JP3552927B2 - 光定着型感熱記録媒体およびその製造方法 - Google Patents

光定着型感熱記録媒体およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、光定着型感熱記録媒体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
感熱記録媒体の1種として、ジアゾニウム塩を内包するマイクロカプセルと、塩基性化合物と、カプラーとを含む記録層を、支持体上に具えたものが知られている(例えば、文献1:特公平4−75147号公報)。この感熱記録媒体の発色機構は以下のように推定されている。上記媒体の記録をしたい部分に熱を加えると、マイクロカプセル壁内および壁外の、ジアゾニウム塩やカプラーや塩基性化合物等の反応性物質が瞬間的にマイクロカプセル壁を透過して、互いが接触する。カプラーおよびジアゾニウム塩はアルカリ雰囲気で反応する性質を有する。また、塩基性化合物はアルカリ雰囲気を生成する。よって、これらカプラーおよびジアゾニウム塩は反応を起こす。この結果、発色に寄与するアゾ色素が生成される。そして、この色素により記録がなされる。
【0003】
記録が済んだ後、この媒体に所定の波長の光が照射される。媒体中に残っているジアゾニウム塩はこの光により分解され活性を失うので記録は定着される。この発色機構および定着機構から、この媒体は光定着型感熱記録媒体と称される。
【0004】
また、この媒体は、ジアゾニウム塩がマイクロカプセルによってカプラーと隔絶されている構造を有するので、この構造を有しない媒体に比べ、媒体を製造した後から感熱記録がなされるまでの間でのジアゾニウム塩とカプラーとの反応が生じにくい(生保存性が高い)という利点も持つ。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した光定着型感熱記録媒体は、ジアゾニウム塩を内包したマイクロカプセルと、カプラーと、塩基性化合物とを含有する塗布液を予め調製し、そしてこの塗布液を好適な支持体上に塗布し、この塗膜を乾燥する、という手順で製造される。
【0006】
このように、媒体を製造する際もジアゾニウム塩はマイクロカプセル壁によって他の成分と隔絶された状態で処理されるのであるが、これでも製造段階において、ジアゾニウム塩とカプラーとの反応がいくらか生じてしまう。完成された媒体は、上記反応に起因する色合いを帯びてしまう現象(これを「地肌かぶり」と称することにする。)が生じてしまう。
【0007】
地肌かぶりが生じる原因は未だ定かではないが、この出願に係る発明者は、支持体に塗布した塗膜を乾燥する際にこの塗膜で生じる収縮応力によって、ジアゾニウム塩とカプラーとが反応するためと推定している。
【0008】
地肌かぶりが生じると、記録後の記録部と地肌とのコントラストが低下し印字品質が低下するといった好ましくない症状が生じてしまう。
【0009】
従って、地肌かぶりが実質的にない光定着型感熱記録媒体が望まれる。
【0010】
また、上記媒体中に含まれるジアゾニウム塩内包マイクロカプセルは、コストメリットが高い。このため、このマイクロカプセルを多く含む媒体のコストは高くなってしまう。
【0011】
従って、より低コストな光定着型感熱記録媒体が望まれる。
【0012】
また、媒体中に含まれるマイクロカプセルの壁は、薄い高分子材料で形成されているため、耐圧性が十分ではなく、爪などでこするだけで壁がつぶれて発色してしまう。
【0013】
このため、より耐圧性に優れた光定着型感熱記録媒体が望まれる。
【0014】
また、記録後の媒体に光を照射すると、未反応のジアゾニウム塩が分解して失活する。しかしながら、この分解で生じる分解物によって媒体の地肌が褐色を帯びてしまう。
【0015】
従って、ジアゾニウム塩の分解色の影響を低減できる光定着型感熱記録媒体が望まれる。
【0016】
また、上述した光定着型感熱記録媒体の熱に対する感度は、マイクロカプセルを用いない感熱媒体の熱に対する感度よりも低い。これは、同じ熱量を媒体に加えた場合の印字濃度によって示される。この場合、従来の光定着型感熱記録媒体の方が印字濃度が薄い。
【0017】
よって、より熱に対する感度(増感効果)の高い光定着型感熱記録媒体が望まれる。
【0018】
また、上述したような光定着型感熱記録媒体の製造方法の出現も望まれる。
【0019】
【課題を解決するための手段】
そこで、この出願に係る発明者は、マイクロカプセルに内包されたジアゾニウム塩と、カプラーと、塩基性化合物とを含む記録層を支持体上に具えた光定着型感熱記録媒体において、上述した問題点を解決することのできる添加剤について鋭意研究した。その結果、テフロン微小体およびパラフィンワックス微小体の双方またはいずれか一方を添加剤として記録層内に含有させることにより上記の問題点を解決することができることに想到した。
【0020】
したがって、この発明の光定着型感熱記録媒体によれば、反応性物質を含む記録層を支持体上に具えていて、この反応性物質は、カプラーと、カプラーと反応すると記録に寄与する色素を生成すると共に、所定の光が照射されると活性を失うジアゾニウム塩と、反応を生じさせる雰囲気を生成する塩基性化合物とを含んでいる。そして、ジアゾニウム塩は、マイクロカプセルに内包されている。さらに、記録層は、その内部に添加剤として、テフロン微小体およびパラフィンワックス微小体の双方またはいずれか一方を含んでいる。
【0021】
また、マイクロカプセルは、このマイクロカプセルに対して、記録を行うための加熱が行われたときに、反応性物質をマイクロカプセルの壁を経て透過させる材料で形成してある。
【0022】
そして、この発明の光定着型感熱記録媒体によれば、添加剤は、光定着型感熱記録媒体の地肌かぶりを実質的に抑制し得る量含まれている。この添加剤の量の適性な範囲は、実験等を行って予め定めることができる。
【0023】
これにより、後述する実験結果から明らかなように、従来に比べて地肌かぶりが少なくなる。すなわち、記録層となる塗膜内には、従来と同じように薄い高分子材料で形成されたマイクロカプセル、カプラー、および塩基性化合物の他に、添加剤としてのテフロン微小体および/またはパラフィンワックス微小体が含まれている。このため、塗膜の乾燥時に収縮応力が生じても、これら添加剤の微小体がバッファーのような役割を果たして、収縮応力のような圧力によってマイクロカプセル内のジアゾニウム塩とカプラーとが反応するのを防いでいるものと考えられる。
【0024】
また、媒体の記録層に、従来の記録層の構成成分の他に添加剤として上記微小体が含まれている分、記録層内のマイクロカプセルの含有量を従来よりも減らすことができる。よって、高価なマイクロカプセルの含有量が低減しているために、この発明の光定着型感熱記録媒体のコストを下げることができる。
【0025】
また、この発明の光定着型感熱記録媒体においては、上記添加剤の大きさ(微小体の大きさ)は、前記反応性物質の大きさよりも大きい。
