JP3552898B2 - リンパ球の活性化抑制剤 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なリンパ球活性化抑制剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
人間の生きている環境には、ウイルス、細菌、カビ、寄生虫等のおびただしい種類の感染性の微生物が存在している。そのいずれかが生体内で増殖すると病気の原因となり、ひいては個体の死をももたらす。従って、個体が健康的に生活するためには、これら外因性の微生物などから生体を防御する機構が必要となる。この機構が「免疫」と呼ばれるものである。
生体において主に免疫を担当するのがリンパ球細胞である。リンパ球細胞は、その機能によりTリンパ球(T細胞)とBリンパ球(B細胞)に大別される。T細胞は抗原提示能、細胞障害能等を、B細胞は抗体産生能を有していると考えられている。これら2種のリンパ球は全て同じ血液幹細胞に由来し、骨髄中あるいはその他の器官で様々な分化、または増殖因子の作用を受けて分化を繰り返した後、末梢血中へ放出される。
【0003】
例えば、T細胞の場合、骨髄中で造血幹細胞が前T細胞に分化した後胸腺へと移行し、さらに分化を繰り返し成熟T細胞になる。その後抗原の刺激により活性化され、増殖能あるいは細胞障害能等を有する活性化T細胞となる。一方、B細胞の場合、骨髄中で造血幹細胞がIL−1,IL−2,IL−4,IL−6 等のサイトカインの刺激によりプロB細胞、プレB細胞を経て成熟B細胞に分化し、さらに抗原刺激を受けて活性化され、最終的に抗体産生能を有する形質細胞となる。
【0004】
従って、リンパ球がそれぞれの機能を発揮するためには最終的な活性化が必須である。前述の通り、免疫は外来の異物から生体を防御することが目的であることから、巧みな機構により異物(非自己)と自己を認識し、非自己のみを抗原として反応する仕組みになっている。ところがこの機構が何らかの原因で破綻し、自己をも抗原と認識するようになった結果起こる疾患が自己免疫疾患である。また、非自己に対し免疫反応が過度に、あるいは不適当な形で起こり、その結果組織障害を引き起こす状態をアレルギーという。
【0005】
一方、他人の臓器等を移植した場合、それを非自己と認識し排除しようとする反応(拒絶反応)は、生体の正常な機構ともいえる。個体間には遺伝学的に違いがあることが知られており、その代表的なものが主要組織適合遺伝子(MHC )と呼ばれるものである。MHC が異なる個体からの臓器移植は、大きな拒絶反応を引き起こす。近年の医療技術の進歩により、白血病、あるいはリンパ腫治療時の骨髄移植、末期腎疾患患者に対する腎移植、さらには角膜移植等、臓器等の移植の必要性は非常に大きなものとなっている。それに伴い、拒絶反応をいかに抑制するかも大きな問題といえる。
【0006】
多くの実験や研究により、リンパ球の活性化からそれに起因する疾患に至る経路が解明されつつあり、それに伴い、リンパ球活性化関与疾患に対する多くの治療薬が開発されている。現在リンパ球活性化に起因する自己免疫疾患のうち、慢性関節リウマチや全身性エリトマトーデス、さらには強皮症に対してアスピリンのような非ステロイド性抗炎症薬やステロイド剤、アザチオプリンのような免疫抑制剤が使用されている。
【0007】
また、臓器等移植時の拒絶反応を抑制する目的で、主に腎移植や骨髄移植の際にサイクロスポリンやアザチオプリン、ミゾリビン等の免疫抑制剤が使用されている。さらに、アレルギーの治療薬としては抗ヒスタミン薬や、アレルギーの原因となる化学物質の遊離を抑制する化学伝達物質遊離抑制薬等が用いられている。しかし、これらのうち非ステロイド性抗炎症薬やステロイド剤、抗ヒスタミン薬や化学伝達物質遊離抑制薬はいずれも本疾患の原因であるリンパ球の活性化に対しては何ら作用せず、あくまで炎症を押さえる対症療法に過ぎないことから、本疾患を根本的に治療するものではない。
【0008】
また、現在使用されている免疫抑制剤はその性質上、血球数減少やショック等の重篤な副作用を有するものも多く、未だ十分とは言い難い。さらに、自己免疫疾患の多くは現在も治療法や治療薬が全く無いのも現実である。
一方、Goto, T.らは、ヒト骨髄腫細胞をマウスに免疫して得られたモノクローナル抗体(抗HM1.24抗体)を報告している(Blood (1994) 84, 1922−1930)。ヒト骨髄腫細胞を移植したマウスに抗HM1.24抗体を投与すると、この抗体が腫瘍組織に特異的に集積したこと(小阪昌明ら、日本臨床 (1995) 53, 627−635 )から、抗HM1.24抗体はラジオアイソトープ標識による腫瘍局在の診断や、ラジオイムノセラピーなどのミサイル療法に応用することが可能であることが示唆されている。しかし、抗HM1.24抗体がリンパ球の活性化抑制に関与することは知られていなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
現在用いられているリンパ球活性化関与疾患の治療薬には、種々の抗炎症剤や免疫抑制剤が挙げられるが、上記のごとく、未だ十分とは言い難く、これら疾患を治療し患者の苦痛を緩和する治療剤が待たれている。従って、本発明の目的は、リンパ球活性化抑制剤を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、所期の目的を達成すべく、抗HM1.24抗体(Goto, T.ら Blood (1994) 84. 1922−1930)を用いて、FCM (フローサイトメトリー)解析、T細胞の幼若化反応に対する作用、B細胞の抗体産生に対する作用、さらには抗HM1.24抗体が特異的に結合する抗原蛋白質単離の研究を重ねた結果、抗HM1.24抗体が認識する抗原タンパク質が活性化リンパ球に発現していること、および抗HM1.24抗体がリンパ球の活性化を抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質に特異的に結合する抗体を有効成分として含有する、リンパ球の活性化抑制剤を提供する。
本発明はまた、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質に特異的に結合する抗体を有効成分として含有する、T細胞またはB細胞の活性化抑制剤を提供する。
本発明はまた、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質に特異的に結合するモノクローナル抗体を有効成分として含有する、リンパ球の活性化抑制剤を提供する。
【0012】
本発明はまた、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質に特異的に結合する、ヒト抗体定常領域を有する抗体を有効成分として含有する、リンパ球の活性化抑制剤を提供する。
本発明はまた、抗HM1.24抗体を有効成分として含有する、リンパ球の活性化抑制剤を提供する。
本発明はまた、キメラ抗体またはヒト型化抗体を有効成分として含有する、リンパ球の活性化抑制剤を提供する。
本発明はまた、キメラ抗HM1.24抗体またはヒト型化抗HM1.24抗体を有効成分として含有する、リンパ球の活性化抑制剤を提供する。
【0013】
本発明はまた、抗HM1.24抗体が認識するエピトープと特異的に結合する抗体を有効成分として含有する、リンパ球の活性化抑制剤を提供する。
本発明はまた、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質に特異的に結合する抗体を有効成分として含有する、リンパ球活性化関与疾患の予防・治療剤を提供する。
さらに、本発明は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質に特異的に結合する抗体を有効成分として含有する、自己免疫疾患、臓器等移植時の拒絶反応、アレルギーの予防・治療剤を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
1. 抗体の作製
1−1. ハイブリドーマの作製
本発明で使用される抗体を産生するハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、HM1.24抗原蛋白質やHM1.24抗原を発現する細胞を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
【0015】
具体的には、モノクローナル抗体を作製するには次のようにすればよい。例えば、抗体取得の感作抗原であるHM1.24抗原発現細胞としては、ヒ卜多発性骨髄腫細胞株であるKPMM2 (特開平7−236475)やKPC−32(Goto, T. et al., Jpn. J. Clin. Hematol. (1991) 32, 1400 )を用いることができる。また、感作抗原として配列番号1 に示すアミノ酸配列を有する蛋白質、あるいは抗HM1.24抗体が認識するエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドを使用することができる。
【0016】
なお、感作抗原として使用される、配列番号1 に示すアミノ酸配列を有する蛋白質をコードするcDNAはpUC19 ベクターのXbaI切断部位に間に挿入されて、プラスミドpRS38−pUC19 として調製されている。このプラスミドpRS38−pUC19 を含む大腸菌(E.coli)は、平成5 年(1993年)10月5 日付で工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に、Escherichia coli DH5α(pRS38−pUC19 )として、受託番号FERM BP−4434としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている(特開平7−196694参照)。このプラスミドpRS38−pUC19 に含まれるcDNA断片を用いて遺伝子工学的手法により、抗HM1.24抗体が認識するエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドを作製することができる。
【0017】
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター等が使用される。
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内または、皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS (Phosphate−Buffered Saline )や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものを所望により通常のアジュバント、例えば、フロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4−21日毎に数回投与するのが好ましい。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することができる。
【0018】
このように免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞が取り出され、細胞融合に付される。細胞融合に付される好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞としての哺乳動物のミエローマ細胞は、すでに、公知の種々の細胞株、例えば、P3X63Ag8.653(J. Immnol. (1979) 123: 1548−1550)、P3X63Ag8U.1 (Current Topics in Microbiology and Immunology (1978) 81: 1−7)、NS−1(Kohler. G. and Milstein, C. Eur. J. Immunol.(1976) 6: 511−519)、MPC−11(Margulies. D. H. et al., Cell (1976) 8: 405−415 )、SP2/0 (Shulman, M. et al., Nature (1978) 276: 269−270)、FO(de St. Groth, S. F. et al., J. Immunol. Methods (1980) 35: 1−21 )、S194(Trowbridge, I. S. J. Exp. Med. (1978) 148: 313−323)、R210(Galfre, G.et al., Nature (1979) 277: 131−133 )等が適宜使用される。
【0019】
前記免疫細胞とミエローマ細胞の細胞融合は基本的には公知の方法、たとえば、ミルステインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C. 、Methods Enzymol. (1981) 73: 3−46)等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は例えば、細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては例えば、ポリエチレングリコール(PEG )、センダイウィルス(HVJ )等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
【0020】
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は、例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1−10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM 培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS )等の血清補液を併用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め、37℃程度に加温したPEG 溶液、例えば、平均分子量1000〜6000程度のPEG 溶液を通常、30〜60%(w/v )の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)が形成される。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去できる。
【0021】
当該ハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えば、HAT 培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。当該HAT 培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間、通常数日〜数週間継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよび単一クローニングが行われる。
【0022】
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をインビトロでHM1.24抗原またはHM1.24抗原発現細胞で感作し、感作リンパ球をヒトミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、HM1.24抗原またはHM1.24抗原発現細胞への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1−59878 参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原となるHM1.24抗原またはHM1.24抗原発現細胞を投与し、前述の方法に従い所望のヒト抗体を取得してもよい(国際特許出願公開番号WO 93/12227 、WO 92/03918 、WO 94/02602 、WO 94/25585 、WO 96/34096 、WO 96/33735 参照)。
【0023】
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
【0024】
具体的には、抗HM1.24抗体産生ハイブリドーマの作製は、Goto, T.らの方法(Blood (1994) 84. 1922−1930)により行うことができる。工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成7 年9 月14日にFERMBP−5233としてブタペスト条約に基づき国際寄託された抗HM1.24抗体産生ハイブリドーマをBALB/cマウス(日本クレア製)の腹腔内に注入して腹水を得、この腹水から抗HM1.24抗体を精製する方法や、本ハイブリドーマを適当な培地、例えば、10%ウシ胎児血清、5 %BM−Condimed H1(Boehringer Mannheim 製)含有RPMI1640培地、ハイブリドーマSFM 培地(GIBCO−BRL 製)、PFHM−II 培地(GIBCO−BRL 製)等で培養し、その培養上清から抗HM1.24抗体を精製する方法で行うことができる。
【0025】
1−2. 組換え型抗体
本発明では、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体を用いることができる(例えば、Carl, A. K. Borrebaeck, James, W. Larrick, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990 参照)。
【0026】
具体的には、目的とする抗体を産生するハイブリドーマから、抗体の可変(V )領域をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. ら、Biochemistry (1979) 18, 5294−5299 )、AGPC法(Chomczynski, P. ら、Analytical Biochemistry, (1987) 162, 156−159)等により全RNA を調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia 製)等を使用してmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia 製)を用いることによりmRNAを直接調製することができる。
【0027】
