JP3545745B2 - 工作物に開口部を機械加工する方法 - Google Patents

Description

【０００１】
本発明は、工作物に開口部を、特に定速度ジョイント用のボールケージに窓を機械加工する方法であって、回転軸線を中心に回転し、距離をおいた状態で回転軸線と並んで配置された２つの切削刃であって、これらの両方を通って延びる切削刃軸線を定める２つの切削刃を備えた切削工具を準備する工程と、機械加工されるべき２つの対向して位置した開口部縁を通って延びる開口部仮想軸線が切削刃軸線に対して所定の整列関係で配置されるように工作物を切削工具の近くで支持する工程と、一方の切削刃で一方の開口部縁を切削すると共に他方の切削刃で他方の開口部縁を切削することにより工作物の開口部縁を機械加工して両方の開口部縁が仕上げ状態において開口部軸線と並んで互いに所要距離を置くようにする工程とを有する方法に関する。
【０００２】
ほぼすべての乗用車には、２つの定速度ジョイントが必要である。これら定速度ジョイントの製造にあたり、非常に正確な許容誤差を持つ２つの窓をボールケージに設ける必要がある。遊び無くボールを案内するためには、その寸法を１／１，０００ｍｍまで制御しなければならない。代表的には、ボールケージの窓をまず最初に穴あけし、次に、単刃フライス（ミリングカッタ）を用いて仕上げ、このフライスは、動力供給シャフトに取り付けられている。この手順の際に生じる切削刃の摩耗は、無視することができない検討事項である。
【０００３】
欧州特許出願公開明細書ＥＰ０９５２３６４Ａ１は、ボールケージの窓を仕上げるかかる方法又は手順を記載している。かかる方法において、窓の高さ及び幅についての正確な寸法を維持するため、代表的には、窓の一方の縁をまず最初に一方の切削刃で機械加工し、次に、窓の対向した縁を対向した切削刃で機械加工する。ここで、窓の寸法を再び測定することにより切削工具の摩耗のバランスをとり、そしてもし許容誤差を越えていそうなことが分かると、各切削刃の位置をそれぞれの許容限度に動かす。このようにすると、切削工具の摩耗にもかかわらず窓の寸法に関する非常に厳密な許容誤差を維持することができる。かかる手順の欠点は、機械加工時間が比較的長いことにある。欧州特許出願公開明細書ＥＰ０９５２３６４Ａ１から、２つの対向した窓の開口部縁を１つの切削工具で同時に機械加工することができ、これにより、機械加工時間が短くなることが知られている。しかしながら、この技術文献では、切削工具の摩耗及びこれに伴う作動停止が生じた場合に、厳しい許容誤差に関する要件をどのようにして満たすことができるかについては手がかりが与えられていない。
【０００４】
これに鑑みて、本発明の目的は、高い寸法精度を維持し、工作物に開口部を設ける時間を減少させる冒頭に記載した種類の方法を改良することにある。
【０００５】
本発明によれば、２つの切削刃を、開口部縁相互間の所要の距離よりも大きな距離を置いて切削刃軸線に沿って位置決めする工程と、開口部軸線及び切削刃軸線を初期状態では互いに対して鋭角をなして傾斜させて開口部軸線に平行な切削刃相互間の距離が、開口部縁相互間の所要の距離に等しいようにする工程と、切削刃の摩耗につれて傾斜角を減少させて開口部軸線に平行な切削刃距離が開口部縁相互間の所要の距離に一致し続けるようにする工程とを更に有する上記種類の方法によって首尾よく達成される。
【０００６】
本発明の方法によれば、工作物の開口部を、１回の機械加工作業、即ち、たった１回の工程で機械加工することができ、かくして、機械加工時間を機械加工の精度に悪影響を及ぼすことなく半減させることができる。切削刃軸線が機械加工されるべき開口部の中心軸線に対して傾けられると共にこの傾きを切削刃の摩耗の増大につれて減少させることができるので、摩擦に関連した切削刃の距離の減少が補償され、開口部縁の所要の距離が維持される。したがって、本発明によれば、両方の切削刃の摩耗が同時に補償される。かくして、ボールケージの窓の幅は一工程で製造され、この場合、窓の幅は、切削工具の使用停止時間にわたり且つ切削工具の摩耗にもかかわらず一定に維持される。このようにする際、切削工具を、窓の仮想軸線に対して固定点の周りに揺動させることができる。
