JP3542053B2 - 海中構造物の海生生物着生防止装置とそれを用いた着生防止方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、海水と接する構造物(海中構造物)の壁面に付着して、成育あるいは繁殖する海生生物(主としてイガイ、フジツボ、海藻類等)の着生防止装置およびそれを用いた着生防止方法に関する。さらに岸壁、桟橋、護岸等といった解放環境海域の海面近傍にある海中構造物の壁面への海生生物着生防止装置およびその着生防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
海水と接する各種の海洋、港湾施設の界面は、海水中に棲息する海生生物が付着し、成育しあるいは繁殖して、施設の機能障害や美観を損ない、加えて重量過多や海洋漂流物の衝突等によって構造物の壁面から海生生物が剥離、脱落して底部に滞積して水深を浅くしたり、潮流で移動して水路を塞ぐ等のトラブルの原因になっている。
【0003】
これらの海生生物の付着防止対策として、▲1▼塩素または次亜塩素酸塩の投入、▲2▼防汚塗料の塗布、▲3▼防汚金属の被覆、▲4▼海水電解による塩素または次亜塩素酸イオンの生成、▲5▼海水中で銅陽極を用いて電解により毒性銅イオンを生成させる等の方法が提案されている。
【0004】
いずれの方法も海生生物付着防止手段として有効であるが、毒性イオンの生成による海生物の死滅であり、その毒性イオンの過剰生成は環境二次汚染の懸念が拭えない。これらの毒性イオンの生成や使用は、長期間に適正濃度維持のためどうしても過剰濃度にならざるを得ず、設備や維持管理に多大の経費と労苦が避けられない。海生生物の付着抑制効果よりもその毒性なるがゆえに環境破壊に繋がることから、今日その使用は制限あるいは禁止の方向にある。無毒性および無公害の防汚方法は、開発途上にあるが、寿命やコストの点が実用化の課題となっている。
【0005】
現今実用化されている防汚対策は、使用範囲が限定される施設の構造物(船舶、取水口、取水路等)に施工し、実施することが可能であるが、解放された環境海域や対象範囲の広い施設(岸壁、桟橋、橋脚、鋼杭等)では、薬剤や毒性イオンの拡散が早く使用量も膨大になり、系外への流失による環境汚染が避けられず適用できない。また、従来から行われている構造物壁面に付着した海生生物の定期的除去、清掃作業は、作業そのものの問題(いわゆる3K作業)があり、除去した生物の回収、処理、投棄等に多くの時間と費用を必要とするため、極力このような作業をなくするか、作業頻度や作業時間を短縮できる手段が望まれるが、適当な方法がなく解放された海洋環境にある大きな構造物に対しては殆ど実施されていないのが実情である。
【0006】
このような解放環境海域にある構造物の干満帯(海面近傍)の海生生物付着防止は、施工が容易で環境汚染のない何らかの物理的手段に頼らざるを得ない。
このような物理的手段としては、現に一部海底に打込まれた自立鋼杭の干満帯の海生生物付着防止対策として、鋼製環状フロート内面に清掃刃を取付けたもの(実公昭60−3132号公報)、環状浮体の鋼杭外面と対向する内接面にブラシを取付けたもの(実公昭59−41230号公報)あるいは発泡ポリエチレン等の弾性環状フロート(清掃刃やブラシは組込まれていない)を取付けたもの(特公平2−31173号公報)が提案されている。いずれも潮の干満による潮位や波動を利用して対象鋼杭と同心円のドーナツ型フロートを上下に揺動させて内接する鋼杭外面を研掃するものである。これらの技術は、海水中に構築された自立型の構造物が対象であって、いずれも環状フロートで取り囲めるものである。清掃すべき構造物の壁面と内接するフロート(清掃刃やブラシを介する場合も含めて)との間隔(クリアランス)の確保が容易であるし、潮位や波浪による揺動で該構造物の壁面を研掃することができる。
【0007】
一方、コンクリートおよび鋼製構造物の壁面の美観と清掃を目的としたフロートを利用した技術としては、実開平4−22511号公報に護岸壁の水域側面にガイドレールを立設し、海側には植生ポットを、護岸壁と対向する側に清掃用ブラシ付き支持部材を取付けた潮位により上下するフロートを設けた技術が開示されている。
