JP3542017B2 - 電池・キャパシタ用端子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池又はキャパシタの電極に接続される端子に関し、特にその電極を収納する容器の壁部に貫設される端子に関する。
【0002】
【従来の技術】
電池及びキャパシタでは、図15に例示するように、電極及び電解液が収納されている容器の壁部に、その電極に接続された端子が貫設されており、その端子に外部のリードが接続されて使用されている。その端子は、図17に示すように、容器の壁部に略柱状の導電部材が貫設され、壁部の外側に設けられる配線リードと壁部の内側に設けられる配線リードとを、その導電部材の両端部にそれぞれ当着させて接続している。
【0003】
なお、図15では、電極として、いずれも方形状の形状を有する正極板、負極板を、間にセパレータを介在させて交互に積み重ねて形成した電極積層体を示し、端子はそれらの正極板及び負極板のいずれか一方に接続されている様子を示した。
従来より、容器の壁部に設けられた端子においては、例えば特開平10−64769号公報で開示されているように、導体部材の両端部にボルトなどの締結部材が締結されて、配線リードが導電部材に当着されている。こうした締結部材を用いれば、締結部材を導電部材に強固に締結させることができるとともに、締結手段と隣接部材との締結及び取り外しが任意に行えるようになるため、配線リードと端子(導電部材)との接続及びその取り外しが任意に行えるようになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記電池・キャパシタ用端子では、導電部材に優れた導電性を付与するとともに、導電部材と締結部材とで高い締結強度が得られるようにすると、それらに用いることのできる材料の種類が限定されてくる。実際に、導電部材及びボルトの材料には鋼材などの金属材料が用いられていることがほとんどである。その結果、導電部材及びボルトの材料コストや成形コストが大きくなり、端子を安価に形成することが難しくなっていた。
【0005】
その一方で、電池及びキャパシタは、端子を大気に曝して用いられることがほとんどである。こうした場合、導電部材に腐食性に劣る材料を用いると、電池又はキャパシタが使用されている間に、導電部材が腐食されて(錆などが生じて)、端子の性能が低下してしまうことがある。そこで、導電部材に耐腐食性にも優れる材料を用いれば、このような問題が生じないようにすることができる。しかし、導電性、強度及び耐腐食性のいずれにも優れる材料は材料費が高い上に、成形にかかるコストも高くなる。その結果、端子を安価に形成することが困難となってしまう。
【0006】
また、特に導電部材とボルトとの界面に腐食が生じると、ボルトを取り外すことが困難になってしまう。電池やキャパシタの電極や電解液を交換する場合や、全体をリサイクルする場合などにおいて、ボルトを取り外すことが困難になり、それらにかかるコストが増大してしまう。
以上のように、従来の電池・キャパシタ用端子は、必ずしも安価に形成できるものでなかった。
【0007】
他方、上記公報で開示されている端子では、電気絶縁性硬質合成樹脂なる絶縁体で導電部材と壁部との間を封止することにより、容器内の電解液が外部に漏れ出さないようにされている。
こうした従来の電池・キャパシタ用端子では、締結部材(ボルト)を導電部材に締結する際に、導電部材と絶縁体との界面に、ネジ締めの回転方向に導電部材によるトルクの応力が作用する。一方、締結部材を導電部材から緩めて配線リードを導電部材から取り外す際にも、こうしたトルクの応力が導電部材に先とは逆方向に作用する。
【0008】
それゆえ、締結部材に過大な締め付け力が働いたとき、導電部材と絶縁体との界面にせん断応力が集中的に作用して、剥離や割れなどの機械的損傷が発生する可能性がある。また、締結部材を締結したり取り外したりすることを繰り返したとき、導電部材と絶縁体との界面に作用方向の異なるせん断応力が繰り返し作用して、疲労による剥離や割れなどの損傷が発生する可能性がある。こうした損傷により、導電部材と絶縁体との間に隙間が生じて、容器内の電解液などが漏れ出す恐れがある。従って、従来の電池・キャパシタ用端子は、必ずしも電池・キャパシタに高い安全性を付与できるものでなかった。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、従来の電池・キャパシタ用端子よりも安価に形成することができる電池・キャパシタ用端子を提供することを課題とする。