JP3539908B2 - 両面印刷可能な枚葉印刷機 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、片面印刷と両面印刷とが切り替え可能に構成された両面印刷可能な枚葉印刷機に関し、特に、反転胴の反転グリッパを駆動制御するためのカム面を、片面印刷と両面印刷とで切り替えるカム面切替機構に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来、この種の枚葉印刷機としては、例えば、特公昭５６−２０１７号公報所載のものが公知である。
【０００３】
該枚葉印刷機には、図６の如く、上流側の印刷ユニットの圧胴（図示せず）から下流側の印刷ユニットの圧胴４に枚葉紙１を受け渡すために、両印刷ユニット間に紙受け渡しユニットが設けられている。該紙受け渡しユニットは、上流側から順に引き渡し胴（図示せず）と貯え胴２と反転胴３とを備え、上流側の圧胴で印刷された枚葉紙１は、引き渡し胴、貯え胴２を介して反転胴３に引き渡される。
【０００４】
該反転胴３は、図９のように、枚葉紙１の前縁部又は後縁部を掴む反転グリッパ７を備えている。該反転グリッパ７は、二つの爪８，９の協働によって枚葉紙１を掴む構成で、反転胴３の軸方向に沿った回転軸線を中心として旋回可能に構成されているが、片面印刷の場合と両面印刷の場合とで、その働きが異なる。
【０００５】
即ち、片面印刷の場合には、図７の如く、貯え胴２と反転胴３の対接点Ａ（枚葉紙１の受け取り位置）において反転グリッパ７が貯え胴２のグリッパ５から枚葉紙１の前縁部を掴んで受け取り、反転グリッパ７は、その状態を保って反転胴３と共に回転し、圧胴４との対接点Ｂ（枚葉紙１の引き渡し位置）において圧胴４に引き渡す。その後、放射線８１で示すように、対接点Ａの手前で所定の旋回をして図７の状態となって次の枚葉紙１を掴む。
【０００６】
一方、両面印刷の場合には、図８の如く、貯え胴２のグリッパ５が枚葉紙１を掴んだまま前記対接点Ａを通過した後、紙吸着装置６が対接点Ａに到達すると、反転グリッパ７が枚葉紙１の後縁部を掴んで受け取る。そして、放射線８２で示すように、反転グリッパ７は、反転胴３の回転に合わせて回転軸線を中心として反転胴３の回転方向後方側に向けて略１８０度旋回して枚葉紙１を表裏逆に反転させ、対接点Ｂにおいて圧胴４に引き渡す。その後、反転グリッパ７は、放射線８３で示すように、対接点Ａで再び先端部側が前方側を向くように、反転胴３の回転方向前方側に略１８０度旋回する。
【０００７】
このような開閉動作や旋回動作をする反転グリッパ７は、上述の如く二つの爪８，９を備えているが、一方の爪８は、回転軸線である爪軸１０に固定され、他方の爪９は、爪軸１０と同軸で且つ爪軸１０が貫通している爪管１１に固定されている。そして、爪軸１０の一端部と爪管１１の他端部には各々歯車１２が装着され、各々の歯車１２は、反転胴３の両端部に設けられたセグメントギア１３と各々噛合している。
【０００８】
該セグメントギヤ１３は、反転胴３の回動ピン１４に軸支されていて、グリッパ駆動用カムフォロア１５を備えている。尚、グリッパ駆動用カムフォロア１５はカムローラとして構成されている。また、反転胴３の胴軸１６を軸支する左右一対のフレーム１７の内側には、ドーナツ円盤状の制御カム１８が固定され、胴軸１６は制御カム１８を貫通した状態にある。そして、該制御カム１８の外周面に、前記グリッパ駆動用カムフォロア１５が当接するカム面が形成されていて、反転胴３が回転すると、この反転胴３の回転に伴ってグリッパ駆動用カムフォロア１５がカム面上を走行しながら周回する。このようにグリッパ駆動用カムフォロア１５がカム面上を周回することでセグメントギア１３が回動ピン１４を中心として回動し、歯車１２を介して爪軸１０と爪管１１とに伝達され、これにより、各爪８，９は個別に駆動制御される。
【０００９】
更に、上述のように、両面印刷と片面印刷とで反転グリッパ７の動作が異なるので、制御カム１８の外周面には、異なる二つのカム面が反転胴３の軸方向に沿って並設されている。即ち、一方のカム面が片面印刷時用で他方のカム面が両面印刷時用であり、グリッパ駆動用カムフォロア１５が当接するカム面を印刷モードの切替の際に切り替えることで、各爪８，９の駆動制御を各印刷モードに対応させるようになっている。