【0026】
添加剤としてのテフロン微小体およびパラフィンワックス微小体は、粒子、粉体およびその他の好適な形状を有するものとする。そして、この添加剤は、光定着型感熱記録媒体に不可避的に加えられる外圧に対して、マイクロカプセルの破壊を回避できる程度の大きさおよび含有量で含有されている。なお、添加剤の大きさおよび含有量の適性な範囲は、実験等を行って予め定めることができる。
【0027】
光定着型感熱記録媒体の記録層内に含有されているマイクロカプセルの粒径は約1μm程度である。そして、添加剤として含有されているテフロン微小体およびパラフィンワックス微小体の大きさをいずれもマイクロカプセルの粒径よりも大きく、例えば3μm程度と設定することができる。このように添加剤の大きさをマイクロカプセルの粒径よりも大きくすることによって、外からこの媒体に対して加えられる不可避的な圧力は、マイクロカプセルよりも上記微小体の方で多く受け止めることになる。このため、マイクロカプセルの破壊のおそれがないため、圧発色が起こりにくくなり、従って耐圧性に優れた媒体を提供することができる。
【0028】
また、添加剤は、所定の光によって生じるジアゾニウム塩の分解色による、光定着型感熱記録媒体への影響を低減できる程度の屈折率および含有量で含まれている。なお、添加剤の含有量の適性な範囲は、実験等を行って予め定めることができる。また、添加剤は、記録層内の他の反応性物質の屈折率よりも低い屈折率を有するものが好ましい。
【0029】
この発明の光定着型感熱記録媒体に対して記録を行った後、この記録媒体に所定の光を照射することによって、記録に関与していない未反応のジアゾニウム塩を分解させて失活させる。この際、ジアゾニウム塩の分解色が生じてしまう。ここで、上記媒体の記録層中には添加剤としてテフロン微小体が含まれている。テフロン微小体は、記録層中に含有されている他の反応性物質よりも屈折率の低い物質である。このため、媒体の表面は、テフロン微小体による光の散乱作用によって、ジアゾニウム塩の分解色の影響をあまり受けない。従って、光を照射した後の媒体の地肌の色を、光照射前の色に保持することができる。なお、この光の散乱作用は、テフロン微小体には及ばないがパラフィンワックス微小体も有するものである。
【0030】
また、この発明の光定着型感熱記録媒体に記録を行う際、記録する部分に熱を加える。この媒体中に、特にパラフィンワックス微小体が含有されていれば、熱が加えられた部分のパラフィンワックス微小体が溶けて、流動性の液体となる。この液体は、熱が加えられた部分のマイクロカプセル内のジアゾニウム塩とカプラーとの反応場となり、反応しやすくする役目を果たす。この結果、熱に対するジアゾニウム塩とカプラーとの対熱反応性(感度)を向上させることができる。よって、従来よりも増感効果の高い光定着型感熱記録媒体を提供することができる。
【0031】
また、発明の光定着型感熱記録媒体の製造方法によれば、マイクロカプセルに内包されていて、カプラーと反応すると記録に寄与する色素を生成し、所定の光を照射すると活性を失うジアゾニウム塩と、カプラーと、ジアゾニウム塩とカプラーとの反応を生じさせる雰囲気を生成する塩基性化合物とを含む塗布液を支持体に塗布して塗膜を形成する工程と、この塗膜を乾燥する工程とを含んでいる。そして、塗布液中には、テフロン微小体およびパラフィンワックス微小体のうちの双方またはいずれか一方を含有させてある。
【0032】
添加剤としてのテフロン微小体および/またはパラフィンワックス微小体の使用量の好適範囲は、それと共に用いるジアゾニウム塩やカプラーをどのような種類のものにするか、また、光定着型感熱記録媒体の仕様をどのようにするか等に応じて変化すると考えられる。ただし、光定着型感熱記録媒体では、必要とする特性を得るため、および熱印加手段から供給される熱エネルギーを省エネルギーの意味でなるべく小さくする等の観点から、記録層の膜厚は制約を受ける。例えば、乾燥塗布量でいって○○g/m 等のように、膜厚はある範囲に設定される。するとジアゾニウム塩、カプラー、塩基性化合物および添加剤の総量もおのずと制約される。そのため、添加剤は、それを含有させ過ぎると発色有効成分であるジアゾニウム塩やカプラーの量が減るために対熱増感効果が得られなくなるおそれがある。逆に添加剤が少なすぎても、記録層中のマイクロカプセルの含有量が多くなって媒体が高価になる、地肌かぶりの抑制効果が得られない、耐圧性が得られない、ジアゾニウム塩の分解色の媒体の地肌への影響が大きくなる、増感効果の向上が図れなくなる、等の添加剤による効果の全体または一部分が得られなくなる。従って、添加剤の適性範囲は、ジアゾニウム塩の種類、カプラーの種類等に応じて、例えば実験等により決められる。そして、少なくとも、決められた適性範囲内においては、添加剤による上記効果の全体或いは一部分を得ることができる。
【0033】
なお、この発明でいう記録層とは、単層に限られない。後の実施例では記録層が単層の例を説明しているが、記録層を複数層具える積層型の場合にも、この発明を適用することができる。積層型の場合、各記録層は異なる色の発色を担当するものとする。このようにすると、上述した効果が得られ、かつ多色の記録が可能な光定着型感熱記録媒体が実現できる。
【0034】
さらに、この発明でいう記録層とは、1種のジアゾニウム塩と1種のカプラーとを含む層に限られない。後の実施例では、記録層として1種のジアゾニウム塩と1種のカプラーとを含む例について説明している。しかしながら、記録層が、2種以上のジアゾニウム塩と1種以上のカプラーとを含む記録層であっても、この発明を適用することができる。この場合も多色の記録が可能な光定着型感熱記録媒体が得られる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0036】
この発明では、ジアゾニウム塩はそれぞれマイクロカプセルに内包されている。その理由は、光定着型感熱記録媒体の本来の使用の前に、ジアゾニウム塩がカプラーと反応してしまうこと(いわゆるプレカップリング)を防止できるので、媒体の生保存性が高まるからである。
【0037】
ジアゾニウム塩を内包するマイクロカプセルは、公知の以下のような手順で、マイクロカプセルの分散液の状態で、調製することができる。
【0038】
ジアゾニウム塩を、マイクロカプセル壁形成材料とオイルとの混合液に溶解する。この溶液にバインダ水溶液を混合する。そしてこれを乳化させることで、第1のジアゾニウム塩を内包するマイクロカプセルの分散液を調製することができる。
【0039】
また、ジアゾニウム塩を内包するマイクロカプセルの分散液を調製するに当たり、ラジカル捕集剤を混合しても良い。ここでラジカルとは、ジアゾニウム塩を光により分解し失活させた際に発生するラジカルのことである。このラジカルは、なにがしかの色を呈する。このラジカルは、短時間で消滅するものが多いが中には長期間存在するものもある。すると、媒体の色合いを損なうことになる。ラジカル捕集剤は、このラジカルを捕集して、媒体の色あいが損なわれることを防止する。
