JP3540277B2 - タッチモード式容量型圧力センサ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タッチモード式容量型圧力センサに関し、特に高い耐圧性を有する圧力センサの構造およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
静電容量型圧力センサは、圧力に応じて変形するダイヤフラムが形成された基板と電極が形成された基板とを、ある程度の隙間をあけて前記ダイヤフラムおよび電極が互いに対向するように接合されている構造を有し、前記ダイヤフラムと電極との間の静電容量の変化から圧力を検出するものである。ダイヤフラムや電極を形成するための基板にシリコンやガラスのウエハを用いることが可能であるため、ウエハ上に一度に大量のセンサを作製することができ、低コストでの大量生産に適している。
【0003】
静電容量型圧力センサの中で、例えば米国特許第5,528,452号公報中に開示されたタッチモード式容量型圧力センサは、図3(A)に示すように、ガラス基板上に金属薄膜からなる電極1を形成し、その上に誘電体膜2を形成し、少なくとも表面が導電性を有するダイヤフラム3を僅かな隙間4を持たせて対向配置した構造であり、圧力検出時には図3(B)に示すようにダイヤフラムがたわんで誘電体膜2に接触している(タッチモードと称される)ことを特徴としている。
【0004】
ダイヤフラム3は、n型シリコンに高濃度にボロンをドーピングしたP+層とされており、ダイヤフラム3を1つの電極とみなせば、圧力検出時には電極1,誘電体膜2,およびダイヤフラム3からなるコンデンサが形成されることになる。ダイヤフラム3と誘電体膜2の接触面積の変化を、両電極間(ダイヤフラム3と電極1間)の静電容量の変化として検出することで、ダイヤフラム3に加わる圧力の測定が可能となる。タッチモード式容量型圧力センサは、他の静電容量型圧力センサに比べて高感度で耐圧性が高く、また圧力と静電容量が直線関係を持つなど多くの優れた特性を有する。
【0005】
図4に、タッチモード式容量型圧力センサの静電容量と印加圧力の関係を示す。タッチモード式容量型圧力センサの特性上、ダイヤフラムが誘電体膜に接触する前の低圧領域(未接触領域)では、感度はほとんどゼロである。ダイヤフラムが誘電体膜に接触すると、センサの静電容量は一定の範囲内で圧力に対してほぼ直線的に増加(直線領域)し、更に圧力が高まると、感度は次第に低下して静電容量の変化は飽和する(飽和領域)。
【0006】
シリコン単結晶を用いたダイヤフラムの形成には、KOH,NaOH等の無機系溶液やエチレンジアミン・ピロカテコール(EDP)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等の有機系溶液を用い、シリコン単結晶の結晶方位によるエッチングレートの違いを利用した異方性エッチングによりなされることが多い。P+層でのエッチストップ効果、すなわちボロン濃度が1019cm-3を超えるような領域ではシリコン層と比べてエッチングレートが数十分の一から数百分の一になるという効果を利用して、通常は厚さ数μmのダイヤフラムが形成される。ダイヤフラムの厚さや電極間隔の寸法を制御することにより、上述した直線領域を、所望するセンサの動作範囲に適合させることができ、例えばタイヤ圧検出用のセンサでは、10kgf/cm2程度の圧力範囲内で安定した動作を得るようにすればよい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明したように、従来のタッチモード式容量型圧力センサは、高感度、高耐圧の特徴を有しており、ダイヤフラム厚や電極間隔を変えることにより所望の圧力範囲内で安定した動作を得ることができる。しかしながら、センサの使用状況によっては、実際の動作圧力範囲を大きく超えるような圧力、例えば測定可能な圧力範囲の上限の4〜5倍もの耐圧性を必要とする場合があり、このような高圧が加わると、ダイヤフラム割れなどのセンサの破壊が発生する場合があった。このダイヤフラムの割れは、長方形状のダイヤフラムがたわんで、誘電体膜に接触している際に最も応力がかかるダイヤフラムの長辺または短辺に主として発生する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、従来品よりもダイヤフラムの耐圧性が高いタッチモード式容量型圧力センサの提供を目的としている。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ダイヤフラム表面のボロン濃度を制御することにより、耐圧強度を大幅に高め得ること、特にダイヤフラムの耐圧性が大幅に向上し、実際の動作圧力範囲を大きく超えるような圧力が加わった場合にもダイヤフラムの破断を生じることがなく、安全性が要求される自動車タイヤ圧検出用の圧力センサとして好適に用いることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明のタッチモード式容量型圧力センサは、導電性を有するダイヤフラムを形成したシリコン構造体を、電極とそれを覆う誘電体膜を形成した基体上に、該ダイヤフラムと電極が対向しかつ誘電体膜と隙間をあけた状態で接合してなり、該ダイヤフラムが圧力を受けて誘電体膜と接触する接触面積の変化を検出してその圧力を測定するタッチモード式容量型圧力センサにおいて、前記ダイヤフラムの表面における不純物濃度を1×1019cm−3以上9×1019cm−3未満としたことを特徴としている。
