JP3549904B2 - 磁気共鳴映像装置の勾配コイル及びシムコイル - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、磁気共鳴映像装置(以下「MRI」という)の磁場発生コイル、特に、アクティブシールド勾配コイル(以下「ASGC」という)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、医療用画像診断装置の進歩にともなって、MRIの開発が盛んに進められている。
【0003】
このMRIを用いた磁気共鳴映像法は、固有の磁気モーメントを持つ核の集団が一様な静磁場中におかれたときに、特定の周波数(ラーモア周波数)で回転する高周波磁場エネルギーを共鳴的に吸収する現像を利用して、物質の化学的及び物理的な微視的情報を映像化する手法である。この磁気共鳴映像法では、画像化用パルスシーケンスにおいて、多種多様な勾配磁場のスイッチングを行う必要がある。上記パルスシーケンスとしては、スピンエコー法やフィールドエコー法等の従来法や、エコープラナー法を始めとする超高速イメージング法、さらに血流の分布や速度等が求める血管・血流イメージング法等があげられる。
【0004】
これらの方法は、それぞれ固有のパルスシーケンス、即ち、固有の勾配磁場スイッチング方式を有し、スイッチングにともなって超伝導マグネットの熱シールド群や高周波シールド上には渦電流が発生し、シムコイル上にはカップリング電流が誘起される。これらの過渡的電流は、勾配磁場の時間的及び空間的性質を変調し、画像ボケ等の重大な画像劣化の原因となる。一般に、過渡的磁場成分による画像ボケは位置ごとに異なるため、画像復元の手段として通常用いられているkスペース(空間周波数領域)における逆フィルター法等の方法では復元は不可能である。
従来、これらの問題に対処する方法として、以下に示す方法が知られている。
【0005】
即ち、超伝導マグネットの熱シールド群や高周波シールドに発生する渦電流に対しては、渦電流時間応答の逆応答に相当する成分で勾配コイル電流を変調し、渦電流の時間応答を補償する方法が提案されている。しかし、この方法により渦電流の時間応答補償が完全に実現された場合でも、渦電流磁場が勾配磁場とは異なる空間非線形性や磁場中心を有するために、画像ボケ等の画像劣化(特に磁場中心から離れた位置において)は敢然には解消されない。つまり、残留渦で磁場は渦補償を実施したポイントで完全にゼロになるだけで、その他の領域では有意に残ってしまう。
【0006】
上記渦及びカップリング時間応答補償の問題点を解決するために、さらに進んだ方法として、ASGCの採用がある。図18は、レーマーによって提案された軸に垂直方向の勾配コイルに対して構成されるASGCの導線配置図である。これらの導線の位置は、ASGCの径の位置にシールド円筒導体が存在するとした場合の完全遮蔽渦電流の連続的分布を反映したものとなっている。
【0007】
一般に、渦電流分布は変形ベッセル関数等の特殊関数系によって表され、この分布を忠実に離散的な導線で置き換えるためには従来の勾配コイルの導線巻線技術では困難であり、数値制御(NC)等の高度な製造技術が要求される。漏洩磁場シールド率を高めるためには、より精密な巻線技術が要求されるため、製造コストや工程が膨大となる。
【0008】
そこで、製造コストや工程を大幅に低減する方法として、エーデルシュタインらによりASGC等の導線配置パターンをエッチングにより構成する方法が提案されている。しかしながら、上記エッチングパターンの構成方法に関しては実施例が全く示されておらず、具体化されていなかった。
【0009】
例えば、エッチング工法では、金属(例えば銅)板の厚みに対してエッチング可能な厚みの上限があり、通常の線材と比べてコイルの抵抗が増加してしまい発熱量が増えるという問題がある。ところが、この問題を解決する手段は何ら示されていなかった。
【0010】
