JP3543564B2 - 液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、駆動素子に駆動パルスを印加することによりノズルから液滴を噴射させるオンデマンド型の液体噴射記録装置に関するものであり、特に、非印字期間において行なわれる液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、液体噴射記録装置として代表的なものに、液体流路に配されたヒータに通電し、液体を気化させ、その圧力により液体をノズルから噴射させるサーマル型の液体噴射記録装置が知られている。図10は、液体噴射記録ヘッドの一例の断面図である。図中、1はヒータ基板、2は厚膜樹脂層、3はチャネル基板、4は共通液室、5は共通スリット、6は個別流路、7はノズル、8はヒータである。ヒータ基板1には多数のヒータ8が形成されるとともに、ヒータ8に駆動パルスを印加するための図示しない電極や等が形成されている。また、駆動回路などが形成される場合もある。さらにそれらの上に厚膜樹脂層2が形成される。厚膜樹脂層2は、共通スリット5およびヒータ8上の部分が除去されている。共通スリット5は、複数の個別流路6に対応して形成される。
【0003】
一方、チャネル基板3には各ヒータ8に対応した多数の個別流路6と、1ないし数個の共通液室4が形成されている。この共通液室4は貫通孔として形成されている。例えばチャネル基板3はシリコンなどで形成することができ、その場合には個別流路6や共通液室4は異方性エッチングによって形成することができる。
【0004】
ヒータ基板1とチャネル基板3が厚膜樹脂層2を挟んで接合される。このとき、各ヒータ8と個別流路6が位置合わせされる。また、個別流路6の先端がノズル7となる。さらに、共通液室4と個別流路6の間は、共通スリット5によって連通するように構成される。液体は、チャネル基板3の接合面とは反対側の共通液室4の開口から流入し、共通液室4から共通スリット5を介して個別流路6へと供給される。
【0005】
図11は、液体噴射記録ヘッドにおける液体噴射時の液体のメニスカスの変化の説明図である。図中、11は気泡、12は液滴である。記録を行なっていない静止した状態では、図11(A)に示すように、個別流路6へ供給された液体によってノズル7に液体のメニスカスが形成されている。
【0006】
ヒータ8に駆動パルスが印加されると、図11(B)に示すように、ヒータ8上の液体中に気泡11が発生し、個別流路6内へと成長する。この気泡11の成長時の圧力は、ノズル7および共通液室4の方向に伝わる。そして図11(C)に示すように、ノズル7側に向かう圧力によって個別流路6内の液体がノズル7から押し出される。
【0007】
その後ヒータ8の駆動が停止し、新たなエネルギーが供給されなくなると、気泡11は急速に収縮を始める。図11(D)に示すように、ノズル7から押し出された液体はちぎれて液滴12として飛翔し、被記録媒体に付着して記録が行なわれる。また、ノズル7側に残った液体は気泡11の収縮とともに個別流路6内へと引き込まれる。さらに、共通液室4側も気泡11の収縮によって液体が引き込まれ、ヒータ8上へと液体が再供給される。
【0008】
その後気泡11は消滅し、ノズル7側から後退した液体のメニスカスは、図11(E)に示すように毛管力によってノズル7の方向へ復帰する。そして、図11(A)に示す状態に戻る。この過程で、液滴12を噴射後、液体が再供給されてもとの状態に戻ることをリフィルと呼ぶ。
【0009】
安定した液体の連続的な噴射を行なうためには、図11に示すように液滴の噴射後、速やかにリフィルが行なわれなければならない。すなわち、液滴12の噴射後、速やかに、個別流路6内に液体が満たされ、ノズル7では液体のメニスカスが噴射前の状態に復帰しなければならない。
【0010】
サーマル型の液体噴射記録装置においては、近年、高解像度化および多個別流路化が進んでいる。図11には1本の個別流路についてのみ示しているが、実際には多数の個別流路が同時に駆動され、液滴を噴射する場合もある。このような場合に液体流路に発生する圧力は非常に大きなものとなる。しかしリフィルは、このような圧力に対抗して行なわれなければならない。そのため、ノズル7でのメニスカスの復帰により長い時間が必要となっている。
【0011】
