JP3550710B2 - 残留磁化可変電磁石装置とそれを用いた電磁石の残留磁化可変方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はパルス電流によって心材を磁化する電磁石に関し、簡便且つ精度良く残留磁化を制御できる残留磁化可変電磁石装置と、それを用いた電磁石の残留磁化可変方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明の対象となる電磁石は、コイルの中央に鉄心を配してこのコイルに電流を流すことにより鉄心を磁化するものであり、改めて説明するべくもない一般的なものである。この電磁石は、コイルに流れる電流を切れば磁化しない状態に戻るものであり、この性質を利用して、発電機、電動機などの電気機器や重量物の吊り上げ、制御機器や継電器、表示器などに広く利用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような一般的な電磁石においては、電流の入断による磁化の発生と消滅、および電流方向による磁極の反転と、3値のモードしか得ることができない。そしてこの3値のモード以外に磁力を変化させる場合には、コイルに流れる電流量自体を制御しなければならず、電流の制御に複雑な回路が必要となっていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述した従来の電磁石と異なり、コイルに流れる電流値を変化させなくとも任意の磁力を得ることのできる残留磁化可変電磁石装置と、それを用いた電磁石の残留磁化可変方法を提供するものである。
このような本発明の要旨は、先ず残留磁化可変電磁石装置としては、コイル中央に半硬質磁性材料の心材を配した電磁石と、前記心材に対して磁気飽和点となる第1の磁化を与える一定パルス幅の第1のパルス電流を発生させ、前記第1の磁化を与えて磁気飽和点に達した状態において逆方向の磁化を与えて残留磁化を変化させるための不定パルス幅の第2のパルス電流を発生させるために該第2のパルス電流のパルス幅の可変手段を備え、必要に応じて前記コイルを2重巻コイルとするものである。
また、コイル中央に半硬質磁性材料の心材を配した電磁石を設け、前記コイルを、前記心材の周囲に該心材の一端側から巻回した第1コイルと該心材の他端側から巻回した第2コイルとから構成し、これら第1、第2コイルのコモン線上に、該第1コイルに磁気飽和点となる第1の磁化を与える一定パルス幅の第1のパルス電流の電流値及び該第2コイルに流れる第2のパルス電流のパルス幅の可変手段を備えた電流発生源を設け、この電流発生源を前記第1、第2コイルの入力線に対してスイッチング手段を介して選択的に接続可能に構成し、前記スイッチング手段を第1コイルの入力線側に接続することにより、前記心材に対して磁気飽和点となる第1の磁化を与える一定パルス幅の第1のパルス電流を該第1コイルに流し、その後に前記スイッチング手段を第2コイルの入力線側に切り換え接続して、前記第1の磁化と逆方向の磁化を与えて残留磁化を変化させるための不定パルス幅の第2のパルス電流を流すことを特徴とする残留磁化可変電磁石装置であってもよい。
【0005】
次いで電磁石の残留磁化可変方法としては、コイル中央に半硬質磁性材料の心材を配した電磁石と、前記心材に対して磁気飽和点となる第1の磁化を与える一定パルス幅の第1のパルス電流を発生させ、前記第1の磁化を与えて磁気飽和点に達した状態において逆方向の磁化を与えて残留磁化を変化させるための不定パルス幅の第2のパルス電流を発生させるために該第2のパルス電流のパルス幅の可変手段を備えた電流発生源と、を備えた残留磁化可変電磁石装置を用い、
心材に対して磁気飽和点となる第1の磁化を与える一定パルス幅の第1のパルス電流を流した後に、前記第1の磁化と逆方向の磁化を与える不定パルス幅の第2パルス電流を流し、前記第2のパルス電流のパルス幅を変化させることによって心材の残留磁化を変化させるものであり、ここでも必要に応じて前記コイルに2重巻コイルを用いることができる。
【0006】
【作用】
上記本発明は以下の作用によって残留磁化が可変となる。
先ず一定のパルス幅で一定の電流値を有する第1のパルス電流を流して電磁石の心材を磁化する。ここでこの第1のパルス電流は、心材の残留磁化がいかなる状態であっても、一定の磁気飽和を与えるパルス幅、電流値に設定される。次いでその直後に、一定の電流値を有して且つ所望の磁化の大きさに応じてパルス幅を変化させた第2のパルス電流を流す。従って、以下のように第2のパルス電流を制御するだけで、残留磁化を制御できることになる。