また、エッチング工法においては、導体部分の1ターン当たりの幅(以下「導体幅」という)をできるだけ広くすることも可能であるが、広くした部分には勾配磁場スイッチングにより渦電流(自己渦電流)が発生し、MRイメージングに悪影響を及ぼすという問題がある。しかしながら、上記提案には、この自己渦電流の問題についても何ら示されておらず、具体化されていなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来のASGCにおいては、巻線技術に数値制御(NC)等の高度な製造技術が要求されるため、製造コストや製造工程が膨大になるという問題があった。また、この問題の解決方法として期待されるエッチング工法においても、エッチング厚みの限界に伴う抵抗や発熱の増大といった問題等が解決されていなかった。
さらに、エッチング工法における導体幅の広がりによる自己渦電流の問題についても解決されていなかった。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、発熱や自己渦等の問題がクリアーされ、しかも製造コストや製造工程が大幅に低減されたASGCを有する磁気共鳴映像装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、基材上にコイルパターンとして形成される所定巻数の導体部からなり、所定の磁場を発生する磁気共鳴映像装置の勾配コイル又はシムコイルにおいて、前記コイルパターンを形成する導体部が疎に分布している領域では、密に分布している領域よりも導体部の線幅を太くし、かつ、前記疎に分布している領域及び密に分布している領域共に導体間の溝幅を同一幅としたことを特徴とするものである。また、基材上にコイルパターンとして形成される所定巻数の導体部からなり、所定の磁場を発生する磁気共鳴映像装置の勾配コイル又はシムコイルにおいて、前記コイルパターンを、コイルターンを単位として多層に分離して直列接続するとことにより形成することを特徴とするものである。そして、本発明において当該コイルは、エッチング工法等の腐食又は切断法にて形成されるものである。
【0014】
【作用】
上述の如く構成すれば、ASGC等の磁気共鳴映像装置に用いられるコイルがエッチング工法等による腐食及び切断法にて形成されるので、製造が容易となり、また、コイルの導線部を可能な限り拡大することができるので、発熱等の問題が解消される。さらに、エッチング工法等における導体幅の広がりによる自己渦の問題も、導体部分にスリットを形成することで大幅に低減できる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施例に係る磁気共鳴映像装置の構成を示すブロック図である。同図において、静磁場磁石1は励磁用電源2にて駆動され、また主勾配コイル群3およびアクティブシールドコイル群14は勾配コイル用電源4にて駆動される。これらにより、被検体5には一様な静磁場とそれと同一方向で互いに直交する3方向に線形傾斜磁場分布を持つ勾配磁場が印加される。主勾配コイル群3とアクティブシールドコイル群14は直列接続された共通の勾配コイル用電源4にて駆動されても良く、それぞれ独立に異なった勾配コイル用電源4によって駆動されても良い。
【0016】
シムコイル群15は、シムコイル用電源16により駆動され、静磁場の均一性が調整される。送信部7は高周波信号を出力するものであり、この高周波信号はプロープ6に送られ、被検体5に高周波磁場が印加される。このとき、プロープ6は送受両用でも送受信別々に設けてもよい。また、プロープ6と主勾配コイル群3の間には、高周波シールド17が設定されている。
【0017】
プロープ6で受信された磁気共鳴信号は、受信部8で検波された後データ収集部10に転送されA/D変換後、データ処理部11に送られる。そして、上述した励磁用電源2、勾配コイル用電源4、シムコイル用電源16、送信部7、受信部8、データ収集部10はすべてシステムコントローラ9の制御下で動作するようになっている。システムコントローラ9およびデータ処理部11はコンソール12により制御されており、データ処理部11ではデータ収集部10から送られた磁気共鳴信号のフーリエ変換等が行われ、被検体内の所望原子核の密度分布などが計算される。そして、得られた画像は画像ディスプレイ13に表示される。
【0018】
次に、本発明に係る具体的な実施例を、従来例と比較しながら説明する。図2〜図4、及び図5〜図7は従来のコイル巻線方法を示す第1、及び第2の例であり、図8〜図10は本発明の第1実施例、図11〜図13は第2実施例、図14〜図15は第3実施例を示す図である。
【0019】