特に、電池・キャパシタに高い安全性を付与することができる電池・キャパシタ用端子を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の請求項1に記載の電池・キャパシタは、電池又はキャパシタの電極を収納する容器の壁部に貫設されている端子であって、導電材料より形成され、該壁部を貫通して延長する導電部材と、該導電部材に隣接する隣接部材と、ネジ締めにより該隣接部材に締結され、かつ該壁部の外側及び内側の少なくとも一方の側に配設される配線リードを該隣接部材と挟持して該導電部材に当着させる締結部材と、から構成されていることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する本発明の請求項2に記載の電池・キャパシタは、請求項1に記載の電池・キャパシタ用端子において、前記導電部材は、前記ネジ締めの回転方向に前記隣接部材とともに弾性変形することができることを特徴とする。
上記課題を解決する本発明の請求項3に記載の電池・キャパシタは、請求項2に記載の電池・キャパシタ用端子において、前記導電部材は、その延長方向に対する全側面で前記隣接部材と密着していることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する本発明の請求項4に記載の電池・キャパシタは、請求項3に記載の電池・キャパシタ用端子において、前記導電部材は、略板状又は棒状の形状を有し、前記ネジ締めの回転軸に対して略平行にかつ断面同心円上に略等間隔で並列されていることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の電池・キャパシタ用端子では、締結部材が、導電部材ではなく隣接部材に締結されるため、導電性と機械的強度とを導電部材と隣接部材とにそれぞれ分担させることができる。すなわち、従来の端子では、導電性と機械的強度との性能を担う部材が導電部材のみであったのに対し、本発明では導電性を担う導電部材と機械的強度を担う隣接部材とに分離されている。それゆえ、導電部材は必ずしも高い機械的強度をもつ必要がなく、導電部材の機械的強度の許容性を低強度側に広げることができる。
【0014】
例えば、優れた導電性をもつが高い機械的強度をもたない導電部材を用いても、機械的強度の高い隣接部材を用いれば、端子は優れた導電性と高い締結強度との両方の性能をもつことになる。
また、導電部材に導電性と耐腐食性に優れた材料を用いたい場合、その材料の使用量を少なくして導電部材で高い機械的強度が得られないようにしても、隣接部材の材料に高い機械的強度をもつ材料を用いれば、端子は導電性及び耐腐食性に優れ、かつ高い締結強度をもつようになる。形成コストを大きくしないように端子を形成することができるようになる。
【0015】
これらの例のように、本発明の電池・キャパシタ用端子では、従来の電池・キャパシタ用端子よりも材料の選択性が高くなるため、優れた性能の端子を形成できる上、端子の材料コストや成形コストを容易に小さくすることができる。従って、本発明の電池・キャパシタ用端子によれば、優れた性能の端子を従来の端子よりも安価に形成することができる。その結果、従来よりも、優れた性能をもつ電池又はキャパシタを安価に製造することができるようになる。
【0016】
以下、本発明の電池・キャパシタ用端子の実施の形態を図を参照しながら説明することにする。
本発明の電池・キャパシタ用端子を設けることのできる電池及びキャパシタは、その種類で特に限定されるものではなく、公知の種類の電池及びキャパシタに形設することができる。その電池が一次電池であれば、本発明の電池・キャパシタ用端子は電極から電力を取り出す機構を構成することになる。一方、その電池が二次電池である場合、又はキャパシタである場合には、本発明の電池・キャパシタ用端子は、電極から電力を取り出す機構と、電極に電力を供給する機構を構成することになる。
【0017】
配線リードの材料及び形状についてもそれぞれ特に限定されるものではなく、公知の材料及び形状を有する配線リードを用いることができる。
本発明の電池・キャパシタ用端子の実施の形態を各部材に分けて説明する。
[導電部材]
導電部材を形成するのに用いられる導電材料については、導電性を有するものであればその種類で特に限定されるものではなく、金属や炭素などの無機質の導電材料や有機質の導電材料などを用いることができる。また、必要に応じて、導電性の他に耐腐食性などの性質に優れた材料を用いることが好ましい。
