JP3546586B2 - ゴム組成物、ゴム組成物の製造方法及びタイヤトレッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、加硫ゴムとした場合、ウェットスキッド抵抗および転動抵抗が十分に改善され、かつ表面のブリードがないため加工性に優れたゴム組成物、該ゴム組成物の製造方法及びタイヤトレッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
シリカおよびシランカップリング剤を含有してなるゴム組成物は、カーボンブラックを含有してなるゴム組成物と比べて、着色が容易であるという理由から、着色ゴム、白色ゴム用途に広く使用されており、室温域以上の温度領域におけるエネルギー損失が小さいという特性から、タイヤ用途などにも使用されている。しかしながら、シリカおよびシランカップリング剤を含有してなるゴム組成物は、加硫ゴムとした場合、ウェットスキッド抵抗および転動抵抗の改善が十分ではなく、かつ加工性が劣るいう問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは上記したような問題点がないゴム組成物について鋭意検討を重ねた結果、特定のポリアルキレングリコールを、シリカおよびシランカップリング剤を含有してなる溶液重合ジエン系ゴムに特定の温度で混練して得られるゴム組成物が、加硫ゴムとした場合、ウェットスキッド抵抗および転動抵抗が十分に改善されており、かつ加硫ゴムとした場合、表面のブリードがないため加工性が優れていることを見出し本発明を完成させるに至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明のうち第一の発明は、下記(A)成分100重量部、(B)成分5〜100重量部、(C)成分1〜15重量部および(D)成分1〜15重量部を含有し、混練時の最高温度が120〜170℃で混練して得られるゴム組成物に係るものである。
(A):溶液重合ジエン系ゴム
(B):シリカ
(C):シランカップリング剤
(D):重量平均分子量が200〜20000であるポリアルキレングリコール
【0005】
また、本発明のうち第二の発明は、下記(A)成分100重量部、(B)成分5〜100重量部、(C)成分1〜15重量部及び(D)成分1〜15重量部を含有し、混練時の最高温度が120〜170℃で混練するゴム組成物の製造方法に係るものである。
(A):溶液重合ジエン系ゴム
(B):シリカ
(C):シランカップリング剤
(D):重量平均分子量が200〜20000であるポリアルキレングリコール
【0006】
更に、本発明のうち第三の発明は、上記第一の発明のゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムを含有してなるタイヤトレッドに係るものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の(A)成分は溶液重合ジエン系ゴムである。該(A)成分は一般的な方法、例えば炭化水素溶媒中、有機リチウム化合物を開始剤として用いて得ることができる。溶液重合ジエン系ゴムの詳細構造は特に限定されないが、混練加工性の観点から、ムーニー粘度(ML1+4 125℃)が40〜140であることが好ましく、50〜120であることがさらに好ましい。また、混練加工性の観点から溶液重合ジエン系ゴムの製造時に、SiCl4 、SnCl4 等のカップリング剤を加えて、分岐状成分をその一部または全部に含むように製造されたものが好ましい。
【0008】
溶液重合ジエン系ゴムの具体例としては、溶液重合ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)などをあげることができる。タイヤ用途という観点からは、溶液重合ブタジエンゴムおよび溶液重合スチレン−ブタジエンゴムが好ましく、溶液重合スチレン−ブタジエンゴムがさらに好ましい。これらのゴムは、単独で用いても、また二種以上を併用してもよい。
【0009】
本発明の(B)成分はシリカである。シリカには、表面水酸基濃度、pH、粒子性状の違いによる様々な種類がある。本発明に使用されるシリカは特に限定されないが、DBA(ジブチルアミン)吸着量が100〜400mmol/kg)、BET比表面積が50〜300(m2 /g)、pHが5〜12のものが好ましい。
【0010】
