JP3547989B2 - マルチビームアンテナ用反射鏡 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、異なる方向に電波を送受信可能なマルチビームアンテナ用反射鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
マルチビームアンテナとしては、例えば特開平5−191139号公報に開示されているようなものがある。これは、2つの一次放射器からパラボラ反射鏡の同一点にビームを放射するように2つの一次放射器を配置させ、パラボラ反射鏡の開口中心を通ってパラボラ軸に平行な軸をパラボラ反射鏡のビーム軸と定義し、一方の一次放射器をパラボラ反射鏡の焦点付近に配置し、他方の一次放射器をパラボラ反射鏡のビーム軸付近に配置し、開口中心Moとパラボラ反射鏡の焦点とを結ぶ直線とパラボラ軸とがなす角度をパラボラ反射鏡の傾き角度と定義し、この傾き角度を所望のビーム幅の1乃至1.4倍としたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような条件を満たそうとすると、反射鏡が、特定の方向に向けて電波を反射させる或いは特定の方向からの電波を反射させる専用のものとなり、汎用性がないものとなる。近年、衛星通信や衛星放送が頻繁に行われており、各衛星専用にパラボラ反射鏡を製造することはコスト上問題がある。さらに、このようなパラボラ反射鏡は、特定の条件で偏位給電による収差を最小化しようとしているので、パラボラ反射鏡の焦点距離と口径の比F/Dが大きくなる。
【0004】
本発明は、通常のパラボラ反射鏡と同様な大きさであり、かつ汎用性のあるマルチビームアンテナ用反射鏡を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、少なくとも第1及び第2の修整曲面関数を融合した関数の鏡面を持つマルチビームアンテナ用反射鏡である。第1の修整曲面関数は、それの開口面における左右方向をX1軸、上下方向をY1軸、前後方向をZ1軸とする座標系において、
z1=〔−(x12 +y12 )/4(F1+g(x1,y1))〕+F1
で表される。但し、g(x1,y1)は、k1(y+α)+k2(|x1|+β)で表され、αは−(of+D)以上かつ(of+D)以下の値、βは−D/2以上かつD/2以下の値、ofは0以上の値の上記反射鏡のオフセット量、Dは上記第1の修整曲面関数の所要領域をX1−Y1平面に投影した円の直径、F1は上記第1の修整曲面関数の焦点距離、k1及びk2は係数である。
第2の修整曲面関数は、それの開口面における左右方向をX2軸、上下方向をY2軸、前後方向をZ2軸とする座標系において、
z2=〔−(x22 +y22 )/4(F2+g(x2,y2))〕+F2
で表される。但し、g(x2,y2)は、k1(y+α)+k2(|x2|+β)で表され、αは−(of+D)以上かつ(of+D)以下の値、βは−D/2以上かつD/2以下の値、ofは0以上の値の上記反射鏡のオフセット量、Dは上記第2の修整曲面関数の所要領域をX2−Y2平面に投影した円の直径、F2は上記第2の修整曲面関数の焦点距離、k1及びk2は係数である。
前記マルチビームアンテナ用反射鏡は、少なくとも2つの電波の到来方向それぞれと第1及び第2のパラボラ反射鏡のZ1軸とZ2軸とを平行に配置した状態で、第1及び第2の修整曲面関数を加重平均して形成された融合領域内にある。前記融合領域の中心における第1及び第2の修整曲面関数の座標値及び法線が一致するように、第1及び第2の修整曲面関数の焦点位置が定められている。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、k2=0、k1<0、α=−(of+D/2)としたものである。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のマルチビームアンテナ用反射鏡において、k1=0、k2>0、β=0としたものである。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1記載のマルチビームアンテナ用反射鏡において、k1=0としたものである。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項1記載のマルチビームアンテナ用反射鏡において、k1=k2、α=−(of+D/2)、β=0としたものである。