【0040】
一方、カプラーを好適なバインダ水溶液に入れてカプラ分散液を調製する。また、塩基性化合物を好適なバインダ水溶液に入れて塩基性化合物分散液を調製する。また、添加剤を好適なバインダ水溶液に入れて添加剤分散液を調製する。これも公知の方法で行なえる。
【0041】
上述の各分散液を混合することにより、光定着型感熱記録媒体を形成するための塗布液が得られる。この塗布液を支持体に任意好適な方法で塗布し、さらにこの塗膜を乾燥すると、光定着型感熱記録媒体が得られる。
【0042】
支持体の形状、材質は、光定着型感熱記録媒体の目的に応じた任意好適なものとできる。また上記塗布液を支持体に塗布する方法も任意好適な方法とできる。
【0043】
用い得るジアゾニウム塩としては、4−(N−(2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)ブチリル)ピペラジノ)ベンゼンジアゾニウム、4−ジオクチルアミノベンゼンジアゾニウム、4−(N−(エチルヘキサノイル)ピペラジノ)ベンゼンジアゾニウム、4−ジヘキシルアミノ−2−ヘキシルオキシベンゼンジアゾニウム、4−N−エチル−N−ヘキサデシルアミノ−2−エトキシベンゼンジアゾニウム、3−クロロ−4−ジオクチルアミノ−2−オクチルオキシベンゼンジアゾニウム、2,5−ジブトキシ−4−モルフォリノベンゼンジアゾニウム、2,5−オクトキシ−4−モルフォリノベンゼンジアゾニウム、2,5−ジブトキシ−4−(N−(2−エチルヘキサノイル)ピペラジノ)ベンゼンジアゾニウム、2,5−ジエトキシ−4−(N−(2−(2,4−ジ−tert−アミルフェノキシ)ブチリル)ピペラジノ)ベンゼンジアゾニウム、2,5−ジブトキシ−4−トリルチオベンゼンジアゾニウム、3−(2−オクチルオキシエトキシ)−4−モルフォリノベンゼンジアゾニウム、4−(4’−メチルフェニルチオ)−ジエトキシベンゼンジアゾニウム、4−ジアゾ−4’−ブチルジフェニルエーテル等が挙げられる。これら例示のものそれぞれのヘキサフルオルホスフェート塩、テトラフルオロボーレート塩、1,5−ナフタレンスルフォネート塩が水溶性が低いため好適である。
【0044】
また、マイクロカプセルの分散液を調製する際に用い得るマイクロカプセル壁形成材料としては、例えば、ゼラチン、ポリウレア、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネイトなどを挙げることができる。
【0045】
用い得るオイルとしては、リン酸エステル、フタル酸エステル、その他のカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、アルキル化ビフェニル、アルキル化ターフェニル、塩素化パラフィン、アルキル化ナフタレン、ジアリールエタン等を挙げることができる。
【0046】
具体例としては、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリシクロヘキシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジラウリル、フタル酸ジシクロヘキシル、オレイン酸ブチル、ジエチレングリコールジベンゾエート、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、トリメリット酸トリオクチル、クエン酸アセチルトリエチル、マレイン酸オクチル、マレイン酸ジブチル、イソプロピルジフェニル、イソアミルビフェニル、塩素化パラフィン、ジイソプロピルナフタレン、1,1’−ジトリルエタン、2,4−ジターシャリアミノフェノール、N,N−ジブチル−2−ブトキシ−5ターシャリオクチルアニリンなどを挙げることができる。
【0047】
ジアゾニウム塩のオイルに対する溶解性を高めるための溶解助剤として、アセチルニトリル、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、メチレンクロライドから選ばれる任意のものをオイルに混合しても良い。
【0048】
また用いるバインダとしては、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、エチレン/マレイン酸共重合体などを挙げることができる。
【0049】
また、用い得るカプラーとしては、レゾルシン、フルルグルシン、2,3−ジヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸モルフォリノプロピルアミド、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシ−6−スルファニルナフタレン、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸エタノールアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸オクチルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸−N−ドデシルオキシプロピルアミド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸テトラデシルアミド、アセトアニリド、アセトアセトアニリド、ベンゾイルアセトアセトアニリド、2−クロロ−5−オクチルアセトアセトアニリド、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(2’−オクチルフェニル)−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(2’,4’,6’−トリクロロフェニル)−3−ベンズアミド−5−ピラゾロン、1−(2’,4’,6’−トリクロロフェニル)−3−アニリノ−5−ピラゾロン、1−フェニル−3−フェニルアセトアミド−5−ピラゾロン等を挙げることができる。
【0050】
また、用い得る塩基性化合物(有機塩基とも称される)としては、有機アンモニウム塩、有機アミン、アミド、尿素誘導体、チオ尿素誘導体、チアゾール類、ピロール類、ピリミジン類、ピペラジン類、グアニジン類、インドール類、イミダゾール類、イミダゾリン類、トリゾール類、モルフォリン類、ピペリジン類、アミジン類、ピリジン類などを挙げることができる。
【0051】