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V 領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First−strand cDNA Synthesis Kit 等を用いて行うことができる。また、cDNAの合成および増幅を行うには5’−Ampli FINDER RACE Kit (Clontech製)およびPCR を用いた5’−RACE 法(Frohman, M. A. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1988) 85, 8998−9002 ;Belyavsky, A. ら、Nucleic Acids Res. (1989) 17, 2919−2932 )を使用することができる。得られたPCR 産物から目的とするDNA 断片を精製し、ベクターDNA と連結する。さらに、これより組換えベクターを作成し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNA の塩基配列を公知の方法、例えば、デオキシ法により確認する。
【0028】
目的とする抗体のV 領域をコードするDNA が得られれば、これを所望の抗体定常領域(C 領域)をコードするDNA と連結し、これを発現ベクターへ組み込む。または、抗体のV 領域をコードするDNA を、抗体C 領域のDNA を含む発現ベクターへ組み込んでもよい。
本発明で使用される抗体を製造するには、後述のように抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。
【0029】
1−3. 改変抗体
本発明では、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト型化(Humanized )抗体を使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V 領域をコードするDNA をヒト抗体C 領域をコードするDNA と連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 125023 、国際特許出願公開番号WO 96/02576 参照)。この既知の方法を用いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
【0030】
例えば、キメラ抗HM1.24抗体のL 鎖V 領域およびH 鎖V 領域をコードするDNA を含むプラスミドを有する大腸菌は、各々Escherichia coli DH5α( pUC19−1.24L−gκ)およびEscherichia coli DH5α( pUC19−1.24H−gγ1 )として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成8 年8 月29日に、各々FERM BP−5646およびFERM BP−5644としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている(特願平9−271536参照)。
ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、たとえばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determiningregion )をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 125023 、国際特許出願公開番号WO 96/02576 参照)。
【0031】
具体的には、マウス抗体のCDR とヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)を連結するように設計したDNA 配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR 法により合成する。得られたDNA をヒト抗体C 領域をコードするDNA と連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 239400 、国際特許出願公開番号WO 96/02576 参照)。
CDR を介して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域のフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato, K.et al., Cancer Res. (1993) 53, 851−856)。
【0032】
例えば、ヒト型化抗HM1.24抗体のL 鎖V 領域aバージョン(配列番号:2)およびH 鎖V 領域rバージョン(配列番号:3)をコードするDNA を含むプラスミドを有する大腸菌は、各々Escherichia coli DH5α(pUC19−RVLa−AHM−gκ)およびEscherichia coli DH5α(pUC19−RVHr−AHM−gγ1 )として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成8 年8 月29日に、各々FERM BP−5645およびFERM BP−5643としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている(特願平9−271536参照)。また、ヒト型化抗HM1.24抗体のH 鎖V 領域sバージョン(配列番号:4)をコードするDNA を含むプラスミドを有する大腸菌は、Escherichia coli DH5α(pUC19−RVHs−AHM−gγ1)として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成9 年(1997年)9 月29日にFERM BP−6127としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている(特願平9−271536参照)。キメラ抗体、ヒト型化抗体には、ヒト抗体C 領域が使用され、特に好ましいヒト抗体定常領域としてヒトC γを使用することができる。
【0033】
キメラ抗体はヒト以外の哺乳動物由来抗体の可変領域とヒト抗体由来のC 領域からなり、ヒト型化抗体はヒト以外の哺乳動物由来抗体の相補性決定領域とヒト抗体由来のフレームワーク領域(framework region; FR)およびC 領域からなり、ヒト体内における抗原性が低下しているため、本発明の治療剤の有効成分として有用である。
本発明に使用されるヒト型化抗体の好ましい具体例としては、ヒト型化抗HM1.24抗体が挙げられる(特願平9−271536参照)。ヒト型化抗HM1.24抗体のL 鎖V 領域の好ましい具体例としては、配列番号2に示される塩基配列でコードされるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。また、ヒト型化抗HM1.24抗体のH 鎖V 領域の好ましい具体例としては、配列番号3又は4に示される塩基配列でコードされるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。
【0034】
1−4. 発現および産生
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、取得することができる。哺乳類細胞の場合、常用される有用なプロモーター、発現される抗体遺伝子、その3’側下流にポリA シグナルを機能的に結合させたDNA あるいはそれを含むベクターにより発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer )を挙げることができる。
【0035】
また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV 40 )等のウィルスプロモーター/エンハンサーやヒトエロンゲーションファクター1 α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサーを用いればよい。
例えば、SV 40 プロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mulliganらの方法(Nature (1979) 277, 108)、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mizushima らの方法(Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322)に従えば容易に実施することができる。
【0036】
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列、発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーターとしては、laczプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。laczプロモーターを使用する場合、Wardらの方法(Nature (1098) 341,544−546;FASEB J. (1992) 6, 2422−2427)、araBプロモーターを使用する場合、Betterらの方法(Science (1988) 240, 1041−1043 )に従えばよい。
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379 )を使用すればよい。ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切にリフォールド(refold)して使用する(例えば、WO96/30394を参照)。
【0037】
複製起源としては、SV 40 、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV )等の由来のものを用いることができ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH )遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の産生系を使用することができる。抗体製造のための産生系は、インビトロおよびインビボの産生系がある。インビトロの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。
【0038】
真核細胞を使用する場合、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を用いる産生系がある。動物細胞としては、(1) 哺乳類細胞、例えば、CHO 、COS 、ミエローマ、BHK (baby hamster kidney )、HeLa、Vero、(2) 両生類細胞、例えば、アフリカツメガエル卵母細胞、あるいは(3) 昆虫細胞、例えば、sf9 、sf21、Tn5 などが知られている。植物細胞としては、ニコティアナ(Nicotiana )属、例えばニコティアナ・タバカム(Nicotiana tabacum )由来の細胞が知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(Saccaromyces)属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus )属、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger )などが知られている。
【0039】
原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E. coli )、枯草菌が知られている。
これらの細胞に、目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をインビトロで培養することにより抗体が得られる。培養は、公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM 、RPMI1640、IMDMを使用することができ、牛胎児血清(FCS )等の血清補液を併用することもできる。また、抗体遺伝子を導入した細胞を動物の腹腔等へ移すことにより、インビボにて抗体を産生してもよい。
【0040】
一方、インビボの産生系としては、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。動物を使用する場合、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系がある。
哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシを用いることができる(Vicki Glaser, SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993 )。また、昆虫としては、カイコを用いることができる。
【0041】
植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。
これらの動物または植物に抗体遺伝子を導入し、動物または植物の体内で抗体を産生させ、回収する。例えば、抗体遺伝子をヤギβカゼインのような乳汁中に固有に産生される蛋白質をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA 断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。
【0042】
トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology (1994) 12, 699−702 )。また、カイコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を挿入したバキュロウィルスをカイコに感染させ、このカイコの体液より所望の抗体を得る(Susumu, M. et al., Nature (1985) 315, 592−594 )。
さらに、タバコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を植物発現用ベクター、例えばpMON 530に挿入し、このベクターをAgrobacterium tumefaciens のようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えばNicotiana tabacum に感染させ、本タバコの葉より所望の抗体を得る(Julian, K.−C. Ma et al., Eur. J.Immunol. (1994) 24, 131−138)。
【0043】
上述のように、インビトロまたはインビボの産生系にて抗体を産生する場合、抗体重鎖(H 鎖)または軽鎖(L 鎖)をコードするDNA を別々に発現ベクターに組み込んで宿主を同時形質転換させてもよいし、あるいはH 鎖およびL 鎖をコードするDNA を単一の発現ベクターに組み込んで、宿主を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号WO 94−11523 参照)。
上述のように得られた抗体は、ポリエチレングリコール(PEG )等の各種分子と結合させ抗体修飾物として使用することもできる。本願特許請求の範囲でいう「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野においてすでに確立されている。
【0044】
2. 抗体の分離、精製
2−1. 抗体の分離、精製
前記のように産生、発現された抗体は、細胞内外、宿主から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製はアフィニティークロマトグラフィーにより行うことができる。アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、例えば、プロテインA カラム、プロテインG カラムが挙げられる。プロテインA カラムに用いる担体として、例えば、Hyper D 、POROS 、Sepharose F.F.等が挙げられる。
【0045】
その他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、上記アフィニティークロマトグラフィー以外のクロマトグラフィー、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせれば、本発明で使用される抗体を分離、精製することができる。クロマトグラフィーとしては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲルろ過等が挙げられる。これらのクロマトグラフィーはHPLCに適用することができる。また逆相HPLCを用いることができる。
【0046】
2−2. 抗体の濃度測定
2−1 で得られた抗体の濃度測定は吸光度の測定またはELISA 等により行うことができる。すなわち、吸光度の測定による場合には、本発明で使用される抗体または抗体を含むサンプルをPBS(−)で適当に希釈した後、280 nmの吸光度を測定し、1 mg/ml を1.35 OD として算出する。また、ELISA による場合は以下のように測定することができる。すなわち、0.1M 重炭酸緩衝液(pH9.6 )で1 μg/ml に希釈したヤギ抗ヒトIgG (BIO SOURCE製)100 μl を96穴プレート(Nunc製)に加え、4℃で一晩インキュベーションし、抗体を固層化する。
【0047】
ブロッキングの後、適宜希釈した本発明で使用される抗体または抗体を含むサンプル、あるいは標品としてヒトIgG (CAPPEL製)100 μl を添加し、室温にて1時間インキュベーションする。洗浄後、5000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG (BIO SOURCE製)100 μl を加え、室温にて1時間インキュベートする。洗浄後、基質溶液を加えインキュベーションの後、MICROPLATE READER Model 3550(Bio−Rad 製)を用いて405nm での吸光度を測定し、目的の抗体の濃度を算出する。
【0048】
3. 細胞の調製
本発明で用いる細胞は、以下の方法で調製することができる。
3−1. ヒ卜末梢血リンパ球画分の調製