図12は、液体噴射記録ヘッドにおけるリフィルが不完全な場合の液体噴射時の液体のメニスカスの変化の説明図である。図中、13は気泡である。リフィルが不完全な状態で次の駆動が始まると、液体の噴射量が減少したり、あるいは不吐出など印字上の欠陥となる。例えば図12(A)に示すように液体のメニスカスが後退したまま、次の噴射駆動を開始すると、発生した気泡11とノズル7の間に存在する液体の量が少ない。そのまま図12(B)に示すように液滴12として噴射されても、被記録媒体に付着する液体の量が少なく、濃度低下などを引き起こす。また、図12(B)に示すように気泡11がノズル7において大気と連通し、ついには図12(C)に示すように共通液室4内まで大気と連通して、図12(D)に示すように気泡13が共通液室4内に侵入してしまうことになる。
【0012】
このような吐出不良を避けるためには、液体のメニスカスが安定するのを待ってから印字を行なえばよい。しかし上述のようにリフィルに時間がかかるため、印字記録速度を高めることができないという問題がある。
【0013】
このようなリフィルの遅延は、液体噴射時に発生する圧力によって生じる共通液室4の方向への液体の運動による慣性に依存する。すなわち、連続的な印字が行なわれ、ノズル方向への液体の流れがすでに形成されている場合には、比較的高速にリフィルが行なわれる。しかし、液体が静止している状態から印字を開始した直後では、もっともリフィルの遅延が顕著に現われる。このため、間欠的な印字パターンでは特に液体のメニスカスが不安定となり、印字に白すじや白抜けなどの欠陥を起こしやすい。
【0014】
このような問題を解決するための方法として、例えば液体を噴射する際に発生する圧力を緩和することで、共通液室4の方向への液体の運動を緩和し、リフィルを安定化させる方法が提案されている。例えば特開平6−344558号公報には、共通液室内に空気室を設け、そこに保持した空気により液体噴射時に発生する圧力を緩和し、リフィルの遅れを制御する方法が提案されている。しかし、このような空気室内の空気は、やがて液体と置換し、目的の効果を永続的に発揮することはできない。
【0015】
また、例えば特開平7−171969号公報に記載されているように、液室の内部に発泡性可撓性材料を設けることによって、同様に液体噴射時に発生する圧力を緩和し、リフィルの遅れを抑制する方法が知られている。しかし、ここで用いられている発泡性シリコーンゴムは撥水性であり、液体噴射記録装置の製造過程で加熱した際に撥水性の低分子ガスが揮発し、液体流路を撥水化する恐れがある。液体流路内の撥水部分には気泡が付着しやすく、長期間の印字に伴い、これらの付着した気泡は流路を閉塞し、吐出不良を発生させるため、新たな印字不良を誘発させる恐れがある。
【0016】
さらにこれらの従来の技術では、いずれも液体噴射記録ヘッドに空気室等の新たな構造を設ける必要があるため、製造上の複雑さが増し、かつヘッド容積が増大し、小型化の妨げとなるという問題があった。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、多数の個別流路が配置された高解像度の液体噴射記録ヘッドにおいても、安定した高速な連続噴射を可能とした液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法を提供することを目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、共通液室内の気泡量が経時的に減少することによりリフィル時間も変動してしまうことに着目したもので、非印字期間に行なわれるメンテナンス動作において、液体噴射記録ヘッドの流体圧力振動の共振周波数に応じて設定した繰り返しの周期で駆動パルス列を駆動素子に間欠的に印加することによって液体流動の共振状態を作り出し、強制的に共通液室内に気泡を導入する。これによって経時的に減少した共通液室内の気泡量を回復させ、液体噴射時の共通液室内の圧力変動を緩和させ、リフィルの遅延を抑制することにより、安定した高速な連続噴射を可能とすることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法の第1の実施の形態の説明図、図2は、同じく駆動パルスの一例を示すタイミングチャートである。図中、21は液体噴射記録ヘッドである。以下の説明では、使用する液体噴射記録ヘッドとして例えば図10に示したものを一例として用いることとし、図10に示した符号を用いて説明を行なう。もちろん、他の構造の液体噴射記録ヘッドでも同様にメンテナンスを行なうことができる。
