JP3549669B2 - 係合機能を有する多重織物地 - Google Patents
係合機能を有する多重織物地 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3549669B2 JP3549669B2 JP14718796A JP14718796A JP3549669B2 JP 3549669 B2 JP3549669 B2 JP 3549669B2 JP 14718796 A JP14718796 A JP 14718796A JP 14718796 A JP14718796 A JP 14718796A JP 3549669 B2 JP3549669 B2 JP 3549669B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- yarn
- air
- loop
- denier
- woven fabric
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両、船舶、航空機などの乗り物用の座席シート張り地、事務用椅子張り地、家庭用椅子張り地等の種々の座席シートの表皮材に適した多重織物地に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両用シート張り地、事務椅子張り地等の表皮材として、フックなどの係合素子群を有する基材本体と係合可能な布帛物が種々知られているが、従来の表皮材は、その裏面に不織布またはループ形状を有するトリコット地などをラミネートまたは縫合させることにより係合機能を持たせたものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の椅子張り用表皮材は、成形性、使用感においてある程度の満足は得られるが、上記のように表皮材に対してループ機能を有する素材をラミネート加工などにより一体化する必要があり、表皮材のコスト高につながっていた。また、表皮材の裏面に不織布等をラミネートする前に、表皮材にクッション性を付与したり、縫製時の形態安定性を確保するために発泡ウレタン樹脂等をラミネートする場合もあり、工程が繁雑となるばかりでなく、さらなるコスト高につながっていた。
【0004】
かかる積層構造を有する従来の表皮材は、異種素材で構成されているため、再資源化に際して各素材の分離分別作業が必要となり、簡易なリサイクルが困難であるため、シュレッダーダストとして埋め立て処分されているのが現状である。
【0005】
本発明の目的は、上記したような従来の表皮材の欠点を解消することであり、表皮材として使用する生地にラミネート加工などの繁雑な加工を施す必要がなく、表面と該表面の反対面に係合素子群との係合力に優れた係合機能面を有する多重織物地を提供しようとするものである。さらに、本発明は、フック形状などの係合素子を有する面ファスナー部材との着脱の繰り返しや座席用表皮材として長期間使用しても、座席シート上で表皮材がずれにくく、かつ表皮材表面の意匠性も損なわない優れた多重織物地を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、単糸デニールが3デニール以上で、下記式(1)及び(2)を満足するフィラメントからなるループを有するエア交絡糸を、経糸又は緯糸として下記式(3)を満足するように含み、該交絡糸が織物の片面にのみ現れていることを特徴とする係合機能を有する多重織物地である。
5≦(DT×DE/2)1/2 (1)
DE≦35 (2)
CF≧25 (3)
ただし、DTはフィラメントの破断強度(g/d)を、DEはフィラメントの破断伸度(%)を、CFは織物の片面に現れているエアー交絡糸の当該面に占める面積割合(%)を示す。
さらに本発明は、上記の多重織物地が座席基材に固定された係合素子群と係合されてなる乗り物用座席である。
【0007】
【発明の実施の形態】
面ファスナーの係合素子群と十分に係合するためには、多重織物地の裏面(係合機能面)に上記エア交絡糸のループが特定の状態で存在していることが重要であり、かつループを構成するフィラメントとして上記の要件を満たしていることが重要である。
【0008】
ループを形成するフィラメントの単糸デニールが3デニール未満では面ファスナーの係合素子群との係合において十分な係合強力が得られにくく、係合素子との繰り返し脱着中にフィラメントが切断しすくなる。従って、このような不都合が顕著に現れなければ、マルチフィラメント中に3デニール未満の単糸デニールを有するフィラメントがある程度混在していても差支えない。また、単糸デニールが太すぎると係合素子との係合性が不良となるので、好ましくは20デニール以下、より好ましくは15デニール以下、さらに好ましくは12デニール以下である。
