JP3555573B2 - 加熱殺菌システムの監視方法及び装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、缶びん詰及びレトルト食品等の製造における加熱殺菌システムを監視する方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
缶びん詰及びレトルト食品の製造にあたっては、食品等の内容物を充填した缶や包装体等の容器を、高圧蒸気で一定時間加熱する殺菌処理が行われている。このような加熱殺菌システムにおいては、各容器が確実に加熱殺菌されたことを監視する必要がある。
【0003】
そこで、従来は、内容物が充填された容器に示温紙を貼付したり、示温インクで直接印刷を施したりして監視することが提案されていた。示温インクは、熱履歴により変色するインクであり、示温紙には、示温インク印刷又は含浸されており、示温紙が示す色の変化により容器の加熱状態を確認して、殺菌状態を監視することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、示温紙を用いた従来の監視方法では、個々の容器に示温紙を貼り付け、さらに、加熱殺菌処理後に、個々の容器から示温紙を剥がす必要がある。このため、示温紙の貼り付けや取外しの処理に手間がかかってしまうという問題点があった。
また、使用済みの示温紙は、通常、再利用されることなく使い捨てにされていた。
【0005】
また、示温インクを直接容器に塗布する場合には、示温紙を取り外す手間はないものの、多数の個々の容器に塗布するので手間がかかるという問題は依然としてあった。また、変色後の示温インクが各容器に残り、外観を損ねるという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、加熱処理が行われたことを容易に監視して、加熱処理システムの信頼性の向上を図ることができる技術の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的の達成を図るため、本発明の請求項1に係る加熱処理システムの監視方法によれば、内容物を充填した容器を複数個ずつ収納したバスケットごとに、加熱殺菌処理を行うシステムを監視するにあたり、
前記バスケットごとに監視札を取り付けるとともに、前記バスケットごとに識別コードを付与した後、少なくとも、
前記監視札に、前記加熱殺菌処理の際の加熱温度では少なくとも不可逆的に変色する示温インクを塗布する工程、
前記バスケットの加熱殺菌処理の前に、前記識別コードを認識するとともに、前記監視札に前記示温インクが塗布されていることを確認する工程、
前記加熱殺菌処理の後に、前記識別コードを認識するとともに、前記示温インクが変色したことを確認する工程、
を繰り返す方法としてある。
【0008】
このように、本発明の加熱殺菌システムの監視方法によれば、バスケットごとに識別コードが付与され、かつ、示温インクが塗布された監視札を、バスケットごとに取り付けて、示温インクの変色を確認するので、容器ごとに示温インクで印刷したり、示温紙を貼り付けたりする場合に比べて、容易に加熱処理が行われたことを監視して、加熱処理システムの信頼性の向上を図ることができる。
【0009】
また、請求項2記載の発明によれば、変色が、退色又は消色である方法としてある。
このように、変色が退色又は消色であれば、示温インクの変色を容易に判断することができる。例えば、退色又は消色により明度が変化するので、白黒画像における示温インクの明度の変化として、示温インクの変色を判断することができる。
また、示温インクが退色又は消色すれば、示温インクを重ね塗りして、監視札を再利用することが容易となる。
【0010】
また、請求項3記載の発明によれば、示温インクの塗布は、インクジェットプリンタによって行う方法としてある。
このようにインクジェットプリンタを用いれば、監視札に非接触で示温インクを塗布できるので、コンベアで搬送中のバスケットであっても、簡単に監視札に示温インクを塗布して、示温パターンを印刷することができる。
【0011】
また、請求項4記載の発明によれば、監視札に、互いに異なる温度で変色する複数種類の示温インクを、互いに異なる領域に塗布する方法としてある。
