JP3551231B2 - 無指向性偏波ダイバーシチアンテナ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、PHSや携帯電話等のマイクロセル基地局に利用できる水平面内無指向性偏波ダイバーシチアンテナにするものである。
【0002】
【従来の技術】
移動体通信用のアンテナに要求される放射特性は、設置場所やカバーエリア等の条件に応じて様々であるが、特に、水平面内において無指向性であることが要求されるものが多い。この水平面内無指向性アンテナで多く用いられるものには、スリーブアンテナ等があり、その利得は単一型(一段)のもので2.14dBi程度である。また、ユーザの要求に応じて数段あるいは十数段に多段化された構成のものもあり、その利得は段数に応じて高利得となってくる。
【0003】
前記高利得の水平面内無指向性アンテナとして、具体的に、アンテナ素子を縦に複数個並べて、基板の給電回路より並列給電を行うようにしたアンテナが提案されている(特開平8−340211号公報参照)。この高利得無指向性アンテナは、複数の垂直偏波ダイポールアンテナ素子を縦方向に一列に並べ、またその給電点と各ダイポールアンテナ素子との間は、電気長でほぼ等しい長さの給電線(ストリップライン)をもって接続する構造をとっている。
【0004】
具体的には、図10(a) (b) に示すように、縦長の地板21にアンテナ素子22を並べ(地板21とアンテナ素子22は絶縁されている)、基板24の給電回路から給電ピン23を通して、それぞれのアンテナ素子22に給電するものである。裏側の地板21にも同様にアンテナ素子22を並べ、前記給電回路から給電ピン23を通して給電している。
【0005】
ところが、実際には、水平偏波を発射する水平面内無指向性アンテナが要求されることがある。
この場合は、例えば図11(a) に示すように、アンテナ素子を横に並べ変えることにより、水平偏波ダイポールアンテナとすることが考えられる。
ところが、アンテナ素子22a,22bの長さL3(図11(a) 参照)は、原理上0.5波長程度必要なので、アンテナ全体の横幅L2は、0.5波長よりも長いものとなる。この横幅L2は、垂直偏波を発射する場合の横幅L1(図10(a) 参照)が0.2波長程度あれば済むのに比較して、かなり長いものである。つまり、水平偏波を発射する構造にすれば、アンテナの外径が大きくなり、それだけ、水平面内無指向性の特性を得ることが難しくなる。
【0006】
しかも、アンテナ素子を横に並べる場合、表裏のアンテナ素子の給電位相を合わせるため、図11(b) に示すように、表のアンテナ素子22aに対する給電点と、裏のアンテナ素子22bに対する給電点の位置を反対にしなければならない。すなわち給電ピンが、一段あたり2本必要になる(23aと23b)。
このため、図11(c) に示すように、給電ピン23aと23bに給電するためのストリップライン25を枝分かれさせる必要があり、給電回路の構造がさらに複雑になる。
【0007】
そこで、本願出願人は、良好な水平面内無指向性を有するとともに、アンテナ自体の外径も小さくて済む水平偏波の水平面内無指向性アレイアンテナを以前に特許出願している(特願平10−47538号明細書)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年マイクロセル基地局では、偏波ダイバーシチアンテナの導入が試みられ、その有効性が確認されつつある。
このような偏波ダイバーシチアンテナとして、垂直偏波と水平偏波とを同時に取り扱う水平面内無指向性アンテナの提案はまだなされていない。
【0009】
そこで、本発明の目的は、給電回路の構造がシンプルで、コンパクトな水平面内無指向性偏波ダイバーシチアンテナを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の水平面内無指向性偏波ダイバーシチアンテナは、垂直偏波用のアンテナ素子と水平偏波用のアンテナ素子の2種類からなり、垂直偏波用のアンテナ素子と水平偏波用のアンテナ素子とは、交互に配置され、前記垂直偏波用のアンテナ素子は、各導体地板の外面に配置された一対のアンテナ素子により構成され、前記水平偏波用のアンテナ素子は、それぞれ両地板の側端面をまたがる状態で折り曲げられて配置され、導体地板を貫通して立設された給電ピンの両端から給電される一対のアンテナ素子により構成されるものである(請求項1)。
【0011】
