JP3546483B2 - 鋳鉄用局部耐熱強化方法及びこれに使用する溶接用線材 - Google Patents
鋳鉄用局部耐熱強化方法及びこれに使用する溶接用線材 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3546483B2 JP3546483B2 JP23723494A JP23723494A JP3546483B2 JP 3546483 B2 JP3546483 B2 JP 3546483B2 JP 23723494 A JP23723494 A JP 23723494A JP 23723494 A JP23723494 A JP 23723494A JP 3546483 B2 JP3546483 B2 JP 3546483B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- cast iron
- welding wire
- welding
- aluminum
- particles
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Nonmetallic Welding Materials (AREA)
- Heat Treatment Of Articles (AREA)
- Arc Welding In General (AREA)
Description
【産業上の利用分野】
本発明は、鋳鉄用局部耐熱強化方法及びこれに使用する溶接用線材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋳鉄材への溶接肉盛り用溶接材料としては、大別して純Ni及びNi+Fe (Ni単味の低コスト材料)の二種類が知られており、通常、アーク溶接用の溶接棒として市販されている。鋳鉄に溶接肉盛りする場合の条件としては▲1▼溶接肉盛り部に焼き入れ組織及び冷硬組織(チル)を生じないこと、▲2▼母材との濡れ性が良いこと、▲3▼溶接時のガス欠陥を生じないこと、▲4▼安価であること、▲5▼肉盛り部の性質が母材よりも優れていること、▲6▼溶接時に亀裂を生じないこと、があげられる。このような条件を満たすものとして、Ni系のものが高価ではあるが利用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところでこのようなNi系の溶接材料は、予熱或いは後熱が不要であるとされているが、実際には肉盛り部に冷硬組織及び焼き入れ組織が生じ、特に熱的負荷に極めて弱いものとなることが、本発明者らの実験によって確認されている。すなわち、鋳鉄材に対して溶接肉盛りにより耐熱強化を行う際には予熱・後熱が必ず要求され、工数が多く、時間がかかる作業になってしまうという問題があった。
【0004】
そこで本発明は、上記事情に鑑み、工数及び作業時間を削減できる鋳鉄用局部耐熱強化方法及びこれに使用する溶接用線材を提供すべく創案されたものである。なお本発明に関連する従来技術としては特開平4−4975号公報がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る溶接用線材は、鋳鉄材の強化対象の部位に溶接肉盛りを行うためのものであり、鞘材内部にカプセル粒子が充填された溶接用線材において、溶接肉盛りの際、上記強化対象の部位が溶融状態にある時に、チル防止のための接種剤としてのアルミを酸化を抑制した状態で溶融部に添加すべく、鋳鉄となじみ性のよい鉄系の上記鞘材内部に、Ni粉末の核粒子にそれよりも適宜小径のアルミ粒子を被覆させた上記カプセル粒子を充填させて成るものである。
【0006】
【作用】
上記構成によって、溶接用線材にカプセル粒子として含まれたNi粉末が、鋳鉄材の強化対象の部位に溶接肉盛りされる。鋳鉄となじみ性のよい鉄系の鞘材によって高温雰囲気或いは大気から遮断され、酸化が抑制されたアルミは、溶接金属が溶融状態にあるときに、接種剤として溶融部に添加され、チル防止効果が発揮される。
【0007】
【実施例】
以下、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
【0008】
図1は、本発明に係わる鋳鉄用局部耐熱強化方法及びこれに使用する溶接用線材の一実施例を示したものである。その鋳鉄用局部耐熱強化方法は、耐熱物質たるNi粉末と微量のアルミとを内部に含む溶接ワイヤ(溶接用線材)1により、鋳鉄材の強化対象の部位に溶接肉盛りを行うものであり、溶接ワイヤ1は、鋳鉄となじみ性のよい鉄系の鞘材内部に、Ni粉末及びアルミ粒子によるカプセル粒子が充填されて構成されている。
【0009】
Ni粉末及びアルミ粒子のカプセル粒子を製造するには、ハイブリダイゼーション法が適している。すなわち図2に示すように、粒径が約100 〜500 μmのNi粉末の粒子2の表面に、粒径約5 〜50μmのアルミ粒子3を強固に付着させて被覆させ、カプセル粒子4を得る。アルミは微量でよく、例えば溶接ワイヤ1全体に対して約4 %の量とする。このカプセル粒子4の粉末を、鞘材となる鋳鉄となじみ性のよい鉄系の素材で成るパイプ内部に充填し、これを線引きして直径1.2mm 程度の溶接ワイヤ1を製造する。この溶接ワイヤ1を、図1に示したようなMIG溶接装置5にセットする。
【0010】