また、本発明のタッチモード式容量型圧力センサの製造方法は、導電性を有するダイヤフラムを形成したシリコン構造体を、電極とそれを覆う誘電体膜を形成した基体上に、該ダイヤフラムと電極が対向しかつ隙間をあけた状態で接合してなり、該ダイヤフラムが圧力を受けて誘電体膜と接触する接触面積の変化を検出してその圧力を測定するタッチモード式容量型圧力センサの製造方法であって、シリコンウエハの基体(6)との接合面側から不純物をドーピングし、次いで表面(エッチング面)の不純物濃度が1×10 19 cm −3 以上9×10 19 cm −3 未満となるように、接合面とは反対側からエッチングを施してダイヤフラムを形成し前記シリコン構造体を製造する工程を含むことを特徴としている。
本発明のタッチモード式容量型圧力センサの製造方法において、エッチング溶液としては、KOH、NaOH、エチレンジアミン・ピロカテコール(EDP)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の群から選択される少なくとも1種類の溶液を用いることが好ましい。
また本発明は、導電性を有するダイヤフラムを形成したシリコン構造体を、電極とそれを覆う誘電体膜を形成した基体上に、該ダイヤフラムと電極が対向しかつ誘電体膜と隙間をあけた状態で接合してなり、該ダイヤフラムが圧力を受けて誘電体膜と接触する接触面積の変化を検出してその圧力を測定する圧力センサにおいて、前記ダイヤフラムの表面不純物濃度が、1×1019cm−3以上9×1019cm−3未満とした自動車タイヤ圧検出用のタッチモード式容量型圧力センサである。
また本発明は、導電性を有するダイヤフラムを形成したシリコン構造体を、電 極とそれを覆う誘電体膜を形成した基体上に、該ダイヤフラムと電極が対向しかつ誘電体膜と隙間をあけた状態で接合してなり、該ダイヤフラムが圧力を受けて誘電体膜と接触する接触面積の変化を検出してその圧力を測定する高圧用のタッチモード式容量型圧力センサにおいて、ダイヤフラムの表面におけるボロン濃度を9×10 19 cm −3 未満としたタッチモード式容量型圧力センサを提供する。
このタッチモード式容量型圧力センサは、自動車タイヤ圧検出用のタッチモード式容量型圧力センサであることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明のタッチモード式容量型圧力センサ(以下、圧力センサと略記する場合がある。)の一形態を示すものであり、(A)は圧力センサの平面図、(B)は側面断面図である。
この圧力センサは、金属薄膜からなる電極7とそれを覆うように形成された誘電体膜8を設けた基体6上に、圧力に応じて変形可能な、導電性を有するダイヤフラム9を設けたシリコン構造体5を、ダイヤフラム9と電極7が対向しかつダイヤフラム9と誘電体膜8間に隙間10を持たせた状態で接合して構成されている。
【0011】
シリコン構造体5のダイヤフラム9は、シリコンウエハをエッチングして窪ませることによって形成されている。シリコンウエハにダイヤフラム3を形成するには、高濃度に不純物を添加した層をシリコン表面に形成しておき、ボロンのような不純物の高濃度ドーピングによるエッチストップ技術を用いて行うことができる。本発明において、ダイヤフラムの表面における不純物濃度は、1×1019cm-3以上9×1019cm-3未満とする。ダイヤフラム9の厚さ、およびダイヤフラム9と誘電体膜8間の隙間10の高さを規定するダイヤフラム下方側(基体6との接合面側)の窪み深さは、測定対象の負荷圧力範囲にセンサの直線領域が合致するように適宜設定することができる。
【0012】
基体6は、電極7と電気的絶縁状態を確保できるものであれば、その構成材料は特に限定されず、たとえばガラス板、セラミック板、硬質プラスチック板、表面酸化膜を形成したシリコンウエハなどを用いて良く、特に好ましくはガラス板が用いられる。この基体6上に形成された電極7は、Al、Cr、Au、Ag、Cu、Tiなどの電極用材料として一般に使用される各種の金属を、基体6の表面に、蒸着法、スパッタ法、CVD法、無電解メッキ法などの薄膜形成方法を用いて成膜される。電極7の形状は、基体6表面の電極非成膜部をマスクで覆い、電極形成部のみに金属膜を成膜する方法、或いは基体6の一面に均一に金属膜を成膜後、フォトリソグラフィ手法を用いて所望の形状にエッチングする方法によりパターン形成することができ、通常はダイヤフラム9と同形に成膜される。
この電極7を覆うように基体6上に成膜された誘電体膜8は、ガラス(石英ガラス)、セラミックなどの絶縁材料として周知の材料を、スパッタ法、CVD法などの薄膜形成手段を用いて成膜することによって形成される。この誘電体膜8の厚さは、圧力センサの必要とされる感度に応じて適宜設定され、通常は0.1〜数μm程度とされる。
【0013】
また基体6上には、電極7と接続して基体2の辺縁部まで延びる端子部11と、誘電体膜8上に設けられ構造体5と電気的に接続された端子部11とが設けられている。これらの端子部11,11は電極7と同じ金属材料と、同種の薄膜形成手段を用いて形成可能である。
【0014】