【0010】
請求項6記載の発明は、請求項1記載のマルチビームアンテナ用反射鏡において、k1、k2を−0.2以上でかつ0.2以下としたものである。
【0011】
請求項7記載の発明は、請求項1記載のマルチビームアンテナ用反射鏡において、さらにn−2(nは3以上の正の整数)基の反射鏡が加重平均されて融合され、これらn−2基の反射鏡の関数は、それの開口面における左右方向をXn軸、上下方向をYn軸、前後方向をZn軸とする座標系において、パラボラ関数または修整曲面関数によって表され、そのZn軸がn−2波の電波の到来方向それぞれに沿って配置されている。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態は、少なくとも2つの修整曲面関数を融合した関数の曲面を持つ反射鏡である。説明の都合上、これら修整曲面関数について説明するが、まず通常のパラボラ反射鏡において、反射鏡に対して斜め方向から電波が到来する場合について説明する。
【0013】
図8(a)、(b)に示すように、或るオフセットパラボラ反射鏡2の鏡面の左右方向をX1軸、同上下方向をY1軸、同前後方向をZ1軸とし、オフセットパラボラ反射鏡2のZ1軸上の焦点を原点として、電波Eの方向をX1−Z1平面に投影した場合に、Z1軸となすビーム偏向角をθbとする。なお、反射鏡2の鏡面は、数1によって表される。但し、F1は焦点距離である。
【0014】
【数1】
【0015】
電波ベクトルEに直交する面にオフセットパラボラ反射鏡を投影した投影面Mを考えると、投影面Mは、反射鏡2の開口面に対応する電波Eの等位相面と考えられる。
【0016】
反射鏡2のY1方向の上端を点Pa、下端をPu、X1方向の正側端をPr、負側端をPlとすると、各点に対応する等位相面上の点をMa、Mu、Mr、Mlを考えることができる。点Ma、Mu、Mr、Mlは、等位相面M上の点であるので、これらの点での電界の位相は等しい。
【0017】
等位相面Mの任意の点、例えばMaを通過した電界は、電波Eの方向に平行に伝播し、反射鏡2上の点、例えばPaで反射し、反射鏡2の焦点Fの付近へ向かう。
【0018】
等位相面Mから伝播路に沿って等距離の点の集合は、等位相点の集合となる。等位相面上の各点Ma、Mu、Mr、Mlに対応し、かつ焦点Fの近傍にある等位相点をFa、Fu、Fr、Flとする。また、等位相面Mの中心点をMcとすると、Mcを通過した電界は、反射鏡2の中心点Pcに到達し、E’の方向に反射される。また、E’方向における点Mc、Pcに対応する等位相点をFcとすると、原点0とFcとを結ぶ線がZ1軸となす角度をθb’(フィード偏位角)とする。このとき、等位相点Fc、Fa、Fu、Fr、Flが最も集密化する状況は、Z1−X1平面に投影すれば、Fcを中心として広がりを持ち、Y1−Z1平面に投影すれば、概ねE’方向に直交する曲面上に拡散する。また、PcとFcとを結ぶ線とZ1軸とのなす角度をθo(オフセットパラボラ反射鏡のオフセット角)とする。
【0019】
反射鏡2の右半面を代表する点としてPr、反射鏡2の左半面を代表する点としてPlを選んだとき、線分MrPrと、線分MlPlとは平行で、図8(a)に示すように、X1、Z1軸の値がそれぞれ負の値である方向から電波Eが到来する場合、線分MrPr<線分MlPlであるので、線分PrFr>線分PlFlとなる。何故なら、線分MrFrは、線分MlFlと等しく、線分MrFrは線分MrPrと線分PrFrとからなり、線分MlFlは線分MlPlと線分PlFlとからなるからである。
【0020】