【0008】
本発明が対象とするような解放された環境海域や巨大な表面積を有する構造体および他の構造物と接続された構造物に対しては、上記の単体で海水中に敷設された構造物(自立型)を抱くような環状フロート(鋼杭の外円を囲む浮体)の取付けは事実上不可能である。潮の干満による上下や波動による揺動に対してフロートと構造物壁面との間隔を常にどのようにして所定の範囲内に維持するかが一つの鍵である。しかも、施工が容易で美観を損なわず安価なコストで該構造物の海生生物着生抑制あるいは防止可能な手段が望まれる。
【0009】
水中構造物の海壁面を研掃する手段としては、先に開示した実開平4−22511号公報に護岸壁にガイドレールを設置し、海側に植生ポットを、該護岸壁に対向する側に清掃用ブラシ付き支持部材を取付けた潮位により上下するフロートを用いる技術が提案されている。
【0010】
すなわち、護岸の美観保持を主目的として、植生ポット付きフロートを設置している。裏面の清掃ブラシの取付けは付加的手段である。フロート内で草花を育てようとの試みである。当然ながら、植生には土壌、肥料および塩分の問題があり、加えてフロートの自重が海水の比重を大きく上回ることになる。従って、植生ポット付きのフロートを支え、上下の揺動を容易にさせるためにはガイドレール、ガイドロール、支持部材および支持構造(強度を含めて)等に十分な配慮が欠かせない。裏面の清掃用ブラシはフロートと連動する支持部材に固定されている。フロートの潮位による上下動で構造物の壁面を摺擦する。すなわち、ブラシは支持部材に固定されているので、構造物の壁面と面接触であり研掃は潮の干満による上下動で行われる。海水浮遊物や汚れが該構造物の壁面とブラシの間に挟まった場合、該ブラシはガイドレール、ガイドロール、支持部材および支持構造等で固定されており、海面の上下には動いても波浪による横揺れには追従しないので、系外に排除が困難になり、時には異物の詰まりでガイドロールの動きにも差し支えることもあり得る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これら従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、薬剤や毒性イオンによる二次環境汚染のない物理的手段で、解放された環境海域や巨大な表面積を有する構造物の干満帯近傍の壁面、特に海面に対してほぼ垂直な壁面への海生生物の着生を防止可能な海中構造物への海生生物着生防止装置および該装置を用いた着生防止方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、次に示す海生物着生防止装置によって達成される。
すなわち、本発明は、解放またはそれに近い環境海域に構築された海中構造物の海面近傍の壁面に付着する海生生物の着生を防止する海生生物着生防止装置であって、
錘または内封水で海水に近似した比重に調整し、表面をエポキシ樹脂またはFRPで補強した発泡材からなる直方体状フロート本体の該構造物壁面と対向する面に、繊維製ブラシと該ブラシ変形阻止用の硬質弾性体からなるスペーサーを有し、さらに該フロート本体に複数のガイドパイプを取り付けてなる直方体状研掃用フロートを、該ガイドパイプを通してスプリング性を有するガイドワイヤーに嵌合してなる海中構造物への海生生物着生防止装置にある。
【0013】
また、本発明は、解放またはそれに近い環境海域に構築された他の構造材で補強されている非自立型の鋼管杭の海面近傍の壁面に付着する海生生物の着生を防止する海生生物の着生防止装置であって、
錘または内封水で海水に近似した比重に調整し、表面をエポキシ樹脂またはFRPで補強した発泡材からなり、該鋼管杭と同心内心弧の円弧型フロート本体の該鋼管杭壁面と対向する円弧内心面に、繊維製ブラシと該ブラシ変形阻止用の硬質弾性体からなるスペーサーを有し、さらに該フロート本体に複数のガイドパイプを取り付けてなる円弧型研掃用フロートを、該ガイドパイプを通してスプリング性を有するガイドワイヤーに嵌合してなる海中構造物への海生生物着生防止装置にある。
