JP3547993B2 - 金属表面へのフッ素系重合体薄膜形成方法 - Google Patents

金属表面へのフッ素系重合体薄膜形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は金属の表面処理方法、とりわけ、孔や亀裂等の隙間を有する金属表面皮膜の前記隙間を利用してフッ素系重合体薄膜を形成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属製品(部品、部材などを含む)において、耐摩耗性、耐食性、面粗度(摩擦係数)の改善、着色などのため、表面を改質する方法は多数存在している。
たとえば、アルミニウム、マグネシウム、チタニウムまたはそれらの合金においては、酸を主成分とする電解液により陽極処理することにより陽極酸化皮膜を生成させている。また、鉄その他の金属に対して、電気的または化学的なめっきを施すことが行われており、たとえば、クロムめっきを施すことにより、0.25μm以上のクロム膜を生成させている。また、鉄系その他の金属に対して化成処理も行われており、たとえば、クロム酸または重クロム酸を主成分とする酸より処理することにより1μm以下のクロメート膜を生成させたりしている。
【0003】
しかし、かかる表面処理された皮膜ないし層(以下表面処理皮膜という)は、性質上微細なポア、孔、亀裂、凹凸などの隙間部分が存在する。たとえば、陽極酸化皮膜においてはセル中に100nm以下の微細なポアが皮膜成長過程で生成される。また、アルミニウムやマグネシウムの陽極酸化皮膜ではブレイクダウンによってランダムな孔や凹凸が発生するし、めっきや化成処理においては、皮膜生成時のストレスから亀裂、割れが発生する。たとえば、クロムめっき膜やクロメート膜にあっては、1μm以下の孔や亀裂が不可避的に存在する。
このため、耐摩耗性、耐食性、面粗度などの改善は十分とは言えなかった。また、前記微細な孔や亀裂が存在するため、これに他の物質が侵入付着する現象が生ずる。これは、たとえば、合成樹脂、ゴムなど可塑物の各種加工のための金型、金属あるいは非金属の塑性加工のための各種金型などにおいて、表面処理皮膜に被加工材料が付着したりこびりつき、それによって製品の形状、寸法の精度が低下したり、予期しない変形、破損などが生ずるという問題で代表される。
【0004】
たとえば、半導体製造のための樹脂封じ用パッケージ金型においては、樹脂がキャビテイ面にこびりついてしまったり、ゴム成形型や合成樹脂容器類成形型においては、キャビテイ面に材料が付着してしまったりする。リードフレームの足の曲げ型においては、鉛系やパラジウム系の金属がこびりついて、足の角度が変わってしまったりする。
また、滑動用、摺動用のレールや走路製品においては、耐摩耗性の改善と物品の動きを光線で追尾しやすくするためクロメート膜を施すが、前記のような亀裂や孔の存在によって、使用中に摩耗しやすいため、前記機能を充分に発揮できなくなる問題があった。
【0005】
このような表面処理被膜の性能向上対策として、従来、表面処理皮膜にフッ素系の樹脂膜を施すことが提案されている。たとえば、アルミニウムの陽極酸化皮膜の表面にポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEとする)のごときフッ素炭素樹脂を被膜する方法がある。具体的には、陽極酸化皮膜のポアや孔に、温水中に分散させた2μm以下のフッ素炭素樹脂を含浸させ、封孔処理する手法である。また、クロムめっき膜にPTFEを含浸する方法も提案されており、具体的には、逆電気通電法によりめっき膜に生じた亀裂や孔を3〜10μmの幅に拡大させ、200℃程度に加熱した炉中で、圧力下、PTFEを含浸し、冷却する手法である。
【0006】
しかし、アルミニウムの陽極酸化皮膜の孔径は、ポアワイドを行なっても、100nm以下であるのに対して、PTFEの粒子径は小さいものでも数μmであるため、孔に含浸せず、表面に乗っている状態になるだけである。このため、長時間の使用や苛酷な使用では剥離してしまうという問題があった。
また、めっき膜の孔径や亀裂は一般1μm以下であり、これをPTFEの粒子径に対応するように逆電解処理によって拡げると、厚さが3〜20μmといった薄いめっき層では、その逆電解処理時に、PTFEを含浸し得る幅や孔径に至る以前に孔や亀裂が素地に到達してしまい、それにより、腐食が生じたり、膜の剥離等の不具合が生じる問題があった。