このように複数種類の示温インクを重ねずに塗布すれば、加熱殺菌の際の温度上昇が不十分な場合に、不十分な程度を容易に把握することができる。
【0012】
また、請求項5記載の発明によれば、加熱処理の前後での示温インクの変色の確認を、バスケットの搬送中に行う方法としてある。
このように搬送中に確認を行えば、バスケットの搬送を止めずに監視することができるので、加熱殺菌処理速度を低下させることなく、容易に監視することができる。
【0013】
また、請求項6記載の発明によれば、バスケットが殺菌室へ搬入される直前に、当該バスケットの監視札の識別コードを認識し、当該識別コードの認識時刻を搬入時刻として記録し、
バスケットが殺菌室から搬出された直後に、当該バスケットの監視札の識別コードを認識し、当該識別コードの認識時刻を搬出時刻として記録し、
搬入時刻と搬出時刻との時間差として、バスケットの殺菌室における滞在時間を確認する方法としてある。
【0014】
このように、加熱処理前後の示温インクの変色の確認に加えて、バスケットの殺菌室における滞在時間を確認すれば、加熱殺菌処理が十分に行われているか否かをより確実に監視することができる。
【0015】
また、本発明の請求項7記載の加熱処理システムの監視装置によれば、内容物を充填した容器を複数個ずつバスケットに収納する容器収納部と、
容器をバスケットごと加熱殺菌処理する殺菌室と、
加熱殺菌処理済みの容器をバスケットから取り出す容器取り出し部と、
容器収納部から殺菌室へバスケットを搬送し、殺菌室から容器取出部へ前記バスケットを搬送する搬送部とを備えた加熱殺菌システムを監視する装置であって、
バスケットの加熱殺菌処理の前に、バスケットに付与された識別コードを認識するとともに、バスケットに取り付けられた監視札に、加熱殺菌処理の際の加熱温度では少なくとも不可逆的に変色する示温インクが塗布されていることを確認する処理前監視部と、
加熱殺菌処理の後に、識別コードを認識するとともに、示温インクが変色したことを確認する処理後監視部とを備える構成としてある。
【0016】
このように、バスケットごとに取りつけられた監視札に塗布されている示温インクの変色を、処理前監視部及び処理後監視部により確認するので、容器ごとに示温インクを塗布したり、示温紙を貼り付けたりする場合に比べて、容易に加熱処理が行われたことを監視して、加熱処理システムの信頼性の向上を図ることができる。
【0017】
また、本発明の請求項8記載の加熱処理システムの監視装置によれば、内容物を充填した容器を複数個ずつバスケットに収納する容器収納部と、前記容器を前記バスケットごと加熱殺菌処理する殺菌室と、前記加熱殺菌処理済みの容器を前記バスケットから取り出す容器取り出し部と、前記容器収納部から前記殺菌室へ前記バスケットを搬送し、前記殺菌室から前記容器取出部へ前記バスケットを搬送する搬送部とを備えた加熱殺菌システムを監視する装置であって、前記バスケットに取り付けられ、示温インキを繰り返して塗布することが可能な監視札と、前記バスケットの加熱殺菌処理の前に、前記バスケットに付与された識別コードを認識するとともに、前記バスケットに取り付けられた前記監視札に、前記加熱殺菌処理の際の加熱温度では少なくとも不可逆的に変色する示温インクが塗布されていることを確認する処理前監視部と、前記加熱殺菌処理の後に、前記識別コードを認識するとともに、前記示温インクが変色したことを確認する処理後監視部とを備える構成としてある。
このように、加熱処理の都度、示温インクを繰り返して塗布し、監視札を繰り返して使用することにより、監視札の使い捨てを回避することができる。
【0018】
また、請求項9記載の発明によれば、監視札として、白色陶磁器板を用いている。
このように、白色陶磁器板を用いれば、インクの付着性が良好であるとともに、監視札の熱や蒸気に対する耐久性が高まるので、監視札の繰返し使用に好適である。さらに、示温インクを何回も重ねて塗布した場合には、示温インクをいったん除去することが好ましいが、白色陶磁器板を用いれば、塗布された示温インクを容易に除去することができる。
【0019】
また、請求項10記載の発明によれば、バスケットとともに加熱殺菌処理された監視札に、再度、示温インクを塗布する準備部を備える構成としてある。
このように、準備部を設ければ、監視札を容易に再利用することができ、バスケットを繰返し連続使用することができる。
【0020】
また、請求項11記載の発明によれば、処理前監視部を、容器収納部から殺菌室へバスケットを搬送する経路に沿って設け、
処理後監視部を、殺菌室から容器収納部へバスケットを搬送する経路に沿って設ける構成としてある。
【0021】
このような構成とすれば、搬送中のバスケットが、処理前監視部及び処理後監視部の前を通過する際に、バスケットの搬送を止めることなく、監視札の示温インクの変化を確認することができる。その結果、加熱殺菌処理速度を低下させることなく、容易に監視することができる。
【0022】
また、請求項12記載の発明によれば、殺菌室の搬入口の脇に、搬入監視部を設け、搬入監視部は、殺菌室に搬入されるバスケットの監視札の識別コードを認識し、当該識別コードの認識時刻を搬入時刻として記録し、
殺菌室の搬出口の脇に、搬出監視部を設け、搬出監視部は、殺菌室から搬出されたバスケットの監視札の識別コードを認識し、当該識別コードの認識時刻を搬出時刻として記録する構成としてある。
【0023】
このように、搬入監視部及び搬出監視部を設ければ、加熱処理前後での示温インクの変色の確認に加えて、バスケットの殺菌室における滞在時間を確認することが可能となり、加熱殺菌処理が十分に行われているか否かをより確実に監視することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
[第一実施形態]
まず、図1の(A)に、加熱殺菌システムの監視に用いる監視札の一例を示す。本実施形態では、監視札1として、白色陶磁器板(以下、「タイル」とも称する。)を使用する。監視札1は、バスケットの外側面の適宜箇所に取り付けておく。そして、図1の(A)に示すように、この監視札1には、識別コードとしてのバーコード2と、示温パターン3とが印刷されている。
【0025】
バーコード2には、監視札の取り付けられるバスケットを識別する番号や、バスケットに収納される容器の種類や、その容器に充填される内容物の種類等を特定するための情報がコード化して記録されている。
【0026】
また、示温パターン3は、示温インクを塗布して形成されている。示温インクは、加熱殺菌処理の際の加熱温度で不可逆的に変色する。本実施形態では、示温インクとして、メタノールとメチルエチルケトン(MEK)とを3:7の割合で混合した溶剤に、呈色剤としてメチルイエロー(MY)0.5%、発色助剤として、ブロモチモールブルー(BTB)3%、バインダー樹脂としてロジン変性マレイン酸樹脂25%を溶解し、ついで導電剤としてヨウ化ナトリウム(NaI)1%を溶解した組成物を用いた。
【0027】
そして、この組成物を粗さ1μmのフィルターで濾過後、インクジェットプリンタを使用して、監視札1に塗布して示温パターンを形成した。ここでは、五つのブロック3a〜3e内に、それぞれドット状に同一の示温インクを塗布し、示温パターン3を印刷している。
【0028】
この示温パターン3は、塗布した示温インクを乾燥させた状態で、赤色に発色する。そして、この示温パターン3は、少なくとも加熱殺菌温度の115℃に曝されると、図1の(B)に示すように、消色する。
【0029】
次に、図2を参照して、加熱殺菌システム及びその監視装置の構成と、監視札1を用いた監視方法の一例について説明する。
図2に示すように、本実施形態における加熱殺菌システムは、容器収納部21と、殺菌室20と、容器取出部22とを備えている。
【0030】
容器収納部21では、内容物を充填した容器(図示せず)を複数個ずつバスケット10に収納する。
なお、バスケット10には、バスケットの外部側面に、予め準備部23で示温パターンが印刷された、図1の(A)に示した監視札1が取り付けてある。
また、殺菌室20では、容器をバスケット10ごと、ピーク温度115℃で20分間、高温蒸気殺菌する。本実施形態では、殺菌室20として、高温蒸気殺菌釜を二つ設けている。そして、二つの殺菌室20を交互に使用することにより、加熱殺菌処理を効率的に行っている。
そして、容器取出部22では、加熱殺菌処理済みの容器をバスケットから取り出す。
【0031】
さらに、この加熱殺菌システムは、容器収納部21から殺菌室22へバスケット10を搬送し、殺菌室20から容器取出部22へ加熱殺菌済みのバスケット10を搬送する搬送部を備えている。本実施形態では、搬送部として、コンベア11、13、15及び17と、方向転換機12及び16と、トラバーサ14とを設けている。
【0032】
そして、バスケット10は、容器収納部21からコンベア11、方向転換機12、コンベア13及びトラバーサ14を順次に経て、殺菌室20へ搬入される。ここでは、トラバーサ14は、バスケット10を五つずつ殺菌室20へ搬入する。さらに、加熱殺菌後のバスケット10は、トラバーサ14、コンベア15、方向転換機16及びコンベア17を順次に経て、容器取出し部22へ搬入される。
【0033】
また、本実施形態では、加熱殺菌システムの監視装置として、処理前監視部30、処理後監視部40及び準備部23を備えている。
【0034】
また、処理前監視部30は、容器収納部21から殺菌室20へバスケット10を搬送する経路に沿って設けられている。具体的には、処理前監視部30は、コンベア13の脇に設けられている。
また、処理前監視部30は、バーコードリーダ31とCCDカメラ32とにより構成されている。そして、処理前監視部30は、バスケット10の加熱殺菌処理の前に、バーコードリーダ31によりバーコード2を認識するとともに、CCDカメラ32により監視札1に示温インクが塗布された示温パターン3が印刷されていることを確認する。
【0035】
また、処理後監視部40は、殺菌室20から容器収納部22へバスケット10を搬送する経路に沿って設けられている。具体的には、処理後監視部40は、コンベア15の脇に設けられている。
また、処理後監視部40も、バーコードリーダ41とCCDカメラ42とにより構成されている。そして、処理後監視部40は、バスケット10の加熱殺菌処理の後に、バーコードリーダ41によりバーコード2を認識するとともに、CCDカメラ32により示温パターン3の示温インクが消色したことを確認する。具体的には、CCDカメラ32で示温パターンの面積を計測することにより、消色状態を確認する。
【0036】
また、準備部23では、処理後監視部40による確認後に、バスケット10に取り付けられた監視札に、再度、示温インクを塗布し、バスケット10を容器収納部21へ送る。
【0037】
さらに、本実施形態では、各殺菌室20の扉20aの脇に、搬入出監視部50を設けている。搬入出監視部50は、殺菌室20に搬入されるバスケット10の監視札1のバーコード2を認識し、そのバーコード2の認識時刻を搬入時刻として記録し、さらに、殺菌室20から搬出されたバスケット10の監視札1のバーコード2を認識し、そのバーコード2の認識時刻を搬出時刻として記録する。その結果、搬入時刻と搬出時刻との時間差として、バスケットの殺菌室における滞在時間を確認することができる。
【0038】
なお、搬入出監視部50は、搬入監視部と搬出監視部とに分けて設けてもよい。また。殺菌室20の搬入口と搬出口とが異なる場合には、搬入口と搬出口とに個別に監視部を設置し、搬入時刻と搬出時刻をそれぞれ記録するとよい。
【0039】
次に、再び図2を参照して、加熱殺菌システムの処理の流れと、監視方法について説明する。
まず、バスケット10は、準備部23でバスケットの外部側面に取り付けられた監視札1に、示温パターン3が印刷される。図1(A)に示すように、監視札1には、バスケットを識別する識別コード2も印刷され付与されている。
そして、容器収納部21において、バスケット10に複数の容器を収容する。
【0040】
次に、バスケット10は、コンベア11、方向転換機12及びコンベア13により、トラバーサ14へ搬送される。そして、バスケット10がコンベア13で搬送中に、コンベア13脇に設置された処理前監視部30によって、監視札1が読み取られる。すなわち、監視札1上のバスケット10が特定されるバーコード2が認識されるとともに、示温パターン3が印刷されていることが確認される。
【0041】