基体6の誘電体膜8とダイヤフラム9との間に形成される隙間10は、電極7とダイヤフラム9よりも一回り大きい長方形状にシリコン構造体5下面を窪ませて形成されている。この隙間10の高さ、すなわち誘電体膜8とダイヤフラム9間の寸法は、ダイヤフラム9の寸法(長さ、幅および厚さ)に応じて適宜選択される。本例示において隙間10内は真空とされている。
【0015】
次に、本発明による圧力センサの製造方法の一例として、前述した構造の圧力センサの製造方法を説明する。
基体6は、電極7およびそれに接続した端子部11とを、スパッタ法などを用いて金属薄膜を基体6上に成膜し、次いでガラスからなる誘電体膜8をスパッタ法などで成膜し、端子部11を残して電極7を覆い、さらに誘電体膜8上にシリコン構造体5側の端子部11を電極7と同様の方法で形成して作製される。
【0016】
シリコン構造体5は、シリコンウエハの基体6との接合面側から、ボロンなどの不純物を高濃度に熱拡散法を用いてドーピングし、次いで表面(エッチング面)の不純物濃度が1×1019cm-3以上9×1019cm-3未満となるように接合面とは反対側からエッチングを施してダイヤフラム9を形成し、作製される。このエッチングは、エッチング溶液として、KOH、NaOH、エチレンジアミン・ピロカテコール(EDP)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の群から選択される少なくとも1種類の溶液を用い、高濃度の不純物をドーピングした部分を残すエッチストップ効果を利用して、ダイヤフラム9の厚さが予め設定した厚さになるようにエッチング時間を制御して行われる。この際、不純物の深さ方向分布を制御することにより、ダイヤフラムの厚さを変えることができる。
そして、このように作製された基体6とシリコン構造体5とを、真空中で適宜な接合方法、たとえば加熱融着や無機接着剤を用いて接合することによって、圧力センサが製造される。
【0017】
この圧力センサは、端子部11を静電容量測定用の測定機器と接続し、ダイヤフラム9と電極7間に交流電圧を印加して、その共振周波数またはインピーダンス変化を検出することによって行われる。図4に示すように、ダイヤフラム9に圧力が加わり誘電体膜8に接触すると、センサの静電容量は一定の範囲内で圧力に対してほぼ直線的に増加する。
【0018】
この圧力センサは、ボロンのような不純物がドーピングされたシリコンにより形成されたダイヤフラムを持つタッチモード式容量型圧力センサにおいて、ダイヤフラムの表面におけるボロン濃度を1×1019cm-3以上9×1019cm-3以下、特に高圧用のもの(例えば自動車タイヤ圧検出用)では、9×1019cm-3未満とすることによって、その耐圧性を格段に向上させることができる。
なお、本発明において不純物濃度を「9×1019cm-3未満」とすることの意味は、後述する実施例において説明するように、高圧用の(例えば自動車タイヤ圧検出用の高圧用の)圧力センサにおいては、不純物濃度を1×1019cm-3以上9×1019cm-3未満とすることが特に優れているということであり、「9×1019cm-3」を完全に範囲外として意識したものではない。
以下、実施例によって本発明の効果を具体化する。
【0019】
【実施例】
図1(A),(B)に示すように、電極7と誘電体膜8を形成した基体6上に、ダイヤフラム9を設けたシリコン構造体5を接合した構造を持つタッチモード式容量型圧力センサを作製した。
ガラス板からなる基体6上にCr薄膜からなる電極7、およびそれを覆うガラスからなる誘電体膜8を、それぞれ0.1μm,0.4μmの膜厚で形成した。電極7および誘電体膜8の形成は、スパッタ法による膜の蒸着とフォトリソグラフィによるパターニングという一連の工程により行った。
【0020】
電極7(下部電極)と対向するダイヤフラム9は、ボロンを高濃度でドーピングして上部電極の役割を果たすようにし、平面視形状は、0.4mm×1.5mmの長方形とした。米国特許第5,528,452号公報中に開示されたように、ダイヤフラム9の形状を長辺、短辺の比が3:1以上となる長方形とすることで、一定範囲内における圧力と静電容量変化の直線性を得ることが可能となる。また、誘電体膜8とダイヤフラム9の隙間10は3μmとした。基体6上の一部に外部との接触用のAlからなる端子部11を、一方が上部電極、他方が下部電極に接続するように形成した。一連の製造工程は、シリコンウエハおよびガラスウエハを用いて行い、両ウエハを接合後切断することで個々のセンサを得た。
【0021】
図2に、作製したタッチモード式容量型圧力センサのダイヤフラムの詳細な構造を示す。ダイヤフラム12を形成する際にシリコン基板13には、ガラス基板14との接合面(ダイヤフラム裏面)側から熱拡散によりボロンをドーピングしている。本実施例では拡散の際の温度を1125℃とし、ダイヤフラム裏面から7μmの深さでのボロン濃度が1×1019cm-3となるように拡散時間を10時間とした。このときの拡散深さはシリコンウエハ内でほぼ均一であり9.4μmであった。ボロン濃度はダイヤフラム裏面から5.5μmの深さまでは約2×1020cm-3と一定の値を示し、5.5μmを超えた辺りから徐々に減少し始め、拡散深さの9.4μmでは2×1014cm-3であった。ダイヤフラム12の形成には、接合面と反対の面(ダイヤフラム表面)からの異方性エッチングにより行った。エッチング液は24wt%、80℃のKOH溶液を用い、エッチストップ効果を利用してダイヤフラム12の厚さが6μm程度となるようにエッチング時間を制御した。
【0022】
