JP3541609B2 - 光偏向素子及びそれを用いた画像形成装置 - Google Patents

光偏向素子及びそれを用いた画像形成装置 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄膜で形成された光導波路内に入射された光ビームを光導波路内で偏向する光偏向素子に関する。また、本発明は、かかる光偏向素子を用いたレーザ・プリンタ、デジタル複写機、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザ・プリンタ、デジタル複写機、ファクシミリ等に用いられる光ビームによる光走査装置としては、典型的には回転多面鏡(ポリゴンミラー)を用いた光走査装置が用いられてきた。ポリゴンミラーを用いた光走査装置は、気体レーザや半導体レーザからのビームを偏向するポリゴンミラーと、その回転多面鏡により反射された光ビームを感光体等の結像面上において等速度直線運動の状態に集光させるf・θレンズとで構成される。しかし、ポリゴンミラーを用いた光走査装置は、モーターによってポリゴンミラーを高速回転させるために、その際に騒音を生じたり、耐久性の面で問題がある。また、ポリゴンミラーを用いた光走査装置は光走査速度がモーターの回転数によって制限されるという問題もある。
【0003】
ポリゴンミラーを用いた光走査装置の問題点は、主として機械的な可動部分が光走査素子の機構として利用されているからである。そこで、機械的な可動部分がない光偏向素子として音響光学効果を利用した光導波路型の光偏向素子が期待されている。音響光学効果を利用した光導波路型の光偏向素子は、例えば、「C. S. Tsai, IEEE Trans. Circuits and Syst. vol. CAS−26 (1979) 1072頁」、特昭52−68307号公報、特公昭63−64765号公報等に開示されている。音響光学効果を利用した光導波路型の光偏向素子は、LiNbO3やZnO等よりなる光導波路と、この光導波路内に光ビームをカップリング (入射)させるための入射機構と、光導波路中の光ビームを音響光学効果により偏向するための表面弾性波(SAW)を励起する櫛形電極(トランスデューサ)と、偏向された光ビームを光導波路中より出射するための出射機構とを備えたものである。
【0004】
また、同じく機械的な可動部分がない光偏向素子として、電気光学効果を有する材料を用いたプリズム型光偏向素子がある。電気光学効果を利用した光偏向素子は音響光学効果を利用した光偏向素子と比べてと変調速度が速いことが特徴である。電気光学効果を利用した光偏向素子は「A.Yariv,OpticalElectronics,4th ed.(New York,Rinehart and Winston,1991)336〜339頁」「Q.Chen,et al.,J.Lightwave Tech.vol.12(1994)1401頁」、特開昭62−47627号公報等に開示されている。
【0005】
音響光学効果や電気光学効果を利用した光偏向素子には、効率的に光ビームを出射させるために、必要に応じて薄膜レンズ等を付加してもよい。また、音響光学効果や電気光学効果を利用した光偏向素子は、ポリゴンミラーのように機械的な可動部分がないので、無騒音であり、信頼性に優れ、小型であるという様々な利点を有する。
【0006】
光偏向素子を用いて画像形成装置を構成する場合は、光偏向素子の光ビームの偏向方向を主走査方向とし、光ビームが照射される感光体等の投影面の主走査方向と直交する方向の移動方向を副走査方向と定義する。光偏向素子による主走査と感光体の移動による副走査を行えば、投影面上に主走査によって形成される走査線が副走査方向に連続した画像面を形成することができる。この主走査び副走査と同期して、それぞれの画素のレベルに応じて光ビームの強度を制御すれば、所望の画像を形成することができる。かかる画像形成装置で高品質のプリント等の出力を行わせるためには、走査線の変動がないことが要求される。
【0007】
光導波路構造を有する光偏向素子において、偏向された光ビームを光導波路から取り出し、光偏向素子の外部に出射する方法として、プリズムカップリング法、端面出射法、グレーティングカップリング法がある。プリズムカップリング法は、高屈折率の単結晶プリズムを用いて光導波路から光を出射する方法であるが、かかる単結晶プリズムは高価であり実用に適さない。また、端面出射法は光導波路面と略垂直な端面からそのまま光を出射する方法であるが、端面の精密な研磨が必要なため素子の作製プロセスが複雑化することや、出射光が空間的に広がってしまうことを防止し、目的のビーム形状に整形するために複雑な光学系を必要とする。このため、端面出射法では結果的にシステムの大型化、コスト高につながる。
【0008】
グレーティングカップリング法は、光導波路上にグレーティングカプラーを形成して光導波路を伝搬する光を外部に出射する方法である。グレーティングカプラーを作製するプロセスは、偏向素子の他の機構を作製するプロセスと共通であり、また、集光光学系を薄膜上に同時に作製することや、グレーティングそのものに機能を付加することが可能である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来、光導波路型の光偏向素子の偏向角はせいぜい数度程度であり、実用化のためには偏向角を拡大することが大きな課題であった。偏向角の拡大という課題を解決するために、例えば、特開平2−930号公報では、表面弾性波光偏向素子において、2つの交叉くし形電極(IDT)に特定の条件で高周波を印加し、表面弾性波の周波数を連続的に変化させるという手法を開示している。また、同一の課題を解決するために、特開平1−302327号公報においては、電気光学効果によるスイッチングにより光路を切り替え、それぞれのビームを個別に偏向し、それら2つのビームを繋ぎ合わせるという手法を開示している。
