JP3550712B2 - 玉軸受装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明に係る玉軸受装置は、スクリューコンプレッサの回転軸を回転自在に支持する為に利用する。
【0002】
【従来の技術】
スクリューコンプレッサの回転軸等、高速で回転する軸を支承する為、図1に示す様な玉軸受装置が、従来から使用されている。この玉軸受装置は、スクリューコンプレッサを構成するロータ1を固定した回転軸2の外周面と、ハウジング3の内周面との間に設けられる。尚、図1で4は、ラジアル方向の荷重Fr を支承する為のころ軸受である。
【0003】
本発明の対象である玉軸受装置は、上記回転軸2の軸方向(図1の左右方向)に亙るアキシャル荷重Fa を支承する為のもので、それぞれがアンギュラ型である第一、第二の玉軸受5、6を組み合わせる事で構成される。これら第一、第二の玉軸受5、6の接触角α(後述する図2参照)の方向は、互いに逆方向で、且つ互いの正面同士を対向させる正面組み合わせ(以下『DF』とする。)としている。この為、上記回転軸2が図1の左方に変位しようとする時は、同図で左方の第一の玉軸受5がアキシャル荷重を支承し、同じく右方に変位しようとする時は、右方の第二の玉軸受6がアキシャル荷重を支承して、回転軸2及びロータ1が、ハウジング3に対し変位する事を防止する。
【0004】
尚、アンギュラ型の玉軸受を1対組み合わせる事で何れの方向のアキシャル荷重も支承できる様にする組み合わせの型としては、図1に示した構造とは逆に、第一、第二の玉軸受の背面同士を対向させて組み合わせる、所謂背面組み合わせがある。しかしながら、この様な背面組み合わせの構造を採用した場合には、上記第一、第二の玉軸受の内輪側の作用点の間隔が大きくなって、回転軸が傾斜する事に対する曲げ剛性が大きくなる。従って、スクリューコンプレッサの回転軸2の様に、傾斜が比較的大きくなる部材の支持に上記背面組み合わせを使用すると、上記作用点部分に過大な面圧が作用し易くなる。過大な面圧は、異常発熱や玉の転動面並びに軌道面の疲れ寿命が低下する原因となる為、好ましくない。従って、本発明の対象となる玉軸受装置は、図1に示す様なDFである。
【0005】
又、この玉軸受装置により支持される回転軸2には、上記スクリューコンプレッサの使用時に、前記ロータ1の回転に伴なってほぼ一定方向(図1では右から左方向へ)のアキシャル荷重Fa が加わる。これは、ロータ1に加わる圧力の方向が決まっている為である。尚、図1で7、8は間座、9は抑え金である。
【0006】
ところで、上述の様に、それぞれがアンギュラ型である第一、第二の玉軸受5、6をDFで組み合わせて成る玉軸受装置は、回転軸2が高速で回転した場合には、必ずしも十分な軸受寿命を得られない。この様に高速回転に伴って軸受寿命が低下する原因に就いて、図2により説明する。
【0007】
図2は、高速回転で生じる遠心力に基づいて、第一、第二の玉軸受5、6に加わる力を説明する為の図である。上記回転軸2(図1)を高速で回転させた場合、第一、第二の玉軸受5、6を構成する玉11、12に遠心力Fc1が加わる。そして、これら第一、第二の玉軸受5、6を構成する玉11、12は、この遠心力Fc1に基づいて外輪軌道14、14に、Qin1 の力で、接触角α方向から押し付けられる。そして、これら第一、第二の玉軸受5、6を構成する玉11、12は、この力Qin1 のアキシャル方向の分力Fain1で各外輪軌道14、14に、アキシャル方向に亙り押し付けられる。
【0008】
そして、この分力によりFain1+Fain1に相当する内部アキシャル荷重が、互いに直列に組み合わされた第一、第二の玉軸受5、6内で発生し、上記外輪軌道14、14と玉11、12との接触面圧を増大させて、これら第一、第二の玉軸受5、6の疲れ寿命を低下させてしまう。尚、高速回転時に於ける玉の遠心力を考慮した玉軸受の疲れ寿命の計算は、1952年7月発行のTrans. ASME 中に記載された論文である『The Life of High-Speed Ball Bearings』に示された理論に基づいて行える。
【0009】
上述の様な原因による寿命低下を防止すべく、第一、第二の玉軸受5、6を構成する玉11、12を、軽量なセラミック材により造ったり、或は玉11、12として小径のものを使用し、遠心力Fc1を小さくする試みもなされている。更には、上記第一、第二の玉軸受5、6の接触角αを何れも小さくする事で、上記遠心力Fc1に基づくアキシャル方向の分力Fain1を小さくする試みも行なわれている。
【0010】
ところが、玉11、12を、縦弾性係数の大きなセラミック材により造ると、特に外部荷重(例えば上記アキシャル荷重Fa )を支承する側の第一の玉軸受5に於いて、外輪軌道14と玉11との接触面圧が、軸受鋼製の玉を使用した場合よりも増大する。この結果、第一の玉軸受5の疲れ寿命が低下し、第一、第二の玉軸受5、6を組み合わせて成る玉軸受装置全体の疲れ寿命が低下してしまう。又、玉11、12として小径のものを使用したり接触角αを小さくすると、第一、第二の玉軸受5、6のアキシャル方向の負荷容量(基本動定格荷重)が小さくなり、やはり疲れ寿命が低下してしまう。
【0011】
即ち、遠心力に基づく摩擦と発熱とを低減し、上記第一、第二の玉軸受5、6の疲れ寿命を延長する為の技術が従来から、各種刊行物に記載されている。先ず、雑誌『機械設計』の1988年(昭和63年)10月号には、▲1▼玉径を小さくする事、▲2▼接触角を小さくする事、▲3▼セラミック製の玉を使用する等玉の密度を小さくする事が記載されている。しかしながら、単にこれら▲1▼〜▲3▼の技術をDFで組み合わされた玉軸受装置に適用しただけでは疲れ寿命が低下する事は、上述の通りである。
