JP3540009B2 - バソプレッシンV1b受容体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は,新規なバソプレッシンV1b(以下,V1bという)受容体のポリペプチド,この新規なポリペプチドをコードしているDNA,該DNAを含有するベクター,該ベクターを含有する形質転換細胞及び該細胞を使用した薬物スクリーニング法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
バソプレッシンは,生体内で血圧調節をはじめとした,種々の役割を果す重要な生理活性ペプチドである。このペプチドの生理作用は,他の生理活性物質と同様に,ペプチドが受容体に結合することにより誘導される。現在,このペプチドが結合する受容体は,性質の異なるものが複数存在する事が示されている。それぞれの受容体の性質を明らかにすることはバソプレッシンの生理的役割の解明,引いては,バソプレッシン系の異常により引き起こされる疾患の解明,治療法の発見等につながるものと考えられる。
【0003】
バソプレッシン受容体は,オキシトシン受容体も含めてバソプレッシン/オキシトシン受容体群と考えられている。オキシトシン受容体はバソプレッシンよりも,オキシトシンがより強く結合する受容体である。バソプレッシン受容体はいずれもオキシトシンよりもバソプレッシンが強く結合する受容体だが,バソプレッシン受容体拮抗剤によるリガンド−受容体の結合阻害実験から大きく2種類[バソプレッシンV1(以下,V1という)受容体,及びバソプレッシンV2(以下,V2という)受容体]に分類することができる。V1受容体は,バソプレッシン受容体拮抗剤[dPen1,Tyr(Me)2,Arg8]vasopressinにより選択的に阻害される受容体であり(Bankowski,K.,et al.,J.Med.Chem.,21,850(1978)),V2受容体はバソプレッシン受容体拮抗剤[d(CH2)5 1,D−Ile2,Ile4,Arg8]vasopressinにより選択的に阻害される受容体である(Manning,M.,et al.,J.Med.Chem.,27,423(1984))。
このうちV1受容体は更に,バソプレッシン受容体拮抗剤[d(CH2)5 1,Tyr(Me)2,Arg8]vasopressin阻害の強さの違いからV1a受容体とV1b受容体の2つに分類されている[Kruszyski,M.,et al.J.Med.Chem.,23,364(1980),Antomi,F.A.,Neuroendocrinol.,39,186−188(1984]。
【0004】
バソプレッシン受容体の遺伝子は,V2受容体に関してはヒト腎臓(Birnbaumer M.,et al.,Nature 375,333‐335(1992)),ラット腎臓(Lorait S.J.,et al.,Nature 357,336‐339(1992)),ブタ腎臓由来細胞株(Gorbulev,V.,et al.,Eur.J.Biochem.,215,1‐7(1993))より単離されている。また,V1a受容体に関しては,ラット肝臓(Morel A.,et al.,Nature 356,523‐526(1992)),ヒト肝臓(Marc T.,et al.,J.Biol.Chem.,269,3304‐3310(1994)) より単離されている。さらに,オキシトシン受容体に関しては,ヒト子宮(Kimura T.,et al.,Nature 356,526‐529(1992)),ブタ腎臓由来細胞株(Gorbulev,V.,et al.,Eur.J.Biochem.,215,1‐7(1993))より単離されている。
しかしながら現時点では,V1b受容体の遺伝子はどの種においても単離されていない。
【0005】
各受容体は組織特異的に発現していることが知られている。V2受容体は,腎臓の尿細管に発現しており,抗利尿作用を通して,血圧の調節に関与していると考えられている。また,V1a受容体は肝臓,血小板,血管平滑筋、腎メサンギウム細胞などに発現しており,糖代謝,凝集,血圧調節に関与すると考えられている(Ferenc A.L.,Pharmacological revew,43,73‐100(1991))。さらにオキシトシン受容体は主に産褥期の子宮に発現しており,子宮の収縮に関与していると考えられている(Kimura T.,et al.,Nature 356,526‐529(1992))。一方,V1b受容体は脳下垂体前葉に発現しており,ACTH,β−エンドロフィンの分泌制御などに関与していると考えられている(Andreas k.,Acta Endoclinologica,129,489−496(1993))。
従って,V1b受容体に関与している疾患過程の究明において,V1b受容体及びその遺伝子が望まれている。
【0006】
更に,受容体に関係した薬物の探索は,リガンドと受容体の結合阻害実験で行われている。この結合阻害実験では,放射性元素で標識されたリガンドと受容体を高発現した動物組織を用いて実施される。使用する動物組織は,現実的にはヒト以外の入手可能な動物組織が選ばれる。しかしながら,受容体の性質は,動物種の差によって異なることが常である。
よって,ヒトの疾患改善を目的とした薬物の探索においても,ヒト由来の受容体が必要とされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は,ヒトV1b受容体又は該受容体と同等の機能を有するポリペプチドをコードする遺伝子を提供することである。また,本発明の別の目的は,該遺伝子を用いて発現させたヒトV1b受容体または該受容体と同様の機能を有するポリペプチドを提供することである。さらに,ヒトV1b受容体のポリペプチドを使用したヒトV1b受容体に作動性の薬物(例えばV1b受容体拮抗剤等)のスクリーニング法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは,遺伝子工学的な手法を用いて,鋭意研究を行なった結果,配列番号2記載のアミノ酸配列からなるヒトV1b受容体ポリペプチド,前記ポリペプチドをコードする塩基配列からなるヒトV1b受容体をコードするDNAもしくは配列番号1記載の塩基配列からなるヒトV1b受容体をコードするDNA,前記DNAを含有する組換えベクター,前記組換えベクターで形質転換された細胞を見出し本発明を完成した。