【0018】
導電部材の形状についても特に限定されるものではなく、棒状や筒状、板状、膜状、ワイヤ状、鎖状などの形状とすることができる。また、その寸法及び形設数も特に限定されるものではない。必要な導電性能が得られるように、形状、寸法、形設数をそれぞれ適切に選択することが好ましい。
[隣接部材]
隣接部材の材料については、締結部材を締結できるだけの機械的強度をもてばその形態で特に限定されるものではないが、導電部材を機械的に支持できる機械的強度も兼ね備えるようにその形態を適切に選択することが望ましい。すなわち、隣接部材に機械的強度の高い材料を用いるとともに、導電部材を機械的に支持できる位置に隣合わせて形設するのである。このように隣接部材を形設することにより、導電部材に高い機械的強度をもたせる必要がなくなる。
【0019】
また、隣接部材の材料にも、耐腐食性に優れた材料を用いることが好ましい。一方、隣接部材の形状についても特に限定されるものではなく、棒状や筒状、板状などの形状とすることができる。
[締結部材]
締結部材は、隣接部材と締結したときに前記配線リードを導電部材に当着させることができれば、その形態で特に限定されるものではなく、公知の締結手段を用いることができる。例えば、ボルトやナットなどのようなネジ締めによる手段を挙げることができる。
【0020】
締結部材の材料についても特に限定されるものではなく、公知の材料を用いることができる。特に、高い締結強度が得られるように、機械的強度の高い材料を用いることが好ましい。また、耐腐食性に優れる材料を用いることが好ましい。特に、締結部材は配線リードを導電部材に圧接していることが好ましい。配線リードを導電部材に圧接することにより、配線リードと導電部材との間の接触抵抗を小さくすることができる。その結果、抵抗による電力損失の少ない優れた端子性能が得られるようになる。
【0021】
なお、本発明の電池・キャパシタ用端子は、容器の壁部に対して、直接的に貫設してもよいし、前述したような電気絶縁性硬質合成樹脂なる絶縁体を間に介在させて(シールさせて)間接的に貫設してもよい。また、隣接部材と容器の壁部を同体化させれば、端子と容器の壁部との界面がなくなり、端子と容器の壁部と間でも剥離や割れなどの損傷の発生を確実に防止することができる。
【0022】
以上の形態をもつ端子として、例えば図1〜図3にそれぞれ示すものを挙げることができる。
図1及び図2に示した端子では、隣接部材は雌ねじ部を有し、締結部材はその隣接部材の雌ねじ部に螺合できる雄ねじ部を有する。図1に示した締結部材には、ボルトが用いられている。また、図2に示した締結部材には、小ネジが用いられている。この図2に示した端子では、隣接部材が樹脂から形成されており、締結部材である小ネジがその隣接部材にねじ込みやすくされている。
【0023】
図3に示した端子では、隣接部材は雄ねじ部を有し、締結部材はその隣接部材の雄ねじ部に螺合できる雌ねじ部を有する。すなわち、締結部材にはナットが用いられている。
なお、図1〜3に示した端子では、締結部材と配線リードとの間にワッシャを介在させてもよい。また、図1〜3では、いずれも容器の壁部に対して垂直に延長している導電部材を示したが、必ずしも垂直に延びている必要はなく、必要に応じて鋭角をなすように延長させてもよい。また、締結部材のネジ締めの中心軸も導電部材の延長方向に対して平行になっているが、必ずしも平行である必要はなく、必要に応じて鋭角をなすようにしてもよい。
【0024】
一方、本発明の電池・キャパシタ用端子が貫設される容器の壁部は、図15に示したように電極及び電解液と外部とを隔てるものだけでなく、図16に示すように電極及び電解液が収納される収納室の外側に設けられた別室と外部とを隔てるものであってもよい。この場合、図16に示したように、収納室と別室とを隔てる壁部に設けて、電極の配線リードと別室の配線リードとを接続する素子としても用いることができる。いずれの場合においても、壁部の材質及び厚さについては特に限定されるものではなく、公知のいかなる材質及び厚さを有するものであってよい。
【0025】
特に、端子が設けられる壁部の内側に電解液が存在する場合には、隣接部材を導電部材に密着させて、端子が壁部を完全に封止できるようにする。このような隣接部材を形設すれば、電解液の漏れを防止することができる。
また、導電部材の配線リードに当着される当着面以外の面は、隣接部材及び壁部と密着してそれらに完全に覆われていることが好ましい。このような端子として、例えば図4及び図5にそれぞれ示すものを挙げることができる。
