JP3540585B2 - 円筒型電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒型電池に関し、詳しくは電気自動車等に用いられる高出力密度を必要とするニッケル−カドミウム電池、ニッケル−水素電池、リチウム電池等の円筒型電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種電池では、帯状の正極と負極とがセパレータを介して渦巻き状に巻回される渦巻き電極体を有しており、この渦巻き電極体からの集電方法としては、上記正負極の端部に各々導電タブを取り付け、これら導電タブと電流端子とを電気的に接続することにより行われていた。このような構造の電池では、電流値が小さな小型の円筒型電池であれば、集電効果を十分に発揮することができるが、電流値が大きな大型の円筒型電池では、電極面積が大きくなることから、集電効果を十分に発揮することができなくなるという課題を有していた。
【0003】
そこで、以下に示すような集電方法を備えた円筒型電池が提案されている。
A.特開平6−267528号公報に示すように、帯状の正極及び帯状の負極の集電体の長手方向の両端部には、それぞれセパレータから突出する正極のリード取付部と負極のリード取付部とが形成され、これら両リード取付部には、各々複数の正極リードと複数の負極リードとが溶接される構造の円筒型電池。
【0004】
B.特開平8−115744号公報に示すように、帯状の正極及び帯状の負極の集電体の長手方向の両端部には、それぞれセパレータから突出する正極集電体の露出部と負極集電体の露出部とが形成され、上記正極集電体の露出部は正極リードにより接続される一方、上記負極集電体の露出部は負極リードにより接続され、且つ正極リード及び負極リードが、接続部材を介して或いは直接的に電流端子と接続される構造の円筒型電池。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の円筒型電池では、以下に示すような課題を有していた。
Aの電池の課題
上記Aの電池では、正極リードと正極のリード取付部及び負極リードと負極のリード取付部とは、各リード取付部を束ねて一点で接続する必要があるため、当該接続部分において接触抵抗が発生する結果、電池の内部抵抗を飛躍的に低減することはできない。また、リード取付部を束ねた溶着部の途中で溶着が外れると、リード取付部の接続がそこで分断され、更に電池の内部抵抗が上昇する。
【0006】
加えて、上記Aの電池において、電池作製時(特に、電極体の電池缶挿入時)における生産性の低下を防止するためには正極リード取付部及び負極リード取付部をある程度の長さに設定してしておく必要がある。しかしながら、両リード取付部が長くなると、電池の製造工程において正極リード取付部と負極リード取付部とが共に電池缶と接触して、電池内で短絡を生じるおそれがある。更に、電池作製直後には短絡を生じなかったとしても、電池を使用している環境の中で振動など加わった場合には、徐々に両リード取付部の位置が変化し、両リード取付部が共に電池缶に接触して短絡を生じることがある。このため、電池の信頼性が低下するという課題を有している。
【0007】
Bの電池の課題
上記Bの電池では、金属箔から成る正極リード及び負極リードと、正極集電体の露出部及び負極集電体の露出部とを一様に接続するのは困難であり、しかも、各リードと各集電体とから形成される接続面は面状になっていないため、当該接続面において接続部材又は電流端子とをレーザー法等により溶接する際、点状の溶接となる結果、両者の接触面積が小さくなる。これらのことから、生産性が悪く、しかも電池の内部抵抗を飛躍的に低減することができないという課題を有していた。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を考慮して成されたものであって、大型電池であっても電池の内部抵抗を飛躍的に低減することができ、且つ生産性を高めることができ、しかも電池の信頼性を飛躍的に向上しうる円筒型電池の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の円筒型電池は、帯状の正極集電体の両面に正極活物質層が形成された正極と、帯状の負極集電体の両面に負極活物質層が形成された負極とが、帯状のセパレータを介して渦巻き状に巻回される渦巻き電極体を備え、上記正極及び負極が直接的に或いはリード線を介して外部端子と電気的に接続される構造の円筒型電池において、上記正極集電体又は上記負極集電体のうち、少なくとも一方の集電体には、当該集電体と一体的に形成され且つ上記セパレータの幅方向の端部より突出する電流取出部が設けられ、この電流取出部には上記渦巻き電極体の径方向に延びる孔が形成されると共に、曲げ部分が接続部と差込部とから成るコ字状の金属片における上記差込部が上記電流取出部の孔に挿入されて電流取出部と金属片とが電気的に接続される一方、上記金属片の接続部と上記外部端子とが電気的に接続されることを特徴とする。