【0009】
以下,本発明V1b受容体につき詳述する。
(製造法)
第1製法
ヒトV1b受容体DNAを産生する能力を有するヒト細胞あるいは組織からmRNAを抽出する。次いでこのmRNAを鋳型として該受容体mRNAまたは一部のmRNA領域をはさんだ2種類のプライマーを用いる。逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(以下RT−PCRという)を行うことにより,該受容体cDNAまたはその一部を得ることができる。さらに,得られたヒトV1b受容体cDNAまたはその一部を適当な発現ベクターに組み込むことにより,宿主細胞を発現させ,該受容体DNAを製造することができる。
1)mRNAの抽出
本発明のヒトV1b受容体DNAは該受容体産性能力を有するヒト細胞,例えばヒト脳下垂体細胞から該受容体をコードするものを包含するmRNAを既知の方法により抽出する。
抽出法としては,グアニジン・チオシアネート・ホット・フェノール法,グアニジン・チオシアネート−グアニジン・塩酸法等が挙げられるが,好ましくはグアニジン・チオシアネート塩化セシウム法が挙げられる。
2)mRNAの精製
mRNAの精製は常法に従えばよく,例えばmRNAをオリゴ(dT)セルロースカラムに吸着・溶出させ,精製することができる。さらに,ショ糖密度勾配遠心法等によりmRNAをさらに分画することもできる。
また,mRNAを抽出せずとも,抽出済mRNAが市販されている。
上記のmRNAがヒトV1b受容体をコードするものを含むことを確認するためには,mRNAを翻訳させ,該受容体に特異的な抗体を作用させて検出する等の方法で行うことができる。
【0010】
例えば,アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵母細胞にmRNAを注入して翻訳させたり(Gurdon,J.B. et al.(1972)Nature 233,177−182),あるいはウサギ網状赤血球系や小麦胚芽系を利用した翻訳反応が行われている(Schleif,R.F.and Wensink,P.C.(1981):“ Practical Methods in Molecular Biology ”,Springer−Verlog,NY.)。
3)第1鎖cDNAの合成及び該cDNAを鋳型としたPCR
精製されたmRNAをランダムプライマー又はオリゴdTプライマーの存在 下で,逆転写酵素反応を行い第1鎖cDNAを合成する。
この合成は常法によって行うことができる。
得られた第1鎖cDNAを用い,目的遺伝子の一部の領域をはさんだ2種類のプライマーを用いてPCRに供し,目的とするヒトV1b受容体DNAを増幅する。
得られたDNAをアガロースゲル電気泳動等により分画する。
所望により,上記DNAを制限酸素等で切断し,接続することによって目的とするDNA断片を得ることもできる。
【0011】
第2製法:
本発明の遺伝子は上述の製造法の他,常法の遺伝子工学的手法を用いて製造することもできる。まず,前述2)で得たmRNAを鋳型として逆転写酵素を用いて1本鎖cDNAを合成した後,この1本鎖cDNAから2本鎖cDNAを合成する。その方法としてはSiヌクレアーゼ法(Efstratiadis,A.et al.(1976)Cell 7. 279−288),Land法(Land,H. et al.(1981)Nucleic Acids Res.9.2251−2266),O.Joon Yoo法(Yoo,O.J. et al.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79,1049−1053),Okayama−Berg法(Okayama,H.and Berg,P.(1982)Mol.Cell.Biol.2,161−170)などが挙げられる。
次に,上述の方法で得られる組換えプラスミドを大腸菌,例えばDH5α株に導入して形質転換させて,テトラサイクリン耐性あるいはアンピシリン耐性を指標として組換体を選択することができる。宿主細胞の形質転換は,例えば,宿主細胞が大腸菌の場合にはHanahanの方法(Hanahan,D.(1983)J.Mol.Biol.166,557−580),すなわちCaCl2やMgCl2またはRbClを共存させて調製したコンピテント細胞に該組換えDNA体を加える方法により実施することができる。なお,ベクターとしてはプラスミド以外にもラムダ系などのファージベクターも用いることができる。
上記により得られる形質転換株から,目的のヒトV1b受容体のDNAを有する株を選択する方法としては,例えば以下に示す各種方法を採用できる。
【0012】
▲1▼ 合成オリゴヌクレオチドプローブを用いるスクリーニング法
ヒトV1b受容体の全部または一部に対応するオリゴヌクレオチドを合成し(この場合コドン使用頻度を用いて導いたヌクレオチド配列または考えられるヌクレオチド配列を組合せた複数個のヌクレオチド配列のどちらでもよく,また後者の場合,イノシンを含ませてその種類を減らすこともできる),これをプローブ(32P又は33Pで標識する)として,形質転換株のDNAを変性固定したニトロセルロースフィルターとハイブリダイズさせ,得られたポジティブ株を検索して,これを選択する。
▲2▼ ポリメラーゼ連鎖反応により作製したプローブを用いるスクリーニング法