オフセット角θo>ビーム偏向角θbの条件下では、線分PrFrと線分PlFlとは、E’方向(線分PcFc方向)に対して概ね対称であるので、図8(a)、(b)に示すように、点Pr、FlのX1−Z1面投影のX1方向の拡散は小さく、Y1−Z1面投影のY1−Z1方向、特にY1方向の拡散が大きくなる。
【0021】
同様に、反射鏡2の上半面を代表する点としてPa、下半面を代表する点としてPuを選んだとき、線分PaF−線分PaFa>線分PuF−線分PuFuとなり、かつ図8(a)、(b)に示すように点Pc、Pa、Pu、Fc、Fa、Fuは同一局面上にあって、点Fa、Fuは図8(a)、(b)の例では、線分PcFcを挟んで、線分Pcを基準としてみると、FuはX1方向は正側に、Y1方向は負側にある。
【0022】
従って、Fa、Fc、Fuの拡散は、X1、Y1、Z1各方向に広がりを持つ直線に近い或る曲線となる。この等位相点の拡散の状態を図9(a)、(b)に示す。
【0023】
このような等位相点の拡散を減少させるために、修整関数g(x1、y1)を使用する。例えば、修整関数g(x1、y1)として数2を使用する場合を考える。
【0024】
【数2】
【0025】
但し、kは0よりも大きい。この場合、鏡面を表す修整曲面関数は、数3で表される。
【0026】
【数3】
【0027】
但し、kは正の値の係数である。この場合、鏡面は、図8(a)に点線で示すように鏡面の中心Pcを基点として、x1の値が大きい程、通常のパラボラ反射鏡に比較してz1の値が小さい(全体として浅い)関数となる。反射鏡の右端Pr’とこれに対応する等位相面上の点との距離、反射鏡の左端Pl’とこれに対応する等位相面上の点との距離が、それぞれ大きくなっており、かつPr’、Pl’の法線が、Pr、Plの法線よりもZ1軸、即ちPcの法線に近くなっているので、Fr’、Fl’はFc’に近づくことになり、Fc’付近の等位相点の密度が高くなる。従って、利得が向上する。
【0028】
修整関数g(x1、y1)を数4とすると、X1軸方向に鏡面が広がるときの基点をずらすことができる。
【0029】
【数4】
【0030】
但し、|β|≦D/2である。Dはパラボラ反射鏡の口径である。βを適切に選択することによってFc’付近の等位相点の密度をさらに高くしたり、例えば2つの異なる方向から到来する電波に対応することができる。
【0031】
また、修整関数g(x1、y1)として数5を使用する場合について考える。
【0032】
【数5】
【0033】
但し、kは0よりも小さい値である。上述したように、図8(a)、(b)の例では、PcFcを基準として、FuはX1方向においてFcよりも正側に、Y1方向においてFcよりも負側にあり、FaはX1方向においてFcよりも負側に、Y1方向において正側にある。これを反射鏡面全体について考えると、反射鏡2の下半面の各点(Puを含む)に対応する等位相点の集合は、FcよりもX1方向において正側にあり、Y1方向において負側にある。反射鏡2の上半面の各点(Paを含む)に対応する等位相点の集合は、X1方向においてFcよりも負側に、Y1方向において正側にある。
【0034】
修整関数g(x1、y1)を含む修整曲面関数は、数6によって表される。
【0035】
【数6】
【0036】
ここで特定の(x1、y1)に対してg(x1、y1)>0なら、z1の値はz1=−〔(x12 +y12 )/4F1〕+F1の場合よりも小さくなり、g(x1、y1)<0なら、z1の値はz1=−〔(x12 +y12 )/4F1〕+F1の場合よりも大きくなる。
【0037】
g(x1、y1)を数5とした場合、y1<(of+D/2)のとき、g(x1、y1)>0、y1>of+D/2のとき、g(x1、y1)<0となるので、数6の修整曲面関数は、y1=ofからy=of+D/2に向かってy1の値に応じて徐々にかつ滑らかに焦点距離が小さくなるパラボラ面を積み重ねた形状となる。従って、y1=of+D/2の場合、g(x1、y1)=0となり、通常のパラボラ関数と同じになる。y1>of+D/2のとき、g(x1、y1)<0となり、y1が大きくなるに連れて、徐々に焦点距離が小さくなり、かつ通常のパラボラ関数よりもEと各点の法線のなす角度が大きくなって、等位相点がパラボラ関数の場合よりもFc’に近づく。即ち、焦点距離の変更開始点は、y1=of+D/2である。