MIG溶接装置5は、Ar等の不活性ガスをシールドガスとして吹き出すためのノズル6と、溶接ワイヤ1を順次送り出すためのワイヤ供給機構17とを備え、その溶接ワイヤ1を消耗電極にしてアーク溶接を行うものである。このMIG溶接装置5を、耐熱強化対象の鋳鉄材の部位7に対向させる。耐熱強化対象としては、例えば図3に示すような高負荷エンジン用の鋳鉄製シリンダヘッドの下面8があげられる。特に図中斜線Aにて示したように、他の部位よりも比較的肉薄な、吸気ポート9と排気ポート10の間(弁間部)及びこれらポート9,10と燃料噴射ノズル孔(予燃焼室孔)11との間の部分が、耐熱強化すべき部位となる。そしてMIG溶接装置5を所定の電圧E,電流I,速度で、弁間部と燃料噴射ノズル孔11とを結ぶ線12に沿って相対移動させ(溶接方向B)、溶接肉盛りにより所定量のNi成分が溶け込んだ溶接金属(耐熱合金層)13を形成して行く。この溶接肉盛りの過程で、溶接ワイヤ1の内部に含まれ、鞘材によって高温雰囲気或いは大気から遮断して酸化を抑制したアルミは、溶接金属13が溶融状態にあるときに、接種剤として溶融部に添加され、チル防止効果が発揮される。
【0011】
このアルミのチル防止効果は、鉄の鋳造技術において利用されている。すなわち大規模な工場等において、キュポラ溶解した鋳鉄溶湯の保持炉から鋳込み用取鍋に移す際に、鋳鉄の黒鉛化及び金属組織の正常化のためにアルミ接種(約1 〜10%のアルミ及びアルミ合金の添加)が行われている。ただしこの方法のデメリットとして、アルミが溶湯の流れにはじかれて歩留まりが悪い、直接高温の雰囲気に晒されるために酸化しやすくドロス欠陥を引き起こす、フェーディング現象で接種剤の効果が時間の経過につれ低下する、といった事項があげられる。特に酸化防止のためには、元湯も低Si成分とする必要がある、或いはアルミと同時にカルシウム系の接種剤を必要とする、という不都合があった。
【0012】
これに対して本発明によるアルミ添加は、フェーディング現象がなく、しかも非常に微量の添加で接種剤と同等以上の効果が得られるものである。そして、アルミは、鋳鉄となじみ性のよい鉄系の鞘材内に充填されているために、アルミが高温雰囲気或いは大気に触れることがなく、酸化のおそれがない。従ってカルシウム系の接種剤が不要であり、ドロス欠陥が生じることもない。こうした利点は、溶解法(インゴットモールド法)と比べ、短時間で凝固する溶接肉盛りの特長を生かしたことによるものである。すなわちアルミのチル防止作用を有効に発揮させることで、予熱や後熱を行わなくてすみ、溶接ワイヤ1を使用した溶接肉盛りにより鋳鉄材の局部耐熱強化を行うに際して、大幅な工数及び作業時間の削減が達成される。また本実施例にあっては、カプセル粒子4の形でNi及びアルミの粉末を溶接ワイヤ1の内部に含有(充填)させたので、均一な耐熱合金層13が形成できると共に、万遍無くアルミを溶融部に添加することができる。
【0013】
次に具体的な実施例として、本発明者らが上記実施例に従って肉盛り溶接した実験結果を示す。溶接条件としては、カプセル粒子4を内部に充填させた溶接ワイヤ1の径を1.2mm 、MIG溶接装置5の電流Iを300 A、電圧Eを30V、溶接速度を200mm/min 、シールドガスをArとした。この溶接条件下で図4及び図5に示すように、鋳鉄材21に対して、予熱及び後熱なしで肉盛り溶接を行った後、硬度を測定した。硬度測定は肉盛り部22の中央を基準とし、表面よりも若干下方の位置23を、肉盛り部22、ボンド部(熱影響部を含む)24、母材21の各部分に亘って1mm 間隔で、溶接方向Bの三箇所(始端部S,中央部C,終端部E)について行った。また対比のために、同じ溶接条件下で行った純Ni製の溶接ワイヤによる溶接肉盛りに対しても、同様に測定した。この硬度測定結果を図6及び図7に示す。図6に示したように、本発明のものは、肉盛り部22及びボンド部24に、母材21の硬度値と比べて大幅な硬度アップはなかった。また純Ni製の溶接ワイヤのものよりも低めの硬度値が得られた。図7のボンド部24における純Ni製の溶接ワイヤのものとの比較では、本発明のものが約130 〜170 Hv、硬度が低かった。さらに本発明の肉盛り部22の金属組織写真をみてもチル及び焼き入れ組織の存在は認められなかった。すなわちこの実験で、本発明の方法によるアルミ添加がチル防止に極めて効果的に作用していることがあきらかとなり、本発明が極めて有効であることが実証された。
【0014】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、耐熱物質の溶接肉盛りによって対象部位を耐熱強化できると共に、予熱及び後熱が不要になって、工数及び作業時間を削減できるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる鋳鉄用局部耐熱強化方法及びこれに使用する溶接用線材の一実施例を示した側断面図である。
【図2】本発明に係わる溶接用線材を説明するためのカプセル粒子の断面図である。
【図3】鋳鉄材の強化対象の部位であるシリンダヘッドの下面図である。
【図4】本発明の作用効果を示す肉盛り溶接の実験条件を説明するための断面図である。
【図5】図4の斜視図である。
【図6】本発明の作用効果を説明するための肉盛り溶接の実験結果を示した硬度分布図である。
【図7】本発明の作用効果を説明するための肉盛り溶接の実験によるボンド部の硬度測定結果図である。
【符号の説明】
1 溶接ワイヤ(溶接用線材)
2 Ni粉末の粒子(耐熱物質の核粒子)
3 アルミ粒子
4 カプセル粒子
7 強化対象の部位
8 シリンダヘッド(鋳鉄材)の下面
Claims (1)
