JP3550998B2 - タイヤ空気圧推定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車等のタイヤ空気圧を間接的に推定するタイヤ空気圧推定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来タイヤ空気圧の状態を検知する装置としては、タイヤの振動周波数成分を含む信号を解析して、共振周波数を抽出し、その共振周波数に基づき、タイヤ空気圧状態を検知するものがある(特開平5−133831号公報参照)。
しかし、この装置でタイヤ空気圧推定に使用する共振周波数(約30〜50Hz)は、車両がおかれている環境変化の影響を受けて変化するため、前記共振周波数(約30〜50Hz)のみを観測していたのでは、タイヤ空気圧を推定できなくなるという問題点があった。
【0003】
たとえば、車両が市街地などを走行する車速帯では、前記共振周波数(約30〜50Hz)により、タイヤ空気圧推定が可能であるが、車両の速度が高速領域になると、振動現象が発生しにくくなり、タイヤ空気圧推定の精度が低下するという問題点がある。この問題点に鑑み、特開平8−219920号公報(特願平7−21723号)に開示されている装置では、車輪速度信号に含まれる振動周波数成分から、複数の共振周波数(約30〜50Hzや約60〜90Hzなど)を抽出し、これらの共振周波数を切り換えてタイヤ空気圧推定に使用することで、高速領域におけるタイヤ空気圧推定を可能ならしめている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、発明者らの詳細な検討により、高車速領域でタイヤ空気圧推定に使用し、車輪速度信号に含まれる高次の共振周波数(約60〜90Hzなど)は、車両の駆動輪においては、車両の走行状態に影響を受けず、タイヤ空気圧変化に対する共振周波数の変化が大きいため、常時タイヤ空気圧推定に適した特性となっている。
【0005】
一方、高車速領域で車輪速度信号に含まれる高次の共振周波数(約60〜90Hzなど)は、転動輪においては、タイヤ空気圧変化に対する共振周波数の変化が車両の走行状態の影響を受け、そのままタイヤ空気圧推定に使用したのでは、正確な空気圧推定が困難であることを見いだした。
従って、本発明の目的は、車両の走行状態の影響を受けず、高車速領域においてもタイヤ空気圧を精度良く検知可能な装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、新たな課題に鑑み発明者らは、車輪速度信号に含まれる高次の共振周波数(約60〜90Hzなど)の特性であるタイヤ空気圧変化に対する共振周波数の変化が、車両の駆動輪においては大きくて、安定しており、タイヤ空気圧推定に適している点に着目し、この駆動輪における高次の共振周波数(約60〜90Hz)の発生メカニズムを検討した結果、車両の転動輪においても、車両の走行状態の中から、タイヤ空気圧推定に使用する振動周波数成分を抽出する車輪速度信号を適時、選定することで、タイヤ空気圧変化に対する共振周波数の変化が大きい振動成分を選定することが可能となり、その選定された車輪速度信号に基づけば、駆動輪と同様に、タイヤ空気圧推定が可能となる技術手段を提供することを目的としている。
【0007】
こうした目的を達成するために、この発明では請求項1に記載のように、車両走行時に、その車輪速度信号の振動周波数成分からタイヤの複数の共振周波数もしくはタイヤの複数のばね定数を抽出する抽出手段と、この複数の共振周波数もしくはばね定数のうち、タイヤ空気圧推定に使用する共振周波数もしくはばね定数を走行状態に基づき選択的に切り替える切替手段と、選択された共振周波数もしくはばね定数に基づき、タイヤ空気圧を推定するために、前記車輪速度信号を車両の走行状況により選定する選定手段(フィルタに相当)とをそれぞれ備えてタイヤ空気圧推定装置を構成する。
【0008】
すなわち、高車速領域において、車輪速度信号に含まれる高次の共振周波数(約60〜90Hz)が車両の走行状態の影響を受け、タイヤ空気圧変化に対する共振周波数の変化が少ない転動輪に対しては、発明者らの詳細な検討結果から明らかになった事実に基づき、車両に制動力が作用する状態を検知し、その走行状態の時の車輪速度信号を用いて、共振周波数もしくはばね定数を抽出する抽出手段とを備えて構成する。
【0009】
または、車両が旋回状態であることを検知し、その走行状態の時の車輪速度信号を用いて、共振周波数もしくはばね定数を抽出する抽出手段とを備えて構成する。
【0010】
また、本発明にかかるタイヤ空気圧推定装置は、車両走行時に、車輪速度センサからの車輪速度信号に基づいて、各輪の車輪速度を逐次演算する車輪速度検出手段と、前記車輪速度検出手段の検出結果である車輪速度信号に含まれる振動周波数成分からタイヤの共振周波数を抽出する抽出手段と、前記車両の走行状態を判定する走行状態判定手段と、前記走行状態判定手段の検出結果に基づき前記抽出手段によって抽出するタイヤの共振周波数帯を変更する変更手段と、前記変更手段によって変更されて抽出された共振周波数に基づいてタイヤ空気圧推定を行うタイヤ空気圧推定手段と、を備え前記走行状態判定手段は前記車両の車体速度を検出する車体速度検出手段と前記車両の制動状態を判定する制動状態判定手段とを備え、
前記変更手段はこの車体速度と基準速度との比較結果に基づいて、かつ、前記車両が制動状態にあると判定した場合に、前記抽出手段が前記共振周波数を抽出する際に前記車輪速度信号を通すフィルタ値を可変するようにしてもよい。
【0011】
