JP3547378B2 - 中空ラックバー歯型転造用治工具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はパイプ材より中空ラックバーを転造する際に使用される歯型転造用治工具である歯型組立体及び心金に関し、その延命化を狙ったものである。
【0002】
【従来の技術】
車両の操舵系の部品であるラックバーの形成は通常は中実の棒材に対してブローチ加工によって切削形成するのが通常であった。しかしながら、中実であることから重くなり、その軽量化が望まれていた。そこで、中空のラックバーをパイプ材からの転造により成形するものが特公平3−5892号公報や、特開平5−169181号公報や、特開平6−246379号に開示されており、これらの公報に開示された技術においては、パイプ材を歯型とクランプダイとの間に挟着保持し、拡頭部を形成した心金をパイプ材に圧入することによって材料を歯型に向けて張り出させ、パイプ材の外面に歯型の内面の歯形状を付与している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
パイプ材からの転造においては治工具として金型と心金を使用するが、その治工具コストはブローチ加工と比較して低廉であるが、寿命の短いことが問題となっていた。即ち、ブローチ歯の寿命は修正研摩をすると10万回に及ぶものとされている。金型及び心金のコストはブローチ歯と比較して1/10であるが、寿命は現時点で3〜5千回とされており、治工具の寿命の点で不満である。この寿命を十倍以上に延命せしめることが可能であれば、ブローチ切削方式と比較して治工具のランニングコストを数分の1とすることができる。そうすれば、中実ラックバーと比較して精度は同等以上、重量については約1/2、タクトは2/3以下、歯の強度は2倍以上といった転造型中空ラックバーの特長を更に生かすことが可能となる。
【0004】
したがって、この発明の目的はパイプ材より中空ラックバーを転造する際に使用される歯型転造用治工具である歯型組立体及び心金に関し、その延命化を実現することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、素型材としての中空パイプ材から中空ラックバーを転造する際に使用される歯型組立体であって、前記組立体は歯型と歯型ホルダとを供え、前記歯型は歯型ホルダに形成される凹部に取外し自在に挿入され、歯型ホルダの前記凹部内において歯型を長手方向に付勢することにより歯型を歯型ホルダにおける前記凹部に押付ける圧入駒を備え、かつ圧入駒に対向して歯型ホルダの前記凹部の底面には圧入駒の押出し用のピン孔が開口していることを特徴とする歯型組立体が提供される。
【0006】
請求項1の発明の作用・効果を説明すると、圧入駒の圧入によって歯型はホルダの凹部に長手方向において押しつけられる。長手方向歯型の両端に圧入駒を設けたこの構造により心金の転造時の往復動に対して歯型に加わる前後方向の荷重に対して歯型のガタを防止し、歯型の長寿命化と精度維持を実現することができる。また、歯型はホルダの凹部に圧入されているだけであるが、転造成形時の塑性加工発熱による伸張により歯型は凹部に対して締まり勝手になるため、強力圧入や焼嵌めの必要はない。
【0007】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、歯型を収容するための歯型ホルダの前記凹部は圧入駒と当接する長手方向の両端において凹部の幅に見合った径のR部を形成していることを特徴とする歯型組立体が提供される。
【0008】
請求項2の発明の作用・効果を説明すると、歯型を収容する凹部はその長手方向の両端に目一杯のき大きさのR部を有しているため応力集中を回避し長寿命化を図ることができ、かつR部の径は凹部の幅と同一であるため、エンドミルによる半月加工で済ませることができ、加工も極めて容易となる。
【0009】
請求項3の記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、歯型ホルダの前記凹部の底面に歯型の底面と当接するライナを設置したことを特徴とする歯型組立体が提供される。
【0010】