以上説明したような構造を持つタッチモード式容量型圧力センサに、一定の圧力を長時間印加した後のダイヤフラムの割れを調査する耐圧試験を実施した。本実施例では、サンプル数を1000個、圧力印加時間を1時間とし、20kgf/cm2から50kgf/cm2まで5kgf/cm2ずつ圧力を増加し、圧力印加後のダイヤフラム割れの有無を調査した。その結果、印加圧力が35kgf/cm2まではダイヤフラムの割れは全く生じなかったが、印加圧力を40kgf/cm2としたときには約56%のセンサでダイヤフラムの割れが生じた。その後50kgf/cm2まで印加圧力を上げたところ、最終的に約68%のセンサのダイヤフラムで同様の割れが生じた。ダイヤフラムの割れは、殆どが長方形状のダイヤフラムがたわんで、誘電体膜に接触している際に最も応力がかかるダイヤフラムの長辺と短辺で生じていた。
【0023】
上記耐圧試験に用いたセンサのうち、ダイヤフラムが割れたものと割れなかったものをそれぞれ100個ずつ抜き取り、ダイヤフラム表面のボロン濃度を調査したところ図5に示すような度数分布が得られた。すなわち、ダイヤフラム表面のボロン濃度が9×1019cm-3未満のセンサに関しては割れが全く認められず、逆に割れが発生したセンサは全てボロン濃度が9×1019cm-3以上のものであった。なお、いずれのセンサもダイヤフラム厚に大きな違いは無く、この割れがダイヤフラムの厚さの違いによるものではないことを確認している。
【0024】
図5に示す結果を基にして、再度ダイヤフラム表面のボロン濃度が9×1019cm-3未満になるようにエッチング時間を調整し、タッチモード式容量型圧力センサを作製した。ここでダイヤフラム表面上のボロン濃度が1×1019cm-3未満であると十分なエッチストップ効果が認められないことを考慮し、ボロン濃度が1×1019cm-3以上9×1019cm-3未満となるように設定した。このよううにして得たセンサ500個に対し、前述した耐圧試験と同じ方法で耐圧性の評価を行った。その結果、50kgf/cm2印加後の全てのセンサにおいて、ダイヤフラムの割れは全く認められなかった。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による圧力センサは、ボロンがドーピングされたシリコンにより形成されたダイヤフラムを持つタッチモード式容量型圧力センサにおいて、ダイヤフラムの表面におけるボロン濃度を1×1019cm-3以上9×1019cm-3未満とすることで、ダイヤフラムの耐圧性を大幅に改善することができる。従って本発明によれば、従来品よりもダイヤフラムの耐圧性に優れたタッチモード式容量型圧力センサを提供することができる。
また、本発明による圧力センサは、ダイヤフラムの表面におけるボロン濃度を1×1019cm-3以上9×1019cm-3未満とすることで、ダイヤフラムの耐圧性が大幅に向上し、実際の動作圧力範囲を大きく超えるような圧力が加わった場合にもダイヤフラムの破断を生じることがないので、安全性が要求される自動車タイヤ圧検出用の圧力センサとして特に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧力センサの一例を示すもので、(A)は圧力センサの平面図、(B)は側面断面図である。
【図2】本発明の圧力センサの要部拡大断面図である。
【図3】従来の圧力センサを示す側面図であり、(A)は圧力が加わらない状態、(B)は圧力によりダイヤフラムが誘電体膜側に接触した状態を示す。
【図4】従来の圧力センサにおける圧力と静電容量の関係を示すグラフである。
【図5】本発明に係る実施例の結果を示すもので、作製した圧力センサのサンプルに高圧を加えた後で割れたものと割れなかったもののダイヤフラム表面のボロン濃度を測定した結果をまとめた度数分布グラフである。
【符号の説明】
5……構造体、6……基体、7……電極、8……誘電体、9……ダイヤフラム、10……隙間、12……ダイヤフラム、13……シリコン基板(構造体)、14……ガラス基板(基体)。
【発明の属する技術分野】
本発明は、タッチモード式容量型圧力センサに関し、特に高い耐圧性を有する圧力センサの構造およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
静電容量型圧力センサは、圧力に応じて変形するダイヤフラムが形成された基板と電極が形成された基板とを、ある程度の隙間をあけて前記ダイヤフラムおよび電極が互いに対向するように接合されている構造を有し、前記ダイヤフラムと電極との間の静電容量の変化から圧力を検出するものである。ダイヤフラムや電極を形成するための基板にシリコンやガラスのウエハを用いることが可能であるため、ウエハ上に一度に大量のセンサを作製することができ、低コストでの大量生産に適している。
【0003】
静電容量型圧力センサの中で、例えば米国特許第5,528,452号公報中に開示されたタッチモード式容量型圧力センサは、図3(A)に示すように、ガラス基板上に金属薄膜からなる電極1を形成し、その上に誘電体膜2を形成し、少なくとも表面が導電性を有するダイヤフラム3を僅かな隙間4を持たせて対向配置した構造であり、圧力検出時には図3(B)に示すようにダイヤフラムがたわんで誘電体膜2に接触している(タッチモードと称される)ことを特徴としている。
【0004】