この構成の水平面内無指向性偏波ダイバーシチアンテナであれば、水平偏波用のアンテナ素子を構成する各アンテナ素子が両地板の側端面をまたがるように曲げられているので、その曲げられた部分の長さにより、アンテナ長を稼ぐことができる。したがって、図11(a) の先行技術のようにアンテナ長をL3のみで稼ぐのと比べて、コンパクトに仕立てることができる。いいかえれば、若干肉厚になるが、アンテナの横幅L2を長くしないで済むので、全体として、アンテナの断面寸法を減らすことができる。また、アンテナの断面寸法が減ったために、波源が小さくなり、水平面内無指向性が容易に得られる。
【0012】
そして、各導体地板の外面に配置された一対のアンテナ素子により構成される垂直偏波用のアンテナ素子を、水平偏波用のアンテナ素子の間に配列しているので、垂直偏波の水平面内無指向性も得ることができる。
その結果、水平面内無指向性の偏波ダイバーシチアンテナを実現することができる。
【0013】
前記水平偏波用のアンテナ素子を構成する各アンテナ素子は、中心線方向から見てほぼ点対称に配置され、前記給電ピンは給電回路基板の中心線上に立設されていることが好ましい(請求項2)。
このような構造であれば、点対称な電界分布となり、水平面内無指向性が得られやすくなる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
水平面内無指向性偏波ダイバーシチアンテナ(以下、単に「偏波ダイバーシチアンテナ」という)の典型的な構造を、図1を用いて説明する。
図1は、偏波ダイバーシチアンテナ10の斜視図であり、図2は図1の偏波ダイバーシチアンテナ10の水平偏波用のアンテナ素子の断面図、図3は図1の偏波ダイバーシチアンテナ10の垂直偏波用のアンテナ素子の断面図である。
【0015】
この偏波ダイバーシチアンテナ10は、金属性導体地板31a,31b同士を対抗させ、両導体地板31a,31b間に絶縁板37a,37bで両面をはさまれたプリント基板34を挟んでいる。前記導体地板31a,31bの外面には、それぞれ水平偏波用のアンテナ素子32a,32b、垂直偏波用のアンテナ素子41a,41bを一定間隔ずつ離して交互に配置している。水平偏波用のアンテナ素子32a,32bは、それぞれ折り曲げられて八角形を半分に割ったような形状をしており、両導体地板31a,31bの側端面をまたがる状態で配置されている。
【0016】
さらに、水平偏波用のアンテナ素子32a,32bから一定間隔離してパッチ素子36を配置している。このパッチ素子36は、図1に示すように長方形状の板で、他とは絶縁されている。その形状、間隔を調整することにより、水平面内指向性の調整をすることができる。
前記導体地板31a,31b、アンテナ素子32a,32b,41a,41b、パッチ素子36の材質は、導体であれば特に限定されないが、例えば、アルミニウム、真鍮、銅などを使うことができる。
【0017】
前記プリント基板34には、片面上にアンテナ素子32a,32b,41a,41bに給電するための配線であるストリップライン(図示せず)が形成されている。また、プリント基板34の基端部34(図4参照)には、ストリップラインと同軸ケーブル又は移相器とを接続するためのコネクタ(図示せず)が装着されている。
【0018】
このストリップラインから、水平偏波用のアンテナ素子32a,32bに給電ピン33を通して信号を供給し、垂直偏波用のアンテナ素子41a,41bに給電ピン33を通して信号を供給する。
導体地板31a,31bの両側面にはともに曲げ加工が施されて断面がコの字状になっており、絶縁板37a,37bとプリント基板34とを挟んだ図2、図3の状態では、全体として断面がH形となっている。
【0019】
給電ピン33は、導体地板31a,31b、絶縁板37a,37b、プリント基板34を貫通する形で図示されているが、実際にはプリント基板34上のストリップラインの所定の部位に半田付けされ、アンテナ素子32a,32b,41a,41bにも半田付けされている。しかし、給電ピン33の両端にねじを切ってアンテナ素子32a,32b,41a,41bをナットで締めつけるようにしてもよい。また、給電ピン33を雄ねじ雌ねじで螺合可能な2つのピースに分け、ストリップラインを両方から締めつけるようにしてもよい。
【0020】
なお、前記のスプリント基板34は、導体地板31a,31bで挟まれた構造なので、ストリップラインからの不要放射を防止することができる。
図4は、以上に説明した偏波ダイバーシチアンテナ10をFRPなどの繊維強化樹脂性のレドーム70に入れる様子を示している。この形態では、水平偏波用のアンテナ素子数は4つ、垂直偏波用のアンテナ素子数も4つであるが、この数に限定されないことは勿論である。
【0021】
以上で、偏波ダイバーシチアンテナの構造を説明したが、本発明の偏波ダイバーシチアンテナの構造は、以上のものに限定される訳ではない。以下、いろいろな変更例を、図面を参照しながら説明する。