このような2つのパルス電流を続いて流すと、先ず第1のパルス電流によって電磁石の心材に一定の磁化が与えられ、一定の磁気飽和状態となってリセットされる。そして心材には半硬質磁性材料を用いているので、この第1のパルス電流が断となっても磁化は残留し続け、第2のパルス電流によって所望の磁化を得る前のリセット状態が保持される。次に第2のパルス電流が流れることになるが、上述したように第2のパルス電流は、心材から見て第1のパルス電流によって発生した磁化とは逆方向の磁化を与える方向に流れることになる。従って第2のパルス電流は、第1のパルス電流による磁化を打ち消して逆磁極の磁化を生じるように作用する。すなわち、第2のパルス電流のパルス幅が短ければ、心材の磁極は第1のパルス電流によって生じた磁極と同極で且つ弱い磁化力に留まるが、充分に長い場合には第1のパルス電流による磁化を完全に打ち消して逆磁極に磁化することになる。更に説明を加えると、第2のパルス電流による磁化を調節することにより、電磁石の心材を磁化ゼロの状態とすることもできる。
【0007】
このように、第1のパルス電流を流して心材の磁化をリセットするので、第2のパルス幅を制御することによって、心材の磁化を細かく且つ高精度に制御することが可能となる。
【0008】
【実施例】
続いて以下にこの磁化特性を、具体的実施例に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の電磁石装置の概略説明図を表しており、電磁石1として半硬質磁性材料のFe−Co−V系合金(株式会社トーキン製トーメンダー)からなる心材3の周囲に、0.05mmφのエナメル線を用いた2000ターンの第1のコイル5と、巻方向が同一で2000ターンの第2のコイル7とをそれぞれ設けたものである。そして第1、第2のコイル5、7のコモン線9上に電流発生源11を設け、この電流発生源11を第1、第2のコイル5、7の入力線13、15に対してスイッチング手段17を介して選択的に接続可能としている。この心材に使用可能な材料としては、この他にFe−Co−Mo系合金、Co−Fe−Nb系合金等(株式会社トーキン製のTFC合金やニブコロイ)がある。
また電流発生源11には、第2のパルス電流のパルス幅や第1、第2のパルス電流の電流値の可変手段を備えている。
本図例の構成においては、例えばスイッチング手段17を入力線13側に接続して第1のパルス電流を第1のコイル5に流し、その後にスイッチング手段17を入力線15側に切り換え接続して第2のパルス電流を第2のコイル7に流すものである。そして第1のコイル5側に電流が流れる場合、すなわち第1のパルス電流は矢印a方向に、一方第2のコイル7側に流れる場合、すなわち第2のパルス電流は矢印b方向にそれぞれ流れることになり、第1、第2のパルス電流で心材3に対する電流の方向が逆方向となり、心材3に現れる磁極が反転することになる。
【0009】
次に図2のグラフを用いてこの磁化作用を簡単に説明するが、ここでは便宜上図1に示した心材3の端面cに現れる磁極を用いることとする。本図はコイルへの通電時間、すなわちコイルによって与えられる磁場の大きさと、N、S各磁極における磁化の強さとの関係を相対的に表したものである。図において横軸tはコイルへの通電時間を表す相対目盛り、縦軸Gはその時の磁化強度であり、上側は端面cがN極、下側はS極の場合をそれぞれ表している。ヒステリシスを有する2つの曲線d、eは、通電時間の関数として表される磁化強度Gの変化を示したものである。上方の曲線dがN側からS側へ磁化する場合、下方の曲線eはその逆である。従って上述の実施例において説明したように、例えば図中A点が第1のパルス電流によるリセット位置となる磁気飽和点、B点が磁化ゼロによる中間位置、C点が第2のパルス電流による磁気飽和点となる。
【0010】
すなわち、第1のパルス電流によって心材3の磁化がリセットされる場合、磁化強度Gは残留磁化に関係なく下方の曲線eに沿って変化し、逆に第2のパルス電流によって可変磁化を与える場合には、上方の曲線dに沿って変化することになる。従って第2のパルス電流のパルス幅に応じて、上方の曲線dに沿ってA点からC点の間の任意の磁化強度が得られることになる。また、この磁化曲線d、eの形状やヒステリシス特性は心材3の材質によって変化するので、必要に応じて種々の半硬質磁性材料を用いれば良い。