したがって、従来では、薄い表面処理皮膜に強固なフッ素系の樹脂膜を施すことは困難とされていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記のような問題点を解決するために提案されたもので、その目的とするところは、表面処理皮膜を有する金属製品の表面に、確実かつ強固にフッ素重合体膜を形成することができ、耐摩耗性、耐食性、滑り性、電気絶縁性、他物付着防止性などの性質を大幅に向上することができる方法を提供することにある。 本発明が適用される金属製品は、可塑物の各種加工のための金型、金属類の加工のための各種金型、滑動部品、化学機器などが含まれる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明の金属表面へのフッ素系重合体薄膜形成法は、金属の表面にポア、孔、凹凸、割れなどの隙間を有する表面処理皮膜を施し、前記ポア、孔、凹凸、割れなどの含浸隙間を有する表面処理皮膜にフルオロカーボン鎖を有するフッ素系モノマーを含浸させ、次いでこの表面処理膜に低エネルギー電子線を照射することによりフッ素の重合体薄膜を成膜し、さらに、熱処理を施すことを特徴としている。
【0009】
本発明において、金属は金型または滑動部品であり、表面処理皮膜とは、陽極酸化皮膜、化成皮膜、めっき、イオンプレーティング膜、蒸着膜等を単独又は2以上組み合わせたものを含んでいる。 前記カーボン鎖を有するフッ素系モノマーの代表的なものは、パーフルオロアルキルエチルメタクリレート(ペルフルオロアルキルエチルメタクリレートとも称される)である。このパーフルオロアルキルエチルメタクリレートとしては、パーフルオロアルキル基Rf=C13〜C1225を持つものが好適である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基いて詳細に説明する。
図1は本発明による金属表面へのフッ素系重合体薄膜形成方法を模式的に示している。
本発明は、まず、図1(a)のように、金型、滑動部品など所望の金属1の表面に表面処理皮膜2を生成させる。この表面処理法は、形成された表面処理皮膜2が、ポア、孔、凹凸、割れ、亀裂など含浸用の隙間を有していることが必要である。なんとなれば、本発明は、かかる隙間3を機械的バインダーすなわち錨着足として利用するからである。図1(b)は隙間3が孔の例を示している。
しかし、この条件を満たしていれば表面処理法は限定はない。代表的なものとしては、アルミニウムやその合金の陽極処理により生成する陽極酸化皮膜(アルマイト膜)、マグネシウムやその合金チタニウムおよびその合金などの陽極処理より生成する膜、工業用クロムめっき膜、クロメート処理膜、装飾用クロムめっき膜、ニッケル膜、さらにはセラミック膜、合成樹脂膜などが挙げられる。
【0011】
次いで、本発明は、前記表面処理皮膜2の隙間3にフルオロカーボン鎖を有するフッ素系モノマー4を含浸させる。隙間3に含浸したフッ素系モノマー4はその湿潤性により表面処理皮膜2の上で液膜40となる。
本発明でフルオロカーボン鎖を有するフッ素系モノマー4を使用するのは、このフッ素系モノマーは、表面張力が低くかつ流動性が良いため、表面処理皮膜2の微細な隙間3、すなわち微細な孔や亀裂、ポア、凹凸のすみずみまで確実に浸透し、目ずめできるからである。フルオロカーボン鎖を疎水性基として有するフッ素系モノマーは、コンパクトにならんだ−CFにより、水溶液の表面張力を15〜20dyn/cm程度まで低下させることができる。また、強いC−F結合力によって化学的および熱的に安定しており、高温でも分解されにくく、酸化されにくい。
【0012】
本発明で使用されるフルオロカーボン鎖を疎水性基として有するフッ素系モノマーの代表的なものとしては、パーフルオロアルキルエチルメタクリレートが挙げられる。
このパーフルオロアルキルエチルメタクリレートは、下記一般式(1)で表されるパーフルオロアルキル基Rfを持つもので、パーフルオロアルキル基Rfは下記の一般式(2)で表される。その代表的なものとしては、Rf=C13、Rf=C17などがあるが、Rf=C13〜C1225のものを使用することができる。
【化1】
Figure 0003547993
【化2】
Figure 0003547993
【0013】