図2、図5、図8、図11、図14は、ASGC設計上得られる連続電流分布を実際のコイルの離散的電流へ対応づける方法を説明するための図である。各図で1〜6の領域は離散的電流(コイル導線)が密に分布している領域に対応し、7〜12の領域はコイル導線の分布が疎の領域に対応している。各ブロックの中心間隔は一般に不等問題であるが、面積は互いに等しくなるように設定する。
又、図3、図6、図9、図12、図15は、ASGCパターン全体の略図を示している。各図では、理解を助けるために4ターンの例が示されている。
【0020】
図4、図7、図10、図13、図16は、ASGCパターンの拡大図を示している。各図の領域1〜12は、前記した図2、図5、図8、図11、図14の各領域1〜12に対応している。そして、簡単のため導線間隔は等間隔とし、領域7〜12(領域a)の導線間隔は領域1〜6(領域b)の導線間隔の2倍の場合が示されている。
【0021】
次に、説明に用いる主な変数およびその意味を以下に列挙する。なお、添字のa,bはそれぞれ、領域a(7〜12)及び領域b(1〜6)に関する変数であることを示している。
【0022】
そして、図2〜4の例を「方式0」、図5〜7の例を「方式1」、図8〜10の例を「方式2」、図11〜13の例を「方式3」、図14〜16の例を「方式4」とする。
【0023】
図2〜4は、従来の線材を用いてASGCを構成する方式(方式0)である。図2からわかるように、連続電流分布の各離散ブロックの重心を線材中心に対応させる方法である。この時、領域aと領域bの導体中心間隔Wcdi,a ,Wcdi,b 及び導体部の幅Wcd,a,Wcd,bは、それぞれ以下の(2)〜(5)式のように書ける。
Wcdi,a = 2・Wwire …(2)
Wcdi,b = Wwire …(3)
Wcd,a = λ・Wwire …(4)
Wcd,b = λ・Wwire …(5)
【0024】
したがって、方式0における領域aおよび領域bの局所抵抗をそれぞれR0.a ,R0.b とすると、各抵抗は導体部の幅に逆比例(導体厚み、線材の長さは一定と仮定)するので、次の(6),(7)式で示される。
R0.a 1/(λ・Wwire) …(6)
R0.b = R0.a …(7)
【0025】
図5〜7は、エッチング方式でASGCを構成する例(方式1)を示す。図5からわかるように、連続電流分布の各離散ブロックの重心を線材中心に対応させる点は、方式0(図2)と同様である。この時方式1では、領域a、領域bの導体中心間隔Wcdi,a ,Wcdi,b 及び導体部の幅Wcd,a,Wcd,bは、それぞれ以下の(8)〜(11)式のように書ける。ただし、これ以後、導体部の中心間隔の単位をWwireとすることにする。
Wcdi,a = 2・Wwire …(8)
Wcdi,b = Wwire …(9)
Wcd,a = Wwire …(10)
Wcd,b = Wwire−We,min …(11)
【0026】
(11)式からわかるように、領域bの導体部線幅は、Wwireよりもエッチング溝幅だけ狭くなる。したがって、方式1における領域aおよび領域bの局所抵抗をそれぞれR1,a ,R1,b とすると、次の(12),(13)式が得られる。
R1,a 1/Wwire …(12)
R1,b 1/(Wwire−We,min ) …(13)
これと方式0の抵抗の比を求めると、次の(14),(15)式となる。
【0027】
(14)式からわかるように、領域aではエッチングにより抵抗が線材のパッキングファクター分だけ小さくなる。これに対して、領域bではWe,min がWwireよりも十分小さい場合は領域aと同様であるが、We,min がWwireと同程度もしくはそれ以上になるとエッチングにより抵抗が方式0のそれよりも有意に増加する。実際のASGCにおいては、コイルパターンの密な領域では、We,min がWwireと同程度になるケースが出てくるので、局所的発熱が問題となる。
【0028】
以下、このようなエッチング方式固有の問題を解決する方式(2,3,4)について詳細に説明する。図8〜10は、エッチング溝幅をどの領域においても最小値We,min とし、コイル面全体を導体部分で埋め尽す方式(方式2)を示している(図9参照)。つまりこの方法は、図8より、連続的電流分布を離散的面に対応させる方法である。この時、領域a、領域bの導体中心間隔Wcdi,a ,Wcdi,b 及び導体部の幅Wcd,a,Wcd,bは、それぞれ以下の(16)〜(19)式のように書ける。