図5は、水平偏波用のアンテナ素子の他の形状を示す斜視図である。この例の水平偏波用のアンテナ素子52は、凸形状の導体板を断面コの字状に折り曲げている。また、給電ピン33が接続される突出部53の奥にインピーダンス調整用の切れ込み54を入れている。この調整は、プリント基板34のストリップラインのインピーダンスと、アンテナ素子52のインピーダンスとのマッチングをとるためのものである。
【0022】
図6は、図5に示した断面コの字状の水平偏波用のアンテナ素子52を使った偏波ダイバーシチアンテナの断面図である。水平偏波用のアンテナ素子は、一対をなし、番号52a,52bで示している。
図7は、アンテナ素子のさらに他の形状を示す斜視図である。この例によれば、水平偏波用のアンテナ素子53は、凸形状の導体板を断面が多角形の形状になるように折り曲げている。これにより、アンテナ素子の加工はやや複雑になるが、外径をさらに小さくすることができる。
【0023】
本発明の実施形態の説明は以上であるが、本発明の実施は前記の形態に限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【0024】
【実施例】
水平偏波用のアンテナ素子2段、垂直偏波用のアンテナ素子2段の構造を持つ偏波ダイバーシチアンテナを製作した。周波数は1.9GHz帯、レドーム径56mm(約0.35波長)、長さ950mm、垂直チルト角8°、利得6.5dBiである。
【0025】
水平偏波の水平面内指向性の測定結果を図8に示す。放射軸は、電界強度(V/m)のピークを100%として正規化し、リニアスケールでとっている。
いわゆる水平面内無指向性アンテナの水平面内指向性に要求される一般的性能としては、ピーク方向の電界強度に対し、最小方向の電界強度が50%以上あることである。図8では、最小方向の電界強度は90%であり、十分な性能が確保できていることが分かる。
【0026】
垂直偏波の水平面内指向性の測定結果を図9に示す。垂直偏波も十分な水平面内無指向性が認められる。
【0027】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、給電回路の構造がシンプルで、コンパクトな水平面内無指向性の偏波ダイバーシチアンテナを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の偏波ダイバーシチアンテナの具体例を示す斜視図である。
【図2】水平偏波のアンテナ素子の位置で切った断面図である。
【図3】垂直偏波のアンテナ素子の位置で切った断面図である。
【図4】偏波ダイバーシチアンテナ10をレドーム70に入れる様子を示す斜視図である。
【図5】水平偏波用のアンテナ素子の他の形状を示す斜視図である。
【図6】水平偏波用のアンテナ素子の他の形状を示す断面図である。
【図7】水平偏波用のアンテナ素子のさらに他の形状を示す断面図である。
【図8】水平偏波の水平面内指向性の測定結果を示すグラフである。
【図9】垂直偏波の水平面内指向性の測定結果を示すグラフである。
【図10】(a) は従来の垂直偏波水平面内無指向性アレイアンテナの正面図、(b) は断面図である。
【図11】(a) は従来の水平偏波水平面内無指向性アレイアンテナの正面図、(b) は断面図、(c) は給電回路基板の正面図である。
【符号の説明】
10 偏波ダイバーシチアンテナ
31a,31b 金属性導体地板
32a,32b 水平偏波用の一対のアンテナ素子
33 給電ピン
34 プリント基板(給電回路基板)
36 パッチ素子
41a,41b 垂直偏波用の一対のアンテナ素子
Claims (2)
- 中心線の両側に矩形状の導体地板同士を対抗させ、両地板間に1枚の給電回路基板を配設し、アンテナ素子を中心線方向に多段に配設したアンテナであって、
前記アンテナ素子は、垂直偏波用のアンテナ素子と水平偏波用のアンテナ素子の2種類からなり、
垂直偏波用のアンテナ素子と水平偏波用のアンテナ素子とは、中心線方向に交互に配置され、
前記垂直偏波用のアンテナ素子は、各導体地板の外面に配置された一対のアンテナ素子により構成され、
前記水平偏波用のアンテナ素子は、それぞれ両地板の側端面をまたがる状態で折り曲げられて配置され、導体地板を貫通して立設された給電ピンの両端から給電される一対のアンテナ素子により構成されるものであることを特徴とする無指向性偏波ダイバーシチアンテナ。 - 前記水平偏波用のアンテナ素子を構成する各アンテナ素子は、中心線方向から見てほぼ点対称に配置され、前記給電ピンは給電回路基板の中心線上に立設されている請求項1記載の無指向性偏波ダイバーシチアンテナ。
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