【0012】
一方、『NEW DEPARTURE 』、或は実開昭54−12656号公報には、1対のアンギュラ型玉軸受を接触角の方向を互いに異ならせて組み合わせ、且つ、負荷側の玉軸受の接触角を反負荷側の玉軸受の接触角よりも大きくする技術が記載されている。
【0013】
図3〜4は、この様な刊行物に記載された技術を元に構成した玉軸受装置を示している。この玉軸受装置の場合には、使用時に外部から回転軸2に加わるアキシャル荷重Fa を支承する負荷側(図3〜4の左側)に設けられた、第一の玉軸受5aの接触角α1 よりも、使用時に上記アキシャル荷重Fa を支承しない反負荷側(図3〜4の右側)に設けられた第二の玉軸受6aの接触角α2 を小さく(α2 <α1 )している。
【0014】
上述の様に、第一の玉軸受5aの接触角α1 を第二の玉軸受6aの接触角α2 よりも大きくする事で、上記第一の玉軸受5aの負荷容量を十分に確保できる。この場合に於いて、上記接触角α1 を、前記従来から一般的に知られた玉軸受装置に組み込まれた第一、第二の玉軸受5、6の接触角αと同じ(α=α1 )とすれば、遠心力に基づいてこの第一の玉軸受5aに作用するアキシャル方向分力は、Fain1となる。又、第二の玉軸受6aに加わるアキシャル方向分力はFain2となる。この場合に於いて、この第二の玉軸受6aの接触角α2 は、上記第一の玉軸受5aの接触角α1 よりも小さい。この為、上記第二の玉軸受6aに加わるアキシャル方向分力Fain2は、前記従来装置の第二の玉軸受6に作用するアキシャル方向分力Fain1よりも小さく(Fain2<Fain1)なる。この結果、第一、第二の玉軸受5a、6aを組み合わせて成る玉軸受装置に発生する、遠心力に基づく内部アキシャル荷重は、Fain1+Fain2となり、前記従来装置に生じる内部アキシャル荷重Fain1+Fain1よりも小さくなる。
【0015】
この為、上記第一、第二の玉軸受5a、6aを構成する玉11、12と外輪軌道14、14との接触面圧が低下する。そして、第一、第二の玉軸受5a、6aの転がり疲れ寿命の低下が抑えられ、これら第一、第二の玉軸受5a、6aを組み合わせて成る玉軸受装置の寿命低下を抑える事ができる。接触角α2 を小さくした第二の玉軸受6aのアキシャル方向の負荷容量は小さくなるが、この第二の玉軸受6aは稀に加わる軽荷重を支承する、一種のバックアップ軸受としての機能しか持たないので、負荷容量の減少は特に問題とはならない。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述の様な、従前から知られた各刊行物に記載された技術は、何れも予圧を付与した状態で使用する事を前提に考えられたものであった。この為、本発明が対象としている様な、スクリューコンプレッサ用の玉軸受装置として使用した場合には、十分な耐久性を得る事ができない。即ち、オーム社が発行している『軸受の設計』にも記載されている様に、予圧を付与した玉軸受装置は、振動を防止し、剛性を高められる反面、摩擦と温度上昇とが増大し、疲れ寿命が低下する。又、上記各刊行物に記載された技術は、玉を保持する保持器に就いての考慮はなされていない。
【0017】
一方、本発明の対象となる玉軸受装置が組み込まれるスクリューコンプレッサは、超高速(例えばdmn が70万〜200万mm・r.p.m)で回転する。この為、玉11、12に予圧付与を行ない、所謂マイナスの隙間を持った第一 第二の玉軸受5a、6aを使用した場合には、予圧に基づいてこれら第一、第二の玉軸受5a、6aの内部アキシャル荷重が増加し、異常発熱や疲れ寿命の低下の原因となる。又、複数の玉を転動自在に保持する為の保持器に就いても、その装着状況を工夫しない限り、著しい摩耗が発生して十分な耐久性を得られない。本発明の玉軸受装置は、上述の様な事情に鑑みて発明したものである。
【0018】
尚、前述の論文『The Life of High-Speed Ball Bearings』に示された理論は、本明細書中に記載した計算寿命を求める場合の基礎となるものである。しかしながら、この論文中には、玉軸受に予圧を付与せず、プラス隙間を設けた状態で運転する場合の理論は開示されていない。又、組み合わされた複数の玉軸受の接触角等の条件を変えて遠心力の影響を減ずる方法も書かれておらず、勿論、この様な方法による利害とその解決方法も記載されていない。
【0019】
更に、接触角、玉径等が互いに異なる複数の玉軸受を組み合わせた構造としては、前述した各公報の他、MRC Bearing Services発行の『PUMPAC The MRC Bearing System 』、John Wiley&Sons,Inc.,発行の『Rolling Bearing Analysis』、綿林英一編著の『転がり軸受の選び方・使い方』等に記載されたものも、従来から知られている。しかしながら、これら各刊行物に記載された構造は、本発明の玉軸受装置と用途を異にするものである。従って、これら何れの刊行物にも、上述の様な摩耗、並びにその解決方法に関する記載はない。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明の玉軸受装置は、軸の外周面とハウジングの内周面との間に、それぞれがアンギュラ型又は深溝型である第一、第二の玉軸受を、互いの接触角の方向を異ならせて設け、使用時に上記軸とハウジングとの間に外部からほぼ一定方向に加わるアキシャル荷重を、第一の玉軸受により支承するものである。
【0021】