【0026】
こうした端子では、隣接部材及び壁部で導電部材を機械的に支持することと、外部から保護することの両方を効果的に行うことができる。それゆえ、高い締結強度と優れた保存性とが得られる。また、その隣接部材の材料に絶縁材料を用いれば、導電部材と配線リードとの当接部分の他の部分を外部から絶縁することができる。例えば使用時において短絡や感電などを効果的に防止することができ、安全性をさらに向上させることができる。
【0027】
ところで、導電部材と隣接部材との密着面の面積を大きくとることが好ましい。その密着面の面積を大きくとれば、導電部材と隣接部材との界面に大きなせん断応力が集中して作用しにくくなる。その結果、導電部材と隣接部材との界面に過大なせん断応力が作用することを防止できるとともに、作用方向の異なるせん断応力が繰り返し作用する場合でもそのせん断応力を小さくすることができるため、その界面での剥離や割れなどの損傷の発生を防止することができる。
【0028】
また、導電部材は、隣接部材から受けるトルクに対して、垂直に又は鋭角をなして受けることのできる面をもつことが好ましい。これにより、導電部材と隣接部材との界面に作用するせん断応力を少なくすることができる。その界面での剥離や割れなどの損傷の発生を防止することができる。
例えば、導電部材が棒状や板状の形状を有していれば、隣接部材内にその導電部材を埋め込むようにして、導電部材の配線リードに当着される当着面以外の面を隣接部材で完全に覆う(密着させて)ことができるとともに、垂直に又は鋭角をなして受けることのできる面をもたせることができる。
【0029】
しかしながら、図1〜図5に示した端子においては、筒状の導電部材内に隣接部材が閉じ込められた形態となっている。すなわち、導電部材がネジ締めの回転軸に平行な対向面(内面)のみで隣接部材と密着しており、導電部材の単位体積当たりの密着面積は必ずしも大きいとは言えない。また、その界面はせん断応力が作用する方向に平面状に広がっている。それゆえ、これらの端子では、導電部材と隣接部材との界面に大きなせん断応力が集中して作用しやすくなっている。それゆえ、その界面に過大なせん断応力が作用したり、作用方向の異なるせん断応力が繰り返し作用すれば、剥離や割れなどの損傷が発生する恐れがある。
【0030】
そこで、図6に示すように、導電部材のネジ締めの回転軸に平行な対向面(内周面)に、その回転軸と略平行に延長する溝部を並設することが好ましい。これにより、筒状の導電部材の内周面に、隣接部材から受けるトルクに対して、垂直に又は鋭角をなして受けることのできる面をもたせることができる。
また、図7に示すように、導電部材の壁部の一部に貫通孔を設けて、隣接部材と容器の壁部を同体化してもよい。これにより、導電部材が、配線リードに当着される当着面以外の面で隣接部材により完全に覆われる(密着させて)とともに、隣接部材から受けるトルクに対して、垂直に受けることのできる面(貫通孔の内面)をもたせることができる。その結果、導電部材と隣接部材との界面の損傷の発生を確実に防止することができる。さらに、隣接部材と容器の壁部とが同体化されているため、端子と容器の壁部との界面がなくなる。その結果、端子と容器の壁部と間でも剥離や割れなどの損傷の発生を確実に防止することができる。
【0031】
さらに図1〜7に示した筒状の各導電部材では、その導電部材の本体である筒部の内周面どうしを架橋し、かつその筒部と同体的に形成される略棒状の架橋部を設けてもよい。このような架橋部により導電部材と隣接部材との密着面の面積をさらに大きくとることができるとともに、隣接部材から受けるトルクに対して、垂直に又は鋭角をなして受けることのできる面をもたせることができる。その結果、導電部材と隣接部材との界面だけでなく、端子と容器の壁部と間でも剥離や割れなどの損傷の発生をさらに確実に防止することができる。ただし、隣接部材が前述のように締結部材を締結させる雌ねじ部をもつような場合には、その雌ねじ部を貫通しないように設ける必要がある。
【0032】
一方、図8に示すようにコイル状の導電部材を設けることにより、導電部材と隣接部材との密着面の面積を大きくとることができる。この導電部材では、隣接部材と密着している面積が大きくなるとともに、隣接部材からトルクを受ける方向に延長しているため、その全面で均一なせん断応力を受けることができる。すなわち、特定の面にせん断応力が集中して作用することを効果的に防ぐことができる。それゆえ、導電部材と隣接部材との界面に大きなせん断応力が作用しにくくなっている。
【0033】
従って、締結部材に過大な締め付け力が働いたときでも、導電部材と隣接部材との界面に過大なせん断応力が作用しにくくなる。また、締結部材の取り付け及び取り外しが繰り返し多数行われても、導電部材と隣接部材との界面に作用方向の異なるせん断応力が作用しにくくなる。これらの結果、その界面における剥離や割れなどの損傷の発生が防止される。
【0034】
その一方で、本発明の電池・キャパシタ用端子では、前記導電部材が、前記ネジ締めの回転方向に前記隣接部材とともに変形できることが好ましい。このような端子として、例えば図9〜図13にそれぞれ示すものを挙げることができる。図9に示した端子では、筒状の導電体に切れ目が軸方向に延びている(断面C字形状を有する)導電部材が設けられている。この導電部材は、締結部材の締結によって隣接部材からトルクを受けると、図9(d)に示すようにねじれ変形することができる。この導電部材は、同じ材質でかつ切れ目が設けられていない他は同じ寸法の筒状の導電部材に比べると、ねじれ変形しやすいものである。
【0035】
また、図10及び図11に示した端子は、いずれも略板状の導電部材をネジ締めの回転軸の同心円上に等間隔で並列させて形成したものである。図12及び図13に示した端子は、いずれも棒状の導電部材をトルク回転軸の同心円上に等間隔で並列させて形成したものである。これらの端子では、締結部材の締結によって隣接部材からトルクを受けると、トルクの作用方向に撓み(たわみ)変形することができる。
【0036】
こうした導電部材がネジ締めの回転方向に隣接部材とともに変形できる端子では、導電部材と隣接部材との界面に作用するせん断応力を変形によって部材全体に逃がすことができる。その結果、導電部材と隣接部材との界面にせん断応力が集中して作用しにくくなる。また、端子と容器の壁部との界面にもせん断応力が集中して作用しにくくなる。
【0037】
従って、締結部材に過大な締め付け力が働いたときでも、導電部材と隣接部材との界面に過大なせん断応力が作用しにくくなる。また、端子と容器の壁部との界面にも過大なせん断応力が作用しにくくなる。これらの結果、端子内(導電部材と隣接部材との界面)及び端子と容器の壁部との界面における剥離や割れなどの損傷の発生が防止される。
【0038】
従って、締結部材に過大な締め付け力が働いたときでも、導電部材と隣接部材との界面に過大なせん断応力が作用しにくく、その界面における剥離や割れなどの損傷の発生を極めて効果的に防止することができる。
なお、その変形が弾性変形であれば、導電部材と隣接部材との界面に作用するせん断応力が開放されたときに、導電部材が元の形状に戻り、端子の形状が保持されることになる。
【0039】
もちろん、図1〜図8に示した端子でも、材料を選択するなどして、導電部材を、前記ネジ締めの回転方向に隣接部材とともに変形させることができるが、図9〜図13に示した端子では、特に導電部材を変形させやすいものである。中でも、図12及び図13に示した導電部材については、隣接部材とともにトルクの作用方向に撓みによって容易に変形させることができる。
【0040】
この場合、前記導電部材は、その延長方向に対する全側面で前記隣接部材と密着していることが好ましい。図7〜図13に示した端子はいずれもこのことを満たすものである。これらの図に示すように、導電部材のネジ締めの中心軸と反対側の面を覆う隣接部材の部分は、端子が設けられる容器の壁部と同じ材料から形成してもよい。
【0041】
導電部材を前記全側面で隣接部材と密着させることにより、導電部材の全部が隣接部材からトルクを受けやすくなり、隣接部材からネジ締めの回転方向にさらに隣接部材とともに変形しやすくなる。それゆえ、導電部材と隣接部材との界面に作用するせん断応力を、変形によりさらに部材全体に逃がしやすくなり、その界面において、せん断応力が集中して作用しにくくなる。また、端子と容器の壁部との界面においても、せん断応力が集中して作用しにくくなる。
【0042】
従って、端子内及び端子と容器の壁部との界面における剥離や割れなどの損傷の発生がさらに効果的に防止される。
この場合、前記導電部材は、略板状又は棒状の形状を有し、前記ネジ締めの回転軸に対して断面同心円上に略等間隔で並列されていることが好ましい。図7〜図13に示した端子はいずれもこのことを満たすものである。
【0043】