健常人より採取した末梢血液をPBS(−)で1/2 希釈後、50 ml 遠心チューブ(BECTON DICKINSON製)中でFicoll−paque(pharmacia 製)に重層し450 x g 、室温で40分間遠心した後、境界層の単核球画分を分離する。同画分を10% 牛胎児血清(Moregate製)含有RPMI1640培地(GIBCO−BRL 製)で適当密度に調製後、プラスチックシャーレ中で37℃、5%CO2条件下にて1時間インキュベー卜する操作を2 度行うことにより、シヤーレに付着した細胞を除去する。残った非付着性の細胞をヒ卜末梢血リンパ球画分として以下の実験に用いることができる。
【0049】
3−2. SACによるヒ卜末梢血B 細胞の活性化
上記の通り調製したヒ卜末梢血リンパ球をポリプロピレンチューブ中、5 x 106 cells/mlの密度で1 ng/ml IL−6存在下、あるいは非存在下で0.0l % SAC(Pansorbin cells ,Calbiochem. 製)と2 日間、37℃、5% CO2条件下でインキュべー卜することで、末梢血リンパ球中のB 細胞を活性化することができる。
3−3.ヒ卜末梢T 細胞の精製
ヒ卜末梢T 細胞は3−1 で調製したヒ卜末梢血リンパ球からCellect Humm T cell Kit (Biotex製)を用いて、添付の方法に従い精製することができる。
【0050】
3−4.PHA 刺激によるヒ卜抹消血T 細胞の活性化
上記3−3 で精製したT 細胞を2%牛胎児血清(Moregate製)含有RPMI1640培地に懸濁し24穴培養プレート中 1 x 106 cell/1 ml/well の細胞密度で、1 あるいは10μg/mlのPHA (Phytohemagglutinin,Sigma 製)を添加し37℃、5%CO2 条件下、4 日間培養することで末梢血リンパ球中のT 細胞を活性化することができる。
【0051】
4. FCM 解析
リンパ球細胞と本発明で使用される抗体との反応性は、FCM (フローサイトメトリー)解析で行うことができる。細胞としては、新鮮分離細胞あるいはそれをさらに培養した細胞を用いることができる。例えば新鮮分離細胞として、末梢血単核球、末梢血リンパ球、末梢血Tリンパ球、末梢血Bリンパ球などを用いることができる。
【0052】
上記細胞をPBS(−)で洗浄した後、 FACS 緩衝液(2 %ウシ胎児血清、0.1 %アジ化ナトリウム含有PBS(−))で25μg/ml に希釈した抗HM1.24抗体あるいはコントロール抗体 100μl を加え、氷温下30分インキュベートする。FACS 緩衝液で洗浄した後、25μg/ml のFITC標識ヤギ抗マウス抗体(GAM, Becton Dickinson 製)100 μl を加え、氷温下30分間インキュベートする。FACS 緩衝液で洗浄した後、600 μl のFACS 緩衝液に懸濁し、FACScan (Becton Dickinson製)で各細胞の蛍光強度を測定すればよい。
【0053】
5. 効果の確認
リンパ球はその活性化に伴いT細胞では幼若化反応が、またB細胞では抗体産生が認められる。また、両細胞とも活性化に伴い、細胞表面の種々の抗原マーカーの出現あるいは消失が観察される。従って、本発明のリンパ球活性化抑制剤の効果を確認するには、本発明で使用される抗体をT細胞に添加し幼若化反応を抑制すること、また、本発明で使用される抗体をB細胞に添加し抗体産生を抑制すること、あるいは本発明で使用される抗体をリンパ球に添加し細胞表面の抗原マーカーの発現の変化を評価することにより行うことができる。
【0054】
5−1.T細胞の幼若化反応に対する抗HM1.24抗体の効果
前述の通り精製したヒ卜末梢T 細胞を、2%牛胎児血清(Moregate製)含有RPMI1640培地に懸濁し96穴培養プレート中 1 x 105 cells/200μl/wellの細胞密度で、1 μg/mlのPHA (Phytohemagglutinin,Sigma 製)及び抗HM1.24抗体またはコントロールマウスIgG2a 20μg/mlと共に37℃、5%CO2 条件下、4 日間培養し、3H− チミジン(Amersham製)を 1μCi/well 添加し、 4 時間後の取り込みをβ−counter(Pharmacia 製)で測定すればよい。
【0055】
5−2.B細胞の抗体産生に対する抗HM1.24抗体の効果
前述の通り調製したヒ卜末梢血リンパ球をポリプロピレンチューブ中、5 x 106 cells/mlの密度で 0.0l % SAC (Pansorbin cells ,Calbiochem. 製)と2 日間、37℃、5% CO2条件下でインキュべー卜することで、末梢血リンパ球中のB 細胞を活性化する。SAC 処理した末梢血リンパ球を10% 牛胎児血清(Moregate製)含有RPMI1640培地で懸濁し96穴培養プレート(BECTON DICKINSON製)で l x 105cells/200μl/wellの細胞密度で、抗HM1.24抗体またはコントロールマウスIgC2a 20μg/mlと共に37℃、5%CO2 条件下6 日間培養した後、培養上清を回収する。
【0056】
本培養上清中のIgG 濃度は、ヒ卜IgG 特異的ELISA で測定することができる。即ち、0.1M 重炭酸緩衝液(pH9.6 )で1 μg/mlに希釈したヤギ抗ヒトIgG (TAGO製)100 μl を96穴イムノプレート(Nunc製)に加え、4℃で一晩インキュベーションし、抗体を固層化する。ブロッキングの後、適当に希釈した培養上清あるいは標品としてヒトIgG (CAPPEL製)100 μl を添加し、室温にて1時間インキュベーションする。
【0057】
洗浄後、2000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG (CAPPEL製)100 μl を加え、室温にて1時間インキュベートする。洗浄後、基質溶液を加えインキュベーションの後、MICROPLATE READER Model 3550(Bio−Rad 製)を用いて405nm での吸光度を測定すればよい。
5−3. 細胞表面抗原マーカーの解析
前述の通り調製したヒ卜末梢血リンパ球、あるいはヒ卜末梢T 細胞を、5−1 または5−2 の通りPHA またはSAC および抗HM1.24抗体またはコントロールマウスIgG2a とともに培養する。これら細胞を、活性化の前後で発現が変化する細胞表面抗原マーカー、たとえばCD10, CD25, CD38, CD40, CD47, CD54, CD98, PCA−1,HM1.24抗原等を認識する抗体と反応させる。これを前述4 の通りFCM 解析すればよい。
【0058】
5−4. 効果の確認と関連疾患
後述の実施例に示されるように、活性化リンパ球にHM1.24抗原が発現していること、また抗HM1.24抗体の添加によりTリンパ球の幼若化の抑制、さらにはBリンパ球の抗体産生抑制が認められた。これらのことから、抗HM1.24抗体はリンパ球の活性化を抑制する効果を有することが示された。
【0059】
一方、リンパ球の活性化が関与する疾患としては、自己免疫疾患、臓器等の移植時の拒絶反応、アレルギーが挙げられる。具体的には自己免疫疾患として橋本甲状腺炎、原発性粘液水腫、甲状腺中毒症、悪性貧血、自己免疫性萎縮性胃炎、アジソン(Addison )病、早発性閉経、インスリン依存性糖尿病、グッドパスツール(Goodpasture )症候群、重症筋無力症、男性不妊症、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、交感性眼炎、水晶体原性ぶどう膜炎、多発性硬化症、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、原発性胆汁性肝硬変症、活動性慢性肝炎、特発性肝硬変症、潰瘍性大腸炎、シューグレン症候群、慢性関節リウマチ、皮膚筋炎、強皮症、混合性結合組織病、円板状エリトマトーデス、全身性エリトマトーデス等が挙げられる(廣瀬俊一ら監訳、臨床免疫学イラストレイテッド(1994)南江堂)。
【0060】
臓器等の移植時の拒絶反応として、腎、肝、心移植時の拒絶反応、角膜移植時の上皮性、あるいは内皮性拒絶反応、骨髄移植時のHVD 、あるいはGVHD等が挙げられる(廣瀬俊一ら監訳、臨床免疫学イラストレイテッド(1994)南江堂)。アレルギーとして、アトピー疾患に代表されるI型アレルギー、薬物アレルギーに見られるII型アレルギー、各種の腎炎を引き起こすIII 型アレルギー、化粧品や金属による皮膚炎などに代表されるIV型アレルギーが挙げられる(畔柳武雄ら、新免疫学叢書(7) 免疫とアレルギー(1981)医学書院)。従って、本発明の治療剤は、これらリンパ球活性化関与疾患の治療剤として有用である。
【0061】
6. 投与経路および製剤
本発明のリンパ球活性化抑制剤は、非経口的に全身あるいは局所的に投与することができる。例えば、点滴などの静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射を選択することができ、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。有効投与量は、一回につき体重1 Kgあたり0.01 mg から100 mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり1 〜1000 mg 、好ましくは5 〜50 mg の投与量を選ぶことができる。本発明のリンパ球活性化抑制剤は、投与経路次第で医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。
【0062】
このような担体および添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA )、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などが挙げられる。使用される添加物は、剤型に応じて上記の中から適宜あるいは組合せて選択されるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例 1. 抗 HM1.24 抗体の作製
1.抗HM1.24抗体を含むマウス腹水の調製
抗HM1.24抗体産生ハイブリドーマをGoto, T らの方法(Blood (1994) 84. 1922−1930)に従い得た。
【0064】
あらかじめ11、3 日前に2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン(和光純薬工業製)をそれぞれ500 μl ずつ腹腔内に投与したBALB/cマウス(日本クレア製)に、本ハイブリドーマ5 x 106 個を腹腔内に注入した。ハイブリドーマ注入後10日目より、マウスの腹腔内に溜った腹水を19ゲージの留置針ハッピーキャス(メディキット製)で採取した。採取した腹水は、低速遠心機RLX−131 (トミー精工製)を用いて回転数1000、3000 rpmで2 回遠心し、ハイブリドーマ、血球等の雑排物を除去した。
【0065】
2.マウス腹水からの抗HM1.24抗体の精製
上記マウス腹水からの抗HM1.24抗体の精製は以下の方法で行った。マウス腹水に等量のPBS(−)を加えた後、中空糸フィルターメディアプレップ(MILLIPORE 製)を用いてろ過した後、高速抗体精製装置ConSep LC100(MILLIPORE 製)およびHyper D Protein A カラム(カラム体積 20 ml、日本ガイシ製)を用い、付属の説明書に基づき吸着緩衝液としてPBS(−)、溶出緩衝液として0.1 M クエン酸ナトリウム緩衝液(pH 4)を用いてアフィニティー精製した。溶出画分は直ちに1 M Tris−HCl (pH 8.0) を添加してpH7.4 付近に調整した後、遠心限外濃縮器Centriprep 10 を用いて濃縮およびPBS(−)への緩衝液置換を行い、孔径0.22μm のメンブランフィルターMILLEX−GV (MILLIPORE 製)でろ過滅菌し、精製抗HM1.24抗体を得た。
【0066】
3. コントロールマウス IgG2a の精製
コントロールマウスIgG2a の精製は以下の方法で行った。市販のマウスIgG2a(KAPPA)(UPC 10)腹水(CAPPEL製)を精製水およびPBS(−)で溶解した。これを孔径0.2 μm のメンブランフィルターAcrodisc(Gelman Sciences 製)を用いてろ過した後、高速抗体精製装置ConSep LC100(MILLIPORE 製)およびHyper D Protein A カラム(カラム体積 20 ml、日本ガイシ製)を用い、付属の説明書に基づき吸着緩衝液としてPBS(−)、溶出緩衝液として0.1 M クエン酸ナトリウム緩衝液(pH 4)を用いてアフィニティー精製した。
【0067】
溶出画分は直ちに1 M Tris−HCl (pH 8.0) を添加してpH7.4 付近に調整した後、遠心限外濃縮器Centriprep 10 を用いて濃縮およびPBS(−)への緩衝液置換を行い、孔径0.22μm のメンブランフィルターMILLEX−GV (MILLIPORE 製)でろ過滅菌し精製コントロールマウスIgG2a を得た。
4. 抗体濃度の測定
精製抗体の濃度測定は吸光度の測定により行った。すなわち、精製抗体をPBS(−)で希釈した後、280 nmの吸光度を測定し、1 mg/ml を1.35 OD として算出した。
【0068】
実施例2 . SAC 刺激ヒ卜末梢血 B 細胞の抗体産生に対する抗 HMl.24 抗体の効果
1. ヒ卜末梢血リンパ球画分の調製
健常人より採取した末梢血液をPBS(−)で1/2 希釈後、50 ml 遠心チューブ(BECTON DICKINSON製)中でFicoll−paque(pharmacia 製)に重層し450 x g 、室温で40分間遠心した後、境界層の単核球画分を分離した。同画分を10% 牛胎児血清(Moregate製)含有RPMI1640培地(GIBCO 製)で適当密度に調製後、プラスチックシヤーレ中で37℃、5%CO2条件下にて1時間インキュベー卜する操作を2 度行うことにより、シヤーレに付着した細胞を除去した。残った非付着性の細胞をヒ卜末梢血リンパ球画分として以下の実験に用いた。
【0069】
2. SACによるヒ卜末梢血B 細胞の活性化
上記の通り調製したヒ卜末梢血リンパ球をポリプロピレンチューブ中、5 x 106 cells/mlの密度で1 ng/ml IL−6存在下、あるいは非存在下で0.0l % SAC(Pansorbin cells ,Calbiochem. 製)と2 日間、37℃、5% CO2条件下でインキュべー卜することで、末梢血リンパ球中のB 細胞を活性化した。SAC 処理した末梢血リンパ球を10% 牛胎児血清(Moregate製)含有RPMI1640培地で懸濁し96穴培養プレート(BECTON DICKINSON製)で l x 105 cells/200μl/wellの細胞密度で、抗HM1.24抗体またはコントロールマウスIgC2a 20μg/mlと共に37℃、5%CO2 条件下6 日間培養した後、培養上清を回収した。
【0070】
3. ヒ卜IgG の定量
上記培養上清中のIgG 濃度は、ヒ卜IgG 特異的ELISA で測定した。即ち、0.1M重炭酸緩衝液(pH9.6 )で1 μg/mlに希釈したヤギ抗ヒトIgG (TAGO製)100 μl を96穴イムノプレート(Nunc製)に加え、4℃で一晩インキュベーションし、抗体を固層化した。ブロッキングの後、適当に希釈した培養上清あるいは標品としてヒトIgG (CAPPEL製)100 μl を添加し、室温にて1時間インキュベーションした。
洗浄後、2000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG (CAPPEL製)100 μl を加え、室温にて1時間インキュベートした。洗浄後、基質溶液を加えインキュベーションの後、MICROPLATE READER Model 3550(Bio−Rad 製)を用いて405nm での吸光度を測定した。
【0071】
4. 抗HMl.24抗体のSAC 刺激ヒ卜末梢血B 細胞の抗体産生に対する効果
図1に示すようにSAC 刺激によりB 細胞のIgG 産生は増強され、ここにコントロールマウスIgG2a 20μg/mlを加えても変化はなかったが、抗HM1.24抗体20μg/mlを加えるとIgG 産生の完全な抑制が観察された。従って、抗HM1.24抗体はB 細胞の活性化を抑制することが示された。
【0072】
実施例3 . PHA 刺激ヒ卜 T 細胞幼若化反応に対する HM1.24 抗体の効果
1. ヒ卜末梢血T 細胞の調製
ヒ卜末梢T 細胞は実施例2で調製したヒ卜末梢血リンパ球からCellect Humm Tcell Kit (Biotex製)を用いて、添付の方法に従い精製した。
2. FCM 解析
精製T細胞を2%牛胎児血清(Moregate製)含有RPMI1640培地に懸濁し24穴培養プレート中 1 x 106 cells/1 ml/wellの細胞密度で、0, 1, 10μg/mlのPHA (Phytohemagglutinin,Sigma 製)と共に37℃、5%CO2 条件下、4 日間培養した。これらの一部は4 日間の培養後PHA を含まない2%牛胎児血清(Moregate製)含有RPMI1640培地に再懸濁し、さらに3 日間培養した。これらの細胞をPBS(−)で洗浄した後、 FACS 緩衝液(2 %ウシ胎児血清、0.1 %アジ化ナトリウム含有PBS(−))で25μg/mlに希釈した抗HM1.24抗体あるいはコントロール抗体 100μl を加え、氷温下30分インキュベートした。
【0073】
FACS緩衝液で洗浄した後、25μg/mlのFITC標識ヤギ抗マウス抗体(GAM, Becton Dickinson 製)100 μl を加え、氷温下30分間インキュベートした。FACS緩衝液で洗浄した後、600 μl のFACS緩衝液に懸濁し、FACScan (Becton Dickinson製)で各細胞の蛍光強度を測定した。その結果、図2に示す通り、PHA によるT細胞の活性化に伴って、細胞上にHM1.24抗原が発現されることが明らかとなった。さらに図3に示す通り、活性化されて一旦発現したHM1.24抗原は、その後の培養によって消失しないことが示された。
【0074】
3. 抗HMl.24抗体のPHA 刺激ヒ卜T 細胞幼若化反応に対する効果