上記(1)式を満足しない場合は、たとえフィラメント単糸デニールが3デニール以上であっても十分な係合強力を期待することができない。また、上記(2)式を満足しない場合は、係合後に表皮材にかかる外部応力(ズリ応力、引張応力など)によりループを構成するフィラメントが伸張し、座席シート上で徐々に表皮材がずれて審美性が低下したり、表皮材を張り直すために着脱を繰り返すと係合性が低下してくるので好ましくない。
【0009】
ここでエア交絡糸とは、上記の側糸用マルチフィラメントと他のマルチフィラメントとを交絡用ノズル内に導き、ノズル内にエアを噴出させてこれらマルチフィラメントを混繊・交絡させた糸条のことである。オーバーフィードを上げればループ毛羽の大きさ、量ともに増える。これらループ毛羽はループの端がエア交絡のため束縛されており、面ファスナーのフックと係合するのに適している。
【0010】
また、エア交絡の条件は下記式(4)(5)を満足することが重要である。側糸のオーバーフィードが50%未満であればループ毛羽の大きさ、量が不足し、面ファスナーのフック面との係合において係合機能面表面にでるループ毛羽が少なくなるため十分な係合強力が得られない。また、エア交絡時のエア圧が1.5kg/cm2 未満であれば交絡不足となりループ毛羽の端が自由となったり、あるいはループ毛羽の形態にもならない。
OF≧50 (4)
AP≧1.5 (5)
[ただし、OFは側糸のオーバーフィード(%)、APはエア交絡時のエア圧 (kg/cm2 )を示す。]
【0011】
エア交絡糸を構成する芯糸については、強伸度、単糸デニールにおいて特に制約はないが、単糸デニールが大きすぎると交絡処理時の交絡部が形成されにくく、交絡されていても係合素子との脱着により交絡部が破壊されやすいので、より強固な交絡性を得るためには、側糸を構成するフィラメントの単糸デニール(3デニール以上)を3デニール以上越えない単糸デニールのフィラメントを芯糸用に使用することが好ましい。
また、芯糸のオーバーフィード率も格別に制約はないが、側糸のオーバーフィード率との差を50〜100%としておくほうが、係合素子との係合性が良好なループが形成されるので好ましい。
【0012】
かかる条件で得られるエア交絡糸において形成されるループのループの高さは1〜3mm程度が係合素子との係合性の点から好ましい。ループ個数は余り多くないほうが良い。ループの個数が多いとループ密度が高いために後述するようなサイズの係合素子がループにかかりにくくなり、かえって接合性が低下する場合がある。また、ループが多い交絡糸は、整経性、製織性も著しく低下し、糸製造のコスト的にも不利であるので、ループ個数としては、上記のループ高さをもつループが200個以下/10cm、特に、100個以下/10cm存在していることが望ましい。
本発明の多重織物地は、座席の表皮材に使用される広巾の織物であり、織物全面になるべく均質に係合機能を付与させることが重要である。そして、そのために上記のようなループ個数を適度に抑えたエア交絡糸を用い、打ち込み本数をある程度以上多くするというのが本発明の特徴のひとつである。
【0013】
また、面ファスナーのフックにより係合されたエア交絡糸は、外からの応力により張力がかかり、使用面にこれらエア交絡糸が存在すると使用面の変形を伴ってしまうので、エア交絡糸を係合機能面のみに現れるよう製織することが重要であり、しかも、外からの応力により使用面の変形を伴わないよう多重織物地とすることが重要である。
このような構造の本発明の多重織物は、使用面から見てエアー交絡糸が常に他の糸の下にあるように製織する。例えば、図1のような緯二重織では、緯糸2、4、6、8、10に使用する糸は、経糸及び緯糸1、3、5、7、9により使用面に出ることはない。また、緯糸1、3、5、7、9は係合機能面に出ない。そして、エアー交絡糸は係合機能面側へなるべく多く現れるよう製織する。
また、本発明においては、エア交絡糸を多重織物地の経糸または緯糸として前記式(3)を満足することが重要である。CF値が25未満では、係合素子との十分な係合性が達成されない。上限は特にないが、経及び緯のいずれにおいてもCF値が90以下が好ましい。エア交絡糸は、経または緯のいずれに使用してもさしつかえないが、整経性、製織性等の点から緯に使用することが好ましい。
【0014】
本発明の多重織物地の片面に現れた係合機能を有するループは、種々の形状の係合素子との係合が可能ではあり、具体的な係合素子の形状としては、例えば、やじり形、2段やじり形、リブ付やじり形、鉤形、多段鉤形などがあがれられるが、係合性の観点からやじり型、2段やじり型、リブ付やじり型などのやじり形状の係合素子が好ましい。かかる形状を有する係合素子としては、例えば、KMファスナーレール((株)クラレ製)が挙げられる。
