JP3555027B2 - 旋回式推進装置のプラットホーム構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、タグボート等の作業船に多く採用されている旋回式推進装置のプラットホーム構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、タグボート等の作業船において、推進機と舵の両方の機能を併せ持っている旋回式の推進装置が多く採用されている。この旋回式推進装置は、図4に示す従来の旋回式推進装置の一部断面した側面図のように、ダクト51を設けたプロペラ52を具備するプロペラポッド53を、ストラット54を介してプラットホーム55から吊り下げた状態で設けたものであり、旋回軸56となるストラット54を中心として、旋回用歯車57によりプロペラ52の向きを360°任意の方向に変えることができるように構成されている。
【0003】
ところで、このような旋回式推進装置58は、図5に示すように、船体59に設けられた取付開口60に上方から挿入して固定することによって取付けられており、取付けた状態ではプラットホーム55の下面が船底の一部となっている。
【0004】
そのため、前記プラットホーム55の下面は、特開平8−207896号公報に記載されているように、船底に位置するので船底形状に合わせた曲面形状に加工されている。このようなプラットホーム55の下面形状の加工は、一般的に、船底の設計図が完成した後でプラットホームの下面形状を決定して製造している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記プラットホーム55は、通常、油圧装置の油タンクとして用いられ、このプラットホーム55上に、ギヤボックス19や他の補器類が配置されている。そのため、前記したようにプラットホーム55の下面を船底61の形状に合わせて加工した後に、これらの補器類等を配置して装置全体を製作する期間はプラットホーム55の製作期間に大きく左右され、全体の作業に非常に多くの時間を要している。
【0006】
つまり、プラットホーム55の下面を船底形状に合わせて曲面形状に加工した後、このプラットホーム55に補器類等を設けなければならないので、プラットホーム55の製作に多くの時間を要し、それに伴い、装置全体の製作期間短縮の妨げになっている。すなわち、推進装置58全体の製作期間はプラットホーム55の製作期間に大きく左右されている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、前記課題を解決するために、本願発明は、ストラットの下部に設けた推進機を船底から突出するように取付けるプラットホームを設け、該プラットホームを半径方向に二重構造となった内側のタンクと外側のスペーサとから構成し、該タンクの下面をストラットが取付可能な小径で形成し、該タンクの上面をプラットホーム上に配置する全ての機器を設けることができる大径で形成し、該プラットホーム上に配置する全ての機器を該タンク上に設け、前記ストラットの上部に旋回部材を設けるとともに、該旋回部材を回転可能に支持する旋回用軸受を前記タンクの上部内周に設け、該旋回部材を回転させる駆動機をタンクの上面に設けている。このようにプラットホームを二重構造とし、内側のタンクにモータ等の全ての補器類を設け、外側のスペーサと一体化してプラットホームとなるように構成することにより、プラットホームの製作期間を短縮化することができるので、装置全体の製作期間の短縮及び重量軽減もできる。
【0008】
しかも、前記タンクの下面をストラットが取付可能な小径で形成し、該タンクの上面をプラットホーム上に配置する全ての機器を設けることができる大径で形成しているので、内側のタンク上に全ての機器を設けることができるとともに、タンクの下面を小径にしてプラットホームを軽量化することができる。
【0009】
また、前記ストラットの上部に旋回部材を設け、該旋回部材を回転させる駆動機をタンクの上面に設けているので、駆動トルクを要する駆動機をプラットホームの上面に設けてプラットホームの軽量化を計ることができる。
【0010】
さらに、前記タンクの下部とスペーサとの間に旋回用シール装置を設け、該旋回用シール装置の吊下げ部材となるタンク側壁を前記旋回部材の旋回用軸受に近接して配置すれば、旋回用シール装置を吊下げる支持部を旋回用軸受に近接したタンク側壁とすることができるので、プロペラ推力によるプラットホームの変形で生じる旋回部材の旋回軸芯と旋回用シール装置軸芯との相対変位を最小限にすることができる。
【0011】
また、前記スペーサを、天板と底板と連結板とからなる枠体で形成すれば、プラットホームの外側に位置するスペーサを軽量化することができるので、プラットホーム全体の軽量化も可能となる。
【0012】