続いて、トラバーサ14は、バスケット10を五ケースずつ保持して移動し、殺菌室20の前方に位置決めする。そして、殺菌室20の扉20aが開くと、トラバーサ14はバスケット10を殺菌室20内へ搬入する。この搬入の際に、扉20aの脇に設けられた搬入出監視部50により、搬入時刻が記録される。そして、扉20aが閉じられて、ピーク温度115℃で20分間、高温蒸気殺菌が行われる。
【0042】
高温蒸気殺菌後、殺菌室20の扉20aが開かれ、バスケット10が再びトラバーサ14上へ搬出される。この搬出の際に、搬入出監視部50により、搬出時刻が記録される。そして、制御部(図示せず)が、搬入時刻と搬出時刻との時間差を確認し、この時間差が、例えば、加熱時間の20分間に満たない場合は、加熱不良と判断する。加熱不良と判断した場合、必要に応じて警報を発したり、搬送ラインを止める。
【0043】
加熱不良と判断されなかった場合には、トラバーサ14上のバスケットは、コンベア15、方向転換機16及びコンベア17により、容器取出部22へ搬送される。そして、バスケット10がコンベア15で搬送中に、コンベア15脇に設置された処理後監視部40によって、監視札1が読み取られる。すなわち、監視札1上のバスケット10が特定されるバーコード2が認識されるとともに、示温パターン3が加熱により消色していることが確認される。
【0044】
この確認の結果、示温パターン3が消色していない場合は、制御部が加熱不良と判断する。加熱不良と判断した場合、必要に応じて警報を発したり、搬送ラインを止める。
【0045】
加熱不良と判断されなかった場合には、容器取出部22において、バスケット10から容器を取出す。取出された容器は、次の工程へ送り出される。また、空となったバスケット10は、準備部23へ送られる。
準備部23においては、バスケット10に取り付けられたままの監視札1に、示温インクを再び塗布し、示温パターンを印刷する。
【0046】
なお、示温インクが何回も重ねて塗布されて、次の示温インクの付着あるいは示温パターンの読み取りに支障がある等の場合には、いったん、監視札1に塗布されている示温インクを除去して、監視札1を再使用する。また、示温インクが変色していない場合にも、示温インクを除去してから再使用する。
【0047】
そして、バスケット10と監視札1とは、個別に容器収納部21へ送られる。容器収納部21では、監視札1に印刷されたバーコード2の内容と一致する容器が収納され、新たな容器が収納されたバスケット10が、再び殺菌室20へ搬送される。
【0048】
[第二実施形態]
上述した第一実施形態では、監視札に一種類の示温インクを塗布して示温パターンを印刷した例について説明したが、第二実施形態では、監視札に、互いに異なる温度で変色する複数種類の示温インクを、互いに異なる領域に塗布している。ここでは、図1の(A)に示した示温パターン3の各ブロック3a〜3eごとに、異なる種類の示温インクを塗布している。そして、ブロック3aに消色温度がもっとも低い示温インクを塗布し、次のブロックに順次に消色温度が高い示温インクを塗布し、ブロック3eに消色温度がもっとも高い示温インクを塗布しておく。
【0049】
このように、複数種類の示温インクを塗布しておいた場合に、加熱温度が所定の温度よりも僅かに低い場合には、例えば、図3の(A)に示すように、ブロック3eの示温パターンのみが消色せずに残ることになる。さらに加熱温度が低い場合には、例えば、図3の(B)に示すように、低温で消色するブロック3a及び3bの示温パターンのみが消色し、ブロック3c、3d及び3eの示温パターンが残ることになる。このように、消色しなかったブロックの合計面積をCCDカメラで計測することにより、加熱が不十分な程度を容易に把握することができる。
【0050】
上述した実施の形態においては、本発明を特定の条件で構成した例について説明したが、本発明は、種々の変更を行うことができる。例えば、上述した実施の形態においては、監視札としてタイルを用いた例について説明したが、本発明では、監視札の材料はこれに限定されない。また、監視札上の識別コード及び示温パターンの配置及び形状も図1の(A)に示したものに限定されず、任意好適なものとすることができる。
【0051】