【0020】
一般に液体噴射記録ヘッドのメンテナンスはキャリッジの端部付近に配置されたメンテナンスステーションにおいて行なわれる。メンテナンスステーションには、着脱自在に制御されたノズル7の配列面を覆うキャップが設けられている。メンテナンスの一つとして、そのキャップをノズル7の配列面に装着し、液体噴射記録ヘッドの全てのノズル7から液体を噴射させる動作を連続的に行なう。この動作をダミージェットと呼ぶことにする。このダミージェットは、通常のメンテナンスでは、個別流路6内あるいは共通液室4内の液体の固形物やゴミ、気泡を除去することを目的として行なわれる。
【0021】
本発明では、このようなダミージェットを共通液室内への気泡の引き込みに利用し、リフィルを安定化させる。上述のように液体を噴射すると、その後に生じるリフィルによって液体流路中に流れが生じる。個別流路6では上述のようにヒータ8の駆動に従って液体が出入りすることになるが、液体の噴射を連続して行なった場合、液体流路全体としてみると、共通液室4へと液体は流れる。液体の噴射を停止すると、液体流路中の流れも当然止まるが、このとき、液体の慣性力と制止力などとのバランス、流路抵抗などによって振動する。この振動は、液体噴射記録ヘッドの流体圧力振動の固有周波数に従ったものである。
【0022】
ここで、図1に示すように、全てのノズル7からの液体の噴射を、nドットの噴射期間とmドットの非噴射期間を一対として、これを繰り返し噴射する。図1では、縦方向がノズル7の配列方向を示し、横方向が時間を示している。左側からnドットは全てのノズル7から液滴を噴射させ、次のmドットは全てのノズル7について液滴を噴射させない。このような動作を繰り返し行なう。
【0023】
このときの駆動パルスの一例を図2に示している。図2において時間aが駆動パルスの周期であり、時間bがnドットの噴射期間、時間cがmドットの非噴射期間、時間dがn+mドットの周期を示している。駆動パルスの周期aおよび駆動パルスの高さは、通常の記録時と同様であり、液体噴射記録ヘッドの駆動回路には何等変更を加えていない。駆動回路に対しては、図1に示すように縞状のパターン、すなわち、全てのノズル7から液体を噴射する画像データをn回、その後全てのノズル7において液体を噴射しない画像データをm回与える。液体を噴射する画像データが与えられると、図2の時間bに示すように駆動素子に駆動パルスが印加され、液体が噴射して液体流路にノズル方向への流れが生じる。また、液体を噴射しない画像データが与えられると、図2の時間cに示すように駆動素子には駆動パルスが印加されず、液体は噴射しない。この場合には液体流路におけるノズル方向の流れは制止される。このようなn回の駆動による噴射期間bとm回分の駆動しない非噴射期間cによって、全体として周期が時間dのパターンで駆動することができる。
【0024】
このときの周期dの周波数を、上述の液体噴射記録ヘッドの流体圧力振動と共振する共振周波数とする。これによって、液体流路中の液体の振動を増大させることができる。液体流路中の液体の振動は、各個別流路6内の液体のメニスカスの移動を大きくする。そして、ついには非噴射期間に大気が共通液室4に侵入するまでになる。このようにして共通液室4内に気泡を引き込む。このような大気の引き込みは、通常の印字時には印字不良となるが、メンテナンス動作としては何等支障はない。
【0025】
このようにして共通液室4内に引き込まれた気泡は、共通液室4内に滞留する。特に、図10に示した断面図における右下隅に滞留する。この部分は、通常の記録時には液体の流れがほとんど発生せず、死水域と呼ばれる部分である。通常の記録時には、この共通液室4内の気泡が液体噴射時に発生する圧力を緩和し、リフィルの遅れを解消して、安定した印字を高速に行なうことができるようになる。
【0026】
上述のように液体流路中の液体を振動させて共通液室内に気泡を引き込むための条件について説明する。気泡の引き込みを左右する条件は、液体噴射時の圧力変動による液体の慣性に左右される。液体噴射記録ヘッドにおける噴射時の圧力による液体の運動を、一次元の自由振動に置き換えると次のように表わすことができる。
M・d2 x/dt2 +c・dx/dt+kx=f(t) ・・・式1
ここで、xは液体の変位量、f(t)は噴射に伴う圧力変動、Mは液体の慣性係数、cは液体噴射記録ヘッドの流路抵抗、kは液体噴射記録ヘッドの流路の弾性係数(メニスカスや共通液室内の気泡)を表わす。