- 鋳鉄材の強化対象の部位に溶接肉盛りを行うためのものであり、鞘材内部にカプセル粒子が充填された溶接用線材において、溶接肉盛りの際、上記強化対象の部位が溶融状態にある時に、チル防止のための接種剤としてのアルミを酸化を抑制した状態で溶融部に添加すべく、鋳鉄となじみ性のよい鉄系の上記鞘材内部に、Ni粉末の核粒子にそれよりも適宜小径のアルミ粒子を被覆させた上記カプセル粒子を充填させて成ることを特徴とする溶接用線材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23723494A JP3546483B2 (ja) | 1994-09-30 | 1994-09-30 | 鋳鉄用局部耐熱強化方法及びこれに使用する溶接用線材 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23723494A JP3546483B2 (ja) | 1994-09-30 | 1994-09-30 | 鋳鉄用局部耐熱強化方法及びこれに使用する溶接用線材 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0899171A JPH0899171A (ja) | 1996-04-16 |
JP3546483B2 true JP3546483B2 (ja) | 2004-07-28 |
Family
ID=17012379
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP23723494A Expired - Fee Related JP3546483B2 (ja) | 1994-09-30 | 1994-09-30 | 鋳鉄用局部耐熱強化方法及びこれに使用する溶接用線材 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3546483B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP3572175A1 (de) * | 2018-05-23 | 2019-11-27 | Siemens Aktiengesellschaft | Fertigungs- und reparaturschweissen von gusseisen mit kugelgraphit |
-
1994
- 1994-09-30 JP JP23723494A patent/JP3546483B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0899171A (ja) | 1996-04-16 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP0445818B1 (en) | Method of modifying surface qualities of metallic articles and apparatus therefor | |
CA2040942C (en) | Methods of strengthening aluminum castings in the specified local part | |
EP0130626A2 (en) | Composite metal articles | |
CN101322003B (zh) | 冷却元件及其制造方法 | |
JP2006516313A (ja) | 弁座及び弁座を製造する方法 | |
JP2005514522A (ja) | 冶金炉のための冷却板及びかかる冷却板を製造する方法 | |
JP3546483B2 (ja) | 鋳鉄用局部耐熱強化方法及びこれに使用する溶接用線材 | |
JPS6334311B2 (ja) | ||
JPS62501548A (ja) | 連続鋳造法 | |
JP3845819B2 (ja) | ガスタービン翼及びその製造方法 | |
JPH01208446A (ja) | 中性子吸収性アルミニウム材料 | |
JPH11236611A (ja) | 高炉用ステーブ | |
JPH1052758A (ja) | 粉体プラズマ肉盛溶接法及びその装置 | |
JP3161857B2 (ja) | 鋳物と異種合金の接合方法 | |
JPH054941Y2 (ja) | ||
JP2004074202A (ja) | 表面被覆鋳造方法 | |
JP3182852B2 (ja) | アルミ合金鋳物製シリンダヘッド等の耐熱強化用溶接ワイヤ | |
JPH10235492A (ja) | 鋳鉄肉盛強化用溶接材 | |
JP2796582B2 (ja) | エンジンバルブへの盛金材料の肉盛溶接方法 | |
JPS6313659A (ja) | 鋼塊の製造方法 | |
JP2002066719A (ja) | 冷却管の鋳ぐるみ方法 | |
JPS56144869A (en) | Film formation | |
JPS63299858A (ja) | 超耐熱材料等の溶接方法 | |
JPS591770B2 (ja) | 管の内面硬化法 | |
KR790001378B1 (ko) | 입향(立向)"아아크"(Arc)용접법 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20031216 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20040206 |
|
A911 | Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911 Effective date: 20040218 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20040323 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20040405 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |