JP3550071B2 - 回転電機用プリプレグ絶縁コイル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転電機用プリプレグ絶縁コイルの絶縁厚さおよび圧縮率に対し、適正な周囲長さと角部曲率半径を有する素固めコイル導体を用いることにより、絶縁層の圧縮成型時に該絶縁層中にしわ等の生じないプリプレグ絶縁コイルに関する。
【0002】
【従来の技術】
回転電機用プリプレグ絶縁コイルでは、クロスやフィルム等の基材に熱硬化性樹脂を塗布し、半硬化状態にしたプリプレグ絶縁シートやプリプレグ絶縁テープ(以下、プリプレグ絶縁テープと云う)を、コイル導体の周囲に巻き付け加熱圧縮成型して、所定の絶縁特性を有する絶縁層を形成する。特に、初期絶縁強度および課電寿命の優れた絶縁層を得るためには、しわやボイドの少ない絶縁層を形成することが重要である。
【0003】
一般に、プリプレグ絶縁テープは、圧縮成型の際、厚さ方向には圧縮されるが長さ方向には収縮しない。このため、圧縮成型後のコイル絶縁層角部の形状は、圧縮成型前の等比変形ではなく、約αL(ただし、αは絶縁層の圧縮率、Lはテープ巻付け時の絶縁層角部曲線長さ)だけ4つの角方向に突き出した形状となる。しかしながら、角方向への突き出しおよびこれに伴う角部曲率半径の減少には限界があり、角部曲率半径が0以下となる条件で圧縮成型した場合、コイル絶縁層角部にしわが発生し絶縁特性が著しく低下する問題が生じる。
【0004】
とりわけ、近年、電気機器の高圧化により電気機器コイルの絶縁厚さが厚くなり、絶縁テープ巻付け厚さならびに角部曲線長さLが大きくなっている。
【0005】
このため、プリプレグ絶縁コイルでは、圧縮成型時の絶縁層の角方向への突き出しが大きくなり、絶縁層角部でしわが発生して、絶縁特性が低下すると云う問題がある。
【0006】
また、近年、電気機器の小型化のため、圧縮率αを大きくして単位絶縁厚さ当りの絶縁強度を大きくすることが求められている(第33回電気・電子先端材料展講演予稿集:Insulation ’98,電気絶縁材料工業会(1998))。
【0007】
しかしながら、圧縮率αを大きくした場合にも、圧縮成型時の角方向への突き出しが大きくなり、絶縁層角部でしわが発生して絶縁特性の低下と云う問題が生じる。実際、絶縁素線銅線を積み重ね、樹脂で硬化した後の角部曲率半径が0.5〜2mmの一般的なコイル導体に、プリプレグ絶縁テープを巻回し圧縮率30%で圧縮成型した場合、成型後の絶縁厚さが3.6mmより厚いコイルでは絶縁層角部曲率半径が約0となり、該角部にしわが生じた。
【0008】
また、プリプレグ絶縁テープを巻き付けたときの絶縁厚さが5.2mmより厚いコイルでは、圧縮率30%以上で圧縮成型した場合、絶縁層角部曲率半径が約0となり、絶縁層角部にしわが生じた。なお、この際、巻付け時に生じるしわが十分小さく、かつ、各部で均一な厚さとなるようにプリプレグ絶縁テープを巻き付けた。このため、巻付け時のしわと圧縮成型時のしわの判別は容易であった。
【0009】
上記の問題に対し、従来、成型後の絶縁層角方向への突き出しが少なくなる圧縮成型方法として、絶縁層角部にも圧力が加わる液圧成型法が知られている(特開平10−58545号公報)。また、真空加圧含浸絶縁で用いられる方法では、熱収縮テープでコイル絶縁層角部を加圧する方法が知られている(特開平5−184091号公報)。
【0010】
一方、圧縮成型後のコイル絶縁層角部形状を、圧縮成型前の等比変形に近づけ、絶縁層角方向への突き出しを低減する方法として、プリプレグ絶縁テープの基材に熱収縮性フィルムを用いる方法が提案されている(特開平7−170702号公報)。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、絶縁層の角部を加圧することにより絶縁層角方向への突き出しを少なくする圧縮成型方法では、コイル絶縁層角部付近のしわは低減されるが、コイル平坦部の絶縁層中にしわが発生し、絶縁特性が低下すると云う問題が生じた。