請求項3の発明の作用・効果を説明すると、加工精度は歯型とホルダの数セット分の重ね合わせ精度にクランプ圧力による静的圧縮歪と心金移動による動的うねり圧縮歪の影響を受けるが、ライナは補正可能な厚みのものを各種準備しておき、試打品の精度を計測してそのデータから最適な厚みのものを装着する。これにより、32ミクロンといった所期の鍛造精度を確保することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明によれば、歯型とクランプダイとの間に保持される中空パイプ材の凹部に向けて圧入されることにより中空パイプ材に直線方向の歯型転造を行うのに使用する心金であって、心金の複数の拡頭部はその前方部位において長さと張出量の比が所定値の傾斜面を形成しており、前記所定値は芯金の移動時の金型に加わる張出力と中空パイプ材の凹部への芯金の挿入力との調和に応じて定められていると共に各拡頭部は微小の凹凸を有した表面をなしていることを特徴とする心金が提供される。
【0012】
請求項4の発明の作用・効果を説明すると、拡頭部の前方部位のリード部として傾斜面のくさび作用により内径側から外径側への張出力を惹起させるが、傾斜による拡大率が過大であると張出力が大きくなり過ぎて金型のクランプ力がいたずらに増大する。逆に、拡大率が小さすぎると、張出力の倍率が低くなるので、心金の挿入力を増大させやがては心金の座屈限界を超過することになる。そしてこの発明では、張出力と心金の挿入力とを調和するように拡頭部の張出量δに対する直線傾斜面の有効リード長の比の所定値が定められており、金型のクランプ力を過大とすることなく芯金の座屈を防止することができる。尚、l/δの好適値としてはおおよそ100程度である。また、各拡頭部に形成した微小凹凸により転造時の油膜を確保しやすくなり、心金の寿命延長に寄与させることができる。即ち、圧入時に拡頭部はパイプ材の内径に密着しつつ直線傾斜面で張出を行い、当然背面は反発の受けとして強圧され、また張出部の両側部の金属は少しでも移動距離の短い隙間の部分へ逃げようとして、全周は張られるに至り、仮に、拡頭部を鏡面仕上げしていたとすると油膜の切れが起こり易い。拡頭部に微小凹凸を形成することにより潤滑油がこのような凹凸に確保され油膜の切れに有効となる。微小凹凸の形成としては、旋盤のバイト目を残すような微細ラビリンス溝や、物理的若しくは化学的若しくは機械的処理による2〜3ミクロンの凹凸とすることにより所期の目的を達成することができる。尚、全周の強力当たりはいたずらに抵抗を増すので心金の両側部を逃すのも一対策法である。
【0015】
請求項6に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明において、各拡頭部はその前後において油溜室を形成していることを特徴とする心金が提供される。
【0016】
請求項6の発明の作用・効果を説明すると、心金には潤滑油が給油されるが、拡頭部の背後に形成される油溜室には潤滑油が溜められる。そのため、心金の前後進作動につれて拡頭部に向けて潤滑油の引き込みを行うことができる。このような油溜室の形成のため拡頭部の前後は小径部とされ、その縮径の度合いは拡頭部の通過時におけるスプリングバックによるパイプ内径の縮径に対して適当に大きな縮径となるようにされており、これにより潤滑油の蓄積が可能となる。
【0017】
請求項7に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明において、心金は一回の圧入の過程で張出を多段階に実施するため長手方向に間隔をおいて複数の拡頭部を備えていることを特徴とする心金が提供される。
【0018】
請求項7の発明の作用・効果を説明すると、長手方向に間隔をおいて複数の拡頭部を備えることにより張出力の分散を図り、心金の寿命の延長を図ることができる。即ち、心金の拡頭部を1個とした場合、圧入転造時に1つの拡頭部という短い幅で強力な張出力を伝達しながら大きなうねり歪を与える。心金圧入を左右の各々から6回づつ、計12回繰返すとすると、1つの品物の成形の完了の度に金型に与えられる大きなうねり歪の回数は12回となり、金型の早期の疲労破壊が避けられない。この発明によれば、長手方向に間隔をおいて複数の拡頭部を2〜6個設けることにより段階的な張出を行っているため拡頭部1個あたりの歪量を1/2〜1/6に減少させることができる。そのため、心金の繰返し的な圧入により加わるうねり歪に対して金型の負担を軽減し、金属の疲労破壊限界を飛躍的に延ばして歯型の延命を実現することができる。
【0019】
請求項8に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明において、前記複数の拡頭部は歯型の全高に応じたピッチにて配置されることを特徴とする心金が提供される。