【００１０】
かかるカム面の切替動作は、図１０に二点鎖線にて示しているように、グリッパ駆動用カムフォロア１５をその回転中心軸方向に沿って、即ち、反転胴３の軸方向に沿って手動にて移動させて行っていた。これは他方のセグメントギヤ１３でも同様である。
【００１１】
このように、かかる印刷機は、カム面の切替操作を手動で行うものであるため、その操作が面倒であり、その自動化を図るため、例えば、特開平７−２４９９８号公報所載の如く、グリッパ駆動用カムフォロア１５ではなく逆に制御カム１８を反転胴３の軸方向に移動させる構成も提案されている。以下、該構成について図１１を参酌しつつ概説する。
【００１２】
反転胴３の胴軸１６は、円筒状の軸受け１９を介してフレーム１７に軸支されており、該軸受け１９のうち、フレーム１７の内側に突出している部位の外周面に前記制御カム１８が反転胴３の軸方向に沿って移動可能に遊嵌されている。そして、該制御カム１８を移動させるためのエアシリンダ２０がフレーム１７の外側に設けられ、該エアシリンダ２０の上下方向（反転胴３の軸方向と略直交する方向）の駆動力をカム機構を介して反転胴３の軸方向に沿った方向に変換して、制御カム１８を反転胴３の軸方向に沿って移動させる構成となっている。
【００１３】
また、制御カム１８がフレーム１７の内側であるのに対してエアシリンダ２０がフレーム１７の外側であるので、制御カム１８には、軸受け１９を貫通する二本の切替棒２１が取り付けられている。該切替棒２１は、軸受け１９に穿設されたガイド孔を摺動可能に挿通しており、その先端部には切替用カムフォロア２２が設けられている。また、リンク機構を介してエアシリンダ２０により上下方向に駆動させるスライダ２３が一対設けられ、スライダ２３には、上下方向に対して斜めに傾斜したカム溝２４が形成され、該カム溝２４に前記切替用カムフォロア２２が各々係合している。
【００１４】
従って、エアシリンダ２０が上下に出退すると、リンク機構を介して両スライダ２３，２３が上下方向に所定量移動し、切替用カムフォロア２２が反転胴３の軸方向に沿って内側あるいは外側に移動する。そして、切替棒２１を介して制御カム１８が軸方向に移動することによって、反転胴３のグリッパ駆動用カムフォロア１５が当接するカム面が切り替わる。このように、かかる印刷機では、エアシリンダ２０を動作させることにより、自動的にカム面の切替を行うことが可能となる。
【００１５】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、切替棒２１とガイド孔との間には少なからずガタが生じていることから、切替完了時において、このガタが原因となって制御カム１８が微動する可能性があった。即ち、切替用カムフォロア２２はカム溝２４によって反転胴３の軸方向に移動させられる構成であるので、反転胴３の軸方向に対して略直交する方向に切替棒２１が微動するおそれがあり、その結果として制御カム１８がその方向に微動する。また、二つの切替棒２１は制御カム１８の回転止めの機能をも有しているが、切替棒２１がガイド孔に対して微動することで制御カム１８も回転方向に微動することにもなる。更には、軸方向に長い切替棒２１の先端部に切替用カムフォロア２２が設けられている構成であるので、切替棒２１の撓みも生じる可能性がある。
【００１６】
何れにしても、上記従来の印刷機は、切替完了時に制御カム１８が微動するおそれがあり、制御カム１８が微動するとグリッパ駆動用カムフォロア１５を介して反転グリッパ７の駆動制御も乱れるので、高精度な見当合わせができないという問題点を有していたのである。
【００１７】
それゆえに本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされ、片面印刷と両面印刷との切替に際して移動させる制御カムの切替完了時における微動を抑制することによって、見当精度の高精度化を図ることを課題とする。