ヒトV1b受容体の一部に対応するセンスプライマーとアンチセンスプライマーのオリゴヌクレオチドを合成し,これらを組合せてポリメラーゼ連鎖反応(Saiki,R.k. et al.(1988)Science 239,487−491)を行い,目的のヒトV1b受容体の全部又は一部をコードするDNA断片を増幅する。ここで用いる鋳型DNAとしては,ヒトV1b受容体を産生する細胞のmRNAより逆転写反応にて合成したcDNA,またはゲノムDNAを用いることができる。このようにして調製したDNAを断片を32P又は33Pで標識し,これをプローブとして用いてコロニーハイブリダイゼーションまたはプラークハイブリダイゼーションを行うことにより目的のクローンを選択する。
【0013】
▲3▼ 他の動物細胞でヒトV1b受容体を産生させてスクリーニングする方法
形質転換株を培養し,遺伝子を増幅させ,その遺伝子を動物細胞にトランスフェクトし(この場合,自己複製可能で転写プロモーター領域を含むプラスミドもしくは動物細胞の染色体に組み込まれ得るようなプラスミドのいずれでもよい),遺伝子にコードされた蛋白を細胞表面に産生させる。ヒトV1b受容体に対する抗体を用いて該受容体を検出することにより,又はバソプレッシンとの結合を指標として元の形質転換株より目的のヒトV1b受容体をコードするcDNAを有する株を選択する。
▲4▼ ヒトV1b受容体に対するバソプレッシンの結合を指標として選択する方法
あらかじめ,cDNAを発現ベクターに組込み,形質転換株表面で蛋白を産生させ,標識したバソプレッシンを用いて所望のヒトV1b受容体産生株を検出し,目的株を選択する。
▲5▼ ヒトV1b受容体に対する抗体を用いて選択する方法
あらかじめ,cDNAを発現ベクターに組込み,形質転換株表面で蛋白を産生させ,ヒトV1b受容体に対する抗体および該抗体に対する2次抗体を用いて,所望のヒトV1b受容体産生株を検出し,目的の株を選択する。
▲6▼ セレクティブ・ハイブリダイゼーション・トランスレーションの系を用いる方法
形質転換株から得られるcDNAを,ニトロセルロースフィルター等にブロットしヒトV1b受容体細胞からのmRNAをハイブリダイズさせた後,cDNAに結合したmRNAを解離させ,回収する。回収されたmRNAを蛋白翻訳系,例えばアフリカツメガエルの卵母細胞への注入や,ウサギ網状赤血球ライゼートや小麦胚芽等の無細胞系で蛋白に翻訳させる。ヒトV1b受容体に対する抗体を用いて検出して,目的の株を選択する。
得られた目的の形質転換株よりヒトV1b受容体をコードするDNAを採取する方法は,公知の方法(Maniatis,T. et al.(1982):“ Molecular Cloning−A Laboratory Manual ”Cold Spring Harbor Laboratory, NY)に従い実施できる。例えば細胞よりプラスミドDNAに相当する画分を分離し,該プラスミドDNAよりcDNA領域を切り出すことにより行ない得る。
【0014】
得られた目的の形質転換株よりヒトV1b受容体をコードするDNAを採取する方法は,公知の方法(Maniatis,T. et al.(1982):“ Molecular Cloning−A Laboratory Manual ”Cold Spring Harbor Laboratory, NY)に従い実施できる。例えば細胞よりプラスミドDNAに相当する画分を分離し,該プラスミドDNAよりcDNA領域を切り出すことにより行ない得る。
以上,得られるDNAの配列決定は,例えばマキサム−ギルバートの化学修飾法(Maxam,A.M.and Gilbert,W.(1980): “ Methods in Enzymology ”65,499−559)やM13を用いるジデオキシヌクレオチド鎖終結法(Messing,J. andVieira,J(1982)Gene 19,269−276)等により行うことができる。
このようにしてクローン化されたヒトV1b受容体をコードする遺伝子を含む断片は,適当なベクターDNAに再び組込むことにより,他の真核生物の宿主細胞を形質転換させることができる。さらに,これらのベクターに適当なプロモーターおよび形質発現にかかわる配列を導入することにより,それぞれの宿主細胞において遺伝子を発現させることが可能である。
真核生物の宿主細胞には,脊椎動物,昆虫,酵母等の細胞が含まれ,脊椎動物細胞としては,例えばサルの細胞であるCOS細胞(Gluzman,Y.(1981)Cell 23,175−182)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO)のジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損株(Urlaub,G.and Chasin,L.A.(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77,4216−4220)等がよく用いられているが,これらに限定されるわけではない。
【0015】
脊椎動物細胞の発現ベクターとしては,通常発現しようとする遺伝子の上流に位置するプロモーター,RNAのスプライス部位,ポリアデニル化部位および転写終結配列等を有するものを使用でき,これはさらに必要により複製起点を有してもよい。該発現ベクターの例としては,SV40の初期プロモーターを有するpSV2dhfr(Subramani,S. et al.(1981)Mol.Cell.Biol.1,854−864)等を例示できるが,これに限定されない。