また、係合素子のサイズは、高さ1〜3mm、やじり部の最大幅0.7〜2mm、素子密度40〜300個/cm2 が好ましい。
本発明の多重織物地は、係合素子を有する基材と係合させた場合、係合強力が1.3kg/cm2 (シェアー強力)以上、及び800g/cm(ピール強力)以上という優れた係合性を有するため、係合後の使用中に表皮材に作用する種々の応力によっても表皮材がずれることなく、繰り返し着脱しても表面への影響がでないというメリットを有する。
【0015】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は何等これらに限定されるものではない。
なお、実施例中に記載した各物性は以下の方法により測定した値である。
[ループ高さ]
糸側面を拡大し、図2に示すように糸の中心からループまでの距離を示した。
[ループ個数]
図3に示すようにループ高さが1〜3mmのループの個数を糸長10cm当たりの個数で示した。図中イはループとしてカウントし、ロはカウントしないものである。ただし、カウントする場合、図中のハのようにループ形態として高さ0.5mmの幅で複数のフィラメントがまとまった形態ものは1つのループとしてカウントする。
[表面(裏面)に現れているエアー交絡糸の面積割合]
生地の表面に10cm四方の枠を書き、この枠が入るように写真(必要に応じて拡大写真)を撮る。この写真において、エアー交絡糸の占める面積を測り、該面積の枠内全面積に対する割合(%)で表した。
[破断強力、破断伸度]
JIS L−1017に準拠して測定した。
[係合強力]
JIS L−3416に準拠して測定した。
面ファスナーのフック面としては、係合素子の形状が2段やじり形状で、係合素子密度44個/cm2 、素子高さ約1.5mm、素子厚み約0.6mm、最大やじり幅1mmのKMファスナーレールX6320−3(クラレ製)を使用した。
[オーバーフィード率]
エア交絡させる糸の供給量を表す。エア交絡糸の捲き取り速度をV0、エア交絡させる糸の供給速度をV1とするとエア交絡させる糸のオーバーフィードOFは次式で表される。
OF=(V1−V0)/V0
【0016】
実施例1
芯糸として150デニール48フィラメントのマルチフィラメントを用い、オーバーフィード10%にてノズルに供給し、また側糸に75デニール24フィラメントのマルチフィラメント(DT3.5g/d、DE23%)を2本用い、オーバーフィード70%にてノズルに供給して、エア圧3kg/cm2 にて交絡させてエア交絡糸(TL1)を得た。得られた交絡糸におけるループ高さ1〜3mmのループ個数は82個/10cmであった。図1の組織、表1の糸使いで製織し、多重織物地を得た。得られた生地は使用面にエア交絡糸が現れず、係合機能面のみエア交絡糸が現れていた。生地の係合強力は表2に示した通りで、生地は十分な係合強力を持ち、また剥離に対して使用面の表情になんら影響を与えなかった。
【0017】
比較例1
芯糸として150デニール48フィラメントのマルチフィラメントを用い、オーバーフィード10%にてノズルに供給し、また側糸に75デニール36フィラメントのマルチフィラメント(DT3.4g/d、DE24%)を2本用い、オーバーフィード70%にてノズルに供給して、エア圧3kg/cm2 にて交絡させてエア交絡糸(TL2)を得た。得られた交絡糸におけるループ高さ1〜3mmのループ個数は73個/10cmであった。図1の組織、表1の糸使いで製織し、多重織物地を得た。得られた生地は使用面にエア交絡糸が現れず、係合機能面のみニットヤーンが現れていたが、生地の係合強力は表2に示した通りで、生地は係合強力が不十分であった。
【0020】
比較例2
芯糸として150デニール48フィラメントのマルチフィラメントを用い、オーバーフィード10%にてノズルに供給し、また側糸に75デニール24フィラメントのマルチフィラメント(DT3.5g/d、DE23%)を2本用い、オーバーフィード70%にてノズルに供給して、エア圧3kg/cm2にて交絡させてエア交絡糸(TL1)を得た。得られた交絡糸におけるループ高さ1〜3mmのループ個数は82個/10cmであった。図1の組織、表1の糸使いで製織し、多重織物地を得た。得られた生地は使用面にエア交絡糸が現れず、係合機能面のみエア交絡糸が現れていた。生地の係合強力は表2に示したとおりで、生地は係合強力が不十分であった。
【0021】
【表1】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1、比較例1〜2で用いた織組織図である。
【図2】エアー交絡糸のループ高さを説明するための交絡糸の概略図。
【図3】エアー交絡糸のループ個数の測定法を説明するための交絡糸の概略図。