【0010】
上記の構成であれば、電流取出部の孔に金属片の差込部を挿入し、且つ金属片の接続部と上記外部端子とを電気的に接続するだけで電流を取り出すことができるので、電池作製時の作業性を向上させることができる。
また、渦巻き電極体の各周回毎に電流取出部と金属片とが電気的に接続されるので、集電体内での電位勾配が少なくて電流分布が偏ることがない。したがって、電池の内部抵抗が小さくなって、電池の高出力密度化を図ることができる。
加えて、例え一つの周回において、電流取出部と金属片との電気的な接続が遮断された場合であっても、他の周回における電流取出部と金属片との電気的な接続には影響を及ぼさないので、電池使用時における電池の内部抵抗の上昇を抑制することができる。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、電流取出部の端部は金属片の接続部の内側面に押圧され、且つ電流取出部の端部と金属片の接続部とが溶着法にて電気的に接続されることを特徴とする。
このような構造であれば、一層内部抵抗が低減すると共に、接続部における信頼性も向上することができる。
尚、電流取出部の端部と金属片の接続部との溶着において、レーザー溶接法を用いた場合であっても、レーザー光は金属片で遮断されるので、レーザー光が直接電極活物質に照射されることがない。したがって、この点においても信頼性が向上する。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、正極集電体と一体的に形成された正極側の電流取出部と、負極集電体と一体的に形成された負極側の電流取出部とを有し、且つ一方の電流取出部は他方の電流取出部とは反対側に突出形成されていることを特徴とする。
このように一方の電流取出部は他方の電流取出部とは反対側に突出形成されていれば、電池内部での短絡を防止できる。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、正極側の電流取出部及びこの電流取出部と電気的に接続される金属片がアルミニウムから成り、且つ負極側の電流取出部及びこの電流取出部と電気的に接続される金属片が銅から成ることを特徴とする。
このように、電流取出部と金属片とが同一の材料で形成されていれば、両者の溶着作業を一層円滑に行うことができる。
但し、両者は必ずしも同一の材料で構成する必要はなく、両者の溶着を容易に行うことができる材料であれば、その材料を限定するものではない。
【0014】
また、請求項5記載の発明は、請求項1、2、3又は4記載の発明において、金属片の幅は電池径の1/10〜1/3に規制され、且つ金属片の厚みは0.5mmから2.0mmに規制されることを特徴とする。
このように金属片の幅を規制するのは、金属片の幅が電池径の1/10未満であれば、金属片の抵抗が増大して金属片のジュール熱が生じる一方、金属片の幅が電池径の1/3を超えると、電池缶内に納めるのが難しく、電池の作製が困難になるという理由による。
一方、金属片の厚みを規制するのは、金属片の厚みが0.5mm未満であれば、金属片の機械的強度が不十分となって金属片を電流取出部の孔に挿入するのが困難となる一方、金属片の厚みが2.0mmを超えると、金属片が厚すぎてレーザー等による溶着加工が困難になるという理由による。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の形態を、図1〜図10に基づいて、以下に説明する。
先ず、図1に示すように、アルミニウムから成る帯状の正極集電体1a(厚さ:0.02mm)の両面に、LiCoO2 から成る正極活物質と炭素から成る導電助剤とポリフッ化ビニリデン(PVdF)から成るバインダーとを混合した正極合剤を塗布することにより、正極集電体1aの両面に正極活物質層1bが形成された正極1を作製する。尚、この際、正極集電体1aの幅方向の一方の端部には、正極活物質層1bが存在しない電流取出部1cを形成する。
【0016】
これと並行して、図2に示すように、銅から成る帯状の負極集電体2a(厚さ:0.018mm)の両面に、天然黒鉛から成る負極活物質とPVdFから成るバインダーとを混合した負極合剤を塗布することにより、負極集電体2aの両面に負極活物質層2bが形成された負極2を作製する。尚、この際、負極集電体2aの幅方向の他方の端部(上記正極1とは反対方向の端部)には、負極活物質層2bが存在しない電流取出部2cを形成する。
次に、図3に示すように、幅L3 が、上記正極活物質層1bの幅L1 及び上記負極活物質層2bの幅L2 より若干大きくなるように形成されたセパレータ3を用意する。尚、このセパレータ3は、多孔性のポリエチレンから成る。