その上、前記スペーサの下面形状を、船底の形状にほぼ連続するように形成すれば、推進装置を設けた船底部における流体抵抗を軽減することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本願発明の一実施形態を示す旋回式推進装置におけるプラットホームの模式図であり、図2は本願発明の一実施形態を示す旋回式推進装置の側面図、図3は図2に示す旋回式推進装置の正面視の縦断面図、図4は同旋回式推進装置を船体に取付けた状態を示す側面図である。
【0014】
図1に示すように、この実施形態におけるプラットホーム1は、小径のタンク2と大径のスペーサ3とからなる二重構造となっており、タンク2がプラットホーム1の中央から一方に偏心した状態で設けられている。
【0015】
前記タンク2は、周囲が密閉された構造となっており、内部が油タンクに形成されている。このタンク2は略逆円錐状に形成されており、ほぼスペーサ3の高さと同等の高さで形成されている、また、タンク2の上面の周囲にはフランジ4が設けられており、スペーサ3に固定するためのボルト孔5が設けられている。なお、図示するタンク2は全面が密閉された形態で示されているが、実際には中央部に駆動軸が貫通する孔が形成されている。
【0016】
前記スペーサ3は、天板6と底板7と、これらの間を連結する連結板8とから構成された簡単な構造となっており、中央部に前記タンク2を挿入する空間9が形成されている。天板6には、前記タンク2を挿入する大径の開口部10と、前記タンク2に設けられた固定用のボルト孔5と合致するように設けられた内周部のナット部11と、船体に固定するためのボルト孔12とが設けられている。底板7には、前記タンク2の下面が出る小径の開口部13が設けられ、その周囲の下面は、上述した図5に示すように船体59に設けられた状態で、下面が船底61の形状の曲面にほぼ沿うような面で形成されている。この船底形状にほぼ沿うような面は、図示する船の長さ方向の船底形状とともに船の幅方向の船底形状にもほぼ沿うように形成されている。
【0017】
図1に示すように、連結板8は、天板6と底板7とを連結して一体的に形成することができるような間隔で周方向に複数枚が設けられており、これらの連結板8の内側が天板6の開口部10から底板7の開口部13へ傾斜するテーパ状に形成されている。なお、前記タンク2とこのスペーサ3とは別体で製造することができるため、タンク2の製造工程とは切り離して工程管理をすることが可能である。
【0018】
図2,3に示すように、図1に示すタンク2とスペーサ3とを連結したプラットホーム1は、スペーサ3の上部からタンク2を挿入してボルト29で固定することによって一体化されている。このプラットホーム1のタンク2の底面には、プロペラ14を具備したプロペラポッド15を有する推進機16が設けられており、ストラット17によってプラットホーム1から吊り下げられた状態で取り付けられている。18はダクトであり、19はギヤボックスである。スペーサ3には、前記したように、タンク2を挿入して固定する空間9が形成されており、この空間9に挿入されるタンク2は、前記したように逆円錐状に形成されており、下部の径が、ストラット17を取付けることができるとともに、その周囲にスペーサ3との間のシール部材22とそのシールケーシング20を設けることができるほぼ最小径で形成されている。このシール部材22とシールケーシング20によって旋回用シール装置が構成されている。また、タンク2の上面の径は、油圧モータや油圧ポンプ、クーラーユニット等のプラットホーム1上に配置する全ての補器類を集約して設けることが可能な大径となっている。
【0019】
このタンク2には、逆円錐状のタンク側壁21と、このタンク側壁21の上部内周に設けられた旋回用軸受23に回転可能に支持された旋回部材24とが設けられている。この旋回部材24も下部が小径で上部が大径の逆円錐状に形成されている。
【0020】
また、この旋回部材24の上部には内歯の旋回用歯車25が形成されており、この旋回用歯車25に噛合するピニオン26を有する駆動機たる旋回モータ27がタンク2の上面に設けられている。この旋回部材24の下端に前記ストラット17の上部が取り付けられて、一体的に旋回可能に構成されている。
【0021】
しかも、この実施形態では、タンク2に設けられた旋回モータ27のピニオン26を外周部に位置させ、このピニオン26で旋回させる旋回部材24の支持部を旋回用軸受23に近接させているので、このタンク2の下部に設けられたシール部材22のシールケーシング20の吊下げ部となるタンク側壁21の上部が旋回用軸受23に近接した位置となり、プロペラ推力によるプラットホーム1の変形で生じる旋回軸芯(旋回部材24とストラット17との連結部における軸芯)と旋回シール装置軸芯との相対変位を最小限にすることができる。
【0022】