【0038】
y<of+D/2のとき、g(x1、y1)>0となり、y1が大きくなるに連れて、徐々に焦点距離が小さくなり、かつ通常のパラボラ関数よりも電波Eと各点の法線とがなす角度が小さくなって、等位相点がパラボラ関数よりもFc’に近づく。このときの鏡面の形状を図8(b)に一点鎖線で示し、この場合のパラボラ関数の上端Pa’に対応する等位相点をFa’で、パラボラ関数の下端Pu’に対応する等位相点をFu’で示す。従って、等位相点の集合の拡散範囲が狭くなり、集密度が上がり、利得を向上させることができる。数5におけるkを−0,02とした場合の等位相点の拡散の状況を図9(c)、(d)に示す。図9(a)と(c)との比較、図9(b)と(d)の比較から、修整関数g(x1、y1)に数5を使用した場合の方が、等位相点の集中度が向上していることがわかる。
【0039】
修整関数g(x1、y1)を数7とした場合について考える。
【0040】
【数7】
【0041】
但し、|α|≦of+Dである。α=−of−D/2とすると、数5と同じになる。従って、αの値を|α|≦of+Dの範囲で変更すると、焦点距離の変更開始位置を鏡面の任意の位置とすることができ、αを適切に選択すると、等位相点の集合の拡散範囲をさらに狭くすることができ、集密度をさらに高くしたり、例えば2つの異なる方向から到来する電波に対応することができる。
【0042】
上述した2種類の修整関数を組み合わせて、即ち修整関数g(x1、y1)として数8を使用することもできる。
【0043】
【数8】
【0044】
この場合、電波到来方向に対応した適当なkの値を選ぶことにより、Fr、Fl、Fa、Fuの全てをFcの近傍に集中させることができる。
【0045】
数2、数5、数8において、θb=10度として、kを−0.2付近から0.2付近まで変更させた場合の等位相面の集密度を図10に示す。図10の縦軸は、アンテナ効率に換算した等位相点の密度を表し、単位は倍である。縦軸が1の場合が、通常のパラボラアンテナに正面から電波が到来した場合に相当する。図10から明らかなように、概ね−0.2付近から0.2付近にkを選択することによって、良好な結果が得られた。特に、θb=10度の場合、kが−0.1付近から+0.1付近の範囲にピークが存在する。また、その最大ピークは、数5、数8の場合、−0.05付近にあり、数2の場合、+0.05付近にあり、それぞれ集密度は約0.64である。
【0046】
修整関数として数5を用い、D=755mm、F=453mm、of=0、k=−0.02とした場合の反射鏡と、通常の同じ大きさのパラボラ反射鏡において、ビーム変更角θbを0度から変更した場合の相対利得の変化を図11に示す。これによって、通常のパラボラ反射鏡よりも広いビーム変更角範囲を得ることができることが判る。
【0047】
上述した各修整曲面関数を包含した式は、数9によって表される。
【0048】
【数9】
【0049】
但し、|α|≦(of+D)、|β|≦D/2である。また、k1、k2は、任意の係数とすることができるが、図10に関連して説明したように、−0,2乃至0.2の範囲とすることが望ましい。図10において、θb=10度の場合を示したが、他のθbに対しては、α、k1、k2の値と式を適当に選択して、対応することができる。
【0050】
このような2つの修整曲面関数によって表される2つの反射鏡を融合して、図1及び図2に示すような反射鏡4を形成している。図1において、符号6で示す衛星1からの電波を主に反射する反射鏡の修整曲面関数1は、その焦点f1を原点とし、衛星1からの電波が修整曲面関数1によって表される反射鏡面に向かう方向を正の方向とするZ1軸を考え、この反射鏡の左右方向をX1軸とし、このZ1軸とX1軸とに対して右手系をなすようにY1軸を定めると、例えば、数10によって表される。 但し、g(x1、y1)は、k(y1−D/2−of)で表され、F1は焦点距離である。