【0012】
一方、プリプレグ絶縁テープに熱収縮性フィルムを用いる方法では、基材に含浸した樹脂を半硬化状態に熟成する際に基材が収縮し、テープにしわが発生すると云う問題が生じた。特に、例えば基材にマイカテープが貼り合わせた多層型プリプレグ絶縁テープでは、熱収縮率の違いによりマイカ層と基材が剥離すると云う問題が生じた。また、絶縁テープを重ね巻きし、テープ幅方向のテープ端継ぎ目における絶縁強度の低下を防止する場合、熱収縮プリプレグ絶縁テープは長さ方向だけでなく幅方向にも収縮するため、テープ端継ぎ目が広がり絶縁層の絶縁強度が低下する問題が生じた。
【0013】
以上のように、従来のプリプレグ絶縁コイルは、絶縁厚さが厚い高圧電機用コイルに適用することが困難であった。また、圧縮率を大きくし、コイルを小型化することも困難であった。
【0014】
本発明の目的は、絶縁厚さが厚い、あるいは、圧縮率が大きいコイルの作製においても、圧縮成型時に絶縁層中にしわが生じず、均質な絶縁層のプリプレグ絶縁コイルを提供することにある。
【0015】
また、本発明の目的は、従来に比し高圧、あるいは、小型の回転電機用プリプレグ絶縁コイルを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、従来のコイル導体よりも周囲長さが小さいコイル導体を用いることにより解決することができる。
【0017】
即ち、素固めしたコイル導体にプリプレグ絶縁テープを巻回して絶縁処理を施した回転電機用プリプレグ絶縁コイルにおいて、
前記素固めしたコイル導体の断面が、高さH、幅W、該断面の周囲長さU(いずれもmm単位)とすると、前記H,W,Uが式〔1〕
【0018】
【数8】
U<2(H+W)+4(π−4) …〔1〕
で示す関係にある前記コイル導体を用いた回転電機用プリプレグ絶縁コイルにある。
【0019】
なお、コイル導体平坦部の絶縁素線導体間の凹部や転位コイル詰め物表面の凹部が有る場合には、これを無視し平面であると仮定した場合の周囲長さである。
【0020】
また、4つの角部が円形の場合には、4つの角部曲率半径の合計が、従来の一般的なコイル導体の角部曲率半径の合計よりも大きいコイル導体を用いることにより解決できる。即ち、前記4つの角部曲率半径の合計Σr(=r1+r2+r3+r4)が8mmよりも大きいコイル導体を用いることにより解決できる。
【0021】
また、プリプレグ絶縁テープを巻き付け、圧縮率αで圧縮成型し、所定の厚さTの絶縁層を得る際には、
【0022】
【数9】
U≦2(H+W)+2〔4−π/(1−α)〕T …〔2〕
で示す関係を満足するコイル導体を用いることが望ましい。ただし、圧縮率αはプリプレグ絶縁テープ巻き付け後のコイル絶縁層の厚さをT0としたとき、α=(T0−T)/T0で表すことができる。
【0023】
また、前記4つの角部曲率半径の合計Σr(=r1+r2+r3+r4)場合、
【0024】
【数10】
Σr≧−4〔1+4α/(π−4)〕T/(1−α) …〔3〕
を満足するコイル導体を用いることが望ましい。
【0025】
さらに、特に、プリプレグ絶縁テープ巻付け時に残留した絶縁層中のボイド量を低減するには、コイル導体に圧縮率αで所定の絶縁特性が得られるプリプレグ絶縁テープを巻き付け、圧縮成型により所定の厚さTの絶縁層を得る際、
【0026】
【数11】
U≧2(H+W)+(π−4){〔(1−α)2+(4−π)(1+4α/(π−4))2〕T/(1−α)+2(H+W)α}/〔4(1+α)−π〕 …〔4〕
または、U≧2H+2(π−1)W/3 …〔5〕
を満足するコイル導体を用いることが望ましい。また、
【0027】
【数12】
Σr(=r1,r2,r3,r4)≦2{〔(1−α)2+(4−π)(1+4α/(π−4))2〕T/(1−α)+2(H+W)α}/〔4(1+α)−π〕 …〔6〕
