JP3545993B2 - ガス吸収特性が改良された誘電組成物 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明はガス吸収特性が改良された電気材料用の鉱油をベースにした誘電組成物に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
変圧器、コンデンサー、ケーブル等の各種電気機器には鉱油が絶縁油として用いられる。この鉱油は各種の化合物で構成され、パラフィン鎖、ナフテン化合物とよばれる飽和環式化合物、縮合ポリ芳香族を含む芳香族構造のもの等からなる。
【０００３】
芳香族化合物は鉱油の破壊電圧を向上させ、いわゆるガス吸収特性（ｇａｓｓｉｎｇ）を良くする。このガス吸収特性は高電磁場におけるオイルの挙動特性の一つである。すなわち、気体の水素の存在下で、オイルはさらに水素ガスを出すか（ガス発生型）、水素を吸収する（ガス吸収型）のいずれかの挙動をする。電気機器の場合にはガス吸収型のオイルが望ましい。
【０００４】
縮合ポリ芳香族は種類が多様であるが、その大部分は発癌性がある。そのため、鉱油中のポリ芳香族の含有量を減らすために鉱油に水素化処理をする。しかし、この水素化処理によって、毒性の少ない他の芳香族も消えてしまうという欠点がある。
【０００５】
【発明が解決する課題】
本件出願人は、少量のポリアリールアルカン族の化合物を用いて鉱油のガス吸収特性を改良する方法を見い出した。
【０００６】
【課題を解決する手段】
本発明の対象は、９９〜７０重量％、好ましくは９９〜８０重量％の鉱油と、１〜３０重量％、好ましくは１〜２０重量％の下記（ａ）〜（ｄ）の中から選択される少なくとも一種のポリアリールアルカン組成物とからなる電気機器用の誘電組成物にある：
（ａ） 下記の式（Ａ）の化合物と式（Ｂ）の化合物との混合物から成る組成物（Ｉ）：
【０００７】
【化８】
【０００８】
（ここで、ｎ１およびｎ２＝０または１であり、ｎ１＋ｎ２＝０である化合物（Ａ）およびｎ１＋ｎ２＝１である化合物（Ａ）を含む）
【０００９】
【化９】
【００１０】
（ｂ） 下記２つの化合物（Ｃ）と（Ｄ）の混合物から成る組成物（ＩＩ）：
（１ ）化合物（Ｃ）は下記式の異性体混合物：
【００１１】
【化１０】
【００１２】
（ここて、ｐ１およびｐ２＝０，１または２で且つｐ１＋ｐ２≦３）
（２） 化合物（Ｄ）は下記式の異性体混合物：
【００１３】
【化１１】
【００１４】
（ここで、ｐ’１、ｐ’’１およびｐ４＝０，１または２、ｐ’２、ｐ’’２、ｐ３およびｐ５＝０または１で且つｐ’１＋ｐ’’１＋ｐ’２＋ｐ’’２＋ｐ３＋ｐ’３＋ｐ４＋ｐ５≦２）
（ｃ） 下記の２つの化合物（Ａ１）と（Ａ２）の混合物から成る組成物（ＩＩＩ）：
（１） 化合物（Ａ１）は下記式の異性体混合物：
【００１５】
【化１２】
【００１６】
（ここで、ｍ１およびｍ２＝０，１または２で且つｍ１＋ｍ２≦３）
（２） 化合物（Ａ２）は下記式の異性体混合物：
【００１７】
【化１３】
【００１８】
（ここで、ｑ１およびｑ２＝０，１または２で且つｑ１＋ｑ２≦３で、化合物（Ａ１）と（Ａ２）の少なくとも一方は３個のベンゼン核を有する異性体から成る）
（ｄ） 上記の２つの化合物（Ａ１）および（Ａ２）の他に下記化合物（Ｅ１）、（Ｅ２）および（Ｅ３）の中から選択された少なくとも一種の化合物とをさらに含む組成物（ＩＶ）：
（１） （Ｅ１）は下記式の異性体の一つまたは異性体混合物：