前記パーフルオロアルキルエチルメタクリレートのモノマーは、透明ないし黄色半透明の液体で、沸点94〜155℃、密度約1.59〜1.66(25℃)、分子量532〜580である。この薬液は、表面張力を大幅に低下させているし、濡れ性と浸透性がよいため、100nm以下といった微細な孔や亀裂などに対してもすみずみまで浸透し、工業用クロムめっき膜などに含浸させる場合にも、逆電気通電法によりめっき膜に生じた亀裂や孔を拡大させる必要はない。
【0014】
フルオロカーボン鎖を疎水性基として有するフッ素系モノマー4を含浸させる方法は任意であり、刷毛塗り、吹付けなどであってもよいが、より効果的なものは浸漬法である。この浸漬法は、たとえば、図1(c)のように、槽体5にフッ素系モノマー4を収容して常温から沸点以下の温度に保持しておき、表面処理皮膜2を施してある金属1を、フッ素系モノマー4に浸漬させればよい。別法として、真空含浸法を採用することも推奨される。この方法は、真空容器を使用して被処理物を装入した状態で容器内を減圧し、この状態でフッ素系モノマーを供給し所定時間保持する方法であり、含浸度合いを向上することができる。これらの方法により隙間3にフッ素系モノマー4が十分に含浸させられる。
【0015】
本発明におけるパーフルオロアルキルエチルメタクリレートの使用温度は、15〜85℃、より好ましくは20〜60℃の範囲である。前記一般式のRfのnの数によって凝固点、沸点、引火点が異なるが、本発明において好適な範囲として使用するのが、n=6〜12なので、15℃以下であると、パーフルオロアルキルエチルメタクリレートは、凝固が始まり、使用不可能になるので不適当である。しかし、85℃以上では、沸点(94〜155℃)と引火点(100〜150℃)が近いので、作業そのものが危険であるため、不可である。
浸漬法を採用した場合、浸漬時間は10〜3600秒、好ましくは180〜1800秒である。10秒以下では要求を満足する量の含浸できず、3600秒以上では過飽和となり、表面スマットの発生の原因となるため不適当である。
【0016】
次いで、本発明は、前記のようにフルオロカーボン鎖を疎水性基として有するフッ素系モノマー4を含浸させた被処理物の前記含浸面に対して、電子線照射装置6により低エネルギー電子線を照射する。
このように電子線照射装置6を用いるのは、フッ素系モノマーを、熱などを使用せずに短時間でフッ素炭素樹脂化させるためである。
【0017】
ここで、電子線照射装置6とは、真空チャンバーにあるリニアフィラメントに高圧電流を通すことにより熱電子を放出させ、この電子を電子加速器により加速して、カーテン状の高速の電子ビームにし、被処理物の含浸面にカーテン状に照射する機能や特性を有するものである。
この電子線照射装置6による低エネルギー電子線の照射条件は、加速電圧50〜250KV、加速電流10〜100mA、1〜1800秒が適当である。加速電圧が50KV以下では、低エネルギー電子線の浸透深さが浅くなるためフッ素炭素樹脂化が不十分となりやすく、250KV以上では電子線の浸透深さが深すぎるため不適当である。また、加速電流が10mA以下では、フッ素炭素樹脂化が不十分となるため不適当であり、100mA以上、1800秒以上では表面処理皮膜が変質される危険があるため不適当である。
【0018】
本発明はフッ素系モノマー4を含浸させた被処理物の前記含浸面に対して、電子線照射装置6により低エネルギー電子線5を照射するので、その強力なカーテン状の電子により、表面のフッ素系モノマー4は化学的に重合してフッ素系重合体薄膜8と変化し、また同時に、孔や亀裂など隙間3中に含浸されているフッ素系モノマー4も重合して、図1(f)で模式的に示すように隙間3に楔のように打ち込まれたフッ素系重合体8’となる。しかも、パーフルオロアルキル基は低エネルギー電子線を照射することにより、重合体が外側すなわち大気側に配向する性質を有するため、耐剥離性のきわめて良好な強固な成膜状態となる。
【0019】