ダイヤフラム3は、n型シリコンに高濃度にボロンをドーピングしたP+層とされており、ダイヤフラム3を1つの電極とみなせば、圧力検出時には電極1,誘電体膜2,およびダイヤフラム3からなるコンデンサが形成されることになる。ダイヤフラム3と誘電体膜2の接触面積の変化を、両電極間(ダイヤフラム3と電極1間)の静電容量の変化として検出することで、ダイヤフラム3に加わる圧力の測定が可能となる。タッチモード式容量型圧力センサは、他の静電容量型圧力センサに比べて高感度で耐圧性が高く、また圧力と静電容量が直線関係を持つなど多くの優れた特性を有する。
【0005】
図4に、タッチモード式容量型圧力センサの静電容量と印加圧力の関係を示す。タッチモード式容量型圧力センサの特性上、ダイヤフラムが誘電体膜に接触する前の低圧領域(未接触領域)では、感度はほとんどゼロである。ダイヤフラムが誘電体膜に接触すると、センサの静電容量は一定の範囲内で圧力に対してほぼ直線的に増加(直線領域)し、更に圧力が高まると、感度は次第に低下して静電容量の変化は飽和する(飽和領域)。
【0006】
シリコン単結晶を用いたダイヤフラムの形成には、KOH,NaOH等の無機系溶液やエチレンジアミン・ピロカテコール(EDP)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等の有機系溶液を用い、シリコン単結晶の結晶方位によるエッチングレートの違いを利用した異方性エッチングによりなされることが多い。P+層でのエッチストップ効果、すなわちボロン濃度が1019cm-3を超えるような領域ではシリコン層と比べてエッチングレートが数十分の一から数百分の一になるという効果を利用して、通常は厚さ数μmのダイヤフラムが形成される。ダイヤフラムの厚さや電極間隔の寸法を制御することにより、上述した直線領域を、所望するセンサの動作範囲に適合させることができ、例えばタイヤ圧検出用のセンサでは、10kgf/cm2程度の圧力範囲内で安定した動作を得るようにすればよい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明したように、従来のタッチモード式容量型圧力センサは、高感度、高耐圧の特徴を有しており、ダイヤフラム厚や電極間隔を変えることにより所望の圧力範囲内で安定した動作を得ることができる。しかしながら、センサの使用状況によっては、実際の動作圧力範囲を大きく超えるような圧力、例えば測定可能な圧力範囲の上限の4〜5倍もの耐圧性を必要とする場合があり、このような高圧が加わると、ダイヤフラム割れなどのセンサの破壊が発生する場合があった。このダイヤフラムの割れは、長方形状のダイヤフラムがたわんで、誘電体膜に接触している際に最も応力がかかるダイヤフラムの長辺または短辺に主として発生する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、従来品よりもダイヤフラムの耐圧性が高いタッチモード式容量型圧力センサの提供を目的としている。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ダイヤフラム表面のボロン濃度を制御することにより、耐圧強度を大幅に高め得ること、特にダイヤフラムの耐圧性が大幅に向上し、実際の動作圧力範囲を大きく超えるような圧力が加わった場合にもダイヤフラムの破断を生じることがなく、安全性が要求される自動車タイヤ圧検出用の圧力センサとして好適に用いることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明のタッチモード式容量型圧力センサは、導電性を有するダイヤフラムを形成したシリコン構造体を、電極とそれを覆う誘電体膜を形成した基体上に、該ダイヤフラムと電極が対向しかつ誘電体膜と隙間をあけた状態で接合してなり、該ダイヤフラムが圧力を受けて誘電体膜と接触する接触面積の変化を検出してその圧力を測定するタッチモード式容量型圧力センサにおいて、前記ダイヤフラムの表面における不純物濃度を1×1019cm−3以上9×1019cm−3未満としたことを特徴としている。
また、本発明のタッチモード式容量型圧力センサの製造方法は、導電性を有するダイヤフラムを形成したシリコン構造体を、電極とそれを覆う誘電体膜を形成した基体上に、該ダイヤフラムと電極が対向しかつ隙間をあけた状態で接合してなり、該ダイヤフラムが圧力を受けて誘電体膜と接触する接触面積の変化を検出してその圧力を測定するタッチモード式容量型圧力センサの製造方法であって、シリコンウエハの基体(6)との接合面側から不純物をドーピングし、次いで表面(エッチング面)の不純物濃度が1×10 19 cm −3 以上9×10 19 cm −3 未満となるように、接合面とは反対側からエッチングを施してダイヤフラムを形成し前記シリコン構造体を製造する工程を含むことを特徴としている。
本発明のタッチモード式容量型圧力センサの製造方法において、エッチング溶液としては、KOH、NaOH、エチレンジアミン・ピロカテコール(EDP)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の群から選択される少なくとも1種類の溶液を用いることが好ましい。
また本発明は、導電性を有するダイヤフラムを形成したシリコン構造体を、電極とそれを覆う誘電体膜を形成した基体上に、該ダイヤフラムと電極が対向しかつ誘電体膜と隙間をあけた状態で接合してなり、該ダイヤフラムが圧力を受けて誘電体膜と接触する接触面積の変化を検出してその圧力を測定する圧力センサにおいて、前記ダイヤフラムの表面不純物濃度が、1×1019cm−3以上9×1019cm−3未満とした自動車タイヤ圧検出用のタッチモード式容量型圧力センサである。