導電部材をこのように配設することにより、各導電部材が均等に隣接部材からトルクを受けやすくなり、隣接部材からネジ締めの回転方向にさらに隣接部材とともに同じ変形をしやすくなる。それゆえ、各導電部材と隣接部材との界面に作用するせん断応力の偏りをなくすことができる。その結果、各導電部材にトルクの応力を均等に分散させることができ、それらのうちの一部の界面にせん断応力が集中して作用しにくくなる。従って、導電部材と隣接部材との界面における剥離や割れなどの損傷の発生がさらに効果的に防止される。
【0044】
以上のように、本発明の電池・キャパシタに上記形態をもたせれば、締結部材を締結したり、あるいは取り外したりする際に、導電部材と隣接部材との界面に剥離や割れなどの損傷が発生することを効果的に防止することができる。それゆえ、端子に隙間が生じることが防止される。従って、壁部の内側に電解液が収納されている場合には、容器内の電解液などが漏れ出す恐れがなくなり、電池・キャパシタに高い安全性を付与することができる。
【0045】
一方、本発明の電池・キャパシタ用端子では、隣接部材と締結部材の少なくとも一方の結合部の破壊される強度(以下、破壊強度と記する)が、導電部材と隣接部材との界面よりも低いことが好ましい。これにより、締結部材に過大な締め付け力が働いたり、締結部材の締結及び取り外しが繰り返し行われても、導電部材と隣接部材との界面よりも、隣接部材と締結部材の少なくとも一方の結合部が先に破壊される。その結果、導電部材と隣接部材との界面において、剥離や割れなどの損傷の発生を確実に防止することができる。
【0046】
従って、端子が設けられる容器の壁部の内側に電解液が存在する場合、端子に隙間が生じることを確実に防止することができる。その結果、容器内の電解液が漏れ出す恐れがなくなり、電池・キャパシタに高い安全性を付与することができる。
そこで、以下の実施例では、図12及び図13に示した端子について、前記のことを踏まえた望ましい形態をさらに具体的に説明することにする。
【0047】
【実施例】
(実施例1)
本例の電池・キャパシタ用端子は、図15に示したように、二次電池又は電気二重層キャパシタに設けられ、方形状の形状を有する正極板と負極板とを、間にセパレータを介在させて交互に積み重ねて形成した電極積層体を収納する容器の壁部に貫設されている端子であって、図12に示したように、導電材料より形成され、該壁部を貫通して延長する導電部材110と、導電部材110に隣接する隣接部材120と、ネジ締めにより隣接部材120に締結され、かつ該壁部の両側に配設される配線リード140、142をそれぞれ隣接部材120と挟持して導電部材110に当着させる締結部材130と、から構成されている。
【0048】
容器の壁部の内側に配設されている配線リード140、すなわち電極に接続されている配線リードは、正極板及び負極板のいずれか一方に取り付けられた電極タブであり、それらが束ねられて端子に接続されている。また、壁部の外側に配設されている配線リード142は、電力を消費する電動機と、電力を供給することができる発電器とに自在に切り替えが可能なリードである。いずれの配線リードも、先端部にハーネスを有する。
【0049】
各導電部材110は、棒状の形状を有し、容器の壁部を貫通している。各導電部材110はアルミニウム等の金属材料より形成されている。
隣接部材120は略円柱形状を有し、その両端部の中心部に、中心軸の方向に穿設された雌ねじ部122を有する。すなわち、隣接部材120の中心軸とネジ締めの回転軸とは一致している。この隣接部材120は、フェノール等の樹脂材料より形成されている。導電部材110は、隣接部材120の内部において、その中心軸に対して同心円上に等間隔で並列されている。なお、隣接部材120と容器の壁部とは同体的に形成されている。
【0050】
従って、この導電部材110は、延長方向に対する全側面で隣接部材120と密着していることになる。また、隣接部材120は容器の壁部と同体的に形成されている。
締結部材130は、鋼材から形成された六角ボルトであり、隣接部材120の雌ねじ部122に螺合できる雄ねじ部(軸部)132を有する。この締結部材130は、ネジ締めにより隣接部材120に締結されて、配線リード140、142をその頭部134と隣接部材120の各端面とで挟持して導電部材110に当着させることができる。
【0051】
隣接部材120の雌ねじ部122は、フェノール等の樹脂材料より形成されている上に、そのねじの径及びピッチが細かく形成されているため、導電部材110と隣接部材120との界面よりも破壊強度をもつ。それゆえ、仮に締結部材130に過大な締め付け力が働いたり、締結部材の締結及び取り外しが繰り返し多数行われても、隣接部材120の雌ねじ部122のネジ山が先に潰れる。その結果、導電部材110と隣接部材120との界面せん断応力が作用しなくなる。