具体的には、トリシクロヘキシルアミン、トリベンジルアミン、オクタデシルベンジルアミン、ステアリルアミン、アリル尿素、チオ尿素、メチルチオ尿素、アリルチオ尿素、エチレンチオ尿素、2−ベンジルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾリン、2,4,5−トリフリル−2−イミダゾリン、1,2ジフェニル−4,4−ジメチル−2−イミダゾリン、2−フェニル−2−イミダゾリン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、1,2−ジシクロヘキシルグアニジン、1,2,3−トリシクロヘキシルグアニジン、グアニジントリクロロ酢酸塩、N,N’−ジベンジルピペラジン、4,4’−ジチオモルフォリン、モルフォリニウムトリクロロ酢酸塩、2−アミノベンゾチアゾール、2−ベンゾイルヒドラジノベンゾチアゾールなどを挙げることができる。
【0052】
【実施例】
以下、この発明の光定着型感熱記録媒体のいくつかの実施例について比較例と共にそれぞれ説明する。しかしながら、以下の説明中で挙げる使用材料およびその量、処理時間、処理温度、粒径などの数値的条件はこれら発明の範囲内の一例にすぎないことを理解されたい。
【0053】
1.実施例1および比較例1
(a)ジアゾニウム塩を内包するマイクロカプセル分散液の調製
ジアゾニウム塩として、4−(4’−メチルフェニルチオ)−2,5−ジエトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート(具体的には商品名DH575PF6(ダイトーケミックス社製))を用いる。マイクロカプセルの壁形成材料として、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(具体的には商品名タケネートD110N(武田薬品製))を用いる。ラジカル捕集剤として、トリメチルプロパントリアクリレートを用いる。オイルとして、フタル酸ジブチルを用いる。溶解助剤として、酢酸エチルを用いる。バインダとして、ポリビニルアルコールを用いる。
【0054】
1gのDH575PF6と、12gのD110Nと、6gのトリメチロールプロパントリアクリレートと、3.8gの酢酸エチルとを、6gのフタル酸ジブチルに溶解させた。この溶液に、バインダ水溶液として、8重量%ポリビニルアルコール水溶液を81g加えた。この溶液を攪拌しながら、この溶液に超音波を、0.5秒ずつ0.5秒おきに休止時間も含めて20秒間照射することにより、この溶液を乳化させた。さらに攪拌しながらこの溶液に25mlの水を加え、さらに攪拌しながらこの溶液に上記と同様な条件で超音波を照射した。さらに、この溶液に攪拌しながら25mlの水を加え、次いでこの溶液を60℃で2時間加熱した。この一連の処理により、DH575PF6を内包した平均粒径1.5μmのマイクロカプセル分散液が得られた。
【0055】
なお、マイクロカプセル内に取り込まれずに上記分散液中に残存しているDH575PF6を失活させるために、0.5gのテトラフェニルほう酸ナトリウム塩を、上記分散液中に加え、該分散液を常温で1時間攪拌する処理をした。以下説明の都合上、このマイクロカプセル分散液を「第1のマイクロカプセル分散液」と称する。
【0056】
(b)カプラー分散液の調製
カプラーとして、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アニリド(具体的には商品名アゾイックカップリングコンポーネント2(東京化成社製))10gを、5重量%ポリビニルアルコール水溶液50gに加え、ボールミルにより3日間混合分散し、第1のカプラー分散液を調製した。この第1のカプラ分散液における分散粒子の平均粒径は2μm程度であった。
【0057】
(c)塩基性化合物分散液の調製
塩基性化合物としてトリフェニルグアニジン10gを、5重量%ポリビニルアルコール水溶液50gに加え、ボールミルにより3日間混合分散し、塩基性化合物分散液を調製した。この塩基性化合物分散液における分散粒子の平均粒径は2μm程度であった。
【0058】
(d)添加剤分散液の調製
この発明では、添加剤としてテフロン微小体および/またはパラフィンワックス微小体を用いる。この実施例では、添加剤として、平均粒径3μmのテフロン粒子60gを5重量%ポリビニルアルコール水溶液40gに加え、ボールミルにより3日間混合分散し、テフロン粒子分散液を調製した。
【0059】
(e)光定着型感熱記録媒体の作製
上述の、第1のマイクロカプセル分散液10重量部、カプラー分散液4重量部、塩基性化合物分散液4重量部および添加剤分散液2重量部を混合して実施例1の光定着型感熱記録媒体形成用の塗布液を得た。
【0060】
次に、この塗布液をバーコーターにて、支持体としてのここでは白地の上質紙上に塗布した。塗布の済んだ紙を、40℃の温風乾燥機により乾燥した。
【0061】
これにより、ジアゾニウム塩およびラジカル捕集剤を内包するマイクロカプセル、カプラー、塩基性化合物および添加剤(テフロン粒子)を含む記録層を、支持体上に具えた実施例1の光定着型感熱記録媒体が得られる。
【0062】
なお、上記塗布膜の乾燥時間は1〜2分とした。また、上記塗布液の塗布量は、乾燥塗布量でいって、10g/m であった。
【0063】
また、上記記録層内のマイクロカプセル固形分率は約55%であった。
【0064】
マイクロカプセル固形分率は、まず、第1のマイクロカプセル分散液中の水分以外の構成成分の割合を求める。上記第1のマイクロカプセル分散液の任意の一定量をサンプルビン内に入れて重量を測定する。その後、このサンプルビン中の分散液を、100℃で4時間加熱することによって乾燥させる。そして、再び重量を測定する。乾燥前の測定値に対する乾燥後の測定値の割合を百分率で示した値を、第1のマイクロカプセル分散液のマイクロカプセル固形分率とする。この値を用いて、塗布液中(記録層中)のマイクロカプセル固形分率の値を計算したところ、上記にように約55%という値が得られる。
【0065】
(f)比較例1の媒体作製
上述の、第1のマイクロカプセル分散液10重量部、カプラー分散液4重量部、および塩基性化合物分散液4重量部を混合して比較例の光定着型感熱記録媒体形成用の塗布液を得た。
【0066】
次に、この塗布液をバーコーターにて、支持体としてのここでは白地の上質紙上に塗布した。塗布の済んだ紙を、40℃の温風乾燥機により乾燥した。
【0067】
これにより、ジアゾニウム塩およびラジカル捕集剤を内包するマイクロカプセル、カプラー、および塩基性化合物を含む記録層を、支持体上に具えた比較例1の光定着型感熱記録媒体が得られる。
【0068】
なお、上記塗布膜の乾燥時間は1〜2分とした。また、上記塗布液の塗布量は、乾燥塗布量でいって、10g/m であった。
【0069】
また、比較例1の記録層内のマイクロカプセル固形分率は約70%であった。
【0070】
(g)記録層中のマイクロカプセルの配合率の比較
上述したように、実施例1の媒体の記録層中のマイクロカプセルの固形分率は約55%で、比較例1の媒体のマイクロカプセル固形分率は約70%であった。この固形分率の値は、記録層中のマイクロカプセルの配合率の値に対応している。よって、塗布液中に、テフロン粒子分散液を含有させることによって、実施例1の媒体の記録層中に含まれるマイクロカプセルの配合率を、比較例1の媒体の記録層中のマイクロカプセルの配合率よりも低くすることができる。