精製T 細胞を2%牛胎児血清(Moregate製)含有RPMI1640培地に懸濁し96穴培養プレート中 1 x 105 cells/200μl/wellの細胞密度で、1 μg/mlのPHA (Phytohemagglutinin,Sigma 製)及び抗HM1.24抗体またはコントロールマウスIgG2a 20 μg/mlと共に37℃、5%CO2 条件下、4 日間培養し、3H− チミジン(Amersham製)を 1μCi/well 添加し、 4時間後の取り込みをβ− カウンター(Pharmacia 製)で測定した。
その結果、図4に示すように、T 細胞はPHA 刺激による幼若化反応により3H− チミジン取り込みは上昇し、ここにコントロールマウスIgG2a 20μg/mlを加えても変化はなかったが、HM1.24抗体 20 μg/mlを加えると3H− チミジン取り込みの抑制が観察された。従って、抗HM1.24抗体はT細胞の活性化を抑制することが示された。
【0075】
参考例 1. マウス抗 HM1.24 モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの調製
Goto, T. et al., Blood (1994) 84, 1992−1930 に記載の方法にて、マウス抗HM1.24モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製した。
ヒト多発性骨髄腫患者骨髄由来の形質細胞株KPC−32(1x107 個)(Goto, T. et al., Jpn. J. Clin. Hematol. (1991) 32, 1400 )をBALB/Cマウス(チャールスリバー製)の腹腔内に6 週間おきに2 回注射した。
このマウスを屠殺する3 日前にマウスの抗体産生価をさらに上昇させるために、1.5 x 106 個のKPC−32をマウスの脾臓内に注射した(Goto, T. et al., Tokushima J. Exp. Med. (1990) 37, 89 )。マウスを屠殺した後に脾臓を摘出し、Groth, de St. & Schreideggerの方法(Cancer Research (1981) 41, 3465 )に従い摘出した脾臓細胞とミエローマ細胞SP2/0 を細胞融合に付した。
【0076】
KPC−32を用いたCell ELISA(Posner, M. R. et al., J. Immunol. Methods (1982) 48, 23 )によりハイブリドーマ培養上清中の抗体のスクリーニングを行った。5 x 104 個のKPC−32を50 ml のPBS に懸濁し、96穴プレート(U 底型、Corning 、Iwaki 製)に分注し37℃で一晩風乾した。1%ウシ血清アルブミン(BSA )を含むPBS でブロックした後、ハイブリドーマ培養上清を加え4 にて2 時間インキュベートした。次いで、4 ℃にて1 時間ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG ヤギ抗体(Zymed 製)を反応させ、洗浄後室温にて30分間o−フェニレンジアミン基質溶液(Sumitomo Bakelite 製)を反応させた。
【0077】
2N硫酸で反応を停止させ、ELISA reader(Bio−Rad 製)で492nm における吸光度を測定した。ヒト免疫グロブリンに対する抗体を産生するハイブリドーマを除去するために、陽性ハイブリドーマ培養上清をヒト血清にあらかじめ吸着させ、他の細胞株に対する反応性をELISA にてスクリーニングした。陽性のハイブリドーマを選択し、種々の細胞に対する反応性をフローサイトメトリーで調べた。最後に選択されたハイブリドーマクローンを二度クローン化し、これをプリスタン処理したBALB/Cマウスの腹腔に注射して、腹水を取得した。
【0078】
モノクローナル抗体は、硫酸アンモニウムによる沈澱とプロテインA アフィニティクロマトグラフィーキット(Ampure PA 、Amersham製)によりマウス腹水より精製した。精製抗体は、Quick Tag FITC結合キット(ベーリンガーマンハイム製)を使用することによりFITC標識した。
その結果、30のハイブリドーマクローンが産生するモノクローナル抗体がKPC−32およびRPMI 8226 と反応した。クローニングの後、これらのハイブリドーマの培養上清と他の細胞株あるいは末梢血単核球との反応性を調べた。
【0079】
このうち、3 つのクローンが形質細胞に特異的に反応するモノクローナル抗体であった。これらの3 つのクローンのうち、最もフローサイトメトリー分析に有用であり、かつRPMI 8226 に対するCDC 活性を有するハイブリドーマクローンを選択し、HM1.24と名付けた。このハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体のサブクラスを、サブクラス特異的抗マウスウサギ抗体(Zymed 製)を用いたELISA にて決定した。抗HM1.24抗体は、IgG2a κのサブクラスを有していた。抗HM1.24抗体を産生するハイブリドーマHM1.24は、工業技術院生命工学工業研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成7 年9 月14日にFERM BP−5233としてブタペスト条約に基づき国際寄託された。
【0080】
参考例 2. ヒト型化抗 HM1.24 抗体の作製
ヒト型化抗HM1.24抗体を下記の方法により得た。
参考例1 で作製されたハイブリドーマHM1.24から、常法により全RNA を調製した。これよりマウス抗体V 領域をコードするcDNAをポリメラーゼ連鎖反応(PCR )法および5’−RACE 法により、合成、増幅した。マウスV 領域をコードする遺伝子を含むDNA 断片を得、これらのDNA 断片を各々プラスミドpUC 系クローニングベクターに連結し、大腸菌コンピテント細胞に導入して大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体から上記プラスミドを得、プラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列を常法に従い決定し、さらに各々のV 領域の相補性決定領域(CDR )を決定した。
【0081】
キメラ抗HM1.24抗体を発現するベクターを作製するため、それぞれマウス抗HM1.24抗体L 鎖およびH 鎖のV 領域をコードするcDNAをHEF ベクターに挿入した。また、ヒト型化抗HM1.24抗体を作製するために、CDR 移植法によりマウス抗HM1.24抗体のV 領域CDR をヒト抗体へ移植した。ヒト抗体のL 鎖としてヒト抗体REI のL 鎖を用い、ヒト抗体H 鎖としてフレームワーク領域(FR)1−3 についてはヒト抗体HG3 のFR1−3 を用いFR4 についてはヒト抗体JH6 のFR4 を用いた。CDR を移植した抗体が適切な抗原結合部位を形成するようにH 鎖V 領域のFRのアミノ酸を置換した。
【0082】
このようにして作製したヒト型化抗HM1.24抗体のL 鎖およびH 鎖の遺伝子を哺乳類細胞で発現させるために、HEF ベクターに、各々の遺伝子を別々に導入し、ヒト型化抗HM1.24抗体のL 鎖またはH 鎖を発現するベクターを作製した。
これら二つの発現ベクターをCHO 細胞に同時に導入することにより、ヒト型化抗HM1.24抗体を産生する細胞株を樹立した。この細胞株を培養して得られたヒト型化抗HM1.24抗体のヒト羊膜由来細胞株WISHへの抗原結合活性および結合阻害活性を、Cell ELISAにて調べた。その結果、ヒト型化抗HM1.24抗体は、キメラ抗体と同等の抗原結合活性を有し、さらにビオチン化マウス抗HM1.24抗体を用いた結合阻害活性についても、キメラ抗体あるいはマウス抗体と同等の活性を有した。
【0083】
なお、キメラ抗HM1.24抗体のL 鎖V 領域およびH 鎖V 領域をコードするDNA を含むプラスミドを有する大腸菌は、各々Escherichia coli DH5α( pUC19−1.24L−gκ)およびEscherichia coli DH5α( pUC19−1.24H−gγ1 )として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成8 年8 月29日に、各々FERM BP−5646およびFERM BP−5644としてブダペスト条約に基づき国際寄託された。
また、ヒト型化抗HM1.24抗体のL 鎖V 領域aバージョン(配列番号:2)およびH 鎖V 領域rバージョン(配列番号:3)をコードする DNAを含むプラスミドを有する大腸菌は、各々Escherichia coli DH5α(pUC19−RVLa−AHM−gκ)およびEscherichia coli DH5α(pUC19−RVHr−AHM−gγ1 )として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成8 年8 月29日に、各々FERM BP−5645およびFERM BP−5643としてブダペスト条約に基づき国際寄託された。
また、ヒト型化抗HM1.24抗体のH 鎖V 領域sバージョン(配列番号:4)をコードするDNA を含むプラスミドを有する大腸菌は、Escherichia coli DH5α(pUC19−RVHs−AHM−gγ1)として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に、平成9年(1997年)9月29日にFERM BP−6127としてブダペスト条約に基づき国際寄託された。
【0084】
参考例 3. HM1.24 抗原蛋白質 cDNA のクローニング
抗HM1.24抗体が特異的に認識するHM1.24抗原蛋白質をコードするcDNAをクローニングした。
1. cDNA ライブラリーの作製
1 )全RNA の調製
ヒ卜多発性骨髄腫細胞株KPMM2 から、全RNA をChirgwinら(Biochemistry, 18, 5294(1979))の方法に従って調製した。すなわち、2.2 x 108 個のKPMM2 を20 ml の4 M グアニジンチオシアネー卜(ナカライテスク製)中で完全にホモジナイズさせた。ホモジネー卜を遠心管中の5.3 M 塩化セシウム溶液に重層し、次にこれをBeckman SW40ロー夕ー中で31,000rpm にて20℃で24時間遠心分離することによりRNA を沈殿させた。
【0085】
RNA 沈殿物を70 %エタノールにより洗浄し、そして1 mM EDTA 及び0.5 % SDS を含有する10 mM Tris−HCl(pH7.4 )300 μl 中に溶解し、それにPronase (Boehringer製)を0.5 mg/ml となるように添加した後、37℃にて30分間インキュべー卜した。混合物をフェノール及びクロロホルムで抽出し、RNA をエタノールで沈殿させた。次に、RNA 沈殿物を1mM EDTAを含有する10 mM Tris−HCl(pH7.4 )200 μl に溶解した。
2 )poly(A) +RNA の調製
前記のようにして調製した全RNA の約500 μg を材料としてFast Track 2.0 mRNA Isolation Kit (Invitrogen製)を用いてキッ卜添付の処方に従って poly(A)+RNA を精製した。
【0086】
3 )cDNAライブラリーの構築
上記 poly(A)+RNA 10μg を材料としてcDNA合成キッ卜TimeSaver cDNA Synthesis Kit(Pharmacia 製)を用いてキッ卜添付の処方に従って二本鎖 cDNA を合成し、更にDirectional Cloning Toolbox (Pharmacia 製)を用いてキッ卜付属の EcoRIアダプターをキッ卜添付の処方に従って連結した。EcoRI アダプターのカイネーション及び制限酵素 NotI 処理はキッ卜添付の処方に従って行った。更に、約 500 bp 以上の大きさのアダプター付加二本鎖 cDNA を1.5 % 低融点アガロースゲル(Sigma 製)を用いて分離、精製し、アダプター付加二本鎖 cDNA 約40 μl を得た。
【0087】
このようにして作製したアダプター付加二本鎖 cDNA を、あらかじめ制限酵素EcoRI、NotI 及びアルカリフォスファターゼ(宝酒造製)処理した pCOS1ベクター(特願平8−255196)と T4 DNA リガーゼ(GIBCO−BRL 製)を用いて連結し、cDNAライブラリーを構築した。構築した cDNA ライブラリーは、大腸菌細胞株 DH5α(GIBCO−BRL 製)に形質導入され、全体のサイズは約 2.5 x 106個の独立したクローンであると推定された。
【0088】
2. 直接発現法によるクローニング
1 )COS−7 細胞へのトランスフェクション
上記の形質導入した大腸菌約 5 x 105クローンを 50 μg/ml のアンピシリンを含む 2−YT 培地(Molecular Cloning: A Laboratory Mannua1. Sambrook ら, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))にて培養することにより cDNA の増幅を行い、アルカリ法(Molecular Cloning: A Laboratory Mannual. Sambrook ら, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))により大腸菌からプラスミド DNA を回収した。得られたプラスミド DNA はGene Pulser 装置(Bio−Rad 製)を用いてエレクトロポレーション法により COS−7細胞にトランスフェクションした。
【0089】
すなわち、精製したプラスミド DNA 10 μg を 1 x 107細胞/mlで PBS中に懸濁した COS−7細胞液 0.8 ml に加え、1500 V、25μFDの容量にてパルスを与えた。室温にて10分問の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞は、10 %牛胎児血清(GIBCO−BRL 製)を含むDMEM培養液(GIBCO−BRL 製)にて、37℃、5 %CO2の条件下で3日間培養した。
【0090】
2 )パンニングデイッシュの調製
マウス抗HM1.24抗体をコーティングしたパンニングデイッシュを、B. Seed ら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 3365−3369 (1987))の方法に従って調製した。すなわち、マウス抗HM1.24抗体を10μg/mlになるように 50 mM Tris−HCl (pH9.5 )に加えた。このようにして調製した抗体溶液3 mlを直径60 mm の細胞培養皿に加え、室温にて2 時間インキユべー卜した。0.15 M NaCl 溶液にて3 回洗浄した後、5%牛胎児血清、1 mM EDTA 、0.02 %NaN3を含むPBS を加え、ブロッキングした後、下記クローニングに用いた。
【0091】
3 )cDNA ライブラリーのクローニング
前述のようにトランスフェク卜した COS−7 細胞は、5 mM EDTA を含むPBS にて剥がし、5%牛胎児血清を含むPBS で一回洗浄した後、約 1 x 106細胞/mlとなるように5%牛胎児血清及び0.02% NaN3を含むPBS に懸濁し、上記のように調製したパンニングデイシユに加え、室温にて約 2 時間インキュべー卜した。5 % 牛胎児血清及び0.02 %NaN3を含むPBS で3度緩やかに洗浄した後、0.6%SDS 及び10mM EDTAを含む溶液を用いてパンニングディシュに結合した細胞からプラスミドDNAの回収を行った。
【0092】
回収したプラスミド DNAを再び大腸菌DH5 αに形質導入し、前述のようにプラスミドDNA を増幅後、アルカリ法にて回収した。回収したプラスミド DNAを COS−7細胞にエレクトロポレーション法によりトランスフェク卜して前述と同様に結合した細胞よりプラスミドDNA の回収を行った。同様の操作を更に1回繰り返し、回収したプラスミドDNA を制限酵素EcoRI およびNotIで消化した結果、約 0.9kbpのサイズのインサー卜の濃縮が確認された。
【0093】
さらに、回収したプラスミドDNA の一部を形質導入した大腸菌を50μg/ml のアンピシリンを含む2−YTアガープレー卜に接種し、一晩培養後、単一のコロニーよりプラスミドDNA を回収した。制限酵素EcoRI およびNotIにて消化し、インサー卜のサイズが約 0.9 kbpを示すクローンp3.19 を得た。
本クローンについては、PRISM, Dye Terminater Cycle Sequencingキッ卜(PerkinElmer 製)を用いて、キッ卜添付の処方に従い反応を行い、ABI 373A DNA Sequencer(Perkin Elmer製)にて塩基配列の決定を行った。この塩基配列および対応するアミノ酸配列を配列番号1 に示す。
【0094】
【発明の効果】
抗HM1.24抗体の処理によりB細胞からの抗体産生抑制、およびT細胞の幼若化の抑制が認められた。これらのことから、抗HM1.24抗体はリンパ球の活性化を抑制する効果を有することが示される。
【0095】
【配列表】
【0096】
【0097】
【0098】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、抗HM1.24抗体がSAC 刺激によるB細胞からの抗体産生を抑制することを示す図である。
【図2】図2は、PHA 刺激したT細胞を抗HM1.24抗体でFCM 解析したときのヒストグラムを示す。
【図3】図3は、活性化T細胞を抗HM1.24抗体でFCM 解析したときのヒストグラムを示す。
【図4】図4は、抗HM1.24抗体がPHA 刺激によるT細胞の幼若化反応を抑制することを示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なリンパ球活性化抑制剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
人間の生きている環境には、ウイルス、細菌、カビ、寄生虫等のおびただしい種類の感染性の微生物が存在している。そのいずれかが生体内で増殖すると病気の原因となり、ひいては個体の死をももたらす。従って、個体が健康的に生活するためには、これら外因性の微生物などから生体を防御する機構が必要となる。この機構が「免疫」と呼ばれるものである。
生体において主に免疫を担当するのがリンパ球細胞である。リンパ球細胞は、その機能によりTリンパ球(T細胞)とBリンパ球(B細胞)に大別される。T細胞は抗原提示能、細胞障害能等を、B細胞は抗体産生能を有していると考えられている。これら2種のリンパ球は全て同じ血液幹細胞に由来し、骨髄中あるいはその他の器官で様々な分化、または増殖因子の作用を受けて分化を繰り返した後、末梢血中へ放出される。