本発明のゴム組成における(B)成分の含有量は、(A)成分100重量部あたり5〜100重量部、好ましくは30〜90重量部である。(B)成分が過少であると加硫物の機械的強度(引き裂き強度など)が低下し、一方(B)成分が過多であると混練加工性や加硫物の機械的強度が低下する。
【0011】
本発明の(C)成分はシランカップリング剤である。シランカップリング剤の具体例としては、下記化学式(1)又は(2)で表される化合物をあげることができる。なお、これらの化合物は、単独で用いてもよく、または二種以上を併用してもよい。
【0012】
【0013】
Rはメチル基又はエチル基を表し、エチル基であることが好ましい。aは1〜6の整数を表し、2〜5の整数であることが好ましい。bは1〜6の整数を表し、2〜5の整数であることが好ましい。Zはメルカプト基、エポキシ基、ビニル基又はアミノ基を表す。
【0014】
化学式(1)で表わされる化合物としては、例えば、ビスー(トリメトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビスー(2ートリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビスー(2ートリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビスー(2ートリメトキシシリルエチル)ペンタスルフィド、ビスー(2ートリメトキシシリルエチル)ヘキサスルフィド、ビスー(3ートリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビスー(3ートリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビスー(3ートリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビスー(3ートリメトキシシリルプロピル)ペンタスルフィド、ビスー(3ートリメトキシシリルプロピル)ヘキサスルフィド、ビスー(4ートリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、および上記化合物のメトキシ基がエトキシ基に置換された化合物などが挙げられる。
【0015】
化学式(2)で表わされる化合物としては、例えば、1ーメルカプトー2ートリメトキシシリルエタン、1ーメルカプトー3ートリメトキシシリルプロパン、1ーメルカプトー4ートリメトキシシリルブタン、1、2ーエポキシー3ートリメトキシシリルプロパン、1、2ーエポキシー4ートリメトキシシリルブタン、3ートリメトキシシリルー1ープロペン、4ートリメトキシシリルー1ーブテン、1ージメチルアミノー2ートリメトキシシリルエタン、1ージメチルアミノー3ートリメトキシシリルプロパン、1ージメチルアミノー4ートリメトキシシリルブタン、および上記化合物のメトキシ基がエトキシ基に置換された化合物などが挙げられる。
【0016】
化学式(1)または(2)で表わされる化合物の中で、ビスー(3ートリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビスー(3ートリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビスー(3ートリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが好ましい。
【0017】
本発明のゴム組成における(C)成分の含有量は、(A)成分100重量部あたり1〜15重量部、好ましくは2〜10重量部である。(C)成分が過少であると加硫速度及び加硫物の機械的強度が低下し、一方(C)成分が過多であると機械的強度の低下及び生産コストの増加を招く。なお、(C)成分として二種以上の化合物を併用する場合の上記含有量は、(C)成分として用いたすべての種類の化合物の総量とする。
【0018】
本発明の(D)成分は重量平均分子量が200〜20000であるポリアルキレングリコールである。(D)成分の重量平均分子量は、250〜10000であることが好ましく、300〜8000であることがさらに好ましい。ポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイドープロピレンオキサイドランダム共重合体、エチレンオキサイドープロピレンオキサイドブロック共重合体などをあげることができる。(D)成分の重量平均分子量が過小であると加硫ゴムの表面にブリードによる接着不良などが生じ、一方該分子量が過大であると、ウェットスキッド抵抗や転動抵抗の改善効果が低く、また加硫ゴム表面にブルーム現象が生じる。