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両、船舶、航空機などの乗り物用の座席シート張り地、事務用椅子張り地、家庭用椅子張り地等の種々の座席シートの表皮材に適した多重織物地に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両用シート張り地、事務椅子張り地等の表皮材として、フックなどの係合素子群を有する基材本体と係合可能な布帛物が種々知られているが、従来の表皮材は、その裏面に不織布またはループ形状を有するトリコット地などをラミネートまたは縫合させることにより係合機能を持たせたものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の椅子張り用表皮材は、成形性、使用感においてある程度の満足は得られるが、上記のように表皮材に対してループ機能を有する素材をラミネート加工などにより一体化する必要があり、表皮材のコスト高につながっていた。また、表皮材の裏面に不織布等をラミネートする前に、表皮材にクッション性を付与したり、縫製時の形態安定性を確保するために発泡ウレタン樹脂等をラミネートする場合もあり、工程が繁雑となるばかりでなく、さらなるコスト高につながっていた。
【0004】
かかる積層構造を有する従来の表皮材は、異種素材で構成されているため、再資源化に際して各素材の分離分別作業が必要となり、簡易なリサイクルが困難であるため、シュレッダーダストとして埋め立て処分されているのが現状である。
【0005】
本発明の目的は、上記したような従来の表皮材の欠点を解消することであり、表皮材として使用する生地にラミネート加工などの繁雑な加工を施す必要がなく、表面と該表面の反対面に係合素子群との係合力に優れた係合機能面を有する多重織物地を提供しようとするものである。さらに、本発明は、フック形状などの係合素子を有する面ファスナー部材との着脱の繰り返しや座席用表皮材として長期間使用しても、座席シート上で表皮材がずれにくく、かつ表皮材表面の意匠性も損なわない優れた多重織物地を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、単糸デニールが3デニール以上で、下記式(1)及び(2)を満足するフィラメントからなるループを有するエア交絡糸を、経糸又は緯糸として下記式(3)を満足するように含み、該交絡糸が織物の片面にのみ現れていることを特徴とする係合機能を有する多重織物地である。
5≦(DT×DE/2)1/2 (1)
DE≦35 (2)
CF≧25 (3)
ただし、DTはフィラメントの破断強度(g/d)を、DEはフィラメントの破断伸度(%)を、CFは織物の片面に現れているエアー交絡糸の当該面に占める面積割合(%)を示す。
さらに本発明は、上記の多重織物地が座席基材に固定された係合素子群と係合されてなる乗り物用座席である。
【0007】
【発明の実施の形態】
面ファスナーの係合素子群と十分に係合するためには、多重織物地の裏面(係合機能面)に上記エア交絡糸のループが特定の状態で存在していることが重要であり、かつループを構成するフィラメントとして上記の要件を満たしていることが重要である。
【0008】
ループを形成するフィラメントの単糸デニールが3デニール未満では面ファスナーの係合素子群との係合において十分な係合強力が得られにくく、係合素子との繰り返し脱着中にフィラメントが切断しすくなる。従って、このような不都合が顕著に現れなければ、マルチフィラメント中に3デニール未満の単糸デニールを有するフィラメントがある程度混在していても差支えない。また、単糸デニールが太すぎると係合素子との係合性が不良となるので、好ましくは20デニール以下、より好ましくは15デニール以下、さらに好ましくは12デニール以下である。
上記(1)式を満足しない場合は、たとえフィラメント単糸デニールが3デニール以上であっても十分な係合強力を期待することができない。また、上記(2)式を満足しない場合は、係合後に表皮材にかかる外部応力(ズリ応力、引張応力など)によりループを構成するフィラメントが伸張し、座席シート上で徐々に表皮材がずれて審美性が低下したり、表皮材を張り直すために着脱を繰り返すと係合性が低下してくるので好ましくない。
【0009】
ここでエア交絡糸とは、上記の側糸用マルチフィラメントと他のマルチフィラメントとを交絡用ノズル内に導き、ノズル内にエアを噴出させてこれらマルチフィラメントを混繊・交絡させた糸条のことである。オーバーフィードを上げればループ毛羽の大きさ、量ともに増える。これらループ毛羽はループの端がエア交絡のため束縛されており、面ファスナーのフックと係合するのに適している。
【0010】
また、エア交絡の条件は下記式(4)(5)を満足することが重要である。側糸のオーバーフィードが50%未満であればループ毛羽の大きさ、量が不足し、面ファスナーのフック面との係合において係合機能面表面にでるループ毛羽が少なくなるため十分な係合強力が得られない。また、エア交絡時のエア圧が1.5kg/cm2 未満であれば交絡不足となりループ毛羽の端が自由となったり、あるいはループ毛羽の形態にもならない。
OF≧50 (4)
AP≧1.5 (5)
[ただし、OFは側糸のオーバーフィード(%)、APはエア交絡時のエア圧 (kg/cm2 )を示す。]
【0011】
エア交絡糸を構成する芯糸については、強伸度、単糸デニールにおいて特に制約はないが、単糸デニールが大きすぎると交絡処理時の交絡部が形成されにくく、交絡されていても係合素子との脱着により交絡部が破壊されやすいので、より強固な交絡性を得るためには、側糸を構成するフィラメントの単糸デニール(3デニール以上)を3デニール以上越えない単糸デニールのフィラメントを芯糸用に使用することが好ましい。
また、芯糸のオーバーフィード率も格別に制約はないが、側糸のオーバーフィード率との差を50〜100%としておくほうが、係合素子との係合性が良好なループが形成されるので好ましい。
【0012】
かかる条件で得られるエア交絡糸において形成されるループのループの高さは1〜3mm程度が係合素子との係合性の点から好ましい。ループ個数は余り多くないほうが良い。ループの個数が多いとループ密度が高いために後述するようなサイズの係合素子がループにかかりにくくなり、かえって接合性が低下する場合がある。また、ループが多い交絡糸は、整経性、製織性も著しく低下し、糸製造のコスト的にも不利であるので、ループ個数としては、上記のループ高さをもつループが200個以下/10cm、特に、100個以下/10cm存在していることが望ましい。
本発明の多重織物地は、座席の表皮材に使用される広巾の織物であり、織物全面になるべく均質に係合機能を付与させることが重要である。そして、そのために上記のようなループ個数を適度に抑えたエア交絡糸を用い、打ち込み本数をある程度以上多くするというのが本発明の特徴のひとつである。
【0013】
また、面ファスナーのフックにより係合されたエア交絡糸は、外からの応力により張力がかかり、使用面にこれらエア交絡糸が存在すると使用面の変形を伴ってしまうので、エア交絡糸を係合機能面のみに現れるよう製織することが重要であり、しかも、外からの応力により使用面の変形を伴わないよう多重織物地とすることが重要である。
このような構造の本発明の多重織物は、使用面から見てエアー交絡糸が常に他の糸の下にあるように製織する。例えば、図1のような緯二重織では、緯糸2、4、6、8、10に使用する糸は、経糸及び緯糸1、3、5、7、9により使用面に出ることはない。また、緯糸1、3、5、7、9は係合機能面に出ない。そして、エアー交絡糸は係合機能面側へなるべく多く現れるよう製織する。
また、本発明においては、エア交絡糸を多重織物地の経糸または緯糸として前記式(3)を満足することが重要である。CF値が25未満では、係合素子との十分な係合性が達成されない。上限は特にないが、経及び緯のいずれにおいてもCF値が90以下が好ましい。エア交絡糸は、経または緯のいずれに使用してもさしつかえないが、整経性、製織性等の点から緯に使用することが好ましい。
【0014】
本発明の多重織物地の片面に現れた係合機能を有するループは、種々の形状の係合素子との係合が可能ではあり、具体的な係合素子の形状としては、例えば、やじり形、2段やじり形、リブ付やじり形、鉤形、多段鉤形などがあがれられるが、係合性の観点からやじり型、2段やじり型、リブ付やじり型などのやじり形状の係合素子が好ましい。かかる形状を有する係合素子としては、例えば、KMファスナーレール((株)クラレ製)が挙げられる。
また、係合素子のサイズは、高さ1〜3mm、やじり部の最大幅0.7〜2mm、素子密度40〜300個/cm2 が好ましい。
本発明の多重織物地は、係合素子を有する基材と係合させた場合、係合強力が1.3kg/cm2 (シェアー強力)以上、及び800g/cm(ピール強力)以上という優れた係合性を有するため、係合後の使用中に表皮材に作用する種々の応力によっても表皮材がずれることなく、繰り返し着脱しても表面への影響がでないというメリットを有する。
【0015】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は何等これらに限定されるものではない。
なお、実施例中に記載した各物性は以下の方法により測定した値である。
[ループ高さ]
糸側面を拡大し、図2に示すように糸の中心からループまでの距離を示した。
[ループ個数]
図3に示すようにループ高さが1〜3mmのループの個数を糸長10cm当たりの個数で示した。図中イはループとしてカウントし、ロはカウントしないものである。ただし、カウントする場合、図中のハのようにループ形態として高さ0.5mmの幅で複数のフィラメントがまとまった形態ものは1つのループとしてカウントする。
[表面(裏面)に現れているエアー交絡糸の面積割合]
生地の表面に10cm四方の枠を書き、この枠が入るように写真(必要に応じて拡大写真)を撮る。この写真において、エアー交絡糸の占める面積を測り、該面積の枠内全面積に対する割合(%)で表した。
[破断強力、破断伸度]
JIS L−1017に準拠して測定した。
[係合強力]
JIS L−3416に準拠して測定した。
面ファスナーのフック面としては、係合素子の形状が2段やじり形状で、係合素子密度44個/cm2 、素子高さ約1.5mm、素子厚み約0.6mm、最大やじり幅1mmのKMファスナーレールX6320−3(クラレ製)を使用した。
[オーバーフィード率]
エア交絡させる糸の供給量を表す。エア交絡糸の捲き取り速度をV0、エア交絡させる糸の供給速度をV1とするとエア交絡させる糸のオーバーフィードOFは次式で表される。
OF=(V1−V0)/V0
【0016】
実施例1
芯糸として150デニール48フィラメントのマルチフィラメントを用い、オーバーフィード10%にてノズルに供給し、また側糸に75デニール24フィラメントのマルチフィラメント(DT3.5g/d、DE23%)を2本用い、オーバーフィード70%にてノズルに供給して、エア圧3kg/cm2 にて交絡させてエア交絡糸(TL1)を得た。得られた交絡糸におけるループ高さ1〜3mmのループ個数は82個/10cmであった。図1の組織、表1の糸使いで製織し、多重織物地を得た。得られた生地は使用面にエア交絡糸が現れず、係合機能面のみエア交絡糸が現れていた。生地の係合強力は表2に示した通りで、生地は十分な係合強力を持ち、また剥離に対して使用面の表情になんら影響を与えなかった。
【0017】
比較例1
芯糸として150デニール48フィラメントのマルチフィラメントを用い、オーバーフィード10%にてノズルに供給し、また側糸に75デニール36フィラメントのマルチフィラメント(DT3.4g/d、DE24%)を2本用い、オーバーフィード70%にてノズルに供給して、エア圧3kg/cm2 にて交絡させてエア交絡糸(TL2)を得た。得られた交絡糸におけるループ高さ1〜3mmのループ個数は73個/10cmであった。図1の組織、表1の糸使いで製織し、多重織物地を得た。得られた生地は使用面にエア交絡糸が現れず、係合機能面のみニットヤーンが現れていたが、生地の係合強力は表2に示した通りで、生地は係合強力が不十分であった。
【0020】
比較例2
芯糸として150デニール48フィラメントのマルチフィラメントを用い、オーバーフィード10%にてノズルに供給し、また側糸に75デニール24フィラメントのマルチフィラメント(DT3.5g/d、DE23%)を2本用い、オーバーフィード70%にてノズルに供給して、エア圧3kg/cm2にて交絡させてエア交絡糸(TL1)を得た。得られた交絡糸におけるループ高さ1〜3mmのループ個数は82個/10cmであった。図1の組織、表1の糸使いで製織し、多重織物地を得た。得られた生地は使用面にエア交絡糸が現れず、係合機能面のみエア交絡糸が現れていた。生地の係合強力は表2に示したとおりで、生地は係合強力が不十分であった。
【0021】
【表1】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1、比較例1〜2で用いた織組織図である。
【図2】エアー交絡糸のループ高さを説明するための交絡糸の概略図。
【図3】エアー交絡糸のループ個数の測定法を説明するための交絡糸の概略図。
Claims (3)
- 単糸デニールが3デニール以上で、下記式(1)及び(2)を満足するフィラメントからなるループを有するエア交絡糸を、経糸又は緯糸として下記式(3)を満足するように含み、該交絡糸が織物の片面にのみ現れていることを特徴とする係合機能を有する多重織物地。
5≦(DT×DE/2)1/2 (1)
DE≦35 (2)
CF≧25 (3)
ただし、DTはフィラメントの破断強度(g/d)を、DEはフィラメントの破断伸度(%)を、CFは織物の片面に現れているエアー交絡糸の当該面に占める面積割合(%)を示す。 - 請求項1に記載の多重織物地からなる座席用表皮材。