【0003】
例えば、T細胞の場合、骨髄中で造血幹細胞が前T細胞に分化した後胸腺へと移行し、さらに分化を繰り返し成熟T細胞になる。その後抗原の刺激により活性化され、増殖能あるいは細胞障害能等を有する活性化T細胞となる。一方、B細胞の場合、骨髄中で造血幹細胞がIL−1,IL−2,IL−4,IL−6 等のサイトカインの刺激によりプロB細胞、プレB細胞を経て成熟B細胞に分化し、さらに抗原刺激を受けて活性化され、最終的に抗体産生能を有する形質細胞となる。
【0004】
従って、リンパ球がそれぞれの機能を発揮するためには最終的な活性化が必須である。前述の通り、免疫は外来の異物から生体を防御することが目的であることから、巧みな機構により異物(非自己)と自己を認識し、非自己のみを抗原として反応する仕組みになっている。ところがこの機構が何らかの原因で破綻し、自己をも抗原と認識するようになった結果起こる疾患が自己免疫疾患である。また、非自己に対し免疫反応が過度に、あるいは不適当な形で起こり、その結果組織障害を引き起こす状態をアレルギーという。
【0005】
一方、他人の臓器等を移植した場合、それを非自己と認識し排除しようとする反応(拒絶反応)は、生体の正常な機構ともいえる。個体間には遺伝学的に違いがあることが知られており、その代表的なものが主要組織適合遺伝子(MHC )と呼ばれるものである。MHC が異なる個体からの臓器移植は、大きな拒絶反応を引き起こす。近年の医療技術の進歩により、白血病、あるいはリンパ腫治療時の骨髄移植、末期腎疾患患者に対する腎移植、さらには角膜移植等、臓器等の移植の必要性は非常に大きなものとなっている。それに伴い、拒絶反応をいかに抑制するかも大きな問題といえる。
【0006】
多くの実験や研究により、リンパ球の活性化からそれに起因する疾患に至る経路が解明されつつあり、それに伴い、リンパ球活性化関与疾患に対する多くの治療薬が開発されている。現在リンパ球活性化に起因する自己免疫疾患のうち、慢性関節リウマチや全身性エリトマトーデス、さらには強皮症に対してアスピリンのような非ステロイド性抗炎症薬やステロイド剤、アザチオプリンのような免疫抑制剤が使用されている。
【0007】
また、臓器等移植時の拒絶反応を抑制する目的で、主に腎移植や骨髄移植の際にサイクロスポリンやアザチオプリン、ミゾリビン等の免疫抑制剤が使用されている。さらに、アレルギーの治療薬としては抗ヒスタミン薬や、アレルギーの原因となる化学物質の遊離を抑制する化学伝達物質遊離抑制薬等が用いられている。しかし、これらのうち非ステロイド性抗炎症薬やステロイド剤、抗ヒスタミン薬や化学伝達物質遊離抑制薬はいずれも本疾患の原因であるリンパ球の活性化に対しては何ら作用せず、あくまで炎症を押さえる対症療法に過ぎないことから、本疾患を根本的に治療するものではない。
【0008】
また、現在使用されている免疫抑制剤はその性質上、血球数減少やショック等の重篤な副作用を有するものも多く、未だ十分とは言い難い。さらに、自己免疫疾患の多くは現在も治療法や治療薬が全く無いのも現実である。
一方、Goto, T.らは、ヒト骨髄腫細胞をマウスに免疫して得られたモノクローナル抗体(抗HM1.24抗体)を報告している(Blood (1994) 84, 1922−1930)。ヒト骨髄腫細胞を移植したマウスに抗HM1.24抗体を投与すると、この抗体が腫瘍組織に特異的に集積したこと(小阪昌明ら、日本臨床 (1995) 53, 627−635 )から、抗HM1.24抗体はラジオアイソトープ標識による腫瘍局在の診断や、ラジオイムノセラピーなどのミサイル療法に応用することが可能であることが示唆されている。しかし、抗HM1.24抗体がリンパ球の活性化抑制に関与することは知られていなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
現在用いられているリンパ球活性化関与疾患の治療薬には、種々の抗炎症剤や免疫抑制剤が挙げられるが、上記のごとく、未だ十分とは言い難く、これら疾患を治療し患者の苦痛を緩和する治療剤が待たれている。従って、本発明の目的は、リンパ球活性化抑制剤を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、所期の目的を達成すべく、抗HM1.24抗体(Goto, T.ら Blood (1994) 84. 1922−1930)を用いて、FCM (フローサイトメトリー)解析、T細胞の幼若化反応に対する作用、B細胞の抗体産生に対する作用、さらには抗HM1.24抗体が特異的に結合する抗原蛋白質単離の研究を重ねた結果、抗HM1.24抗体が認識する抗原タンパク質が活性化リンパ球に発現していること、および抗HM1.24抗体がリンパ球の活性化を抑制することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質に特異的に結合する抗体を有効成分として含有する、リンパ球の活性化抑制剤を提供する。
本発明はまた、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質に特異的に結合する抗体を有効成分として含有する、T細胞またはB細胞の活性化抑制剤を提供する。
本発明はまた、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質に特異的に結合するモノクローナル抗体を有効成分として含有する、リンパ球の活性化抑制剤を提供する。
【0012】
本発明はまた、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質に特異的に結合する、ヒト抗体定常領域を有する抗体を有効成分として含有する、リンパ球の活性化抑制剤を提供する。
本発明はまた、抗HM1.24抗体を有効成分として含有する、リンパ球の活性化抑制剤を提供する。
本発明はまた、キメラ抗体またはヒト型化抗体を有効成分として含有する、リンパ球の活性化抑制剤を提供する。
本発明はまた、キメラ抗HM1.24抗体またはヒト型化抗HM1.24抗体を有効成分として含有する、リンパ球の活性化抑制剤を提供する。
【0013】
本発明はまた、抗HM1.24抗体が認識するエピトープと特異的に結合する抗体を有効成分として含有する、リンパ球の活性化抑制剤を提供する。
本発明はまた、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質に特異的に結合する抗体を有効成分として含有する、リンパ球活性化関与疾患の予防・治療剤を提供する。
さらに、本発明は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質に特異的に結合する抗体を有効成分として含有する、自己免疫疾患、臓器等移植時の拒絶反応、アレルギーの予防・治療剤を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
1. 抗体の作製
1−1. ハイブリドーマの作製
本発明で使用される抗体を産生するハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、HM1.24抗原蛋白質やHM1.24抗原を発現する細胞を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞をスクリーニングすることによって作製できる。
【0015】
具体的には、モノクローナル抗体を作製するには次のようにすればよい。例えば、抗体取得の感作抗原であるHM1.24抗原発現細胞としては、ヒ卜多発性骨髄腫細胞株であるKPMM2 (特開平7−236475)やKPC−32(Goto, T. et al., Jpn. J. Clin. Hematol. (1991) 32, 1400 )を用いることができる。また、感作抗原として配列番号1 に示すアミノ酸配列を有する蛋白質、あるいは抗HM1.24抗体が認識するエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドを使用することができる。
【0016】
なお、感作抗原として使用される、配列番号1 に示すアミノ酸配列を有する蛋白質をコードするcDNAはpUC19 ベクターのXbaI切断部位に間に挿入されて、プラスミドpRS38−pUC19 として調製されている。このプラスミドpRS38−pUC19 を含む大腸菌(E.coli)は、平成5 年(1993年)10月5 日付で工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に、Escherichia coli DH5α(pRS38−pUC19 )として、受託番号FERM BP−4434としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている(特開平7−196694参照)。このプラスミドpRS38−pUC19 に含まれるcDNA断片を用いて遺伝子工学的手法により、抗HM1.24抗体が認識するエピトープを含むペプチドまたはポリペプチドを作製することができる。
【0017】
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター等が使用される。
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、感作抗原を哺乳動物の腹腔内または、皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS (Phosphate−Buffered Saline )や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものを所望により通常のアジュバント、例えば、フロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4−21日毎に数回投与するのが好ましい。また、感作抗原免疫時に適当な担体を使用することができる。
【0018】
このように免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞が取り出され、細胞融合に付される。細胞融合に付される好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞としての哺乳動物のミエローマ細胞は、すでに、公知の種々の細胞株、例えば、P3X63Ag8.653(J. Immnol. (1979) 123: 1548−1550)、P3X63Ag8U.1 (Current Topics in Microbiology and Immunology (1978) 81: 1−7)、NS−1(Kohler. G. and Milstein, C. Eur. J. Immunol.(1976) 6: 511−519)、MPC−11(Margulies. D. H. et al., Cell (1976) 8: 405−415 )、SP2/0 (Shulman, M. et al., Nature (1978) 276: 269−270)、FO(de St. Groth, S. F. et al., J. Immunol. Methods (1980) 35: 1−21 )、S194(Trowbridge, I. S. J. Exp. Med. (1978) 148: 313−323)、R210(Galfre, G.et al., Nature (1979) 277: 131−133 )等が適宜使用される。
【0019】
前記免疫細胞とミエローマ細胞の細胞融合は基本的には公知の方法、たとえば、ミルステインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C. 、Methods Enzymol. (1981) 73: 3−46)等に準じて行うことができる。
より具体的には、前記細胞融合は例えば、細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては例えば、ポリエチレングリコール(PEG )、センダイウィルス(HVJ )等が使用され、更に所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加使用することもできる。
【0020】
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は、例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1−10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM 培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS )等の血清補液を併用することもできる。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞との所定量を前記培養液中でよく混合し、予め、37℃程度に加温したPEG 溶液、例えば、平均分子量1000〜6000程度のPEG 溶液を通常、30〜60%(w/v )の濃度で添加し、混合することによって目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)が形成される。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去できる。
【0021】
当該ハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えば、HAT 培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)で培養することにより選択される。当該HAT 培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間、通常数日〜数週間継続する。ついで、通常の限界希釈法を実施し、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングおよび単一クローニングが行われる。
【0022】
また、ヒト以外の動物に抗原を免疫して上記ハイブリドーマを得る他に、ヒトリンパ球をインビトロでHM1.24抗原またはHM1.24抗原発現細胞で感作し、感作リンパ球をヒトミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、HM1.24抗原またはHM1.24抗原発現細胞への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1−59878 参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原となるHM1.24抗原またはHM1.24抗原発現細胞を投与し、前述の方法に従い所望のヒト抗体を取得してもよい(国際特許出願公開番号WO 93/12227 、WO 92/03918 、WO 94/02602 、WO 94/25585 、WO 96/34096 、WO 96/33735 参照)。
【0023】
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
当該ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法にしたがい培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法などが採用される。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、一方、後者の方法は、抗体の大量生産に適している。
【0024】
具体的には、抗HM1.24抗体産生ハイブリドーマの作製は、Goto, T.らの方法(Blood (1994) 84. 1922−1930)により行うことができる。工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成7 年9 月14日にFERMBP−5233としてブタペスト条約に基づき国際寄託された抗HM1.24抗体産生ハイブリドーマをBALB/cマウス(日本クレア製)の腹腔内に注入して腹水を得、この腹水から抗HM1.24抗体を精製する方法や、本ハイブリドーマを適当な培地、例えば、10%ウシ胎児血清、5 %BM−Condimed H1(Boehringer Mannheim 製)含有RPMI1640培地、ハイブリドーマSFM 培地(GIBCO−BRL 製)、PFHM−II 培地(GIBCO−BRL 製)等で培養し、その培養上清から抗HM1.24抗体を精製する方法で行うことができる。
【0025】
1−2. 組換え型抗体
本発明では、モノクローナル抗体として、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた組換え型抗体を用いることができる(例えば、Carl, A. K. Borrebaeck, James, W. Larrick, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990 参照)。
【0026】
具体的には、目的とする抗体を産生するハイブリドーマから、抗体の可変(V )領域をコードするmRNAを単離する。mRNAの単離は、公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin, J. M. ら、Biochemistry (1979) 18, 5294−5299 )、AGPC法(Chomczynski, P. ら、Analytical Biochemistry, (1987) 162, 156−159)等により全RNA を調製し、mRNA Purification Kit (Pharmacia 製)等を使用してmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia 製)を用いることによりmRNAを直接調製することができる。
【0027】