また、本発明にかかるタイヤ空気圧推定装置は、車両走行時に、車輪速度センサからの車輪速度信号に基づいて、各輪の車輪速度を逐次演算する車輪速度検出手段と、
前記車輪速度検出手段の検出結果である車輪速度信号に含まれる振動周波数成分からタイヤの共振周波数を抽出する抽出手段と、
前記タイヤへの路面からの振動入力状態が基準以上か否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判断結果に応じて、前記抽出手段によって抽出するタイヤの共振周波数帯を変更する変更手段と、
前記変更手段によって変更されて抽出された共振周波数に基づいてタイヤ空気圧推定を行うタイヤ空気圧推定手段と、
を備えるようにしてもよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関わるタイヤ空気圧推定装置の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、本発明に関わるタイヤ空気圧推定装置全体の説明図である。
図1に示すように、車両の各タイヤ1a〜1dに対応して、車輪速度センサ2〜5が設けられている。各車輪速度センサ2〜5は、それぞれロータ2a〜5a及びピックアップコイル2b〜5bによって構成されている。ロータ2a〜5aは、各タイヤ1a〜1dの回転軸(図示せず)と同軸的に取り付けられており、円盤状の磁性体からなっている。
【0013】
ピックアップコイル2b〜5bは、それぞれロータ2a〜5a、すなわち、タイヤ1a〜1dの回転速度に応じた周期を有する交流信号を出力する。
ピックアップコイル2b〜5bから出力される交流信号は、CPU、ROM、RAMなどより構成されるマイクロコンピュータ、波形整形回路を備えた公知の電子制御装置(以下ECUという)6に入力され、ピックアップコイル2b〜5b〜出力される交流信号の波形整形を含む所定の信号処理が行われる。
【0014】
この信号処理結果は、表示部7に出力され、運転者にたいし、各タイヤ1a〜1dの空気圧の状態を報知する。
この表示部7は、各タイヤ1a〜1dの空気圧の状態を独立に表示しても良いし、一つの警告ランプを設けて、いずれか1つのタイヤの空気圧が基準の空気圧よりも低下したことを運転者に報知するようにしても良い。
【0015】
ブレーキスイッチ9からの信号入力(STP)はECU6に対して行われ、車輪速度信号の解析の条件に用いられる。なお、ブレーキスイッチ9は周知のストップランプスイッチからの信号を用いればよい。なお、図1中符号8は初期化スイッチを表す。
次に、上記ECU6において実行される信号処理の詳細について説明する。
【0016】
まず、図2のECUの共振周波数演算部61において行われる車輪速度信号に基づく共振周波数推定の基本原理について説明する。なお、符号62は、回転状態値演算部であり、各車輪速度センサからの信号を受けて、各車輪の車輪速度を演算する。また、判定部160a、160bは回転状態値である各車輪の車輪速度を比較することによってタイヤくうきの判定を行ったり、共振周波数二もと付いてタイヤ空気圧の判定を行ったりする部位である。
【0017】
タイヤ空気圧推定における物理モデルは、図3のように表すことが出来る。
すなわち、白色ノイズである路面外乱m(k)がタイヤ・サスペンション系に入力として加わり、その結果として、上記車輪速度信号y(k)が出力される。そして、その時、車輪速度信号y(k)には、タイヤ空気圧に依存した共振周波数成分が含まれるようになる。なお、路面外乱m(k)の代わりに、車両のブレーキ系からソレノイド弁のON−OFFデユーティによるブレーキ液圧振動をホイールシリンダを介して車輪のタイヤに伝達し、タイヤの共振現象を形成する外部振動入力としても良い。
【0018】
同実施形態にかかるタイヤ空気圧推定装置では、上記タイヤ・サスペンション系を線形予測モデルにて近似し、そのモデルのパラメータを最小二乗法を用いて同定する。なお、タイヤ毎に、その空気圧に依存した共振周波数は一つであるとすれば、この線形予測モデルの次数は「2次」で十分である。また、該モデルの次数を2次とすることで、図1に示すECU6に必要とされる演算量ならびに図4に示すデータメモリ(RAM603)の容量を最小とすることが出来るようになる。
【0019】
さて、サンプリング回数をkとし、それぞれ上述のように路面外乱をm(k)、車輪速度信号をy(k)とおくと、2次の離散時間モデルは、次の数1の如くに表すことが出来る。
【0020】
【数1】
y(k)=−C1y(k−1)−C2y(k−2)+m(k)
ここで、パラメータ同定の目的は、有限個の観測データy(k)を用いて、未知パラメータC1,C2を推定することである。
ここでは、最小自乗法を用いてこれら未知パラメータC1,C2の同定を行う。
【0021】
すなわち、θをパラメータベクトル、Zを測定値ベクトルとして、次の数2および数3の2次元ベクトルを定義する。
【0022】
【数2】
【0023】
【数3】
【0024】
これにより、上記数1は、
【0025】
【数4】
y(k)=zT (k)θ+m(k)
といった形に表現することが可能となる。この数4においてm(k)は、上述の如く路面外乱であり、白色ノイズと見なすことが出来るから、最小自乗法による未知パラメータの推定は、評価関数である数5
【0026】
【数5】
【0027】
を最小にする上記数2の値を求めることである。
この数5を最小にする数2の推定値は、一括型最小自乗法によると次式数6のように表現することが可能になる。例えば、「ロバスト適応制御入門」:金井喜美雄著:オーム社、またはシステム情報ライブラリー9「システム同定入門」:片山徹著:朝倉書店などを参照すると良い。
【0028】