【0071】
また、実施例1および比較例1の光定着型感熱記録媒体それぞれに対し、サーマルプリンタにより印字をした。各媒体とも、印字部分に鮮明な青発色が認められた。印字の済んだ各媒体に波長420nmを主とする光を照射し、非印字部分のジアゾニウム塩を分解して、記録を定着させた。そして各媒体それぞれの印字部分の黒ベース光学濃度を、Macbeth(マクベス)光学濃度計により測定した。
【0072】
この測定の結果、実施例1の光定着型感熱記録媒体の印字部分の黒ベース光学濃度は、1.15であり、また比較例1も1.15であった。
【0073】
従って、実施例1の媒体においては、高価なマイクロカプセルの配合率を比較例よりも低くしても、増感効果が損なわれることはない。よって、光定着型感熱記録媒体自体のコストも低くすることができる。
【0074】
(h)地肌かぶりおよびジアゾニウム塩の分解色の地肌への影響の確認
次に、光照射後の、実施例1および比較例1の光定着型感熱記録媒体の地肌部分の光学濃度を測定した。
【0075】
この測定の結果、実施例1の光定着型感熱記録媒体の地肌部分の黒ベース光学濃度は0.04、シアンベース光学濃度は0.04、マゼンダベース光学濃度は0.04およびイエローベース光学濃度は0.04であった。そして、比較例1は、黒ベース光学濃度が0.15、シアンベース光学濃度は0.15、マゼンダベース光学濃度は0.15およびイエローベース光学濃度は0.14であった。
【0076】
ここで、シアンとマゼンダの発色は、地肌かぶりを示し、イエローの発色はジアゾニウム塩の分解色を示している。
【0077】
これらのことから、添加剤としてテフロン粒子を用いると、地肌かぶりを防止でき、しかも、光照射後のジアゾニウム塩の分解色による地肌への影響も低減されていることが理解出来る。
【0078】
(i)耐圧性の確認
また、印字する前の実施例1の媒体および比較例1の媒体に対して、カレンダ装置(テストカレンダ装置小型:トクデン社製)を用いて、ニップ圧20kg/cmの圧力を印加した後、波長420nmを主とする光を照射し、未反応のジアゾニウム塩を分解した。
【0079】
その後、この媒体の上記圧力を印加した部分の光学濃度を測定した。
【0080】
この測定の結果、実施例1の光定着型感熱記録媒体の黒ベース光学濃度は0.04、シアンベース光学濃度は0.04、マゼンダベース光学濃度は0.04およびイエローベース光学濃度は0.04であった。また、比較例1は、黒ベース光学濃度が0.62、シアンベース光学濃度は0.70、マゼンダベース光学濃度は0.63およびイエローベース光学濃度は0.44であった。
【0081】
媒体に含有されているマイクロカプセルの粒径は約1.5μmである。そして、添加剤として、この例では粒径3μmのテフロン粒子が含まれている。よって、外からこの媒体に対して加えられる圧力は、マイクロカプセルよりも上記テフロン粒子に対して多く及ぶことになる。従って、圧発色が起こりにくくなり、耐圧性に優れた媒体を提供することができる。
【0082】
2.実施例2および比較例2
ジアゾニウム塩として、4−モルフォリノ−2,5−ジブトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートを用いた例を説明する。
【0083】
(a)マイクロカプセル分散液の調製
この4−モルフォリノ−2,5−ジブトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート(具体的には商品名DH300PF6(ダイトーケミックス社製))1gと、12gのD110Nと、6gのトリメチロールプロパントリアクリレートと、3.8gの酢酸エチルとを12gのフタル酸ジブチルに溶解させた。この溶液に、バインダ水溶液として、8重量%ポリビニルアルコール水溶液を81g加えた。この溶液を攪拌しながら、この溶液に超音波を、0.5秒ずつ0.5秒おきに休止時間も含めて20秒間照射することにより、この溶液を乳化させた。さらに攪拌しながらこの溶液に25mlの水を加え、さらに攪拌しながらこの溶液に上記条件と同様の条件で超音波を照射した。さらに、この溶液に攪拌しながら25mlの水を加え、次いでこの溶液を60℃で2時間加熱した。この一連の処理により、4−モルフォリノ−2,5−ジブトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートを内包した平均粒径1.5μmのマイクロカプセル分散液が得られた。
【0084】
なお、マイクロカプセル内に取り込まれずに上記分散液中に残存している4−モルフォリノ−2,5−ジブトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートを失活させるために、0.5gのテトラフェニルほう酸ナトリウム塩を、上記分散液中に加え、該分散液を常温で1時間攪拌する処理をした。以下この分散液を、説明の都合上、「第2のマイクロカプセル分散液」と称する。
【0085】
(b)実施例2の塗布液調製および媒体の作製
上記の第2のマイクロカプセル分散液10重量部と、実施例1で調製したカプラー分散液4重量部と、実施例1で調製した塩基性化合物分散液4重量部と、実施例1で調製したテフロン粒子分散液2重量部とを混合して、実施例2の光定着型感熱記録媒体形成用の塗布液を得た。
【0086】
次に、この塗布液をバーコーターにて、支持体としてのここでは白地の上質紙上に塗布した。塗布の済んだ紙を、40℃の温風乾燥機により乾燥した。
【0087】
これにより、ジアゾニウム塩およびラジカル捕集剤を内包するマイクロカプセル、カプラー、塩基性化合物および添加剤(テフロン粒子)を含む記録層を、支持体上に具えた実施例2の光定着型感熱記録媒体が得られる。
【0088】
なお、上記塗布膜の乾燥時間は1〜2分とした。また、上記塗布液の塗布量は、乾燥塗布量でいって、10g/m であった。
【0089】
また、上記記録層内のマイクロカプセル固形分率は約55%であった。
【0090】
(c)比較例2の塗布液調製および媒体の作製
一方、第2のマイクロカプセル分散液10重量部と、実施例1で調製したカプラー分散液4重量部と、実施例1で調製した塩基性化合物分散液4重量部とを混合して比較例2の光定着型感熱記録媒体形成用の塗布液を得た。
【0091】
次に、この塗布液をバーコーターにて、支持体としてのここでは白地の上質紙上に塗布した。塗布の済んだ紙を、40℃の温風乾燥機により乾燥した。
【0092】
これにより、ジアゾニウム塩およびラジカル捕集剤を内包するマイクロカプセル、カプラー、塩基性化合物を含む記録層を、支持体上に具えた比較例2の光定着型感熱記録媒体が得られる。
【0093】
なお、上記塗布膜の乾燥時間は1〜2分とした。また、上記塗布液の塗布量は、乾燥塗布量でいって、10g/m であった。