また本発明は、導電性を有するダイヤフラムを形成したシリコン構造体を、電 極とそれを覆う誘電体膜を形成した基体上に、該ダイヤフラムと電極が対向しかつ誘電体膜と隙間をあけた状態で接合してなり、該ダイヤフラムが圧力を受けて誘電体膜と接触する接触面積の変化を検出してその圧力を測定する高圧用のタッチモード式容量型圧力センサにおいて、ダイヤフラムの表面におけるボロン濃度を9×10 19 cm −3 未満としたタッチモード式容量型圧力センサを提供する。
このタッチモード式容量型圧力センサは、自動車タイヤ圧検出用のタッチモード式容量型圧力センサであることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明のタッチモード式容量型圧力センサ(以下、圧力センサと略記する場合がある。)の一形態を示すものであり、(A)は圧力センサの平面図、(B)は側面断面図である。
この圧力センサは、金属薄膜からなる電極7とそれを覆うように形成された誘電体膜8を設けた基体6上に、圧力に応じて変形可能な、導電性を有するダイヤフラム9を設けたシリコン構造体5を、ダイヤフラム9と電極7が対向しかつダイヤフラム9と誘電体膜8間に隙間10を持たせた状態で接合して構成されている。
【0011】
シリコン構造体5のダイヤフラム9は、シリコンウエハをエッチングして窪ませることによって形成されている。シリコンウエハにダイヤフラム3を形成するには、高濃度に不純物を添加した層をシリコン表面に形成しておき、ボロンのような不純物の高濃度ドーピングによるエッチストップ技術を用いて行うことができる。本発明において、ダイヤフラムの表面における不純物濃度は、1×1019cm-3以上9×1019cm-3未満とする。ダイヤフラム9の厚さ、およびダイヤフラム9と誘電体膜8間の隙間10の高さを規定するダイヤフラム下方側(基体6との接合面側)の窪み深さは、測定対象の負荷圧力範囲にセンサの直線領域が合致するように適宜設定することができる。
【0012】
基体6は、電極7と電気的絶縁状態を確保できるものであれば、その構成材料は特に限定されず、たとえばガラス板、セラミック板、硬質プラスチック板、表面酸化膜を形成したシリコンウエハなどを用いて良く、特に好ましくはガラス板が用いられる。この基体6上に形成された電極7は、Al、Cr、Au、Ag、Cu、Tiなどの電極用材料として一般に使用される各種の金属を、基体6の表面に、蒸着法、スパッタ法、CVD法、無電解メッキ法などの薄膜形成方法を用いて成膜される。電極7の形状は、基体6表面の電極非成膜部をマスクで覆い、電極形成部のみに金属膜を成膜する方法、或いは基体6の一面に均一に金属膜を成膜後、フォトリソグラフィ手法を用いて所望の形状にエッチングする方法によりパターン形成することができ、通常はダイヤフラム9と同形に成膜される。
この電極7を覆うように基体6上に成膜された誘電体膜8は、ガラス(石英ガラス)、セラミックなどの絶縁材料として周知の材料を、スパッタ法、CVD法などの薄膜形成手段を用いて成膜することによって形成される。この誘電体膜8の厚さは、圧力センサの必要とされる感度に応じて適宜設定され、通常は0.1〜数μm程度とされる。
【0013】
また基体6上には、電極7と接続して基体2の辺縁部まで延びる端子部11と、誘電体膜8上に設けられ構造体5と電気的に接続された端子部11とが設けられている。これらの端子部11,11は電極7と同じ金属材料と、同種の薄膜形成手段を用いて形成可能である。
【0014】
基体6の誘電体膜8とダイヤフラム9との間に形成される隙間10は、電極7とダイヤフラム9よりも一回り大きい長方形状にシリコン構造体5下面を窪ませて形成されている。この隙間10の高さ、すなわち誘電体膜8とダイヤフラム9間の寸法は、ダイヤフラム9の寸法(長さ、幅および厚さ)に応じて適宜選択される。本例示において隙間10内は真空とされている。
【0015】
次に、本発明による圧力センサの製造方法の一例として、前述した構造の圧力センサの製造方法を説明する。
基体6は、電極7およびそれに接続した端子部11とを、スパッタ法などを用いて金属薄膜を基体6上に成膜し、次いでガラスからなる誘電体膜8をスパッタ法などで成膜し、端子部11を残して電極7を覆い、さらに誘電体膜8上にシリコン構造体5側の端子部11を電極7と同様の方法で形成して作製される。
【0016】
シリコン構造体5は、シリコンウエハの基体6との接合面側から、ボロンなどの不純物を高濃度に熱拡散法を用いてドーピングし、次いで表面(エッチング面)の不純物濃度が1×1019cm-3以上9×1019cm-3未満となるように接合面とは反対側からエッチングを施してダイヤフラム9を形成し、作製される。このエッチングは、エッチング溶液として、KOH、NaOH、エチレンジアミン・ピロカテコール(EDP)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の群から選択される少なくとも1種類の溶液を用い、高濃度の不純物をドーピングした部分を残すエッチストップ効果を利用して、ダイヤフラム9の厚さが予め設定した厚さになるようにエッチング時間を制御して行われる。この際、不純物の深さ方向分布を制御することにより、ダイヤフラムの厚さを変えることができる。