または、Σr≦4W/3 …〔7〕
を満足するコイル導体を用いることが望ましい。
【0028】
従来に比べ、周囲長さUが小さい、あるいは、角部曲率半径の合計値が大きいコイル導体を用いることにより、プリプレグ絶縁テープ巻付け後の角部空間量を大きくでき、圧縮成型時の角方向への突き出しの許容量を大きくできる。このため、絶縁層角部曲率半径の減少、および、しわの発生を抑制することができ、特に、従来、作製が困難であった絶縁厚さが厚い、あるいは、圧縮率が大きいプリプレグ絶縁コイルを作製できる。
【0029】
さらに、前記のコイル導体周囲長さUの下限、あるいは角部曲率半径合計値の上限値により、プリプレグ絶縁テープの巻付け時に残留したボイドをプリプレグ絶縁テープの余剰樹脂と共に絶縁層外に排出することができる。
【0030】
また、コイル導体の角部曲率半径を幅Wの1/3以上にした場合、圧縮成型時に成型用型内でコイルが動かないため、成型後のコイル寸法精度が良く内部構造が均質な絶縁層が得られる。
【0031】
さらにまた、前記素固めしたコイル導体の圧縮成型後の絶縁層の厚さT(mm単位)、圧縮率αとすると、T>2(α−1)/〔1+(4α/(π−4))〕で示す関係にある前記コイル導体を用いることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【0033】
〔実施例 1〕
図1に本発明の一実施例のコイルの模式断面図を示す。本実施例では、素固めしたコイル導体として、高さH=30mm、幅W=30mm、周囲長さUが98〜116mmのコイル導体1を用いた。
【0034】
コイル導体1は、二重ガラス被覆銅線2を積み重ね、エポキシ樹脂を含浸したプリプレグガラスシート3を間に挟み、エポキシ樹脂と集成マイカからなるコンパウンド材4を転位部に入れた後、加熱成型し作製した。成型後のコイル導体の角部はいずれも四半分円形となり、角部曲率半径の合計Σrは9〜51mmであった。
【0035】
コイル導体1には、図示しない公称厚さ0.28mm(実質厚さ0.24〜0.28mm)のガラス裏打ちエポキシプリプレグ未焼成集成マイカテープを1/2重ね巻きで約10回巻付け、厚さ5.3mmとし、110℃,圧縮率30%のヒートプレスでヒートプレス成型して、圧縮成型後の絶縁層5の厚さが3.7mmのコイル6を得た。
【0036】
図2に実施例1のコイル絶縁層断面図を示す。実施例1のコイルでは、いずれも絶縁層角部および平坦部にしわは認められなかった。しかしながら、コイル導体周囲長さUが98〜102mmの試料では、図3のように絶縁層中にボイド9が確認された。また、コイル内でコイル導体が傾き、マイカ層7の厚さが不均一であった。
【0037】
一方、コイル導体の周囲長さUが103〜116mmの試料では、ボイドは認められなかった。また、絶縁層中のマイカ層7の厚さは均一であり、絶縁層が均質に作製されていることが確認できた。
【0038】
〔実施例 2〕
本実施例では、高さH=30mm、幅W=30mm、周囲長さUが98〜114mmのコイル導体1を用いた。コイル導体1は、実施例1と同様の方法で作製した。成型後のコイル導体の角部はいずれも四半分円形となっており、角部曲率半径の合計Σrはそれぞれ14〜51mmであった。
【0039】
コイル導体1には、ガラス裏打ちエポキシプリプレグ未焼成集成マイカテープを1/2重ね巻きで約15回巻付け、厚さ7.9mmとし、110℃,圧縮率30%でヒートプレス成型して、圧縮成型後の絶縁層5の厚さが5.5mmのコイル6を得た。
【0040】
上記のコイルでは、図2のようにいずれも絶縁層角部および平坦部にしわは認められなかった。但し、コイル導体周囲長さが98と100mmの試料では、図3のように絶縁層中にボイド9が確認された。また、コイル内でコイル導体が傾き、マイカ層7の厚さが不均一であった。
【0041】