また、識別コードと、示温インクが塗布された監視札とは、それぞれ別体であってもよい。さらに、識別コードは、これを印刷したラベルを監視札又は直接バスケットに貼り付けてもよい。また、示温パターンを印刷する代わりに、バスケットごとに示温紙を使用することもできる。この場合には、監視札を取り外し可能としておくとよい。このようにすれば、バスケットに別の監視札を取りつけ、バスケットを繰返し連続使用することができる。
【0052】
また、上述した実施形態では、監視札上の識別コードとして、バーコードを印刷した例について説明したが、本発明では、識別コードはバーコードに限定されず、例えば、二次元バーコードを使用しても良い。
【0053】
また、上述した実施形態では、示温インクが加熱殺菌温度に曝されることにより消色する例について説明したが、本発明では、示温インクの変色は消色に限定されず、高温に曝されると退色するものや、他の色へ変色する示温インクを使用してもよい。
【0054】
また、上述した実施形態では、示温インクの組成の一例について説明したが、その他の例として、例えば、呈色剤として、メチルイエロー(MY)の他に、例えば、クリスタルバイオレットラクトン(CVL)を使用してもよい。
また、発色助剤として、ブロモチモールブルー(BTB)の他に、例えば、クロロフェノールレッド(CPR)、ブロモフェノールブルー(BPB)、ブロモクレゾールグリーン(BCG)、サルチル酸(SA)、サルチル酸亜鉛(SAZn)、チモールブルー(TB)又はナフトールフタレン(NP)を使用してもよい。
なお、本発明では、示温インクの構成はこれに限定されない。
また、樹脂として、変性マレインの他に、例えば、変性フェノールやアクリル樹脂等を使用してもよい。
【0055】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、識別コードが印刷され、かつ、示温インクが塗布された監視札を、バスケットごとに取り付けて、示温インクの変色を確認するので、容器ごとに示温紙を貼り付ける場合に比べて、容易に加熱処理が行われたことを監視して、加熱処理システムの信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は、加熱処理前の監視札を示し、(B)は、加熱処理後の監視札を示す。
【図2】加熱処理システム及びその監視装置の構成を説明するための構成図である。
【図3】(A)及び(B)は、加熱が不十分な場合の監視札の残存示温パターンを示す。
【符号の説明】
1 監視札
2 バーコード
3 示温パターン
10 バスケット
11、13、15、17 コンベア
12、16 方向転換機
14 トラバーサ
20 殺菌室
20a 扉
21 容器収納部
22 容器取出部
23 準備部
30 処理前監視部
31 バーコードリーダ
32 CCD
40 処理後監視部
41 バーコードリーダ
42 CCD
50 搬入出監視部

Claims (12)

  1. 内容物を充填した容器を複数個ずつ収納したバスケットごとに、加熱殺菌処理を行うシステムを監視するにあたり、
    前記バスケットごとに監視札を取り付けるとともに、前記バスケットごとに識別コードを付与した後、少なくとも、
    前記監視札に、前記加熱殺菌処理の際の加熱温度では少なくとも不可逆的に変色する示温インクを塗布する工程、
    前記バスケットの加熱殺菌処理の前に、前記識別コードを認識するとともに、前記監視札に前記示温インクが塗布されていることを確認する工程、
    前記加熱殺菌処理の後に、前記識別コードを認識するとともに、前記示温インクが変色したことを確認する工程、
    を繰り返すことを特徴とした加熱殺菌システムの監視方法。
  2. 前記変色が、退色又は消色であることを特徴とする請求項1記載の加熱殺菌システムの監視方法。
  3. 前記示温インクの塗布は、インクジェットプリンタによって行うことを特徴とする請求項1又は2記載の加熱殺菌システムの監視方法。
  4. 前記監視札に、互いに異なる温度で変色する複数種類の示温インクを、互いに異なる領域に塗布することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の加熱殺菌システムの監視方法。
  5. 前記加熱処理の前後での前記示温インクの変色の確認を、前記バスケットの搬送中に行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の加熱殺菌システムの監視方法。