Wcdi,a = 2・Wwire …(16)
Wcdi,b = Wwire …(17)
Wcd,a = 2・Wwire−We,min …(18)
Wcd,b = Wwire−We,min …(19)
したがって、方式2における領域aおよび領域bの局所抵抗をそれぞれR2,a ,R2,b とすると、次の(20),(21)式となる。
R2,a 1/(2・Wwire−We,min ) …(20)
R2,b 1/(Wwire−We,min ) …(21)
これと方式1の抵抗の比を求めると、(22),(23)式が得られる。
【0029】
(22)式からわかるように、領域aでは、We,min がWwireよりも十分小さい場合は抵抗が方式1のほぼ2分の1になる。一般に、導体中心間隔がn・Wwireの時、We,min がWwireよりも十分小さい場合は抵抗が方式1のほぼn分の1となり、全体の抵抗値はさらに低減される。一方で、領域bでは方式1と抵抗が変わらないことがわかる。つまり、方式2では、コイル全体の抵抗値は有意に低減されるが、コイルパターンが密な領域での局所的発熱は低減されないことになる。
【0030】
図11〜13は、コイルパターンが密な領域での局所発熱を低減するため、コイルの偶数・奇数ターンを一層目・二層目に分離して構成する方式(方式3)を示している(図11、図12参照)。図12からわかるように、一層目はコイル奇数ターンのみ、二層目はコイル偶数ターンのみ(一層目と逆まわり)で構成し、それぞれは直列接続されている。この時、領域a、領域bの導体中心間隔Wcdi,a ,Wcdi,b 及び導体部の幅Wcd,a,Wcd,bは、それぞれ以下の(24)〜(27)式のように書ける。
Wcdi,a = 4・Wwire …(24)
Wcdi,b = 2・Wwire …(25)
Wcd,a = 2・Wwire …(26)
Wcd,b = 2・Wwire−We,min …(27)
【0031】
ただし、各導体部の幅は、最大2・Wwireまで広げるものとした。したがって、方式3における領域aおよび領域bの局所抵抗をそれぞれR3,a ,R3,b とすると、次の(28),(29)式が得られる。
R3,a 1/(2・Wwire) …(28)
R3,b 1/(2・Wwire−We,min ) …(29)
これと方式1の二層並列抵抗値との比を求めると、次の(30),(31)式が得られる。
【0032】
(30)式より、領域aでは、方式1の二層並列と抵抗差はない。一方(31)式から、領域bでは、We,min がWwireと同程度の場合は、方式1二層並列と比べて有意に抵抗が低減することがわかる。つまり、方式3では、コイル全体の抵抗値はある程度の低下にとどまるものの、コイルパターンが密な領域での局所的発熱は大幅に低減されることがわかる。
一般に、nl 層にコイルターンを分離する場合に拡張すると、次の(32)〜(35)式となる。
Wcdi,a = 2・nl ・Wwire …(32)
Wcdi,b = nl ・Wwire …(33)
Wcd,a = nl ・Wwire …(34)
Wcd,b = nl ・Wwire−We,min …(35)
【0033】
ただし、各導体部の幅は、最大nl ・Wwireまで広げるものとした。したがって、領域aおよび領域bの局所抵抗をそれぞれR3,a ,R3,b とすると、次の(36),(37)式となる。
R3,a 1/(nl ・Wwire) …(36)
R3,b 1/(nl ・Wwire−We,min ) …(37)
これと方式1のnl 層並列抵抗値との比を求めると、次の(38),(39)式が得られる。
【0034】
(38)式より、領域aでは、方式1のnl 層並列と抵抗差はない。一方(39)式から、領域bでは、We,min がWwireと同程度の場合は、方式1nl 層並列と比べて大幅に(nl の分だけ)抵抗が低減することがわかる。
【0035】
図14〜16(方式4)は、方式2(導体部の埋め尽し)と方式3(コイルターン多層分離)のハイブリッド方式を示している。この時、領域a,bの導体中心間隔Wcdi,a ,Wcdi,b 及び導体部の幅Wcd,a,Wcd,bは、それぞれ以下の(40)〜(43)式のように書ける。