【0010】
一方、これらの先行技術文献とは異なり、グレーティングカプラーの構成を工夫することにより偏向角の拡大という課題を解決しようとした例もある。例えば、特開平4−296827号公報においては、出射用グレーティングカプラーのピッチを連続的に変化させるという手法が開示されており、また、特開平5−232519号公報においては、出射用グレーティングカプラーを偏向光の伝搬方向に対して、扇形に傾斜して配置する傾斜グレーティングカプラーを用いるという手法を開示する。さらに、他の例としては、特開平2−311828号公報には、導波路の実効屈折率を制御する機構を設け、導波光がグレーティングカプラーから出射する角度を制御することにより、広い偏向角を得る手法が開示されている。
【0011】
グレーティングカプラーの構成を工夫した例としては、単に偏向角を拡大するという目的だけにとどまらず、導波路内を伝搬する光を光導波路面内のみならず光導波路面内と平行でない面内にも偏向するという目的を有するものもある。例えば、特開昭58−130327号公報においては、光導波路面内の偏向とともに、出射グレーティングカプラー部分の屈折率を電気光学効果を用いて変化させ、光導波路面と垂直な方向に偏向する2次元光偏向器が提案されている。
【0012】
しかしながら、これらいずれの先行技術文献も、光導波路を伝搬してきた光を自由空間に取り出す出射機構としてグレーティングカプラーを用い、偏向角が十度から数十度に及ぶ広角度光偏向素子を形成した場合に、出射光の走査線が直線状にならずに湾曲してしまうという問題を述べていない。かかる湾曲現象を図5を用いて説明する。横軸は偏向角(°)を示し、縦軸は、例えばスクリーン上への投射位置のz座標(mm)を示す。図5(a)は出射光の走査線が理想的な状態を示す。図5(a)においては、偏向角が0°のときの投射位置z0と偏向角が20°のときの投射位置z20とが略一致する。
【0013】
一方、図5(b)は光導波路を伝搬してきた光を自由空間に取り出す出射機構としてグレーティングカプラーを用い、偏向角が十度から数十度に及ぶ広角度光偏向素子を形成した場合の通常の状態を示す。出射光の走査線が図5(a)に示したような直線状にならずに曲線状になっている。つまり、かかる湾曲状態では偏向角が0°のときの投射位置z0と偏向角が20°のときの投射位置z20との差Δzは数mmにも及ぶ。
【0014】
導波路面内で数度以内の狭い範囲で偏向し、グレーティングカプラーから光を取り出す場合、出射光の走査線の湾曲は実用上問題とならない。しかし、レーザー・プリンター、デジタル複写機、ファクシミリなどへの用途に用いられる場合のように、導波路内で十度から数十度の広い範囲で偏向し、グレーティングカプラーから光を取り出す場合、出射光の走査線の湾曲という問題は顕著になり実用には適さなかった。また、上述した特開平5−232519号に開示される傾斜グレーティングなどのグレーティングカプラーを用いた場合にも、同様の問題を生じ、実用に耐えられなかった。
【0015】
電気光学効果を用いた薄膜導波路型の光偏向素子を開示する上述した特開平2−311828号、特開昭58−130327号には大きな偏向角が得られないという別の問題点もある。つまり、特開平2−311828号では、導波路面内の偏向を行わず、グレーティング部での屈折率変化だけで偏向を行っているため、広い偏向角を得るためには、屈折率の変化を極めて大きくしなければならず、数百から数千ボルトの高電圧を印加する必要があった。また、特開昭58−130327号でも、グレーティング部での屈折率変化を起こさせるための電圧印加法として、グレーティング部の両脇に設けた電極により面内に電圧を印加する機構を用いているため、大きな屈折率変化により十分な偏向角を得るには、極めて高い電圧を印加する必要がある。
【0016】
本発明は従来技術におけるこれらの問題を解決するためになされた。つまり、本発明の目的は、比較的低い電圧で十度から数十度という大きな偏向角を得ることのできる光導波路型の光偏向素子を提供することである。また、本発明の目的は、導波路面内で十度から数十度の偏向を行い出射した光の走査線が湾曲することのない光偏向素子を提供することである。本発明の他の目的は、レーザ・プリンター、デジタル複写機、ファクシミリ等に利用可能な光偏向素子、および、光ディスク用のピックアップ、光通信や光コンピュータ用の光スイッチ等を含むオプト・エレクトロニクス全般に利用可能な光偏向素子を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
一実施形態を表す図3及び、図6乃至図8に対応付けて説明すると上記目的は、強誘電体薄膜導波路(1)と、薄膜導波路(1)にレーザ・ビームを入射する光源(52)と、薄膜導波路(1)を伝搬するレーザ・ビームを偏向する偏向手段(2、4)と、偏向されたレーザ・ビームを薄膜導波路(1)外に出射させるグレーティングカップラー(6)とを設けた光偏向素子において、グレーティングカップラー(6)に接続され、レーザビームの出射光を偏向手段により偏向して得られる走査線の湾曲を補正する制御手段(6、8、10、12、14、16、)を備えたことを特徴とする光偏向素子によって達成される。
【0018】