【００１８】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、本発明に係る両面印刷可能な枚葉印刷機は、枚葉紙を把持する反転グリッパ７を備えた反転胴３の軸方向外側に、外周面に片面印刷時用のカム面と両面印刷時用のカム面とが反転胴３の軸方向に沿って並設された制御カム１８が、反転胴３の軸方向に沿って移動可能に配設され、反転胴３の端部に設けたグリッパ駆動用カムフォロア１５が反転胴３の回転に伴ってカム面上を当接しながら周回することにより反転グリッパ７が駆動制御され、片面印刷と両面印刷との切替に際して、制御カム１８を反転胴３の軸方向に移動させることによって、グリッパ駆動用カムフォロア１５が当接するカム面を切り替えるよう構成された両面印刷可能な枚葉印刷機であって、
制御カム１８を反転胴３の軸方向に沿ってガイドする固定ガイド部と、制御カム１８に径方向外方に向けて突設された切替用カムフォロア２２と、該切替用カムフォロア２２が係合するカム溝２６を有するスライダ２３と、切替用カムフォロア２２が反転胴３の軸方向に往復移動するようにスライダ２３を往復駆動するスライダ駆動部とを備え、切替用カムフォロア２２は、両面印刷への切替時にはカム溝２６の長手方向一端部から他端部まで移動し、片面印刷への切替時にはカム溝２６の長手方向他端部から一端部まで移動すると共に、切替完了時においては、カム溝２６の長手方向の各端部壁面２６ａが切替用カムフォロア２２を押圧することにより、制御カム１８を固定ガイド部に反転胴３の軸方向と略直交する方向に押圧付勢するように構成されていることを特徴とする。
【００１９】
例えば、片面印刷から両面印刷へと切り替える場合、スライダ駆動部にスライダ２３を駆動させると、切替用カムフォロア２２は、スライダ２３のカム溝２６内をその一端部から他端部まで移動すると共に反転胴３の軸方向に沿って移動する。切替用カムフォロア２２が反転胴３の軸方向に移動すると、切替用カムフォロア２２と一体の制御カム１８も、固定ガイド部にガイドされながら反転胴３の軸方向に沿って移動し、両面印刷時用のカム面１８ａにグリッパ駆動用カムフォロア１５が当接できる状態となる。そして、かかる切替が完了した状態においては、切替用カムフォロア２２がカム溝２６の他端部に当接して該端部壁面２６ａから押圧される。従って、該押圧力によって制御カム１８は固定ガイド部へ反転胴３の軸方向と略直交する方向に押圧付勢され、これによって、固定ガイド部と制御カム１８との間に生じるガタツキが抑制される。
同様に、片面印刷への切替完了時においても、切替用カムフォロア２２がカム溝２６の長手方向一端部の端部壁面２６ａで押圧される。
【００２０】
更に、固定ガイド部として、反転胴３の軸方向に沿って直線状に形成されて切替用カムフォロア２２が係合するガイドレール３０を備え、切替完了時において、切替用カムフォロア２２をカム溝２６の端部壁面２６ａとガイドレール３０とによって反転胴３の軸方向と略直交する方向に挟持することが好ましい。
【００２１】
即ち、ガイドレール３０によって直接切替用カムフォロア２２をガイドすることで、制御カム１８が駆動される点と制御カム１８がガイドされる点が一致するので、移動がより一層スムーズになるうえに、切替完了時においても、切替用カムフォロア２２が挟持されて、制御カム１８の微動をより効果的に抑制できる。
【００２２】
また、本発明に係る両面印刷可能な枚葉印刷機は、枚葉紙を把持する反転グリッパ７を備えた反転胴３の軸方向外側に、外周面に片面印刷時用のカム面と両面印刷時用のカム面とが反転胴３の軸方向に沿って並設された制御カム１８が、反転胴３の軸方向に沿って移動可能に配設され、反転胴３の端部に設けたグリッパ駆動用カムフォロア１５が反転胴３の回転に伴ってカム面上を当接しながら周回することにより反転グリッパ７が駆動制御され、片面印刷と両面印刷との切替に際して、制御カム１８を反転胴３の軸方向に移動させることによって、グリッパ駆動用カムフォロア１５が当接するカム面を切り替えるよう構成された両面印刷可能な枚葉印刷機であって、制御カム１８に径方向外方に向けて突設された切替用カムフォロア２２と、該切替用カムフォロア２２が係合するカム溝２６を有するスライダ２３と、切替用カムフォロア２２が反転胴３の軸方向に往復移動するようにスライダ２３を往復駆動するスライダ駆動部と、制御カム１８を反転胴３の軸方向に沿ってガイドすべく、反転胴３の軸方向に沿って直線状に形成されて切替用カムフォロア２２が係合するガイドレール３０とを備え、切替用カムフォロア２２は、両面印刷への切替時にはカム溝２６の長手方向一端部から他端部まで移動し、片面印刷への切替時にはカム溝２６の長手方向他端部から一端部まで移動すると共に、切替完了時においては、カム溝２６の長手方向の各端部壁面２６ａが切替用カムフォロア２２を押圧することにより、切替用カムフォロア２２をカム溝２６の端部壁面２６ａとガイドレール３０とによって反転胴３の軸方向と略直交する方向に挟持するように構成されていることを特徴とする。
【００２３】
かかる構成では、切替用カムフォロア２２がスライダ２３のカム溝２６で移動させられると共にガイドレール３０でガイドされることなり、駆動される点とガイドされる点とが一致するので、スムーズに軸方向に沿って移動させることができるうえに、切替完了時において切替用カムフォロア２２をガイド溝２６の端部壁面とガイドレールとで挟持することで確実に制御カムの微動を抑制することができる。
【００２４】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の両面印刷可能な枚葉印刷機の一実施形態について図１乃至図５を参酌しつつ説明するが、上記従来のものと同様の構成部分については重複した説明を省略し、また、実質的に同一の機能を有する部分については同一符号を付すこととする。
【００２５】
図１は、反転胴３の正面図であり、その他の部材は省略されている。該反転胴３の胴軸１６は、左右一対のフレーム１７（二点鎖線にて示す）に取り付けられた円筒状の軸受け１９に軸支されている。また、フレーム１７から外側に突出した胴軸１６の一端部には歯車が装着され、該歯車を介して反転胴３が回転駆動される。
【００２６】
尚、該反転胴３においても、反転胴３の胴軸１６と平行に反転グリッパ７が列設されており、爪軸１０の一端部（図中の右端部）と、爪管１１の他端部（図中の左端部）とには、各々歯車１２が装着され、反転胴３の両端部にはセグメントギヤ１３が各々回動ピン１４に軸支されて装着されている。そして、各セグメントギヤ１３は、それぞれ爪軸１０及び爪管１１の歯車１２と噛合している。また、セグメントギヤ１３は、回動ピン１４を中心として反転グリッパ７と反対側の位置にグリッパ駆動用カムフォロア１５を備えている。該グリッパ駆動用カムフォロア１５は、カムローラとして構成され、セグメントギヤ１３から反転胴３の軸方向外側に突出して設けられており、その回転中心軸は反転胴３の胴軸１６と略平行である。そして、グリッパ駆動用カムフォロア１５は、ローラ部が制御カム１８のカム面上を転がりながら走行する構成で、その走行負荷は少ない。
【００２７】
また、本実施形態では、爪軸１０と爪管１１とを個別に駆動制御すべく、即ち、一対の爪８，９を個別に駆動制御すべく、反転胴３の軸方向の両側に各々グリッパ駆動用カムフォロア１５と制御カム１８とを備えており、また、両制御カム１８共、その外周面には、両面印刷時用のカム面１８ａと片面印刷時用のカム面１８ｂとが設けられ、両面印刷と片面印刷との切替時に各制御カム１８を反転胴３の軸方向に移動させてグリッパ駆動用カムフォロア１５が当接するカム面を切り替えるタイプの印刷機である。
【００２８】
尚、図中左側に位置する、爪管１１を駆動制御する側の制御カム１８においては、外側（フレーム１７側）から順に、片面印刷時用のカム面１８ｂ、両面印刷時用のカム面１８ａとなっており、一方、逆に、図中右側に位置する、爪軸１０を駆動制御する側の制御カム１８においては、外側から順に、両面印刷時用のカム面１８ａ、片面印刷時用のカム面１８ｂとなっている。従って、両面印刷への切替に際しては、左側の制御カム１８を外側に移動させ、右側の制御カム１８を内側に移動させる。また、片面印刷への切替に際しては、左側の制御カム１８を内側に、右側の制御カム１８を外側に各々移動させる。即ち、左右の制御カム１８を同一方向に平行移動させる構成となっており、図１は片面印刷時の状態を示している。但し、左右の制御カム１８を逆方向に、即ち、互いに接近したり離反したりするように平行移動させる構成としてもよい。
【００２９】
次に、制御カム１８を反転胴３の軸方向に沿って平行移動させる機構について主に説明するが、同様の機構を左右に各々設けている構成であるので、図中の左側の機構について詳述する。
【００３０】
図２は、図１のＰ−Ｐ線概略断面を示す一部破断線を含む図で、説明のため、制御カム１８、軸受け１９、及び制御カム１８を平行移動させるカム面切替機構以外の部材は省略している。従って、反転胴３の胴軸１６や爪管１１やグリッパ駆動用カムフォロア１５等は省略されている。また、図３は、図２のＱ−Ｑ線概略断面図を示しており、図４は、図３の状態から、制御カム１８を外側に平行移動させた状態を示した図であり、それぞれ、片面印刷時の状態と両面印刷時の状態を示している。尚、図２の一部破断線の箇所は、図３におけるＲ−Ｒ線断面を示している。更に、図５は、制御カム１８とカム面切替機構のみを正面から見た概略説明図であり、（イ）は、制御カム１８が内側に移動して反転胴３に接近した状態、即ち、片面印刷時の状態を示しており、（ロ）は、制御カム１８が反転胴３から離れて外側に移動した状態、即ち、両面印刷時の状態を示している。以下、図２乃至図５を主に参酌しつつ説明する。
【００３１】
まず、図２及び図３に示すように、円筒状の軸受け１９は、フレーム１７の内側に突設され且つ胴軸１６と同軸状の円筒ガイド部２５を備えており、該円筒ガイド部２５の外側に全体として円筒状に形成された制御カム１８が軸方向に移動可能に遊嵌されている。即ち、反転胴３の胴軸１６は制御カム１８を貫通している。また、両カム面１８ａ，１８ｂは、制御カム１８の外周面のうち、内側の箇所に形成されて互いに隣接している。
【００３２】
そして、外側のカム面１８ｂの直外側の外周面には、図２及び図３の如く、径方向外方に向けて切替用カムフォロア２２が突設されている。該切替用カムフォロア２２もカムローラとして構成され、その回転中心は、制御カム１８の径方向で、反転胴３の軸方向とは略直交した関係にある。そして、印刷機の略水平方向に位置すると共に、反転胴３の胴軸１６を中心として互いに略１８０度対向して二箇所に設けられている。即ち、制御カム１８の移動方向に対して平面視両側に切替用カムフォロア２２が設けられている。
【００３３】
一方、制御カム１８の平面視両側には、各々プレート状のスライダ２３が直立状態に配設されており、該スライダ２３には、上下方向に対して反転胴３の軸方向に所定角度傾斜したカム溝としての直線状の駆動用長孔２６が形成されている。そして、該駆動用長孔２６に前記切替用カムフォロア２２が挿入係合している。該スライダ２３は、図２及び図３の如く、その外側縁部が軸受け１９の上下方向の切欠部２７に係合すると共に、軸受け１９と、該軸受け１９に内側からネジ止めされた抑え板２８とによって内外からガイドされている。即ち、スライダ２３は、軸受け１９と抑え板２８とで上下方向に摺動可能にガイドされている。
【００３４】
また、このスライダ２３を上下方向、即ち、反転胴３の軸方向と略直交する方向に往復直線駆動するスライダ駆動部がスライダ２３の下方側に設けられている。該スライダ駆動部は、上下方向に主軸３２を出退させるエアシリンダ２０と、該上下方向の主軸３２の上端部に連結され、上側が凹の逆門状の連結部材２９とを備えている。エアシリンダ２０はフレーム１７の内面に取り付けられ、連結部材２９も反転胴３とフレーム１７の間に位置している。そして、連結部材２９は、図２の如く、上下方向に伸びた脚部２９ａを左右一対有して、制御カム１８の下方側略半周を覆うように形成され、各々の脚部２９ａの上端部は、前記スライダ２３の外側縁部の下端部と固定されている。
【００３５】
従って、エアシリンダ２０の主軸３２が上下に出退すると、連結部材２９を介して両スライダ２３が共に上下同一方向に往復直線運動し、該スライダ２３の駆動方向に対して駆動用長孔２６の長手方向が傾斜しているので、エアシリンダ２０の上下方向の駆動力が駆動用長孔２６と切替用カムフォロア２２を介して反転胴３の軸方向に沿った駆動力に変換され、制御カム１８が軸受け１９の円筒ガイド部２５に案内されて反転胴３の軸方向に平行移動し、軸方向の位置が定まっているグリッパ駆動用カムフォロア１５が当接するカム面が切り替わる。
【００３６】
また、スライダ２３が上下に移動した各状態では、図５のように、その駆動用長孔２６の各端部に切替用カムフォロア２２が位置する。しかも、両面印刷への切替完了時において、図５（ロ）の如く、切替用カムフォロア２２が駆動用長孔２６の上端部（他端部）の端部壁面２６ａに当接すると共に、エアシリンダ２０がそれ以上に下方に向けてスライダ２３を引き寄せるため、切替用カムフォロア２２は端部壁面２６ａから下方に向けて押圧される。同様に、片面印刷への切替完了時には、図５（イ）の如く、切替用カムフォロア２２は駆動用長孔２６の下端部（一端部）の端部壁面２６ａで上方に向けて押圧される。
【００３７】
更に、切替用カムフォロア２２は、その先端側の所定部分がスライダ２３の駆動用長孔２６から外側に突出しており、該突出部は、軸受け１９の内側に取り付けられたガイドレール３０のガイド用長孔３１に係合している。該ガイドレール３０も図２の如く、左右一対設けられ、図５のように、そのガイド用長孔３１は水平方向（反転胴３の軸方向）に沿って直線状に形成されている。該ガイドレール３０は、切替用カムフォロア２２を反転胴３の軸方向に沿ってガイドし、上述した軸受け１９の円筒ガイド部２５と共に、制御カム１８を反転胴３の軸方向に沿ってガイドする固定ガイド部を構成している。尚、ガイドレール３０をスライダ２３の内側に配設することもできる。
【００３８】
そして、上述のように、切替用カムフォロア２２が切替完了時においてスライダ２３の駆動用長孔２６の端部壁面２６ａで上下に押圧されると、切替用カムフォロア２２はガイドレール３０のガイド用長孔３１の上側側壁面若しくは下側側壁面の何れかに押圧付勢される。即ち、切替用カムフォロア２２は、駆動用長孔２６の端部壁面２６ａとガイドレール３０とによって、反転胴３の軸方向と略直交する方向に挟持される。また、制御カム１８は円筒ガイド部２５に上下何れかの方向に押圧付勢される。
【００３９】
尚、両ガイドレール３０は制御カム１８の回り止め、即ち、円筒ガイド部２５に対する制御カム１８の周方向の動きを規制する役目も果たしている。また、図３乃至図５の如く、切替完了時においては、切替用カムフォロア２２は、ガイドレール３０のガイド用長孔３１の両端部に略位置する。
【００４０】
また、上述のように、反転胴３の軸方向反対側の制御カム１８及びカム切替機構も同様であるが、図１の如く、両エアシリンダ２０の出退は逆となる。
【００４１】
以上のように構成された印刷機の動作について、例えば、図１に示した片面印刷状態から両面印刷状態への切替を例に説明する。
【００４２】
まず、両エアシリンダ２０へのエア供給をスイッチ等によって切り替えて、左側のエアシリンダ２０を出状態から退状態へと、右側のエアシリンダ２０を退状態から出状態へとする。該エアシリンダ２０の状態変化により、それぞれ連結部材２９を介してスライダ２３が上下方向に直線駆動され、切替用カムフォロア２２は、ガイドレール３０のガイド用長孔３１によってガイドされながら、スライダ２３の駆動用長孔２６内を一端部から他端部まで移動する。この切替用カムフォロア２２の図１における左方向への平行移動により、制御カム１８も一体となって左方に移動する。即ち、制御カム１８は円筒ガイド部２５と左右一対のガイドレール３０によって確実にガイドされて平行移動する。
【００４３】
そして、切替用カムフォロア２２が他端部まで到達すると、左側の制御カム１８は、円筒ガイド部２５と両ガイドレール３０とへ下方に向けて押圧付勢され、右側の制御カム１８は、両者へ上方へ向けて押圧付勢されることとなる。従って、制御カム１８の内周面と円筒ガイド部２５の外周面との間のガタや、切替用カムフォロア２２と各ガイド用長孔３１との間のガタ等が、これらの押圧付勢によって殺されることとなり、その結果、制御カム１８はその位置が固定されて安定する。従って、両面印刷時用のカム面１８ａ上をグリッパ駆動用カムフォロア１５が走行しても制御カム１８ががたついたりすることがなく、高精度な見当合わせが得られるのである。片面印刷への切替についても同様である。