【0094】
また、上記記録層内のマイクロカプセル固形分率は約70%であった。
【0095】
(d)記録層中のマイクロカプセルの配合率の比較
上述したように、実施例2の媒体の記録層中のマイクロカプセル固形分率は約55%で、比較例2の媒体のマイクロカプセル固形分率は約70%であった。よって、第2の実施例の媒体の記録層中に含まれるマイクロカプセルの配合率を、比較例2の媒体の記録層中のマイクロカプセルの配合率よりも低くすることができる。
【0096】
また、実施例2および比較例2の光定着型感熱記録媒体それぞれに対し、サーマルプリンタにより印字をした。各媒体とも、印字部分に鮮明な青発色が認められた。印字の済んだ各媒体に波長420nmを主とする光を照射し、非印字部分のジアゾニウム塩を分解して、記録を定着させた。そして各媒体それぞれの印字部分の黒ベース光学濃度を、マクベス光学濃度計により測定した。
【0097】
この測定の結果、実施例2の光定着型感熱記録媒体の印字部分の黒ベース光学濃度は、1.20であり、また比較例2も1.20であった。
【0098】
従って、実施例2の媒体においては、高価なマイクロカプセルの配合率を比較例よりも低くしても、増感効果が損なわれることはない。よって、光定着型感熱記録媒体自体のコストも低くすることができる。
【0099】
(e)地肌かぶりおよびジアゾニウム塩の分解色の地肌への影響の確認
次に、光照射後の、実施例2および比較例2の光定着型感熱記録媒体の地肌部分の光学濃度を測定した。
【0100】
この測定の結果、実施例2の光定着型感熱記録媒体の地肌部分の黒ベース光学濃度は0.04、シアンベース光学濃度は0.03、マゼンダベース光学濃度は0.03およびイエローベース光学濃度は0.05であった。そして、比較例2は、黒ベース光学濃度が0.15、シアンベース光学濃度は0.15、マゼンダベース光学濃度は0.15およびイエローベース光学濃度は0.14であった。よって、添加剤としてテフロン粒子を用いると、比較例2の媒体よりも、地肌かぶりを示すシアンベース光学濃度およびマゼンダベース光学濃度が低い。また、ジアゾニウム塩の分解色を示すイエローベース光学濃度も低い。これにより地肌かぶりを防止でき、しかも、光照射後のジアゾニウム塩の分解色による地肌への影響も低減されていることが理解出来る。
【0101】
(f)耐圧性の確認
また、実施例1で行ったと同様に、印字する前の実施例2の媒体および比較例2の媒体に対して、カレンダ装置(テストカレンダ装置小型:トクデン社製)を用いて、ニップ圧20kg/cmの圧力を印加した後、波長420nmを主とする光を照射し、未反応のジアゾニウム塩を分解した。
【0102】
その後、これら媒体の上記圧力を印加した部分の光学濃度を測定した。
【0103】
この測定の結果、実施例2の光定着型感熱記録媒体の黒ベース光学濃度は0.04、シアンベース光学濃度は0.03、マゼンダベース光学濃度は0.03およびイエローベース光学濃度は0.05であった。また、比較例2は、黒ベース光学濃度が0.68、シアンベース光学濃度は0.76、マゼンダベース光学濃度0.67およびイエローベース光学濃度は0.55であった。
【0104】
よって、添加剤としてテフロン粒子を用いると、圧発色を抑制することができることが分かった。
【0105】
これらのことから、ジアゾニウム塩が違う場合でも、添加剤としてテフロン粒子を用いると、地肌かぶりを防止でき、ジアゾニウム塩の分解色の地肌への影響を低減でき、圧発色を抑制できることが理解できる。また、従来よりも記録層中のマイクロカプセルの配合率を低くしても、従来と同様の増感効果(印字濃度)が得られる。従って、高価なマイクロカプセルの配合率を従来よりも低くすることによって光定着型感熱記録媒体自体のコストを下げることができる。
【0106】
3.実施例3および比較例3
添加剤のパラフィン微小体として、パラフィンワックス粒子を用いた例を説明する。
【0107】
(a)添加剤分散液の調製
添加剤として、パラフィンワックス粒子を用いる。
【0108】
この添加剤が分散された添加剤分散液として、この例では、市販のパラフィンワックスエマルジョン(型番E−139:中京油脂社製)を用いる。この分散液中のパラフィンワックス粒子の平均粒径は3.3μmである。
【0109】
(b)実施例3の塗布液調製および媒体の作製
実施例1で調製した第1のマイクロカプセル分散液10重量部と、実施例1で調製したカプラー分散液4重量部と、実施例1で調製した塩基性化合物分散液4重量部と、上記添加剤分散液1重量部とを混合して、実施例3の光定着型感熱記録媒体形成用の塗布液を得た。
【0110】
次に、この塗布液をバーコーターにて、支持体としてのここでは白地の上質紙上に塗布した。塗布の済んだ紙を、40℃の温風乾燥機により乾燥させた。
【0111】
これにより、ジアゾニウム塩およびラジカル捕集剤を内包するマイクロカプセル、カプラー、塩基性化合物および添加剤(パラフィンワックス粒子)を含む記録層を、支持体上に具えた実施例3の光定着型感熱記録媒体が得られる。
【0112】
なお、上記塗布膜の乾燥時間は1〜2分とした。また、上記塗布液の塗布量は、乾燥塗布量でいって、10g/m であった。
【0113】
また、上記記録層内のマイクロカプセル固形分率は約55%であった。
【0114】
(c)比較例3の媒体
この例では、比較例1で用いた光定着型感熱記録媒体を用いる。
【0115】
すなわち、第1のマイクロカプセル分散液10重量部と、カプラー分散液4重量部と、塩基性化合物分散液4重量部とを混合して比較例の塗布液を得て、この塗布液を白地の上質紙上に塗布した。その後、塗膜を乾燥させてある。
【0116】
乾燥された塗膜は記録層となる。そして、この記録層内のマイクロカプセル固形分率は約70%であった。
【0117】
(d)記録層中のマイクロカプセルの配合率の比較
上述したように、実施例3の媒体の記録層中のマイクロカプセル固形分率は約55%で、比較例3の媒体の記録層中のマイクロカプセル固形分率は約70%であった。
【0118】
このように、実施例3の媒体の記録層中に含まれるマイクロカプセルの配合率を、比較例3の媒体の記録層中に含まれるマイクロカプセルの配合率よりも低くすることができる。
【0119】
また、実施例3および比較例3の光定着型感熱記録媒体のそれぞれに対し、上記実施例で用いたと同様のサーマルプリンタにより印字を行った。各媒体とも、印字部分に鮮明な青発色が認められた。印字の済んだ各媒体に波長420nmを主とする光を照射し、非印字部分のジアゾニウム塩を分解して、記録を定着させた。そして、各媒体それぞれの印字部分の黒ベース光学濃度を、マクベス光学濃度計により測定した。
【0120】
この結果、実施例3の媒体の印字部分の黒ベース光学濃度は1.25であり、比較例3の媒体の印字部分では1.15であった。
【0121】
