JP3541495B2 - 塗工シート - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、オレフィン系ポリマーからなるシート、特に文具用キャリングケース、バインダーなど、頻繁に手に持って使用する分野に用いられるシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
オレフィン系ポリマーのシートは、軽量で、強度、耐熱性、安全性などに優れるため種々の用途に、中でも、バインダーやファイルの表紙、キャリングケースの本体など、文房具用品の分野で多く利用されている。
ところで、近年、文房具用品はそのデザインが売上に大きく影響するようになったために、カラーバリエーションを豊富に揃えたり、表面に模様を施したりしたものが多く販売されている。
しかしながら、彩色や表面模様によるだけでは、デザイン性に乏しく応用の範囲も限られるため、色の深みや手触りの良さなどの今までにない質感を有する文房具用品が求められている。
また、頻繁に手に持って使用する文房具用品は、デザイン性だけでなく、表面の傷付きにくさ、持ち易さなどの機能をも満足する必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような従来の課題を背景になされたもので、デザイン性、機能性の両方に優れ、しかも、折り曲げ加工によっても折り曲げ部の美観が損なわれない塗工シートを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、オレフィン系ポリマーからなるシート(以下単に「シート」ともいう)の片面または両面に、コロナ放電処理し、シート表面の濡れ指数を40〜58dyn/cmとした後、ポリウレタンビーズおよびウレタン樹脂を主体とする塗膜を形成させたものであって、その塗膜が、波長380〜780nmの可視光線領域における平均光線透過率が10〜45%の透明性を有するものであることを特徴とする塗工シート、および該塗工シートを折り曲げ加工してなる塗工シートを提供するものである。
【0005】
本発明に用いられるオレフィン系ポリマーとしては、エチレン、プロピレン、ブテンなどのモノオレフィンの重合体および共重合体を主成分とするものであり、例えば高密度ポリエチレン、中低密度ポリエチレン、結晶性ポリプロピレン、結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体、ポリブテン、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1などが挙げられるが、中でもポリプロピレンが好適である。また、オレフィン系ポリマーは単独であっても、これらの混合物であってもよい。
シートの厚さは、塗工シートの用途にもよるが、好ましくは0.05〜3.0mm、特に好ましくは0.1〜2.0mmである。
【0006】
このシートは、無色であっても、有彩色であってもよい。有彩色の場合には、黒色、白色のほか、あらゆる色を選択することができ、単色のみならず、2種以上の複数色としてもよい。また、シートは透明であっても、不透明であってもよい。
【0007】
ここで、オレフィン系ポリマーに彩色を施すための顔料としては、低収縮性フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、イソインドリノン系イエロー、キナクリドン系レッド、ペリレン系レッドなどのほか、群青、コバルトブルー、クロムオキサイドグリーン、チタンホワイト、カーボンブラック、ベンガラ、カドミウムイエロー、カドミウムレッドなどの無機顔料を用いることもできる。
【0008】
顔料の添加量としては、求める色彩により選択することができるが、好ましくは0.1〜5.0重量%、特に好ましくは1.0〜2.5重量%である。添加量が0.1重量%未満であると、着色力が劣り、所望の色が得られにくく、一方、5.0重量%を超えると、物性の低下が生じ、経済的にもコストアップをもたらすため好ましくない。ただし、シートに透明性を持たせる場合には、極力添加量を少なくする必要があるため、0.25重量%以下であることが望ましい。
【0009】
また、オレフィン系ポリマーには、必要に応じて帯電防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、防曇剤などを配合することもできる。