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V 領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First−strand cDNA Synthesis Kit 等を用いて行うことができる。また、cDNAの合成および増幅を行うには5’−Ampli FINDER RACE Kit (Clontech製)およびPCR を用いた5’−RACE 法(Frohman, M. A. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1988) 85, 8998−9002 ;Belyavsky, A. ら、Nucleic Acids Res. (1989) 17, 2919−2932 )を使用することができる。得られたPCR 産物から目的とするDNA 断片を精製し、ベクターDNA と連結する。さらに、これより組換えベクターを作成し、大腸菌等に導入してコロニーを選択して所望の組換えベクターを調製する。目的とするDNA の塩基配列を公知の方法、例えば、デオキシ法により確認する。
【0028】
目的とする抗体のV 領域をコードするDNA が得られれば、これを所望の抗体定常領域(C 領域)をコードするDNA と連結し、これを発現ベクターへ組み込む。または、抗体のV 領域をコードするDNA を、抗体C 領域のDNA を含む発現ベクターへ組み込んでもよい。
本発明で使用される抗体を製造するには、後述のように抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。
【0029】
1−3. 改変抗体
本発明では、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト型化(Humanized )抗体を使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V 領域をコードするDNA をヒト抗体C 領域をコードするDNA と連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 125023 、国際特許出願公開番号WO 96/02576 参照)。この既知の方法を用いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
【0030】
例えば、キメラ抗HM1.24抗体のL 鎖V 領域およびH 鎖V 領域をコードするDNA を含むプラスミドを有する大腸菌は、各々Escherichia coli DH5α( pUC19−1.24L−gκ)およびEscherichia coli DH5α( pUC19−1.24H−gγ1 )として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成8 年8 月29日に、各々FERM BP−5646およびFERM BP−5644としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている(特願平9−271536参照)。
ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、たとえばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determiningregion )をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 125023 、国際特許出願公開番号WO 96/02576 参照)。
【0031】
具体的には、マウス抗体のCDR とヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)を連結するように設計したDNA 配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR 法により合成する。得られたDNA をヒト抗体C 領域をコードするDNA と連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 239400 、国際特許出願公開番号WO 96/02576 参照)。
CDR を介して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域のフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato, K.et al., Cancer Res. (1993) 53, 851−856)。
【0032】
例えば、ヒト型化抗HM1.24抗体のL 鎖V 領域aバージョン(配列番号:2)およびH 鎖V 領域rバージョン(配列番号:3)をコードするDNA を含むプラスミドを有する大腸菌は、各々Escherichia coli DH5α(pUC19−RVLa−AHM−gκ)およびEscherichia coli DH5α(pUC19−RVHr−AHM−gγ1 )として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成8 年8 月29日に、各々FERM BP−5645およびFERM BP−5643としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている(特願平9−271536参照)。また、ヒト型化抗HM1.24抗体のH 鎖V 領域sバージョン(配列番号:4)をコードするDNA を含むプラスミドを有する大腸菌は、Escherichia coli DH5α(pUC19−RVHs−AHM−gγ1)として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成9 年(1997年)9 月29日にFERM BP−6127としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている(特願平9−271536参照)。キメラ抗体、ヒト型化抗体には、ヒト抗体C 領域が使用され、特に好ましいヒト抗体定常領域としてヒトC γを使用することができる。
【0033】
キメラ抗体はヒト以外の哺乳動物由来抗体の可変領域とヒト抗体由来のC 領域からなり、ヒト型化抗体はヒト以外の哺乳動物由来抗体の相補性決定領域とヒト抗体由来のフレームワーク領域(framework region; FR)およびC 領域からなり、ヒト体内における抗原性が低下しているため、本発明の治療剤の有効成分として有用である。
本発明に使用されるヒト型化抗体の好ましい具体例としては、ヒト型化抗HM1.24抗体が挙げられる(特願平9−271536参照)。ヒト型化抗HM1.24抗体のL 鎖V 領域の好ましい具体例としては、配列番号2に示される塩基配列でコードされるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。また、ヒト型化抗HM1.24抗体のH 鎖V 領域の好ましい具体例としては、配列番号3又は4に示される塩基配列でコードされるアミノ酸配列を有するものが挙げられる。
【0034】
1−4. 発現および産生
前記のように構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させ、取得することができる。哺乳類細胞の場合、常用される有用なプロモーター、発現される抗体遺伝子、その3’側下流にポリA シグナルを機能的に結合させたDNA あるいはそれを含むベクターにより発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer )を挙げることができる。
【0035】
また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV 40 )等のウィルスプロモーター/エンハンサーやヒトエロンゲーションファクター1 α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサーを用いればよい。
例えば、SV 40 プロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mulliganらの方法(Nature (1979) 277, 108)、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mizushima らの方法(Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322)に従えば容易に実施することができる。
【0036】
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列、発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーターとしては、laczプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。laczプロモーターを使用する場合、Wardらの方法(Nature (1098) 341,544−546;FASEB J. (1992) 6, 2422−2427)、araBプロモーターを使用する場合、Betterらの方法(Science (1988) 240, 1041−1043 )に従えばよい。
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379 )を使用すればよい。ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切にリフォールド(refold)して使用する(例えば、WO96/30394を参照)。
【0037】
複製起源としては、SV 40 、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV )等の由来のものを用いることができ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH )遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の産生系を使用することができる。抗体製造のための産生系は、インビトロおよびインビボの産生系がある。インビトロの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。
【0038】
真核細胞を使用する場合、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を用いる産生系がある。動物細胞としては、(1) 哺乳類細胞、例えば、CHO 、COS 、ミエローマ、BHK (baby hamster kidney )、HeLa、Vero、(2) 両生類細胞、例えば、アフリカツメガエル卵母細胞、あるいは(3) 昆虫細胞、例えば、sf9 、sf21、Tn5 などが知られている。植物細胞としては、ニコティアナ(Nicotiana )属、例えばニコティアナ・タバカム(Nicotiana tabacum )由来の細胞が知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(Saccaromyces)属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus )属、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger )などが知られている。
【0039】
原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E. coli )、枯草菌が知られている。
これらの細胞に、目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をインビトロで培養することにより抗体が得られる。培養は、公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM 、RPMI1640、IMDMを使用することができ、牛胎児血清(FCS )等の血清補液を併用することもできる。また、抗体遺伝子を導入した細胞を動物の腹腔等へ移すことにより、インビボにて抗体を産生してもよい。
【0040】
一方、インビボの産生系としては、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。動物を使用する場合、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系がある。
哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシを用いることができる(Vicki Glaser, SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993 )。また、昆虫としては、カイコを用いることができる。
【0041】
植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。
これらの動物または植物に抗体遺伝子を導入し、動物または植物の体内で抗体を産生させ、回収する。例えば、抗体遺伝子をヤギβカゼインのような乳汁中に固有に産生される蛋白質をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA 断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。
【0042】
トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology (1994) 12, 699−702 )。また、カイコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を挿入したバキュロウィルスをカイコに感染させ、このカイコの体液より所望の抗体を得る(Susumu, M. et al., Nature (1985) 315, 592−594 )。
さらに、タバコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を植物発現用ベクター、例えばpMON 530に挿入し、このベクターをAgrobacterium tumefaciens のようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えばNicotiana tabacum に感染させ、本タバコの葉より所望の抗体を得る(Julian, K.−C. Ma et al., Eur. J.Immunol. (1994) 24, 131−138)。
【0043】
上述のように、インビトロまたはインビボの産生系にて抗体を産生する場合、抗体重鎖(H 鎖)または軽鎖(L 鎖)をコードするDNA を別々に発現ベクターに組み込んで宿主を同時形質転換させてもよいし、あるいはH 鎖およびL 鎖をコードするDNA を単一の発現ベクターに組み込んで、宿主を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号WO 94−11523 参照)。
上述のように得られた抗体は、ポリエチレングリコール(PEG )等の各種分子と結合させ抗体修飾物として使用することもできる。本願特許請求の範囲でいう「抗体」にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野においてすでに確立されている。
【0044】
2. 抗体の分離、精製
2−1. 抗体の分離、精製
前記のように産生、発現された抗体は、細胞内外、宿主から分離し均一にまで精製することができる。本発明で使用される抗体の分離、精製はアフィニティークロマトグラフィーにより行うことができる。アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、例えば、プロテインA カラム、プロテインG カラムが挙げられる。プロテインA カラムに用いる担体として、例えば、Hyper D 、POROS 、Sepharose F.F.等が挙げられる。
【0045】
その他、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、上記アフィニティークロマトグラフィー以外のクロマトグラフィー、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせれば、本発明で使用される抗体を分離、精製することができる。クロマトグラフィーとしては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲルろ過等が挙げられる。これらのクロマトグラフィーはHPLCに適用することができる。また逆相HPLCを用いることができる。
【0046】
2−2. 抗体の濃度測定
2−1 で得られた抗体の濃度測定は吸光度の測定またはELISA 等により行うことができる。すなわち、吸光度の測定による場合には、本発明で使用される抗体または抗体を含むサンプルをPBS(−)で適当に希釈した後、280 nmの吸光度を測定し、1 mg/ml を1.35 OD として算出する。また、ELISA による場合は以下のように測定することができる。すなわち、0.1M 重炭酸緩衝液(pH9.6 )で1 μg/ml に希釈したヤギ抗ヒトIgG (BIO SOURCE製)100 μl を96穴プレート(Nunc製)に加え、4℃で一晩インキュベーションし、抗体を固層化する。
【0047】
ブロッキングの後、適宜希釈した本発明で使用される抗体または抗体を含むサンプル、あるいは標品としてヒトIgG (CAPPEL製)100 μl を添加し、室温にて1時間インキュベーションする。洗浄後、5000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG (BIO SOURCE製)100 μl を加え、室温にて1時間インキュベートする。洗浄後、基質溶液を加えインキュベーションの後、MICROPLATE READER Model 3550(Bio−Rad 製)を用いて405nm での吸光度を測定し、目的の抗体の濃度を算出する。
【0048】
3. 細胞の調製
本発明で用いる細胞は、以下の方法で調製することができる。
3−1. ヒ卜末梢血リンパ球画分の調製
健常人より採取した末梢血液をPBS(−)で1/2 希釈後、50 ml 遠心チューブ(BECTON DICKINSON製)中でFicoll−paque(pharmacia 製)に重層し450 x g 、室温で40分間遠心した後、境界層の単核球画分を分離する。同画分を10% 牛胎児血清(Moregate製)含有RPMI1640培地(GIBCO−BRL 製)で適当密度に調製後、プラスチックシャーレ中で37℃、5%CO2条件下にて1時間インキュベー卜する操作を2 度行うことにより、シヤーレに付着した細胞を除去する。残った非付着性の細胞をヒ卜末梢血リンパ球画分として以下の実験に用いることができる。