以上のように構成された旋回式推進装置28によれば、一方で、タンク2と、このタンク2に取付ける補器類等の構成をそれぞれ製作し、所定の推力を有する旋回式推進装置28として製作することができ、一方で、この旋回式推進装置28のプラットホーム1の一部となるスペーサ3を、その搭載する船体の船底形状に応じて、底板7の面が船底(図5の符号61)とほぼ連続するように仕上げて製作することができるので、搭載する船底形状が決定してから製作するスペーサ3に要する製作期間に影響されることなく推進機関係を製作することができるので、旋回式推進装置28の全体を短期間で製作することが可能となる。
【0023】
つまり、旋回式推進装置28のプラットホーム1を二重構造とし、この二重構造のプラットホーム1を小径のタンク2と、大径のスペーサ3とから構成し、このタンク2の上部に油圧モータや油圧ポンプ、クーラーユニット等のプラットホーム1上に配置する全ての補器類を集約して設けるようにしているので、旋回式推進装置28を搭載する船舶の船底形状に応じて製作するスペーサ3と、プロペラ推力等の性能に応じて製作する推進機16とその補助機器類とを設けるタンク2とを個別に製作するようにでき、船体に応じて製作する必要があるスペーサ3以外の部品を見込生産することが可能となり、旋回式推進装置28の全体としての製作期間の短縮や交換作業の迅速化を図ることが可能になる。
【0024】
しかも、プラットホーム1のタンク2を小型化するとともに、プラットホーム1上に配置する旋回駆動機等を小型化してタンク2の上面に集約するので、旋回式推進装置28の重量軽減も可能となる。
【0025】
なお、上述した実施形態は一実施形態であり、本願発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本願発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0026】
【発明の効果】
本願発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載するような効果を奏する。
【0027】
プラットホームを二重構造として別々に製作することによりプラットホームの製作期間を短縮することができるので、装置全体の製作期間の短縮及び重量軽減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の一実施形態を示す旋回式推進装置におけるプラットホームの模式図である。
【図2】本願発明の一実施形態を示す旋回式推進装置の側面図である。
【図3】図2に示す旋回式推進装置の正面視の縦断面図である。
【図4】従来の旋回式推進装置を示す側面図である。
【図5】従来の旋回式推進装置を船体に取付けた状態を示す側面図である。
【符号の説明】
1…プラットホーム
2…タンク
3…スペーサ
4…フランジ
5…ボルト孔
6…天板
7…底板
8…連結板
9…空間
10…開口部
11…ナット部
12…ボルト孔
13…開口部
14…プロペラ
15…プロペラポッド
16…推進機
17…ストラット
18…ダクト
19…ギヤボックス
20…シールケーシング
21…タンク側壁
22…シール部材
23…旋回用軸受
24…旋回部材
25…旋回用歯車
26…ピニオン
27…旋回モータ
28…旋回式推進装置
Claims (4)
- ストラットの下部に設けた推進機を船底から突出するように取付けるプラットホームを設け、該プラットホームを半径方向に二重構造となった内側のタンクと外側のスペーサとから構成し、該タンクの下面をストラットが取付可能な小径で形成し、該タンクの上面をプラットホーム上に配置する全ての機器を設けることができる大径で形成し、該プラットホーム上に配置する全ての機器を該タンク上に設け、前記ストラットの上部に旋回部材を設けるとともに、該旋回部材を回転可能に支持する旋回用軸受を前記タンクの上部内周に設け、該旋回部材を回転させる駆動機をタンクの上面に設けた旋回式推進装置のプラットホーム構造。
- 前記タンクの下部とスペーサとの間に旋回用シール装置を設け、該旋回用シール装置の吊下げ部材となるタンク側壁を前記旋回部材の旋回用軸受に近接して配置したことを特徴とする請求項1記載の旋回式推進装置のプラットホーム構造。
- 前記スペーサを、天板と底板と連結板とからなる枠体で形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の旋回式推進装置のプラットホーム構造。
- 前記スペーサの下面形状を、船底の形状にほぼ連続するように形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の旋回式推進装置のプラットホーム構造。
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