さらに、本発明の光偏向素子に係わるグレーティングカップラー部(6)の導波路の屈折率の変調機構は、電気光学効果を用いた変調であり、グレーティングカップラー部(6)の上面に上部電極(10)を設け、これに対向する下部電極(12)が光導波路(1)下に設けてなり、この電極(10、12)間に、導波路(1)面内での偏向角に同期して、導波路(1)の膜厚方向に電界を印加することにより行うものである。または、本発明の光偏向素子は、グレーティングカップラー(1)を櫛形電極(16)により構成し、導波路(1)の膜厚方向に電界を印加することにより行うものであるか、または、グレーティングカップラー(6)を櫛形電極(14)により構成し、導波路の面内方向に電界を印加することにより行うことを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明に係わる光偏向素子は、導波路(1)の膜厚方向に電界を印加するために、導波路(1)は導電性または半導電性の単結晶基板(20)上、あるいは導電性または半導電性のエピタキシャルまたは配向性の薄膜を表面に有する単結晶基板(20)上へ作製されたエピタキシャルまたは配向性の強誘電体薄膜である。導電性または半導電性の単結晶基板(20)は下部電極(12)として作用する。
【0020】
本発明のレーザ・ビームの偏向機構は、前記導波路を構成する材料が電気光学効果を有し、導波光と交叉する面内に櫛形電極による電圧印加機構を設け、電圧印加により導波路内に回折格子状の屈折率分布を形成し、該折率分布と導波光との相互作用によりブラッグ回折をおこさせることによる電気光学的偏向であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の別のレーザ・ビームの偏向機構は、前記導波路(1)を構成する材料が電気光学効果を有し、互いに平行でない二辺を持つプリズム形状の分極ドメイン反転部分(2)を導波路部に形成し、プリズム状分極ドメイン反転部分(2)の上部および下部に電極を設け、この電極間に電圧を印加することにより前記プリズム状分極ドメイン反転部分(2)とそれ以外の部分において異なる屈折率を発生させることによる電気光学的偏向であることを特徴とする。
【0022】
さらに、本発明のもう一つのレーザ・ビームの偏向機構は、櫛形電極よりなるトランスデューサ(22)をそなえ、該トランスデューサ(22)に入力された高周波信号に応じて表面弾性波(SAW4)を励起して、導波路(1)内に弾性波による回折格子状の屈折率分布を形成し、該屈折率分布と導波光との相互作用によりブラッグ回折をおこさせることによる音響光学的偏向であることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の別の構成においては、偏向されたレーザ・ビームを導波路外に取り出すためのグレーティングカップラー(6)が、直線状の回折格子から形成され、かつ偏向されたレーザ・ビームに対して傾いて配置されていることにより、出射部での角度拡大効果を持たせたことを特徴とする。
【0024】
また、本発明の画像形成装置は、感光体と、感光体を一様に帯電する帯電機構と、感光体に光を照射して潜像を形成する露光機構と、該潜像を可視化する現像機構とを設けた画像形成装置であって、該露光機構として上記した光偏向素子を使用することを特徴とする。
【0025】
以下、本発明の原理についてさらに図1及び図2を用いて詳細に説明する。
本発明の光偏向素子は、薄膜光導波路(1)と、光導波路(1)内に光ビームを入射させるレーザよりなる光源とその入射機構と、光導波路(1)中には必要に応じてレーザ・ビームの整形を行う薄膜レンズ(24)と、電気光学効果または音響光学効果によりレーザ・ビームを偏向するための機構(2、22)と、偏向されたレーザ・ビームを光導波路外へ出射するためのグレーティングカップラー(6)とを含む。
【0026】
グレーティングカプラー部(6)に到達したレーザ・ビームの出射角度は、導波路の実効屈折率、グレーティングの周期、およびレーザ光の波長などにより決定される。偏向された導波光が、グレーティングに対して直交する場合、すなわちグレーティングの格子ベクトルが偏向された導波光に平行な場合には、レーザ・ビームの出射角度は式(1)に示される関係により導きだされる。
【0027】
αq=sin-1(N+qλ/Λg)・・・(1)
但し、 αq :グレーティングからの出射角
q :出射光の次数 (q=0,±1,±2,…)
λ :レーザーの波長
Λg:グレーティングの周期
N :薄膜の実効屈折率
【0028】
しかし実際には、偏向されるレーザ・ビームに対して、出射グレーティングの関係を、常に一定に保つことは困難である。すなわち、レーザ・ビームは、偏向されることにより、任意の角度をもって、出射グレーティングカプラー(6)と交わることになり、グレーティングに対して直交するという条件からずれることになる。
【0029】
図1は、一般的なグレーティングカプラーにおける入射光と、出射光の関係を示す模式図である。このときの導波光−放射光の関係を示す伝搬ベクトルダイアグラムを図2に示す。ここで、B0は導波光の伝搬ベクトル、Kはグレーティングの格子ベクトル、Baは放射光の伝搬ベクトル、BiはBaの導波路面(YZ平面)に対する正射影を表す。図2より、Biは(2)式で表される。
【0030】
Bi=B0+qK ・・・(2)
また、B0とKとのなす角をφ0とすると、(3)式で表される関係が成り立つ。
【0031】
|Bi|2=|B0|2+q2|K|2−2q|B0||K|cosφ0・・・(3)
【0032】