- 請求項2に記載の表皮材が座席基材に固定された係合素子群と係合されてなる乗り物用座席。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14718796A JP3549669B2 (ja) | 1996-06-10 | 1996-06-10 | 係合機能を有する多重織物地 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP14718796A JP3549669B2 (ja) | 1996-06-10 | 1996-06-10 | 係合機能を有する多重織物地 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH09324338A JPH09324338A (ja) | 1997-12-16 |
JP3549669B2 true JP3549669B2 (ja) | 2004-08-04 |
Family
ID=15424541
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP14718796A Expired - Fee Related JP3549669B2 (ja) | 1996-06-10 | 1996-06-10 | 係合機能を有する多重織物地 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3549669B2 (ja) |
-
1996
- 1996-06-10 JP JP14718796A patent/JP3549669B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH09324338A (ja) | 1997-12-16 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP0618320B1 (en) | Loop-type textile fastener fabric, method of producing same and process of treating same | |
US5214942A (en) | Loop-type textile fastener fabric and method of producing same | |
EP0980308B1 (en) | Dimensionally stable tufted carpet | |
US4739635A (en) | Connector assembly and composite therefor | |
JP2006281545A (ja) | 係止材用積層不織布 | |
WO2013047098A1 (ja) | 面ファスナー及び面ファスナー用係合素子の組み合わせ | |
JP2022501083A (ja) | 取り外し可能なカーペット | |
JP4219364B2 (ja) | 座席用シート材 | |
JP5013284B1 (ja) | パイルが表編地の表面に突出しているダブルラッセル編物 | |
KR100235124B1 (ko) | 면 패스너 암재 | |
US5119643A (en) | Connection assembly and composite therefor | |
JP2006265782A (ja) | 係止用長繊維不織布 | |
CA2669525C (en) | Sheet material | |
JP3549669B2 (ja) | 係合機能を有する多重織物地 | |
JP3132775B2 (ja) | フック・ループ混在型面ファスナーおよびその製造方法 | |
JP4366539B2 (ja) | 雄型面ファスナーと装飾布帛 | |
US6386242B1 (en) | Hook fastener member to minimize damage to loops | |
JP3630861B2 (ja) | 係合機能を有する多重織物地 | |
JPH0827657A (ja) | 面ファスナー雌材 | |
JPH1033214A (ja) | 係合機能を有するトリコット地 | |
JP3590487B2 (ja) | 係合機能を有するインレイ編地及びその製造方法 | |
JPH1033212A (ja) | 係合機能を有する多重織物地 | |
JPH09289907A (ja) | 係合機能を有するトリコット地 | |
EP4350061A1 (en) | Upholstery material for seat and seat including same | |
JP2004285555A (ja) | 係合機能を有するインレイ編地及びその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20040406 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20040421 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |