JP3553302B2 - 椅子における背もたれの支持構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、椅子における背もたれの支持構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
椅子において、単に背もたれが後傾するに過ぎない構成では、背もたれにもたれ掛かったロッキング時に人の腰に対するサポートがおろそかになって、腰椎や脊髄に負担をかける場合があった。
そこで、椅子の背もたれを、人の背中を支持する背中支持部と腰部(或いは臀部)を支持する腰支持部とで構成し、人が背もたれにもたれ掛かったロッキング時に腰支持部を相対的に前向き突出させることにより、ロッキング時に上半身を安定した状態で支持することが考えられている。
【0003】
この具体的手段として、例えば本願出願人の先願に係る特開平7−95911 号公報や特開平7−95913 号公報、特開平7−155233号公報には、脚体の上端に固着した支持フレームに斜め上向きの後傾状に延びるガイド部材を取り付けて、このガイド部材によるガイド作用を利用して、背中支持部の後傾動に連動して腰支持部を側面視で引き伸ばすように変形させることが開示されている。
【0004】
また、同様に本願出願人の先願に係る特開平7−163436号公報や特開平7−184741号公報には、背中支持部の後傾動に連動して変形する弾性部材を利用して、腰支持部を前向きに突き出すことが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開平 7−95911号、同 7−95913号、同7−155233号の各公報のようにガイド部材を使用して腰支持部を変形させるものでは、非ロッキング状態での身体の適切な支持のためには腰支持部をあまり変形し易い状態にできないため、ロッキング時における腰支持部の変形が背もたれの後傾動に対する抵抗として作用し、このためロッキング時に背中支持部及び腰支持部を円滑に後傾動させ難い虞があった。
【0006】
また、特開平7−163436号公報や特開平7−184741号公報のように弾性部材を使用して腰支持部を押し出すものでは、ロッキング時の身体の反力による弾性部材の戻り変形を防止するためには当該弾性部材の弾性力を変形しにくくしなければならず、かくすると、背もたれの円滑な後傾動が阻害されることになり、これまた、背もたれの円滑な後傾動と身体の適切な支持とが相反するのであった。
【0007】
本発明は、背もたれを背中支持部と腰支持部とに形成してロッキング時にこれらを相対動させるにおいて、腰支持部による腰の支持機能機能を損なうことなく、背もたれをスムースに傾動させ得るようにし、且つ、人の体格や好みに応じてロッキング時における上半身の支持状態を変更できるようにすることを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため本発明では、
「脚体の上端に設けた支持フレームに取付けた座体と、ばね等の弾性支持手段に抗して後傾動する背もたれとを備え、前記背もたれを、人の背中を支持する背中支持部と人の腰部を支持する腰支持部とで構成し、これら背中支持部と腰支持部とを別体に分離するか又は屈曲自在に連接して成る椅子において、
前記背中支持部を、前記座体又は支持フレームに後傾動自在に枢着した傾動体に取付け、傾動体又は背中支持部に、前記腰支持部に固着した第1リンクを、その上端を中心にして前後方向に回動し得るように枢着し、前記傾動体と第1リンクとを、それら傾動体と第1リンクとに回動自在に枢着した第2リンクで連結し、更に、前記支持フレームと第2リンクとを、それら支持フレームと第2リンクに回動自在に枢着した第3リンクで連結し、第3リンクによって第2リンクの回動を抑制することにより、傾動体の後傾動に連動して第1リンクがその上端を中心にして相対的に前向き回動するように設定する」
の構成にした。
【0009】
【発明の実施形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図9は第1実施形態を示しており、このうち図1は椅子の縦断側面図、図2〜図4は部材の分離図、図5は図1のV−V 視断面図、図6は図1のVI−VI視断面図、図7は図1のVII−VII 視断面図、図8は要部の拡大図、図9はロッキング状態を示す図である。