【0020】
請求項8の発明の作用・効果を説明すると、拡頭部の通過時に金型は45度程度の伝播角度にて荷重が加わる。複数の拡頭部を全高に応じたピッチによって分離させることにより各拡頭部から伝番される荷重の大きな重複を回避しつつ、うねり荷重が軽減されるため長寿命化を図ることができる。
【0021】
請求項9に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明において、拡頭部の外側においては心金は中空材の内径にて支持されていることを特徴とする心金が提供される。
【0022】
請求項9の発明の作用・効果を説明すると、拡頭部を複数設けることにより心金の全長は長くなり、座屈耐力の条件が不利になるが、拡頭部の外側において心金は中空材の内径により支持されるため、拡頭部の外側において心金はパイプ材に保持されるため座屈条件の不利を抑えることができる。
【0023】
請求項10に記載の発明によれば、請求項1から請求項9のいずれかに記載の発明において、歯型は数値制御のワイヤーカットマシンにより切削されていることを特徴とする歯型が提供される。
【0024】
請求項10の発明の作用・効果を説明すると、歯型を数値制御のワイヤカットマシンにより切削することにより特にピッチ及び角度可変のラックバー(所謂VGRラックバー)を精度高くかつ低コストにて製造することができる。即ち、車両用の最近のラックバーにおいては電動式のパワーステアリングへの応用のためVGRラックバーへの関心が持たれている。VGRラックバーの場合はブローチ加工は不可能であり、特殊切削加工で先ず母型を切削加工し、これを電極として放電加工するが、電極の消耗、精度低下もありかつコスト的に高くなる。ワイヤカットマシンによる製造ではそれに先だって初期開発としてCAE(コンピュータ補助設計)によるシミュレーションとそれに引き続くトライアンドエラーによるフィードバックが必要となり、手間はかかるが、それがすめばCNCによるプログラムによってランニングコストとしては低減が可能となる。いづれにしても歯工具類は消耗品である。
【0025】
請求項11に記載の発明によれば、請求項1から請求項10のいずれかに記載の発明において、歯型はHRC硬さ51〜54に抑えられていることを特徴とする歯型が提供される。
【0026】
この発明のラックバーの転造方式は所謂成形転造であり、創成転造のような歯部の噛み合いによる転がり摩擦も、グローブ式転造における滑り摩擦もない。したがって、磨耗に関しては非常に好条件である。しかしながら、張出荷重を受け、圧縮による沈み歪みが移動するので、歯型にうねりを与えることになり、例えば、往復12工程の場合は1本のラックバーの成形によって歯型は12回のうねりを受ける。このようなうねりに対処するため摩擦の少ない成形転造の特徴を意図して硬さを抑え靭性を与えることにより対処することができる。即ち、靭性を与えることによりうねりによる繰返し的な曲げ荷重に耐えることができる。HRC硬さ51〜54は通常の鍛造型の焼入れ硬さよりかなり甘いがこのような硬さ範囲により金型に加わる曲げに対する耐久性との金型の硬さとの調和を図ることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1において、ラックバーの転造装置10は歯型組立体12とクランプダイ14とから成り、素材としての素材管18は歯型組立体12とクランプダイ14との間に保持される。心金20は転造型を挟んで左右一対設けられる。芯金20はその断面形状は一部平坦化された素材管18の部分の断面形状に順じた断面形状を有している(図2参照)。芯金20の先端は案内部20Aをなしており、断面平坦化された素材管18の部分への導入のガイドとなる。案内部20Aの背後には拡頭部20Bが継続し、芯金20の圧入時に素材管18の平坦部に係合することにより素材管の肉を内径側から外形側に歯型組立体12のラック歯状歯型26に向けて金属流動させ、素材管にその凹凸形状に相補的なラック状歯部が賦型される。図示するように芯金20は拡頭部20Bを二つ有しており、芯金20の一回の圧入による順次の多段階の金属流動が得られるようになっている。
【0028】
