する瞬間tまたはその前の瞬間tn−1 における値をとることができる電力供給設定Cと、
−センサ21により与えられる巻線3の温度Ts。
【0024】
本発明の出願人は渦電流制動装置の大部分のモデルとして電機子の温度を変数Trn−1 、V,CおよびTsの以下の数式で表される多項関数により満足な精度で求値することができることを決定した。
【0025】
【数3】
Figure 0003556303
式中、
b=+(b1+b2.C)
c=−(c1+c2.C
d=−(d1+d2.C)
e=−f2.C
kp=1+(kp0−1).V/3000、そして
a、b1、b2、c1、c2,d1、d2、e1、e2、f2および
kp0は各々のモデルに対して決定されるべき定数であり、速度Vは毎分の回転数(rpm)で表わされ、時間間隔Δtは秒で表わされ、かつ温度Tr、Trn−1 およびTsは摂氏の度数で表される。
【0026】
係数a、b1、b2、c1、c2、d1、d2、e1、e2、f2およびkp0を決定するために、制動装置の試作品でテストを行うことができる。考慮中のテスト変数の値により特徴を表した多数の状況がテストベンチ上で再現され、時間間隔Δtにわたる電機子の温度の変化が測定される。各々の測定により、変数Trn−1 、V、CおよびTsに対するTrに関する関数の値が得られる。その後、方程式(1)を使用して測定結果に対して最良の近似値を付与する係数の集合(set)を例えばコンピュータで実行されている慣用の最小自乗法(least square fit method)により計算することができる。
【0027】
このようにして、方程式(1)と電機子の熱に関する挙動との間に良好な整合(match)が得られる。ある場合には、計算変数に巻線の温度Tsを含めないで、すなわち、f2=0と設定することにより満足な整合が得られる。これは固定子の温度変化が主として電機子温度および電力供給設定の変化に起因しており、従って、係数a、b1、b2、c1、c2、d1、d2、e1、e2およびkp0を適切に選択することにより変数Tsをしばしば省略することができる事実により説明することができる。
【0028】
求値方程式(1)に適用可能な係数およびデータの集合はテスト中のモデルの各々の制動装置内の制御装置12の記憶装置14に記憶されている。従って、運転中、電機子6の温度は特殊のセンサを設ける必要なく、従って、センサと付随した欠点を伴うことなく、プロセッサ13により実時間で求値することができる。
【0029】
この制動装置を作動させる前に方程式(1)により表されたアルゴリズムを初期状態にするために、例えば、電機子に固定子について測定された温度値Tsと等しいか、または温度計により表示された周囲温度と等しい出発温度Tr0を与えることができる。
【0030】
求値された温度Trは求値にひき続く時間間隔Δtの間の電力供給設定Cを確立するために使用される。例えば、プロセッサ13が求値された温度Trを値が記憶装置14に記憶された所定のしきい値Tmaxと比較し、制動装置の特定のモデルの関数として選択される。Trがしきい値Tmaxよりも小さい限りは、設定Cは制御レバー18の位置Pに対応し、車両の運転手は励磁される巻線の数を直接に設定して、それにより比例した量の制動トルクが得られるようにレバー18を操作する。測定温度Trがしきい値Tmaxを超えるときには、プロセッサ13が電力供給設定Cをレバー18の位置に相当する数よりも低い値に強制的に設定する。これにより、序文に説明したように、電機子6の発熱が制限され、そしてまた固定子1の発熱が制限され、これにより制動トルクの値が電機子の温度が上昇するにつれて減少する傾向があるので、車両の電源を制動トルクの値に過大な影響をおよぼさないように良好に管理することが可能になる。
【0031】
この挙動は時間が横軸に沿ってプロットされ、約15分のシミュレーション期間を表している図2のグラフにより例示してある。曲線Aは電機子の温度Trが運転手がレバー18の種々の異なる位置を利用する下り坂を走行する車両において変化する態様を示す。しきい値に到達したときに必ず、電力供給設定が減らされるので、実際問題として、温度Trが極めてまれな場合の除いて、しきい値Tmax(図示の例では約630°C)を決して超えない。ダッシュ曲線Bはもしも温度指示値が考慮に入れられなければ同じ状態の下でTrが変化する態様を示す。しきい値Tmaxを大きく超えており、付加的な制動トルクが得られるけれども、そのために電気消費量のかなり大きい増大が犠牲になっている。両方の曲線AおよびBの最終の冷却部分は制動装置の使用を止めた状態、すなわち、手動制御レバー18がその位置P=0に配置された状態に相当する。この段階の間、本発明はもしも電機子の温度が周囲温度まで冷却される前に新しい制動を行う必要が起これば、制動の目的のために直ちに利用できるトルクがもしも温度が考慮に入れられなければ利用できるであろうトルクよりも大きくなるように電機子の温度をより低く保つことを可能にする(曲線Aは曲線Bよりも低い)。
【0032】
本発明の変型実施例においては、センサ21が巻線の温度Tsを測定するために使用されない。プロセッサ13は上記の型式と同じ型式のアルゴリズムを使用して同様に温度Tsの値を求めるようにプログラムすることができる。
【0033】
この目的のために、以下の型式のより簡単な方程式を使用することが可能である。
【0034】