このとき、Baの放射角をαqとすると、BaとBiの関係は、(4)式により表される。
Bi=Basinαq ・・・(4)
各伝搬定数は、
|Ba|=(2π/λ)nc ・・・(5)
|B0|=(2π/λ)N ・・・(6)
|K|=2π/Λg ・・・(7)
但し、
nc:放射光の伝搬媒体の屈折率
で与えられる。
【0033】
(3)式と(4)式にこれらの伝搬定数を代入して、整理すると以下の条件が求められる。
【0034】
αq=sin-1{(N2+q2(λ/Λg)2−2qN(λ/Λg)cosφ0)1/2} ・・・(8)
【0035】
(8)式より、グレ−ティングへの入射角度φ0により、放射角αqが変化することがわかる。以上のことから、偏向素子より出射されたレーザ・ビームの走査線は、湾曲してしまうことが明らかである。
【0036】
本発明においては、この湾曲を補正する機構として、グレーティング部の屈折率を偏向角に応じて変化させる機構を用いている。すなわち、薄膜の実効屈折率を、(8)式の右辺が一定となるよう、偏向角に応じて、薄膜の屈折率を制御することにより出射角を一定にすることが可能となり、走査線の湾曲を補正することが可能となる。
【0037】
本発明においては、屈折率を変調する機構として、電気光学効果を用いることが好ましい。熱光学効果および音響光学効果を用いることも可能であるが、これらの方法においては、応答速度の点で、電気光学効果を用いる場合に比較して劣る。電気光学効果を用いる場合、すなわち、出射グレーティングカプラー部(6)に、なんらかの電圧印加機構(8)を設けることにより、薄膜の電気光学効果により、屈折率を変化させる場合においては、前記グレーティングカップラー部(6)の上面に上部電極(10)を設け、これに対向する電極が光導波路(1)下に下部電極(12)を設けることにより、導波路(1)の膜厚方向に電界を印加する方法(図6参照)、グレーティングカップラー(6)が、櫛形状に形成された電極として作用し、導波路の膜厚方向に電界を印加する方法(図7参照)、および、前記グレーティングカップラー(6)が、櫛形状に形成された電極として作用し、導波路の面内方向に電界を印加する方法(図8参照)を取ることができる。
【0038】
本発明において、前記グレーティング部(6)に電圧を印加するために用いられる電極は、Pt、Alなどの金属電極や前記光導波路よりも小さい屈折率を有するITO等の透明酸化物電極を用いることができる。
【0039】
また、前記光導波路(1)と電極との間には前記光導波路よりも小さい屈折率を有するクラッド層を設けることができる。例えば、光導波路(1)と上部電極(10)との間にクラッド層を設ける場合には、上部電極(10)または櫛形電極は任意の材料を用いることができるが駆動電圧の増加を招くのでITOなどの透明酸化物電極を用いることが望ましい。導波路(1)の膜厚方向に電圧を印加する場合には、下部電極(12)としては基板の裏面に金属電極を設けるか、または導電性または半導電性の単結晶基板(20)、あるいは基板と光導波路の間に設けた導電性または半導電性のエピタキシャルまたは配向性の薄膜を用いることができるが、基板の裏面に金属電極を設ける場合には、駆動電圧の増加を招くため、導電性または半導電性の単結晶基板(20)、あるいは基板と光導波路の間に設けた導電性または半導電性のエピタキシャルまたは配向性の薄膜を用いることが望ましい。
【0040】
このような下部電極(12)を用いる場合には、光導波路(1)よりも小さい屈折率を有するNbドープのSrTiO3、AlドープのZnO、In23、RuO2、BaPbO3、SrRuO3、YBa2Cu37-x、SrVO3、LaNiO3、La0.5Sr0.5CoO3などの酸化物が望ましいが、Pd、Pt、Al、Au、Agなどの金属などを用いることも有効である。これらの導電性または半導電性の単結晶基板、あるいは導電性または半導電性のエピタキシャルまたは配向性の薄膜は、強誘電体薄膜の結晶構造に応じて選ばれることが望ましい。なお、上部電極(10)または下部電極(12)として用いられる導電性または半導電性の薄膜または単結晶基板の抵抗率としては10-6Ω・cm〜103Ω・cm程度の範囲が有効あるが、電圧降下が無視できる程度の抵抗率であれば上部電極または下部電極として利用可能である。また、偏向速度または変調速度によってはキャリア・モビリティが適当な上部電極材料または下部電極材料を選択することができる。
【0041】
ところで、固体素子における光ビームの偏向は、電気光学的な偏向、音響光学的な偏向、磁気光学的な偏向などが知られている。本発明では、制御が容易であることや製造が簡単であること等により、音響光学的な偏向、または電気光学的な偏向により光ビームを偏向する偏向機構を用いることが好ましい。
【0042】
音響光学的な偏向機構は、圧電体薄膜の光導波路に表面弾性波(SAW)を励起し、入射された光ビームをSAWによりブラック回折させることにより偏向する。SAWを励起するくし形電極等のトランスデューサ(22)は、平行くし形電極、SAWの伝搬方向に電極指間ピッチを変化させたチャープ電極、これらの電極を角度を変えて複数配置した電極、各電極指間の角度が傾斜したチャープ電極、湾曲したすだれ状電極、各電極指間隔が電極長さ方向に変化する湾曲電極、電極指間ピッチの異なる複数個の電極を角度を変えて配置した電極などを用いることができ、また上記いずれかの電極を用いて光導波路中の光ビームを多重回折することもできる。また、SAW変調は、デジタル変調またはアナログ変調が用いることができる。
【0043】
一方、電気光学的な偏向機構は、薄膜の光導波路表面にくし形電極を配置し、このくし形電極間に電圧を印加することにより、屈折率変化による回折格子によって、入射された光ビームをブラック回折させて偏向するか、または、前記光導波路に、互いに平行でない二辺をもつプリズム形状の分極ドメイン反転部分(2)を有し、前記電極間に電圧を印加することにより前記プリズム形状の分極ドメイン反転部分(2)とそれ以外の部分において異なる屈折率を発生させる構成、あるいは、前記上部電極が互いに平行でない二辺をもつプリズム形状パターン(2)を有し、前記電極間に電圧を印加することにより前記電極パターンに対応する異なる屈折率をもつ部分を発生させる構成も有効である。
【0044】
本発明の光導波路(1)を形成するために適用可能な光導波路材料としては、電気光学的な偏向機構を用いる場合には、薄膜の光導波路を構成する材料は、強誘電体薄膜としてはABO3型のペロブスカイト型酸化物では、正方晶、斜方晶または擬立方晶系として例えばBaTiO3、PbTiO3、Pb1-xLax(ZryTi1-y1-x/43(xおよびyの値によりPZT、PLT、PLZT)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3、KNbO3など、六方晶系として例えばLiNbO3、LiTaO3などに代表される強誘電体があり、タングステンブロンズ型酸化物ではSrxBa1-xNb26、PbxBa1-xNb26などがある。また、上記材料の他に、Bi4Ti312、Pb2KNb515、K3Li2Nb515、さらに以上の置換誘導体等がある。
【0045】
一方、音響光学的な偏向機構を用いる場合には、LiNbO3、LiTaO3、ZnO、Pb(Zr,Ti)O3(PZT)、(Pb,La)(Zr,Ti)O3(PLZT)などが代表的なものとして用いられる。この光導波路材料が、例えばLiNbO3である場合は、LiNbO3単結晶ウエハにTiを蒸着した後、Tiを約1000°CにてLiNbO3に拡散することによって作製した光導波路、あるいはLiNbO3単結晶ウエハのプロトン交換によって作製した光導波路、LiTaO3単結晶基板上へLiNbO3薄膜をRf−マグネトロン・スパッタリングによって気相エピタキシャル成長した光導波路、α−Al23単結晶基板上へLiNbO3薄膜をゾルゲル法によって固相エピタキシャル成長した光導波路などを用いることができる。
【0046】
また、ZnOの場合には、ガラス基板上へ電子ビーム蒸着またはRf−マグネトロン・スパッタリングによって作製したc軸配向性のZnO薄膜を光導波路としたものを用いることができる。さらに、PLZTの場合には、MgO基板上へPLZT薄膜をイオンビーム・スパッタリングによって気相エピタキシャル成長した光導波路、GaAs基板上エピタキシャルMgOバッファ層へPLZT薄膜をRfマグネトロン・スパッタリングによって気相エピタキシャル成長した光導波路、SrTiO3基板上へPLZT薄膜をゾルゲル法によって固相エピタキシャル成長した光導波路などを用いることができる。
【0047】
前記強誘電体薄膜は電子ビーム蒸着、フラッシュ蒸着、イオン・プレーティング、Rf−マグネトロン・スパッタリング、イオン・ビーム・スパッタリング、レーザー・アブレーション、MBE、CVD、プラズマCVD、MOCVDなどより選ばれる気相成長法およびゾルゲル法、MOD法などのウエット・プロセスにより作製された薄膜の固相成長法によって作製される。
【0048】
本発明において用いられる出射用グレーティングカプラー(6)の形状は、本発明の目的を損なうものでなければ、いかなる形状のものを用いることができるが、前記グレーティングへの入射光が大きな角度をもって交差するように、傾斜を持たせた傾斜グレーティングカプラーを用いることが好ましい。このような傾斜グレーティングカプラーを用いた場合、導波路面内での偏向角に対して、放射光の出射角が、大きく増幅させる効果を持たせることが可能となる。したがって、走査角を大きくとることが可能となり、レーザー・プリンター、デジタル複写機、ファクシミリなどへの用途としてより適したものとなる。
【0049】
光源として用いるレーザとしては、単数のレーザー・ビームを発振するレーザー、あるいは複数のレーザー・ビームを発振する単一の基板上に形成されたレーザー・アレイであり、具体的にはHe−Neなどの気体レーザや、AlGaAsなどの化合物半導体レーザまたはこれらのレーザ・アレイなどを用いることができる。レーザの発振によるレーザ光はプリズム・カップリング、バット・カップリング(またはエンド・カップリング)、グレーティング・カップリング、エバネッセント・フィールド・カップリングなどより選ばれる方法によって光導波路に導入される。
【0050】
薄膜レンズとしては、モード・インデックス・レンズ、ルネブルク・レンズ、ジオデシック・レンズ、フレネル・レンズ、グレーティング・レンズなどが適している。
【0051】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
まず、本実施の形態による光偏向素子の光導波路における音響光学的な偏向について説明する。
例えば、LiNbO3薄膜の圧電効果を用いると、表面弾性波(SAW)をトランスデュサーを介して励起させることができる。SAWは薄膜の屈折率を周期的に変化させるので、SAWに交わって入射する強誘電体薄膜中へカップリングされたレーザー光はブラッグ条件のもとで音響光学効果によるブラッグ反射を起こす。この際、トランスデュサーへの入力周波数を変調することにより、SAW波長Λが変化することによりブラッグ角θBが変化することを利用して、レーザー光をスキャンすることができる。
【0052】
この周波数掃引は一般にデジタル変調にて行われ、入射するレーザー・ビーム幅に交わるSAW周波数は適当なステップで変化し、レーザー・ビーム幅にわたるSAW周波数は一定である。音響光学的な偏向時のデジタル変調におけるレーザ光のスポット径、スポット数、スポット移動時間は次のように定まる。光導波路中のレーザ光のビーム幅をDl、結像レンズの焦点距離をFlとすれば、回折限界スポット径2ω(1/e2径)は、次の(9)式で表される。また、このとき、解像レーザ・スポット数Ndは、次の(10)式で表される。
【0053】
2ω=(4/π)・(λ・Fl/Dl) ・・・(9)
Nd=2ΔθB・F/2ω=(π/4)・τ・Δfd ・・・(10)
【0054】
ここで、τはレーザ光のビーム幅に対するSAWの通過時間であり、SAWがデジタル変調の場合には次の(9)式で示すスポット移動時間tdとなる。この場合、レーザ光のビーム幅を小さくすること、及びSAW速度の速い光導波路材料を選択することの少なくとも一方によって、SAWの通過時間(スポット移動時間)を短くすることができる。
【0055】
td=τ=(Dl/v)・・・(11)
解像レーザー・スポット数NdはΔfdをSAW周波数帯域、δfd(=1/τ)を回折に必要な周波数変化とすると、次のようにも表される。
Nd−Δfd/δfd=τ・Δfd=Dl/v・Δfd (12)
【0056】
このようにスポット移動時間を短くするとスポット数は少なく、スポット数を多くするためにはスポット移動時間を長くする関係にある。スポット移動時間を変えないでスポット数を多くするためにはトランスデュサーの帯域を広くすることが有効である。
【0057】
次に、電気光学効果の原理について説明する。電気光学効果において、屈折率nと電場Eとの関係は、
n=n0+aE+bE2+cE3+・・・・・ (13)
で与えられ、対称心のある結晶構造では、
n=n0−aE+bE2−cE3+・・・・・ (14)
n=n0+aE+bE2+cE3+・・・・・ (15)
とが等しくならなければならず、
n=n0+bE2+・・・・・ (16)
となり、電場による屈折率変化は次のように奇数次の項は消える。
Δn=n0−n=−bE2−・・・・・ (17)
【0058】
このうち二次の項がKerr効果と呼ばれ、一般に次のように示される。
Δn=−1/2Rn32 (18)
しかし、対称心のない結晶構造では奇数次の項は残る。
Δn=n0−n=−aE−bE2−・・・・・ (19)
このうち一次の項がPockels効果と呼ばれ、一般に次のように示される。
Δn=−1/2rn3E (20)
【0059】
この効果は、対称心のない結晶構造を持つ物質、すなわち圧電体や強誘電体にのみ見られるものである。実際には、電場を大きくしていくとPockels効果に次第にKerr効果が重畳する形で屈折率変化が起こる。
【0060】
このような電気光学効果を用いる際は、対称心のない結晶構造を持ち高い係数を持つ強誘電体を用いることとなり、LiNbO3やPLZTが代表的である。PLZT薄膜のような強誘電体に局所電場を印加すると上記のようにその部分の屈折率の低下が起こり、ブラッグ反射や全反射によってレーザー・ビームの向きををスイッチングすることができる。このEO変調の場合は音響光学効果を利用した光偏向素子のようなフォノンの移動時間による制限を受けず分極によるために、スポット移動時間(スイッチング時間)はピコ秒オーダーと極めて速い。
【0061】
上述した原理を考慮して、本実施の形態による光偏向素子は、光導波路と、レーザよりなる光源と、入射機構を有し、光導波路中には必要に応じて光ビームを整形するための薄膜レンズと、導波路内を伝搬するレーザ・ビームを導波路面内で偏向する機構が備えられ、偏向されたレーザ・ビームを導波路外に取り出すための機構として、グレーティングカップラーが設けられており、該グレーティングカップラー部の導波路の屈折率を、導波路面内での偏向角に同期して変調し、自由空間に放出されたレーザ・ビームの走査線の湾曲を補正する機構を設けている。
【0062】
光導波路内で偏向された、レーザ・ビームは特定の角度を持ってグレーティングカプラーに入射する。この時、グレーティングへの入射角度は、偏向角との幾何学的な位置関係により決定されることから、電気光学的な偏向の場合には、偏向時の印加電圧により、また音響光学的な偏向においては、SAW励起周波数により決定され、この時の偏向角に対応した屈折率変化を起こさせるための電圧を、該グレーティングカプラー部に印加することにより、出射角を調整してやることができる。
【0063】
次に、本実施の形態での光偏向素子を用いた画像形成装置について説明する。ここでの光偏向素子は、電気光学的な偏向をする光偏向素子である。図3に示すように、本実施の形態における画像形成装置48は、半導体レーザ52及び基板54、光導波路56、出射用グレーティングカプラ62とを主要構成要素とする光偏向素子50を備えている。また、画像形成装置48は、出射角制御回路68B、偏向制御回路68C、レーザ駆動回路68D、及び回転制御回路68Eを含んで構成された制御装置68を備えている。
【0064】
本実施の形態では、制御装置68の偏向制御回路68Cは、走査信号に対応して、偏向用電極に電圧を印加するための回路である。また、出射角制御回路68Bは、偏向制御回路68Cに同期して、グレーティングカプラ部に角度補正用の電圧を印加するための回路である。また、この偏向制御回路68Cからの電圧印加によってレーザ光は感光体64上において所定方向(図3(b)の矢印X方向、主走査方向)に走査される。また、レーザ駆動回路68Dは、半導体レーザ52から出射されるレーザ光の強度及び出射時間(露光時間)を制御するための回路である。また、回転制御回路68Eは、感光体64を所定方向(図3(a)の矢印Y方向、副走査方向)に一定速度で回転またはステップ駆動させるための回路である。
【0065】
また、画像形成装置は、感光体64を一様に帯電するための帯電装置90、及び感光体64に潜像形成された画像を可視化するための現像装置92を備えている。これら帯電装置90及び現像装置92によって感光体64は一様に帯電され、その感光体64にレーザ光の露光によって露光部位に潜像が形成される。このように感光体64に形成された潜像が現像装置92によって紙やフィルム等の複写材料に可視化される。
【0066】
上記光偏向素子50は、次のようにして作製される。
まず、抵抗率が5mΩ・cm〜500mΩ・cm程度のNbドープSrTiO3(100)単結晶導電性基板上54へエピタキシャルPLZT(12/40/60)薄膜光導波路56を成長させる。厚さdw=600nm、εw=1300、r=120×10-12m/VのPLZT層はゾルゲル法を用いた固相エピタキシャル成長によって作製する。まず、無水酢酸鉛Pb(CH3COO)2、ランタン・イソプロポキシドLa(O−i−C373、ジルコニウム・イソプロポキシドZr(O−i−C374、およびチタン・イソプロポキシドTi(O−i−C374を出発原料として、2−メトキシエタノールに溶解し、6時間の蒸留を行ったのち18時間の還流を行い、最終的にPb濃度で0.6MのPLZT(12/40/60)用前駆体溶液を得る。
【0067】
さらに、この前駆体溶液を基板へスピンコーティングを行う。以上の操作はすべてN2雰囲気中にて行う。次に、加湿O2雰囲気中で10°C/secにて昇温して350°Cにて保持の後、650°Cに保持し、最後に電気炉の電源を切り冷却する。これにより膜厚約100nmの第一層目のPZT薄膜を固相エピタキシャル成長した。これをさらに5回繰り返すことにより総膜厚600nmのエピタキシャルPLZT薄膜が得られる。結晶学的関係はPLZT(100)//Nb−SrTiO3(100)、面内方位PLZT[001]//Nb−SrTiO3[001]の構造が得られる。
【0068】
このPLZT薄膜光導波路56の上には抵抗率が約1mΩ・cm、膜厚が約100nmのITO透明導電性酸化物薄膜による底辺3.3mm、高さ2.0mmの三角形の3つの電極アレーを作製する。また、偏向されたレーザ・ビームを光導波路外へ出射するためのグレーティング62を、電子ビーム描画により形成する。グレーティングの形状は、直線状であり、ピッチ0.4μmとして、光源からの入射光に対して直交する、すなわち偏向されない状態でグレーティングに対して、直角に交わるように配置した。さらに、電気光学効果によりグレーティングカップラー部の屈折率を変化させるために、グレーティングカップラー部の上面に上部電極を設けた。
【0069】
光源は波長780nm、出力20mWのレーザー・ダイオードを用いてバットカップリングによりレーザー・ビームをPLZT薄膜光導波路へ導入する。PLZT薄膜光導波路はITO透明導電性酸化物薄膜およびNbドープSrTiO3(100)単結晶基板よりも屈折率が高いため、レーザー・ビームはPLZT薄膜光導波路中に閉じ込められる。入射したレーザー・ビームはITO薄膜三角形電極アレーおよびNbドープSrTiO3単結晶電極54の間に印加電圧することによって偏向される。偏向の後、偏向されたレーザー・ビームは出射グレーティングカプラーにより放射され、F・θレンズなどの光学系66を経て感光体64を露光する。
【0070】
本実施の形態の素子は、n=2.50、r=120×10-12m/V、l=10mm、D=2mm、d=600nmとすることができ、印加電圧12Vにて偏向角度θは5.4°となり、印加電圧を−12Vから+12Vへ掃引することにより角度10.8°にわたって偏向可能となり、実用的な偏向角度が実用的な印加電圧にて実現される。さらに、偏向部への信号と同期して、グレーティング部に対して、0Vから+18Vの電圧を印加して、出射角を変化させて走査を行った。このときの、素子から200mm離れたところに設置したスクリーンへ投影した走査線の状態を図4(a)に示す。屈折率を変調することにより、レーザ・ビームを直線として走査可能であった。
【0071】
一方、この偏向素子に対して、屈折率変調のための信号を切って同様に光走査を行なった場合の、走査線の投影図を図4(b)に示す。このときの走査線の湾曲による直線からのずれは、最大4.73mmに達し、実用的な素子として使用することは不可能であった。
【0072】
次に、本実施の形態における画像形成装置に、電気光学的な偏向をする光偏向素子を適用した場合を説明する。この光偏向素子は、上述のPLZT薄膜光導波路56を用いて、薄膜光導波路56上に、プリズム電極および出射グレーティングカプラーを形成する。グレーティングは、直線状であり、ピッチ0.35μmとして、光源からの入射光に対して65°の角度をつけて配置した傾斜グレーティングカプラーを用いた。さらに、電気光学効果によりグレーティングカップラー部の屈折率を変化させるために、グレーティングカップラーを櫛形電極により形成し、導波路の膜厚方向に電界を印加する構成とした。また、基板54及び光導波路56の入射端面は、上記実施例と同様に研磨した後、波長780nm、出力20mWのレーザー・ダイオード52が直接固定されバットカップリングされる。
【0073】
次に、この光偏向素子を用いた画像形成装置の作動を説明する。PLZT薄膜光導波路へ導入されたレーザー・ビームは、PLZT薄膜光導波路がITO透明導電性酸化物薄膜およびNbドープSrTiO3(100)単結晶基板よりも屈折率が高いため、PLZT薄膜光導波路中に閉じ込められる。入射したレーザー・ビームはITO薄膜三角形電極アレーおよびNbドープSrTiO3単結晶電極54の間に印加電圧することによって偏向される。偏向の後、偏向されたレーザー・ビームは出射グレーティングカプラーにより放射され、F・θレンズなどの光学系66を経て感光体64を露光する。
【0074】
電気光学的な偏向をする光偏向素子では、n=2.50、r=120×10-12m/V、l=10mm、D=2mm、d=600nmとすることができ、印加電圧12Vにて偏向角度θは5.4°となり、印加電圧を−12Vから+12Vへ掃引することにより角度10.8°にわたって偏向可能である。また、偏向部への信号と同期して、グレーティング部に対して、0Vから+23Vの電圧を印加して、出射角を変化させて走査を行った。電気光学的な偏向をする光偏向素子においては、走査角は34.6°と大きな偏向角が得られ、また、走査線も直線状であった。
【0075】
一方、この偏向素子に対して、屈折率変調のための信号を切って同様に光走査を行なった場合の、走査線の湾曲による直線からのずれは、最大12.56mmに達し、実用的な素子として使用することは不可能であった。
【0076】
【発明の効果】
本発明の薄膜導波路型の光偏向素子は、偏向時の出射グレーティングカプラー部における出射角変動を、偏向走査に同期させて、導波路の実効屈折率を変調させることにより、走査線の湾曲を補正し、高い位置精度を実現させることができるものであり、したがって、レーザ・プリンター、デジタル複写機、ファクシミリ等に利用範囲を拡大させることができるものである。
また、本発明の画像形成装置は、上記の光偏向素子を感光体の露光機構として使用することにより、高い走査精度で画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を説明するための導波光−放射光結合の模式図である。
【図2】本発明の原理を説明するための導波光−放射光結合伝搬ベクトルダイアグラムである。
【図3】本発明の実施の形態による光偏向素子を用いた画像形成装置の構成図である。
【図4】本発明の実施の形態による光偏向素子における走査線の投影図である。
【図5】従来技術における問題点を示す模式図である。
【図6】本発明の光偏向素子の一形態を説明する図である。
【図7】本発明の光偏向素子の他の一形態を説明する図である。
【図8】本発明の光偏向素子のさらに他の一形態を説明する図である。
【符号の説明】
1 光導波路
2 偏向手段
4 SAW
6 グレーティングカップラー(部)
8 電圧印加手段
10 上部電極
12 下部電極
14、16 櫛形電極
20 単結晶基板
22 トランスデューサ
24 薄膜レンズ
50 光偏向素子
52 半導体レーザ
54 基板
56 薄膜光導波路
58 モードインデックスレンズ
60 電極
62 偏向光出射クレーティングカプラー
69 感光体の一部

Claims (7)

  1. 強誘電体薄膜導波路と、前記薄膜導波路にレーザ・ビームを入射する光源と、前記薄膜導波路を伝搬する前記レーザ・ビームを偏向する偏向手段と、偏向された前記レーザ・ビームを前記薄膜導波路外に出射させるグレーティングカップラーとを設けた光偏向素子において、
    前記グレーティングカップラーに接続され、前記レーザビームの出射光を前記偏向手段により偏向して得られる走査線の湾曲を補正する制御手段を備えたことを特徴とする光偏向素子。
  2. 請求項1記載の光偏向素子において、
    前記制御手段は、前記グレーティングカップラーの屈折率を変化させることを特徴とする光偏向素子。
  3. 請求項2記載の光偏向素子において、
    前記薄膜導波路を構成する材料が電気光学効果を有し、前記制御手段は前記グレーティングカップラーの上面に設けられた上部電極と、前記光導波路を挟んで前記上部電極に対向して設けられた下部電極との間に電圧を印加して屈折率を変化させることを特徴とする光偏向素子。
  4. 請求項2記載の光偏向素子において、
    前記薄膜導波路を構成する材料が電気光学効果を有し、前記制御手段は櫛形状に形成された電極として作用する前記グレーティングカップラーに電圧を印加して屈折率を変化させることを特徴とする光偏向素子。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光偏向素子において、
    前記強誘電体薄膜が、導電性または半導電性の単結晶基板上へ作製されエピタキシャルまたは配向性であり、あるいは、導電性または半導電性のエピタキシャルまたは配向性の薄膜を表面に有する単結晶基板上へ作製されエピタキシャルまたは配向性であり、前記導電性または半導電性の単結晶基板が前記光導波路下で電極として作用することを特徴とする光偏向素子。
  6. 請求項4記載の光偏向素子において、前記グレーティングカップラーに前記第一の方向に電圧を印加して屈折率を変化することを特徴とする光偏向素子。
  7. 感光体と、前記感光体を一様に帯電する帯電手段と、前記感光体に光を照射して潜像を形成する露光手段と、当該潜像を可視化する現像手段とを設けた画像形成装置において、
    前記露光手段は、請求項1乃至6のいずれかに記載の光偏向素子を有していることを特徴とする画像形成装置。
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