【数6】
【0029】
このようにして、同定されるC1,C2を用いて共振周波数ωを求める。
2次の離散時間モデルのパラメータC1,C2と共振周波数ωおよび減衰係数ζとの関係は、サンプリング周期をTとして、それぞれ次式数7、数8となる。
【0030】
【数7】
【0031】
【数8】
【0032】
よって、共振周波数ωおよび減衰係数ζは、それぞれ次式数9および数10のように計算することが出来る。
【0033】
【数9】
【0034】
【数10】
【0035】
(第1の実施例)
以下、本発明に関わるタイヤ空気圧推定装置の第1の実施例をECU6の処理内容を示すフローチャートに基づいて示す。なお、ECU6は各タイヤ1a〜1dに対して同様な処理を行うため、以下説明するフローチャートは、タイヤ1aに関する処理のみを示している。
【0036】
図4は、車両の走行状況により車輪速度信号を選定する選定手段として、車両に制動力が作用する場合の処理内容を示すフローチャートである。
まず、車両のイグニッションスイッチがONされると、ステップ10に進み、図1に示す初期化スイッチ8がONされたか、否かの判定を行う。
この初期化スイッチの機能について簡単に説明する。
【0037】
本発明でタイヤ空気圧推定に使用するタイヤの共振周波数もしくはタイヤのばね定数は、タイヤサイズやタイヤ銘柄・種類による影響を受けるため、タイヤが交換された時のみ、タイヤ空気圧低下を判定する判定値を初期化、更新する必要がある。
以下の説明は、この初期化スイッチがON状態でない、つまり、タイヤ空気圧低下を判定する判定値が既に決定されている場合で、通常時のタイヤ空気圧推定演算についての場合である。なお、ステップ10で初期化スイッチがON状態となる場合についての処理の説明は、後述するものとする。
【0038】
まず、ステップ100では、ピックアップコイル2bから出力された交流信号を波形整形したパルス信号を読み込んで、そのパルス長をパルス時間で除算し、各輪独立に車輪速度Vxを演算する。
フローチャートに示すように、以下線形予測法に基づきタイヤの共振周波数もしくはタイヤのばね定数を求める演算に入る訳であるが、既に、特開平7−21723公報でも述べられているように、タイヤの共振振動には、以下の特徴があることが解っている。
【0039】
つまり、車両が市街地を走行するような低車速〜中車速領域においては、各周波数に対する車輪速度のパワースペクトルは、図5(a)に示す如く、約30〜50Hzの範囲に共振ピークが現れる。
しかるに、車速が高車速領域へ移行するに連れ、前記共振ピークは図5(b)に示すように、次第に減少するため、タイヤ空気圧推定の検知対象とは成らなくなる。
【0040】
一方、前記共振ピーク(約30〜50Hz)の減少と表裏の関係で、図5(d)に示すように、約60〜90Hzのところに、新たな共振ピークが現れる。この約60〜90Hzの共振ピークは、図5(c)に示すように、前記約30〜50Hzの共振ピークが現れる低車速〜中車速領域では明確でない。
この前記した、第1の共振ピーク(約30〜50Hz)は、タイヤ回転方向のねじり共振周波数であり、前記した第2の共振ピーク(約60〜90Hz)は、前記ねじり共振周波数の2次成分と考えられる。そして、タイヤの空気圧が低下するとタイヤサイドウオール部の弾性変形が発生するため、ねじり方向のばね定数も変化するので、双方の共振ピークとも、タイヤ空気圧による依存性を有するため、タイヤ空気圧推定の検知対象として、応用が出来る。
【0041】
図6は、前記第1の共振ピーク(約30〜50Hz)および第2の共振ピーク(約60〜90Hz)とタイヤ空気圧との関係を示したものである。
そこで、第1の共振ピーク(約30〜50Hz)と第2の共振ピーク(約60〜90Hz)のかかる関係から、車両の車速如何に関わらず、車輪速度信号に含まれる共振周波数により、タイヤ空気圧推定を可能ならしめるために、ステップ110では、車速Vが予め設定された車速Vo以下か否かの判定を行う。
【0042】
そして、車速Vが予め設定された基準の車速Vo1より小さいと判定された場合、つまり、車両の走行速度が低車速〜中車速領域にある場合は、ステップ120へ進み、第1の共振ピーク(約30〜50Hz)の信号強度をより強めるため、他の周波数帯の信号をカットする目的のために、予め設定された周波数範囲(f11〜f12)の狭帯域フィルタ(以下、バンドパスフィルタと言う)を用いる。このバンドパスフィルタは、バンドパスする周波数帯を可変するものであってもよいし、元々約30〜50Hzと約60〜90Hzのように複数の周波数帯域に合わせて複数のバンドパスフィルタを持つようにしてもよい。
【0043】
前記バンドパスフィルタを通過した、車輪速度信号は、前記原理の記載で定義した車輪速度信号y(k)…(1)式となる。
また、ステップ130のパラメータ同定部は、該バンドパスフィルタ120により抽出された車輪速度信号y(k)から、前記6式に基づいて、前記離散時間モデルのパラメータc1、c2を同定する部分である。
【0044】
次に、ステップ140の共振周波数変換部では、前記ステップ130で出力されるパラメータc1、c2に基づき、前記原理の記載で定義した9式により、共振周波数ωを求める。
また、ステップ150の共振周波数−タイヤ空気圧変換部は、これらで求められた共振周波数ωをタイヤ空気圧に変換する部分である。前述のように、タイヤ空気圧が高いとその共振周波数も高くなり、逆にタイヤ空気圧が低いとその共振周波数も低くなる。そこでステップ150では、これらタイヤ空気圧と共振周波数の関係について、図7に例示する