この椅子は、脚体1と、脚体1の上端に固着した支持フレーム2と、該支持フレーム2に取付けたクッション付き座体3と、クッション付き背もたれ4とを備えており、座体3は座受け体5に固着されている。
【0010】
図5〜7に示すように、前記支持フレーム2は正面視上向き開口コ字状に形成されている。他方、図1及び図5に示するように、座受け体5は正面視で支持フレーム2の左右側板2aの内側に位置しており、座受け体5の側板を支持フレーム2の側板2aの前端部に水平状の第1軸6によって枢着している。この場合、第1軸6を嵌めるために支持フレーム2の側板2aに穿設した第1枢支穴7を側面視で下向き凹状の円弧孔に形成している。従って、座体3は後傾動しつつ後退動し得る。
【0011】
背もたれ4は、人の背中を支持する背中支持部8と、人の腰部を支持する腰支持部9とに分離構成されており、背中支持部8は側面視略L字状の傾動体10の上部に固着されている(図3も参照)。傾動体10の前端は、支持フレーム2の側板2aに第2軸11によって枢着されている。更に、傾動体10のうち前端よりもやや後方に位置した部位は、第3軸12によって座受け体5に枢着されている。
【0012】
従って、人が背もたれ4にもたれ掛かると、傾動体10が第2軸11を中心に後傾動すると共に、これに連動して座体3は第1枢支孔7にガイドされて後退動しつつ後傾動することになる。
前記腰支持部9は第1リンク14に固着されている。第1リンク14は腰支持部9よりも上方に大きく突出しており、この上向き突出部14a を第4軸15によって傾動体10の上部に枢着している。この場合、第1リンク14の上向き突出部14a を側面視で前向き凹状に形成することにより、背中支持部8の下端部が上向き突出部14a に嵌まり込むようにしている。換言すると、背中支持部8と腰支持部9との相対的な回動を許容した状態で、第4軸15を背中支持部8の下端よりも上方に配置できるようにしている。なお、第1リンク14の上端は、背中支持部8に突設したブラケットに枢着しても良い。
【0013】
第1リンク14には、側面視で側面視で僅かに後傾状の姿勢で長く延びるピン穴16を穿設しており、このピン穴16を介して、側面視コ字状に形成した第2リンク17の上部先端を第5軸18で摺動自在及び回動自在に係着している。第2リンク17の下部先端は、前記第3軸12によって傾動体10と座受け体5とに枢着されている。
【0014】
図4や図8に明示するように、前記第2リンク17の上部17a は下部から分離しており、両者に添え板19をねじ20で締結している。この場合、添え板19のねじ挿通穴を上下方向に延びる長穴21に形成することにより、第2リンク17の上部17a の高さを無段階的に調節できるようにしている。換言すると、第4軸15と第5軸18との間隔寸法Lを調節できるようにしている。
【0015】
また、図8に示すように、長穴21の延長線22と、前記第1リンク14におけるピン穴16の延長線23とが、僅かの角度θで交差するように設定している。すなわち、ピン穴16の延長線23が長穴21の延長線22に対して相対的に後傾するように設定している。従って、第2リンク17の高さを調節して第5軸18を上方に移動させると、腰支持部9は前方に突出するように移動し、腰支持部9の初期姿勢が変更される。
【0016】
なお、ピン穴16の延長線23と長穴21の延長線22とは平行でも良いし、ピン穴16の延長線23が長穴21の延長線22に対して相対的に前傾状になるように設定しても良い。
前記第2リンク17の下部のうち先端よりも後方の部位と支持フレーム2との間に第3リンク25を配置し、この第3リンク25を第2リンク17及び支持フレーム2に対して第6軸26及び第7軸27によって枢着している。
【0017】
図示していないが、背もたれ4の後傾動及び座体3の後傾動はばね等の弾性支持手段によって弾性的に支持される。この場合、背もたれ4と座体3とを別々の弾性支持手段で支持しても良いし、一つの弾性支持手段で支持しても良い。なお、弾性支持手段は、単に椅子に腰掛けただけでは変形せず、背もたれ4にもたれ掛かって大きなモーメントが生じると変形するようなばね力に設定することになる。
【0018】
なお、図9では第2リンク17は一体の状態に表示しており、添え板19によって高さを調節できる状態は省略している。