【0051】
【数10】
【0052】
同様に、符号8で示す衛星2からの電波を主に反射する反射鏡の修整曲面関数2は、その焦点f2を原点とし、衛星2からの電波が修整曲面関数2によって表される反射鏡面に向かう方向を正の方向とするZ2軸を考え、この反射鏡の左右方向をX2軸とし、このZ2軸とX2軸とに対して右手系をなすようにY2軸を定めると、例えば、数11によって表される。但し、g(x2、y2)は、k(y2−D/2−of)で表され、F2は焦点距離である。
【0053】
【数11】
【0054】
これら2つの座標系は、図2に示すように、X軸、Y軸、Z軸によって表される座標に配置されている。この座標において、衛星1、2からの電波がなす角度の1/2をそれぞれδ1、δ2とし、2つの修整曲面関数1、2の融合中心点Moの座標値と法線の方向が一致するように、焦点f1とf2とは距離d1+d2をおいて配置されている。焦点f1とf2を通り、f2からf1に向かう方向を正とする軸をX軸とし、X軸上のf1とf2との中間点を原点とし、この原点を通り衛星1、2からの電波の到来方向と同一平面内にあり、X軸と直交し、かつ衛星1、2からの電波と概ね一致する方向を正とする軸をZ軸とする。このZ軸は、衛星1、2からの電波がなす角度をδ1とδ2とに2分する方向となる。即ち、δ1、δ2はビーム偏向角となる。Y軸は、X軸とZ軸と右手系をなすように定めてある。
【0055】
従って、X軸、Y軸、Z軸を基準に考えると、修整曲面関数1は、数10で表される関数をX−Z平面においてZ軸の正の方向からX軸の正の方向にδ1だけ回転させて、X軸の正の方向にd1だけ平行移動させたものである。また、修整曲面関数2は、数11で表される関数をX−Z平面においてZ軸の正の方向からX軸の負の方向にδ2だけ回転させて、X軸の負の方向にd2だけ平行移動させたものである。
【0056】
修整曲面関数1に重みW1をかけ、修整曲面関数2に重みW2をかけて、加重平均することによって融合関数が定められ、この融合関数によって反射鏡面が決定される。重みW1は、数12によって表され、重みW2は1−W1によって定められる。なお、W1及びW2は正の値である。
【0057】
【数12】
【0058】
このように定めているので、X=0のとき、即ちY−Z平面内で、W1、W2が0.5となり、xがD/2のときW1が1、W2が0となり、xが−D/2のとき、W1が0、W2が1となる。よって融合関数は、x=0において修整曲面関数1、2の中間値になり、x=D/2において修整曲面関数1の値となり、x=−D/2において修整曲面関数2の値となる。
【0059】
D=457.2mm、焦点距離F1=F2=274.32mm、g(x1、y1)=−0.01(y1−D/2)、g(x2、y2)=−0.01(y2−D/2)、δ1=−10度、δ2=10度、W1=||x+D/2|−D|/2、of=0とした直径457.2mmの修整曲面関数を融合させた反射鏡においてビーム偏向角10度の場合の収差の発生状態についてシミュレーションを行った結果を図3に示す。比較のため、焦点距離230mm、口径457.2mm、オフセット量30mmのオフセットパラボラ反射鏡においてビーム偏向角10度の場合の収差の状態についてシミュレーションを行った結果を図4に示す。図3及び図4の比較から、図3の反射鏡の方が、図4のオフセットパラボラ反射鏡よりも収差が小さいことが明らかである。また、この結果、図3のアンテナ利得が33.5dBであるのに対し図4のアンテナ利得が32.9dBとなり、図3の反射鏡の方が約0.6dB利得が向上している。
【0060】
また、上記の修整曲面関数を融合させた反射鏡においてビーム偏向角と効率低下との関係をシミュレーションすると共に、上記の修整曲面関数を融合した反射鏡であって、横径を472.6mm、縦径を445.3mmとした反射鏡を試作し、そのビーム偏向角と効率低下との関係を実測した結果を、図5に示す。図5から±15度付近まで実測値とシミュレーション値とがほぼ一致していることが明らかである。