【０００７】
本発明は好ましくは、先の作業工程で製造された開口部を仕上げ又は再加工するのに用いられる。ただし、開口部縁の機械加工という用語は、工作物への開口部の完全な形成作業を含む。
【０００８】
好ましくは、本発明の構想の範囲内で、開口軸線及び切削刃軸線を、初期位置において互いに対して約５°だけ傾斜させる。最大約５°までの角度の場合、２つの向かい合って維持した開口部縁のところの傾斜に起因する機械加工深さの差は、特に定速度ジョイントのためのボールケージの窓の場合、非常に小さいので実際問題としてはこれを無視することができる。
【０００９】
本発明の好ましい作用では、初期位置からの傾斜角を約０°に減少させ、切削刃は約０°で完全に摩耗状態にある。かかる構成により、切削工具が（初期位置においては多すぎるのが回避され、この多すぎることは生産技術においては望ましくない）最適に用いられ、摩耗のレベルは傾斜角から読み取る可能である。
【００１０】
本発明の好ましい設計では、切削刃軸線の傾斜を、傾斜角を定めて減少させるよう調節される。このようにする際、特に、切削刃軸線と回転軸線は剛結されるべきである。傾斜角を定めから減少させるため、回転軸線の傾きを調節又は修正する。好ましくは、切削刃軸線を切削工具の回転軸線に平行に配置する。本発明の構想では、切削刃軸線を回転軸線に対して平行ではない状態に定めてもよい。
【００１１】
本発明の好ましい変形実施形態では、工作物の傾きを修正又は加減することにより傾斜角の設定及び減少を達成でき、この場合、変形例として、切削刃軸線の傾きを一定に保ち又は同時に調節してもよい。
【００１２】
上述の構成によれば、ＣＮＣ技術を既存の現行条件にしたがって最適に用いることができる。
【００１３】
本発明のさらに別の好ましい形態によれば、工作物を切削工具と同一の回転方向に動かして工作物の周囲表面及び切削刃を接触時に逆方向に動かし、切削刃が一定間隔を置いて円周に沿って表面に開口部を機械加工するようにする。これと同様に、工作物、特に定速度ジョイントのボールケージを、開口部又は窓に関する限り簡単な方法で一作業工程で完全に仕上げる。上述の互いに逆の運動に加えて、同期回転も可能である。
【００１４】
変形例として、個々の開口部の機械加工中固定される加工物に機械加工を行ってもよく、そして、この工作物を個々の開口部の仕上げ加工後に、定位置に移動させ、これによって次の開口部の機械加工が可能になる。
【００１５】
本発明の手順のさらに好ましい形態では、開口部の機械加工の終りに、傾斜角を、後で切削工具を開口部から引き抜くことによって生じる開口部縁への溝の形成が防止されるような仕方で増大させる。傾斜角を増大させず、工作物を機械加工された工作物表面に垂直な方向に引き抜くと、傾斜に起因して望ましくない溝が少なくとも一方の開口部縁のところに生じるようになる。しかしながら、傾斜角の全体として僅かな増加及びかくして切削工具の有効幅の減少により、このようにならないようにすることができる。次の開口部の機械加工のため、摩耗効果を補償するのに角度の修正が不要ならば上述の角度の修正を帳消しにする。
【００１６】
変形例として、機械加工されるべき次の開口部に入れるため工作物を回転させる前に切削工具を停止させることにより引抜きの際に生じる溝を無くしてもよい。これと同様に、工作物の取出しは、溝が全く生じることなく可能である。
【００１７】
本発明を以下の図面を参照して詳細に説明する。
図１は、定速度ジョイントのボールケージ１の実施形態の一例を示しており、この場合、窓の縁６，７が切削工具２で機械加工され、この例では、３角形の形をした単刃フライス（ミリングカッタ）が示されている。
【００１８】
本実施形態の図示のボールケージ１は、回転軸線すなわち長手方向軸線４に関して回転対称に形成されていて、弓形の円周方向壁５を備え、この円周方向壁は、外部に向かって膨らんでいて、その頂は、その長手方向延長部の中央に位置している。ボールケージ１には窓の縁６，７が円周方向に一定間隔をおいて形成されることになり、これら縁は、図１においては、仕上げ寸法で示されている。上側の窓の縁６及び下側の窓の縁７は、ボールケージ１の長手方向軸線４に対して直角をなして円周方向壁５の厚さの方向に延びていて、これらを通って延びる窓の仮想軸線９に平行に相互所要距離８が示されている。窓仮想軸線９は、窓の縁６，７のそれぞれの厚さ又は水平方向延長部の中心を通って延び、図１に示す実施形態では、ボールケージ１の長手方向軸線４に平行に延びている。