【００１９】
【化１４】
【００２０】
（ここで、Ｒ１およびＲ２は水素原子を表し、ｒ’１、ｒ’’１およびｒ４＝０，１または２、ｒ’２、ｒ’’２、ｒ３およびｒ５＝０または１で且つｒ’１＋ｒ’’１＋ｒ’２＋ｒ’’２＋ｒ３＋ｒ’３＋ｒ４＋ｒ５≦２）
（２） （Ｅ２）は（Ｅ１）と同じ一般式の異性体の一つまたは異性体混合物であるが、Ｒ１およびＲ２がメチルで、ｒはｓで置換され、このｓは上記と同一の意味を有するもの、
（３） （Ｅ３）は（Ｅ１）と同じ一般式の異性体の一つまたは異性体混合物であるが、Ｒ１およびＲ２が水素原子またはメチル基で、ｒはｔで置換され、このｔは上記と同一の意味を有するもの。
【００２１】
【実施の態様】
本発明では、組成物（Ｉ）は２つの核から成る化合物（Ａ）：（メチルベンジル）キシレンと、３つの核から成る化合物（Ａ）：ビス（メチルベンジル）キシレンとから成ることができる。３つの核から成る化合物（Ａ）はｎ１＝１かつｎ２＝０となる化合物、ｎ１＝０かつｎ２＝１となる化合物またはこれら２つの化合物の混合物にすることができる。ポリアリールアルカン組成物はｎ１＝１かつｎ２＝１となる化合物を含むことができる。
【００２２】
本発明で使用できる組成物（Ｉ）の例としては、２個の芳香核から成る化合物と個の芳香核から成る化合物との含有量（重量％）が９９％以上であるエルフ・アトケム社からＪａｒｉｓｏｌ ＸＸの名称で市販のポリアリールアルカン組成物が挙げられる。
本発明で使用できる組成物（ＩＩ）の例としてはエルフ・アトケム社からＪａｒｉｌｅｃ Ｃ１００の名称で市販のポリアリールアルカン組成物が挙げられる。この組成物は７０〜８０重量％のベンジルトルエン異性体混合物（化合物（Ｃ）のｐ１＝ｐ２＝０）と、２０〜３０重量％のジベンジルトルエン異性体混合物（化合物（Ｃ）のｐ１＝１、ｐ２＝０またはｐ１＝０、ｐ２＝１）およびジトリルフェニールメタン異性体（化合物（Ｄ）でｐ’１＋ｐ’’１＋ｐ’２＋ｐ’’２＋ｐ３＋ｐ’３＋ｐ４＋ｐ５＝０）とで構成される。
【００２３】
これらの組成物は本願明細書の一部をなす欧州特許第１３６，２３０号、第２９９，８６７号、第３８４，８１８号および第５００，４３５号に記載の方法で得られる。すなわち、トルエンまたはキシレンを塩素化し、フリーデル・クラフト型縮合をトルエン、キシレン（異性体混合物）、トルエン／キシレン混合物、ベンゼンまたはベンゼンとトルエンの混合物に対して行ない、反応終了時に未変換の反応材料を蒸留によって直接除去し、粗生成物を欧州特許第３０６，３９８号に記載の脱塩素化処理する。
【００２４】
例えば、組成物（ＩＩ）は、第一段階で５０〜１１０℃の温度でフリーラジカル発生剤の存在下のラジカル反応で塩素をトルエンと反応させ、第１段階からの反応化合物を第２段階で５０〜１００℃の温度でＦｅＣｌ３の存在下でトルエンと縮合させる欧州特許第１３６，２３０号に記載の方法で得られる。
組成物（Ｉ）は、ＦｅＣｌ３の存在下で塩化（メチル）ベンジルをキシレンと縮合する欧州特許第０５０，４３５号に記載の方法で得られる。
本発明の誘導組成物は気体に対する挙動が向上（ガス吸収特性が向上）するという利点がある。
以下、本発明の実施例を説明する。
【００２５】
【実施例】
「ガス吸収特性」はＩｎｔｅｒｎａｔｉｏｎａｌ Ｅｌｅｃｔｒｏｔｅｃｈｎｉｃａｌ Ｃｏｍｍｉｓｓｉｏｎ （ＩＥＣ）の６２８規格の方法を用いて評価した。この方法では液体カラムと一定量の水素との界面で互いに異なる電位の２つの電極間で放電させ、気体量の変化を時間の関数でモニターする。「ガス吸収特性」はμｌ／分で表され、この値はガスが放出されると正になり、ガスが吸収されると負になる。