【0017】
次いで、図4に示すようにして正極1、負極2、及びセパレータ3を重ね合わせつつ、図5に示すように、これらを渦巻き状に巻回して渦巻き電極体4を作製する。この際、正極側の電流取出部1cと、負極側の電流取出部2c(図6においては、電流取出部2cは図示せず)とを、セパレータ3の端部より突出するように形成する。この後、図6に示すように、ダイヤモンドカッター等の孔開け部材を用いて、正極側の電流取出部1cに孔5を形成する。尚、この孔5の大きさは後述の金属片6を容易に挿入することができるように、金属片6より若干大きくなるように形成されている。
【0018】
しかる後、図7に示すように、L字状でアルミニウムから成る金属片6の差込部6aを上記孔5に挿入した後、図8に示すように、金属片6を折り曲げてコ字状とすることにより接続部6bを形成する。尚、この際、金属片6の接続部6bと正極側の電流取出部1cとが十分に密着するよう、図9に示すように、正極側の電流取出部1cの端部が折れ曲がる程度に金属片6を折り曲げる。この後、矢符A方向からレーザー光を照射することにより、金属片6の接続部6bと正極側の電流取出部1cとを溶着する。次いで、金属片6の接続部6bの上端面(電流取出面)と正極電流端子(図示せず)とをレーザーにより溶着した。
尚、図示しないが、負極側の電流取出部2cについても同様の処理がなされている。
最後に、上記金属片6が溶着された渦巻き電極体を電池缶内に収納した後、当該電池缶内に電解液を注入し、更に封口することにより円筒型非水電解液二次電池を作製した。
【0019】
ここで、渦巻き電極体4の外周部では余り問題とはならないが、渦巻き電極体4の内周部では電流取出部1cに対する孔5の割合が大きくなるため、内周部においては電流を円滑に取り出すことができないおそれがある。そこで、このような問題が生じる場合には、図10に示すように、金属片6の差込部6aと接続部6bとを先細り状とし、且つ孔6も当該形状に対応するような形状とすることにより上記の問題を容易に解決することができる。
【0020】
また、上記形態では、レーザー溶接法によって、金属片6の接続部6bと電流取出部1cとを溶着しているが、この方法に限定するものではなく、ビーム溶接法或いは抵抗溶接法を用いても良い。
更に、上記形態では、金属片6と電流端子とを直接接合しているが、このような構造に限定するものではなく、例えばリード線を介して金属片6と電流端子とを電気的に接続するような構造であっても良い。
【0021】
加えて、上記形態では、孔5を形成する以外、電流取出部1cを全く削り取っていないが、電池の内部抵抗が増大しない範囲で電流取出部1cを削り取ることも可能である。このような構成とすれば、電池の単位重量当たりの電池出力の増大を図ることができる。
また、上記形態では、金属片6を1つしか設けていないが、2つ以上設けても良い。
【0022】
更に、正極活物質としては、上述のLiCoO2 に限定するものではなく、LiNiO2 、LiMn2 O4 等を用いることができ、更に負極活物質としては、上述の天然黒鉛に限定するものではなく、人造黒鉛等の他の炭素材料を用いることができる。更に、本発明は円筒型非水電解液電池に限定するものではなく、その他ニッケル−カドミウム電池、ニッケル−水素電池等の円筒型電池にも適用しうることは勿論である。
【0023】
【実施例】
本発明の実施例を、図11〜図13に基づいて、以下に説明する。
〔実施例1〕
実施例1としては、上記発明の実施の形態に示した円筒型非水電解液二次電池を用いた。尚、この電池の高さは400mm、直径は60mmであり、更に定格容量は70Ah、平均放電電圧は3.6Vである。
このような構造の電池を、以下本発明電池A1と称する。
【0024】
〔比較例〕
比較例としては、前記従来の技術で示した円筒型非水電解液二次電池(特開平6−267528号公報に示す電池)を用いた。尚、電池高さ等については、上記実施例と同様に形成した。
このような構造の電池を、以下比較電池Xと称する。
【0025】
〔実験1〕
上記本発明電池A1と比較電池Xとにおける、放電容量と電池電圧との関係を調べたので、その結果を図11に示す。尚、本実験における充放電条件は、0.5C(35A)の電流で電池電圧が4.2Vとなるまで定電流充電した後、1.0C(70A)の電流で電池電圧が2.7Vとなるまで定電流放電するという条件である。
図11から明らかなように、比較電池Xでは放電容量が63.4Aであるのに対して、本発明電池A1では放電容量が68.2Aであって、比較電池Xに比べて格段に容量が大きくなっていることが認められる。これは、本発明電池A1では、集電体と電流端子との間の接触抵抗が大幅に減少し、電池の内部抵抗が格段に減少するという理由によるものと考えられる。
【0026】
〔実験2〕