【0027】
式1より、液体噴射記録ヘッドの共振周波数および振動の減衰率は次の式で求められる。
共振周波数 fRes =(√(k/M))/(2π) ・・・式2
共振の減衰率 ζRes =c/(2√(Mk)) ・・・式3
【0028】
液体噴射記録ヘッドにおける記録の際の駆動周波数をFとすると、間欠的な噴射を行なう場合の実質的な記録周波数は噴射期間をn,非噴射期間をmとした場合、F/(n+m)となる。この記録周波数が式2に示した液体噴射記録ヘッドの共振周波数に近い場合に、液体メニスカスの変動が激しくなり、通常の記録時には図12に示すような噴射不良が起きやすくなる。以上から気泡の引き込み条件としてのn+mの値は次の式から決定されることとなる。
【0029】
F/(n+m)≒fRes =(√(k/M))/(2π) ・・・式4
図3は、本発明の液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法の第1の実施の形態における具体的な実験結果の説明図、図4は、画像欠陥の判定基準の説明図である。上述の式4から(n+m)の値が求められるが、具体的にnとmの配分は実験により求める。具体例として、実際の液体噴射記録ヘッドを用い、駆動周波数7.28kHzで駆動する場合に、式4から得られた(n+m)の値が16であったとする。このとき、nとmの組み合わせによってメンテナンスの効果がどの程度あったかを調べる。メンテナンスの効果は、図4に示すような画質欠陥の判定基準(グレード)に従い、メンテナンスの前後でどの程度グレードが向上したかを調べる。
【0030】
図3(A)ではn+m=16とし、nの値のみを示している。nを変化させる(すなわちmも変化させる)と、n=9のときにグレード差が最大、すなわちメンテナンスによるグレードが大きく向上し、良好な画質の改善が図られたことがわかる。実験では、nとmの配分は、n≧mの場合に共振が強く、気泡の引き込みが加速されることがわかった。しかし、図3(A)に示すように、あまりnを大きくしても強い共振が得られなくなるので、最適なnとmを設定することが望ましい。
【0031】
また、このようにして決定されたnドット分の噴射期間とmドット分の非噴射期間からなる周期(図2中の周期d)を1ないし数回行なっただけでは大きな液体の振動は得られない。共通液室内へ気泡を引き込むだけの液体の振動を得るには、このような周期を多数回繰り返し行ない、液体の振動を大きくする必要がある。このときの繰り返し回数Nについて実験を行なうと、図3(B)に示すような結果が得られた。すなわち、N≦100ではあまりグレードの変化が見られなかったが、N=150になると、格段にグレードが向上した。このことから、nドット分の噴射期間とmドット分の非噴射期間とを1サイクルとして150サイクル程度ダミージェットを行なうことによって、気泡を共通液室内に引き込むことができた。この例では150サイクル程度であったが、この繰り返し回数も液体噴射記録ヘッドに依存するため、適当な繰り返し回数を実験などによって求めておくとよい。
【0032】
上述の式2,式3から明らかなように、気泡が導入されるに従い、kは小さくなり、共振周波数は低く変動していき減衰率も大きくなる。そのため、共振条件が満たされなくなり、共通液室内の圧力変動も抑制され、結果として自然に気泡導入が停止することで、気泡量の自律的な制御が可能となっている。このように繰り返し回数Nを大きくしても、この自立的な制御によって共通液室内へは所定量の気泡が取り込まれるが、ダミージェットによって噴射される液体量も多くなるので、最適な繰り返し回数に設定することが望ましい。
【0033】
ここで、式2において、c,Mはヘッドの流路構造と液体物性により決まる定数である。kはそれ以外に共通液室内の気泡量により変動する値であり、気泡量に応じて共振周波数も変動する。このため、間欠的なダミージェットを行なう際の共通液室内の気泡量により、共振周波数は変動する可能性があるため、n,mの値はただ1種類だけでなく、複数の異なる値によって間欠的なダミージェットを行なうことにより、気泡引き込みをより確実に行なうことができる。
【0034】
図5は、本発明の液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法の第2の実施の形態の説明図である。全てのノズル7によりダミージェットを行なう際には、一端のノズル7から他端のノズル7に向かって微小なタイミングをずらしながら液体の噴射が行なわれる。このとき、共通液室4内に発生する圧力は、各個別流路で発生する圧力の和となる。そのため、先に液体を噴射するときよりも、後に液体を噴射するときの方が共通液室内に発生する圧力は大きくなる。このような理由から、最後に噴射されるノズル7で圧力変動はもっとも大きくなり、気泡の引き込み効果も高い。
【0035】
一方、上述のようにいったん共通液室内に所定量の気泡が導入されると、それ以上の気泡が導入されないため、最後に噴射されるノズル側に十分な気泡が導入されるとそれ以上の気泡は導入されず、最初に噴射する個別流路側では依然気泡量が不足している場合がある。このため、この第2の実施の形態では、ダミージェット中に噴射方向を逆転させることにより、気泡の導入量を安定化させる例を示している。
【0036】
図5において、例えばまず駆動順序を図5(B)に矢印で示す順序とし、上述の第1の実施の形態と同様にして図5(B)に示すようなパターンで間欠的なダミージェットを行なう。これによって、図5(A)の状態から気泡13が共通液室に引き込まれて図5(C)に示す状態となる。このとき、上述のように駆動順序が最後の側に気泡が引き込まれやすいので、図5(C)に示すように共通液室の一端におもに気泡が導入される。この状態で所定量の気泡が導入される。
【0037】
その後、図5(D)に矢印で示すように駆動順序を逆順として間欠的なダミージェットを行なう。この場合、駆動開始側には十分な気泡が導入されているが、駆動終端側では気泡が十分に導入されていない。そのため、この間欠的なダミージェットによって駆動終端側では更なる気泡の引き込みが行なわれ、図5(E)に示すように共通液室のもう一端にも気泡が引き込まれる。このようにして共通液室の両端部に気泡を引き込むことができ、ノズル位置によるばらつきを抑えて安定化させることができる。
【0038】
上述のように共通液室の両端部、しかも図5(C),(E)の下部に示すようにノズルから遠い隅部は死水域であり気泡が滞留しやすい。そのため、導入された気泡は安定して共通液室内に存在し、共通液室にかかる圧力を緩和してリフィルの遅延を抑制し、高速な印字を可能とすることができる。
【0039】
図6は、本発明の液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法の第2の実施の形態における具体的な実験結果の説明図である。図5に示すような順方向および逆方向の駆動順序による間欠的なダミージェットを繰り返して行なった場合の画質への影響を調べた。図5に示すような順方向および逆方向の駆動を1回の動作とし、この動作を3,5,7回繰り返した。この時の図4に示す画質欠陥のグレードの差、すなわち画質の改善度合いを図6に示している。この実験では、7回繰り返した場合に画質が大きく改善された。このように、順方向の駆動および逆方向の駆動を繰り返し行なうことによって、安定した気泡の取り込みを行なうことができる。なお、繰り返し回数は用いる液体噴射記録ヘッドによって異なるので、例えば実験的に求めておくことが望ましい。
【0040】
なお、上述の第1および第2の実施の形態において、間欠的なパターンによるダミージェットで気泡を導入させる際に、気泡の引き込みを容易にするためには、液体噴射記録ヘッドの構造として、両端あるいは片側に設けられている記録に用いないダミーノズルの開口面積を拡大したり、あるいはダミーノズルに対応する個別流路の流路抵抗を減少させる構造とすることが効果的である。
【0041】
図7は、本発明の液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法を含むメンテナンス動作の一例を示すフローチャートである。例えばユーザからメンテナンス動作が指定されたり、あるいは液体噴射記録装置内で所定の条件が検出された場合、例えば図6に示すようなメンテナンス動作が開始する。メンテナンス動作は、液体噴射記録ヘッドを例えばメンテナンスステーションに移動させ、そこで行なう。
【0042】
まずS31において液体噴射記録ヘッドの温度を設定温度に昇温させる。これによって液体の粘性などをメンテナンスしやすい状態とする。S32において、メンテナンスステーションに備えられているキャップを液体噴射記録ヘッドに装着して外気と遮断し、吸引装置によってノズル側から液体を強制的に吸引する。これによってノズルの詰まりを発生させているゴミやほこり、気泡などを外部に放出させる。この時点で共通液室内の気泡はほとんど排出されてしまう。S33において、ノズルから排出されてキャップ内に溜まっている液体を吸引する。そしてS34においてキャップをはずす。