【0014】
さらに、本発明は、 解放またはそれに近い環境海域に構築された海中構造物の海面近傍の壁面に付着する海生生物の着生を防止する海生生物着生防止装置であって、
錘または内封水で海水に近似した比重に調整し、表面をエポキシ樹脂またはFRPで補強した発泡材からなり、中心を貫通する孔を有する円筒状フロート本体の全円筒側面に繊維製ブラシを植毛してなる円筒型研掃用フロートの複数を、両端に摺動金具を有するロープまたはワイヤーを該孔に通して繋ぎ、該両端の摺動金具を2本のスプリング性を有するガイドワイヤーに各々嵌合してなる海中構造物への海生生物着生防止装置にある。
【0015】
また、本発明の海中構造物の海生生物の着生防止方法は、上記の海生生物着生防止装置を用い、該着生防止装置を海面に浮遊させ、潮の干満や波動によって、該着生防止装置が対象構造物の壁面を摺動させると共に、衝撃させることを特徴とする。
【0016】
次に、本発明の海生生物着生防止装置の主要部材である研掃用フロートの一例について図1を基づいて説明する。図1は、取水口護岸コンクリートパラペットに用いる直方体状研掃用フロートの一例を示す構造図である。
【0017】
この研掃用フロート1は、表面を補強した発泡材からなるフロート本体2、繊維状ブラシ4、該繊維状ブラシの変形を阻止し、対象構造物の壁面との間隔を保持する作用のあるスペーサー5およびガイドワイヤー10を通すための複数のガイドパイプ9等から構成される。表面を補強した発泡材からなるフロート本体を構成する発泡材としては発泡スチロールや発泡ポリエチレンが好ましく、これを補強する材料としては、エポキシ樹脂や繊維強化プラスチック(FRP)が好ましい。繊維状ブラシは、天然繊維、合成繊維を問わないが、ナイロンやポリエチレンが適している。スペーサーとしては、合成ゴムや合成樹脂製の硬質弾性体が適している。
【0018】
図1において、研掃用フロート1は、この発泡スチロール製の300mmW×100mmT×2000mmLの直方体状発泡材に、その表面をFRPで補強したフロート本体2と、10mmT×200mmW×300mmLのポリ塩化ビニル(PVC)基板3に0.4mmφのナイロン製ブラシ4および硬質PVC製のスペーサ5を組込んだブラシ盤6を10個組み合わせることによって構成されている。ブラシ盤6は、フロート本体2の該護岸パラペットと向い合う方の面に、SUS製のボルトおよびナット7で取付固定されている。
【0019】
また、フロート本体2の上部および下部には、浮力調整と衝撃保護のためプロテクター8(例えばSS400+Zn溶射)が取付けられている。さらに、フロート本体2の上部から下部にかけて、プロテクター8を介してSUS製のガイドパイプ9が2カ所に設けられている。このガイドパイプ9にSUS製のガイドワイヤー10を通し、対象構造物の壁面に沿ってガイドワイヤー10を上下方向に緊張させて、フロート1が構造物の壁面から離れることを防止する。
【0020】
図1に示すフロート1を組込んだ装置を構造物の壁面に沿って設置することによって、フロート1は潮の干満や波動によって該構造物の壁面を上下に摺擦し、壁面はフロート1に取付けられたブラシ4で擦られる。加えて緊張した該ガイドワイヤー10のスプリング効果の及ぶ範囲内で、波浪の横揺れに追従して、フロート1のブラシ面が該構造物の壁面を衝撃する。その結果、該構造物の壁面に付着した海生生物の着生基板が乱され、バクテリア、有機物、胞子あるいは幼生の着生を妨げることができる。
【0021】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
実施例1
本発明の、直方体状研掃用フロート(図1)を具備した海生生物着生防止装置を、取水口護岸コンクリートパラペットに取付けた例を図2〜3に示す。
【0022】