【0052】
また、導電部材110は、隣接部材120の雌ねじ部122の破壊強度よりも低いトルクを受けて、締結部材130のネジ締めの回転方向に隣接部材120とともに弾性変形(たわみ変形)することができる。それゆえ、締結部材130に過大な締め付け力が働いたとき、導電部材110と隣接部材120との界面に過大なせん断応力が作用しにくくなっている。また、締結部材130の取り付け及び取り外しが繰り返し行われても、導電部材110と隣接部材120との界面に作用方向の異なるせん断応力が作用しにくくなっている。
【0053】
従って、本例の電池・キャパシタ用端子によれば、導電部材110と隣接部材120との界面において、剥離や割れなどの損傷の発生を確実に抑制することができる。もちろん、隣接部材120が容器の壁部と同体的に形成されているため、端子と容器の壁部との間においても剥離や割れなどの損傷の発生を確実に抑制することができる。それゆえ、端子内及び端子と容器の壁部との間に隙間が生じることをより確実に防止することができる。その結果、容器内の電解液が漏れ出す恐れがなくなり、電池・キャパシタにより高い安全性を付与することができる。
[形成方法]
本例の電池・キャパシタ用端子は、例えば次の手順で形成することができる。
【0054】
図14(a)に示すように容器の壁部及び隣接部材120の形状と同じ形状の空間部を形成できる成形型(上型及び下型から構成される)を用意する。この図14(a)に示したように、上型と下型とで導電部材110を同心円状に等間隔で並列させて挟持した後、型内に隣接部材120の材料を溶融したもの(溶融材料)を流し込む。その溶融材料を冷却して固化させて離型する。隣接部材120の穿通孔にネジ山を形成して雌ねじ部122を形成し、隣接部材120を形成する。
【0055】
その一方で、隣接部材120の雌ねじ部122に螺合できる締結部材130として六角ボルトを用意するとともに、隣接部材120及び導電部材110の両方の端面とで挟み込めるハーネスをそれぞれもつ配線リード140、142を用意する。
ハーネスで各配線リード140、142を隣接部材120及び導電部材110の両方の端面に挟み付けた後、締結部材130を隣接部材120の雌ねじ部122に締め付けて各部材を固定した。
【0056】
こうして、図12に示した電池・キャパシタ用端子を完成した。
(実施例2)
本例の電池・キャパシタ用端子は、図13に示したように、隣接部材220において、締結部材230(締結部材130と同じもの)との結合部222がアルミニウムやステンレス等の金属材料から形成されている他は、実施例1の電池・キャパシタ用端子と同じものである。
【0057】
この端子では、締結部材230と隣接部材220の結合部222とが同じ金属材料からなるため、締結部材230の締め付けが容易になる。それゆえ、締結部材の隣接部材に対する締結にかかる労力及びコストを下げることができる。
また、この隣接部材220は、結合部222とその残部との界面224が、隣接部材220と導電部材210との界面よりも低い破壊強度をもつ。それゆえ、仮に締結部材230に過大な締め付け力が働いたり、締結部材230の締結及び取り外しが繰り返し多数行われても、その界面224が先に剥離や割れなどの損傷が発生して破壊され、隣接部材220と導電部材210との界面にせん断応力が作用しなくなる。
【0058】
従って、本例の電池・キャパシタ用端子によれば、導電部材210と導電部材210との界面において、剥離や割れなどの損傷の発生を確実に防止することができる。それゆえ、端子内及び端子と容器の壁部との間に隙間が生じることがより確実に防止される。その結果、容器内の電解液が漏れ出す恐れがなくなり、電池・キャパシタにより高い安全性を付与することができる。
【0059】
この電池・キャパシタ用端子については、次のようにして形成することができる。先ず、図14(b)に示すように、成形型の上型に結合部222を取り付け、上型と下型とで導電部材210を同心円状に等間隔で並列させて挟持した後、型内に隣接部材120の残部の材料を溶融したもの(溶融材料)を流し込む。その溶融材料を冷却して固化させて離型し、隣接部材を形成する。
【0060】
後は、ハーネスで各配線リード240、242を隣接部材220及び導電部材210の両方の端面に挟み付けた後、締結部材230を隣接部材220の結合部222に締め付けて各部材を固定した。