Wcdia,a = 4・Wwire …(40)
Wcdi,b = 2・Wwire …(41)
Wcd,a = 4・Wwire−We,min …(42)
Wcd,b = 2・Wwire−We,min …(43)
したがって、領域aおよび領域bの局所抵抗をそれぞれR4,a ,R4,b とすると、(44),(45)式が得られる。
R4,a 1/(4・Wwire−We,min ) …(44)
R4,b 1/(2・Wwire−We,min ) …(45)
これと方式1の二層並列抵抗値との比を求めると、次の(46),(47)式となる。
【0036】
(46)式より、領域aでは、We,min がWwireと同程度の場合でも、方式1の二層並列と比べて抵抗が半分近く低減することがわかる。一方(47)式から、領域bでは。We,min がWwireと同程度の場合は、方式1の二層並列よりも有意に抵抗が低減する。ただし、We,min がWwireよりも十分小さい場合は、方式1と同程度の低減にとどまる。つまり、方式4では、コイルの全体発熱およびコイルパターンが密な領域での局所的発熱ともに、大幅に低減できることがわかる。
一般に、nl 層にコイルターンを分離する場合に拡張すると、次の(48)〜(51)式が得られる。
Wcdi,a = 2・nl ・Wwire …(48)
Wcdi,b = nl ・Wwire …(49)
Wcd,a = 2・nl ・Wwire−We,min …(50)
Wcd,b = nl ・Wwire−We,min …(51)
したがって、領域aおよび領域bの局所抵抗をそれぞれR4,a ,R4,b とすると、次の(52),(53)式が得られる。
R4,a 1/(2・nl ・Wwire−We,min ) …(52)
R4,b 1/(nl ・Wwire−We,min ) …(53)
これと方式1とnl 層並列抵抗値との比を求めると、次の(54),(55)式となる。
【0037】
(54)式より、領域aでは一般に、We,min がWwireと同程度の場合でも、方式1のnl 層並列と比べて抵抗が半分近く低減することがわかる。一方(55)式から、領域bでは、We,min がWwireと同程度の場合は、方式1のnl 層並列よりも有意に(nl の分だけ)抵抗が低減する。ただし、We,min がWwireよりも十分小さい場合は、方式1と同程度の低減にとどまる。
【0038】
以上、本発明に係る3方式(方式2,3,4)について詳細に説明した。引き続き、その他の実施例について説明する。図17は、導体部のトータルの厚みtcdを一定として、偶数・奇数ターンを二層分離して構成する場合を示している。図7(a)に示す一層構造方式の抵抗をR、図7(b)の2層構造の抵抗をR’とすると、それぞれ以下の(56),(57)式のように書ける。
上記の抵抗の比を求めると、(58)式となる。
R’/R = 2・(Wcdi −We )/(2・Wcdi −We ’)…(58)
今、近似的にWe は導体部の厚みtcdに比例すると仮定すると、
We ’ = We /2 …(59)
(59)を(58)に代入して整理すると、(60)式となる。
R’/R = (1−We /Wcdi )/(1−(We /Wcdi )/4)…(60)
【0039】
上式より、エッチング幅We が導体中心間隔Wcdi よりも十分小さい時、たとえばコイルパターンが疎でWe =We,min の場合は、2層化による抵抗低減のメリットは生まれない。しかし一方、We がWcdi と同程度の大きさの時、たとえばコイルパターンが密でWe =We,min の場合は、2層化により抵抗は有意に低減されることがわかる。
【0040】
一般に、導体部のトータルの厚みtcdを一定として、コイルターンnl 層に分離して構成する場合を考えると、nl 層構造の抵抗R’は以下の(61)式のように書ける。
上記の抵抗R’とR(式(56))の比を求めると、(62)式となる。
R’/R = nl ・(Wcdi −We )/(nl ・Wcdi −We ’)…(62)
今、上述のように近似的にWe は導体部の厚みtcdに比例すると仮定すると、(63)式となる。
We ’ = We /nl …(63)
(63)式を(62)式に代入して整理すると、(64)式となる。