関係を予めテーブル(マップ)として持ち、上記求められた共振周波数ωの値から、直接その該当するタイヤ空気圧pを推定する。そして、共振周波数ωの値から求められるタイヤ空気圧推定値pの値を、その各車輪に対応するステップ160の判定部に出力する。
【0045】
判定部160では、タイヤ空気圧異常を判定するための閾値として、予め設定された判定値とステップ150から出力されるタイヤ空気圧p値との比較により、各車輪に対応するタイヤの空気圧異常を各輪独立に判定する。
そして、ステップ150から出力されるタイヤ空気圧p値が、前記の予め設定された判定値よりも低ければ、空気圧異常として、表示部170を駆動する。
【0046】
ステップ170の表示部では、ステップ160からの駆動信号に基づき、ランプを点灯し、タイヤ空気圧異常を運転者に知らしめることになる。
このような実施形態によるタイヤ空気圧推定装置によれば、車両が実際に使用される広範囲な車速領域においても、4輪がほぼ同時に低下する自然漏洩や釘踏みなどのパンクまで、高信頼に検出することが可能になる。
【0047】
尚、参考までに、本実施形態によるタイヤ空気圧推定装置によりタイヤの共振周波数を演算した結果を図8に示す。これによれば、推定されたタイヤの共振周波数がそのタイヤ空気圧に対し、ほぼ直線的に変化していることを読みとることが可能になる。
次に、車速Vが予め設定された基準の車速Vo1より大きいと判定された場合、つまり、車両の走行速度が高車速領域にある場合について説明する。
ステップ200では、図1の9で示すブレーキスイッチ入力(以降、STPという)のON−OFF判定を行う。
【0048】
そして、STPがON状態の時のみ、ステップ220以下の処理を実施するという選別手段を用いて、タイヤ空気圧推定を行う目的のものである。
車両走行状態の影響を受けず、高車速領域までタイヤ空気圧推定を可能ならしめるために、車両がある車速以上で走行中の時は、第2の共振ピーク(約60〜90Hz)でタイヤ空気圧推定を行うために、ステップ110で車速判断を行うわけであるが、第2の共振ピーク(約60Hz〜90Hz)の特徴(上記選別手段の必要性)ならびに該選別手段の効果について、本発明者らが詳細に調査した結果を図9、図10を用いて説明する。
【0049】
図9は第2の共振ピークを駆動輪と転動輪について、タイヤ空気圧をパラメータとして整理したものである。図から明らかなように、タイヤ空気圧変化に対する第2の共振周波数の変化は、駆動輪においては大きく、タイヤ空気圧推定に使用できるレベルであるが転動輪においては、非常に僅かであり、走行によるバラツキ等を考慮すると、車両走行中に演算される全車輪速度をそのまま使用してタイヤ空気圧推定を行うのは、かなり難しいことが判明した。
【0050】
このような駆動輪と転動輪の差の原因を推定すると、車両の高速走行時のタイヤと路面との接地状態を考えると、駆動輪においては、路面とタイヤ間には常時駆動力が作用しており、この駆動力が作用することにより、タイヤ外周部のトレッド部が安定して路面に接することになるため、空気圧変化に対する共振周波数の変化が顕著に出るものと推定できる。
【0051】
しかし、転動輪においては駆動力は期待できないないため、発明者らは、駆動力と同様な効果が期待できる制動力の効果について調査した結果、図10に示すように、タイヤ空気圧変化に対する共振周波数の変化が駆動輪と同様、大きく現れる条件があることが判明した。すなわちこの条件とはSTPがONの状態である場合であり、言い換えれば車輪に制動力が加えられている場合である。この車輪に制動力が加えられている場合では、車輪のタイヤと路面との間の接地力すなわちタイヤグリップ力が非制動時に比較して大きくなり、タイヤへの路面からの振動入力が大きくなることが、共振周波数変化が大きく現れる要因と考えられる。なお、たとえば路面凹凸によるタイヤへの振動入力ではなくABS用ソレノイド弁のデューティ等を用いてブレーキ油圧の振動を発生しタイヤへの振動入力を行う際においても、車輪に制動力が加えられている際には、路面とタイヤとの接地力が増大しているため油圧振動によるタイヤの振動は非制動時よりも大きくなる。
【0052】
以上の背景から、ステップ200でSTP ONの場合のみ、ステップ220へ進み、第2の共振ピーク(約60〜90Hz)の信号強度をより強めるために、他の周波数帯の信号をカットする目的のために、予め設定された周波数範囲(f21〜f22)のバンドパスフィルタを用いる。
以下の処理(ステップ230〜260)は、前記した第1の共振ピーク(約30〜50Hz)の処理(ステップ130〜160)と同一のため、説明は省略する。
【0053】
また、ステップ200でSTP入力OFFで、かつ車速がV01以上の場合は、車輪速度Vxの演算は繰り返し行われるが、ステップ220以降のタイヤ空気圧推定には移行しない処理となる。
(第2の実施例)
第2の実施例は車両の走行状況により車輪速度信号を選定する選定手段として、車両走行中の路面からの振動入力の大きさがある所定範囲に存在する時のみ、タイヤ空気圧推定を行う実施例であり、図11にそのフローチャートを示す。
【0054】
以下本発明について、図11のフローチャートの各ステップごとに説明する。まず、車両のイグニッションスイッチがONされると、ステップ10に進む。前記駆動輪の項で説明したように、以下の説明は、この初期化スイッチがON状態でない、つまり、タイヤ空気圧低下を判定する判定値が既に決定されている場合で、通常時のタイヤ空気圧推定演算についての場合である。なお、ステップ10で初期化スイッチがON状態となる場合についての処理の説明は、第1実施例の場合と同様に後述するものとする。
【0055】