【００１９】
図示の実施形態の切削工具は、ＣＮＣ工作機械のシャフト１０に取り付けられた３角形の単刃フライス（ミリングカッタ）である。単刃フライス２の切削プレートは、２つの切削刃１１，１２を備え、これら切削刃は、これら両方を通って延びる切削刃軸線１３を定めている。図１の上側切削刃１１は、上側の窓縁６を機械加工する機能を有し、下側の切削刃１２は、下側の窓縁７を機械加工するためのものである。切削刃軸線１３に沿って両方の切削刃１１，１２が、距離１４をおいた状態で配置され、この距離は、窓軸線９に並んで機械加工されるべき窓縁６，７の距離８よりも大きい。図示の実施形態では、切削刃軸線１３は、工作機械のシャフトの回転軸線１５と平行に延びている。
【００２０】
窓縁６，７を機械加工するため、ボールケージ１の長手方向軸線４又は窓軸線９及び切削刃軸線１３は、互いに対して鋭角αをなして傾斜した状態で位置決めされていて、窓の仮想軸線９の方向、即ち、窓縁６，７への平行な投影方向１６において切削刃１１，１２の距離１４（図２と比較のこと）が窓縁６，７の所要の距離８に一致するようになっている。図示の実施形態では、傾斜角αは約５°である。
【００２１】
初期状態、即ち、非摩耗状態では、切削刃軸線１３に対する切削刃１１，１２の距離１４は、窓縁６，７の所要距離８よりも距離Δだけ大きく（図１と比較のこと）、傾斜のない状態の切削刃１１，１２が機械加工されるべき窓の縁６，７よりもΔ／２だけ突き出ているようになっていることを図２は示している。窓軸線９と切削刃軸線１３を互いに向けて傾斜させることにより、窓軸線９の方向における切削刃の距離１４は、次の幾何学的関係、即ち、窓軸線９の方向における切削刃の距離＝切削刃軸線１３の方向における切削刃の距離１４×ｃｏｓαにより減少する。
【００２２】
この初期傾斜状態で、窓縁６，７の機械加工を開始する。切削刃１１，１２の摩耗の増大につれ、傾斜角αを切削刃の距離１４即ち切削工具の幅の摩耗による減少を補償するよう０°に向かって次第に減少させる。この場合、ボールケージの傾きを変えると共に（或いは）軸線１３の傾きを変える。図示の実施形態では、単刃フライス２の切削プレートは、シャフト１０にしっかりと固定されており、シャフト１０の回転軸線１５を傾斜させることにより切削刃軸線１３の傾きが変えられる。両方の窓縁６，７は、同時、正確な寸法に機械加工され、工作機械の停止時間全体を通じて許容誤差の幅を保った上で機械加工時間は現行技術に比べ半減する。摩耗寸法Δ及び傾斜角αは、切削工具２が傾斜角αを０°に減少させるだいたいの時点までに摩耗するように調節される。
【００２３】
図３に示す例示の実施形態では、窓軸線９は、窓縁６′，７′が円周方向壁５′の厚さの方向に水平方向に延びる状態で垂直線に対して傾斜した状態で延びていて、窓縁６′，７′が互いに対して水平に互い違いになるようになっている。上述の実施形態の場合と同様、切削刃軸線１３′は当初において、窓軸線９′に対して角度αをなした状態で傾けられている。切削工具２′の摩耗の増大につれ、傾斜角αを、互いに対して水平方向に互い違いに配置された両方の窓縁６′，７′を同時に、即ち一工程で仕上げることができるような仕方で減少させる。
【００２４】
図１に示すように、工作物すなわちボールケージ１を切削工具２と同一の回転方向に回転させて窓縁６，７が機械加工される周囲表面と切削工具２を接触時に互いに逆方向に動かすようにする。これにより、切削工具２は、工作物すなわちボールケージ１の円周方向表面にそって窓表面を一定間隔で機械加工する。工作物１及び切削工具２を互いに向かってｎ_１／ｎ_２の所定の回転比で回転させる。例えば６個の窓３をボールケージ１の周囲に沿って機械加工する場合、切削工具２は、ボールケージ１より６倍早く回転する。逆回転方式の変形例として、同期回転も又、可能である。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の方法にしたがって互いに向かい合った状態で傾斜位置にある定速度ジョイントのボールケージ及び切削工具の概略断面図である。