取水口護岸コンクリートパラペットは護岸の長さが数百mもあり、着生した海生生物の人的作業による処理費用は億単位に近い。護岸の一部に本発明の図1を具備する装置を設置し、海生物付着抑制の効果を試験した。
【0023】
図2は、取水口護岸コンクリートパラペット101に、図1の研掃用フロート1を4組配置した状況を示す。各々の研掃用フロート1は2本のガイドワイヤー10で支持され、ガイドワイヤー10は護岸101の陸上上部構102に取付けた上部支持金具51、およびストッパー52を隔てて取水口護岸鋼矢板103の海面下部分に取付けた下部支持金具53に固定されている。また、上部支持金具51の直下には、ガイドワイヤー10の長さ調整用のターンバックル54(SUS製)が取付けられている。
【0024】
図3は、図2の断面図である。フロート1の水深方向の揺動幅(研掃範囲)は、ストッパー52によって、最高潮位(H.W.L.)+2000mmから+1000mmの範囲(8.0m2)に調整した。
【0025】
本装置を早春に設置し約6カ月稼働させた結果、本装置を設置した壁面には海生生物の着生は殆ど見当たらず、一方、本装置を設置しなかった周辺の壁面はイガイやフジツボ等の貝類や海藻類で覆われており、本発明の装置による着生防止効果は明白であった。
【0026】
実施例2
実施例1の研掃用フロート1は、対象構造物に直接取付けたガイドワイヤー10で支持した。本実施例では、水中での設置作業を削減し、フロート1と対象構造物の壁面とのクリアランスを容易に調整できるガイドフレーム方式について検討した。
【0027】
図4は、実施例1と同じ護岸パラペットの一部に、ガイドフレーム方式で本装置を取付けた正面図である。
ガイドフレーム11は、対象構造物(護岸コンクリートパラペット)101の被研掃面の面積や大きさに合わせて工場で製作する。一方、フロート1やガイドワイヤー10あるいは各種部材には、補強や表面防汚処理(防汚塗料塗布等)等を施した上、ガイドワイヤー10の両端をガイドフレーム11の上下端にあるL字アングル(不図示)に取り付けて一体化する。このガイドフレーム11の材質は、加工性やコストを考慮すると鉄鋼が適しているが、装置の大きさや寿命等を考慮してFRP、各種のエンジニアリングプラスチックあるいはSUS等から製作してもよい。
【0028】
ガイドフレーム11に組込んだ研掃用フロート装置は、対象構造物のある現地に搬送し、予め構造物壁面にマークした所定の位置にアンカーボルトで取付け、固定した。フロート1と対象構造物の壁面とのクリアランスの調整は、フロート1に通したガイドワイヤー10をガイドフレーム11に取付けたL字アングル(不図示)で調整することによって行った。なお、現地に搬入してから取付け完了までの時間は、実施例1のガイドワイヤー方式の場合の2/3以下であった。
【0029】
この装置を6カ月実施したところ、実施例1と同様に、本装置を設置した対象構造物の壁面への海生生物の付着は殆ど観察されず、本発明の装置の有効性は明白であった。
【0030】
実施例3
実施例1〜2は、対象となる護岸コンクリートパラペットの最高潮位+2000〜+1000mmの約1mの範囲に、研掃フロート装置4組を横一列に配置して、潮の干満や波動によって該装置を上下に摺動させてコンクリート壁面を研掃、清掃させた実例である。
【0031】
しかし、海生生物は構造物の干満帯に付着するのみではなく、最低潮位(L.W.L.)以下の常時海面下にある壁面にも多量に付着する。特に、最低潮位から−3000mmまでに付着しやすい。そこで本実施例では、取水口カーテンウオール部のコンクリート壁面の、最低潮位+2000〜−3000mmの約5mの範囲を対象として、研掃用フロート装置を取付けた。
【0032】
なお、研掃用フロート装置のフロート1が横一列では、潮の干満潮位の関係から5m幅の深さをカバーすることは難しいので、研掃用フロート1を上下に多段(3段)に組み合わせたガイドフレーム方式を採用した。その基本的なガイドフレーム方式多段研掃装置を図5に示す。
【0033】