【0011】
よって上述のように、上記例を用いた残留磁化可変方法は、
▲1▼第1のコイル5への、一定パルス幅のパルス電流通電による心材磁化のリセット、
▲2▼第2のコイル7への、所望の磁極や磁化に対応したパルス幅のパルス電流通電による心材の磁化、
の2段階からなり、上記図2の磁化作用をさらに詳しく説明するため、これを繰り返し行う場合の時系列表示を図3として説明する。
【0012】
本図において、SD1、SD2はそれぞれ第1、第2のパルス電流の信号波形を、GN 、GS は第1、第2のパルス電流によって生じる電磁石1の心材3の磁化に基づく磁束密度の相対値を示し、GN がN極側、GS がS極側をそれぞれ表している。またtD1、tD2はそれぞれの波形のパルス幅を表している。横軸方向は経過時間tである。図から明らかなように、一定のパルス幅を有する第1のパルス電流によって心材3の磁化をリセットすると、その直後に流す第2のパルス電流のパルス幅に応じて、再現性良く心材3の磁化を変化させることができる。そしてこの磁化に要する時間は極めて短く、種々の高速動作への応用も可能である。
【0013】
ここでは、心材3の磁化を変化させるための最も簡便な方法として、第1、第2のパルス電流がそれぞれ一定の電流値の例として説明したが、目的や用途によってはパルス幅とともに第1、第2のパルス電流値を変化させることも可能である。また、電磁石1としてはここでは巻方向が同一の2重巻コイルを用いた例を示したが、巻方向の異なる2重巻コイルを用い、これに応じて電流発生源やスイッチング手段を配置させることも勿論可能である。さらに1重巻の単コイルを用い、電流発生源からの電流発生方向を変化させることもできる。
【0014】
【発明の効果】
以上、作用の項で説明したように、本発明によれば以下のように優れた効果が得られる。第1、第2のパルス電流を続けて流すことにより、第1のパルス電流にリセット機能を、第2のパルス電流には残留磁化制御機能を持たせることになり、第2のパルス電流のパルス幅を変化させるだけで所望の磁化を精度良く且つ再現性良く与えることができる。また心材に半硬質磁性材料を用いるので、電流停止後でも残留磁化が残り、省電力動作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の残留磁化可変電磁石装置の全体構造例を模式的に表すための説明図
【図2】本発明の残留磁化可変電磁石装置における通電時間と磁束密度との関係を表す説明図
【図3】本発明の残留磁化可変電磁石装置における各パルス電流と磁束密度の変化を表す説明図
【符号の説明】
1 電磁石 9 コモン線
3 心材 11 電流発生源
5 第1のコイル 13、15 入力線
7 第2のコイル 17 スイッチング手段
【産業上の利用分野】
本発明はパルス電流によって心材を磁化する電磁石に関し、簡便且つ精度良く残留磁化を制御できる残留磁化可変電磁石装置と、それを用いた電磁石の残留磁化可変方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明の対象となる電磁石は、コイルの中央に鉄心を配してこのコイルに電流を流すことにより鉄心を磁化するものであり、改めて説明するべくもない一般的なものである。この電磁石は、コイルに流れる電流を切れば磁化しない状態に戻るものであり、この性質を利用して、発電機、電動機などの電気機器や重量物の吊り上げ、制御機器や継電器、表示器などに広く利用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような一般的な電磁石においては、電流の入断による磁化の発生と消滅、および電流方向による磁極の反転と、3値のモードしか得ることができない。そしてこの3値のモード以外に磁力を変化させる場合には、コイルに流れる電流量自体を制御しなければならず、電流の制御に複雑な回路が必要となっていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述した従来の電磁石と異なり、コイルに流れる電流値を変化させなくとも任意の磁力を得ることのできる残留磁化可変電磁石装置と、それを用いた電磁石の残留磁化可変方法を提供するものである。