【0019】
本発明のゴム組成における(D)成分の含有量は、(A)成分100重量部あたり1〜15重量部、好ましくは1〜12重量部である。(D)成分が過少であるとウェットスキッド抵抗や転動抵抗の改善効果が低く、一方(D)成分が過多であると機械的強度の低下や耐摩耗性の低下、更には加硫ゴム表面のブリードを招く。加硫ゴム表面のブリードは、本願組成物を含む加硫ゴムと他の材料との接着不良を招く。
【0020】
本発明のゴム組成物は、上記の(A)成分〜(D)成分の所定量を、混練時の最高温度が120〜170℃の条件下で混練することにより得られる。該温度が低過ぎると加硫ゴムの機械的強度が低下し、一方該温度が高過ぎると加硫ゴムの劣化を招く。混練は、たとえばロール、バンバリーなどの通常の混練機を用い、各成分が均一に混合されるまで混練すればよい。なお、混練にあたっては、本発明の必須成分である(A)成分〜(D)成分に加えて、天然ゴム、乳化重合ブタジエンゴム、乳化重合スチレン−ブタジエンゴムなどの一般的汎用ゴム、カーボンブラック、酸化防止剤、加工助剤、ステアリン酸、補強剤、充填剤、可塑剤、軟化剤など添加してもよい。
【0021】
本発明のゴム組成物に(A)成分以外の上記の汎用ゴムを添加して使用する場合、(A)成分に対する汎用ゴムの重量比率は、0.6以下が好ましく、0.45以下がさらに好ましい。
【0022】
汎用ゴムの重量比率が大きい場合、ウェットスキッド抵抗や転動抵抗の改善効果が低くなる場合がある。
【0023】
本発明のゴム組成物にカーボンブラックを添加して使用する場合、ヨウ素吸着量が60mg/g以上かつジブチルフタレート吸油量が80ml/100g以上のカーボンブラックを(A)成分100重量部あたり100重量部以下使用することが好ましく、60重量部以下使用することがさらに好ましい。
【0024】
本発明のゴム組成物を混練して得られる未加硫ゴムは、好ましくは100〜250℃、さらに好ましくは130〜200℃で加硫して加硫ゴムとすることができる。
【0025】
加硫剤としては、通常使用されるイオウ、パーオキサイドを使用し得るが、イオウが好ましい。加硫剤は、(A)成分 100重量部あたり0.1〜5重量部以下使用することが好ましく、0.5〜3重量部以下使用することがさらに好ましい。
【0026】
加硫促進剤としては、グアニジン系、スルフェンアミド系、チアゾール系などが好ましく使用し得る。これらは単独でも使用し得るが、2種以上組み合わせて使用することが好ましい。
【0027】
本発明のゴム組成物は、加硫ゴムとした場合、ウェットスキッド抵抗が高く、転動抵抗が低く、かつ表面のブリードがないため加工性に優れるという特徴を生かして、タイヤ用途に好適であり、特にタイヤトレッドに最適に利用される。
【0028】
本発明のゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムを含有してなるタイヤトレッドを含むタイヤを製造する方法としては、本発明のゴム組成物を含む未加硫ゴムをロール、ニーダーなどの通常使用される混練機によりシート状に成型した後、タイヤ母体に貼りつけ、さらにこの後、トレッドパターンの刻まれた金型中にいれて、加熱することにより加硫成型を行う方法などがあげられる。加硫成型の加熱温度は、100〜250℃が好ましく、130〜200℃であることがさらに好ましい。
【0029】
【実施例】
次に、実施例により本発明を説明するが、本発明が実施例により限定されないことは言うまでもない。
【0030】
実施例1〜8及び比較例1〜7
窒素置換した20リットルのステンレス反応器に、n−ヘキサン15リットル、テトラヒドロフラン195g、1,3−ブタジエン1420g、スチレン580g、n−ブチルリチウム8.7mmolを仕込み、攪拌下65℃にて4時間反応し、次いで四塩化珪素1.3mmolを投入し更に30分反応した。メタノール10ml次いでスミライザーBHT10gを加えた後真空乾燥により約2200gの(A1)を得た。
【0031】