特に、本発明の玉軸受装置に於いては、上記第一、第二の玉軸受はDFで配列されている。又、これら第一、第二の玉軸受にプラスの隙間が付与されている。又、上記第一の玉軸受の接触角よりも第二の玉軸受の接触角が小さく、上記第一、第二の玉軸受を構成する玉は保持器により転動自在に保持されている。そして、これら保持器の外周面の一部はそれぞれ第一、第二の玉軸受を構成する外輪の内周面の一部に近接する事で、外輪案内により回転自在に支持されている。
【0022】
【作用】
上述の様に構成される本発明の玉軸受装置は、前述した既知の技術を組み合わせる事で得られる玉軸受装置と同様に、使用時に外部から加わるアキシャル荷重を支承する第一の玉軸受の負荷容量が大きい為、十分に大きなアキシャル荷重を支承できる。又、使用時にこのアキシャル荷重を支承しない第二の玉軸受は、遠心力に基づく内部アキシャル荷重の増大を抑える。この為、1対のアンギュラ型の玉軸受を組み合わせて成る玉軸受装置全体としての、疲れ寿命の低下を抑える事ができる。
【0023】
特に、本発明の玉軸受装置の場合には、第一、第二の玉軸受がDFで配列されており、しかもプラスの隙間を持っている為、この玉軸受装置の運転時にも予圧が加わる事がなく、予圧に基づく発熱や疲れ寿命の低下を来す事がない。又、保持器が外輪案内で支持されている為、高速回転時にもこの保持器が傾斜しにくく、この保持器の一部と軌道輪の一部とが強く擦れ合う事がない。
【0024】
【実施例】
図5は、本発明の第一実施例を示している。本発明の玉軸受装置の場合も、前述の図3〜4に示した玉軸受装置と同様に、互いに接触角が異なる第一の玉軸受5aと第二の玉軸受6aとをDFにより組み合わせて、スクリューコンプレッサを構成する回転軸2の外周面とハウジング3の内周面との間に装着している。又、これら第一、第二の玉軸受5a、6aを構成する玉11、12には、プラスの隙間を付与している(予圧は付与していない)。又、上記スクリューコンプレッサの回転時に上記回転軸2には、図5の左方向のアキシャル荷重が加わる。従って、上記第一、第二の玉軸受5a、6aのうち、第一の玉軸受5aが上記アキシャル荷重に対する負荷側の玉軸受となり、第二の玉軸受6aがこのアキシャル荷重を支持しない、反負荷側の玉軸受となる。
更に、上記回転軸2の外周面と上記ハウジング3の内周面との間に、上記第一、第二の玉軸受5a、6aに加えてころ軸受4(図1、3、8参照)を設ける事により、上記回転軸2に加わるラジアル荷重を支承自在としている。これと共に、上記第一、第二の玉軸受5a、6aを構成する外輪13、13の外周面と上記ハウジング3の内周面との間に、隙間25を介在させている。
【0025】
本発明の玉軸受装置の場合には、前述の図4に示した構造の場合と同様に、反負荷側の第二の玉軸受6aの接触角を、負荷側の第一の玉軸受5aの接触角よりも小さくしている。この様に第二の玉軸受6aの接触角を小さくした分だけ、使用時にこの第二の玉軸受6aを構成する玉12に加わる遠心力に基づいて玉軸受装置の内部で発生する内部アキシャル荷重が小さくなり、玉軸受装置の耐久性をより向上させる事ができる。即ち、スクリューコンプレッサの運転時に上記第一、第二の玉軸受5a、6aに組み込まれた玉11、12は、前述の様に遠心力に基づいてそれぞれが対向する外輪軌道14、14に押し付けられる。そして、この押し付け力のうちのアキシャル方向の分力により、上記第一、第二の玉軸受5a、6aにより構成される玉軸受装置の内部アキシャル荷重が増大する。この内部アキシャル荷重は、前述の様に玉軸受装置の発熱量の増大や疲れ寿命の低下に結び付く為、できるだけ小さくする必要がある。
【0026】
これに対して本実施例の場合には、上記第二の玉軸受6aの接触角が小さい為、この玉12に加わる遠心力に基づいて発生する内部アキシャル荷重を小さく抑えられる。従って、内部アキシャル荷重に基づく発熱の増大や疲れ寿命の低下を軽度に抑える事が可能となり、玉軸受装置の耐久性向上を図れる。第二の玉軸受6aの接触角を小さくする事で、この第二の玉軸受6aの負荷容量は小さくなるが、第二の玉軸受6aに加わる負荷は小さいので、実用上十分な耐久性を確保できる。
【0027】
又、本発明の玉軸受装置の場合には、第一、第二の玉軸受5a、6aがDFで配置されており、しかもプラスの隙間を持っている。従って、これら第一、第二の玉軸受5a、6aにより構成される玉軸受装置の運転時に、予圧に基づく発熱や疲れ寿命の低下を来す事がない。又、回転軸2が僅かに傾いた場合でも、DFである事とプラスの隙間を持っている事とで、この傾きを許容できる。従って、傾きのモーメントによって上記第一、第二の玉軸受5a、6aの一部に過大な応力が加わる事がなくなり、やはり、玉軸受装置の耐久性の向上を図れる。
【0028】
例えば、本発明者が内径25mm、外径62mm、幅17mmのアンギュラ型玉軸受(7305型)を2個、製作時の測定アキシャル隙間が0.030mmとなる様にして、DFで組み合わせ、67kgf のアキシャル荷重を受けつつ、回転数23000r.p.m.で回転する回転軸に装着した場合に於ける、第一、第二の玉軸受の転がり疲れ寿命を計算した結果を、下記の第1表に示す。尚、アキシャル荷重を受ける第一の玉軸受(負荷側軸受)の接触角は総て30度とし、第二の玉軸受(反負荷側軸受)の接触角は、15度、30度、40度の3種類に就いて計算した。
【0029】