【0043】
次にS35において、上述のような本発明の液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法を用いて、間欠的なパターンによるダミージェットを行なう。これによって上述のように所定量の気泡が共通液室内に引き込まれる。その後、S36において、キャップに排出された液体を吸引する。
【0044】
さらにS37においてノズル面に付着した液体をワイパーによって拭き取り、S38において連続的なダミージェットを少し行なってワイピングでノズル内に入り込んだ不要な液体などを排出する。このようなメンテナンス動作を行なった後、S39において液体噴射記録ヘッドのノズル面にキャップを装着してノズル面を外気と遮断し、ノズルの乾燥を防止する。
【0045】
図8は、本発明の液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法を含むメンテナンス動作の一例を行なった場合の共通液室内の気泡量の変化の一例を示すグラフ、図9は、共通液室への気泡の取り込みを行なわない場合の共通液室内の気泡量の変化の一例を示すグラフである。液体噴射記録装置を使用して記録動作を行なったり、あるいは放置しているだけでも、共通液室内の気泡は増加していく。例えば液体充填時あるいは液体の目詰まり等が発生すると、メンテナンス動作を行なう。例えば図7に示したようなメンテナンス動作を行なう場合、S32における吸引動作によって共通液室内の気泡が排出される。このため、この液体の吸引動作により共通液室内の気泡量は最も少なくなる。
【0046】
この液体の吸引動作を行なった後、上述のような共通液室への気泡の引き込みを行なわずにメンテナンス動作を終了して記録動作を開始すると、図9に示すように記録や放置によって共通液室内の気泡量は増加するものの、吸引動作直後では共通液室内に必要量の気泡が存在しない。そのため、リフィルの遅延による噴射不良が発生しやすい。
【0047】
このような吸引動作直後の噴射不良を回避するためには、図7に示したように吸引動作後に本発明による間欠的なダミージェットを行なうことが効果的である。これにより図8に示すように吸引動作直後の気泡量の少ない状態の時に共通液室内に気泡を引き込み、記録開始時には必要量の気泡が共通液室内に存在する状態にしている。これによって、メンテナンス動作直後でもリフィルの遅延などは発生せず、常に安定した噴射を行なうことができる。
【0048】
メンテナンス動作の吸引動作によって、共通液室内の気泡がほとんど除去され、吸引動作後に共通液室内に気泡がほとんど残留しない場合がある。このような状態では共通液室内の圧力を緩和するものがないため、間欠的なダミージェットを行なうとその気泡取り込みの効果が高くなり、気泡の導入が過度に行なわれる可能性がある。このような問題を回避するために、吸引動作および間欠的なダミージェットを2回以上連続して行なうとよい。これにより、2回目以降の吸引動作後の気泡量をある一定以上に保つことができ、その後の間欠的なダミージェットによる共通液室内へ導入する気泡量を必要十分な量に制御することができる。
【0049】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、非印字期間に行なわれるメンテナンス動作において、液体噴射記録ヘッドの流体圧力振動の共振周波数に応じて設定した繰り返しの周期で駆動パルス列を駆動素子に間欠的に印加する。これによって液体流動の共振状態を作り出し、不安定な噴射状態を加速することで意図的に空気を共通液室に引き込む。記録時にはこの引き込んだ空気により液体噴射時に発生する圧力を緩和させ、リフィルを促進し、安定した連続噴射を行なうことができるという効果がある。
【0050】
このとき、メンテナンス時のダミージェットによる気泡の引き込みは、引き込んだ気泡の作用で共通液室内の圧力変動が緩和し、所定量の気泡が導入された時点で自然に終了する。このため、共通液室内への引き込み気泡量は概ね一定にかつ自律的に制御され、導入した気泡が記録時の妨げになるほどの量に達することはない。
【0051】