ステップ100では、ピックアップコイル2bから出力された交流信号を波形整形したパルス信号を読み込んで、そのパルス長をパルス時間で除算し、各輪独立に車輪速度Vxを演算する。
次にステップ110では、車輪速度Vxから求められる車速Vが予め設定された車速Vo2より小さいと判定された場合、つまり、車両の走行速度が低車速〜中車速領域にある場合は、ステップ120に進む。なお、予め設定された車速Vo2は、第1実施例の車速Vo1と同一でも、異なっていても良い。
【0056】
ここで、図11に記載のステップ100からステップ160までは、すでに第1の実施例で説明した処理内容と同一であるので省略するものとして、以下の記述は、ステップ110において演算される車速Vが予め設定された車速Vo2以上、つまり前記した第1の共振ピーク(約30〜40Hz)ではタイヤ空気圧推定が困難な場合で、第2の共振ピーク(約60〜90Hz)を応用した処理の説明である。
【0057】
ステップ300は前記したタイヤ振動現象に起因する路面からの振動入力の信号強度をより強める目的で、他の周波数帯の信号をカットするために、設定されたバンドパスフィルタ(以下Cフィルタと言う)である。
ステップ310は、ステップ300で抽出された路面からの振動周波数成分から振動入力強度Gcを演算し、その大きさが予め設定された値(Gco)より大きいか否かを比較する処理である。
【0058】
信号強度の具体的演算方法を図12を用いて以下、説明する。
路面からの振動入力は、適当なバンドパスフィルタを用いることにより、車輪速度変動から抽出できることは、既に特開平6−270618に例示されており、図12ではその具体的演算方法につき例示する。
図12は、車輪速度Vx演算結果でCフィルタ通過後の波形であり、横軸時間、縦軸は路面からの振動成分の大きさを示すゲインを表している。ここで、車輪速度Vxの演算周期(例えば5ms)ごとのVxの値をVx(i)とすると振動入力強度Gcは、以下の式で表すことが出来る。
【0059】
【数11】
【0060】
つまり、車輪速度演算周期毎に演算されるVx(i)の2乗値をm個加算したものと表すことが可能になる。
また、図13は路面からの振動入力強度の演算方法で他の実施形態を示すものである。
そして、前記演算されたGcと予め設定された値(Gco)より大きいか否かを比較し、振動入力強度Gcが大きい場合のみ、ステップ320へ進み、タイヤ空気圧推定処理(ステップ330〜360)を実施する。なお、この処理は、ステップ130〜160と基本的に同一処理なため、説明は省略する。
【0061】
また、振動入力強度Gcが基準値Gcoより小さい場合は、ステップ310からステップ100へ進み、車輪速度Vx演算を繰り返し、タイヤ空気圧推定を行わない処理となる。
(第3の実施例)
第3の実施例は車両の走行状況により車輪速度信号を選定する選定手段として、車両が旋回状態にある時のみ、タイヤ空気圧推定を行う実施例であり、図14にそのフローチャートを示す。
【0062】
図14に記載のステップ100からステップ160までは、すでに第1ならびに第2実施例で説明した処理内容と同一であるので省略するものとして、以下の記述は、ステップ110において演算される車速Vが予め設定された車速Vo2以上、つまり前記した第1の共振ピーク(約30〜40Hz)ではタイヤ空気圧推定が困難な場合で、第2の共振ピーク(約60〜90Hz)を応用した処理の説明である。
【0063】
ステップ400の処理内容について、車両が旋回状態にあるか否かを判定するために、タイヤ回転状態値を使用し、タイヤ回転状態値として、その車輪速度積算値を用いた車両旋回状態の選別方法の例について説明する。
ここのステップ400は、車両前輪の右側車輪と左側車輪それぞれについて、検出された車輪速度Vxを用い、車輪速度偏差であるDを下記式により、求めるものである。なお、車輪速度偏差Dの演算は、車輪速度の演算周期ごと、例えば5msごとに実施される。
【0064】
【数12】
D=│Vxfr−Vxfl│
Vxfr : 前輪右の車輪速度
Vxfl : 前輪左の車輪速度
ステップ410は下式のように、上記で求められた車輪速度偏差Dを、ECU6のメモリーにn個記憶し、平均化する処理である。
【0065】
【数13】
【0066】
この処理の目的は、高速走行が可能な道路を想定すれば良いから、道路地形による影響は比較的少ないと考えられるが、それでも旋回や登降坂などの影響を受けるため、これを取り除くためのものである。
ステップ420は、前記で求めた平均車輪速度偏差Doに対し、予め設定された基準値に対し大小判定を行い、平均車輪速度偏差Doが基準値をうわまった場合、車両が旋回状態であると判断し、この時の車輪速度信号のみを使用し、タイヤ空気圧推定を行う処理である。
【0067】
ステップ170は、既に第1実施例で説明した通り、ステップ460からの駆動信号に基づき、ランプなどの表示装置を点灯する処理である。ここでの表示方法としては、4輪独立の4灯表示も可能であり、また1灯のみの表示も可能である。
なお、この旋回状態におけるタイヤ空気圧の推定は、旋回外輪側の車輪についてのみを行うようにしてもよい。すなわち、旋回外輪側(たとえば右旋回時には左前輪および左後輪)は車体の荷重移動により接地荷重が大きくなるため、路面入力が大きくなると考えられるためである。よって、この際にはステップ415として旋回外輪側を選定するステップを付加するようにし、たとえば平均車輪速度が大きい側の車輪を旋回外輪として選定するようにしてもよい。
(第4の実施例)
第4の実施例は車両の走行状況により車輪速度信号を選定する選定手段として、車両あるいは車輪が減速状態にある時のみ、タイヤ空気圧推定を行うという実施例であり、図15にそのフローチャートを示す。