尚、この計算中、回転軸2の外周面と内輪10、10の内周面との間の締め代を0.012mm、ハウジング3の内周面と外輪13、13の外周面との間の締め代を0mm、外輪13、13の温度を80℃、内輪10、10の温度を85℃、回転軸2の材質を鋼、ハウジング3の材質を鋳鉄とした。尚、dmn (玉11、12のピッチ円の直径dm(mm)と回転数n (r.p.m.)との積)は約100万となる。又、ラジアル方向の荷重Fr は0とした。これらの条件は、スクリューコンプレッサ用玉軸受装置として一般的な条件である。そして、この様な条件によれば、第一、第二の玉軸受5a、6aに適正なプラス隙間を付与する事で、dmn が70〜200万、更にはdmn が80〜300万と言った様な、超高速回転を連続して行なわせる事が可能となる。
【0030】
第1表
【表1】
【0031】
又、上記した各条件のうち、回転速度(dmn )及びラジアル荷重Fr とアキシャル荷重Fa との比(Fr /Fa )を変えて、これら各要素(dmn 、Fr /Fa )が玉軸受装置の疲れ寿命に及ぼす影響に就いて計算したところ、図6に示す様な結果が得られた。尚、この計算の前提条件として、負荷側の第一の玉軸受5aの接触角は30度、反負荷側の第二の玉軸受6aの接触角は15度とした。この図6で、X軸は上記ラジアル荷重Fr とアキシャル荷重Fa との比(Fr /Fa )を、Y軸は回転速度(dmn )を、Z軸は前記図1〜2に示した従来構造の寿命L0 に対する寿命の比(L/L0 )を、それぞれ表している。この図6の記載から明らかな通り、本発明の玉軸受装置によれば、回転速度(dmn )が70〜200万、荷重比(Fr /Fa )が2以下(Fr ≦2Fa )の範囲で顕著な効果を発揮する。
【0032】
上述の計算結果から明らかな通り、反負荷側の第二の玉軸受6aの接触角α2 を小さくした玉軸受装置は、玉12と外輪軌道14及び内輪軌道15との間に滑りが生じない限り、従来の玉軸受装置に比べて大幅に寿命が長くなる。但し、上記表並びに図6に記載した寿命は、反負荷側の第二の玉軸受6aを構成する玉12の転動面と外輪軌道14及び内輪軌道15との間に滑りが発生しない場合の数値を示している。この滑りが発生しない限り、上記反負荷側の第二の玉軸受6aの接触角α2 を小さくし、且つ第一、第二の玉軸受5a、6aにプラス隙間を付与する事で、図1〜2に示した従来装置に比べて大幅な寿命延長を図れる。
【0033】
更に、本発明の玉軸受装置の場合には、上記各玉11、12を保持器16、16により転動自在に保持している。各保持器16、16は、所謂もみ抜き保持器と呼ばれるもので、円筒状の主部17、17に玉11、12を転動自在に保持する為のポケット18、18を形成して成る。この様な保持器16、16は、それぞれ第一、第二の玉軸受5a、6aを構成する外輪13、13の内側に、所謂外輪案内で装着している。図示の実施例の場合には、これら各保持器16、16の軸方向(図5の左右方向)一端部外周面と、外輪13、13の内周面片肩部、即ち外輪軌道14、14から外れた部分とを、微小隙間を介して互いに対向させて、所謂外輪片肩案内としている。
【0034】
この様に、上記各保持器16、16の案内状態を外輪案内とする理由は、次の通りである。即ち、玉軸受装置としての一般的な使用状態、即ち、dmn が70万以下で、且つ第一、第二の玉軸受5a、6aに予圧が付与されて、運転時に振動の発生が少ない状態であれば、保持器16、16の案内条件を特に規制する必要はない。一方、本発明の対象となる、スクリューコンプレッサに組み込まれる玉軸受装置の場合には、dmn が70万を上回る超高速領域で、プラスのアキシャル隙間を付与した状態で運転される。しかも、スクリューコンプレッサ特有のアキシャル荷重の変動により振動が多くなる。この様な使用状態で、上記各保持器16、16の案内面の摩耗を抑える為には、この保持器16、16の傾斜を抑える事ができる外輪案内とする事が必要である。
【0035】
これに対して、これら保持器16、16を転動体案内、或は内輪案内とした場合には、運転時の遠心力等に基づいて(内輪10及び外輪13に比べて剛性が低い)保持器16、16の径が弾性的に広がる事に伴い、案内面の間隔が広がって、十分な案内を行なえなくなる。この状態でこれら保持器16、16に運転時の振動が加わると、保持器16、16の表面と相手面とが狭い面積で接触し、異常摩耗等の不都合の原因となる。外輪案内とした場合には、遠心力に伴って保持器16、16の径が広がる傾向となっても、案内面(保持器16、16の外周面及び外輪13、13の内周面)の間隔が広がる事はない。又、この案内面の間には潤滑油が存在する為、この案内面同士が直接擦れ合う事はない。従って、保持器16、16を外輪案内とする事で、上記案内面の異常摩耗を有効に防止できる。特に、図5に示す様な外輪片肩案内に代えて、図7に示した第二実施例の様に、外輪両肩案内とすれば、この効果はより確実になる。この第二実施例の場合には、保持器16、16を外輪両肩案内とする為に、各外輪軌道14、14を深溝型とするのに加えて、各内輪軌道15、15も深溝型としている。尚、保持器16、16として銅合金製の保持器を使用すれば、この保持器16、16の強度を高くして、保持器16、16の損傷防止を有効に図れる。
【0036】
次に、図8は、本発明の第三実施例として、スクリューコンプレッサの回転軸2の支持部分のより具体化した構造を示している。回転軸2の外周面とハウジング3の内周面との間には、このハウジング3内に収納されたロータ1の側から順に、ラビリンスシール等の非接触型のシール、或はメカニカルシール等の接触型のシール等のシール装置19と、ラジアル荷重を支承する為のころ軸受4と、本発明の玉軸受装置を構成する第一の玉軸受5a及び第二の玉軸受6aとを、互いに直列に配設している。又、上記ころ軸受4の内輪20と上記第一の玉軸受5aとの間には間座7を、上記ころ軸受4の外輪21と上記第一の玉軸受5aの外輪13との間にはノズルリング22を、それぞれ挟持している。