このような本発明の要旨は、先ず残留磁化可変電磁石装置としては、コイル中央に半硬質磁性材料の心材を配した電磁石と、前記心材に対して磁気飽和点となる第1の磁化を与える一定パルス幅の第1のパルス電流を発生させ、前記第1の磁化を与えて磁気飽和点に達した状態において逆方向の磁化を与えて残留磁化を変化させるための不定パルス幅の第2のパルス電流を発生させるために該第2のパルス電流のパルス幅の可変手段を備え、必要に応じて前記コイルを2重巻コイルとするものである。
また、コイル中央に半硬質磁性材料の心材を配した電磁石を設け、前記コイルを、前記心材の周囲に該心材の一端側から巻回した第1コイルと該心材の他端側から巻回した第2コイルとから構成し、これら第1、第2コイルのコモン線上に、該第1コイルに磁気飽和点となる第1の磁化を与える一定パルス幅の第1のパルス電流の電流値及び該第2コイルに流れる第2のパルス電流のパルス幅の可変手段を備えた電流発生源を設け、この電流発生源を前記第1、第2コイルの入力線に対してスイッチング手段を介して選択的に接続可能に構成し、前記スイッチング手段を第1コイルの入力線側に接続することにより、前記心材に対して磁気飽和点となる第1の磁化を与える一定パルス幅の第1のパルス電流を該第1コイルに流し、その後に前記スイッチング手段を第2コイルの入力線側に切り換え接続して、前記第1の磁化と逆方向の磁化を与えて残留磁化を変化させるための不定パルス幅の第2のパルス電流を流すことを特徴とする残留磁化可変電磁石装置であってもよい。
【0005】
次いで電磁石の残留磁化可変方法としては、コイル中央に半硬質磁性材料の心材を配した電磁石と、前記心材に対して磁気飽和点となる第1の磁化を与える一定パルス幅の第1のパルス電流を発生させ、前記第1の磁化を与えて磁気飽和点に達した状態において逆方向の磁化を与えて残留磁化を変化させるための不定パルス幅の第2のパルス電流を発生させるために該第2のパルス電流のパルス幅の可変手段を備えた電流発生源と、を備えた残留磁化可変電磁石装置を用い、
心材に対して磁気飽和点となる第1の磁化を与える一定パルス幅の第1のパルス電流を流した後に、前記第1の磁化と逆方向の磁化を与える不定パルス幅の第2パルス電流を流し、前記第2のパルス電流のパルス幅を変化させることによって心材の残留磁化を変化させるものであり、ここでも必要に応じて前記コイルに2重巻コイルを用いることができる。
【0006】
【作用】
上記本発明は以下の作用によって残留磁化が可変となる。
先ず一定のパルス幅で一定の電流値を有する第1のパルス電流を流して電磁石の心材を磁化する。ここでこの第1のパルス電流は、心材の残留磁化がいかなる状態であっても、一定の磁気飽和を与えるパルス幅、電流値に設定される。次いでその直後に、一定の電流値を有して且つ所望の磁化の大きさに応じてパルス幅を変化させた第2のパルス電流を流す。従って、以下のように第2のパルス電流を制御するだけで、残留磁化を制御できることになる。
このような2つのパルス電流を続いて流すと、先ず第1のパルス電流によって電磁石の心材に一定の磁化が与えられ、一定の磁気飽和状態となってリセットされる。そして心材には半硬質磁性材料を用いているので、この第1のパルス電流が断となっても磁化は残留し続け、第2のパルス電流によって所望の磁化を得る前のリセット状態が保持される。次に第2のパルス電流が流れることになるが、上述したように第2のパルス電流は、心材から見て第1のパルス電流によって発生した磁化とは逆方向の磁化を与える方向に流れることになる。従って第2のパルス電流は、第1のパルス電流による磁化を打ち消して逆磁極の磁化を生じるように作用する。すなわち、第2のパルス電流のパルス幅が短ければ、心材の磁極は第1のパルス電流によって生じた磁極と同極で且つ弱い磁化力に留まるが、充分に長い場合には第1のパルス電流による磁化を完全に打ち消して逆磁極に磁化することになる。更に説明を加えると、第2のパルス電流による磁化を調節することにより、電磁石の心材を磁化ゼロの状態とすることもできる。
【0007】
このように、第1のパルス電流を流して心材の磁化をリセットするので、第2のパルス幅を制御することによって、心材の磁化を細かく且つ高精度に制御することが可能となる。
【0008】
【実施例】