【0068】
ステップ500以下の処理内容について、車両あるいは車輪が減速状態にあるか否かを判定するために、その車輪速度Vxを用いた車両減速状態の選別方法の例について説明する。以下の説明は車両の減速状態をの選別例である。
ここのステップ500は、車両の減速状態を表すための代表車輪(例えば右前輪とか)を決め、その輪で検出された車輪速度Vxを用い、平均車輪速度の前回値Vhbならびに平均車輪速度の今回値Vhnを下記式から求めるステップである。
【0069】
なお、車輪速度Vxの演算は、車輪速度の演算周期ごと、例えば5msごとに実施される。
平均車輪速度の前回値Vhbは、車輪速度の演算周期毎に算出されるVxを図1のECU6のメモリ上にn個記憶し、平均化して求める処理である。
【0070】
【数14】
【0071】
平均車輪速度の今回値Vhnも、同様に求める。
車輪速度の演算周期毎に算出されるVxを時系列的に、n個づつ加算すれば平均車輪速度Vhが求められるが、その時の最新値を今回値Vhnといい、その一つ前の求められた平均車輪速度を前回値Vhbと言う。
ステップ510では、上記で求められた平均車輪速度の前回値と今回値の差から、減速度G−を求める。
【0072】
【数15】
減速度G−=Vhb−Vhn
ステップ520では、この減速度G−が予め定められた値Gdより、大きいか小さいかの大小比較を行い、車両が減速状態にあるか否かの判定を行う。
ステップ520で車両が減速状態と判断される場合のみ、ステップ530以下の処理に進み、それ以外の場合はステップ100の車輪速度演算を繰り返すことになる。
【0073】
なお、ステップ530以下の処理は、すでに実施例1〜3において説明しているので、省略する。
なお、車両の減速状態ではなく各車輪の減速状態をステップ500〜520において選別して、減速状態の車輪に対してステップ530以下に進むようにしてもよい。この際にはステップ500では各車輪毎の基準時間内の平均車輪速度を求め、ステップ510では各車輪毎の車輪減速度を求め、ステップ520では各車輪の車輪減速度G−が基準値Gdよりも大きいかを判定する。
【0074】
なお、この車両減速状態および車輪減速状態はブレーキによる減速によるものでもよいし、エンジンブレーキによるものでもよい。また、車両減速状態と車輪減速状態とを組み合わせた制御をしてもよい。すなわち車両減速状態が所定以上すなわち車両減速度が基準減速度以上で且つ車輪減速度が基準減速度以上の車輪のみをステップ530に進むようにし、タイヤ空気圧判定を許可するようにしてもよい。この際にはタイヤ空気圧の誤判断を極力防止でき、ー層正確なタイヤ空気圧判断を行える。
(初期化スイッチ ONの場合の実施例)
上記の処理内容は、初期化スイッチがONでない場合についての説明であるが、以下では初期化スイッチがONとなった場合の処理内容について図16に基づき、説明する。
【0075】
ステップ100では、前記の実施例と同様に、ピックアップコイル2bから出力された交流信号を波形整形し、その処理波形であるパルス信号を読み込み、そのパルス長をパルス時間で除算して、各輪独立に車輪速度Vxを演算する。
前記したように初期化スイッチ設定の目的は、タイヤが交換された時、タイヤ空気圧推定に必要な、そのタイヤ固有の共振周波数とタイヤ空気圧との関係を決定するためのものである。したがって、初期化スイッチをONとするときは、タイヤ空気圧が既知であることが前提なので、タイヤ交換したときは、その車両のユーザが標準空気圧にタイヤ空気圧を設定することが前提である。
【0076】
その為、ステップ610では、タイヤが標準空気圧のときのタイヤ共振周波数(第1の共振ピーク)を演算し、ωk1として、ECU6のメモリーに記憶する。
第1の共振ピークがステップ610で求まったので、ステップ620ではタイヤが標準空気圧のときのタイヤ共振周波数ωK2(第2の共振ピーク)を求めることになるが、ここでは、第1の共振ピークと第2の共振ピークとの物理的関係が判明しているので、この関係から求めることになる。
【0077】
ステップ630では、ステップ610で求めた標準空気圧の共振周波数(第1の共振ピーク)から、下記式で警告圧に相当する共振周波数(ωL1)を求め、車速がVo以下の場合のタイヤ空気低下判定を行うときの、新しい空気圧低下判定値とするために、ECU6内のメモリを書き換える。
【0078】
【数16】
ωL1=ωK1−Δω1(定数)
同様に、ステップ640では、車速がVo以上の場合のタイヤ空気圧低下判定値ω2をステップ620で求めた共振周波数ωK2(第2の共振ピーク)から、下記式により求め、新しい空気圧低下判定値とする。
【0079】
【数17】
ωL2=ωK2−Δω2(定数)
以上が初期化スイッチON時の処理内容である。
本発明は上述の実施例に限定されることなく種々変形可能である。
たとえば、上述の各実施例ではSTP ONによる制動状態、路面からの振動入力の大きさ、車両旋回状態、車両あるいは車輪の減速状態を各々独立した走行条件として、共振周波数抽出の際のフィルタ値を可変してタイヤ空気圧判定を行っていた。しかしながらこれに関わらず、各条件を組み合わせてフィルタ値の可変を行うようにしてもよい。たとえば最初に路面からの振動入力の大きさを判定し、且つSTP ON、車両旋回状態および車両あるいは車輪の減速状態を満足した際に各フローチャートにおけるBフィルタ部のステップに進むようにしてもよい。逆に最初にSTP ON、車両旋回状態および車両あるいは車輪の減速状態を判定し、且つ路面からの振動入力の大きさを満足した際に各フローチャートにおけるBフィルタ部のステップに進むようにしてもよい。