R’/R = (1−We /Wcdi )/(1−(We /Wcdi )/nl 2 )…(64)
【0041】
上式より、エッチング幅We が導体中心間隔Wcdi よりも十分小さい時、たとえばコイルパターンが疎でWe =We,min の場合は、nl 層化による抵抗低減のメリットは生まれない。しかし一方で、We がWcdi と同程度の大きさの時、たとえばコイルパターンが密である場合には大幅な抵抗の低減が可能となる。
さらに、エッチング工法等における導体幅の広がりによる自己渦の影響を大幅に低減する具体的な方式(スリット方式)について説明する。
【0042】
そもそも、上述した埋めつくし方式では、局所および全体の抵抗(発熱)は有意に低下するものの、導体部分の幅(1ターンあたり)が、場所によってはかなり広くなってしまう。このような導体領域においては、勾配磁場スイッチングによる渦電流の発生が無視できなくなる。すなわち、Gコイル自体が渦磁場(自己渦磁場)を発生してしまい、ASGCの本来の意義が失われてしまう。
【0043】
一般に、導体部分の幅が広いほど、自己渦磁場の強度は大きく、時定数は長くなり、また、導体部分の厚みが厚いほど、自己渦磁場の時定数は長くなることが知られている。通常のGコイルの導線の場合は、導体部分の幅がエッチング工法等のそれと比べて充分小さいために自己渦の時定数は非常に短く問題とならない。一方、エッチング工法等の場合には、自己渦の時定数がMRイメージングに対して悪影響を及ぼす範囲に入ってくる可能性が高い。
【0044】
図19は、上記自己渦磁場の強度および時定数を大幅に小さくするためのスリットを挿入した実施例を示している。図に示すように広い導体部分にスリットを挿入することにより、導体部分に発生する自己渦電流のループサイズが、スリットなしのそれと比べて相対的に小さくなるため渦電流の時定数は大幅に短くなる。この理由としては、狭い領域(空間周波数が高い領域)ほど、渦電流を形成する電子のクーロン反発力が強くなるため、その結果として渦の時定数が短くなるための考えられる。また、スリットを挿入したことにより導体部分に隙間が増えることから、自己渦磁場の強度も、スリットなしの場合のそれと比べて有意に小さくなる。スリットの挿入方法としては、(1)導体部分を流れるGコイル電流の重心(またはパターン中心)に挿入、(2)スリット挿入による抵抗の増大が最小限となるように挿入位置を制限する、(3)MRIの所望撮影領域に寄与するGコイル導体パターン部分(例えば、コイル円筒の中心部で静磁場と垂直)にのみスリットを挿入する、などといった方法が考えられる。なお、スリットの形成方法に関しては、エッチング工法等ではマスクパターン等にあらかじめ組み込んでおくことにより、容易に実現可能である。
【0045】
以上、エッチング工法によりASGCのコイルパターンを形成する際に、全体および局所の抵抗や発熱を大幅に低減する方法及び導体部分にスリットを挿入し自己渦磁場の撮影を大幅に低減する方法について具体的に説明した。説明は、Gx /Gy の典型的なコイルパターンを用いて行ったが、Gz コイルにも全く同様に適用できるのはもちろんである。なお、本発明はエッチング工法に限る必要はなく、その他の腐食及び切断法一般(メッキ法、打ち抜き法、プレス法、削り出し法、レーザーカッテイング法、熱によるカッティング法など)においても適用可能なことはいうまでもない。また当然のことながら本発明はASGCに限らず、コイル一般(従来の各勾配コイル、シムコイル、マグネット、RFプロープなど)の作成にも適用可能である。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、エッチング工法に代表される腐食及び切断法において、金属パターン埋め尽しや多層構造化により、ASGC等のコイルの全体及び局所の抵抗や発熱が大幅に低減される。さらに、エッチング工法等における導体幅の広がりによる自己渦磁場の問題も、導体部分にスリットを挿入(形成)することにより大幅に低減できる。またこれにより、製造コストや製造工程が大幅に縮小することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る磁気共鳴映像装置の構成を示すブロック図。
【図2】従来の線材を用いたコイル巻線方法を示す説明図。
【図3】従来の線材を用いたコイル巻線方法を示す説明図。