【0061】
また、上記のオフセットパラボラアンテナにおけるビーム偏向角と効率低下とを実測した値とシミュレーションした値と、上記の修整曲面関数を融合させた反射鏡においてビーム偏向角と効率低下との関係をシミュレーションすると共に、上記の修整曲面関数を融合させた反射鏡であって、横径を472.6mm、縦径を445.3mmとした反射鏡を試作し、そのビーム偏向角と効率低下との関係を実測した結果とを、図6に示す。
【0062】
図6から、シミュレーション値及び実測値共に、修整曲面関数を融合したものの方が、通常のオフセットパラボラ反射鏡のシミュレーション値及び実測値よりも、広範囲にわたって性能が向上しており、融合した反射鏡のビーム幅を約3.7度とすると、その6倍の位置でも約2.0dBしか能率の低下がなく、ビーム幅の6倍の範囲までビームを偏位させても使用可能である。通常のオフセットパラボラ反射鏡では、約2.0dBの能率低下となるのは、ビーム偏向角が約14度の場合であり、ビーム幅の約3.5倍までしか偏位させることができない。
【0063】
このようにビーム偏向角度を大きくとることができるのは、修整曲面関数1、2を融合させているからである。このように大きなビーム偏向角をとることができるので、様々な方向から到来する種々の電波を受信可能であり、汎用性のあるマルチビームアンテナ用反射鏡を実現できる。
【0064】
上記の実施の形態では、2つの修整曲面関数1、2を融合させることによってマルチビームアンテナ用反射鏡を形成した。しかし、これにn−2個(nは3以上の正の整数)の修整曲面関数またはパラボラ関数を融合させることもできる。例えば図7は、合計n個の修整曲面関数を融合させた場合の修整曲面関数1、2、nの焦点f1、f2、fnを示したものである。但し、この場合、δ1=δ2であり、ビーム偏向角δnはδ1、δ2よりも小さく設定されている。n番目の修整曲面関数またはパラボラ関数は、その関数の鏡面の左右方向をXn軸、上下方向をYn軸、前後方向をZn軸とする座標において、zn=〔−(xn2 +yn2 )/4Fn〕+Fn、及びzn=〔−(xn2 +yn2 )/4(Fn+g(xn、yn))〕+Fnで表される。g(xn、yn)は、上述したのと同様にk1(yn+α)+k2(|xn|+β)で表され、αは−(of+D)以上かつ(of+D)以下の値、βは−D/2以上かつD/2以下の値、ofは0以上の値の上記反射鏡のオフセット量、Dは上記各関数の所要領域をXn−Yn平面に投影した円の直径、Fnはn番目の修整曲面関数またはパラボラ関数の焦点距離、k1及びk2は係数である。
【0065】
これらを加重平均するために用いる重み係数W1乃至Wnは、全ての正の数であり、W3乃至Wnは、W3からWnの累積値が1より小さいことを条件として、W1、W2は、数13、数14によって表される。
【0066】
【数13】
【数14】
【0067】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、少なくとも2つの修整曲面関数を融合してマルチビームアンテナ用反射鏡を形成しているので、ビーム偏向角を大きく取ることができ、様々な方向から到来する電波を受信することが可能となり、汎用性が大きいマルチビームアンテナ用反射鏡を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態のマルチビームアンテナ用反射鏡の斜視図である。
【図2】図1のマルチビームアンテナ用反射鏡の平面図である。
【図3】図1のマルチビームアンテナ用反射鏡においてビーム偏向角を10度とした場合の収差の発生状態をシミュレーションした図である。
【図4】通常のオフセットパラボラ反射鏡においてビーム偏向角を10度とした場合の収差の発生状態をシミュレーションした図である。
【図5】図1のマルチビームアンテナ用反射鏡におけるビーム偏向角と効率低下との関係の実測値とシミュレーション値を示す図である。