【数4】
Figure 0003556303
式中、TsおよびTsn−1 は瞬間tおよびtn−1 のそれぞれにおいて求値された巻線の温度を表わし、そしてg1およびg2はその他の係数について以前に説明したように実験に基づいて決定されるべき二つの定数である。
【0035】
別の一つの変数は巻線3に印加された電圧Uおよび巻線3に流れる電流Iを測定して巻線3の抵抗R=U/Iを計算することにより巻線3の温度Tsを決定することからなる。銅線で製造された巻線の典型的な場合については、巻線の抵抗は温度の関数として実質的に変化し、それゆえに温度の測定のために使用することができる。
【0036】
プロセッサ13もまた、本発明により、制動装置がパラメータV、Tr、Tsおよび電力供給設定Cの一つまたはそれ以上の値の関数として与えることができる制動トルクを予測するためにプログラムされている。
【0037】
一例として、この予測は以下の数式で表わされる形態を有する変数V、Tr、TsおよびCの関数を使用して良好な精度で行うことができる。
【0038】
【数5】
Figure 0003556303
式中、αおよびk1ないしk8は制動装置の各々のモデルに対して決定することが必要な定数である。一般に、指数αは0.3ないし0.5の範囲内にあり、定数k0およびk1は正であり、定数k2およびk3は負であると共に、その他の定数k4ないしk8の符号は一つのモデルから別のモデルまで変化することができる。
【0039】
定数αおよびk0ないしk8は制動装置の試作品にテストを行うことにより決定することができる。多数の状況(C、V、TrおよびTsの値)がテストベンチ上に再現され、そしてトルクCp1の対応した値が測定され、その後結果に対する最良の近似値を与える方程式(3)に対する定数の集合が例えばデイジタル最小自乗法により計算される。
【0040】
テストベンチ上で回転子2が回転速度を伝達するために十分に強力なモータと連結され、固定子1の支持台が受ける反力を測定することにより制動トリクが推定される。一定の速度Vおよび所定の電力供給設定を与えることにより行われる一連のテストにより図3に示した態様で測定される制動トルクを時間に対して変化させることができ、トルクの長期間の値は、代表的には、発熱のためにその当初の値の約3分の1まで減少せしめられる。それと同時に、プロセッサ13は方程式(1)および(2)に相当するアルゴリズムを実行して、それにより温度TrおよびTsを実時間で測定する。測定される電機子の温度Trの時間の経過に伴う変化の代表的な様相は、例えば、図4に曲線Iで示す通りである。従って、このテストシーケンスは定数α、k0ないしk8の選択を最適化するために後程使用される一連の5個一組の値(Cp1、C、V、Tr、Ts)を与える。
【0041】
もしも使用中に巻線3の温度Tsが方程式(2)を適用するときに求値されないで、測定されるとすれば、精度の低下を回避するように、温度Tsはテスト段階の間に当然測定されなければならない。
【0042】
同じことが電機子の温度Trにもあてはまる。ある制動装置においては、この温度は上記に詳細に説明した例の場合のように求値するかわりにセンサにより測定することができる。このような状況の下では、この温度もまたテスト中に測定されなければならず、それにより例えば図4に曲線IIで示した様相を有する時間の経過に伴う変化が得られる。曲線Iと曲線IIとの間に存在することがある差異は方程式(1)により与えられた近似値の誤差に起因するか、または回転する電機子の温度を検出することが困難であれば不可避である測定の誤差に起因する。テスト中および使用中に電機子の温度Trを決定するために同じ方法を使用することが肝要である。その理由は高温度において差異が最大になり、かつ温度の関数としてのトルクの変動が高温度において最大になるからである。
【0043】
最適化された定数α、k0ないしk8および方程式(3)を適用するために有用なデータはテストされたモデルの各々の制動装置の制御装置12の記憶装置14に記憶されている。使用中、プロセッサ13は励磁装置9を制御すりために前述した方法で決定された値を有する電力供給設定Cを与える方程式(3)を適用することができる。このようにして、制動装置により実際に発生せしめられたトルクX=Cp1が予測される。この予測Cp1は出力インタフエース15を経て例えば車両の種々の制動源の集中管理を行う外部装置22に送られる。この予測Cp1はまた、運転手が制動装置の効果を知り、そして適切な場合に必要な処置をとることができるように表示することができる。
【0044】
プロセッサ13は電力供給設定Cに対して一つまたはそれ以上の所定の値を使用して方程式(3)を使用することができる。従って、予測はC=1、2、3または4における励磁のために利用できるトルクX=Cp11、Cp12、Cp13、またはCp14で構成される。図1に示した例においては、実際のトルクCp1の予測に加えて、4つの予測Cp11ないしCp14が外部装置22に送られる。トルクが方程式(3)の変数Cに正比例するので、外部装置22にプロセッサ13により確立された電力供給設定Cおよび予測されたトルクの例えばCp11のみを供給することもまた可能である。
【0045】