本発明は、低エネルギー電子線5を照射後、熱処理を施す。これはフッ素系重合体薄膜8,8’を安定化させるとともに、樹脂化したフッ素を適度にやわらかくして均一な膜とするためである。この加熱方式は、電気加熱、ガス加熱、遠赤外線加熱など任意であり、熱処理手段7も、バッチ炉、トンネル炉など任意である。加熱条件は、80〜300℃、10〜70分の範囲内とすることが好ましい。その理由は、300℃を越え70分を越える加熱では、低エネルギー電子線5の照射により形成されたフッ素系ポリマー膜が分解し、目的の性質を満さなくなるからである。以上の工程により、耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性、電気絶縁性等にすぐれ、厚さが約0.1〜1μmのフッ素樹脂薄膜を有する製品が得られる。しかし、厚膜が要求される場合には、得られたフッ素系重合体薄膜8の上にフッ素炭素樹脂を任意の方法によりコーティングすればよく、この場合、フッ素系重合体薄膜8がバインダーとして機能するため、すぐれた特性の厚膜を形成することができる。
【0020】
【実施例】
次に本発明の実施例を示す。
実施例1
1)ゴム栓の成形金型に本発明を適用した。
金型はアルミニウム合金からなっており、寸法は、L100×W100×t50mmである。これを脱脂し、硫酸主成分電解液により陽極酸化皮膜処理した。陽極酸化皮膜は100nm以下の孔が多数生じていた。
一方、パーフルオロアルキルエチルメタクリレートとしてRf=約95%C17を使用し、これを収容して50℃に保持した浴槽を用意し、このパーフルオロアルキルエチルメタクリレート中に陽極酸化皮膜処理した金型を5分間浸漬し、孔内にパーフルオロアルキルエチルメタクリレートを含浸させた。
【0021】
次いで、前記のようにパーフルオロアルキルエチルメタクリレートを含浸処理した金型を、電子線照射装置を使用して、加速電圧200KV、加速電流60mAの条件下で低エネルギー電子線を2秒間照射した。その後、被処理物を電気オーブンに装入し、150℃、30分の加熱を行なった。
以上の工程により、孔を有する陽極酸化皮膜に、厚さ約0.5μmの緻密なフッ素炭素樹脂薄膜が成膜された。
かかる処理済み金型を使用して、10000回ショットしたが、材料のゴムはまったくこびりつかず、キャビテイの摩耗もまったく生じていなかった。これは、陽極酸化皮膜の無数の孔にフッ素炭素樹脂が浸透して重合体化することにより強固な錨着効果が得られたことによるものであることは明らかである。得られた金型を使用して不具合発生までのショット数を測定した結果、1.2×10であった。
【0022】
実施例2
実施例1において、アルミニウムの陽極酸化処理後、金型を濃度15%、25℃の燐酸浴中に15分間浸漬しての孔を大きくするポアーワイド処理を行なった。以後、実施例1と同じ条件でパーフルオロアルキルエチルメタクリレートの含浸、低エネルギー電子線照射および熱処理を行ってフッ素炭素樹脂薄膜を形成した。得られた金型を使用して不具合発生までのショット数を測定した結果、1.4×10であった。
【0023】
実施例3
実施例2のポアーワイド処理を行なった後、超音波振動を掛けたパーフルオロアルキルエチルメタクリレート浴中に被処理物を浸漬してパーフルオロアルキルエチルメタクリレートを含浸し、以後実施例1と同じ条件で低エネルギー電子線照射および熱処理を行ってフッ素炭素樹脂薄膜を形成した。得られた金型を使用して不具合発生までのショット数を測定した結果、1.6×10であった。
【0024】
実施例4
実施例2のポアーワイド処理を行なった後、金型を真空容器に入れ、1×10未満1Pa以上の間に排気した後、Rf=C17を持つパーフルオロアルキルエチルメタクリレートをこの真空容器に装入し、常温で5分間処理をすることによりパーフルオロオクチルメタクリレート含浸させた。以後実施例1と同じ条件で低エネルギー電子線および熱処理を行ってフッ素炭素樹脂薄膜を形成した。得られた金型を使用して不具合発生までのショット数を測定した結果、1.8×10であった。
【0025】
実施例5
パーフルオロアルキルエチルメタクリレートとして、Rf=C13を持つパーフルオロアルキルエチルメタクリレートを用いるほかは実施例1と同じ条件で処理を行ってフッ素炭素樹脂薄膜を形成した。得られた金型を使用して不具合発生までのショット数を測定した結果、1.5×10であった。
【0026】
実施例6
パーフルオロアルキルエチルメタクリレートとして、Rf=C13を持つパーフルオロアルキルエチルメタクリレートを用い、実施例2の手法で処理を行ってフッ素炭素樹脂薄膜を形成した。得られた金型を使用して不具合発生までのショット数を測定した結果、1.8×10であった。
【0027】
実施例7