図2〜図4は歯型組立体12の実際の組立構造の一例を示しており、歯型組立体12は歯型ホルダ22と、ホルダ22における矩形凹部24に歯列を構成するように収容される歯型26と、矩形凹部24の底部に敷設される金属製支持ライナ27と、歯型26の両端における圧入駒28, 30とから成る。図4に示すように、矩形凹部24の両端はその幅の径のR部24Aを呈しており、圧入駒28, 30はこのR部24Aと相補的な断面形状をなしている。一方の圧入駒28はテーパ面をなしており、その圧入により歯型26はホルダ22の矩形凹部24内に保持することができる。圧入駒28, 30の圧入によって歯型26はホルダ22の矩形凹部24に長手方向において押しつけられる。長手方向歯型の両端に圧入駒28, 30を設けたこの構造により心金20の転造時の往復動に対して歯型26に加わる前後方向の荷重に対して歯型26のガタを防止し、歯型26の長寿命化を実現することができる。また、歯型26はホルダ22の矩形凹部24に圧入されているだけであるが、転造成形時の塑性加工発熱による伸張により歯型26は矩形凹部24に対して締まり勝手になるため、強力圧入や焼嵌めの必要はない。歯型26を収容する矩形凹部24はその長手方向の両端にR部24Aを有しているため応力集中を回避し長寿命化を図ることができ、かつR部24の径は矩形凹部24の幅と同一であるため、エンドミルによる半月加工で済ませることができ、加工性も極めて容易となる。ホルダ22には凹部24の底面に開口するピン孔32, 34が形成され、この32, 34よりピンを導入することにより圧入駒28, 30を押出すことにより、歯型組立体12の分解は簡単に実施することができる。
【0029】
ライナ27は補正可能な厚みのものを各種準備しておき、試打品の精度を計測してそのデータから最適な厚みのものを装着する。これにより、32ミクロンといった驚異的な鍛造精度を確保することができる。
【0030】
歯型26は数値制御のワイヤーカットマシンにより切削されたものである。ワイヤカットマシンによる切削に先だってCAE(コンピュータ補助設計)によるシミュレーションとそれに引き続くトライアンドエラーによるフィードバックが行われる。このような作業は手間は要するがそれが終わればあとはCNCによるプログラムによってワイヤーカットマシンによって、磨耗交換される歯型26の製造は自動化されうるために廉価供給されるのでランニングコストの低減が可能となる。
【0031】
歯型26の焼入れはHRC硬さ51〜54に抑えられるように実施される。このような硬さ範囲の設定により磨耗と曲げ強度との調和を図ることができる。即ち、ラックバーの転造においては心金20は左右から交互に圧入が行われる。その往復回数としては12回程度である。この場合、拡頭部の通過のたびに金型は張り出し荷重をうけ、このような張り出し荷重により金型は12回以上のうねり荷重を受ける。このようなうねり荷重は歯型26に対して沈み歪みを与え、結果として曲げ荷重となって作用する。このような曲げ荷重の繰り返しに対処するため歯型26に靭性を付与するべく、通常の鍛造型の硬さより柔らかい51〜54のHRCの硬さとしている。これにより繰返し的なうねりに耐えうる靭性を付与する。磨耗に対しては転がり摩擦摩のない成形転造の特徴からしてそこそこの性能を得ることができ、両者の調和を図ることができる。
【0032】
最後に、治工具としての心金20について説明する。心金は成形力の大小、成形工程数の増減、金属流動性の良否、歯型の圧縮歪うねりに関わる重要部品である。心金の移動に伴い金型に加わる張出力について検討すると、この張出力は拡頭部20Bの前方部位のリード部として傾斜面のくさび作用に由来するものである。図5には心金20の2個の拡頭部が詳細に示されている。この図において、拡頭部20Bによる張出力は傾斜面部の有効長さをl、張出量をδとしたとき、
圧入力×l/δ
によって表される。傾斜による拡大率l/δが過大であると張出力が大きくなり過ぎて金型のクランプ力がいたずらに増大する。逆に、拡大率l/δが小さすぎると、張出力の倍率が低くなるので、心金の挿入力を増大させやがては心金の座屈限界を超過することになる。そこで、拡頭部の張出量をδとし、直線傾斜面の有効リード長をlとしたとき両者の調和を図ることができるl/δの値に設定することができる。発明者の検討結果によれば、l/δの好適値としては100内外である。例えば、2個の拡径部を有した図5の具体的構造例で、l=3.5 mm、δ=0.03 mmとすると、1/δ=117であり、この場合心金圧入力を4.4 tfとし拡頭部を2箇所であるとすると各拡頭部での圧入力は張出力FはF=2.2×117=257 tfとなる。