また、液体噴射記録装置において、液体噴射記録ヘッドのメンテナンス動作としてダミージェットは一般的に行なわれており、本発明ではこのダミージェットを利用するため、液体噴射記録ヘッドに新たな構造部材を設けるなどの変更は一切必要とせず、かつ必要な場合に常に所望の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法の第1の実施の形態の説明図である。
【図2】本発明の液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法の第1の実施の形態を説明するための駆動パルスの一例を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法の第1の実施の形態における具体的な実験結果の説明図である。
【図4】画像欠陥の判定基準の説明図である。
【図5】本発明の液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法の第2の実施の形態の説明図である。
【図6】本発明の液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法の第2の実施の形態における具体的な実験結果の説明図である。
【図7】本発明の液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法を含むメンテナンス動作の一例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法を含むメンテナンス動作の一例を行なった場合の共通液室内の気泡量の変化の一例を示すグラフである。
【図9】共通液室への気泡の取り込みを行なわない場合の共通液室内の気泡量の変化の一例を示すグラフである。
【図10】液体噴射記録ヘッドの一例の断面図である。
【図11】液体噴射記録ヘッドにおける液体噴射時の液体のメニスカスの変化の説明図である。
【図12】液体噴射記録ヘッドにおけるリフィルが不完全な場合の液体噴射時の液体のメニスカスの変化の説明図である。
【符号の説明】
1…ヒータ基板、2…厚膜樹脂層、3…チャネル基板、4…共通液室、5…共通スリット、6…個別流路、7…ノズル、8…ヒータ、11,13…気泡、12…液滴、21…液体噴射記録ヘッド。
Claims (2)
- 共通液室から複数の個別流路にインクを供給し、前記個別流路に設けられた駆動素子を駆動することによって、前記個別流路の先端のノズルから液滴を噴射させるオンデマンド型の液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法において、非印字期間に、複数ドットの噴射期間と複数ドットの非噴射期間を1つの周期として繰り返し噴射するとともに、前記周期による繰り返し噴射の周波数を、前記液体噴射記録ヘッドの流体圧力振動と共振する共振周波数として、前記共通液室に気泡を導入するようにしたことを特徴とする液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法。
- キャップを前記液体噴射記録ヘッドに装着して、ノズル側から液体を強制的に吸引した後、前記繰り返し噴射を行なうことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法。
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JP23971797A JP3543564B2 (ja) | 1997-09-04 | 1997-09-04 | 液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法 |
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JP23971797A JP3543564B2 (ja) | 1997-09-04 | 1997-09-04 | 液体噴射記録ヘッドのメンテナンス方法 |
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JPH1178055A JPH1178055A (ja) | 1999-03-23 |
JP3543564B2 true JP3543564B2 (ja) | 2004-07-14 |
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