気体発生型のパラフィン型鉱油と、Ｊａｒｉｓｏｌ ＸＸ（ＸＸで表示）との種々の混合物を作り、結果をＩＥＣ ６２８−Ａ法で８０℃で評価した。ガス吸収特性の結果は［表１］に示してある。
【００２６】
【表１】
【００２７】
気体発生型（正のガス吸収特性）の水素化度の異なるナフテンの鉱油と、Ｊａｒｙｌｅｃ ｃ１００（ｃ１００で表示）との種々の混合物を作り、ＩＥＣ ６２８−Ａ法で８０℃で評価した。ガス吸収特性の結果は［表２］に示す。
【００２８】
【表２】
【発明の属する技術分野】
本発明はガス吸収特性が改良された電気材料用の鉱油をベースにした誘電組成物に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
変圧器、コンデンサー、ケーブル等の各種電気機器には鉱油が絶縁油として用いられる。この鉱油は各種の化合物で構成され、パラフィン鎖、ナフテン化合物とよばれる飽和環式化合物、縮合ポリ芳香族を含む芳香族構造のもの等からなる。
【０００３】
芳香族化合物は鉱油の破壊電圧を向上させ、いわゆるガス吸収特性（ｇａｓｓｉｎｇ）を良くする。このガス吸収特性は高電磁場におけるオイルの挙動特性の一つである。すなわち、気体の水素の存在下で、オイルはさらに水素ガスを出すか（ガス発生型）、水素を吸収する（ガス吸収型）のいずれかの挙動をする。電気機器の場合にはガス吸収型のオイルが望ましい。
【０００４】
縮合ポリ芳香族は種類が多様であるが、その大部分は発癌性がある。そのため、鉱油中のポリ芳香族の含有量を減らすために鉱油に水素化処理をする。しかし、この水素化処理によって、毒性の少ない他の芳香族も消えてしまうという欠点がある。
【０００５】
【発明が解決する課題】
本件出願人は、少量のポリアリールアルカン族の化合物を用いて鉱油のガス吸収特性を改良する方法を見い出した。
【０００６】
【課題を解決する手段】
本発明の対象は、９９〜７０重量％、好ましくは９９〜８０重量％の鉱油と、１〜３０重量％、好ましくは１〜２０重量％の下記（ａ）〜（ｄ）の中から選択される少なくとも一種のポリアリールアルカン組成物とからなる電気機器用の誘電組成物にある：
（ａ） 下記の式（Ａ）の化合物と式（Ｂ）の化合物との混合物から成る組成物（Ｉ）：
【０００７】
【化８】
（ここで、ｎ１およびｎ２＝０または１であり、ｎ１＋ｎ２＝０である化合物（Ａ）およびｎ１＋ｎ２＝１である化合物（Ａ）を含む）
【０００９】
【化９】
（ｂ） 下記２つの化合物（Ｃ）と（Ｄ）の混合物から成る組成物（ＩＩ）：
（１ ）化合物（Ｃ）は下記式の異性体混合物：
【００１１】
【化１０】
（ここて、ｐ１およびｐ２＝０，１または２で且つｐ１＋ｐ２≦３）
（２） 化合物（Ｄ）は下記式の異性体混合物：
【００１３】
【化１１】
（ここで、ｐ’１、ｐ’’１およびｐ４＝０，１または２、ｐ’２、ｐ’’２、ｐ３およびｐ５＝０または１で且つｐ’１＋ｐ’’１＋ｐ’２＋ｐ’’２＋ｐ３＋ｐ’３＋ｐ４＋ｐ５≦２）
（ｃ） 下記の２つの化合物（Ａ１）と（Ａ２）の混合物から成る組成物（ＩＩＩ）：
（１） 化合物（Ａ１）は下記式の異性体混合物：
【００１５】
【化１２】
（ここで、ｍ１およびｍ２＝０，１または２で且つｍ１＋ｍ２≦３）
（２） 化合物（Ａ２）は下記式の異性体混合物：