  6. 前記バスケットが殺菌室へ搬入される直前に、当該バスケットの監視札の識別コードを認識し、当該識別コードの認識時刻を搬入時刻として記録し、
    前記バスケットが前記殺菌室から搬出された直後に、当該バスケットの監視札の識別コードを認識し、当該識別コードの認識時刻を搬出時刻として記録し、
    前記搬入時刻と前記搬出時刻との時間差として、前記バスケットの前記殺菌室における滞在時間を確認することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の加熱殺菌システムの監視方法。
  7. 内容物を充填した容器を複数個ずつバスケットに収納する容器収納部と、
    前記容器を前記バスケットごと加熱殺菌処理する殺菌室と、
    前記加熱殺菌処理済みの容器を前記バスケットから取り出す容器取り出し部と、
    前記容器収納部から前記殺菌室へ前記バスケットを搬送し、前記殺菌室から前記容器取出部へ前記バスケットを搬送する搬送部とを備えた加熱殺菌システムを監視する装置であって、
    前記バスケットの加熱殺菌処理の前に、前記バスケットに付与された識別コードを認識するとともに、前記バスケットに取り付けられた監視札に、前記加熱殺菌処理の際の加熱温度では少なくとも不可逆的に変色する示温インクが塗布されていることを確認する処理前監視部と、
    前記加熱殺菌処理の後に、前記識別コードを認識するとともに、前記示温インクが変色したことを確認する処理後監視部と
    を備えることを特徴とする加熱殺菌システムの監視装置。
  8. 内容物を充填した容器を複数個ずつバスケットに収納する容器収納部と、
    前記容器を前記バスケットごと加熱殺菌処理する殺菌室と、
    前記加熱殺菌処理済みの容器を前記バスケットから取り出す容器取り出し部と、
    前記容器収納部から前記殺菌室へ前記バスケットを搬送し、前記殺菌室から前記容器取出部へ前記バスケットを搬送する搬送部とを備えた加熱殺菌システムを監視する装置であって、
    前記バスケットに取り付けられ、示温インキを繰り返して塗布することが可能な監視札と、
    前記バスケットの加熱殺菌処理の前に、前記バスケットに付与された識別コードを認識するとともに、前記バスケットに取り付けられた前記監視札に、前記加熱殺菌処理の際の加熱温度では少なくとも不可逆的に変色する示温インクが塗布されていることを確認する処理前監視部と、
    前記加熱殺菌処理の後に、前記識別コードを認識するとともに、前記示温インクが変色したことを確認する処理後監視部と
    を備えることを特徴とする加熱殺菌システムの監視装置。
  9. 前記監視札が、白色陶磁器板であることを特徴とする請求項7又は8記載の加熱殺菌システムの監視装置。
  10. 前記バスケットとともに加熱殺菌処理された監視札に、再度、前記示温インクを塗布する準備部を備えることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の加熱殺菌システムの監視装置。
  11. 前記処理前監視部を、前記容器収納部から前記殺菌室へ前記バスケットを搬送する経路に沿って設け、前記処理後監視部を、前記殺菌室から前記容器収納部へ前記バスケットを搬送する経路に沿って設けることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の加熱殺菌システムの監視装置。
  12. 前記殺菌室の搬入口の脇に、搬入監視部を設け、前記搬入監視部は、前記殺菌室に搬入されるバスケットの監視札の識別コードを認識し、当該識別コードの認識時刻を搬入時刻として記録し、前記殺菌室の搬出口の脇に、搬出監視部を設け、前記搬出監視部は、前記殺菌室から搬出されたバスケットの監視札の識別コードを認識し、当該識別コードの認識時刻を搬出時刻として記録することを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の加熱殺菌システムの監視装置。
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