このガイドフレーム11は、およそ5m×4mの鉄鋼製枠であり、また直方体状研掃用フロート1は、発泡スチロール製の300mmW×100mmT×1800mmLのフロート本体2およびブラシ盤6等からなる。このフロート1が6本、ガイドフレーム11枠内にガイドパイプ9aおよびガイドワイヤー10を介して取付けられている。
【0034】
フロート1と対象構造物の壁面とのクリアランスの調整は、フロート1に通したガイドワイヤー10をガイドフレーム11に取付けたL字アングル(不図示)で調整することによって行った。
【0035】
そしてガイドフレーム11を、ガイドフレーム11に取付けられた固定金具51a,53aを用いて、予め設定した対象構造物の壁面の設定位置に絶縁ボルトで固定した。
【0036】
かかる手順に基づいて、図6に示すように、取水口カーテンウオール部のコンクリートパラペットに、横2列×縦3段の6個のフロート1を組込んだ研掃用フロート装置を、並列に3組設置した。
【0037】
そして約6カ月間実施した結果、予想通り本発明のフロート装置を設置した壁面には殆ど海生生物の付着が見られず、周辺の未設置壁面にムラサキイガイ、フジツボが10cm以上も蓄積していたのと好対照であった。また、ガイドフレームの大きさを対象構造物の面積や深度に対応させて、フロートを多段、並列に組込むことにより、海面近傍の構造物の海中壁面への海生生物着生抑制あるいは防止をすることが可能である。
【0038】
実施例4
鋼管杭は桟橋、橋脚あるいは鋼矢板岸壁等の基礎や補強に広く使用されているが、常に自立型とは限らず、鋼管杭が相互に補強材で接続された非自立型も多く見られる。円筒状の自立型鋼管杭の海面近傍の海生物付着防止には、鋼管杭と同心円のドーナツ型フロート(浮輪)ブラシで対応できるが、非自立型への適用は困難である。
そこで本発明の円弧型フロート装置を利用して、その付着防止効果を確認した。
【0039】
すなわち、図7に見られるように、おおよそ半円状の円弧型研掃用フロート1aを作製して、これを用いた。そして、このフロート1aに取付けたガイドパイプ9にガイドワイヤー10を通し、図8および図9に示すごとく対象鋼管杭の上部と下部に設けた支持金具51,53によってガイドワイヤー10を緊張させて、ブラシ4と鋼管杭壁面との間隙を一定に保つようにした。なお、図8は円弧型研掃用フロート1aを鋼管杭に取付けたときの、上から見た平面配置図を示す。図9は、同じく側面図である。
【0040】
海生生物が最も活動する早春に設置してから約4カ月経過した後も、本研掃用フロート装置を取付けた鋼管杭壁面には海生生物の付着は見られず、幼生の着生も見られなかった。
【0041】
また、フロート1aはスプリング性を有するガイドワイヤー10を緊張させることによって支持されているため、波浪によって横揺れする都度ブラシ4が鋼管杭壁面に衝撃を与えるので、ブラシの上下研掃との相乗効果により海生生物の幼生の着生すら観察されなかった。
【0042】
実施例5
今までの実施例で述べてきた長方形型あるいは円弧型フロートには、対象構造物と対向する一面にのみブラシが取り付けられている。
【0043】
フロートの全表面をブラシ化して、研掃させるためには、潮位や波動によってフロートを回転させる必要がある。しかしフロートを球体にした場合、回転は容易であるが、構造物の壁面とは点接触であるため研掃効率が悪い。そこで、フロートを円筒状にして、その円筒の長さ方向の軸を潮の干満による上下動に対して直角に配置すると、フロートは潮位の上下動によって回転して構造物の壁面を擦り、研掃作用が増加する。
【0044】
しかし、円筒状フロートは潮流、波浪あるいは漂流物との接触等によって、元の形に復帰が望めないほど変形(永久変形)すると、該フロートの回転が阻止されるので研掃効果は半減する。
【0045】
そこで事前に検討したところ、円筒状フロートの円筒径を100〜150mmφ、円筒長さを250〜300mmにし、円筒の中心に15〜30mmφの孔を長さ方向に設けて、これにビニロンロープを通して所要数の円筒状フロートを繋ぐと、フロートが容易に回転し、対象構造物の壁面に接触することが判った。
上記の検討結果を基にして製作した円筒状ブラシ付きフロートの一例(円筒型研掃用フロート1b)を図10に示す。