【0033】
圧入時において心金20は潤滑油の給油を受け、潤滑油は切れないようにする必要がある。拡頭部20Bは素材管18の内径に密着しつつ直線傾斜面で張出を行うため、拡頭部20Bは反力の受けとして強圧される。拡頭部の金属は少しでも距離の短い隙間部へ逃げようとする。したがって、特にリストライク工程用の2段目の拡頭部20Bは全周が強く張られ、潤滑油の油膜切れが起こり易い。したがって、拡頭部20Bは鏡面仕上げしていたとすると油膜の切れが起こり易い。拡頭部20Bの表面に微小凹凸を形成することにより潤滑油がこのような凹凸に確保され油膜の切れに有効となる。微小凹凸の形成としては、旋盤のバイト目を残すような微細ラビリンス溝や、物理的若しくは化学的または機械的処理による2〜3ミクロンの凹凸化することによ所期の目的を達成することができる。
【0034】
図1において、各拡頭部20Bはその前後の部分20-1において径が縮小されここに油溜室を形成している。心金20には潤滑油が給油されるが、拡頭部20Bの背後に形成される油溜室には潤滑油が溜めれられるため、心金の前行進作動につれて拡頭部20Bに向けて潤滑油の引き込みを行うことができる。このような油溜室の形成のための拡頭部前後の小径部20-1において、その縮径の度合いは拡頭部の通過時におけるスプリングバックによるパイプ内径の縮径に対して適当に大きな縮径にする必要がある。
【0035】
図1において、拡頭部の外側(根元側)の部分20Cにおいては心金は円形断面部位18-1におけるパイプ材18の内径と同等であり、ここの部分まで圧入されてくると心金はパイプ材18の全周内径で支持されるため、座屈に対する大きな抗力を得ることができる。
【0036】
図5においては心金20は2箇所の拡頭部20Bを有しており、このような複数の拡頭部20Bの設置は歪の分散を図り、心金及び金型の寿命の延長を図るため有効である。即ち、心金の拡頭部を1個としたとすると、圧入転造時に1つの拡頭部という短い幅で強力な張出力を伝達しながら大きなうねり歪を与える。心金圧入を左右の各々から6回繰返すとすると、与えられる大きなうねり歪の回数は12回となり金型の早期の疲労破壊が避けられない。この発明によれば、長手方向に間隔をおいて複数の拡頭部2〜6個設けることにより段階的な張出を行っているため荷重を1/2〜1/6に減少させることができる。そのため、心金の繰返し的な圧入により加わるうねり歪に対して金型の受ける圧縮による曲げ荷重(金型26の沈み量)軽減し、その延命を実現することができる。例えば、図5の2個の拡頭部の例では心金の圧入力を4.4 tfとすると各拡頭部20Bにおける圧入力としては4.4/2=2.2 tfに減少することができる。
【0037】
図5のように2個の拡頭部20Bの設置でも各拡頭部当たりの張出力は半分になり、そこそこの効果はあるが、圧入時のうねり歪に対する短寿命の懸念がまだある。これに対して図6のように拡頭部を4個設けることにより荷重の一層の細分化を図ることができる。即ち、この場合の1設計例について説明すると、l=1.5 mm、δ=0.015 mmとすると、1/δ=100であり、この場合心金圧入力を4.4tfとすると拡頭部は4箇所であるから各拡頭部での張出力Fは1.1×100=110 tfとなる。
【0038】
また、拡頭部20Bのピッチについて説明すると、心金20の移動により各拡頭部20Bが通過することによるうねり荷重により歯型26は曲げ荷重を受けるが、荷重の伝播角度は45度程度といわれている。図5において、扇状に広げられた矢印aにより各拡頭部20Bからの荷重の伝播方向を模式的に表している。したがって、ピッチが短すぎると隣接する拡頭部からの荷重が歯型高さとの関係では重畳され、金型に加わる荷重(矢印b)は大きくなり、歯型26の寿命が短縮する懸念がある。図5においてMの長さの部分で大きく重畳されており、荷重は大きくなる。図6では各拡頭部からの伝播角度a´が大きくは重畳されないようにピッチを分配したものであ、金型に加わる荷重はb´のように均等分散させることができる。45度の伝播角度a´を考慮すると歯形26の高さと拡頭部20B間のピッチとは大略等しくするのが妥当である。
【0039】