【0037】
上記ノズルリング22の両側面内周寄り部分は、内周縁に向かう程互いに近づく方向に傾斜した、円錐凹面状の傾斜面としている。そして両傾斜面の円周方向1個所乃至は複数個所に、ノズル孔23、23を開口させている。各ノズル孔23、23は、上記傾斜面に対して垂直方向に形成している。上記傾斜面を設けるのは、傾斜方向のノズル孔23、23を形成する作業の容易化を図る為である。従って、これら各ノズル孔23、23は、直径方向斜め内方に向けて開口している。そして、これら各ノズル孔23、23には、上記ハウジング3及び上記ノズルリング22内に形成した給油通路24を介して、潤滑油を送り込み自在としている。
【0038】一方、上記第一、第二の玉軸受5a、6aに組み込まれた保持器16a、16aの軸方向(図8の左右方向)両端部内周面は、端縁部に向かう程内径が大きくなる、円錐凹面状の傾斜面としている(請求項11)。従って、上記各玉軸受5a、6aを構成する内輪10、10の外周面と上記各保持器16a、16aの内周面との間に存在する空間の、直径方向(図8の上下方向)に亙る幅寸法は、開口端部に向かう程大きくなる。この結果、上記ノズル孔23から噴出する潤滑油を、上記第一、第二の玉軸受5a、6a内に送り込む効率が向上する。従って、これら各玉軸受5a、6aにより構成される玉軸受装置が超高速で運転される場合にも、これら各玉軸受5a、6a内に十分量の潤滑油を取り込む事が可能となる。
【0039】
ノズル孔23が開口する方向、並びに上記各保持器16a、16aの内周面の形状を上述の様にした理由は、次の通りである。即ち、本発明の玉軸受装置は、前述した従来装置に比べて寿命を大幅に延長する事ができる。従って、従来と同じ大きさで造った場合に要求寿命を大幅に上回る様な場合には、第一、第二の玉軸受5a、6aの寸法系列を小さくして、内径を変える事なく外径を小さくする事ができる。これにより、玉軸受装置の小型化、低廉化が可能となるが、寸法系列の小さな玉軸受は内部空間が狭い。この為、スクリューコンプレッサで一般的に行なわれているジェット給油(高速回転に基づいて軸受の内部に発生する空気の壁を破って、軸受の内部に潤滑油を送り込む潤滑方法)を行ないにくくなる。そこで、上述の様なノズル孔23、23の開口方向と保持器16a、16aの内周面形状とを採用する事により、上記ジェット給油を可能とする。
【0040】
尚、上記ノズル孔23の回転軸2に対する傾斜角度は、15度程度が最適であるが、10〜20度の範囲で設定可能である。又、このノズル孔23を有する、外輪間座としての機能を兼ね備えたノズルリング22は、硬度が HRc56〜66(更に好ましくは HRc60〜62)の範囲の鋼材により造るのが好ましい。これは、スクリューコンプレッサの運転時に生じる特有の振動により、互いに当接するこのノズルリング22の両側面と、ころ軸受4及び第一の玉軸受5aの外輪21、13の端面とにフレッチング摩耗が発生する事を防止する為である。第一、第二の玉軸受5a、6aをDFで組み合わせ、しかも各玉軸受5a、6aにプラスの隙間を設ける点、保持器16a、16aを外輪案内とする点等は、前述した第一〜二実施例と同様である。
【0041】
尚、本発明の趣旨は、
▲1▼ 反負荷側に配置される第二の玉軸受6aの接触角を小さくする事で、上記第二の玉軸受6a部分で発生する内部アキシャル荷重の大きさを抑える点
▲2▼ 第一、第二の玉軸受5a、6aにプラスの隙間を設け、予圧に基づく発熱の増大や疲れ寿命の低下を抑える点
▲3▼ 第一、第二の玉軸受5a、6aをDFで配置する事で、上記プラス隙間の設定との併用により、回転軸2の傾斜に対する許容限度を高める点
▲4▼ 保持器16、16aを外輪案内とする事により、スクリューコンプレッサの様に超高速回転し、しかも運転時に振動が加わる様な場所でも安定した運転を可能にする点
にある。これら▲1▼〜▲4▼の特徴を備える事により本発明は、dmn が70万〜200万と言った高速回転で使用されるスクリューコンプレッサの回転軸2の支持を安定して行なえ、しかも実用的な耐久性を得られる。
【0042】
但し、より高度の耐久性を得る為には、第一、第二の玉軸受5a、6aの外輪軌道14、14、内輪軌道15、15の断面形状の曲率半径を工夫する事が好ましい。即ち、第一、第二の玉軸受5a、6aにプラスの隙間を設け、しかも第二の玉軸受6aを無負荷状態で運転した場合、この第二の玉軸受6aを構成する玉12が転動しにくくなって、この第二の玉軸受6a内で、滑りに基づく著しい摩耗が発生する事が考えられる。そこで、第二の玉軸受6aの接触角を小さくする場合には、上記第二の玉軸受6aの外輪軌道14の断面形状の曲率半径re2及び内輪軌道15の断面形状の曲率半径ri2を、玉12の外径dとの関係で規制する事により、上記寿命の短縮に結び付く様な滑りの発生を防止する事が好ましい。
【0043】
即ち、第二の玉軸受6aの接触角を小さくする場合には、図9に示す様に、第二の玉軸受6aを構成する外輪13の外輪軌道14の断面形状の曲率半径re2と、上記第二の玉軸受6aを構成する内輪10の内輪軌道15の断面形状の曲率半径ri2と、この第二の玉軸受6aを構成する玉12の外径dとの関係を、
0.53d≦re2≦0.56dであり、且つ
0.505d≦ri2≦0.52d
とする(請求項3)。
【0044】
上記各軌道14、15の断面形状の曲率半径re2、ri2を上述の範囲に規制する事により、これら各軌道14、15と玉12の転動面との滑りを防止できる理由に就いて、図9により説明する。この図9の鎖線は、従来から一般的に知られたアンギュラ型玉軸受の外輪軌道14aの断面形状を表している。この一般的な玉軸受の場合、外輪軌道14aの断面形状の曲率半径re2´は、同図に実線で示した、本実施例に於ける外輪軌道14の断面形状の曲率半径re2よりも小さい(re2´<re2)。
【0045】
一方、玉12の転動面と上記各軌道14a、15との間にプラスの隙間を設けた場合には、遠心力に基づいて玉12が直径方向外方(図9の上方)に変位する。そしてこの変位に基づいて、上記玉12の転動面と外輪軌道14aとの接触点Pが、この外輪軌道14aの外方(内径が大きくなった部分)に移動する。そして、上記鎖線で示した従来形状の場合には、この接触点Pが正規の位置からlだけ変位した時点で、上記玉2と外輪軌道14aとの接触角が0度になる。この様に接触角が0度になった状態では、この外輪軌道14aが上記玉12を内輪軌道15に向けて押圧する力が殆どなくなる。従って、玉12の転動面と内輪軌道15との接触圧が殆どなくなり、この玉12は遠心力に基づいて上記外輪軌道14aに押し付けられたまま、殆ど転動しなくなる。この結果、この玉12の転動面と内輪軌道15との間で異常な滑りが発生し、これら転動面及び内輪軌道15に著しい摩耗を発生する。
【0046】
これに対して、第二の玉軸受6aを構成する外輪13内周面の外輪軌道14の断面形状の曲率半径re2を0.53d〜0.56dと、内輪軌道15の断面形状の曲率半径ri2(=0.505d〜0.52d)よりも大きくする(re2>ri2)と、上述の様な滑りに基づく著しい摩耗が発生しない。即ち、上記曲率半径re2を大きくした事に伴い、玉12の接触角が0度になる為には、上記接触点Pが正規の位置からL(>l)だけ変位しなければならなくなる。これに対して内輪軌道15の断面形状の曲率半径ri2は比較的小さい為、上記玉12がL分変位する以前に、この玉12の転動面と上記内輪軌道15とが当接する。この結果、上記玉12が遠心力に基づいて直径方向外方に変位した場合でも、この玉12の転動面と外輪軌道14及び内輪軌道15との当接状態が確保され、且つ、当接部に十分な面圧が作用する。従って、上記玉12は玉軸受装置の運転に伴って転動する。この結果、この玉12の転動面と内輪軌道15との間に異常な滑りが発生する事を防止できて、前述した様な著しい摩耗の発生を確実に防止できる。
【0047】
上述の説明から明らかな通り、プラス隙間を付与して無負荷状態で運転される第二の玉軸受6aに、著しい摩耗に結び付く様な滑りが発生するのを防止する為には、内輪軌道15の断面形状の曲率半径ri2を小さく、外輪軌道14の断面形状の曲率半径re2を大きくすれば良い。但し、軌道面の曲率半径は、玉12の転動を円滑に行なわせる必要上、玉12の外径dとの関係で、或る程度以上(0.505d以上)確保する必要がある。従って、内輪軌道15の断面形状の曲率半径ri2も、0.505d以上としなければならない。一方、軌道面の曲率半径を大きくし過ぎると、当該軌道面と玉12の転動面との接触面積が狭くなり、上記第二の玉軸受6aに負荷が加わった場合、或は遠心力に基づいて玉12が外輪軌道14に押し付けられた場合に、当該接触部に加わる面圧が大きくなり過ぎて、この第二の玉軸受6aの寿命を短くする原因となる。従って、上記外輪軌道14の断面形状の曲率半径re2を0.56dを越えて大きくする事は好ましくない。
【0048】
以上の説明から、内輪軌道15の断面形状の曲率半径ri2は0.505d以上(ri2≧0.505d)とし、外輪軌道14の断面形状の曲率半径re2は0.56d以下(re2≦0.56d)としなければならない事が解る。更に、上記滑りの発生を防止する為には、内輪軌道15の断面形状の曲率半径ri2を外輪軌道14の断面形状の曲率半径re2よりも十分に小さくする(ri2<re2)必要がある事は、やはり前述の説明から明らかである。これらの理由から、第二の玉軸受6aの接触角を小さくし、しかも滑りに基づく耐久性低下を確実に防止するのであれば、上記各曲率半径ri2、re2を、次の範囲に規制する事が好ましい。
【0049】
0.505d≦ri2≦0.52d
0.53d≦re2≦0.56d (請求項3)
更に好ましくは、
0.505d≦ri2<0.51d
0.53d<re2≦0.56d
とする(請求項4)。
そして、最も好ましい値は、
ri2=0.505d
re2=0.54d
である(請求項5)。上記各曲率半径ri2、re2をこの様な範囲に規制する事で、玉12の転動面と内輪軌道15及び外輪軌道14との当接部の接触面圧を低く抑えつつ、前述した様な滑りに基づく異常摩耗の発生を防止できる。
【0050】
更に、運転時に負荷を受けつつ回転する第一の玉軸受5aの内輪軌道15及び外輪軌道14の断面形状の曲率半径を規制する事で、プラス隙間を付与して無負荷状態で運転される第二の玉軸受6aに滑りが発生する可能性を、より少なくできる。この理由に就いて図10により説明する。上記滑りは、第二の玉軸受6aを構成する玉12が遠心力に基づいて外輪軌道14の大径側に変位し、しかもこの玉12の転動面と内輪軌道15との当接圧が零若しくは零に近くなった状態で発生する。従って、上記滑りの発生を防止する為には、上記第二の玉軸受6aを構成する内輪10外周面の内輪軌道15が、玉12から離れる方向(図10の左方向)に変位するのを防止する事が効果がある。一方、この内輪10は、上記第一の玉軸受5aに加わるアキシャル荷重が大きい場合には、この第一の玉軸受5aを構成する玉11の転動面と外輪軌道14及び内輪軌道15との当接部分の弾性変形に基づいて、図10の左方向に変位する。この事から明らかな通り、負荷状態で運転される第一の玉軸受5aの弾性変形を少なく抑える事が、無負荷状態で運転される第二の玉軸受6aの滑り防止に効果がある。
【0051】