以上の構成において、図9に示すように、人が背もたれ4にもたれ掛かると背中支持部8が後傾動し、これに連動して座体3も支持フレーム2の第1枢支穴7にガイドされて後退動しつつ後傾動する。そして、第2リンク17が第3リンク25に突っ張った状態になって第3リンク25の後傾動が抑制され、第1リンク14と傾動体10に対して相対的に前向きに回動する。
【0019】
この場合、第5軸18がピン穴16内を上方に向けて移動することと、背中支持部8の下部が第1リンク14の上向き突出部14a に入り込むことにより、第1リンク14が傾動体10に対して相対的に前向き回動することが許容され、その結果、背中支持部8に対して腰支持部9が相対的に前向き突出する。これにより、人の腰が腰支持部9によって的確にサポートされて、安楽なロッキング状態を得ることができる。
【0020】
また、第2リンク17の回動が第3リンク25によって抑制されているため、背中支持部8と腰支持部9とを全体として後傾させるものでありながら、腰支持部9を背中支持部8に対して大きく相対動させることができる。
そして、第2リンク17の高さを調節することにより、腰支持部9の初期姿勢及び背中支持部8に対する相対的突出の度合いを変更できる。つまり、図8に一点鎖線で示すように、第2リンク17の上端の高さを高くすると、ピン穴16の延長線23と長穴21の延長線22とがある角度θをもって交差していることに起因して、腰支持部9は無荷重の初期状態において前方に突出し、且つ、第4軸15と第5軸18との間隔寸法Lが小さくなることにより、腰支持部9が背中支持部8に対して相対的に前傾動する角度が大きくなる。
【0021】
従って、第5軸18の高さを調節することにより、体格や好みに応じてロッキング状態を調節できるのである。なお、添え板19に長穴21を穿設することに代えて、ねじ20が嵌まる丸穴を上下方向に適宜間隔で多数個穿設するこことにより、第5軸18の高さを適当なピッチで段階的に調節できるようにするなど、他の調節形態でも良い。
【0022】
図10〜図11に示すのは第2実施形態であり、図10は縦断側面図、図11はロッキング状態の縦断側面図である。
この実施形態も基本的には第1実施形態と同じである。第1実施形態との相違点は、▲1▼座受け体5と支持フレーム2の前部とを、第1軸6及び第8軸29を介して枢着した第4リンク30にって後退動及び後傾動自在に連結している点、▲2▼第2リンク17を側面視L字状に形成している点、▲3▼第1リンク14の上端を傾動体10のうち背中支持部8の下端の箇所に第4軸15で枢着している点である。
【0023】
図示していないが、背もたれ4及び座体3の後傾動を弾性的に支持する弾性支持手段を設けている。また、背もたれ4及び座体3の傾動範囲は適当なストッパー手段で規制される。
この実施形態では第2リンク17は調節不能な一体の状態に表示しているが、第1実施形態と同様に上下長さを調節できるようにして、第5軸18の高さを無段階的又は段階的に調節できるようにしても良いことは言うまでもない。
【0024】
ところで、前記第1実施形態のように、第1リンク14の上向き突出部14a を側面視で前向き凹状に形成すると、背中支持部8と腰支持部9との相対的な回動を許容した状態で、第4軸15を背中支持部8の下端よりも上方に配置できるため、腰支持部9が背中支持部8に対して大きく突出する度合いを大きくできて、腰の支持機能をより確実ならしめることができる。
【0025】
このことは、図12〜15に示す参考例の構造によっても達成できる。この点を説明する。図12は縦断側面図、図13は図12のXIII−XIII視断面図、図14は図12のXIV−XIV視背面図、図15はロッキング状態の側面図であり、この例では、第1軸6 〜第3軸12によって傾動体10と座体3とを連動させている点は第1実施形態と同じである。また、第1実施形態と同じ形状の第1リンク14を備えていて、これを第4軸15によって傾動体10の上部に枢着している点も同じである。
【0026】
他方、第1実施形態とは、第1リンク14と支持フレーム2とを、それらに第5軸18及び第9軸31にて枢着した第5リンク32を介して連結している点が相違している。
この例においても、図15に示すように、第1実施形態と同様に腰支持部9を背中支持部8に対して大きく前向き突出させることができる。
【0027】