一方、コイル導体の周囲長さUが101〜114mmの試料では、絶縁層中にボイドは認められなかったが、導体周囲長さUが101と102mmの試料では、コイル内でコイル導体が傾き、マイカ層7の厚さが不均一であった。コイル導体周囲長さが103〜114mmの試料では絶縁層中のマイカ層7の厚さは均一であり、絶縁層が均質に作製されていることが確認できた。
【0042】
〔実施例 3〕
本実施例では、高さH=30mm、幅W=30mm、周囲長さUが98〜113mmのコイル導体1を用いた。コイル導体1は、実施例1と同様の方法で作製した。成型後のコイル導体の角部はいずれも四半分円形となっており、角部曲率半径の合計はそれぞれ16〜51mmであった。
【0043】
コイル導体1には、ガラス裏打ちエポキシプリプレグ未焼成集成マイカテープを1/2重ね巻きで約19回巻付け、厚さ10mmとし、110℃,圧縮率30%でヒートプレス成型して、圧縮成型後の絶縁層5の厚さが7.0mmのコイル6を得た。
【0044】
本実施例のコイルでは、図2のようにいずれも絶縁層角部および平坦部にしわは認められなかった。但し、コイル導体周囲長さUが98mmの試料では、図3のように絶縁層中にボイド9が確認された。また、コイル内でコイル導体が傾き、マイカ層7の厚さが不均一であった。
【0045】
一方、コイル導体周囲長さUが100〜113mmの試料では、絶縁層中にボイドは認められなかったが、導体周囲長さUが100〜102mmの試料では、コイル内でコイル導体が傾き、マイカ層7の厚さが不均一であった。コイル導体周囲長さが103〜113mmの試料では、絶縁層中のマイカ層7の厚さは均一であり、絶縁層が均質に作製されていることが確認できた。
【0046】
〔実施例 4〕
本実施例では、高さH=57mm、幅W=15mm、周囲長さUが136〜140mmのコイル導体1を用いた。コイル導体1は、実施例1と同様の方法で作製した。但し、本実施例のコイル導体の角部は、凸型曲線であった。
【0047】
コイル導体には、ガラス裏打ちエポキシプリプレグ未焼成集成マイカテープを1/2重ね巻きで約10回巻付け、厚さ5.3mmとし、110℃,圧縮率30%でヒートプレス成型して、圧縮成型後の絶縁層の厚さが3.7mmのコイルを得た。
【0048】
本実施例のコイルでは、図2のようにいずれも絶縁層角部および平坦部にしわやボイドは認められなかった。また、絶縁層中のマイカ層7の厚さは均一であり、絶縁層が均質に作製されていることが確認できた。
【0049】
〔実施例 5〕
本実施例では、高さH=57mm、幅W=15mm、周囲長さUが136、138mmのコイル導体1を用いた。コイル導体1は、実施例1と同様の方法で作製した。但し、コイル導体の角部は凸型曲線であった。
【0050】
コイル導体には、ガラス裏打ちエポキシプリプレグ未焼成集成マイカテープを1/2重ね巻きで約15回巻付け、厚さ7.9mmとし、110℃,圧縮率30%でヒートプレス成型して、圧縮成型後絶縁層の厚さが5.5mmのコイルを得た。
【0051】
本実施例のコイルでは、図2のようにいずれも絶縁層角部および平坦部にしわやボイドは認められなかった。また、絶縁層中のマイカ層7の厚さは均一であり、絶縁層が均質に作製されていることが確認できた。
【0052】
〔実施例 6〕
本実施例では、高さH=30mm、幅W=30mm、周囲長さUが98〜113mmのコイル導体1を用いた。コイル導体1は、実施例1と同様の方法で作製した。成型後のコイル導体の角部はいずれも四半分円形となっており、角部曲率半径の合計はそれぞれ16〜51mmであった。
【0053】
コイル導体1には、ガラス裏打ちエポキシプリプレグ未焼成集成マイカテープを1/2重ね巻きで約11回巻付け、厚さ5.7mmとし、110℃,圧縮率35%でヒートプレス成型して、圧縮成型後の絶縁層5の厚さが3.7mmのコイル6を得た。
【0054】
本実施例では、図2のようにいずれも絶縁層角部および平坦部にしわは認められなかった。但し、コイル導体周囲長さUが98、100mmの試料では、図3のように絶縁層中にボイド9が確認された。また、コイル内でコイル導体が傾き、マイカ層7の厚さが不均一であった。
