JP3550051B2 - フェノールを含む木材の着色方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェノールを含む杉、カラ松などの木材の着色方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、杉に高付加価値を持たせるために着色することが提案されている。
杉をアルカリ水溶液中に浸漬すると、杉の心材に含まれるフェノール類が反応して淡褐色になることが知られている。
そのためには、何らかの手段で木材にアルカリ溶液を注入する必要がある。この注入には、一般的には、減圧・加圧法が用いられる。この減圧・加圧法は、木材を減圧してから木材の中の空気を除いた後、加圧して除かれたところにアルカリ水溶液を注入するものである。
【0003】
透過性の良い木材、いわゆる細胞の孔が開いているものは、この注入法で、薄い板や細胞孔の状態の良いものでは中までアルカリ水溶液が入る。その結果、均一に色が変わる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
処が、これは滅多にないことである。大半は色斑を起こす。
【0005】
それは、注入したアルカリ水溶液が、木材の心材の中に全て入っていないことを表している。すなわち、細胞一つ一つの孔が閉じているものがあるので、開放できずに残ってしまう。アルカリ水溶液が入っていないところは、着色されないので、それが色斑として表れる。
このように色斑になる個所が多い処理材は、製品としては不向きである。
【0006】
本発明はかかる従来の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、色斑のないフェノールを含む木材の着色方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、フェノールを含む木材に減圧・加圧法によってアルカリ水溶液を含浸後、スチーム処理を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、フェノールを含む木材に減圧・加圧法によってアルカリ水溶液を含浸後、乾燥し、スチーム処理を行うことを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1または2記載のフェノールを含む木材の着色方法において、前記アルカリ水溶液は、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムの水溶液であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1または2記載のフェノールを含む木材の着色方法において、前記アルカリ水溶液は、pH10以上であることを特徴とする。請求項5に係る発明は、請求項1または2記載のフェノールを含む木材の着色方法において、前記スチーム処理時の木材の表面温度は、120℃〜160℃であることを特徴とする。
【0010】
請求項6に係る発明は、請求項1または2記載のフェノールを含む木材の着色方法において、前記スチーム処理の時間は、1時間〜3時間であることを特徴とする。
本発明者は、色斑を起こさないようにするためには、アルカリ水溶液が入っていない細胞に、アルカリ水溶液を入れるべく種々実験を行った結果、木材の物性を利用して、一度細胞に入ったアルカリ水溶液を他の細胞に拡げることを見いだした。木材は細胞に穴が開いていなくても、拡散といって、平衡に達する性質がある。
【0011】
そこで、アルカリ水溶液が入っていない細胞に高温・高圧のスチームをかけると、温度と圧力で木材が圧縮され、スチーム下のため、水分があるから、細胞孔の中に高圧と温度によって細胞が変形を起こす。変形を起こした後に、圧力を開放すると、スポンジ効果によって細胞が元に戻ろうとする。これによって、アルカリ水溶液が細胞内に吸い込まれることを見いだした。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。
まず、含水率が約20.0〜50.0%、寸法が幅210mm×高さ30mm×長さ4000mmの杉材を耐圧容器の中で減圧雰囲気にして一定時間放置した後、杉材内に注入する薬剤(炭酸ナトリウム0.2〜1.0%水溶液;pH10〜12)を処理槽に流し入れ加圧した。
【0013】
この注入技術は、一般的に行われている方法である(減圧・加圧法)。
このとき、圧力・時間・温度による影響はあるものの、本実施形態では、減圧時間を2時間以上、そのときの減圧力を約10〜40トルとした。温度は、90〜150℃の範囲である。
その後、注入液(炭酸ナトリウム0.25〜0.5%水溶液)を処理槽に流し入れてから大気圧に戻し、5kgf/cm2〜10kgf/cm2の加圧を行った。
【0014】
次に、注入液を上記方法で注入して取り出された杉材は、重量を測定してからそのまま大気中に放置(天然乾燥)し、約1〜2ヶ月間乾燥させた。
その後、木材の表面温度120〜160℃の範囲でスチーミングを行った。処理時間は、着色の度合いにもよるが、ここでは0.5〜3.0時間である。
スチーム処理は、木材の表面温度が100℃以上で処理するため、蒸気圧が問題となるが、ここでは耐圧容器内部にセットした温度センサーの温度を基準とした。時間はその設定温度に到達してからの時間である。
【0015】
その結果を表1に示す。
表1において、×印以外は利用可能な状態を示している。
まず、スチーミング処理によって木材の表面温度が100℃の場合には、処理時間に拘わらず、アルカリ水溶液が未注入の部分が、注入前の色(赤み)として残るため、仕上がりに色むらができた(×印で示す)。
【0016】
これに対し、スチーミング処理によって木材の表面温度が120℃になり、処理時間が1時間以上になると、注入前の色(赤み)が目立たなくなった(△印で示す)。
【0017】
さらに、スチーミング処理によって木材の表面温度が140℃になると、処理時間に拘わらず、褐色になった(○印で示す)。
さらに、スチーミング処理によって木材の表面温度が160℃になると、処理時間が1時間以上になると、暗褐色になった(◎印で示す)。
かくして得られた△印以上の木材(○◎印)は、視覚的にみて用材となり得ることを意味する。
【0018】
ここでの着色は、杉材に含まれるフェノール成分によるものと考えられる。一般にフェノールはベンゼン核に水酸基OHを持つ物質であるため、この水酸基がベンゼンに比べて染色・濃色効果が発揮する。したがって、杉材がアルカリ水溶液に浸漬されると、アルカリ水溶液中で解離したフェノラート基が発色し、染色・濃色効果が生じたものと考えられる。
【表1】
なお、上記実施形態では、杉材について説明したが、カラ松でも良い。
また、アルカリ水溶液として炭酸ナトリウムを用いたが、炭酸カリウムでも良い。
また、上記実施形態では、減圧・加圧法によるアルカリ水溶液の浸漬後に杉材を乾燥し、その後にスチーム処理を行ったが、本発明はこれに限らず、乾燥工程を経ずにスチーム処理を行っても良い。
【0019】
【発明の効果】
以上のように、アルカリ水溶液を注入した木材に高温・高圧のスチーム処理を行うことにより、熱劣化による着色効果と注入液の拡散による現象とで、色斑がなくなり、均一な着色材を得ることができる。
Claims (6)
- フェノールを含む木材に減圧・加圧法によってアルカリ水溶液を含浸後、スチーム処理を行うことを特徴とするフェノールを含む木材の着色方法。
- フェノールを含む木材に減圧・加圧法によってアルカリ水溶液を含浸後、乾燥し、スチーム処理を行うことを特徴とするフェノールを含む木材の着色方法。
- 請求項1または2記載のフェノールを含む木材の着色方法において、
前記アルカリ水溶液は、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムの水溶液である
ことを特徴とするフェノールを含む木材の着色方法。 - 請求項1または2記載のフェノールを含む木材の着色方法において、
前記アルカリ水溶液は、pH10以上である
ことを特徴とするフェノールを含む木材の着色方法。 - 請求項1または2記載のフェノールを含む木材の着色方法において、
前記スチーム処理時の木材の表面温度は、120℃〜160℃である
ことを特徴とするフェノールを含む木材の着色方法。 - 請求項1または2記載のフェノールを含む木材の着色方法において、
前記スチーム処理の時間は、0.5時間〜3時間である
ことを特徴とするフェノールを含む木材の着色方法。
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