この例において、図16に示すように、第4リンク30を介して座受け体5を支持フレーム2に連結しても良い。
【0028】
【発明の奏する効果】
上述の説明の通り、本願発明によると、人が背もたれ4にもたれ掛かると、傾動体の後傾動に連動して第1〜第3のリンクが確実に回動するため、腰支持部を背中支持部に対して相対的に前向き突出させることを確実ならしめることができる。また、腰支持部は第1リンクに固着されているから、腰支持部が人の腰の反力によって変形するようなことはなく、従って、ロッキング状態で人の上半身を安定した状態に的確にサポートできる。
【0029】
そして、第3リンクで第2リンクを突っ張った状態にして、第1リンクの回動を抑制することにより、腰支持部を背中支持部に対して相対的に前向き突出させるものであるから、背中支持部と腰支持部とが一緒に移動するタイプでありながら、背中支持部に対して腰支持部を相対的に前向き突出させることが可能となり、その結果、ロッキング状態で背もたれ4を人の上半身にフィットさせることをより確実に実現できる。
【0030】
また、請求項2のように構成すると、座体と背もたれとの間隔が広がり過ぎることを防止して、より快適なロッキング状態を得ることができる。
更に請求項3のように構成すると、第2リンクの高さを調節することにより、腰支持部の初期姿勢や、背中支持部に対して腰支持部が相対的的に前向き突出する度合いを調節できるので、人の体格や好みに応じて背もたれによるサポート状態を変更できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る椅子の縦断側面図である。
【図2】支持フレームと座体との分離側面図である。
【図3】各リンクの分離側面図である。
【図4】第2リンクの斜視図である。
【図5】図5は図1のV−V 視断面図である。
【図6】図1のVI−VI視断面図である。
【図7】図1のVII−VII 視断面図である。
【図8】要部の縦断側面図である。
【図9】ロッキング状態を示す図である。
【図10】第2実施形態に係る椅子の縦断側面図である。
【図11】図10のロッキング状態を示す図である。
【図12】参考例の縦断側面図である。
【図13】図12のXIII−XIII視断面図である。
【図14】図12のXIV−XIV視背面図である。
【図15】参考例のロッキング状態を示す側面図である。
【図16】参考例の変形例を示す図である。
【符号の説明】
1 脚体
2 支持フレーム
3 座体
4 背もたれ
5 座受け体
8 背中支持部
9 腰支持部
10 傾動体
14 第1リンク
15 第5軸
17 第2リンク
18 ピン穴
22 長穴
25 第3リンク
Claims (3)
- 脚体1の上端に設けた支持フレーム2に取付けた座体3と、ばね等の弾性支持手段に抗して後傾動する背もたれ4とを備え、前記背もたれ4を、人の背中を支持する背中支持部8と人の腰部を支持する腰支持部9とで構成し、これら背中支持部8と腰支持部9とを別体に分離するか又は屈曲自在に連接して成る椅子において、
前記背中支持部8を、前記座体3又は支持フレーム2に後傾動自在に枢着した傾動体10に取付け、傾動体10又は背中支持部8に、前記腰支持部9に固着した第1リンク14を、その上端を中心にして前後方向に回動し得るように枢着し、前記傾動体10と第1リンク14とを、それら傾動体10と第1リンク14とに回動自在に枢着した第2リンク17で連結し、更に、前記支持フレーム2と第2リンク17とを、それら支持フレーム2と第2リンク17に回動自在に枢着した第3リンク25で連結し、第3リンク25によって第2リンク17の回動を抑制することにより、傾動体10の後傾動に連動して第1リンク14がその上端を中心にして相対的に前向き回動するように設定していること、
を特徴とする椅子における背もたれの支持構造。 - 「請求項1」において、前記座体3を、支持フレーム2に対して後傾動自在に取付け、この座体3と前記傾動体10とを、傾動体10が後傾動すると座体3が後傾動するように連動させていることを特徴とする椅子における背もたれの支持構造。
- 「請求項1」又は「請求項2」において、前記第2リンク17の上端が第1リンク14に取付く高さ位置を調節し得ることを特徴とする椅子における背もたれの支持構造。
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