上記弾性変形を少なく抑える為には、上記第一の玉軸受5aの外輪軌道14の断面形状の曲率半径re1と、内輪軌道15の断面形状の曲率半径ri1とを、この第一の玉軸受5aを構成する玉11の外径d´(本実施例の場合にはd´=d)の1/2に近づける(但し、前述した理由で0.505d´以上)事が効果がある。但し、上記両曲率半径re1、ri1を何れも上記外径d´の1/2に近づけると、外輪13の中心軸と内輪10の中心軸とが傾斜した場合に、玉11の転動面と外輪軌道14及び内輪軌道15との接触部分に無理な力が加わり、上記第一の玉軸受5aが破損し易くなる。前述の様に、本発明の玉軸受装置が組み込まれるスクリューコンプレッサの場合、上記内輪10を外嵌した回転軸2(図1、3、5、7、8)が傾斜し易い為、この様な事態を避けるべく、上記各曲率半径re1、ri1を或る程度大きくする必要がある。
【0052】
そこで、本実施例の場合には、回転軸2の傾斜により第一の玉軸受5aが破損する事を防止しつつ、上記第一の玉軸受5aを構成する内輪10が図10の左方向に変位する事を防止する為、上記曲率半径re1、ri1を、次の(1)〜(3)の条件を満たす様に規制する(請求項6)。
ri1≦re1 −−− (1)
ri1≦0.52d´ −−− (2)
ri1+re1≧1.03d´ −−− (3)
【0053】
上記(1)〜(3)の条件の内、(1)(2)の条件は、玉12の転動面と内輪軌道15との当接部の弾性変形を小さくして(当接部の接触面積を広くして)、内輪10が図10の左方向に変位する事を防止する為に必要である。又、(3)の条件は、回転軸2が傾斜した場合に、第一の玉軸受5aに無理な応力が加わる事を防止する為に必要である。接触角α2 が小さく、無負荷状態で運転される第二の玉軸受6aの外輪軌道14及び内輪軌道15の断面形状の曲率半径re2、ri2を前述の様に規制するだけでなく、接触角α1 が大きく、負荷状態で運転される第一の玉軸受5aの断面形状の曲率半径re1、ri1を上述の様に規制する事で、これら第一、第二の玉軸受5a、6aを組み合わせて成る玉軸受装置の寿命を、前記従来の玉軸受装置に比べて大幅に延長できる。
【0054】
尚、玉軸受装置を構成する第一の玉軸受5aの計算寿命L5aと第二の玉軸受6aの計算寿命L6aとの関係は、3L5a≦L6aとする事が、これら両玉軸受5a、6aを組み合わせて成る玉軸受装置の計算寿命LT を確保する面から好ましい。この理由は次の通りである。複数の玉軸受を組み合わせて成る玉軸受装置の計算寿命は、最も計算寿命が短い玉軸受(短寿命軸受)の計算寿命と一致するのではなく、これよりも短くなる事、計算寿命の長い玉軸受(長寿命軸受)の計算寿命に影響される事、更には長寿命軸受の計算寿命が長くなる程、玉軸受装置の計算寿命LT が短寿命軸受の計算寿命に近づく事は、従来から知られている。
【0055】
一方、使用時にアキシャル荷重を受ける第一の玉軸受5aの計算寿命L5aを長くする事は難しい反面、この様なアキシャル荷重を受けない第二の玉軸受6aの計算寿命L6aを長くする事は容易である。従って、本発明の玉軸受装置の場合には、第一の玉軸受5aの計算寿命L5aを短寿命軸受の計算寿命と考え、第二の玉軸受6aの計算寿命L6aを長寿命軸受の計算寿命と考える事ができる。そこで、これら第一、第二の玉軸受5a、6aの計算寿命L5a、L6aの比(L6a/L5a)と、これら両玉軸受5a、6aを組み合わせて成る玉軸受装置の計算寿命LT と上記第一の玉軸受5aの計算寿命L5aとの比との関係を示すと、図11の様になる。この図11は、従来から知られた組み合わせ軸受の計算寿命を求める為の計算式に基づいて描いたものである。この図11から明らかな通り、第二の玉軸受6aの計算寿命L6aを第一の玉軸受5aの計算寿命L5aの3倍以上にすれば、玉軸受装置の計算寿命LT を第一の玉軸受5aの計算寿命L5aの80%以上にできる(請求項10)。
【0056】
勿論、第二の玉軸受6aの計算寿命L6aを第一の玉軸受5aの計算寿命L5aに比べて大幅に長くすれば、上記玉軸受装置の計算寿命LT を第一の玉軸受5aの計算寿命L5aに、より近づける事ができる。但し、第二の玉軸受6aの計算寿命L6aを第一の玉軸受5aの計算寿命L5aの3倍を大幅に越えて延長しても、計算寿命L6aを伸ばす事に要するコストに比べて、それにより得られる玉軸受装置の計算寿命LT の延長効果は少ない。従って、全体のコストを考えた場合、第二の玉軸受6aの計算寿命L6aは、上記第一の玉軸受5aの計算寿命L5aの3倍を上回る程度にする事が適当である。
【0057】
更に、図示は省略したが、反負荷側の第二の玉軸受を構成する玉の数を、負荷側の第一の玉軸受を構成する玉の数よりも少なくする事で、上記内部アキシャル荷重を小さくする事もできる(請求項7)。玉の数を減らす事で負荷容量は小さくなるが、第二の玉軸受に加わる負荷は小さいので、玉の数を減らした場合でも、実用上十分な耐久性を確保できる。この様に第二の玉軸受を構成する玉の数mを第一の玉軸受を構成する玉の数nよりも少なく(m<n)する場合、上記少ない数mを多い数nの70〜80%(m=(0.7〜0.8)n)に規制する事が好ましい(請求項9)。80%を越える数の玉を組み込んだ場合には、内部アキシャル荷重を低減する効果が不十分になる。反対に、70%に満たない場合には、隣り合う玉の間隔が広くなり過ぎて、円滑な回転を妨げてしまう。この様に、反負荷側の第二の玉軸受を構成する玉の数を、負荷側の第一の玉軸受を構成する玉の数よりも少なくする技術は、本発明と組み合わせて実施できる他、本発明とは独立した形でも実施できる(請求項8)事は明らかである。
【0058】