【0046】
図10には、繊維強化エポキシ樹脂(FRE)で表面を強化した発泡スチロール製の75mmφ×300mmLの円筒表面に、0.4mmφのポリエチレン繊維を植毛した軟質ブラシ型フロートを示した。フロート本体2は75mmφ×300mmLで、ブラシ付きフロートとしては140mmφ×300mmLとなっている。図10は、これを長さ方向に幾つか繋げたものである。
【0047】
図11は、護岸パラペットの最低潮位+1000mmから+2000mmの1mの範囲を研掃対象として、140mmφ×300mmLの円筒型研掃用フロート1bを10個一列にして2組取付けた装置の状況を示したものである。
【0048】
この10個×2組のフロートは、長さ方向のロープ通し溝孔9bに12mmφのビニロンロープ10bを通して各フロート1bを繋いだものである。ロープ10bの両端は摺動金具12を介してガイドワイヤー10に嵌合され、ガイドワイヤー10は対象構造物の上部および下部構造体に取付けた支持金具51、53で固定、支持されている。このガイドワイヤー10は、ブラシと構造物壁面とのクリアランス調整の役目を果たす。
【0049】
円筒型研掃用フロート1bは回転を容易にするため、その長さ方向に溝孔9bを設けてビニロンロープ10bを通してある。これによって円筒型フロート1bは、潮の干満による上下動、回転による研掃と波浪による水平揺動衝撃によって、護岸パラペットの海面近傍の海生生物着生抑制効果を一段と高めることができる。
【0050】
本装置は、清掃した護岸パラペットの一部に取付けた。時期的には、海生生物が最も活動し始める時期に遭遇したが、4カ月余り経過後、本装置を設置した部分としない部分の良否は目眼観察でも明白であった。すなわち、本装置の設置部には海生生物の着生は殆ど見られず、清掃直後の壁面と区別がつかない程であった。これに対して、未設置部の壁面にはフジツボの幼貝が無数に付着していた。
【0051】
【発明の効果】
海生生物の付着防止対策の必要性に拘らず、作業性や経済性の点で対応できる防止技術に乏しかった解放環境海域にある表面積の大きな構造物に対し、研掃用ブラシを具備した本発明の装置および方法を使用することによって、干満帯近傍の壁面への生物着生を人的作業に依らない物理的な自然手段で防止するすることができた。
【0052】
特に、ガイドワイヤーを対象構造物壁面に沿って上下に緊張し、このワイヤーに研掃用フロートを支持することによって、該フロートと対象壁面とのクリアランスを所望の範囲内に維持することができた。しかもこのワイヤーのスプリング性によって、フロートが水平揺動して壁面に衝撃を与えることができ、胞子や幼生の着生を根本から排除することが可能となり、上下摺動による海生生物着生防止効果を一層高めることができた。さらには、壁面との間に挟まった漂流物の除去も容易であった。また、ガイドフレームの利用によっても、フロートと対象壁面とのクリアランスを維持することが可能であった。
【0053】
本発明によれば、非自立型の鋼管杭に対しても、円弧型の研掃用フロートを適用することにより、海生生物の着生を防止することができた。
研掃用フロートとして円筒型のものを用いた場合には、フロートの全面にブラシが植毛できるため、フロートの大きさを一回り小さくすることができる。円筒型フロートは、潮位や波による上下摺動の際に回転を伴うため、生物の着生を一層抑えることができ、しかも回転できるために、壁面との間に挟まった漂流物の排除も一層容易となった。
さらに、本発明の装置は設置や取替えも容易であり、加えて環境汚染の全くない海生生物着生防止装置であって、工業的に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】基本的な直方体状研掃用フロートの構造図。
【図2】取水口護岸コンクリートパラペットに研掃用フロート装置を取付けた正面図。
【図3】図2の断面図。
【図4】護岸パラペットにガイドフレーム方式で取付けた研掃用フロート装置の配置図。