図5の2個の拡頭部20Bの場合ピッチ30 mmとすると、45度の伝播角度で歯型高さ=60 mmとすれば、歯型26の底部での受圧長さはおおよそ30×2=60mmであり、前述のように各拡頭部に加わる荷重が257 tfであることから全荷重は2×257=514 tfであり、歯型1 mm当たり荷重は514/60=8.56 tf/mmとなる。これに対して、図6の場合は拡頭部1個当たりの荷重は前述のように110 tfであり、したがって全体では4×110=440 tfであり、ピッチ40 mmとすると、歯型26の底部での受圧長さは40×4=160mmであり、歯型1 mm当たり荷重は440/160=2.75 tf/mmまで減少させることができることがわかる。荷重の2.75/8.56=0.32への低減は、金属の疲労破壊曲線図上の寿命差としては104〜5にも相当する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は中空ラックバーの圧入鍛造方式を概略的に示す図である。
【図2】図2は図1のII−II線に沿って表される断面図である。
【図3】図3は図1の歯型組立体の拡大詳細図である。
【図4】図4は歯型組立体の底面図である。
【図5】図5は2個の拡頭部による金型に加わる荷重を概略的に説明する図である。
【図6】図6は4個の拡頭部による金型に加わる荷重を概略的に説明する図である。
【符号の説明】
10…ラックバーの転造装置
12…歯型組立体
14…クランプダイ
18…素材管
20…心金
20A…芯金の案内部
20B…心金の拡頭部
22…歯型ホルダ
24…矩形凹部
24A…R部
26…ラック歯状歯型
27…金属製支持ライナ
28, 30…圧入駒
l…拡頭部の傾斜部有効長さ
δ…拡頭部張出量
Claims (10)
- 素型材としての中空パイプ材から中空ラックバーを転造する際に使用される歯型組立体であって、前記組立体は歯型と歯型ホルダとを供え、前記歯型は歯型ホルダに形成される凹部に取外し自在に挿入され、歯型ホルダの前記凹部内において歯型を長手方向に付勢することにより歯型を歯型ホルダにおける前記凹部に押付ける圧入駒を備え、かつ圧入駒に対向して歯型ホルダの前記凹部の底面には圧入駒の押出し用のピン孔が開口していることを特徴とする歯型組立体。
- 請求項1に記載の発明において、歯型を収容するための歯型ホルダの前記凹部は圧入駒と当接する長手方向の両端において凹部の幅に見合った径のR部を形成していることを特徴とする歯型組立体。
- 請求項1に記載の発明において、歯型ホルダの前記凹部の底面に歯型の底面と当接するライナを設置したことを特徴とする歯型組立体。
- 歯型とクランプダイとの間に保持される中空パイプ材の凹部に向けて圧入されることにより中空パイプ材に直線方向の歯型転造を行うのに使用する心金であって、心金の複数の拡頭部はその前方部位において長さと張出量の比が所定値の傾斜面を形成しており、前記所定値は芯金の移動時の金型に加わる張出力と中空パイプ材の凹部への芯金の挿入力との調和に応じて定められていると共に各拡頭部は微小の凹凸を有した表面をなしていることを特徴とする心金。
- 請求項4に記載の発明において、各拡頭部はその前後において油溜室を形成していることを特徴とする心金。
- 請求項4に記載の発明において、心金は一回の圧入の過程で張出を多段階に実施するため長手方向に間隔をおいて複数の拡頭部を備えていることを特徴とする心金。
- 請求項4に記載の発明において、前記複数の拡頭部は歯型の全高に応じたピッチにて配置されることを特徴とする心金。
- 請求項4に記載の発明において、拡頭部の外側においては心金は中空材の内径にて支持されていることを特徴とする心金。
- 請求項1から請求項8のいずれかに記載の発明において、歯型は数値制御のワイヤーカットマシンにより切削されていることを特徴とする歯型。
- 請求項1から請求項9のいずれかに記載の発明において、歯型はHRC硬さ51〜54に抑えられていることを特徴とする歯型。
Priority Applications (2)
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---|---|---|---|
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Applications Claiming Priority (1)
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Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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