【００１７】
【化１３】
（ここで、ｑ１およびｑ２＝０，１または２で且つｑ１＋ｑ２≦３で、化合物（Ａ１）と（Ａ２）の少なくとも一方は３個のベンゼン核を有する異性体から成る）
（ｄ） 上記の２つの化合物（Ａ１）および（Ａ２）の他に下記化合物（Ｅ１）、（Ｅ２）および（Ｅ３）の中から選択された少なくとも一種の化合物とをさらに含む組成物（ＩＶ）：
（１） （Ｅ１）は下記式の異性体の一つまたは異性体混合物：
【００１９】
【化１４】
（ここで、Ｒ１およびＲ２は水素原子を表し、ｒ’１、ｒ’’１およびｒ４＝０，１または２、ｒ’２、ｒ’’２、ｒ３およびｒ５＝０または１で且つｒ’１＋ｒ’’１＋ｒ’２＋ｒ’’２＋ｒ３＋ｒ’３＋ｒ４＋ｒ５≦２）
（２） （Ｅ２）は（Ｅ１）と同じ一般式の異性体の一つまたは異性体混合物であるが、Ｒ１およびＲ２がメチルで、ｒはｓで置換され、このｓは上記と同一の意味を有するもの、
（３） （Ｅ３）は（Ｅ１）と同じ一般式の異性体の一つまたは異性体混合物であるが、Ｒ１およびＲ２が水素原子またはメチル基で、ｒはｔで置換され、このｔは上記と同一の意味を有するもの。
【００２１】
【実施の態様】
本発明では、組成物（Ｉ）は２つの核から成る化合物（Ａ）：（メチルベンジル）キシレンと、３つの核から成る化合物（Ａ）：ビス（メチルベンジル）キシレンとから成ることができる。３つの核から成る化合物（Ａ）はｎ１＝１かつｎ２＝０となる化合物、ｎ１＝０かつｎ２＝１となる化合物またはこれら２つの化合物の混合物にすることができる。ポリアリールアルカン組成物はｎ１＝１かつｎ２＝１となる化合物を含むことができる。
【００２２】
本発明で使用できる組成物（Ｉ）の例としては、２個の芳香核から成る化合物と個の芳香核から成る化合物との含有量（重量％）が９９％以上であるエルフ・アトケム社からＪａｒｉｓｏｌ ＸＸの名称で市販のポリアリールアルカン組成物が挙げられる。
本発明で使用できる組成物（ＩＩ）の例としてはエルフ・アトケム社からＪａｒｉｌｅｃ Ｃ１００の名称で市販のポリアリールアルカン組成物が挙げられる。この組成物は７０〜８０重量％のベンジルトルエン異性体混合物（化合物（Ｃ）のｐ１＝ｐ２＝０）と、２０〜３０重量％のジベンジルトルエン異性体混合物（化合物（Ｃ）のｐ１＝１、ｐ２＝０またはｐ１＝０、ｐ２＝１）およびジトリルフェニールメタン異性体（化合物（Ｄ）でｐ’１＋ｐ’’１＋ｐ’２＋ｐ’’２＋ｐ３＋ｐ’３＋ｐ４＋ｐ５＝０）とで構成される。
【００２３】
これらの組成物は本願明細書の一部をなす欧州特許第１３６，２３０号、第２９９，８６７号、第３８４，８１８号および第５００，４３５号に記載の方法で得られる。すなわち、トルエンまたはキシレンを塩素化し、フリーデル・クラフト型縮合をトルエン、キシレン（異性体混合物）、トルエン／キシレン混合物、ベンゼンまたはベンゼンとトルエンの混合物に対して行ない、反応終了時に未変換の反応材料を蒸留によって直接除去し、粗生成物を欧州特許第３０６，３９８号に記載の脱塩素化処理する。
【００２４】
例えば、組成物（ＩＩ）は、第一段階で５０〜１１０℃の温度でフリーラジカル発生剤の存在下のラジカル反応で塩素をトルエンと反応させ、第１段階からの反応化合物を第２段階で５０〜１００℃の温度でＦｅＣｌ３の存在下でトルエンと縮合させる欧州特許第１３６，２３０号に記載の方法で得られる。
組成物（Ｉ）は、ＦｅＣｌ３の存在下で塩化（メチル）ベンジルをキシレンと縮合する欧州特許第０５０，４３５号に記載の方法で得られる。