パーフルオロアルキルエチルメタクリレートとして、Rf=C13を持つパーフルオロアルキルエチルメタクリレートを用い、実施例3の手法で処理し、フッ素炭素樹脂薄膜を形成した。得られた金型を使用して不具合発生までのショット数を測定した結果、2.0×10であった。
【0028】
実施例8
パーフルオロアルキルエチルメタクリレートとして、Rf=C13を持つパーフルオロアルキルエチルメタクリレートを用い、実施例4の手法で処理し、フッ素炭素樹脂薄膜を形成した。得られた金型を使用して不具合発生までのショット数を測定した結果、2.2×10であった。
【0029】
実施例9
Rf=C13〜C1225混合系を持つパーフルオロアルキルエチルメタクリレートを用い、実施例1と同じ条件で処理を行ってフッ素炭素樹脂薄膜を形成した。得られた金型を使用して不具合発生までのショット数を測定した結果、1.3×10であった。
【0030】
実施例10
Rf=C13〜C1225混合系を持つパーフルオロアルキルエチルメタクリレートを用い、実施例2と同じ条件で処理を行ってフッ素炭素樹脂薄膜を形成した。得られた金型を使用して不具合発生までのショット数を測定した結果、1.5×10であった。
【0031】
実施例11
Rf=C13〜C1225混合系を持つパーフルオロアルキルエチルメタクリレートを用い、実施例3と同じ条件で処理を行ってフッ素炭素樹脂薄膜を形成した。得られた金型を使用して不具合発生までのショット数を測定した結果、1.9×10であった。
【0032】
実施例12
Rf=C13〜C1225混合系を持つパーフルオロアルキルエチルメタクリレートを用い、実施例4と同じ条件で処理を行ってフッ素炭素樹脂薄膜を形成した。得られた金型を使用して不具合発生までのショット数を測定した結果、2.0×10であった。
【0033】
実施例13
マグネシウムダイカスト板(AZ91D,150×75×5mm)に陽極酸化皮膜を施した後、Rf=C13〜C1225混合系を持つパーフルオロアルキルエチルメタクリレートを使用して実施例1と同じ条件で処理を行った。
マグネシウム陽極酸化処理は、特許第1443121号に示される表面処理法(Mg・Hardという)、JIS−H−8651に規定するマグネシウム合金防食処理法のMX−11,MX−12の3種で行った。比較試料として、JIS−H−8603,A5052−50μmに規定する工業用硬質陽極酸化処理(アルミニウム)を用いた。膜厚は、Mg・Hardにおいて25〜30μm、MX−11においては30〜50μm、MX−12においては25〜35μm、比較試料は50〜54μmであった。
【0034】
上記各試料の面粗さと、耐食性および耐摩耗性を試験した結果を表1に示す。表中、耐食性は、塩水噴霧試験方法(JIS−Z2371)で1サイクルを8時間噴霧、16時間休止とし、評価方法はRN9.8(レイティング・ナンバー)(腐食面積率0.02%以下)とし、サイクル数にて表す。
耐摩耗性は、アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜の耐摩耗性試験方法(JIS−H8682)の往復運動平面摩耗試験方法に従い、工業用硬質皮膜の試験条件で行った。この表1から、パーフルオロアルキルエチルメタクリレートを使用して陽極酸化皮膜の孔に含浸させ、低エネルギー電子線の照射を行ってフッ素炭素樹脂薄膜を形成すると、Mg・Hard、MX−11,MX−12の処理を施した場合に比べて、耐食性および耐摩耗性を大幅に向上できることがわかる。
【0035】
【表1】
Figure 0003547993
【0036】
実施例14
本発明を半導体封じ込め金型に適用した。該金型は材質ハイスからなり、寸法は、L250×W50×t20mmである。脱脂後、常法により工業用クロムめっき処理を4μm処理した。クロムめっき膜には1μm以下の亀裂が縦横斜め、あらゆる方向に多数入っている。
この金型を実施例1と同じ条件で処理し、フッ素系重合体薄膜を生成させた。得られた金型を使用して、10000回ショットしたが、材料の樹脂はまったくこびりつかず、キャビテイの摩耗もまったく生じていなかった。これは、クロムめっき膜の無数の亀裂にフッ素炭素樹脂が浸透して重合体化することにより強固な錨着効果が得られたことによるものである。
【0037】
実施例15
本発明をシュート用レールに適用した。この部品は材質鉄からなり寸法は、L500×W50×t50mmである。脱脂後、常法によりクロメート処理を1μm処理した。クロメート膜はビロード状であるが、表面に凹凸と亀裂が縦横斜めあらゆる方向に多数入っている。
このレールを実施例1と同じ条件で処理し、フッ素系重合体薄膜を生成させた。得られたレールを使用して、5000回滑走したが、めっきのクロメート膜の摩耗はまったく生じなかった。これは、膜の無数の孔亀裂にフッ素系モノマーが浸透して重合体化することにより、強固な錨着効果が得られたことによることは明らかである。
【0038】
【発明の効果】
以上説明した本発明の請求項1によれば、金属の表面に処理を施して生成した表面処理皮膜がポア、孔、凹凸、亀裂などを活用し、フルオロカーボン鎖を有するフッ素系モノマーを利用するため、微小な孔や凹凸や亀裂のすみずみに浸透させることができ、しかも、次いで低エネルギー電子線を照射することによりフルオロカーボン鎖を有するフッ素系モノマーを重合してフッ素の重合体薄膜を成膜させるため、効率よく短時間でしかも金属母材に熱的な悪影響を与えることなくフッ素樹脂化を図ることができ、とくに金属の表面に施された表面処理皮膜の孔や亀裂を機構的バインダーとして、フッ素系モノマーの重合体を確実に描着することができるため、剥離の生じない強固なフッ素系重合体薄膜とすることができ、さらに、低エネルギー電子線5を照射後、熱処理を施すため、フッ素系重合体薄膜を安定化させるとともに、樹脂化したフッ素を適度にやわらかくして均一な膜とすることができ、母材金属の耐摩耗性、耐食性、滑り性、電気絶縁性、他物付着防止性などの特性を向上することができるなどのすぐれた効果が得られる。
【0039】
請求項2によれば、耐摩耗性、耐食性、滑り性、他物付着防止性などの特性のすぐれた金型や滑動部品を提供できるというすぐれた効果が得られる。
請求項3によれば、カーボン鎖を有するフッ素系モノマーが、パーフルオロアルキルエチルメタクリレートであるため、表面張力が大幅に低下されており、濡れ性と浸透性がよいため、微細な孔や亀裂などに対してもすみずみまで浸透させることができ、請求項1の効果を確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明における金属の表面に表面処理を施した状態を模式的に示す断面図である。(b)は同じくその部分的拡大図である。(c)は本発明においてフッ素系モノマーを含浸させる工程を示す説明図である。(d)は同じくその含浸状態を模式的に示す拡大図である。(e)は本発明において低エネルギー電子線を照射する工程を示す説明図である。(f)は同じくその低エネルギー電子線照射後の状態を模式的に示す拡大図である。(g)は安定化熱処理工程を示す説明図である。
【符号の説明】
1 金属
2 表面処理皮膜
3 孔や亀裂などの隙間
4 フルオロカーボン鎖を有するフッ素系モノマー
5 電子線
6 電子線照射装置
7 熱処理手段
8 フッ素系重合体薄膜
8’隙間内のフッ素系重合体

Claims (4)

  1. 金属の表面にポア、孔、凹凸、割れなどの隙間を有する表面処理皮膜を施し、前記ポア、孔、凹凸、割れなどの隙間を有する表面処理皮膜にフルオロカーボン鎖を有するフッ素系モノマーを含浸させ、次いでフッ素系モノマーを含浸させた表面処理皮膜に低エネルギー電子線を照射することによりフッ素の重合体薄膜を成膜させ、さらに熱処理を施すことを特徴とする金属表面へのフッ素系重合体薄膜形成方法。
  2. 金属が金型または滑動部品であり、表面処理皮膜が、陽極酸化皮膜、化成皮膜、めっき、イオンプレーティング膜、蒸着膜等を単独又は2以上組み合わせたものを含む請求項1に記載の金属表面へのフッ素系重合体薄膜形成方法。
  3. カーボン鎖を有するフッ素系モノマーが、パーフルオロアルキルエチルメタクリレートである請求項1に記載の金属表面へのフッ素系重合体薄膜形成方法。
  4. パーフルオロアルキルエチルメタクリレートとして、パーフルオロアルキル基Rf=C13〜C1225を持つものを使用する請求項3に記載の金属表面へのフッ素系重合体薄膜形成方法。
JP11997598A 1998-04-03 1998-04-14 金属表面へのフッ素系重合体薄膜形成方法 Expired - Lifetime JP3547993B2 (ja)

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