【0055】
一方、コイル導体周囲長さUが101〜113mmの試料では、絶縁層中にボイドは認められなかったが、導体周囲長さUが101、102mmの試料では、コイル内でコイル導体が傾き、マイカ層7の厚さが不均一であった。コイル導体周囲長さUが103〜113mmの試料では絶縁層中のマイカ層7の厚さは均一であり、絶縁層が均質に作製されていることが確認できた。
【0056】
〔比較例 1〕
高さH=30mm、幅W=30mm、周囲長さUが117、119mmのコイル導体1を用いた。コイル導体1は、実施例1と同様の方法で作製した。成型後のコイル導体の角部はいずれも四半分の円形となっており、角部曲率半径の合計Σrはそれぞれ8mm、2mmであった。
【0057】
コイル導体1には、ガラス裏打ちエポキシプリプレグ未焼成集成マイカテープを1/2重ね巻きで約10回巻付け、厚さ5.3mmとし、110℃,圧縮率30%でヒートプレス成型して、圧縮成型後の絶縁層5の厚さが3.7mmのコイル6を得た。図4に比較例1のコイル絶縁層の断面図を示す。絶縁層13の角部および平坦部にマイカ層のしわ10が認められた。
【0058】
〔比較例 2〕
高さH=57mm、幅W=15mm、周囲長さUが141、143mmのコイル導体1を用いた。コイル導体1は、実施例1と同様の方法で作製した。成型後のコイル導体の角部はいずれも四半分の円形となっており、角部曲率半径の合計Σrはそれぞれ8mm、2mmであった。
【0059】
コイル導体1には、ガラス裏打ちエポキシプリプレグ未焼成集成マイカテープを1/2重ね巻きで約10回巻付け,厚さ5.3mmとし、110℃,圧縮率30%でヒートプレス成型して、圧縮成型後の絶縁層5の厚さが3.7mmのコイル6を得た。本比較例では、比較例1と同様に絶縁層13の角部および平坦部のマイカ層にしわ10が認められた。
【0060】
〔実施例 7〕
図5に、実施例1〜3および比較例1のコイルについて、横軸を圧縮成型後の絶縁厚さ、縦軸をコイル導体の周囲長さUと、しわおよびボイドの発生状況を示す。
【0061】
しわおよびボイドが無く、絶縁層が均質なコイルを20、しわおよびボイドが無いコイルを21、しわは無いがボイドがあるコイルを22、しわがあるコイルを23で示す。
【0062】
さらに、絶縁層圧縮成型時に絶縁層中にしわが発生しない領域を15、プリプレグ絶縁テープ巻付け時に残留した絶縁層中のボイド量を低減できる領域を16、圧縮成型後のコイル寸法精度の高い領域を17として示す。
【0063】
しわが無いコイル(20、21、22)は、いずれも領域15内にある。一方、しわがあるコイル(23)は、領域15の外にある。
【0064】
上記から、領域15の条件を満たすことにより、種々の絶縁厚さのコイルに対して、絶縁層の圧縮成型時にしわが発生しないプリプレグ絶縁コイルが得られることを確認した。
【0065】
また、本発明の領域15において、特に、領域16と重なる領域では、ボイドが無いコイル(20または21)が得られている。このことから、本発明においては、特に、領域16の条件を満たすことにより、しわおよびボイドの無いプリプレグ絶縁コイルが得られることを確認した。
【0066】
さらに、本発明の領域15において、特に、領域16、領域17と重なる領域では、しわおよびボイドが無いだけでなく、絶縁層が均質なコイル(20)が得られている。このことから、本発明においては、特に、領域16,17の条件を満たすことにより、しわおよびボイドがなく、絶縁層が均質なプリプレグ絶縁コイルが得られることを確認した。
【0067】
図6に、実施例4,5、比較例2のコイルについて、横軸を圧縮成型後の絶縁厚さ、縦軸をコイル導体の周囲長さU、しわおよびボイドの発生状況を示す。図中の符号等は図5の場合と同じである。
【0068】
実施例4,5および比較例2では、実施例1〜3および比較例1とコイル導体高さH、幅Wが異なるが、領域15では、しわが無いコイル(20)が得られている。一方、領域15の外では、しわのあるコイル(23)が得られている。
【0069】
上記から、コイル導体の高さHや幅Wが変化しても、本発明により、絶縁層圧縮成型時にしわが発生しないプリプレグ絶縁コイルが得られることを確認した。
【0070】
また、特に、領域15〜17が重複する領域では、ボイドの無い均質な絶縁層のコイル(20)が得られている。コイル導体の高さHや幅Wが変化しても、本発明の領域15〜17の条件を満たすことにより、絶縁層中にしわが無いだけでなく、ボイドが少ないプリプレグ絶縁コイルが得られることを確認した。
【0071】
図7に、実施例1〜3および比較例1のコイルについて、横軸を圧縮成型後の絶縁厚さ、縦軸をコイル導体の角部曲率半径の合計Σr値としわおよびボイドの発生状況を示す。
【0072】
領域15では、絶縁層中にしわが無いコイル(20、21、22)が得られている。また、特に、領域15、16が重なる領域では、絶縁層中にしわおよびボイドが無いコイル(20、21)が得られている。さらに、領域15〜17が重なる領域では、しわおよびボイドが無いだけでなく、絶縁層が均質なコイル(20)が得られている。
【0073】
上記から、コイル導体の4つの角が四半分の円形である場合は、角部曲率半径の合計Σrにより定義したコイル導体を用いることにより、しわ、ボイド、不均質部分の無いプリプレグ絶縁コイルが得られることを確認した。
【0074】
図8に、実施例1,6および比較例1のコイルについて、横軸を絶縁層の圧縮率、縦軸をコイル導体の周囲長さUと、しわおよびボイドの発生状況を示す。
【0075】
領域15では、絶縁層中にしわが無いコイル(20、21、22)が得られている。特に、領域15、16が重なる領域では、絶縁層中にしわおよびボイドが無いコイル(20、21)が得られている。さらに、領域15〜17が重なる領域では、しわおよびボイドが無いだけでなく、絶縁層が均質なコイル(20)が得られている。これらのことから、種々の絶縁層圧縮率のコイルに対して、しわ、ボイド、不均質部分の無いプリプレグ絶縁コイルが得られることを確認した。
【0076】
前記の実施例および比較例のコイル導体は、転位したコイル導体を用いたが、転位の無いコイル導体を利用することもできる。この場合、コイル導体を形成する絶縁素線角部の曲率半径や、コイル導体を形成する絶縁電線やコイルを固める際の樹脂により、コイル導体角部の曲率半径を調整することが望ましい。
【0077】
また、前記の実施例ではコイル導体の素線に二重ガラス被覆銅線を用いたが、マイカ巻き電線など異なる絶縁を施した絶縁電線を用いることもできる。
【0078】
さらに、前記実施例および比較例では、二重ガラス被覆銅線の導体に無垢の銅線を用いたが、水冷却用の中空銅線を用いることもできる。
【0079】
前記の実施例、比較例のコイル絶縁層の形成には、エポキシプリプレグ未焼成集成マイカテープを用いたが、含浸樹脂はポリエステルやシリコーンなどの他の樹脂を、またマイカには焼成集成マイカを用いることもできる。
【0080】
さらには、耐コロナ性には劣るがマイカを含まないプリプレグガラステープで絶縁層を形成してもよい。
【0081】
基材についても、アルミナクロスなどや他のセラミックス繊維、ポリエステル不織布などの有機繊維、または、ポリエステル、ポリイミドなどの有機フィルムを用いてもよい。
【0082】
以上により、少なくとも絶縁厚さが7mmの回転電機用プリプレグ絶縁コイルを作製することができる。特に、本発明のプリプレグ絶縁コイルを適用した発電機では、少なくとも従来比1.9倍の定格電圧発電機までプリプレグ絶縁コイルで作製することができる。
【0083】
また、圧縮率を30%から約35%まで上げることができ、絶縁破壊強度を従来比の1.1倍向上させることができるため、コイル絶縁の厚さを低減することが可能となった。
【0084】
次に、本発明のコイルを用いた発電機のスロット部について説明する。図9には、本発明のコイルを固定子コイル30に用いた発電機のスロット部で、コイル絶縁厚さを低減できることにより、コイル30の入るスロット31の深さ、および、幅を小さくすることが可能となった。特に、実施例4のコイル導体を用いた場合、スロット31の深さを1%、幅を3%小さくすることができる。この結果、固定子コア外径、並びに、発電機を1%小型化することができる。
【0085】
【発明の効果】
本発明によれば、絶縁厚さおよび圧縮率に対し前記の適正な周囲長さU、あるいは、角部曲率半径Σrのコイル導体を用いることにより、絶縁厚さが厚い、あるいは圧縮率が大きいコイルを作製する場合、圧縮成型による絶縁層中のしわの発生を抑制し、均質な絶縁層を有するプリプレグ絶縁コイルを提供できる。
【0086】
また、本発明のプリプレグ絶縁コイルは、従来のコイルに比べ高圧、あるいは、小型の回転電機を製作することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回転電機用コイルの模式断面図である。
【図2】絶縁層中にしわやボイドがなく、内部構造が均質な本発明のプリプレグ絶縁コイルの模式断面図である。
【図3】絶縁層中にしわは無いが、ボイドや不均質部分が在るプリプレグ絶縁コイルの模式断面図である。
【図4】圧縮成型により絶縁層中にしわが生じたプリプレグ絶縁コイルの模式断面図である。
【図5】絶縁厚さとコイル導体の周囲長さUと圧縮成型後の絶縁層中のしわおよびボイドの発生状況を示すグラフである。
【図6】絶縁厚さとコイル導体の周囲長さUと圧縮成型後の絶縁層中のしわおよびボイドの発生状況を示すグラフである。
【図7】絶縁層の厚さとコイル導体角部の曲率半径の合計Σrと絶縁層中のしわおよびボイドの発生状況を示すグラフである。
【図8】絶縁層の圧縮率を変化させたときのコイル導体周囲長さUと絶縁層中のしわおよびボイドの発生状況を示すグラフである。
【図9】発電機固定子コイルのスロット部の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…コイル導体、2…二重ガラス被覆銅線、3…プリプレグガラスシート、4…コンパウンド材、5…コイル絶縁層、6…コイル、7…マイカ層、8…ガラスクロス/樹脂層、9…ボイド、10…絶縁層のしわ、15…絶縁層圧縮成型時に絶縁層中にしわが発生しない領域、16…プリプレグ絶縁テープ巻付け時に残留した絶縁層中のボイド量を低減できる領域、17…圧縮成型後のコイル寸法精度の高い領域、30…固定子コイル、31…固定子コイルスロット、32…固定子コア、33…楔、34…楔下、35…層間絶縁材、36…スロット底絶縁材。
Claims (7)
- 素固めしたコイル導体にプリプレグ絶縁テープを巻回して圧縮成型することにより絶縁処理を施した回転電機用プリプレグ絶縁コイルにおいて、
前記素固めしたコイル導体の断面が、高さH、幅W、該断面の周囲長さU、該断面の4つの角部曲率半径をr1,r2,r3,r4、圧縮成型後の絶縁層の厚さT(いずれもmm単位)、圧縮率αとすると、
前記H,W,U,Tおよびαが、式〔2〕
【数5】
Σr≧−4〔1+4α/(π−4)〕T/(1−α) …〔3〕で示す関係にある前記コイル導体を用いたことを特徴とする回転電機用プリプレグ絶縁コイル。 - 素固めしたコイル導体にプリプレグ絶縁テープを巻回して圧縮成型することにより絶縁処理を施した回転電機用プリプレグ絶縁コイルにおいて、
前記素固めしたコイル導体の圧縮成型後の絶縁層の厚さT(mm単位)、圧縮率αとすると、T>2(α−1)/〔1+(4α/(π−4))〕で示す関係にある前記コイル導体を用いたことを特徴とする回転電機用プリプレグ絶縁コイル。
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