そして、このように作製された基体6とシリコン構造体5とを、真空中で適宜な接合方法、たとえば加熱融着や無機接着剤を用いて接合することによって、圧力センサが製造される。
【0017】
この圧力センサは、端子部11を静電容量測定用の測定機器と接続し、ダイヤフラム9と電極7間に交流電圧を印加して、その共振周波数またはインピーダンス変化を検出することによって行われる。図4に示すように、ダイヤフラム9に圧力が加わり誘電体膜8に接触すると、センサの静電容量は一定の範囲内で圧力に対してほぼ直線的に増加する。
【0018】
この圧力センサは、ボロンのような不純物がドーピングされたシリコンにより形成されたダイヤフラムを持つタッチモード式容量型圧力センサにおいて、ダイヤフラムの表面におけるボロン濃度を1×1019cm-3以上9×1019cm-3以下、特に高圧用のもの(例えば自動車タイヤ圧検出用)では、9×1019cm-3未満とすることによって、その耐圧性を格段に向上させることができる。
なお、本発明において不純物濃度を「9×1019cm-3未満」とすることの意味は、後述する実施例において説明するように、高圧用の(例えば自動車タイヤ圧検出用の高圧用の)圧力センサにおいては、不純物濃度を1×1019cm-3以上9×1019cm-3未満とすることが特に優れているということであり、「9×1019cm-3」を完全に範囲外として意識したものではない。
以下、実施例によって本発明の効果を具体化する。
【0019】
【実施例】
図1(A),(B)に示すように、電極7と誘電体膜8を形成した基体6上に、ダイヤフラム9を設けたシリコン構造体5を接合した構造を持つタッチモード式容量型圧力センサを作製した。
ガラス板からなる基体6上にCr薄膜からなる電極7、およびそれを覆うガラスからなる誘電体膜8を、それぞれ0.1μm,0.4μmの膜厚で形成した。電極7および誘電体膜8の形成は、スパッタ法による膜の蒸着とフォトリソグラフィによるパターニングという一連の工程により行った。
【0020】
電極7(下部電極)と対向するダイヤフラム9は、ボロンを高濃度でドーピングして上部電極の役割を果たすようにし、平面視形状は、0.4mm×1.5mmの長方形とした。米国特許第5,528,452号公報中に開示されたように、ダイヤフラム9の形状を長辺、短辺の比が3:1以上となる長方形とすることで、一定範囲内における圧力と静電容量変化の直線性を得ることが可能となる。また、誘電体膜8とダイヤフラム9の隙間10は3μmとした。基体6上の一部に外部との接触用のAlからなる端子部11を、一方が上部電極、他方が下部電極に接続するように形成した。一連の製造工程は、シリコンウエハおよびガラスウエハを用いて行い、両ウエハを接合後切断することで個々のセンサを得た。
【0021】
図2に、作製したタッチモード式容量型圧力センサのダイヤフラムの詳細な構造を示す。ダイヤフラム12を形成する際にシリコン基板13には、ガラス基板14との接合面(ダイヤフラム裏面)側から熱拡散によりボロンをドーピングしている。本実施例では拡散の際の温度を1125℃とし、ダイヤフラム裏面から7μmの深さでのボロン濃度が1×1019cm-3となるように拡散時間を10時間とした。このときの拡散深さはシリコンウエハ内でほぼ均一であり9.4μmであった。ボロン濃度はダイヤフラム裏面から5.5μmの深さまでは約2×1020cm-3と一定の値を示し、5.5μmを超えた辺りから徐々に減少し始め、拡散深さの9.4μmでは2×1014cm-3であった。ダイヤフラム12の形成には、接合面と反対の面(ダイヤフラム表面)からの異方性エッチングにより行った。エッチング液は24wt%、80℃のKOH溶液を用い、エッチストップ効果を利用してダイヤフラム12の厚さが6μm程度となるようにエッチング時間を制御した。
【0022】
以上説明したような構造を持つタッチモード式容量型圧力センサに、一定の圧力を長時間印加した後のダイヤフラムの割れを調査する耐圧試験を実施した。本実施例では、サンプル数を1000個、圧力印加時間を1時間とし、20kgf/cm2から50kgf/cm2まで5kgf/cm2ずつ圧力を増加し、圧力印加後のダイヤフラム割れの有無を調査した。その結果、印加圧力が35kgf/cm2まではダイヤフラムの割れは全く生じなかったが、印加圧力を40kgf/cm2としたときには約56%のセンサでダイヤフラムの割れが生じた。その後50kgf/cm2まで印加圧力を上げたところ、最終的に約68%のセンサのダイヤフラムで同様の割れが生じた。ダイヤフラムの割れは、殆どが長方形状のダイヤフラムがたわんで、誘電体膜に接触している際に最も応力がかかるダイヤフラムの長辺と短辺で生じていた。
【0023】
上記耐圧試験に用いたセンサのうち、ダイヤフラムが割れたものと割れなかったものをそれぞれ100個ずつ抜き取り、ダイヤフラム表面のボロン濃度を調査したところ図5に示すような度数分布が得られた。すなわち、ダイヤフラム表面のボロン濃度が9×1019cm-3未満のセンサに関しては割れが全く認められず、逆に割れが発生したセンサは全てボロン濃度が9×1019cm-3以上のものであった。なお、いずれのセンサもダイヤフラム厚に大きな違いは無く、この割れがダイヤフラムの厚さの違いによるものではないことを確認している。
【0024】