【0010】
帯電防止剤としては、第1級アミン塩、第3級アミン、第4級アンモニウム化合物、ピリジン誘導体などのカチオン系の帯電防止剤、硫酸化油、石鹸、硝酸化エステル油、硫酸化アミド油、硫酸エステル塩類、脂肪族アルコール、アルキル硫酸エステル塩、炭素数4〜10の飽和脂肪酸、炭素数10以上の飽和、不飽和脂肪酸、炭素数8以上の飽和、不飽和脂肪酸のリチウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウムなどの金属塩などの高級脂肪酸の金属塩、アルキルフェノールスルホン酸塩、脂肪酸エチルスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、コハク酸エステルスルホン酸塩、リン酸エステル塩などのアニオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシプロピレンテトラオール、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドとアルキルアミンとの縮合物、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドとアルキルアミドとの縮合物、エチレングリコールもしくはプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールのエーテルもしくはエステルと3価以上の多価アルコールまたは多価アルコールのアルキルエステルとのエーテル化物、エチレングリコールもしくはプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールのアルキルエーテルもしくはアルキルエーテルまたはアルキルアリルエーテルもしくはアルキルエステルなどのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドの誘導体、グリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコール、多価アルコールの部分脂肪酸エステル、ナフテン酸エステル、分子量1万以下の低分子量ポリビニルアルコール、低分子量ポリビニルアルコールの部分エステル化物脂肪族アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪族アミンまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコールなどの非イオン系の帯電防止剤、カルボン酸誘導体、イミダゾリン誘導体などの両性系の帯電防止剤などが挙げられる。帯電防止剤の使用量は、オレフィン系ポリマー100重量部に対して0.05〜20重量部、好ましくは0.4〜0.8重量部である。20重量部を超えると、帯電防止剤がオレフィン系ポリマーからなるシートの表面にブリードし外観を損なう場合があるので、好ましくない。
【0011】
紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシベンゾフェノン系、2−(2′ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール系、サリチル酸系、フタル酸系などが挙げられる。
紫外線吸収剤の使用量は、オレフィン系ポリマー100重量部に対して0.05〜1.0重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部である。
【0012】
酸化防止剤としては、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、ジフェニルアミン、N,N′−ジフェニル−P−フェニレンジアミンなどのアミン系、2,6ジ−t−ブチル−4メチルフェノール、2,4ジメチル−6−t−ブチルフェノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニゾール、n−オクタデシル−β(4′−ハイドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネートなどのフェノール系が挙げられる。
酸化防止剤の使用量は、オレフィン系ポリマー100重量部に対して0.05〜1.0重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部である。
【0013】
滑剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カドミウム、リン酸エステル類などが挙げられる。
滑剤の使用量は、オレフィン系ポリマー100重量部に対して0.05〜1.0重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部である。
【0014】
オレフィン系ポリマーのシートは、オレフィン系ポリマーおよび必要に応じて添加する顔料、その他の添加物とともにドラムブレンダー、Vタイプブレンダー、リボンブレンダーなどの混合機で予備混合し、押し出し機などを用いて、例えば溶融押し出しなどにより成形することにより製造される。
その際、後述する塗膜をシートの片面にのみ設ける場合には、塗膜を設けない面に、しぼ模様を付したり、梨地加工をしてもよい。
【0015】
本発明における塗膜は、ポリウレタンビーズおよびウレタン樹脂を主体とするものである。
本発明において、この塗膜をシートの片面または両面に設ける方法として、ウレタン樹脂を含有するベース塗料(以下単に「ベース塗料」ともいう)およびポリウレタンビーズを主体とする液状塗料(以下単に「液状塗料」ともいう)を、シートに塗布したのち、乾燥させる方法を用いることができる。
【0016】
ウレタン樹脂は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒などにより希釈され、液状のベース塗料となる。
【0017】
このとき、ベース塗料のウレタン樹脂の含有量としては、好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは20〜40重量%である。含有量が10重量%未満であると、スクリーン印刷の場合、塗料の流れが生じて均一な塗工が困難となり、一方50重量%を超えると、粘度が高くなり、版の離れが悪く、ムラの原因となる。
【0018】
このベース塗料は、無色であっても、有彩色であってもよい。有彩色の場合、顔料の含有量は、0.05〜0.5重量%が好ましく、特に0.1〜0.3が好ましい。含有量が0.05重量%未満であると、微量のため、精度的な問題から、色バラツキが生じる恐れがあり、一方、0.5重量%を超えると、ウレタンビーズの色彩による発色効果を阻害し、単なる艶消し塗料と変わらなくなる。
【0019】
塗膜を形成する一方の主体であるポリウレタンビーズは、好ましくは平均粒径5〜20μm、特に好ましくは10〜18μmである。平均粒径が5μm未満であると、塗工面において弾性ウレタンビーズの突起が減少するため、塗膜が単なるウレタンビーズ皮膜と大差なくなり、一方20μmを超えると、表面に必要以上のザラツキ感が生じ、手触りが悪くなる恐れがある。
ポリウレタンビーズの形状は、球形でも、それ以外の形状であってもよく、また、定型であっても、不定型であってもよいが、より滑らかな手触りとなすためには、球形のポリウレタンビーズを用いることが好ましい。
【0020】
また、ポリウレタンビーズの色彩は、無色であっても、有彩色であってもよく、シートの色彩や透明度を考慮して、選択することができる。また、有彩色の場合には、単色に限らず、例えば更に色の深みを増すために、2色以上の複数色としてもよい。さらに、ポリウレタンビーズは、透明であっても不透明であってもよい。
【0021】
ポリウレタンビーズに彩色を施す場合には、二酸化チタン、黄色酸化鉄、ベンガラ、紺青、クロムグリーン、カーボンブラック、ハンザイエロー、レーキレッド、カナクリドンバイオレット、銅フタロシアニン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレーなどの無機顔料、または有機顔料が使用できる。顔料の添加量は、求める色彩により選択することができるが、好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜20重量%である。5重量%未満であると、着色力が劣り、所望の発色を得るために多量のポリウレタンビーズが必要となり、一方、30重量%を超えると、顔料過多によりウレタン特有の弾性が損なわれ、触感が悪くなる。
本発明に用いるポリウレタンビーズには、架橋ウレタンビーズを用いることが好ましい。好ましい架橋剤としては、耐光性を考慮し、無黄変性の多官能イソシアネート化合物が好ましい。
【0022】
また、ポリウレタンビーズには、必要に応じて、可塑剤、安定剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、造膜助剤、防黴剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤などを添加することができる。
【0023】
以上のように調整された液体塗料は、その固形分が10〜50重量%、特に20〜40重量%が好ましい。固形分が10重量%未満であると、スクリーン印刷の場合、塗料の流れが生じて均一な塗工が困難となり、一方、50重量%を超えると、粘度が高くなり、版の離れが悪く、ムラの原因になる。
【0024】
この固形分中、ポリウレタンビーズ100重量部に対するウレタン樹脂の割合は、10〜60重量部が好ましく、特に20〜40重量部が特に好ましい。ポリウレタンビーズの割合が10重量部未満であると、ポリウレタンビーズによる触感、色感の変化が少なく、一方60重量部を超えると、塗料の増粘による加工性の低下を招く上、経済的にもコストアップにつながるため好ましくない。
【0025】
なお、液体塗料には、塗膜の強度、接着性、耐アルコール性、耐油性などを向上させるために、硬化剤を含有させることができる。
硬化剤としては、特に限定されないが、ポリイソシアネートプレポリマー〔R(NCO)n 〕であり、Rに芳香族を含まない無黄変型が好ましい。
硬化剤の添加量としては、3〜20重量%が好ましく、特に5〜8重量%が好ましい。添加量が3重量%未満であると、架橋度が不足することがあり、所望の強度が得られない恐れがあり、一方、20重量%を超えると、樹脂の硬化が生じて、割れの発生や触感の悪化の原因となる。
【0026】
また、硬化剤以外にも、必要に応じて、架橋促進剤などを添加することができる。
【0027】
液体塗料の塗布方法は、例えばロールコート、リバースコート、キスコート、フローコート、スクリーン印刷、ナイフコート、バーコート、スプレーコート、ディプコートなどの一般的塗布方法が採用できるが、本発明においては、スクリーン印刷が最も好適である。
なお、液体塗料の粘度は、好ましくは20℃において、1,000〜5,000cps、特に2,000〜3,000cpsが好ましい。粘度が1,000cps未満であると、塗料の流れが生じて均一な塗工ができず、一方、5,000cpsを超えると、版との離れが悪くなり、ムラの原因となる。
【0028】
ポリウレタンビーズおよびウレタン樹脂を主体とする塗膜(以下単に「塗膜」ともいう)の乾燥後の厚みは、好ましくは5〜50μmであり、特に10〜30μmが好ましい。塗膜の厚みが5μm未満であると、塗料の絶対量が不足のため手触りによるソフト感が得られにくい上、表面強度も低下する。一方、50μmを超えると、ポリウレタンビーズが塗料の中に埋没する部分が多くなるため好ましい触感が得られにくくなる上、シートの色彩が塗膜を通して現れることによる色の深みが得られにい。
【0029】
塗膜は、可視光線領域380〜780nmにおいて、平均光線透過率が10〜45%、好ましくは20〜35%の透明性を有するものとする。光線透過率は、塗膜を構成するウレタン樹脂からなるベース塗料およびポリウレタンビーズの配合割合、粒子径、着色度、塗膜厚さ等の諸要因によって設定することができる。光線透過率が10%未満であると、塗膜としての透明性が不充分であるため、塗膜を通してシートの色彩を透視することが困難となり、塗膜とシートの色彩の相互作用による複雑な色合い、色の深み、立体感が得られにくくなり、一方45%を超えると、塗膜の色彩が弱くなりすぎ、塗膜とシートの色彩の相互作用が得られにくくなるため、色の深みが乏しくなる。
【0030】
塗布の際には、オレフィン系ポリマーからなるシートにあらかじめ表面処理を施し、シート表面の濡れ性を向上させることが好ましい。表面処理としては、コロナ放電処理が挙げられる。
コロナ処理を施すことにより、シート表面に水酸基が導入されるため、シート表面の濡れ性が向上して塗膜とシートの密着性が向上する。シート表面の濡れ指数は40〜58dyn/cmとする。
【0031】
このようにして作成された塗工シートにおいては、前述のとおり、シート、塗膜のそれぞれを無色または有彩色として組み合わせることができる。その結果、シートの色彩と、塗膜の色彩を種々組み合わせることにより、立体感、複雑な透明感、色の深み、温かみなどの質感を有するシートが得られる。
例えば、シートと塗膜に同系色の色彩を施した場合には、重厚で深みのあるスエード調外観の塗工シートが得られる。シートと塗膜に異なる系統の色彩を施した場合では、複雑な色彩となり、立体感ある外観が得られる。中でも、シートが黒色である場合には、塗膜が同系色であるなしにかかわらず、高級なスエード調外観が得られる。
また、不透明で無色のシートに有彩色の塗膜を形成することにより、透明感が抑制され、マット感が付与される。反対に、有彩色のシートに無色の塗膜を形成することにより、明るいマット感となる。さらに、白色のシートに有彩色の塗膜を形成することにより、デニム生地調の外観が得られる。
【0032】
このように、シートの色彩と塗膜の色彩を組み合わせることにより、同系色において、微妙に異なる色彩を得ることが可能である。例えば、黄色系の場合には、黄色のシートに無色の塗膜を形成したもの、黄色のシートに黄色の塗膜を形成したもの、白色のシートに黄色の塗膜を形成したもの、無色のシートに黄色の塗膜を形成したものでは、それぞれの、明度、色味、透明度などが異なる。このことは、黄色以外の色についても同様である。
【0033】
また、塗膜に色彩を施す場合に、ポリウレタンビーズにのみ施す場合、ベース塗料にのみ施す場合、または両方に施す場合とでは、その効果は異なる。
すなわち、ポリウレタンビーズにのみ色彩を施した場合には、無色のベース塗料(乾燥後はウレタン樹脂)を通じて、塗膜の表面だけでなく無色のベース塗料を通してシートが透視されるので、立体感、色の深みなどが顕著となる。また、ベース塗料にもに色彩を施した場合には、塗膜を通してシートの透視が困難になるので立体感、色の深みは減少することがある。両方に彩色を施した場合、特にベース塗料に透明感のある色彩を施した場合には、マット感あふれる深い色調の外観となる。
【0034】
従って、本発明の塗工シートの好ましい実施態様は次のとおりである。
▲1▼透明塗膜/透明シートからなる塗工シート。
▲2▼彩色塗膜/透明シートからなる塗工シート。
▲3▼透明塗膜/不透明彩色シートからなる塗工シート。
▲4▼彩色塗膜/不透明黒色シートからなる塗工シート。
▲5▼同系色塗膜/不透明同系色シートからなる塗工シート。
▲6▼黒色塗膜/不透明彩色シートからなる塗工シート。
▲7▼異色塗膜/不透明彩色シートからなる塗工シート。
【0035】
このように多様性に富む塗工シートは、折り曲げ加工により、多種多様な形状の塗工シートとなる。この塗工シートは、バインダー、ファイル、キャリングケースなどの文房具など、あらゆる用途に用いられる。
折り曲げ加工の方法としては、特に限定されないが、好ましくは加熱・加圧による罫線型押しにより行うことができる。
【0036】
【作用】
オレフィン系ポリマーからなるシートの片面または両面に、架橋されたポリウレタンビーズおよびウレタン樹脂を主体とする塗膜を形成したため、架橋されたポリウレタンビーズが塗膜表面に表出し、引っかき傷などに対する表面強度が向上する。さらに、塗膜は、ポリウレタンビーズとともにウレタン樹脂を主体とすることから、ポリウレタンビーズに局所的な力が加えられても、ウレタン樹脂の持つ弾力性によりこれが吸収されて傷が付きにくい上、もし傷が付いても、ウレタン樹脂の復元力により傷が回復し易い。また、この弾力性により、手に持ったときにソフトな感触が得られる。
さらに、この塗膜表面にはウレタン樹脂も表出しているため、塗膜を形成していないオレフィン系ポリマーの表面よりも、シート表面の摩擦係数が増大するため、手に持った際に滑りにくい。さらに、ポリウレタンビーズの凹凸により、表面の結露が防止される。
【0037】
また、この塗工シートは、オレフィン系ポリマーからなるシートの片面または両面に、ポリウレタンビーズおよびウレタン樹脂を主体とする塗膜を形成させたものであるから、これを加熱・加圧加工により折れ線を形成させ、折り曲げ加工をした塗工シートは、オレフィン系ポリマーからなるシート単体のものを、同様にして折り曲げ加工したものと比較しても、表面塗膜の緩衝、保護作用により、圧着した折れ線部分は比較的に光沢が少なく、外観に暖かみがあるので、折り曲げ成型品の外観を損ねることがない。
【0038】
また、塗膜表面は、ポリウレタンビーズが表面に突出して凹凸を形成することにより、光の乱反射が生じ艶消し効果が得られる。
シートの色彩と、塗膜の色彩を種々組み合わせることにより、同系色であっても微妙に異なる色彩となるとともに、立体感、複雑な透明感、色の深み、温かみなどの質感を有するシートが得られる。
特に、ポリウレタンビーズのみ彩色を施してベース塗料が透明をしたことにより、塗膜全体が透明である場合には、塗膜の表面だけでなくウレタン樹脂を通してオレフィン系ポリマーからなるシートが透視されるので、さらに前記した質感が増幅される。また、シートが透明である場合には、塗工シート全体が透明性を有することとなり、塗工シートの内側を透視することができる。
さらに、シートおよびポリウレタンビーズを有彩色とした場合には、高級感あふれるスエード調の表面をもつシートが得られ、特に、シートの色を黒色とした場合には顕著となる。
【0039】
【実施例】
以下、本発明の実施例を挙げて、実施例を説明する。
実施例1〜4、比較例1〜5
ポリプロピレンからなるからなるシートに、あらかじめコロナ処理を施したのち、ポリウレタンビーズ8重量部、ウレタン樹脂25重量部、硬化剤5重量部、溶剤62重量部を用いて液体塗料を調製し、これを該シートの片面に塗布し、70℃で120秒間、乾燥処理を行い、20℃で48時間養生した。
このように作成された塗工シートを部材として用いて、バインダーを製造し、塗工シートに使用したポリウレタンビーズの粒径、塗工シートに形成されている塗膜の乾燥後の厚さを表1〜2に示したものとし、それぞれについて機能を評価した。ただし、コロナ処理以下の処理を施さないポリプロピレンからなるシートを部材として用いたバインダーを比較実験例1とした。結果を、表1〜2に示す。
なお、コロナ処理は、シート表面の濡れ指数が40〜58dyne/cmの範囲になるように行った。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
実施例5〜10
実施例1と同様に作成した塗工シートにおいて、オレフィン系ポリマーおよびポリウレタンビーズの色彩を表3〜4に示したものとし、これらからなる塗工シートについて、その外観を評価した。その結果を表3〜4に示す。
比較例6〜7
表5に示した色彩を施したオレフィン系ポリマーからなるシートについて、塗膜の形成を行わなかった場合の外観を評価した。その結果を表5に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、引っかき傷などに対する表面強度に優れ、しかも、もし傷がついてもウレタン樹脂の復元力により、傷が回復しやすい塗工シートが得られる。
また、この塗工シートは、摩擦係数が大きいためにすべりずらく、手触りがソフトなため、これを加工した製品は手に持ち易い。さらに、表面が結露しずらいため、手に汗をかいていたり、雨水でぬれていたりするときでも、持ち易さは変わらない上、手に不快感を感じない。
【0047】
また、オレフィン系ポリマーからなるシートの色彩と、塗膜の色彩を種々組み合わせることにより、微妙に異なる色彩が得られるためカラーバリエーションが豊富となるとともに、立体感、複雑な透明感、色の深み、温かみなどの質感を有するシートとなることから、多様なデザインの製品の製造が可能となる。
中でも、オレフィン系ポリマーからなるシートおよびポリウレタンビーズを有彩色とした場合にはマット感のある外観が得られる。また、オレフィン系ポリマーからなるシートが黒色である場合には、高級感あふれるスエード調の表面をもつシートとなり、近年の高級指向に合致した製品の製造が可能となる。
このとき、製品の製造を折り曲げ加工により行っても、表面塗膜の緩衝、保護作用により、圧着した折れ線部分は比較的に光沢が少なく、外観に暖かみのある外観の製品が得られる。
Claims (4)
- オレフィン系ポリマーからなるシートの片面または両面に、コロナ放電処理し、シート表面の濡れ指数を40〜58dyn/cmとした後、ポリウレタンビーズおよびウレタン樹脂を主体とする塗膜を形成させたものであって、その塗膜が、波長380〜780nmの可視光線領域における平均光線透過率が10〜45%の透明性を有するものであることを特徴とする塗工シート。
- 折り曲げ加工してなる請求項1記載の塗工シート。
- ポリウレタンビーズの平均粒径が、5〜20μmである請求項1または2記載の塗工シート。
- 塗膜を形成するポリウレタンビーズが、無色または有彩色である請求項1〜3いずれか1項記載の塗工シート。
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