続いて以下にこの磁化特性を、具体的実施例に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の電磁石装置の概略説明図を表しており、電磁石1として半硬質磁性材料のFe−Co−V系合金(株式会社トーキン製トーメンダー)からなる心材3の周囲に、0.05mmφのエナメル線を用いた2000ターンの第1のコイル5と、巻方向が同一で2000ターンの第2のコイル7とをそれぞれ設けたものである。そして第1、第2のコイル5、7のコモン線9上に電流発生源11を設け、この電流発生源11を第1、第2のコイル5、7の入力線13、15に対してスイッチング手段17を介して選択的に接続可能としている。この心材に使用可能な材料としては、この他にFe−Co−Mo系合金、Co−Fe−Nb系合金等(株式会社トーキン製のTFC合金やニブコロイ)がある。
また電流発生源11には、第2のパルス電流のパルス幅や第1、第2のパルス電流の電流値の可変手段を備えている。
本図例の構成においては、例えばスイッチング手段17を入力線13側に接続して第1のパルス電流を第1のコイル5に流し、その後にスイッチング手段17を入力線15側に切り換え接続して第2のパルス電流を第2のコイル7に流すものである。そして第1のコイル5側に電流が流れる場合、すなわち第1のパルス電流は矢印a方向に、一方第2のコイル7側に流れる場合、すなわち第2のパルス電流は矢印b方向にそれぞれ流れることになり、第1、第2のパルス電流で心材3に対する電流の方向が逆方向となり、心材3に現れる磁極が反転することになる。
【0009】
次に図2のグラフを用いてこの磁化作用を簡単に説明するが、ここでは便宜上図1に示した心材3の端面cに現れる磁極を用いることとする。本図はコイルへの通電時間、すなわちコイルによって与えられる磁場の大きさと、N、S各磁極における磁化の強さとの関係を相対的に表したものである。図において横軸tはコイルへの通電時間を表す相対目盛り、縦軸Gはその時の磁化強度であり、上側は端面cがN極、下側はS極の場合をそれぞれ表している。ヒステリシスを有する2つの曲線d、eは、通電時間の関数として表される磁化強度Gの変化を示したものである。上方の曲線dがN側からS側へ磁化する場合、下方の曲線eはその逆である。従って上述の実施例において説明したように、例えば図中A点が第1のパルス電流によるリセット位置となる磁気飽和点、B点が磁化ゼロによる中間位置、C点が第2のパルス電流による磁気飽和点となる。
【0010】
すなわち、第1のパルス電流によって心材3の磁化がリセットされる場合、磁化強度Gは残留磁化に関係なく下方の曲線eに沿って変化し、逆に第2のパルス電流によって可変磁化を与える場合には、上方の曲線dに沿って変化することになる。従って第2のパルス電流のパルス幅に応じて、上方の曲線dに沿ってA点からC点の間の任意の磁化強度が得られることになる。また、この磁化曲線d、eの形状やヒステリシス特性は心材3の材質によって変化するので、必要に応じて種々の半硬質磁性材料を用いれば良い。
【0011】
よって上述のように、上記例を用いた残留磁化可変方法は、
▲1▼第1のコイル5への、一定パルス幅のパルス電流通電による心材磁化のリセット、
▲2▼第2のコイル7への、所望の磁極や磁化に対応したパルス幅のパルス電流通電による心材の磁化、
の2段階からなり、上記図2の磁化作用をさらに詳しく説明するため、これを繰り返し行う場合の時系列表示を図3として説明する。
【0012】
本図において、SD1、SD2はそれぞれ第1、第2のパルス電流の信号波形を、GN 、GS は第1、第2のパルス電流によって生じる電磁石1の心材3の磁化に基づく磁束密度の相対値を示し、GN がN極側、GS がS極側をそれぞれ表している。またtD1、tD2はそれぞれの波形のパルス幅を表している。横軸方向は経過時間tである。図から明らかなように、一定のパルス幅を有する第1のパルス電流によって心材3の磁化をリセットすると、その直後に流す第2のパルス電流のパルス幅に応じて、再現性良く心材3の磁化を変化させることができる。そしてこの磁化に要する時間は極めて短く、種々の高速動作への応用も可能である。
【0013】
ここでは、心材3の磁化を変化させるための最も簡便な方法として、第1、第2のパルス電流がそれぞれ一定の電流値の例として説明したが、目的や用途によってはパルス幅とともに第1、第2のパルス電流値を変化させることも可能である。また、電磁石1としてはここでは巻方向が同一の2重巻コイルを用いた例を示したが、巻方向の異なる2重巻コイルを用い、これに応じて電流発生源やスイッチング手段を配置させることも勿論可能である。さらに1重巻の単コイルを用い、電流発生源からの電流発生方向を変化させることもできる。
【0014】
【発明の効果】
以上、作用の項で説明したように、本発明によれば以下のように優れた効果が得られる。第1、第2のパルス電流を続けて流すことにより、第1のパルス電流にリセット機能を、第2のパルス電流には残留磁化制御機能を持たせることになり、第2のパルス電流のパルス幅を変化させるだけで所望の磁化を精度良く且つ再現性良く与えることができる。また心材に半硬質磁性材料を用いるので、電流停止後でも残留磁化が残り、省電力動作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の残留磁化可変電磁石装置の全体構造例を模式的に表すための説明図
【図2】本発明の残留磁化可変電磁石装置における通電時間と磁束密度との関係を表す説明図
【図3】本発明の残留磁化可変電磁石装置における各パルス電流と磁束密度の変化を表す説明図
【符号の説明】
1 電磁石 9 コモン線
3 心材 11 電流発生源
5 第1のコイル 13、15 入力線
7 第2のコイル 17 スイッチング手段
Claims (5)
- コイル中央に半硬質磁性材料の心材を配した電磁石と、前記心材に対して磁気飽和点となる第1の磁化を与える一定パルス幅の第1のパルス電流を発生させ、前記第1の磁化を与えて磁気飽和点に達した状態において逆方向の磁化を与えて残留磁化を変化させるための不定パルス幅の第2のパルス電流を発生させるために該第2のパルス電流のパルス幅の可変手段を備えた電流発生源と、
を備えた残留磁化可変電磁石装置。 - コイル中央に半硬質磁性材料の心材を配した電磁石を設け、前記コイルを、前記心材の周囲に該心材の一端側から巻回した第1コイルと該心材の他端側から巻回した第2コイルとから構成し、これら第1、第2コイルのコモン線上に、該第1コイルに磁気飽和点となる第1の磁化を与える一定パルス幅の第1のパルス電流の電流値及び該第2コイルに流れる第2のパルス電流のパルス幅の可変手段を備えた電流発生源を設け、この電流発生源を前記第1、第2コイルの入力線に対してスイッチング手段を介して選択的に接続可能に構成し、前記スイッチング手段を第1コイルの入力線側に接続することにより、前記心材に対して磁気飽和点となる第1の磁化を与える一定パルス幅の第1のパルス電流を該第1コイルに流し、その後に前記スイッチング手段を第2コイルの入力線側に切り換え接続して、前記第1の磁化と逆方向の磁化を与えて残留磁化を変化させるための不定パルス幅の第2のパルス電流を流すことを特徴とする残留磁化可変電磁石装置。
- コイル中央に半硬質磁性材料の心材を配した電磁石と、前記心材に対して磁気飽和点となる第1の磁化を与える一定パルス幅の第1のパルス電流を発生させ、前記第1の磁化を与えて磁気飽和点に達した状態において逆方向の磁化を与えて残留磁化を変化させるための不定パルス幅の第2のパルス電流を発生させるために該第2のパルス電流のパルス幅の可変手段を備えた電流発生源と、を備えた残留磁化可変電磁石装置を用い、
心材に対して磁気飽和点となる第1の磁化を与える一定パルス幅の第1のパルス電流を流した後に、前記第1の磁化と逆方向の磁化を与える不定パルス幅の第2パルス電流を流し、前記第2のパルス電流のパルス幅を変化させることによって心材の残留磁化を変化させる電磁石の残留磁化可変方法。 - 前記コイルに、巻方向の異なる2重巻コイル又は巻方向が同一の2重巻コイルを用いる請求項3記載の電磁石の残留磁化可変方法。
- 前記第1および第2のパルス電流値をそれぞれ一定とする請求項3又は4に記載の電磁石の残留磁化可変方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1270894A JP3550710B2 (ja) | 1994-02-04 | 1994-02-04 | 残留磁化可変電磁石装置とそれを用いた電磁石の残留磁化可変方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1270894A JP3550710B2 (ja) | 1994-02-04 | 1994-02-04 | 残留磁化可変電磁石装置とそれを用いた電磁石の残留磁化可変方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07220919A JPH07220919A (ja) | 1995-08-18 |
JP3550710B2 true JP3550710B2 (ja) | 2004-08-04 |
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