本発明を種々の型式の渦電流制動装置に適用することができ、かつある場合には、誘導子巻線がこの明細書に例示された態様と全く異なる態様で制御される方法を適用することも可能であることが観察されよう。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の制動装置の回路図。
【図2】図1に示した種類の制動装置において電機子の温度が時間の関数として変化することができる態様の一例を示したグラフ。
【図3】図1に示した種類の装置においてトルクを計算するときに使用される定数を決定する一つの方法を示したグラフ。
【図4】図1に示した装置においてトルクを計算するときに使用される定数を決定する別の一つの方法を示したグラフ。
【符号の説明】
1 固定子組立体
2 回転子組立体
3 誘導子巻線
4 穴
6 電機子
7 フィン付き構造体
8 蓄電池
9 励磁装置
11 継電器
12 制御装置
13 プロセッサ
14 記憶装置
15 出力インタフェース
16 インタフェース回路
17 インタフェース回路
18 制御部材
19 回転速度計
21 センサ
22 外部装置

Claims (8)

  1. 固定子組立体と車両の伝動軸に取り付けられた回転子組立体とを具え、
    一方の組立体は誘導子巻線を有しかつ他方の組立体は誘導子巻線に対面した電機子を有しており、
    さらに電力供給設定に反応して励磁装置が車両の電源から誘導子巻線を選択的に励磁し、
    回転子組立体の回転速度と電機子の温度と電力供給設定についての少なくとも1個の値の関数としてプロセッサ装置が制動装置により供給できる制動トルクを予測し、
    制御部材が複数の位置を有しており、
    制御手段が制御部材の位置の関数として電力供給設定を確立し、
    回転子組立体の回転速度と電機子の温度と誘導子巻線の温度と制御手段により確立された電力供給設定の値との関数としてプロセッサ装置が制動トルクを予測して制動装置により実際に生み出される制動トルクを予測し、
    所定の電力供給設定の値について制動装置により生み出されるであろう制動トルクの少なくとも1個の値をプロセッサ装置が予測する
    ことを特徴とする車両用過電流制動装置。
  2. 固定子組立体が誘導子巻線を有しかつ回転子組立体が電機子を有しており、
    プロセッサ装置が連続した瞬間における電機子の温度をリアルタイムで評価し、
    複数の計算変数の関数として各瞬間における電機子の温度がプロセッサ装置により評価され、
    該変数が先行する瞬間での評価された電機子温度と回転子組立体の回転速度と励磁装置に印加された電力供給設定とを含んでおり、
    かくして予測された電機子温度が制動トルクの予測に際して考慮に入れられる
    ことを特徴とする請求項1に記載の制動装置。
  3. さらに計算変数が誘導子巻線の温度を含んでいる
    ことを特徴とする請求項2に記載の制動装置。
  4. 誘導子巻線温度反応手段が制御手段に計算変数に含まれた誘導子巻線温度を表わす信号を印加する
    ことを特徴とする請求項3に記載の装置。
  5. 先行する瞬間に評価された電機子温度および誘導子巻線温度の関数として計算変数に含まれる誘導子巻線温度が連続する各瞬間においてプロセッサ装置により評価される
    ことを特徴とする請求項3に記載の装置。
  6. プロセッサ装置が各瞬間における電機子の温度を、式
    Figure 0003556303
    (b=+(b1+b2.C)、
    c=−(c1+c2.C)、
    d=−(d1+d2.C)、
    e=+(e1+e2.C)、
    f=−f2.C、
    kp=1+(kp0−1).V/3000、
    a、b1、b2、c1、c2、d1、d2、e1、e2、f2およびkp0:定常係数、
    Δt:連続するある瞬間と先行する瞬間との間の時間間隔、
    V:回転子組立体の回転速度、
    C:励磁装置に印加された電力供給設定であって電力を印加された誘導子巻線の個数に等しい、
    Ts:誘導子巻線温度、
    TrnおよびTrn-1:それぞれ連続するある瞬間と先行する瞬間における電機子温度)
    により評価する
    ことを特徴とする請求項3に記載の装置。
  7. 制御部材が複数の位置を有しており、
    制御部材の位置の関数として制御手段が電力供給設定を確立し、
    プロセッサ装置により評価された電機子温度が所定のしきい値を超えた場合にはいつでも制御手段が励磁装置に印加される電力供給設定を自動的に変更し、
    その結果励磁装置が電源を多数の誘導子巻線に接続し、
    誘導子巻線の個数が制御部材の位置に対応する個数より小さい
    ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
  8. プロセッサ装置が、式
    Figure 0003556303
    (α、K0、K1、K2、K3、K4、K5、K6、K7およびK8:定常係数、
    C:考慮に入れられた電力供給設定の値、
    V:回転子組立体の回転速度、
    TrおよびTs:それぞれ電機子温度と誘導子巻線温度)
    に基づいて制動トルクについての値Xを予測する
    ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
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