従って、実施例3の媒体においては、高価なマイクロカプセルの配合率は比較例3よりも低いが、対熱増感効果が向上している。これは、サーマルプリンタによる印字の際、印字部分に熱を加えるが、この熱によって、印字部分付近のパラフィンワックス粒子が溶けて液化する。これにより、ジアゾニウム塩とカプラーとの反応場が提供されたためである。反応場が提供されたことによって、ジアゾニウム塩とカプラーとの反応は進みやすくなる。従って、熱に対する感度を向上させることができる。
【0122】
(e)地肌かぶりの影響の確認
次に、光照射後の、実施例3および比較例3の光定着型感熱記録媒体の地肌部分の光学濃度を測定した。
【0123】
この結果、実施例3の媒体の地肌部分の黒ベース光学濃度は0.04、シアンベース光学濃度は0.04、マゼンダベース光学濃度は0.04およびイエローベース光学濃度は0.04であった。そして、比較例3は、黒ベース光学濃度が0.15、シアンベース光学濃度は0.15、マゼンダベース光学濃度が0.15、およびイエローベース光学濃度が0.14であった。よって、添加剤としてパラフィンワックス粒子を用いると、地肌かぶりに起因するシアンベース光学濃度およびマゼンダベース光学濃度が、比較例3の媒体よりも低くなる。また、ジアゾニウム塩の分解色に起因するイエローベース光学濃度も低い。
【0124】
よって、地肌かぶりを防止でき、しかも、媒体への光照射後に生じるジアゾニウム塩の分解色による地肌への影響も低減できることが理解できる。
【0125】
(f)耐圧性の確認
実施例1と同様にして、印字する前の実施例3の媒体および比較例3の媒体に対して、カレンダ装置を用いて、ニップ圧10kg/cmの圧力を印加する。その後、媒体に波長420nmの光を照射して、未反応のジアゾニウム塩を分解した。
【0126】
次いで、圧力を印加した部分の光学濃度を測定した。
【0127】
この結果、実施例3の光定着型感熱記録媒体の黒ベース光学濃度は0.04、シアンベース光学濃度は0.04、マゼンダベース光学濃度は0.04およびイエローベース光学濃度は0.04であった。比較例3の媒体の黒ベース光学濃度は0.62、シアンベース光学濃度は0.70、マゼンダベース光学濃度は0.63およびイエローベース光学濃度は0.44であった。
【0128】
これにより、パラフィンワックス粒子が含有されていない比較例3の媒体は、圧力によって発色している。従って、記録層中にパラフィンワックスを含ませることによって、耐圧性に優れた媒体を提供できることが理解できる。
【0129】
4.実施例4および比較例4
添加剤のパラフィン微小体として、パラフィンワックス粒子を用い、ジアゾニウム塩として、実施例2で用いた4−モルフォリノ−2,5−ジブトキシベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートを用いる例を説明する。
【0130】
(a)実施例4の塗布液調製および媒体の作製
実施例2で調製した第2のマイクロカプセル分散液10重量部と、実施例1で調製したカプラー分散液4重量部と、実施例1で調製した塩基性化合物分散液4重量部と、実施例3で使用したのと同様のパラフィンワックス粒子分散液(パラフィンワックスエマルジョン)1重量部とを混合して、実施例4の光定着型感熱記録媒体形成用の塗布液を得た。
【0131】
次に、この塗布液をバーコーターにて、白地の上質紙上に塗布した。塗布の済んだ紙を、40℃の温風乾燥機により乾燥させた。
【0132】
これにより、ジアゾニウム塩およびラジカル捕集剤を内包するマイクロカプセル、カプラー、塩基性化合物および添加剤(パラフィンワックス粒子)を含む記録層を、支持体上に具えた実施例4の光定着型感熱記録媒体が得られる。
【0133】
なお、上記塗布膜の乾燥時間は1〜2分とした。また、上記塗布液の塗布量は、乾燥塗布量でいって、10g/m であった。
【0134】
また、上記記録層内のマイクロカプセル固形分率は約55%であった。
【0135】
(b)比較例4の媒体
比較例4の媒体は、比較例2の媒体と同様の媒体とする。すなわち、第2のマイクロカプセル分散液10重量部と、実施例1で調製したカプラー分散液4重量部と、実施例1で調製した塩基性化合物分散液4重量部とを混合した塗布液を、白地の上質紙上に塗布して、この塗膜を乾燥させてある。従って、比較例4の媒体は、ジアゾニウム塩およびラジカル捕集剤を内包するマイクロカプセル、カプラー、塩基性化合物を含む記録層と、この記録層が設けられた支持体(上質紙)とで構成されている。なお、上記記録層内のマイクロカプセル固形分率は約70%であった。
【0136】
(c)記録層中のマイクロカプセルの配合率の比較および増感効果の確認
上述したように、実施例4の媒体の記録層中のマイクロカプセル固形分率は約55%で、比較例4の媒体のマイクロカプセル固形分率は約70%であった。従って、記録層中にパラフィンワックス粒子が含まれている分、比較例4よりも実施例4の媒体の方が、記録層中に含まれるマイクロカプセルの数が少なくなる。
【0137】
また、実施例4および比較例4の光定着型感熱記録媒体それぞれに対し、サーマルプリンタにより印字をした。各媒体とも、印字部分に鮮明な青発色が認められた。印字の済んだ各媒体に波長420nmを主とする光を照射し、非印字部分のジアゾニウム塩を分解して、記録を定着させた。そして各媒体それぞれの印字部分の黒ベース光学濃度を、マクベス光学濃度計により測定した。
【0138】
この測定の結果、実施例4の媒体の印字部分の黒ベース光学濃度は、1.32であり、また比較例4は1.20であった。
【0139】
従って、実施例4の媒体においては、高価なマイクロカプセルの配合率は比較例4よりも低いが、増感効果が向上している。これは、サーマルプリンタによる印字の際、印字部分に熱を加えるが、この熱によって、印字部分付近のパラフィンワックス粒子が溶けて液化し、これにより、ジアゾニウム塩とカプラーとの反応場が与えられたためである。反応場が提供されたことによって、ジアゾニウム塩とカプラーとの反応は進行しやすくなる。従って熱に対する感度を向上させることができる。
【0140】
また、高価なマイクロカプセルの配合率を減らしても、増感効果は向上している。よって、光定着型感熱記録媒体自体のコストを低減できる。
【0141】
(d)地肌かぶりの影響の確認
次に、光照射後の、実施例4および比較例4の光定着型感熱記録媒体の地肌部分の光学濃度を測定した。
【0142】
この測定の結果、実施例4の光定着型感熱記録媒体の地肌部分の黒ベース光学濃度は0.04、シアンベース光学濃度は0.03、マゼンダベース光学濃度は0.03およびイエローベース光学濃度は0.05であった。そして、比較例4は、黒ベース光学濃度が0.15、シアンベース光学濃度は0.15、マゼンダベース光学濃度は0.15およびイエローベース光学濃度は0.14であった。よって、添加剤としてパラフィンワックス粒子を用いると、比較例4の媒体よりも、地肌かぶりを示すシアンベース光学濃度およびマゼンダベース光学濃度が低い。また、ジアゾニウム塩の分解色を示すイエローベース光学濃度も低い。これにより地肌かぶりを防止でき、しかも、光照射後のジアゾニウム塩の分解色による地肌への影響も低減されていることが理解出来る。
【0143】
(e)耐圧性の確認
また、実施例1で行ったと同様に、印字する前の実施例4の媒体および比較例4の媒体に対して、カレンダ装置(テストカレンダ装置小型:トクデン社製)を用いて、ニップ圧10kg/cmの圧力を印加した後、波長420nmを主とする光を照射し、未反応のジアゾニウム塩を分解した。
【0144】
その後、これら媒体の上記圧力を印加した部分の光学濃度を測定した。
【0145】
この測定の結果、実施例4の光定着型感熱記録媒体の黒ベース光学濃度は0.04、シアンベース光学濃度は0.03、マゼンダベース光学濃度は0.03およびイエローベース光学濃度は0.05であった。また、比較例4は、黒ベース光学濃度が0.68、シアンベース光学濃度は0.76、マゼンダベース光学濃度0.67およびイエローベース光学濃度は0.55であった。
【0146】
これにより、パラフィンワックス粒子が含有されていない比較例の媒体は、圧力によって発色している。よって、記録層中にパラフィンワックス粒子を含有させることによって耐圧性に優れた媒体を提供できる。
【0147】
また、上述した例では、いずれも、添加剤として、テフロン粒子およびパラフィンワックス粒子のうちの一方の粒子を媒体中に含有させた場合について説明したが、これに限らず、テフロン粒子およびパラフィンワックス粒子の両方を含有させても同様の効果が得られる。なお、添加剤は粒子状のみならず、粉状体であっても、その他の形状のものであってもよく、微小体であるならば、なんら発明の効果に影響を及ぼさない。
【0148】
また、上述した実施例1〜実施例4および比較例1〜比較例4で得られた比較データを表1〜表4に示した。
【0149】
【表1】
Figure 0003552927
【0150】
【表2】
Figure 0003552927
【0151】
【表3】
Figure 0003552927
【0152】
【表4】
Figure 0003552927
【0153】
【発明の効果】
上述した説明から明らかなように、この発明の光定着型感熱記録媒体によれば、カプラーと、このカプラーと反応すると記録に寄与する色素を生成し、しかも所定の光を照射すると活性を失うジアゾニウム塩を内包させたマイクロカプセルと、ジアゾニウム塩とカプラーとの反応を生じさせる雰囲気を生成する塩基性化合物とを含む記録層に添加剤として、テフロン微小体およびパラフィンワックス微小体の双方またはいずれか一方を含ませてある。
【0154】
また、この発明の光定着型感熱記録媒体の製造方法によれば、ジアゾニウム塩と、カプラーと、塩基性化合物とを含む塗布液を支持体に塗布して塗布膜を形成する工程と、この塗膜を乾燥する工程とを含んでいる。そして、塗布液中には、添加剤としてテフロン微小体およびパラフィンワックス微小体の双方もしくはいずれか一方を含有させてある。
【0155】
このように、テフロン微小体(具体的にはテフロン粒子)およびパラフィンワックス微小体(具体的にはパラフィンワックス粒子)等の添加剤を記録層中に含ませてあるため、この発明の光定着型感熱記録媒体は、従来に比べて地肌かぶりが少なくなる。また、記録層中に新たに添加剤が含有されているために、高価なマイクロカプセルの配合率が低下しても、上記添加剤によって、光定着型感熱記録媒体の対熱増感効果を維持または向上させることができる。よって、対熱増感効果を損なうことなく、光定着型感熱記録媒体のコストを下げることができる。また、耐熱性に優れた媒体となる。さらに、特にテフロン粒子を添加剤として媒体中に加えた場合には、印字後の媒体への光照射によって生じるジアゾニウム塩の分解色の媒体地肌への影響を低減することができる。また、特にパラフィンワックス粒子を添加剤として加えた場合には、対熱増感効果をより向上させることができる。

Claims (8)

  1. 反応性物質を含む記録層を支持体上に具え、
    前記反応性物質は、カプラーと、該カプラーと反応すると記録に寄与する色素を生成すると共に、所定の光が照射されると活性を失うジアゾニウム塩と、前記反応を生じさせる雰囲気を生成する塩基性化合物とを含み、
    前記ジアゾニウム塩は、マイクロカプセルに内包されており、
    さらに、前記記録層は、その内部に添加剤として、テフロン微小体およびパラフィンワックス微小体の双方またはいずれか一方を含んでいる
    ことを特徴とする光定着型感熱記録媒体。
  2. 請求項1に記載の光定着型感熱記録媒体において、
    前記カプラー、前記マイクロカプセル、前記塩基性化合物および前記添加剤は、前記記録層中に混在している
    ことを特徴とする光定着型感熱記録媒体。
  3. 請求項1に記載の光定着型感熱記録媒体において、
    前記マイクロカプセルは、該マイクロカプセルに対して、前記記録のための加熱が行われたとき、前記反応性物質を前記マイクロカプセルの壁を経て透過させる材料で形成してある
    ことを特徴とする光定着型感熱記録媒体。
  4. 請求項1に記載の光定着型感熱記録媒体において、
    前記添加剤は、前記光定着型感熱記録媒体の地肌かぶりを実質的に抑制し得る量含まれている
    ことを特徴とする光定着型感熱記録媒体。
  5. 請求項1に記載の光定着型感熱記録媒体において、
    前記添加剤の大きさは、前記反応性物質よりも大きい
    ことを特徴とする光定着型感熱記録媒体。
  6. 請求項1に記載の光定着型感熱記録媒体において、
    前記添加剤は、前記光定着型感熱記録媒体に不可避的に加えられる外圧に対して、前記マイクロカプセルの破壊を回避できる程度の大きさおよび含有量で含有されている
    ことを特徴とする光定着型感熱記録媒体。
  7. 請求項1に記載の光定着型感熱記録媒体において、
    前記添加剤は、前記所定の光によって生じる前記ジアゾニウム塩の分解色による、前記光定着型感熱記録媒体への影響を低減できる程度の屈折率および含有量で含まれている
    ことを特徴とする光定着型感熱記録媒体。
  8. マイクロカプセルに内包されていて、カプラーと反応すると記録に寄与する色素を生成し、所定の光を照射すると活性を失うジアゾニウム塩と、当該カプラーと、前記反応を生じさせる雰囲気を生成する塩基性化合物とを含む塗布液を支持体に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜を乾燥する工程とを含む光定着型感熱記録媒体の製造方法において、
    前記塗布液中に、添加剤としてテフロン微小体およびパラフィンワックス微小体のうちの双方またはいずれか一方を含有させる
    ことを特徴とする光定着型感熱記録媒体の製造方法。
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