【0049】
3−2. SACによるヒ卜末梢血B 細胞の活性化
上記の通り調製したヒ卜末梢血リンパ球をポリプロピレンチューブ中、5 x 106 cells/mlの密度で1 ng/ml IL−6存在下、あるいは非存在下で0.0l % SAC(Pansorbin cells ,Calbiochem. 製)と2 日間、37℃、5% CO2条件下でインキュべー卜することで、末梢血リンパ球中のB 細胞を活性化することができる。
3−3.ヒ卜末梢T 細胞の精製
ヒ卜末梢T 細胞は3−1 で調製したヒ卜末梢血リンパ球からCellect Humm T cell Kit (Biotex製)を用いて、添付の方法に従い精製することができる。
【0050】
3−4.PHA 刺激によるヒ卜抹消血T 細胞の活性化
上記3−3 で精製したT 細胞を2%牛胎児血清(Moregate製)含有RPMI1640培地に懸濁し24穴培養プレート中 1 x 106 cell/1 ml/well の細胞密度で、1 あるいは10μg/mlのPHA (Phytohemagglutinin,Sigma 製)を添加し37℃、5%CO2 条件下、4 日間培養することで末梢血リンパ球中のT 細胞を活性化することができる。
【0051】
4. FCM 解析
リンパ球細胞と本発明で使用される抗体との反応性は、FCM (フローサイトメトリー)解析で行うことができる。細胞としては、新鮮分離細胞あるいはそれをさらに培養した細胞を用いることができる。例えば新鮮分離細胞として、末梢血単核球、末梢血リンパ球、末梢血Tリンパ球、末梢血Bリンパ球などを用いることができる。
【0052】
上記細胞をPBS(−)で洗浄した後、 FACS 緩衝液(2 %ウシ胎児血清、0.1 %アジ化ナトリウム含有PBS(−))で25μg/ml に希釈した抗HM1.24抗体あるいはコントロール抗体 100μl を加え、氷温下30分インキュベートする。FACS 緩衝液で洗浄した後、25μg/ml のFITC標識ヤギ抗マウス抗体(GAM, Becton Dickinson 製)100 μl を加え、氷温下30分間インキュベートする。FACS 緩衝液で洗浄した後、600 μl のFACS 緩衝液に懸濁し、FACScan (Becton Dickinson製)で各細胞の蛍光強度を測定すればよい。
【0053】
5. 効果の確認
リンパ球はその活性化に伴いT細胞では幼若化反応が、またB細胞では抗体産生が認められる。また、両細胞とも活性化に伴い、細胞表面の種々の抗原マーカーの出現あるいは消失が観察される。従って、本発明のリンパ球活性化抑制剤の効果を確認するには、本発明で使用される抗体をT細胞に添加し幼若化反応を抑制すること、また、本発明で使用される抗体をB細胞に添加し抗体産生を抑制すること、あるいは本発明で使用される抗体をリンパ球に添加し細胞表面の抗原マーカーの発現の変化を評価することにより行うことができる。
【0054】
5−1.T細胞の幼若化反応に対する抗HM1.24抗体の効果
前述の通り精製したヒ卜末梢T 細胞を、2%牛胎児血清(Moregate製)含有RPMI1640培地に懸濁し96穴培養プレート中 1 x 105 cells/200μl/wellの細胞密度で、1 μg/mlのPHA (Phytohemagglutinin,Sigma 製)及び抗HM1.24抗体またはコントロールマウスIgG2a 20μg/mlと共に37℃、5%CO2 条件下、4 日間培養し、3H− チミジン(Amersham製)を 1μCi/well 添加し、 4 時間後の取り込みをβ−counter(Pharmacia 製)で測定すればよい。
【0055】
5−2.B細胞の抗体産生に対する抗HM1.24抗体の効果
前述の通り調製したヒ卜末梢血リンパ球をポリプロピレンチューブ中、5 x 106 cells/mlの密度で 0.0l % SAC (Pansorbin cells ,Calbiochem. 製)と2 日間、37℃、5% CO2条件下でインキュべー卜することで、末梢血リンパ球中のB 細胞を活性化する。SAC 処理した末梢血リンパ球を10% 牛胎児血清(Moregate製)含有RPMI1640培地で懸濁し96穴培養プレート(BECTON DICKINSON製)で l x 105cells/200μl/wellの細胞密度で、抗HM1.24抗体またはコントロールマウスIgC2a 20μg/mlと共に37℃、5%CO2 条件下6 日間培養した後、培養上清を回収する。
【0056】
本培養上清中のIgG 濃度は、ヒ卜IgG 特異的ELISA で測定することができる。即ち、0.1M 重炭酸緩衝液(pH9.6 )で1 μg/mlに希釈したヤギ抗ヒトIgG (TAGO製)100 μl を96穴イムノプレート(Nunc製)に加え、4℃で一晩インキュベーションし、抗体を固層化する。ブロッキングの後、適当に希釈した培養上清あるいは標品としてヒトIgG (CAPPEL製)100 μl を添加し、室温にて1時間インキュベーションする。
【0057】
洗浄後、2000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG (CAPPEL製)100 μl を加え、室温にて1時間インキュベートする。洗浄後、基質溶液を加えインキュベーションの後、MICROPLATE READER Model 3550(Bio−Rad 製)を用いて405nm での吸光度を測定すればよい。
5−3. 細胞表面抗原マーカーの解析
前述の通り調製したヒ卜末梢血リンパ球、あるいはヒ卜末梢T 細胞を、5−1 または5−2 の通りPHA またはSAC および抗HM1.24抗体またはコントロールマウスIgG2a とともに培養する。これら細胞を、活性化の前後で発現が変化する細胞表面抗原マーカー、たとえばCD10, CD25, CD38, CD40, CD47, CD54, CD98, PCA−1,HM1.24抗原等を認識する抗体と反応させる。これを前述4 の通りFCM 解析すればよい。
【0058】
5−4. 効果の確認と関連疾患
後述の実施例に示されるように、活性化リンパ球にHM1.24抗原が発現していること、また抗HM1.24抗体の添加によりTリンパ球の幼若化の抑制、さらにはBリンパ球の抗体産生抑制が認められた。これらのことから、抗HM1.24抗体はリンパ球の活性化を抑制する効果を有することが示された。
【0059】
一方、リンパ球の活性化が関与する疾患としては、自己免疫疾患、臓器等の移植時の拒絶反応、アレルギーが挙げられる。具体的には自己免疫疾患として橋本甲状腺炎、原発性粘液水腫、甲状腺中毒症、悪性貧血、自己免疫性萎縮性胃炎、アジソン(Addison )病、早発性閉経、インスリン依存性糖尿病、グッドパスツール(Goodpasture )症候群、重症筋無力症、男性不妊症、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、交感性眼炎、水晶体原性ぶどう膜炎、多発性硬化症、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、原発性胆汁性肝硬変症、活動性慢性肝炎、特発性肝硬変症、潰瘍性大腸炎、シューグレン症候群、慢性関節リウマチ、皮膚筋炎、強皮症、混合性結合組織病、円板状エリトマトーデス、全身性エリトマトーデス等が挙げられる(廣瀬俊一ら監訳、臨床免疫学イラストレイテッド(1994)南江堂)。
【0060】
臓器等の移植時の拒絶反応として、腎、肝、心移植時の拒絶反応、角膜移植時の上皮性、あるいは内皮性拒絶反応、骨髄移植時のHVD 、あるいはGVHD等が挙げられる(廣瀬俊一ら監訳、臨床免疫学イラストレイテッド(1994)南江堂)。アレルギーとして、アトピー疾患に代表されるI型アレルギー、薬物アレルギーに見られるII型アレルギー、各種の腎炎を引き起こすIII 型アレルギー、化粧品や金属による皮膚炎などに代表されるIV型アレルギーが挙げられる(畔柳武雄ら、新免疫学叢書(7) 免疫とアレルギー(1981)医学書院)。従って、本発明の治療剤は、これらリンパ球活性化関与疾患の治療剤として有用である。
【0061】
6. 投与経路および製剤
本発明のリンパ球活性化抑制剤は、非経口的に全身あるいは局所的に投与することができる。例えば、点滴などの静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射を選択することができ、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。有効投与量は、一回につき体重1 Kgあたり0.01 mg から100 mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり1 〜1000 mg 、好ましくは5 〜50 mg の投与量を選ぶことができる。本発明のリンパ球活性化抑制剤は、投与経路次第で医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。
【0062】
このような担体および添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、ジグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン(HSA )、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などが挙げられる。使用される添加物は、剤型に応じて上記の中から適宜あるいは組合せて選択されるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例 1. 抗 HM1.24 抗体の作製
1.抗HM1.24抗体を含むマウス腹水の調製
抗HM1.24抗体産生ハイブリドーマをGoto, T らの方法(Blood (1994) 84. 1922−1930)に従い得た。
【0064】
あらかじめ11、3 日前に2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン(和光純薬工業製)をそれぞれ500 μl ずつ腹腔内に投与したBALB/cマウス(日本クレア製)に、本ハイブリドーマ5 x 106 個を腹腔内に注入した。ハイブリドーマ注入後10日目より、マウスの腹腔内に溜った腹水を19ゲージの留置針ハッピーキャス(メディキット製)で採取した。採取した腹水は、低速遠心機RLX−131 (トミー精工製)を用いて回転数1000、3000 rpmで2 回遠心し、ハイブリドーマ、血球等の雑排物を除去した。
【0065】
2.マウス腹水からの抗HM1.24抗体の精製
上記マウス腹水からの抗HM1.24抗体の精製は以下の方法で行った。マウス腹水に等量のPBS(−)を加えた後、中空糸フィルターメディアプレップ(MILLIPORE 製)を用いてろ過した後、高速抗体精製装置ConSep LC100(MILLIPORE 製)およびHyper D Protein A カラム(カラム体積 20 ml、日本ガイシ製)を用い、付属の説明書に基づき吸着緩衝液としてPBS(−)、溶出緩衝液として0.1 M クエン酸ナトリウム緩衝液(pH 4)を用いてアフィニティー精製した。溶出画分は直ちに1 M Tris−HCl (pH 8.0) を添加してpH7.4 付近に調整した後、遠心限外濃縮器Centriprep 10 を用いて濃縮およびPBS(−)への緩衝液置換を行い、孔径0.22μm のメンブランフィルターMILLEX−GV (MILLIPORE 製)でろ過滅菌し、精製抗HM1.24抗体を得た。
【0066】
3. コントロールマウス IgG2a の精製
コントロールマウスIgG2a の精製は以下の方法で行った。市販のマウスIgG2a(KAPPA)(UPC 10)腹水(CAPPEL製)を精製水およびPBS(−)で溶解した。これを孔径0.2 μm のメンブランフィルターAcrodisc(Gelman Sciences 製)を用いてろ過した後、高速抗体精製装置ConSep LC100(MILLIPORE 製)およびHyper D Protein A カラム(カラム体積 20 ml、日本ガイシ製)を用い、付属の説明書に基づき吸着緩衝液としてPBS(−)、溶出緩衝液として0.1 M クエン酸ナトリウム緩衝液(pH 4)を用いてアフィニティー精製した。
【0067】
溶出画分は直ちに1 M Tris−HCl (pH 8.0) を添加してpH7.4 付近に調整した後、遠心限外濃縮器Centriprep 10 を用いて濃縮およびPBS(−)への緩衝液置換を行い、孔径0.22μm のメンブランフィルターMILLEX−GV (MILLIPORE 製)でろ過滅菌し精製コントロールマウスIgG2a を得た。
4. 抗体濃度の測定
精製抗体の濃度測定は吸光度の測定により行った。すなわち、精製抗体をPBS(−)で希釈した後、280 nmの吸光度を測定し、1 mg/ml を1.35 OD として算出した。
【0068】
実施例2 . SAC 刺激ヒ卜末梢血 B 細胞の抗体産生に対する抗 HMl.24 抗体の効果
1. ヒ卜末梢血リンパ球画分の調製
健常人より採取した末梢血液をPBS(−)で1/2 希釈後、50 ml 遠心チューブ(BECTON DICKINSON製)中でFicoll−paque(pharmacia 製)に重層し450 x g 、室温で40分間遠心した後、境界層の単核球画分を分離した。同画分を10% 牛胎児血清(Moregate製)含有RPMI1640培地(GIBCO 製)で適当密度に調製後、プラスチックシヤーレ中で37℃、5%CO2条件下にて1時間インキュベー卜する操作を2 度行うことにより、シヤーレに付着した細胞を除去した。残った非付着性の細胞をヒ卜末梢血リンパ球画分として以下の実験に用いた。
【0069】
2. SACによるヒ卜末梢血B 細胞の活性化
上記の通り調製したヒ卜末梢血リンパ球をポリプロピレンチューブ中、5 x 106 cells/mlの密度で1 ng/ml IL−6存在下、あるいは非存在下で0.0l % SAC(Pansorbin cells ,Calbiochem. 製)と2 日間、37℃、5% CO2条件下でインキュべー卜することで、末梢血リンパ球中のB 細胞を活性化した。SAC 処理した末梢血リンパ球を10% 牛胎児血清(Moregate製)含有RPMI1640培地で懸濁し96穴培養プレート(BECTON DICKINSON製)で l x 105 cells/200μl/wellの細胞密度で、抗HM1.24抗体またはコントロールマウスIgC2a 20μg/mlと共に37℃、5%CO2 条件下6 日間培養した後、培養上清を回収した。
【0070】
3. ヒ卜IgG の定量
上記培養上清中のIgG 濃度は、ヒ卜IgG 特異的ELISA で測定した。即ち、0.1M重炭酸緩衝液(pH9.6 )で1 μg/mlに希釈したヤギ抗ヒトIgG (TAGO製)100 μl を96穴イムノプレート(Nunc製)に加え、4℃で一晩インキュベーションし、抗体を固層化した。ブロッキングの後、適当に希釈した培養上清あるいは標品としてヒトIgG (CAPPEL製)100 μl を添加し、室温にて1時間インキュベーションした。
洗浄後、2000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG (CAPPEL製)100 μl を加え、室温にて1時間インキュベートした。洗浄後、基質溶液を加えインキュベーションの後、MICROPLATE READER Model 3550(Bio−Rad 製)を用いて405nm での吸光度を測定した。
【0071】
4. 抗HMl.24抗体のSAC 刺激ヒ卜末梢血B 細胞の抗体産生に対する効果
図1に示すようにSAC 刺激によりB 細胞のIgG 産生は増強され、ここにコントロールマウスIgG2a 20μg/mlを加えても変化はなかったが、抗HM1.24抗体20μg/mlを加えるとIgG 産生の完全な抑制が観察された。従って、抗HM1.24抗体はB 細胞の活性化を抑制することが示された。
【0072】
実施例3 . PHA 刺激ヒ卜 T 細胞幼若化反応に対する HM1.24 抗体の効果
1. ヒ卜末梢血T 細胞の調製
ヒ卜末梢T 細胞は実施例2で調製したヒ卜末梢血リンパ球からCellect Humm Tcell Kit (Biotex製)を用いて、添付の方法に従い精製した。
2. FCM 解析
精製T細胞を2%牛胎児血清(Moregate製)含有RPMI1640培地に懸濁し24穴培養プレート中 1 x 106 cells/1 ml/wellの細胞密度で、0, 1, 10μg/mlのPHA (Phytohemagglutinin,Sigma 製)と共に37℃、5%CO2 条件下、4 日間培養した。これらの一部は4 日間の培養後PHA を含まない2%牛胎児血清(Moregate製)含有RPMI1640培地に再懸濁し、さらに3 日間培養した。これらの細胞をPBS(−)で洗浄した後、 FACS 緩衝液(2 %ウシ胎児血清、0.1 %アジ化ナトリウム含有PBS(−))で25μg/mlに希釈した抗HM1.24抗体あるいはコントロール抗体 100μl を加え、氷温下30分インキュベートした。
【0073】
FACS緩衝液で洗浄した後、25μg/mlのFITC標識ヤギ抗マウス抗体(GAM, Becton Dickinson 製)100 μl を加え、氷温下30分間インキュベートした。FACS緩衝液で洗浄した後、600 μl のFACS緩衝液に懸濁し、FACScan (Becton Dickinson製)で各細胞の蛍光強度を測定した。その結果、図2に示す通り、PHA によるT細胞の活性化に伴って、細胞上にHM1.24抗原が発現されることが明らかとなった。さらに図3に示す通り、活性化されて一旦発現したHM1.24抗原は、その後の培養によって消失しないことが示された。
【0074】
3. 抗HMl.24抗体のPHA 刺激ヒ卜T 細胞幼若化反応に対する効果
精製T 細胞を2%牛胎児血清(Moregate製)含有RPMI1640培地に懸濁し96穴培養プレート中 1 x 105 cells/200μl/wellの細胞密度で、1 μg/mlのPHA (Phytohemagglutinin,Sigma 製)及び抗HM1.24抗体またはコントロールマウスIgG2a 20 μg/mlと共に37℃、5%CO2 条件下、4 日間培養し、3H− チミジン(Amersham製)を 1μCi/well 添加し、 4時間後の取り込みをβ− カウンター(Pharmacia 製)で測定した。