【図4】従来の線材を用いたコイル巻線方法を示す説明図。
【図5】エッチング工法を用いた従来のコイル巻線形成方法を示す説明図。
【図6】エッチング工法を用いた従来のコイル巻線形成方法を示す説明図。
【図7】エッチング工法を用いた従来のコイル巻線形成方法を示す説明図。
【図8】本発明に係るエッチング工法を用いた第1のコイル巻線方法を示す説明図。
【図9】本発明に係るエッチング工法を用いた第1のコイル巻線方法を示す説明図。
【図10】本発明に係るエッチング工法を用いた第1のコイル巻線方法を示す説明図。
【図11】本発明に係るエッチング工法を用いた第2のコイル巻線方法を示す説明図。
【図12】本発明に係るエッチング工法を用いた第2のコイル巻線方法を示す説明図。
【図13】本発明に係るエッチング工法を用いた第2のコイル巻線方法を示す説明図。
【図14】本発明に係るエッチング工法を用いた第3のコイル巻線方法を示す説明図。
【図15】本発明に係るエッチング工法を用いた第3のコイル巻線方法を示す説明図。
【図16】本発明に係るエッチング工法を用いた第3のコイル巻線方法を示す説明図。
【図17】本発明に係るエッチング工法を用いた第4のコイル巻線方法を示す説明図。
【図18】従来のアクティブシールドx勾配コイルの導線パターンを示す図。
【図19】エッチング工法における自己渦磁場防止用のスリットを説明するための図。
【符号の説明】
1 静磁場磁石
2 励磁用電源
3 主勾配コイル群
4 勾配コイル用電源
5 被検体
6 プロープ
7 送信部
8 受信部
9 システムコントローラ
10 データ収集部
11 データ処理部
12 コンソール
13 画像ディスプレイ
14 アクティブシールド勾配コイル群
15 シムコイル群
16 シムコイル用電源
17 高周波シールド
Claims (8)
- 基材上にコイルパターンとして形成される所定巻数の導体部からなり、所定の磁場を発生する磁気共鳴映像装置の勾配コイルにおいて、
前記コイルパターンを形成する導体部が疎に分布している領域では、密に分布している領域よりも導体部の線幅を太くし、かつ、前記疎に分布している領域及び密に分布している領域共に導体間の溝幅を同一幅としたことを特徴とする磁気共鳴映像装置の勾配コイル。 - 前記コイルパターンを、コイルターンを多層に分離して直列接続することにより形成することを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴映像装置の勾配コイル。
- 基材上にコイルパターンとして形成される所定巻数の導体部からなり、所定の磁場を発生する磁気共鳴映像装置の勾配コイルにおいて、
前記コイルパターンを、コイルターンを単位として多層に分離して直列接続するとことにより形成することを特徴とする磁気共鳴映像装置の勾配コイル。 - 前記多層は、2層であり、コイルの偶数ターン、奇数ターンを各層に分離して直列接続することを特徴とする請求項3記載の磁気共鳴映像装置の勾配コイル。
- 前記勾配コイルの任意の縦断面における前記導体部の各々の幅は、前記勾配コイルの任意の縦断面における連続電流密度分布関数の累積電流密度の積分値が等しくなるように離散化した各区間の幅と前記導体部の各々の幅とを対応づけたことを特徴とする請求項1又は3記載の磁気共鳴映像装置の勾配コイル。
- 前記導体部の幅が所要幅以上となる部分に切り溝を有することを特徴とする請求項1又は3記載の磁気共鳴映像装置の勾配コイル。
- 基材上にコイルパターンとして形成される所定巻数の導体部からなり、所定の磁場を発生する磁気共鳴映像装置のシムコイルにおいて、
前記コイルパターンを形成する導体部が疎に分布している領域では、密に分布している領域よりも導体部の線幅を太くし、かつ、前記疎に分布している領域及び密に分布している領域共に導体間の溝幅を同一幅としたことを特徴とする磁気共鳴映像装置のシムコイル。 - 基材上にコイルパターンとして形成される所定巻数の導体部からなり、所定の磁場を発生する磁気共鳴映像装置のシムコイルにおいて、
前記コイルパターンを、コイルターンを単位として多層に分離して直列接続するとことにより形成することを特徴とする磁気共鳴映像装置のシムコイル。
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