宿主細胞として,COS細胞を用いる場合を例に挙げると,発現ベクターとしては,SV40複製起点を有し,COS細胞において自律増殖が可能であり,さらに転写プロモーター,転写終結シグナルおよびRNAスプライス部位を備えたものを用いることができる。該発現ベクターはDEAE−デキストラン法(Luthman,H.and Magnusson,G.(1983) Nucleic Acids Res.11,1295−1308),リン酸カルシウム−DNA共沈殿法(Graham,F.L. and van der Ed,A.J.(1973)Virology 52,456−457)および電気パスル穿孔法(Neumann,E.et al.(1982) EMBO J.1,841−845)等によりCOS細胞に取り込ませることができ,かくして所望の形質転換細胞を得ることができる。また,宿主細胞としてCHO細胞を用いる場合には,発現ベクターと共に,G418耐性マーカーとして機能するneo遺伝子を発現し得るベクター,例えばpRSVneo(Sambrook,J.et al.(1989): “ Molecular Cloning−ALaboratory Manual ”Cold Spring Harbor Laboratory,NY)やpSV2−neo(Southern,P.J.and Berg,P.(1982)J.Mol.Appl.Genet.1,327−341)等をコ・トランスフェクトし,G418耐性のコロニーを選択することによりヒトV1b受容体を安定に産生する形質転換細胞を得ることができる。
【0016】
上記で得られる所望の形質転換体は,常法に従い培養することができ,該培養により細胞内または細胞表面にヒトV1b受容体が生産される。該培養に用いられる培地としては,採用した宿主細胞に応じて慣用される各種のものを適宜選択でき,例えば上記COS細胞であればRPMI−1640培地やダルベッコ修正イーグル最小必須培地(DMEM)等の培地に必要に応じ牛胎児血清(FBS)等の血清成分を添加したものを使用できる。
上記により,形質転換体の細胞内または細胞表面に生産されるヒトV1b受容体は,該受容体の物理的性質や化学的性質等を利用した各種の公知の分離操作法により,それらより分離・精製することができる。該方法としては,具体的には例えば受容体を含む膜分画を可溶化した後,通常の蛋白沈殿剤による処理,限外濾過,分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過),吸着クロマトグラフィー,イオン交換体クロマトグラフィー,アフィニティクロマトグラフィー,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の各種液体クロマトグラフィー,透析法,これらの組合せ等を例示できる。
受容体の可溶化の際,強固に受容体に結合するが可逆的であるようなリガンドをラジオアイソトープで標識して,これで受容体を標識した後に受容体を可溶化することができる。また,できるだけ緩和な可溶化剤(CHAPS,Triton X−100,ジキトニン等)で受容体を可溶化することにより,可溶化後も受容体の特性を保持することができる。
膜分画は常法に従って得ることができる。例えばV1b受容体を表面に発現した細胞を培養し,これらをバッファーに懸濁後,ホモジナイズし遠心分離することにより得られる。
このようにして本発明DNAを利用して遺伝子工学的手法により得られる物質がヒトV1b受容体機能を発現するためには,必ずしも配列表配列番号2に示されるアミノ酸配列のすべてを有するものである必要は無く,例えばその一部の配列であって,それがヒトV1b受容体機能を示す限り,それらのアミノ酸配列もまた本発明のポリペプチドに包含される。また配列番号1で示される受容体をコードするDNAも本発明に含まれる。
該ヒトV1b受容体をコードするDNAは,配列番号1で示されるヌクレオチド配列が好適である。
【0017】
一般に真核生物の遺伝子はインターフェロン遺伝子等で知られているように,多型現象(polymorphism)を示すと考えられ(例えば,Nishi,T. et al.(1985)J.Biochem.97,153−159を参照),この多型現象によって1個またはそれ以上のアミノ酸が置換される場合もあれば,ヌクレオチド配列の変化はあってもアミノ酸は全く変わらない場合もある。配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるヒトV1b受容体,アミノ酸配列の中の一つ若しくは二つ以上の部位において,一つ若しくは二つ以上のアミノ酸残基が欠失,挿入若しくは置換されているポリペプチドでもバソプレッシン結合活性を有することがある。これらのポリペプチドを本発明においては,ヒトV1b受容体の同効物と呼ぶ。
【0018】
例えば,インターロイキン2(IL−2)遺伝子のシステインに相当するヌクレオチド配列をセリンに相当するヌクレオチド配列に変換して得られた蛋白がIL−2活性を保持することも既に公知となっている(Wang,A.et al.(1984)Science 224,143−1433)。それゆえ,それ等天然に存在するかあるいは人工合成されたポリペプチド,ヒトV1b受容体結合活性を有する限りそれ等のポリペプチドは全て本発明に含まれる。
また,これらのポリペプチドをコードする,同効のヌクレオチド配列からなるDNAをすべて本発明に含まれる。
このような各種の本発明のDNAは,上記ヒトV1b受容体の情報に基づいて,例えばホスファイト・トリエステル法(Hunkapiller,M. etal.(1984) Nature 10,105−111)等の常法に従い,核酸の化学合成により製造することもできる。
なお,所望アミノ酸に対するコドンはそれ自体公知であり,その選択も任意でよく,例えば利用する宿主のコドン使用頻度を考慮して常法に従い決定できる(Crantham,R.et al.(1981)Nucleic AcidsRes.9 r43−r74)。さらに,これらヌクレオチド配列のコドンの一部改変は,常法に従い,所望の改変をコードする合成オリゴヌクレオチドからなるプライマーを利用したサイトスペシフィック・ミュータジェネシス(site specific mutagenesis)(Mark,D.F. etal.(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81,5662−5666)等に従うことができる。
更に,本発明ヒトV1b受容体に作動性の薬物のスクリーニング法は,次のようにして行うことができる。
前述のヒトV1b受容体のDNAを組込んだ発現プラスミドを動物細胞に移入したV1b受容体発現細胞を収集し,また適宜細胞を破壊して膜分画を取ることができる。この細胞そのまま,または細胞膜分画を受容体標品とし,標識リガンド例えば[3H]Arg8バソプレッシンと被験薬物との結合阻害実験を行い,標識リガンドの細胞あるいは細胞膜分画への結合量を定量することにより実施できる。
【0019】
更に本発明は,該受容体のポリペプチドのモノクローナル抗体を以下に示す常法により製造することができる。当該モノクローナル抗体は,V1b受容体作動薬,診断薬又はポリペプチドの分離精製の手段等に有用である。
モノクローナル抗体,あるいは断片としてはヒトV1b受容体に結合するものであれば何れも包括されるが,特に該受容体を発現させた細胞で感作して作製したモノクローナル抗体および断片F(ab’)2,Fab’,Fabが挙げられる。モノクローナル抗体はマウスハイブリドーマ,あるいはハイブリドーマを限界希釈法等の方法で更にクローニングして選ばれるところの,例えば抗体生産性が高い細胞の変種を培地又はマウスの腹水中で培養することにより生産される。その断片F(ab’)2,Fab’,Fabはモノクローナル抗体をタンパク質分解酵素,好ましくはトリプシン,パパイン,ペプシンからなる群より選ばれた酵素を用いて消化し,適切な精製を行うことによって得られる。
あるいはモノクローナル抗体をコードする遺伝子の一部を発現ベクターに組み込み,大腸菌に導入して生産させることによっても得ることができる。マウスハイブリドーマは該受容体を発現させた細胞で感作したBalb/c系マウスの脾細胞とマウスの骨髄腫細胞P3×63Arg8/U1(P3U1)とを常法,例えばケーラーとミルスタイン(Kueller and Milstein)の細胞融合法により融合して得ることができる。
【0020】
上記ハイブリドーマを培養する培地としてはダルベッコ氏変法イーグル氏最小必須培地(Dalbecco’s modified minimum essential medium:以下DMEMと略記する)にウシ胎仔血清,L−グルタミン,グルコース,ピルビン酸ナトリウム,2ーメルカプトエタノール及び抗生物質(例えばペニシリンG,ストレプトマイシン,ゲンタマイシン等)を含有せしめた培地等が使われる。この発現のハイブリドーマの培養は通常,培地中で37℃にて5%二酸化炭素,95%空気の気相で2〜4日間,あるいは2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン(商品名プリスタン,アルドリッチ社製)で前処理されたBalb/c系マウスの腹腔内にて10〜20日間程度で行われ,精製可能な量の抗体が産生される。このように製造されたモノクローナル抗体は培養上清あるいは腹水からタンパク質の単離精製の常法により分離精製することができる。そのような方法としては例えば,遠心分離,透析,硫酸アンモニウムによる塩析,DEAE−セルロース,ハイドロキシルアパタイト,プロテインAアガロース等によるカラムクロマトグラフィー等が挙げられる。このように分離精製された抗体につき常法により,ペプシン,パパイン等のタンパク質分解酵素によって消化を行い,引続きタンパク質の単離精製を行って活性のある断片,例えばF(ab’)2,Fab’,Fab,Fvを得ることができる。
【0021】
【発明の効果】
本発明は,新規なヒトV1b受容体を提供することにある。本発明の受容体はヒトのV1b受容体に起因する疾患に関する該受容体作用薬の探索及び評価に有用である。
また,該受容体のモノクローナル抗体も該受容体作動薬,診断薬又はポリペプチドの分離精製の手段等に有用である。
さらに,本発明のベクターの一部を改変することにより,ヒトV1b受容体タンパク質を作成することも可能である。得られた変異体のリガンド結合活性を検討することにより,該受容体のどのアミノ酸配列が結合に重要であるかを検討することができる。得られた情報は,結合阻害物にどのような構造が必要であるかを検索する上で重要である。さらに,受容体は該リガンドと結合するための構造だけでなく,細胞内のセカンド・メッセンジャーの変動を制御するための構造も有している。ベクター改変による変異タンパク質の作成は,結合に重要な構造だけでなく,セカンド・メッセンジャー制御に関係した構造をも明らかにするであろう。このことは,セカンド・メッセンジャーの変動を制御することを作用機作としたバソプレッシンの阻害物質のデザインに重要な情報を提供するであろう。これらのことから,本発明がヒトV1b受容体を提供することにより,該受容体を用いた作動性物質(例えば拮抗作用物質)等のスクリーニング方法を確立し,これにより活性の高い化合物を選択し,該受容体の関与する疾患に対する治療薬を提供することができる。
【0022】
【実施例】
以下に実施例により本発明を詳述するが,本発明は該実施例によって限定されるものではない
実施例1
PCRによる特定DNA断片の増幅
ヒトV1b受容体のDNAを得るために,既に単離されている前述のDNA遺伝子[例えばヒト腎臓,ラット腎臓,ブタ腎臓由来細胞株,ラット肝臓又はヒト肝臓より得られたV1a受容体,V2受容体,オキシトシン受容体の遺伝子]の配列の中からバソプレッシン受容体又はオキシトシン受容体に保存されている遺伝子配列をもとにして,混合プライマーを合成し,ヒト脳下垂体のmRNAを鋳型として,RT−PCRを行なった。実行の詳細を以下に示す。
混合プライマーとしてForwardプライマーとReverseプライマーを合成した。Forwardプライマーの配列は,5’−TGGCCATG(A/T)C (A/G)(C/G)(C/T)(C/G)GACCG−3’,Reverseプライマーの配列は5’−(A/G)(A/C)TGAAGAA(A/G/T) GG(C/T)G(C/T)CCAGCA−3’であった。合成オリゴヌクレオチドは固相法を原理とする全自動DNA合成機を使用して作成した。各々のオリゴヌクレオチドの精製は,OPCカートリッジ(Perkin Elmer社)を使用して行なった。
【0023】