【0080】
また、上述までの実施例では、STP ONによる制動状態、路面からの振動入力の大きさ、車両旋回状態、車両あるいは車輪の減速状態を条件として、この条件を満足しなかった場合たとえば図4のステップ200で否定判定され場合には、ステップ100の車輪速度演算部に戻っていてタイヤ空気圧推定を行わなかった。しかしながら、これらの条件を満足しなかった場合には、各車輪速度比較あるいは各車輪速度差の比較によるタイヤ空気圧推定を行ってもよい。(図2の判定部160aに当たる)この車輪速度値を用いたタイヤ空気圧判定はたとえば車両の非加減速走行且つ非旋回走行時に全輪の車輪速度を比較あるいは車輪速度差を比較して、他の車輪速度に比べて車輪速度が基準以上大きい車輪をタイヤ半径減少のためのタイヤ空気圧の低下車輪であると判定するようにしてもよい。
【0081】
上述までの実施例ではタイヤ共振周波数に基づきタイヤ空気圧推定を行う例を適用したが、タイヤ共振周波数から求められるタイヤバネ定数、あるいはタイヤ共振周波数と同等のタイヤバネ定数に基づいてタイヤ空気圧推定を行うようにしてもよい。
また、上述までの実施例では転動輪・駆動輪の区別を付けずにタイヤ空気圧を推定する例をしめした。ところが、駆動輪にはエンジン出力による駆動力が伝達されているため車輪速度信号のパワースペクトルが大きく、転動輪はエンジン出力による外力が伝達されていないためパワースペクトルが小さくなる場合が考えられる。よって、駆動輪については、高次の共振周波数の特性(60〜90Hzなど)のタイヤ空気圧に対する共振周波数の変化が大きく安定して現れるため、走行条件や路面振動入力の大きさを考慮せずに元々第2の共振ピーク(約60〜90Hz)を鑑みてBフィルタ部側を通るステップ(たとえば図4ではステップ220〜260)のみを用いたタイヤ空気圧推定を行うようにしてもよい。この際には転動輪については上述までの各実施例におけるSTP ON等の走行条件等を鑑みたタイヤ空気圧推定を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の主要構成のモデル図である。
【図2】本発明の主要構成のブロック図である。
【図3】タイヤ空気圧推定における物理モデルを表す図である。
【図4】第1の実施例における処理フローを示すフローチャートである。
【図5】車体速度との関係に於ける車輪速度信号のパワースペクトルを示す特性図である。
【図6】車体速度との関係における共振周波数と空気圧の関係を示す特性ずである。
【図7】共振周波数と空気圧との関係を示すマップである。
【図8】車輪速度信号に周波数解析を施して共振周波数を演算した際の共振周波数とタイヤ空気圧との関係の波形を示す波形図である。
【図9】駆動輪と転動輪における第2の共振ピークの空気圧に依存する変化を示す特性図であり、(a)は駆動輪の特性図、(b)は転動輪の特性図を表す。
【図10】ストップスイッチON時の転動輪の車輪速度信号のみを抽出した際のパワースペクトルの特性を示す特性図である。
【図11】第2の実施例における処理フローを示すフローチャートである。
【図12】信号強度の具体的演算方法を示す際の参考特性図である。
【図13】路面からの振動入力強度の演算方法の他の実施例を示す特性図である。
【図14】第3の実施例における処理フローを示すフローチャートである。
【図15】第4の実施例における処理フローを示すフローチャートである。
【図16】初期化スイッチがONとなった場合の処理内容について示すフローチャートである。
【符号の説明】
1a〜1d 車輪
2〜5 車輪速度センサ
6 ECU
9 ブレーキスイッチ
61 共振周波数演算部
62 回転状態値演算部
160a、160b 判定部
Claims (13)
- 車両走行時に、各輪の車輪走行速度を逐次演算する車輪速度検出手段を有するタイヤ空気圧推定装置において、
その車輪速度検出信号の振動周波数成分を波形成形を含む所定の信号処理によってタイヤの共振周波数もしくはタイヤのばね定数を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段で抽出された共振周波数もしくはばね定数のうち、タイヤ空気圧推定に使用する共振周波数もしくはばね定数を走行状態に基づき選択的に切り替える切替手段と、
選択された共振周波数もしくはばね定数に基づきタイヤ空気圧を推定する空気圧推定手段と、
前記空気圧推定手段がタイヤ空気圧を推定する際に、前記選択された共振周波数もしくはばね定数を抽出するための前記車輪速度信号を車両の走行状況により選定する選定手段と、
を有し、前記選定手段は、前記車両に制動力が作用する場合を検知する検知手段を有し、その検知手段に基づき、前記車両に制動力が作用している時のみの車輪速度信号から前記共振周波数もしくはばね定数の抽出を許可し、タイヤ空気圧の推定を実行させることを特徴とするタイヤ空気圧推定装置。 - 前記選定手段は、車両に負の加速度が作用する場合いわゆる減速状態を検知する検知手段を有し、その検知信号に基づき、車両に負の加速度が作用する場合のみの車輪速度信号から、共振周波数もしくはばね定数を抽出し、タイヤ空気圧を推定することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ空気圧推定装置。
- 車両走行時に、各輪の車輪速度を逐次演算する車輪速度検出手段を有するタイヤ空気圧推定装置において、
その車輪速度信号の振動周波数成分からタイヤの複数の共振周波数もしくはタイヤの複数のばね定数を抽出する抽出手段と、
この複数の共振周波数もしくはばね定数のうち、タイヤ空気圧推定に使用する共振周波数もしくはばね定数を走行状態に基づき選択的に切り替える切換手段と、