【図２】初期位置において、切削刃軸線が垂直線に対して角度をなして傾いており、最終位置においては、切削刃が完全に摩耗し傾斜角が０°に減少した状態の３角形のプレート状の切削工具の略図である。
【図３】開口部軸線が垂直線に対して傾斜している本発明の方法の第２の適用例の略図である。

Claims (10)

1. 工作物に開口部、特に定速度ジョイント用のボールケージに窓を機械加工する方法であって、
   回転軸線を中心に回転し、距離を置いた状態で前記回転軸線と並んで配置される２つの切削刃（１１，１２）であって、両方を通って延びる切削刃軸線を定める２つの切削刃（１１，１２）を備えた切削工具を準備する工程と、
   機械加工されるべき２つの対向して位置した開口部縁（６，７）を通って延びる開口部仮想軸線（９）が切削刃軸線に対して所定の整列関係であるように工作物を切削工具の近くで支持する工程と、
   一方の切削刃で一方の開口部縁を切削すると共に他方の切削刃で他方の開口部縁を切削することにより工作物の開口部縁を機械加工して両方の開口部縁が仕上げ状態において開口部軸線に沿って所要の距離（８）を置くようにする工程とを有する方法において、
   ２つの切削刃（１１，１２）を、開口部縁（６，７）相互間の所要距離（８）よりも大きな距離（１４）をおいて切削刃軸線（１３）に沿って位置決めする工程と、
   開口部軸線（９）及び切削刃軸線（１３）を初期状態では互いに対して鋭角（α）をなして傾斜させて、開口部軸線（９）に平行な切削刃（１１，１２）相互間の距離が開口部縁（６，７）相互間の所要距離（８）に等しいようにする工程と、
   切削刃（１１，１２）の摩耗につれて傾斜角（α）を減少させて開口部軸線（９）に平行な切削刃距離が開口部縁（６，７）相互間の所要距離（８）に一致し続けるようにする工程と、
   を更に有することを特徴とする方法。
2. 初期位置において開口部軸線（９）を切削刃軸線（１３）に対して最高５°まで傾斜させる工程を更に有している、
   請求項１記載の方法。
3. 傾斜角（α）を初期位置からほぼ０°まで減少させる工程を更に有し、
   切削刃（１１，１２）は、約０°で完全に摩耗した状態にある、
   請求項１又は２記載の方法。
4. 傾斜角（α）を定めてから減少させるために切削刃軸線（１３）の傾斜角を修正する工程を更に有している、
   請求項１〜３のうち何れか一に記載の方法。
5. 切削刃軸線（１３）と回転軸線（１５）をしっかりと結合する工程と、
   傾斜角（α）を定めてから減少させるために回転軸線（１５）の傾斜角を修正する工程と、
   を更に有している請求項４記載の方法。
6. 切削刃軸線（１３）を切削工具（２）の回転軸線（１５）に平行に位置決めする工程を更に有している、
   請求項５記載の方法。
7. 傾斜角（α）を定めてから減少させるために工作物（１）の傾斜角を修正する工程を更に有している、
   請求項１〜６のうち何れか一に記載の方法。
8. 工作物（１）を切削工具（２）と同一の回転方向又はこれとは逆の方向に回転させて工作物（１）の円周方向表面及び切削刃（１１，１２）を接触時に互いに逆に又は同期して動かし、切削刃が円周方向表面に沿って一定間隔で開口部（３）を機械加工する工程を更に有している、
   請求項１〜７のうち何れか一に記載の方法。
9. 一方の開口部の機械加工工程が、工作物（１）を固定した状態で行われる、
   請求項１〜７のうち何れか一に記載の方法。
10. 傾斜角（α）を或る程度まで増大させることにより、開口部の機械加工の終わりに後で行われる開口部からの切削工具（２）の取出しによる開口部縁への溝の形成を回避する工程を更に有している、
    請求項１〜９のうち何れか一に記載の方法。

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