ヒト下垂体polyA+RNA(Clontech社)1μgから,cDNA合成キット(Boehringer mannheim社)のプロトコルに従って,20μl反応液中でランダムプライマーを用いて一本鎖cDNAを合成した。得られた一本鎖cDNA(1μl)を鋳型として,50μlの反応液中でTaq DNA polymerase(1.25units;Perkin Elmer社)によるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施した。PCRは,Forwardプライマー,Reverseプライマーをそれぞれ60pmol用い,変性温度94℃(1分間),アニーリング温度55℃(2分間),ポリメラーゼ反応温度72℃(2分間)からなる工程を1サイクルとし,この工程を30サイクル行なった。得られたPCR産物をアガロース・ゲル電気泳動により分画し,520塩基対付近のDNA断片をゲルから切り出し,DNA精製キット(ENECLEAN II;BIO 101社)により精製した。精製したDNA断片をTAクローニングキット(Invitrogen社)に従ってpCRIIベクターに挿入し,大腸菌JM109に形質転換を行ない,生じたコロニーのうちcDNAが組込まれているものをクローン化した。
pCRIIベクターに挿入されたRT−PCR産物の塩基配列は,Taq DyeDeoxy Terminator Cycle Sequencing 法 (Perkin Elmer社)によって決定した。塩基配列を決定した10クローンのすべてが同一の新規の配列であり,アミノ酸におけるヒトV1a受容体,ヒトオキシトシン受容体,ヒトV2受容体との相同性が50%,49%,39%であり,この新規遺伝子断片がバソプレッシン受容体のファミリーに属することが予測された。そこで,以下の工程で,この新規遺伝子の翻訳領域cDNA全長のクローニングを行なった。
【0024】
ヒトV1b受容体のクローニング
ヒトV1b受容体のDNAのクローニングは,ヒト下垂体のλgt10 cDNAライブラリー(clonetech社)から,上記新規cDNA断片を32Pで標識したプローブとして,プラーク・ハイブリダイゼーション法を用いて行なった。プローブはDNAランダムラベル化キット(BcaBEST DNA labeling system;TAKARA社)に従って標識した。
大腸菌C600にヒト下垂体のλgt10 cDNAライブラリーを感染させ,8×105個のプラークをプレート上に出現させ,以下に示すプラーク・ハイブリダイゼーション法により,候補組換えファージのスクリーニングを行なった。出現したファージのプラークはナイロンフィルター(Dupont NEN社)に2枚転写した。転写したナイロンフィルターは変性用溶液(0.5M NaOH)で変性処理を5分間を2回行ない,次に中和用溶液(1M Tris‐HCl pH8.0)で中和処理を5分間を2回行なった。さらにオートクレーブを100℃で1分間行なった後,2×SSC(1×SSC;0.015M Sodium citrate,0.15M Sodium chloride)で5分間洗浄し,風乾した。
【0025】
乾燥したナイロンメンブレンをプレ・ハイブリダイゼーション液(6×SSC,50%Formamide,0.1%SDS,0.2%Ficoll,0.2%Polyvinylpyrrolydone,0.2%BSA,0.1mg/mlサケ精子DNA)中で42℃,2時間インキュベーションし,プレ・ハイブリダイゼーションを行なった。プレ・ハイブリダイゼーションが終了したフィルターに,32P標識プローブを含むプレハイブリダイゼーション液と同一組成の液を加え,42℃,16時間インキュベートし,ハイブリダイゼーションを行なった。
次にフィルターを室温にて,4×SSC/0.1%SDS溶液,2×SSC/0.1%SDS溶液,1×SSC/0.1%SDS溶液の順番で,各10分間ずつ洗浄し,さらに1×SSC/0.1%SDS溶液で37℃,42℃,50℃で各10分間ずつ洗浄した。フィルターを風乾後,X線フィルムに−80℃で1日間露光した。オートラジオグラフィーの結果,5個の陽性クローンを得た。この陽性部分の寒天をかきとり,SM (100mM NaCl,8mM MgSO4) 溶液に懸濁後,このファージ液を用いて,2回目,3回目のスクリーニングを上記の方法と同様に行ない,目的のファージを単一のものに精製した。
【0026】
単一にしたファージ液から,ファージDNA精製キット(QUIAGEN社)によファージDNAを精製した。精製したファージDNAを制限酵素EcoRIにより消化し,挿入遺伝子を切り出した。切り出された遺伝子をアガロースゲル電気泳動により分離した後,DNA精製キット(GENECLEAN II ;BIO 101社)により精製した。精製したDNAはライゲーションキット(TAKARA社)を用いて,pCRIIプラスミドベクター(Invitrogen社)のEcoRIサイトに挿入した。ライゲーション液を大腸菌JM109株に感染させてプレートにまき,プラスミドを含む大腸菌のコロニーを得た。これらのコロニーから目的の遺伝子を含むプラスミドを単離し,この遺伝子の長さを決定したところ,最長のもので1.8kbの遺伝子を持つことが分った。
この遺伝子について合成プライマーを使用してTaq DyeDeoxy Terminator Cycle Sequencing法(Perkin Elmer社)により全塩基配列を決定した。その結果より,成熟なタンパク質をコードすると推測される塩基配列,及びそのアミノ酸配列を配列表の配列番号1及び配列番号2に示す。
【0027】
塩基配列の解析決定した塩基配列によりコードされるアミノ酸配列には,G蛋白質結合型の受容体に見られる7回の疎水性領域が存在し,このアミノ酸配列とヒトV1a受容体,ヒトオキシトシン受容体,ヒトV2受容体のアミノ酸配列との相同性は,それぞれ45%,45%,39%であった。
mRNAとのハイブリダイゼーションによる組織分布の検討ノーザンブロット法により各組織での発現の検討を行なった。ヒトの下垂体,肝臓,腎臓のpolyA+RNA(Clonetech社)を1%RNAアガロースゲル (50mM MOPS,1mM EDTA,20×SSC,2.2MFormal ehyde)に5μg/レーンとなるようにのせて電気泳動した。泳動終了後後10×SSCを使用してキャピラリーブロッティングを行ない,ナイロンメンブレン(Hybond‐N membrane ; Amersham社)に転写した。転写後のメンブレンを用い,プレ・ハイブリダイゼーション液(6×SSC,50%Formamide,0.1%SDS,0.2%Ficoll,0.2%Polyvinylpyrrolydone,0.2%BSA,0.1mg/mlサケ精子DNA)中で42℃,2時間インキュベーションし,プレ・ハイブリダイゼーションを行なった。プレ・ハイブリダイゼーション終了後,32P標識プローブを含むプレハイブリダイゼーション液と同一組成の液に替え,42℃,24時間インキュベートし,ハイブリダゼーションを行なった。プローブは1.8kbのcDNAを用いた。メンブレンの洗浄は,4×SSC/0.1%SDS溶液で室温20分間,2×SSC/0.1%SDS溶液で42℃,20分間,0.5×SSC/0.1%SDS溶液で52℃,62℃で各20分間ずつ洗浄した。洗浄後,X線フィルムに−80℃で5日間露光した。この結果本発明遺伝子は,肝臓,腎臓には発現しておらず,下垂体に特異的に発現していることが確認された。また,この遺伝子のmRNAのサイズは5.2kbであることが分った(図1)。
【0028】
PCR法による組織分布の検討
PCR法により各組織での発現の検討を行なった。ヒトの全脳,下垂体,心臓,肺,膵臓,肝臓,腎臓,骨格筋,胎盤のpolyA+RNA(Clonetech社)1μgから,cDNA合成キット(Clonetech社)に従って,20μl反応液中でランダムプライマーを用いた一本鎖cDNAを合成した。得られた一本鎖 Taq DNA polymerase(1.25units;PerkiElmer社)によるPCRを実施した。PCRは,Forwardプライマーとして5’−ACTGTCCTGG TGCTGGCGA‐3’をReverseプライマーとして5’−TGAGCATGGT CACCGGCAGA−3’をそれぞれ20pmolずつ用い,変性温度94℃(1分間),アニーリング温度60℃(2分間),ポリメラーゼ反応温度72℃(2分間)からなる工程を1サイクルとし,工程を22サイクル行なった。得られたPCR産物をアガロース・ゲル電気泳動に供し,泳動終了後,10×SSCを使用してキャピラリーブロッティングを行ない,ナイロンメンブレン(Hybond‐N membrane;Amersham社)に転写した。
【0029】
転写後のメンブレンを用いて,プレ・ハイブリダイゼーション液(6×SSC,50%Formamide,0.1%SDS,0.2%Ficoll,0.2%Polyvinylpyrrolydone,0.2%BSA,0.1mg/mlサケ精子DNA)中で42℃,2時間インキュベーションし,プレ・ハイブリダイゼーションを行なった。プレ・ハイブリダイゼーション終了後,1.8kbのcDNAを32Pで標識したプローブを含むプレハイブリダイゼーション液と同一組成の液に替え,42℃,24時間インキュベートし,ハイブリダイゼーションを行なった。メンブレンの洗浄は,4×SSC/0.1%SDS溶液で室温20分間,2×SSC/0.1%SDS溶液で42℃,2分間,0.5×SSC/0.1%SDS溶液で52℃,62℃で各20分間ずつ洗浄した。洗浄後,X線フィルムに−80℃で1日間露光した。この結果,下垂体にのみ,特異的な増幅(520bp)が見られ,他の組織においてはこの遺伝子の増幅は見られなかった(図2)。
以上より,本発明の遺伝子は下垂体に特異的に発現している遺伝子で,ヒトV1a受容体に近い配列を持っていることが明らかとなった。この事より本発明の受容体は,これまでの薬理学的な研究から下垂体での存在が示唆されてきたヒトV1b受容体であることが強く推測された。
【0030】
実施例2
ヒトV1b受容体のCOS細胞における発現の誘導
ヒトV1b受容体の遺伝子を組み込んだ発現ベクターを用いて,アフリカミドリザル腎臓由来繊維芽細胞株(COS)に遺伝子導入(transfection)を行ない,同受容体を発現させた。単離されたヒトV1b受容体の翻訳領域を含んだcDNAを発現用ベクター,pEF−BOS(Nucleic Acids Research 18,5322(1990))に挿入した。得られたプラスミドDNA,50μgをDEAE・dextran(20μg/ml)とともにCOS細胞(約3×10-6cells)培養液(50mM HEPES,DMEM pH7.4)中に添加した。DNA/dextran添加18時間後に培地を取り除き,クロロキン添加培養液(0.1mM chloroquine,5mM HEPES,DMEM pH7.4)で2.5時間処理した。培養液を10%牛胎児血清含有DMEMに置換した後,3日間培養した。
【0031】
実施例3
[3H]Arg8バソプレッシン結合実験
COS細胞に遺伝子導入したヒトV1b受容体遺伝子の発現は,[3H]
Arg8バソプレッシン結合実験を行なうことにより確認した。遺伝子導入後,3日間培養したCOS細胞をセル・スクレイパーで培養ディッシュより剥離し,遠心分離((1,000×g,10分)により細胞を回収した後,細胞膜調製用buffer(3mM MgSO4,1mM EGTA,50mM Tris‐−Cl,pH7.4)に懸濁させ,グラス・ホモジナイザーで細胞を破砕した。この細胞破砕懸濁液を遠心分離(38,000×g,60分)し,沈殿をふたたび細胞膜調製用bufferに懸濁したものを細胞膜分画とし,プロテインアッセイキット(Bio‐Rad社)による蛋白定量後,使用するまで−80℃で保存した。
保存していた細胞膜分画を結合実験用buffer(0.1% BSA,0.1mg/ml Bacitrasin,3mM MgSO4,1mM EGTA,50mM Tris‐HCl,pH 7.4)に懸濁させた(0.3‐1mgprotein/ml)。この細胞膜懸濁液0.2mlに[3H]Arg8バソプレッシン0.05ml(最終濃度0.05−5nM)を添加した後,22℃で1時間静置した。反応後,セル・ハーベスターを用いて,細胞膜をグラス・フィルター上に回収した後,氷冷した洗浄用buffer(0.01% BSA,50mM Tris−HCl,pH7.4)で洗浄した。回収した細胞膜上の放射活性を液体シンチレーション・カクテル(AQUASOL II;DuPontNEN社)を用いて,液体シンチレーション・カウンターにより測定し,総結合とした。非特異的結合は,1μMの非標識Arg8バソプレッシン存在下での標識Arg8バソプレッシン結合とし,総結合から非特異的結合を差し引いた値を特異的結合とした。その結果,この細胞膜には[3H]Arg8バソプレッシンの特異的結合がみられた。さらにスキャチャード解析を行なった結果,COS細胞に発現したヒト・1b受容体のKd値は0.17nM,V1b受容体のKd値は0.17nM,Bmax値は203fmol/mg ptoteinであった。
【0032】
バソプレッシン受容体の薬理学的特性は,Arg8バソプレッシン,オキシトシン,に加え,これまでに各組織を用いて検討及び開発されてきたV1a受容体選択的拮抗剤[d(CH2)5 1,Tyr(Me)2,Arg8]vasopressin;Sigma社:Kruszynski,M.,et al.,J.Med.Chem.,23,364(1980)),V2受容体選択的拮抗剤([23,d(CH2)5 1,D−Ile2,Ile4,Arg8,Ala9]vasopressin ; Bachem California社;Manning,M.,et al.,J.Lab.,Clin.Med.,114,617(1989)),V1a/V2受容体選択的拮抗剤([Des‐Gly9,d(CH2)5 1,Tyr(Et)2,Val4,Arg8]vasopressin;Sigma社;Jard,S.,et al.,Molec.Pharmacol.,30,171 (1986)),V1受容体選択的拮抗剤(dPen1,Tyr(Me)2,Arg8]vasopressin ; Bachem California社;Bankowski,K.,et al.,J.Med.Chem.,21,850(1978)),及びV1b受容体選択的作動剤(Deamino1,D−3−(Pyridyl)Ala2,Arg8]vasopressin;Bachem California社;Schwartz,J.,et al.,Endocrinol.,129,1107 (1991))の受容体結合阻害作用を検討することにより評価した。
【0033】
阻害作用は[3H]Arg8バソプレッシンの特異的結合を50%に抑制する薬剤濃度(IC50値)を薬剤の阻害の強さとした。その結果,各薬剤はそれぞれ異なる強さで本受容体と[3H]Arg8バソプレッシンとの特異的結合を阻害した。阻害の強さは,強い順にArg8バソプレッシン(IC50=0.46nM),V1b選択的作動剤(IC50=19nM),V1受容体選択的拮抗剤(IC50=29nM),V1a受容体選択的拮抗剤(IC50=85nM),オキシトシン(IC50=1,500nM),V2受容体選択的拮抗剤(IC50=4,000nM),V1a/V2受容体選択的拮抗剤(IC50=90,000nM)であった。このことより,本発明の受容体は,ヒトV1b受容体であることが確認された(図3)。
【0034】
【配列表】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】ヒトV1b受容体 mRNAのノーザンブロッティング法による検出結果図である。
【図2】ヒトV1b受容体 mRNAのPCR−サザンハイブリダイゼーション法による検出結果図である。
【図3】ヒトV1b受容体への結合阻害試験
−●−:[Arg8]バソプレッシン,−○−:オキシトシン,−■−:V1a受容体選択的拮抗剤[d(CH2)5 1,Tyr(Me)2,Arg8]バソプレッシン,−□−:V2受容体選択的拮抗剤[d(CH)2)5 1,DIle2,Ile4,Arg8,Ala9]バソプレッシン,−▲−:V1a/V2受容体選択的拮抗剤[desGly9,d(CH2)5 1,Tyr(Et)2,Val4,Arg8]バソプレッシン,−△−:V1a/V1b受容体選択的拮抗剤[dPen1,Tyr(Me)2,Arg8]バソプレッシン],−◆−:V1b受容体選択的作動剤[Deamino1,D−3−(Pyridyl)Ala2,Arg8]バソプレッシン]
Claims (8)
- 配列番号2記載のアミノ酸配列からなるバソプレッシンV1b受容体ポリペプチド、または、配列番号2記載のアミノ酸配列の中の一つ若しくは二つ以上の部位において,一つ若しくは二つ以上のアミノ酸残基が欠失,挿入若しくは置換されており、かつ、バソプレッシン結合活性を有するポリペプチド。
- 配列番号2記載のアミノ酸配列からなる請求項1記載のポリペプチド。
- 請求項1又は請求項2記載のポリペプチドをコードする塩基配列からなるDNA。
- 請求項2記載のポリペプチドをコードする塩基配列からなるDNAを含有する組換えベクター。
- 請求項4記載の組換えベクターで形質転換された細胞。
- 請求項5記載の細胞から調製したヒトバソプレッシンV1b受容体を含む膜分画。
- 請求項2記載のポリペプチドをコードするDNAを組込んだ発現プラスミドを動物細胞に移入したV1b受容体発現細胞,または該細胞膜分画を取得し,被験薬物による、標識リガンドとヒトバソプレッシンV1b受容体の結合阻害実験を行い,標識リガンドの該細胞あるいは該細胞膜分画への結合量を定量することによるヒトバソプレッシンV1b受容体に作動性の薬物のスクリーニング法。
- 請求項2記載のポリペプチドに結合するモノクローナル抗体。
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