その結果、図4に示すように、T 細胞はPHA 刺激による幼若化反応により3H− チミジン取り込みは上昇し、ここにコントロールマウスIgG2a 20μg/mlを加えても変化はなかったが、HM1.24抗体 20 μg/mlを加えると3H− チミジン取り込みの抑制が観察された。従って、抗HM1.24抗体はT細胞の活性化を抑制することが示された。
【0075】
参考例 1. マウス抗 HM1.24 モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの調製
Goto, T. et al., Blood (1994) 84, 1992−1930 に記載の方法にて、マウス抗HM1.24モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製した。
ヒト多発性骨髄腫患者骨髄由来の形質細胞株KPC−32(1x107 個)(Goto, T. et al., Jpn. J. Clin. Hematol. (1991) 32, 1400 )をBALB/Cマウス(チャールスリバー製)の腹腔内に6 週間おきに2 回注射した。
このマウスを屠殺する3 日前にマウスの抗体産生価をさらに上昇させるために、1.5 x 106 個のKPC−32をマウスの脾臓内に注射した(Goto, T. et al., Tokushima J. Exp. Med. (1990) 37, 89 )。マウスを屠殺した後に脾臓を摘出し、Groth, de St. & Schreideggerの方法(Cancer Research (1981) 41, 3465 )に従い摘出した脾臓細胞とミエローマ細胞SP2/0 を細胞融合に付した。
【0076】
KPC−32を用いたCell ELISA(Posner, M. R. et al., J. Immunol. Methods (1982) 48, 23 )によりハイブリドーマ培養上清中の抗体のスクリーニングを行った。5 x 104 個のKPC−32を50 ml のPBS に懸濁し、96穴プレート(U 底型、Corning 、Iwaki 製)に分注し37℃で一晩風乾した。1%ウシ血清アルブミン(BSA )を含むPBS でブロックした後、ハイブリドーマ培養上清を加え4 にて2 時間インキュベートした。次いで、4 ℃にて1 時間ペルオキシダーゼ標識抗マウスIgG ヤギ抗体(Zymed 製)を反応させ、洗浄後室温にて30分間o−フェニレンジアミン基質溶液(Sumitomo Bakelite 製)を反応させた。
【0077】
2N硫酸で反応を停止させ、ELISA reader(Bio−Rad 製)で492nm における吸光度を測定した。ヒト免疫グロブリンに対する抗体を産生するハイブリドーマを除去するために、陽性ハイブリドーマ培養上清をヒト血清にあらかじめ吸着させ、他の細胞株に対する反応性をELISA にてスクリーニングした。陽性のハイブリドーマを選択し、種々の細胞に対する反応性をフローサイトメトリーで調べた。最後に選択されたハイブリドーマクローンを二度クローン化し、これをプリスタン処理したBALB/Cマウスの腹腔に注射して、腹水を取得した。
【0078】
モノクローナル抗体は、硫酸アンモニウムによる沈澱とプロテインA アフィニティクロマトグラフィーキット(Ampure PA 、Amersham製)によりマウス腹水より精製した。精製抗体は、Quick Tag FITC結合キット(ベーリンガーマンハイム製)を使用することによりFITC標識した。
その結果、30のハイブリドーマクローンが産生するモノクローナル抗体がKPC−32およびRPMI 8226 と反応した。クローニングの後、これらのハイブリドーマの培養上清と他の細胞株あるいは末梢血単核球との反応性を調べた。
【0079】
このうち、3 つのクローンが形質細胞に特異的に反応するモノクローナル抗体であった。これらの3 つのクローンのうち、最もフローサイトメトリー分析に有用であり、かつRPMI 8226 に対するCDC 活性を有するハイブリドーマクローンを選択し、HM1.24と名付けた。このハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体のサブクラスを、サブクラス特異的抗マウスウサギ抗体(Zymed 製)を用いたELISA にて決定した。抗HM1.24抗体は、IgG2a κのサブクラスを有していた。抗HM1.24抗体を産生するハイブリドーマHM1.24は、工業技術院生命工学工業研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成7 年9 月14日にFERM BP−5233としてブタペスト条約に基づき国際寄託された。
【0080】
参考例 2. ヒト型化抗 HM1.24 抗体の作製
ヒト型化抗HM1.24抗体を下記の方法により得た。
参考例1 で作製されたハイブリドーマHM1.24から、常法により全RNA を調製した。これよりマウス抗体V 領域をコードするcDNAをポリメラーゼ連鎖反応(PCR )法および5’−RACE 法により、合成、増幅した。マウスV 領域をコードする遺伝子を含むDNA 断片を得、これらのDNA 断片を各々プラスミドpUC 系クローニングベクターに連結し、大腸菌コンピテント細胞に導入して大腸菌形質転換体を得た。この形質転換体から上記プラスミドを得、プラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列を常法に従い決定し、さらに各々のV 領域の相補性決定領域(CDR )を決定した。
【0081】
キメラ抗HM1.24抗体を発現するベクターを作製するため、それぞれマウス抗HM1.24抗体L 鎖およびH 鎖のV 領域をコードするcDNAをHEF ベクターに挿入した。また、ヒト型化抗HM1.24抗体を作製するために、CDR 移植法によりマウス抗HM1.24抗体のV 領域CDR をヒト抗体へ移植した。ヒト抗体のL 鎖としてヒト抗体REI のL 鎖を用い、ヒト抗体H 鎖としてフレームワーク領域(FR)1−3 についてはヒト抗体HG3 のFR1−3 を用いFR4 についてはヒト抗体JH6 のFR4 を用いた。CDR を移植した抗体が適切な抗原結合部位を形成するようにH 鎖V 領域のFRのアミノ酸を置換した。
【0082】
このようにして作製したヒト型化抗HM1.24抗体のL 鎖およびH 鎖の遺伝子を哺乳類細胞で発現させるために、HEF ベクターに、各々の遺伝子を別々に導入し、ヒト型化抗HM1.24抗体のL 鎖またはH 鎖を発現するベクターを作製した。
これら二つの発現ベクターをCHO 細胞に同時に導入することにより、ヒト型化抗HM1.24抗体を産生する細胞株を樹立した。この細胞株を培養して得られたヒト型化抗HM1.24抗体のヒト羊膜由来細胞株WISHへの抗原結合活性および結合阻害活性を、Cell ELISAにて調べた。その結果、ヒト型化抗HM1.24抗体は、キメラ抗体と同等の抗原結合活性を有し、さらにビオチン化マウス抗HM1.24抗体を用いた結合阻害活性についても、キメラ抗体あるいはマウス抗体と同等の活性を有した。
【0083】
なお、キメラ抗HM1.24抗体のL 鎖V 領域およびH 鎖V 領域をコードするDNA を含むプラスミドを有する大腸菌は、各々Escherichia coli DH5α( pUC19−1.24L−gκ)およびEscherichia coli DH5α( pUC19−1.24H−gγ1 )として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成8 年8 月29日に、各々FERM BP−5646およびFERM BP−5644としてブダペスト条約に基づき国際寄託された。
また、ヒト型化抗HM1.24抗体のL 鎖V 領域aバージョン(配列番号:2)およびH 鎖V 領域rバージョン(配列番号:3)をコードする DNAを含むプラスミドを有する大腸菌は、各々Escherichia coli DH5α(pUC19−RVLa−AHM−gκ)およびEscherichia coli DH5α(pUC19−RVHr−AHM−gγ1 )として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1 丁目1 番3 号)に、平成8 年8 月29日に、各々FERM BP−5645およびFERM BP−5643としてブダペスト条約に基づき国際寄託された。
また、ヒト型化抗HM1.24抗体のH 鎖V 領域sバージョン(配列番号:4)をコードするDNA を含むプラスミドを有する大腸菌は、Escherichia coli DH5α(pUC19−RVHs−AHM−gγ1)として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に、平成9年(1997年)9月29日にFERM BP−6127としてブダペスト条約に基づき国際寄託された。
【0084】
参考例 3. HM1.24 抗原蛋白質 cDNA のクローニング
抗HM1.24抗体が特異的に認識するHM1.24抗原蛋白質をコードするcDNAをクローニングした。
1. cDNA ライブラリーの作製
1 )全RNA の調製
ヒ卜多発性骨髄腫細胞株KPMM2 から、全RNA をChirgwinら(Biochemistry, 18, 5294(1979))の方法に従って調製した。すなわち、2.2 x 108 個のKPMM2 を20 ml の4 M グアニジンチオシアネー卜(ナカライテスク製)中で完全にホモジナイズさせた。ホモジネー卜を遠心管中の5.3 M 塩化セシウム溶液に重層し、次にこれをBeckman SW40ロー夕ー中で31,000rpm にて20℃で24時間遠心分離することによりRNA を沈殿させた。
【0085】
RNA 沈殿物を70 %エタノールにより洗浄し、そして1 mM EDTA 及び0.5 % SDS を含有する10 mM Tris−HCl(pH7.4 )300 μl 中に溶解し、それにPronase (Boehringer製)を0.5 mg/ml となるように添加した後、37℃にて30分間インキュべー卜した。混合物をフェノール及びクロロホルムで抽出し、RNA をエタノールで沈殿させた。次に、RNA 沈殿物を1mM EDTAを含有する10 mM Tris−HCl(pH7.4 )200 μl に溶解した。
2 )poly(A) +RNA の調製
前記のようにして調製した全RNA の約500 μg を材料としてFast Track 2.0 mRNA Isolation Kit (Invitrogen製)を用いてキッ卜添付の処方に従って poly(A)+RNA を精製した。
【0086】
3 )cDNAライブラリーの構築
上記 poly(A)+RNA 10μg を材料としてcDNA合成キッ卜TimeSaver cDNA Synthesis Kit(Pharmacia 製)を用いてキッ卜添付の処方に従って二本鎖 cDNA を合成し、更にDirectional Cloning Toolbox (Pharmacia 製)を用いてキッ卜付属の EcoRIアダプターをキッ卜添付の処方に従って連結した。EcoRI アダプターのカイネーション及び制限酵素 NotI 処理はキッ卜添付の処方に従って行った。更に、約 500 bp 以上の大きさのアダプター付加二本鎖 cDNA を1.5 % 低融点アガロースゲル(Sigma 製)を用いて分離、精製し、アダプター付加二本鎖 cDNA 約40 μl を得た。
【0087】
このようにして作製したアダプター付加二本鎖 cDNA を、あらかじめ制限酵素EcoRI、NotI 及びアルカリフォスファターゼ(宝酒造製)処理した pCOS1ベクター(特願平8−255196)と T4 DNA リガーゼ(GIBCO−BRL 製)を用いて連結し、cDNAライブラリーを構築した。構築した cDNA ライブラリーは、大腸菌細胞株 DH5α(GIBCO−BRL 製)に形質導入され、全体のサイズは約 2.5 x 106個の独立したクローンであると推定された。
【0088】
2. 直接発現法によるクローニング
1 )COS−7 細胞へのトランスフェクション
上記の形質導入した大腸菌約 5 x 105クローンを 50 μg/ml のアンピシリンを含む 2−YT 培地(Molecular Cloning: A Laboratory Mannua1. Sambrook ら, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))にて培養することにより cDNA の増幅を行い、アルカリ法(Molecular Cloning: A Laboratory Mannual. Sambrook ら, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989))により大腸菌からプラスミド DNA を回収した。得られたプラスミド DNA はGene Pulser 装置(Bio−Rad 製)を用いてエレクトロポレーション法により COS−7細胞にトランスフェクションした。
【0089】
すなわち、精製したプラスミド DNA 10 μg を 1 x 107細胞/mlで PBS中に懸濁した COS−7細胞液 0.8 ml に加え、1500 V、25μFDの容量にてパルスを与えた。室温にて10分問の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞は、10 %牛胎児血清(GIBCO−BRL 製)を含むDMEM培養液(GIBCO−BRL 製)にて、37℃、5 %CO2の条件下で3日間培養した。
【0090】
2 )パンニングデイッシュの調製
マウス抗HM1.24抗体をコーティングしたパンニングデイッシュを、B. Seed ら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 3365−3369 (1987))の方法に従って調製した。すなわち、マウス抗HM1.24抗体を10μg/mlになるように 50 mM Tris−HCl (pH9.5 )に加えた。このようにして調製した抗体溶液3 mlを直径60 mm の細胞培養皿に加え、室温にて2 時間インキユべー卜した。0.15 M NaCl 溶液にて3 回洗浄した後、5%牛胎児血清、1 mM EDTA 、0.02 %NaN3を含むPBS を加え、ブロッキングした後、下記クローニングに用いた。
【0091】
3 )cDNA ライブラリーのクローニング
前述のようにトランスフェク卜した COS−7 細胞は、5 mM EDTA を含むPBS にて剥がし、5%牛胎児血清を含むPBS で一回洗浄した後、約 1 x 106細胞/mlとなるように5%牛胎児血清及び0.02% NaN3を含むPBS に懸濁し、上記のように調製したパンニングデイシユに加え、室温にて約 2 時間インキュべー卜した。5 % 牛胎児血清及び0.02 %NaN3を含むPBS で3度緩やかに洗浄した後、0.6%SDS 及び10mM EDTAを含む溶液を用いてパンニングディシュに結合した細胞からプラスミドDNAの回収を行った。
【0092】
回収したプラスミド DNAを再び大腸菌DH5 αに形質導入し、前述のようにプラスミドDNA を増幅後、アルカリ法にて回収した。回収したプラスミド DNAを COS−7細胞にエレクトロポレーション法によりトランスフェク卜して前述と同様に結合した細胞よりプラスミドDNA の回収を行った。同様の操作を更に1回繰り返し、回収したプラスミドDNA を制限酵素EcoRI およびNotIで消化した結果、約 0.9kbpのサイズのインサー卜の濃縮が確認された。
【0093】
さらに、回収したプラスミドDNA の一部を形質導入した大腸菌を50μg/ml のアンピシリンを含む2−YTアガープレー卜に接種し、一晩培養後、単一のコロニーよりプラスミドDNA を回収した。制限酵素EcoRI およびNotIにて消化し、インサー卜のサイズが約 0.9 kbpを示すクローンp3.19 を得た。
本クローンについては、PRISM, Dye Terminater Cycle Sequencingキッ卜(PerkinElmer 製)を用いて、キッ卜添付の処方に従い反応を行い、ABI 373A DNA Sequencer(Perkin Elmer製)にて塩基配列の決定を行った。この塩基配列および対応するアミノ酸配列を配列番号1 に示す。
【0094】
【発明の効果】
抗HM1.24抗体の処理によりB細胞からの抗体産生抑制、およびT細胞の幼若化の抑制が認められた。これらのことから、抗HM1.24抗体はリンパ球の活性化を抑制する効果を有することが示される。
【0095】
【配列表】
【0096】
【0097】
【0098】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、抗HM1.24抗体がSAC 刺激によるB細胞からの抗体産生を抑制することを示す図である。
【図2】図2は、PHA 刺激したT細胞を抗HM1.24抗体でFCM 解析したときのヒストグラムを示す。
【図3】図3は、活性化T細胞を抗HM1.24抗体でFCM 解析したときのヒストグラムを示す。
【図4】図4は、抗HM1.24抗体がPHA 刺激によるT細胞の幼若化反応を抑制することを示す図である。
Claims (12)
- 配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質に特異的に結合する抗体を有効成分として含有する、リンパ球の活性化抑制剤。
- リンパ球がT細胞である、請求項1に記載の抑制剤。
- リンパ球がB細胞である、請求項1に記載の抑制剤。
- 抗体がモノクローナル抗体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抑制剤。
- 抗体がヒト抗体定常領域を有する、請求項4に記載の抑制剤。
- 抗体がキメラ抗体またはヒト型化抗体である、請求項4又は5に記載の抑制剤。
- 抗体が抗HM1.24抗体である、請求項4に記載の抑制剤。
- 抗体がキメラ抗HM1.24抗体である、請求項6に記載の抑制剤。
- 抗体がヒト型化抗HM1.24抗体である、請求項6に記載の抑制剤。
- 抗体が抗HM1.24抗体が認識するエピトープと特異的に結合する、請求項1に記載の抑制剤。
- 配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する蛋白質に特異的に結合する抗体を有効成分として含有する、リンパ球活性化関与疾患の予防・治療剤。
- リンパ球活性化関与疾患が自己免疫疾患、臓器等移植時の拒絶反応、またはアレルギーである、請求項11に記載の予防・治療剤。
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