表1に示す成分及びX−140(共同石油社製 オイル)50重量部及びダイヤブラックN339(三菱化学社製 HAFカーボンブラック)6.4重量部を、110℃に調整した1500mlのバンバリーミキサーに同時に投入し、ローター回転数150rpmで5分間混練した。次に、85℃に調整した8インチのオープンロールを用いて、共通配合として、サンノックN(大内新興化学社製老化防止剤)1.5重量部、アンチゲン3C(住友化学工業社製 老化防止剤)1.5重量部、酸化亜鉛2重量部及びステアリン酸2重量部を添加して混練した。更に、40℃に調整した8インチのオープンロールを用いて、Sox CZ(住友化学工業社製 加硫促進剤)1重量部、Sox D(住友化学工業社製 加硫促進剤)1重量部及び硫黄1.4重量部を添加・混練し、コンパウンドを得た。次に、該コンパウンドを160℃×30分間でプレス加硫して、加硫ゴムを得た。下記の方法に従い、評価を行った。結果を表1および2に示す。
【0032】
比較例8
混練時の最高温度を180℃とした以外は、実施例2と同様に実施した。得られた組成物はゲル化しており、加硫ゴムとすることができず、評価することはできなかった。
【0033】
〔評価方法〕
(1)引き裂き強度、ゴム弾性(300%モジュラス)
JIS−K−6252に準じて測定した。なお、引き裂き強度は、切込みなしアングル型試料を用いて測定した。引き裂き強度、ゴム弾性(300%モジュラス)ともに数値が大きい程、機械的強度が高いことを示す。本発明では、引き裂き強度が50kgf/cm2 以上、ゴム弾性(300%モジュラス)が120kgf/cm2 以上であることが好ましい。
(2)転動抵抗(tanδ)指数
東洋精機社製レオログラフソリッドL1Rを用い、(L)×(W)×(D)=50×5×2(mm)のサンプルを使用した以外はJIS K 6394に準じて、周波数10Hz、初期歪10%、振幅±0.25%、昇温速度2℃/分の条件下で測定することによりtanδ温度分散曲線を得、この曲線から0℃および60℃におけるtanδ値を求めた。実施例及び比較例のtanδ値は、比較例1のtanδ値を100とした指数で表した。0℃におけるtanδ値指数が大きい程、ウェットスキッド抵抗が大きく、また60℃におけるtanδ値指数が小さい程、転動抵抗が低いため、タイヤとして使用した場合などに優れた性能を発揮することを示す。本発明では、tanδ(0℃)指数が105以上、tanδ(60℃)指数が90以下であることが好ましい。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
*1 (A1):溶液重合SBR(スチレン単位/ビニル単位 29/49(wt%/%,ML1+4 121℃=91,SiCl4 をカップリング剤に使用)
(A2):天然ゴム(RSS#1)
*2 (B):シリカ(SiO2 )(ニプシルVN3 日本シリカ社製)
*3 (C):前記化学式(1)において、R=エチル基、a=3、b=4のものを用いた。
*4 (D1 ):重量平均分子量が400のポリエチレングリコール
(D2 ):重量平均分子量が4000のポリエチレングリコール
(D3 ):重量平均分子量が4000のポリプロピレングリコール
(D4 ):エチレングリコール(分子量=62)
【0037】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明により、機械的強度に優れ、かつ転動抵抗が低いためタイヤ用ゴムとして最適であり、しかも加硫速度が速いため生産効率に優れたゴム組成物、該ゴム組成物の製造方法及びタイヤトレッドを提供することができた。
Claims (5)
- 下記(A)成分100重量部、(B)成分5〜100重量部、(C)成分1〜15重量部及び(D)成分1〜15重量部を含有し、混練時の最高温度が120〜170℃で混練して得られるゴム組成物。
(A):溶液重合ジエン系ゴム
(B):シリカ
(C):シランカップリング剤
(D):重量平均分子量が200〜20000であるポリアルキレングリコール - (A)成分がブタジエンゴムまたはスチレン−ブタジエンゴムである請求項1記載のゴム組成物。
- 下記(A)成分100重量部、(B)成分5〜100重量部、(C)成分1〜15重量部及び(D)成分1〜15重量部を含有し、混練時の最高温度が120〜170℃で混練するゴム組成物の製造方法。
(A):溶液重合ジエン系ゴム
(B):シリカ
(C):シランカップリング剤
(D):重量平均分子量が200〜20000であるポリアルキレングリコール - 請求項1記載のゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムを含有してなるタイヤトレッド。
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