本発明の誘導組成物は気体に対する挙動が向上（ガス吸収特性が向上）するという利点がある。
以下、本発明の実施例を説明する。
【００２５】
【実施例】
「ガス吸収特性」はＩｎｔｅｒｎａｔｉｏｎａｌ Ｅｌｅｃｔｒｏｔｅｃｈｎｉｃａｌ Ｃｏｍｍｉｓｓｉｏｎ （ＩＥＣ）の６２８規格の方法を用いて評価した。この方法では液体カラムと一定量の水素との界面で互いに異なる電位の２つの電極間で放電させ、気体量の変化を時間の関数でモニターする。「ガス吸収特性」はμｌ／分で表され、この値はガスが放出されると正になり、ガスが吸収されると負になる。
気体発生型のパラフィン型鉱油と、Ｊａｒｉｓｏｌ ＸＸ（ＸＸで表示）との種々の混合物を作り、結果をＩＥＣ ６２８−Ａ法で８０℃で評価した。ガス吸収特性の結果は［表１］に示してある。
【００２６】
【表１】
気体発生型（正のガス吸収特性）の水素化度の異なるナフテンの鉱油と、Ｊａｒｙｌｅｃ ｃ１００（ｃ１００で表示）との種々の混合物を作り、ＩＥＣ ６２８−Ａ法で８０℃で評価した。ガス吸収特性の結果は［表２］に示す。
【００２８】
【表２】
Claims (4)
- ９９〜７０重量％の鉱油と、１〜３０重量％の下記(a)または (b)の中から選択される少なくとも一種のポリアリールアルカン組成物とからなる電気機器用の誘電組成物：
(a) 下記の式(A)の化合物と式(B)の化合物との混合物から成る組成物(I)：
（1) 化合物(C)は下記式の異性体混合物：
（2) 化合物(D)は下記式の異性体混合物：
- 組成物(I)の芳香核を２つ含む化合物と３つ含む化合物の含有率が９９重量％以上である請求項１に記載の組成物。
- 組成物(II)が７０〜８０重量％のベンジルトルエン異性体混合物（化合物(C)でｐ1＝ｐ2＝０）と、２０〜３０重量％のジベンジルトルエン異性体混合物（化合物(C)でｐ1＝１、ｐ2＝０またはｐ1＝０、ｐ2＝１）およびジトリルフェニールメタン異性体とで構成される請求項１に記載の組成物。
- ９９〜８０重量％の鉱油と、１〜２０重量％の(I)または (II) から選択した少なくとも一種のポリアリールアルカン組成物とを含む請求項１〜３のいずれか一項に記載の組成物。
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| JP3545993B2 true JP3545993B2 (ja) | 2004-07-21 |
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| JP2000169594A Expired - Fee Related JP3545993B2 (ja) | 1999-06-07 | 2000-06-06 | ガス吸収特性が改良された誘電組成物 |
| JP2004044334A Pending JP2004143468A (ja) | 1999-06-07 | 2004-02-20 | ガス吸収特性が改良された誘電組成物 |
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| JP2004044334A Pending JP2004143468A (ja) | 1999-06-07 | 2004-02-20 | ガス吸収特性が改良された誘電組成物 |
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