上記本発明電池A1における金属片の幅を変化させ、金属片の幅と最高出力密度との関係を調べたので、その結果を図12に示す。尚、金属片の厚みは全て0.5mmとした。
図12から明らかなように、金属片の幅が6mm以上(電池径の1/10以上)であれば、最高出力密度が1200Wh/kg以上となり、十分な出力特性を得られることを確認した。これは、金属片の幅が6mm未満であれば、金属片の抵抗が増大して金属片のジュール熱が生じるという理由によるものと考えられる。但し、金属片の幅が20mmを超えると(電池径の1/3を超えると)、電池の作製が困難であるということも実験で確認した。
これらのことから、金属片の幅は6〜20mm(電池径の1/10〜1/3)であることが望ましい。
【0027】
〔実験2〕
上記本発明電池A1における金属片の厚みを変化させ、金属片の厚みと最高出力密度との関係を調べたので、その結果を図13に示す。尚、金属片の幅は全て6mmとした。
図13から明らかなように、金属片の厚みが0.5mm以上であれば、最高出力密度が1200Wh/kg以上となり、十分な出力特性を得られることを確認した。
尚、金属片の厚みが0.5mm未満であれば、金属片の機械的強度が不十分となって電流取出部の孔に挿入するのが困難となる一方、金属片の厚みが2.0mmを超えると、金属片が厚すぎてレーザーによる加工が困難となる。
これらのことから、金属片の厚みは0.5〜2.0mmであることが望ましい。
【0028】
【発明の効果】
以上で説明したように本発明によれば、大型電池であっても電池の内部抵抗を飛躍的に低減することができ、且つ生産性を高めることができ、しかも電池の信頼性を飛躍的に向上することができるといった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の形態に用いる正極の正面図である。
【図2】本発明の形態に用いる負極の正面図である。
【図3】本発明の形態に用いるセパレータの正面図である。
【図4】本発明の形態に用いる渦巻き電極体の断面図である。
【図5】本発明の形態に用いる渦巻き電極体の斜視図である。
【図6】本発明の形態の電池の作製工程を示す斜視図である。
【図7】本発明の形態の電池の作製工程を示す斜視図である。
【図8】本発明の形態の電池の作製工程を示す斜視図である。
【図9】本発明の形態の電池の作製工程を示す側面図である。
【図10】本発明の形態に用いる金属片の変形例を示す斜視図である。
【図11】本発明電池A1及び比較電池Xにおける放電容量と電池電圧との関係を示すグラフである。
【図12】金属片の幅と最高出力密度との関係を示すグラフである。
【図13】金属片の厚みと最高出力密度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1:正極
1a:正極集電体
1b:正極活物質層
1c:電流取出部
2:負極
2a:負極集電体
2b:負極活物質層
2c:電流取出部
3:セパレータ
4:渦巻き電極体
5:孔
6:金属片
6a:差込部
6b:接続部
Claims (5)
- 帯状の正極集電体の両面に正極活物質層が形成された正極と、帯状の負極集電体の両面に負極活物質層が形成された負極とが、帯状のセパレータを介して渦巻き状に巻回される渦巻き電極体を備え、上記正極及び負極が直接的に或いはリード線を介して外部端子と電気的に接続される構造の円筒型電池において、
上記正極集電体又は上記負極集電体のうち、少なくとも一方の集電体には、当該集電体と一体的に形成され且つ上記セパレータの幅方向の端部より突出する電流取出部が設けられ、この電流取出部には上記渦巻き電極体の径方向に延びる孔が形成されると共に、曲げ部分が接続部と差込部とから成るコ字状の金属片における上記差込部が上記電流取出部の孔に挿入されて電流取出部と金属片とが電気的に接続される一方、上記金属片の接続部と上記外部端子とが電気的に接続されることを特徴とする円筒型電池。 - 前記電流取出部の端部は前記金属片の接続部の内側面に押圧され、且つ前記電流取出部の端部と前記金属片の接続部とが溶着法にて電気的に接続される、請求項1記載の円筒型電池。
- 前記正極集電体と一体的に形成された正極側の電流取出部と、前記負極集電体と一体的に形成された負極側の電流取出部とを有し、且つ一方の電流取出部は他方の電流取出部とは反対側に突出形成されている、請求項1又は2記載の円筒型電池。
- 前記正極側の電流取出部及びこの電流取出部と電気的に接続される金属片がアルミニウムから成り、且つ前記負極側の電流取出部及びこの電流取出部と電気的に接続される金属片が銅から成る、請求項3記載の円筒型電池。
- 前記金属片の幅は電池径の1/10〜1/3に規制され、且つ前記金属片の厚みは0.5mmから2.0mmに規制される、請求項1、2、3又は4記載の円筒型電池。
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