選択された共振周波数もしくはばね定数に基づき、タイヤ空気圧を推定する空気圧推定手段と、
前記空気圧推定手段がタイヤ空気圧を推定する際に、前記選択された共振周波数もしくはばね定数を抽出するための前記車輪速度信号を車両の走行状況により選定する選定手段と、
を有し、前記選定手段は、車両の旋回状態の検知手段を有し、その検知信号に基づき、車両が旋回中の時のみの車輪速度信号から、共振周波数もしくはばね定数を抽出し、タイヤ空気圧を推定することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ空気圧推定装置。 - 前記選別手段は、前記車輪速度信号の選定手段として、走行中の路面からの振動入力を演算する演算手段とその演算結果に基づき振動入力の大きさを判定し、その判定に基づき共振周波数もしくはばね定数を抽出する車輪速度信号を選別することを特徴とする請求項2および3に記載のタイヤ空気圧推定装置。
- 車両走行時に、車輪速度センサからの車輪速度信号に基づいて、各輪の車輪速度を逐次演算する車輪速度検出手段と、
前記車輪速度検出手段の検出結果である車輪速度信号に含まれる振動周波数成分からタイヤの共振周波数を抽出する抽出手段と、
前記車両の走行状態を判定する走行状態判定手段と、
前記走行状態判定手段の検出結果に基づき前記抽出手段によって抽出するタイヤの共振周波数帯を変更する変更手段と、
前記変更手段によって変更されて抽出された共振周波数に基づいてタイヤ空気圧推定を行うタイヤ空気圧推定手段と、を備え、
前記走行状態判定手段は前記車両の車体速度を検出する車体速度検出手段と前記車両の制動状態を判定する制動状態判定手段とを備え、
前記変更手段はこの車体速度と基準速度との比較結果に基づいて、かつ、前記車両が制動状態にあると判定した場合に、前記抽出手段が前記共振周波数を抽出する際に前記車輪速度信号を通すフィルタ値を可変することを特徴とするタイヤ空気圧推定装置。 - 前記走行状態判定手段はタイヤへの振動の路面からの入力の大きさを判定する路面入力判定手段を備え、この路面入力が基準以上である場合に、前記抽出手段が前記共振周波数を抽出する際に前記車輪速度信号を通すフィルタ値を可変することを特徴とする請求項5に記載のタイヤ空気圧推定装置。
- 前記走行状態判定手段は、前記車輪の制動状態を判定する制動状態判定手段を備え、前記車輪が制動状態にあると判定した場合に前記抽出手段が前記共振周波数を抽出する際に前記車輪速度信号を通すフィルタ値を可変することを特徴とする請求項6もしくは請求項5に記載のタイヤ空気圧推定装置。
- 前記制動状態判定手段は、乗員によりブレーキペダルが踏み込まれた際を検知するブレーキスイッチであることを特徴とする請求項5に記載のタイヤ空気圧推定装置。
- 車両走行時に、車輪速度センサからの車輪速度信号に基づいて、各輪の車輪速度を逐次演算する車輪速度検出手段と、
前記車輪速度検出手段の検出結果である車輪速度信号に含まれる振動周波数成分からタイヤの共振周波数を抽出する抽出手段と、
前記車両の走行状態を判定する走行状態判定手段と、
前記走行状態判定手段の検出結果に基づき前記抽出手段によって抽出するタイヤの共振周波数帯を変更する変更手段と、
前記変更手段によって変更されて抽出された共振周波数に基づいてタイヤ空気圧推定を行うタイヤ空気圧推定手段と、
を備え、
前記走行状態判定手段は、前記車両の車体速度を検出する車体速度検出手段を備え、前記変更手段はこの車体速度と基準速度との比較結果に基づいて、かつ、車両が旋回状態にあると判定した場合に、前記抽出手段が前記共振周波数を抽出する際に前記車輪速度信号を通すフィルタ値を可変することを特徴とするタイヤ空気圧推定装置。 - 前記変更手段は、前記車両における転動輪と駆動輪のうち、駆動輪に対するタイヤ空気圧推定を行う際に用いる前記共振周波数の抽出に際して車輪速度信号を通すフィルタ値はあらかじめ固定し、転動輪に対するフィルタ値のみを走行状態判定手段の判定結果に応じて可変することを特徴とする請求項5および9のいずれかに記載のタイヤ空気圧推定装置。
- 車両走行時に、車輪速度センサからの車輪速度信号に基づいて、各輪の車輪速度を逐次演算する車輪速度検出手段と、
前記車輪速度検出手段の検出結果である車輪速度信号に含まれる振動周波数成分からタイヤの共振周波数を抽出する抽出手段と、
車速が予め設定された車速以下か否かの判定手段と、
前記タイヤへの路面からの振動入力状態が基準以上か否かを判定する判定手段 と、
車速が予め設定された車速より大きくて、かつ、前記タイヤへの路面からの振動入力状態が基準以上であると判断された場合に、前記抽出手段によって抽出するタイヤの共振周波数帯を変更する変更手段と、
前記変更手段によって変更されて抽出された共振周波数に基づいてタイヤ空気圧推定を行うタイヤ空気圧推定手段と、
を備えることを特徴とするタイヤ空気圧推定装置。 - 前記変更手段は、前記車輪速度信号を通過させるバンドパスフィルタであり、当該変更手段はこのバンドパスフィルタのフィルタ値を変更するか、もしくは複数のバンドパスフィルタ部を備えていることを特徴とする請求項11に記載のタイヤ空気圧推定装置。
- 前記タイヤ空気圧推定装置は、さらに車両制動状態判定手段、車輪制動状態判定手段、車両旋回状態判定手段のうちの少なくとも1つを備え、これら各判定手段の判定結果を路面からの振動入力の大きさの判定を組み合わせて前記変更手段は前記共振周波数帯を変更することを特徴とする請求項12に記載のタイヤ空気圧推定装置。
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