【図5】ガイドフレーム方式による多段研掃用フロート装置。
【図6】取水路カーテンウオール部のコンクリート面にガイドフレーム方式で取付けた多段研掃用フロート装置の配置図。
【図7】円弧型研掃用フロートの構造図。
【図8】鋼管杭に円弧型研掃用フロートを取付けた平面図(本発明の他の構造物への適用)。
【図9】図8の正面図、
【図10】基本的な円筒型研掃用フロートの構造図。
【図11】護岸パラペットに円筒型研掃用フロート装置を取付けた配置図。
【符号の説明】
1:直方体状研掃用フロート、1a:円弧型研掃用フロート、1b:円筒型研掃用フロート、2:フロート本体、3:ブラシ基板、4:ブラシ、5:スペーサー、6:ブラシ盤、7:ボルト・ナット、8:プロテクター、9:ガイドパイプ、9a:ガイドパイプ、9b:ロープ通し溝孔、10:ガイドワイヤー、10a:ガイドワイヤー、10b:ビニロンロープ、11:ガイドフレーム、12:摺動金具、13:ロープ挿入口、51:上部支持金具、51a:上部固定金具、52:ストッパー、53:下部支持金具、53a:下部固定金具、54:ターンバックル、101:取水口護岸コンクリートパラペット、102:陸上上部構、103:取水口護岸鋼矢板、104:取水口、105:鋼管杭、105a:鋼管杭(前部)、106:支持構造物、107:防舷材取付部。
Claims (6)
- 解放またはそれに近い環境海域に構築された海中構造物の海面近傍の壁面に付着する海生生物の着生を防止する海生生物着生防止装置であって、
錘または内封水で海水に近似した比重に調整し、表面をエポキシ樹脂またはFRPで補強した発泡材からなる直方体状フロート本体の該構造物壁面と対向する面に、繊維製ブラシと該ブラシ変形阻止用の硬質弾性体からなるスペーサーを有し、さらに該フロート本体に複数のガイドパイプを取り付けてなる直方体状研掃用フロートを、該ガイドパイプを通してスプリング性を有するガイドワイヤーに嵌合してなる海中構造物への海生生物着生防止装置。 - 前記研掃用フロートの1または2以上を剛性を有するガイドフレームに組み込んでなる請求項1に記載の海中構造物への海生生物着生防止装置。
- 解放またはそれに近い環境海域に構築された他の構造材で補強されている非自立型の鋼管杭の海面近傍の壁面に付着する海生生物の着生を防止する海生生物の着生防止装置であって、
錘または内封水で海水に近似した比重に調整し、表面をエポキシ樹脂またはFRPで補強した発泡材からなり、該鋼管杭と同心内心弧を有する円弧型フロート本体の該鋼管杭壁面と対向する円弧内心面に、繊維製ブラシと該ブラシ変形阻止用の硬質弾性体からなるスペーサーを有し、さらに該フロート本体に複数のガイドパイプを取り付けてなる円弧型研掃用フロートを、該ガイドパイプを通してスプリング性を有するガイドワイヤーに嵌合してなる海中構造物への海生生物着生防止装置。 - 解放またはそれに近い環境海域に構築された海中構造物の海面近傍の壁面に付着する海生生物の着生を防止する海生生物着生防止装置であって、
錘または内封水で海水に近似した比重に調整し、表面をエポキシ樹脂またはFRPで補強した発泡材からなり、中心を貫通する孔を有する円筒状フロート本体の全円筒側面に繊維製ブラシを植毛してなる円筒型研掃用フロートの複数を、両端に摺動金具を有するロープまたはワイヤーを該孔に通して繋ぎ、該両端の摺動金具を2本のスプリング性を有するガイドワイヤーに各々嵌合してなる海中構造物への海生生物着生防止装置。 - 前記錘を用いて比重を調整し、フロートの浮力を調整する際に、平板を錘として該フロートの上、下あるいは側面に取付けることにより、海面漂流物体との衝撃破損を低減するプロテクターの効果を付加した請求項1〜4のいずれかに記載の海水構造物の海生生物着生防止装置。
- 請求項1〜5に記載の海生物着生装置を用い、該着生装置を海面に浮遊させ、潮の干満や波動によって、該着生装置が対象構造物の壁面を摺動させると共に、衝撃させることを特徴とする海中構造物の海生生物の着生防止方法。
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