【図6】図1のマルチビームアンテナ用反射鏡と通常のオフセットパラボラ反射鏡におけるビーム偏向角と効率低下との関係の実測値とシミュレーション値を示す図である。
【図7】本発明の他の実施の形態のマルチビームアンテナ用反射鏡の斜視図である。
【図8】本発明の基礎となる修整曲面関数に基づく反射鏡と従来のオフセットパラボラ反射鏡の電波の反射状態を示す図である。
【図9】本発明の基礎となる修整曲面関数に基づく反射鏡と従来のオフセットパラボラ反射鏡の等位相点の集中状態を示す図である。
【図10】本発明の基礎となる修整曲面関数に基づく反射鏡における係数kの変化による等位相点の集中状態の変化を示す図である。
【図11】本発明の基礎となる修整曲面関数に基づく反射鏡におけるビーム偏向角と相対利得との関係を示す図である。
【符号の説明】
4 マルチビームアンテナ用反射鏡
Claims (7)
- 少なくとも第1及び第2の修整曲面関数を融合した関数の鏡面を持つマルチビームアンテナ用反射鏡であって、
第1の修整曲面関数は、それの開口面における左右方向をX1軸、上下方向をY1軸、前後方向をZ1軸とする座標系において、
z1=〔−(x12 +y12 )/4(F1+g(x1,y1))〕+F1
で表され(g(x1,y1)は、k1(y+α)+k2(|x1|+β)で表され、αは−(of+D)以上かつ(of+D)以下の値、βは−D/2以上かつD/2以下の値、ofは0以上の値の上記反射鏡のオフセット量、Dは上記第1の修整曲面関数の所要領域をX1−Y1平面に投影した円の直径、F1は上記第1の修整曲面関数の焦点距離、k1及びk2は係数)、
第2の修整曲面関数は、それの開口面における左右方向をX2軸、上下方向をY2軸、前後方向をZ2軸とする座標系において、
z2=〔−(x22 +y22 )/4(F2+g(x2,y2))〕+F2
で表され(g(x2,y2)は、k1(y+α)+k2(|x2|+β)で表され、αは−(of+D)以上かつ(of+D)以下の値、βは−D/2以上かつD/2以下の値、ofは0以上の値の上記反射鏡のオフセット量、Dは上記第2の修整曲面関数の所要領域をX2−Y2平面に投影した円の直径、F2は上記第2の修整曲面関数の焦点距離、k1及びk2は係数)、
前記マルチビームアンテナ用反射鏡は、少なくとも2つの電波の到来方向それぞれと第1及び第2の修整曲面関数のZ1軸とZ2軸とを平行に配置した状態で、第1及び第2の修整曲面関数を加重平均して形成された融合領域内にあり、
前記融合領域の中心における第1及び第2の修整曲面関数の座標値及び法線が一致するように、第1及び第2の修整曲面関数の焦点位置が定められたマルチビームアンテナ用反射鏡。 - 請求項1記載のマルチビームアンテナ用反射鏡において、k2=0、k1<0、α=−(of+D/2)としたことを特徴とするマルチビームアンテナ用反射鏡。
- 請求項1記載のマルチビームアンテナ用反射鏡において、k1=0、k2>0、β=0としたことを特徴とするマルチビームアンテナ用反射鏡。
- 請求項1記載のマルチビームアンテナ用反射鏡において、k1=0としたことを特徴とするマルチビームアンテナ用反射鏡。
- 請求項1記載のマルチビームアンテナ用反射鏡において、k1=k2、α=−(of+D/2)、β=0としたことを特徴とするマルチビームアンテナ用反射鏡。
- 請求項1記載のマルチビームアンテナ用反射鏡において、k1、k2が−0.2以上でかつ0.2以下であることを特徴とするマルチビームアンテナ用反射鏡。
- 請求項1記載のマルチビームアンテナ用反射鏡において、
さらにn−2(nは3以上の正の整数)基の反射鏡が加重平均されて融合され、これらn−2基の反射鏡の関数は、それの開口面における左右方向をXn軸、上下方向をYn軸、前後方向をZn軸とする座標系において、パラボラ関数または修整曲面関数によって表され、そのZn軸がn−2波の電波の到来方向それぞれに沿って配置されていることを特徴とするマルチビームアンテナ用反射鏡。
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