尚、図示の実施例は何れも、1対のアンギュラ型玉軸受をDFで組み合わせた例に就いて示したが、運転時にアキシャル荷重Fa を支承する第一の玉軸受を複数個、互いに並列に設け、これら複数個の第一の玉軸受とアキシャル荷重Fa を支承しない1個の第二の玉軸受とを、DFで組み合わせる事もできる(請求項12)。
【0059】
【発明の効果】
本発明は、以上に述べた通り構成され作用する為、外部アキシャル荷重に対する負荷容量を十分に確保しつつ、内部アキシャル荷重の低減を図って、玉軸受装置の耐久性向上を図れる。しかも、回転軸の傾斜に対する許容度も大きく、且つ滑りに伴う異常摩耗も確実に防止できる為、より優れた耐久性を確実に得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来装置を示す断面図。
【図2】同じく要部断面図。
【図3】既知の刊行物に基づいて考えた玉軸受装置の断面図。
【図4】同じく要部断面図。
【図5】本発明の第一実施例を示す要部断面図。
【図6】回転速度並びにアキシャル荷重とラジアル荷重との比が玉軸受装置の寿命に及ぼす影響を示す線図。
【図7】同第二実施例を示す要部断面図。
【図8】同第三実施例を示す断面図。
【図9】第二の玉軸受の断面を、軌道の曲率半径を誇張して示す断面図。
【図10】反負荷側の玉軸受に滑りが発生する状態を示す、図4と同様の断面図。
【図11】第一の玉軸受の計算寿命と第二の玉軸受の計算寿命との比と、これらが組み合わされて成る玉軸受装置の計算寿命と第一の玉軸受の計算寿命との比との関係を示す線図。
【符号の説明】
1 ロータ
2 回転軸
3 ハウジング
4 ころ軸受
5、5a 第一の玉軸受
6、6a 第二の玉軸受
7、8 間座
9 抑え金
10 内輪
11、12 玉
13 外輪
14、14a 外輪軌道
15 内輪軌道
16、16a 保持器
17 主部
18 ポケット
19 シール装置
20 内輪
21 外輪
22 ノズルリング
23 ノズル孔
24 給油通路
25 隙間
Claims (12)
- 軸の外周面とハウジングの内周面との間に、それぞれがアンギュラ型又は深溝型である第一、第二の玉軸受を、互いの接触角の方向を異ならせて設け、使用時に上記軸とハウジングとの間に外部からほぼ一定方向に加わるアキシャル荷重を、第一の玉軸受により支承する玉軸受装置に於いて、上記第一、第二の玉軸受は正面組み合わせで配列されており、これら第一、第二の玉軸受にプラスの隙間が付与されており、上記第一の玉軸受の接触角よりも第二の玉軸受の接触角が小さく、上記第一、第二の玉軸受を構成する玉は保持器により転動自在に保持されており、これら保持器の外周面の一部はそれぞれ第一、第二の玉軸受を構成する外輪の内周面の一部に近接する事で、外輪案内により回転自在に支持されている事を特徴とする玉軸受装置。
- 軸の外周面とハウジングの内周面との間に、第一、第二の玉軸受に加えてころ軸受を設ける事により、上記軸に加わるラジアル荷重を支承自在とすると共に、上記各玉軸受を構成する外輪の外周面と上記ハウジングの内周面との間に隙間を介在させた、請求項1に記載した玉軸受装置。
- 第二の玉軸受の構成各部材のうち、内輪の外周面に形成した内輪軌道の曲率半径ri2及び外輪の内周面に形成した外輪軌道の断面形状の曲率半径re2と、各玉の直径dとの関係を、
0.505d≦ri2≦0.52d
0.53d≦re2≦0.56d
とした、請求項1〜2の何れかに記載した玉軸受装置。 - 第二の玉軸受の構成各部材のうち、内輪の外周面に形成した内輪軌道の曲率半径ri2及び外輪の内周面に形成した外輪軌道の断面形状の曲率半径re2と、各玉の直径dとの関係を、
0.505d≦ri2<0.51d
0.53d<re2≦0.56d
とした、請求項1〜2の何れかに記載した玉軸受装置。 - 第二の玉軸受の構成各部材のうち、内輪の外周面に形成した内輪軌道の曲率半径ri2及び外輪の内周面に形成した外輪軌道の断面形状の曲率半径re2と、各玉の直径dとの関係を、
ri2=0.505d
re2=0.54d
とした、請求項1〜2の何れかに記載した玉軸受装置。 - 第一の玉軸受の構成各部材のうち、内輪の外周面に形成した内輪軌道の曲率半径ri1及び外輪の内周面に形成した外輪軌道の断面形状の曲率半径re1と、各玉の直径d´との関係を、
ri1≦re1
ri1≦0.52d´
ri1+re1≧1.03d´
とした、請求項1〜5の何れかに記載した玉軸受装置。 - 第二の玉軸受を構成する玉の数を第一の玉軸受を構成する玉の数よりも少なくした請求項1〜6の何れかに記載した玉軸受装置。
- 軸の外周面とハウジングの内周面との間に、それぞれがアンギュラ型又は深溝型である第一、第二の玉軸受を、互いの接触角の方向を異ならせて設け、使用時に上記軸とハウジングとの間に外部からほぼ一定方向に加わるアキシャル荷重を、第一の玉軸受により支承する玉軸受装置に於いて、上記第二の玉軸受を構成する玉の数がこの第一の玉軸受を構成する玉の数よりも少ない事を特徴とする玉軸受装置。
- 第二の玉軸受を構成する玉の数が第一の玉軸受を構成する玉の数の70〜80%である、請求項7〜8の何れかに記載した玉軸受装置。
- 第二の玉軸受の計算寿命を第一の玉軸受の計算寿命の3倍以上とした、請求項1〜9の何れかに記載した玉軸受装置。
- 第一、第二の玉軸受の保持器の軸方向両端部内周面を、端縁部に向かう程内径が大きくなる、円錐凹面状の傾斜面とした請求項1〜7の何れかに記載した玉軸受装置。
- 複数個の第一の玉軸受と1個の第二の玉軸受とを備える、請求項1〜11の何れかに記載した玉軸受装置。
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