図5に示す結果を基にして、再度ダイヤフラム表面のボロン濃度が9×1019cm-3未満になるようにエッチング時間を調整し、タッチモード式容量型圧力センサを作製した。ここでダイヤフラム表面上のボロン濃度が1×1019cm-3未満であると十分なエッチストップ効果が認められないことを考慮し、ボロン濃度が1×1019cm-3以上9×1019cm-3未満となるように設定した。このよううにして得たセンサ500個に対し、前述した耐圧試験と同じ方法で耐圧性の評価を行った。その結果、50kgf/cm2印加後の全てのセンサにおいて、ダイヤフラムの割れは全く認められなかった。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による圧力センサは、ボロンがドーピングされたシリコンにより形成されたダイヤフラムを持つタッチモード式容量型圧力センサにおいて、ダイヤフラムの表面におけるボロン濃度を1×1019cm-3以上9×1019cm-3未満とすることで、ダイヤフラムの耐圧性を大幅に改善することができる。従って本発明によれば、従来品よりもダイヤフラムの耐圧性に優れたタッチモード式容量型圧力センサを提供することができる。
また、本発明による圧力センサは、ダイヤフラムの表面におけるボロン濃度を1×1019cm-3以上9×1019cm-3未満とすることで、ダイヤフラムの耐圧性が大幅に向上し、実際の動作圧力範囲を大きく超えるような圧力が加わった場合にもダイヤフラムの破断を生じることがないので、安全性が要求される自動車タイヤ圧検出用の圧力センサとして特に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧力センサの一例を示すもので、(A)は圧力センサの平面図、(B)は側面断面図である。
【図2】本発明の圧力センサの要部拡大断面図である。
【図3】従来の圧力センサを示す側面図であり、(A)は圧力が加わらない状態、(B)は圧力によりダイヤフラムが誘電体膜側に接触した状態を示す。
【図4】従来の圧力センサにおける圧力と静電容量の関係を示すグラフである。
【図5】本発明に係る実施例の結果を示すもので、作製した圧力センサのサンプルに高圧を加えた後で割れたものと割れなかったもののダイヤフラム表面のボロン濃度を測定した結果をまとめた度数分布グラフである。
【符号の説明】
5……構造体、6……基体、7……電極、8……誘電体、9……ダイヤフラム、10……隙間、12……ダイヤフラム、13……シリコン基板(構造体)、14……ガラス基板(基体)。
Claims (6)
- 導電性を有するダイヤフラム(9)を形成したシリコン構造体(5)を、電極(7)とそれを覆う誘電体膜(8)を形成した基体(6)上に、該ダイヤフラムと電極が対向しかつ誘電体膜と隙間(10)をあけた状態で接合してなり、該ダイヤフラムが圧力を受けて誘電体膜と接触する接触面積の変化を検出してその圧力を測定するタッチモード式容量型圧力センサにおいて、前記ダイヤフラムの表面における不純物濃度を1×1019cm−3以上9×1019cm−3未満としたことを特徴とするタッチモード式容量型圧力センサ。
- 導電性を有するダイヤフラム(9)を形成したシリコン構造体(5)を、電極(7)とそれを覆う誘電体膜(8)を形成した基体(6)上に、該ダイヤフラムと電極が対向しかつ誘電体膜と隙間(10)をあけた状態で接合してなり、該ダイヤフラムが圧力を受けて誘電体膜と接触する接触面積の変化を検出してその圧力を測定するタッチモード式容量型圧力センサの製造方法であって、シリコンウエハの基体(6)との接合面側から不純物をドーピングし、次いで表面(エッチング面)の不純物濃度が1×10 19 cm −3 以上9×10 19 cm −3 未満となるように、接合面とは反対側からエッチングを施してダイヤフラムを形成し前記シリコン構造体を製造する工程を含むことを特徴とするタッチモード式容量型圧力センサの製造方法。
- エッチング溶液として、KOH、NaOH、エチレンジアミン・ピロカテコール(EDP)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)の群から選択される少なくとも1種類の溶液を用いることを特徴とする請求項2に記載のタッチモード式容量型圧力センサの製造方法。
- 導電性を有するダイヤフラムを形成したシリコン構造体を、電極とそれを覆う誘電体膜を形成した基体上に、該ダイヤフラムと電極が対向しかつ誘電体膜と隙間をあけた状態で接合してなり、該ダイヤフラムが圧力を受けて誘電体膜と接触する接触面積の変化を検出してその圧力を測定するタッチモード式容量型圧力センサにおいて、前記ダイヤフラムの表面不純物濃度が、1×1019cm−3以上9×1019cm−3未満とした自動車タイヤ圧検出用のタッチモード式容量型圧力センサ。
- 導電性を有するダイヤフラムを形成したシリコン構造体を、電極とそれを覆う誘電体膜を形成した基体上に、該ダイヤフラムと電極が対向しかつ誘電体膜と隙間をあけた状態で接合してなり、該ダイヤフラムが圧力を受けて誘電体膜と接触する接触面積の変化を検出してその圧力を測定する高圧用のタッチモード式容量型圧力センサにおいて、ダイヤフラムの表面におけるボロン濃度を9×10 19 cm −3 未満としたタッチモード式容量型圧力センサ。
- 高圧用の高圧用のタッチモード式容量型圧力センサが自動車タイヤ圧検出用のタッチモード式容量型圧力センサである請求項6に記載のタッチモード式容量型圧力センサ。
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