こうして、図13に示した電池・キャパシタ用端子を完成した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電池・キャパシタ用端子の一例を概略的に示す断面図である。(a)は端子の縦断面図である。(b)は、(a)におけるA−A’における横断面図である。
【図2】本発明の電池・キャパシタ用端子の一例を概略的に示す断面図である。(a)は端子の縦断面図である。(b)は、(a)におけるA−A’における横断面図である。
【図3】本発明の電池・キャパシタ用端子の一例を概略的に示す断面図である。(a)は端子の縦断面図である。(b)は、(a)におけるA−A’における横断面図である。
【図4】本発明の電池・キャパシタ用端子の一例を概略的に示す断面図である。(a)は端子の縦断面図である。(b)は、(a)におけるA−A’における横断面図である。
【図5】本発明の電池・キャパシタ用端子の一例を概略的に示す断面図である。(a)は端子の縦断面図である。(b)は、(a)におけるA−A’における横断面図である。
【図6】本発明の電池・キャパシタ用端子の一例を概略的に示す断面図である。(a)は端子の横断面図である。(b)は、端子内の導電部材を示す斜視図である。
【図7】本発明の電池・キャパシタ用端子の一例を概略的に示す断面図である。(a)は端子の縦断面図である。(b)は、(a)におけるA−A’における横断面図である。(c)は、端子内の導電部材を示す斜視図である。
【図8】本発明の電池・キャパシタ用端子の一例を概略的に示す断面図である。(a)は端子の縦断面図である。(b)は、端子内の導電部材を透視して見た様子を示す透視図である。(c)は、(a)におけるA−A’における横断面図である。
【図9】本発明の電池・キャパシタ用端子の一例を概略的に示す断面図である。(a)は端子の縦断面図である。(b)は、(a)におけるA−A’における横断面図である。(c)は、端子内の導電部材を透視して見た様子を示す透視斜視図である。(d)は、導電部材が隣接部材とともに変形したときの様子を示す透視斜視図である。
【図10】本発明の電池・キャパシタ用端子の一例を概略的に示す断面図である。(a)は端子の縦断面図である。(b)は、(a)におけるA−A’における横断面図である。
【図11】本発明の電池・キャパシタ用端子の一例を概略的に示す横断面図である。
【図12】本発明の電池・キャパシタ用端子の一例(実施例1)を概略的に示す断面図である。(a)は端子の縦断面図である。(b)は、(a)におけるA−A’における横断面図である。
【図13】本発明の電池・キャパシタ用端子の一例(実施例2)を概略的に示す断面図である。(a)は端子の縦断面図である。(b)は、(a)におけるA−A’における横断面図である。
【図14】本発明の電池・キャパシタ用端子を形成する方法を模式的に示す図である。(a)は、実施例1の電池・キャパシタ用端子を形成する方法を模式的に示す図である。(b)は、電池・キャパシタ用端子を形成する方法を模式的に示す図である。
【図15】本発明の電池・キャパシタ用端子を設けることのできる電池・キャパシタの箇所を示す断面図である。
【図16】本発明の電池・キャパシタ用端子を設けることのできる電池・キャパシタの箇所を示す断面図である。
【図17】従来の電池・キャパシタ用端子を概略的に示す断面図である。(a)は端子の縦断面図である。(b)は、(a)におけるA−A’における横断面図である。
【符号の説明】
110:導電部材 120:隣接部材 130:締結部材 140、142:配線リード
Claims (4)
- 電池又はキャパシタの電極を収納する容器の壁部に貫設されている端子であって、
導電材料より形成され、該壁部を貫通して延長する導電部材と、
該導電部材に隣接する隣接部材と、
ネジ締めにより該隣接部材に締結され、かつ該壁部の外側及び内側の少なくとも一方の側に配設される配線リードを該隣接部材と挟持して該導電部材に当着させる締結部材と、
から構成されていることを特徴とする電池・キャパシタ用端子。 - 前記導電部材は、前記ネジ締めの回転方向に前記隣接部材とともに弾性変形することができる請求項1に記載の電池・キャパシタ用端子。
- 前記導電部材は、その延長方向に対する全側面で前記隣接部材と密着している請求項2に記載の電池・キャパシタ用端子。
- 前記導電部材は、略板状又は棒状の形状を有し、前記ネジ締めの回転軸に対して略平行にかつ断面同心円上に略等間隔で並列されている請求項3に記載の電池・キャパシタ用端子。
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