【００４４】
また、制御カム１８の駆動力作用ポイントである切替用カムフォロア２２を、ガイドレール３０とスライダ２３の駆動用長孔２６の端部壁面２６ａとで上下に挟持する構成であるため、制御カム１８の安定性が高まるうえに、制御カム１８の周方向への微動も確実に抑制することができる。無論、切替用カムフォロア２２をガイドレール３０でガイドすることによって、移動もスムーズである。
【００４５】
更に、切替用カムフォロア２２とスライダ２３を反転胴３の軸線を中心として略１８０度対向した位置に各々設けているので、一箇所に比してスムーズに移動させることができ、且つ、切替完了時における安定性もよい。このように、切替用カムフォロア２２を複数箇所に配設して各々スライダ２３で駆動する場合、本実施形態のように、連結部材２９で各スライダ２３を連結して一つのエアシリンダ２０等で同一方向に駆動することが好ましい。
【００４６】
また、切替用カムフォロア２２を直接制御カム１８に装着しているので、従来の切替棒で生じた撓み等も発生しない。また、スライダ駆動部もフレーム１７の内側に設けているので機構も簡易となる。
【００４７】
更に、両スライダ２３を反転胴３の軸方向と略直交する方向に往復直線駆動し、カム溝としての駆動用長孔２６の長手方向を、スライダ２３の駆動方向に対して反転胴３の軸方向に所定角度傾斜させているので、簡易な機構で切替用カムフォロア２２を反転胴３の軸方向に移動させることができるうえに、スライダ２３の駆動方向が反転胴３の軸方向と略直交する方向であるため、切替完了時において切替用カムフォロア２２を駆動用長孔２６の端部壁面２６ａで容易且つ確実に反転胴３の軸方向と略直交する方向に押圧することができ、制御カム１８の安定性をより一層高めることができる。また、端部壁面２６とガイドレール３０とによる切替用カムフォロア２２の挟持も簡易且つ確実となる。
【００４８】
尚、エアシリンダ２０以外の種々の駆動手段を用いてもよく、また、スライダ２３を上下方向に対して所定角度斜めに往復直線駆動してもよく、スライダ２３を振り子のように往復円運動させることも可能である。更に、固定ガイド部の構成も適宜設計変更可能である。
【００４９】
また、両ガイドレール３０と両スライダ２３とをそれぞれリング状に一体化し、制御カム１８にリング状のスライダ２３を遊嵌させると共にその外側にリング状のガイドレール３０を配設し、リング状のスライダ２３を周方向に往復駆動することによって切替用カムフォロア２２を反転胴３の軸方向に平行移動させるようにしてもよい。かかる場合、切替用カムフォロア２２がガイドレール３０のガイド用長孔３１に接線方向、即ち、反転胴３の軸方向と略直交する方向に押圧付勢される。このように切替用カムフォロア２２を端部壁面２６ａとガイドレール３０とで反転胴３の軸方向と略直交する方向に挟持することも可能である。また、切替用カムフォロアを二個以上（例えば、三個）設けることができ、そのようにした場合には制御カム１８をより確実に固定することができる。
【００５０】
尚、上記実施形態では、制御カム１８がその外周面に両面印刷時用のカム面１８ａと片面印刷時用のカム面１８ｂとを共に有しているものについて説明しているが、制御カム１８を両カム面毎に別体にて構成することもできる。
【００５１】
尚、スライダ２３に切替用カムフォロア２２を設け、制御カム１８側にカム溝２６を形成するようにすることもできる。
【００５２】
【発明の効果】
以上のように、切替完了時において制御カムの微動が抑制されるので、制御カムの切替に起因する見当精度の悪化を防止でき、従来に比して見当精度を高精度化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施形態における両面印刷可能な枚葉印刷機の要部を示す概略正面図。
【図２】図１のＰ−Ｐ線の一部破断線を含む概略断面図。
【図３】図２のＱ−Ｑ線概略断面図。
【図４】図３の状態から制御カムが外側に移動した状態を示す概略説明図。
【図５】同要部の概略説明図であり、（イ）は図３に対応した状態を示し、（ロ）は図４に対応した状態を示している。
【図６】従来の枚葉印刷機の要部を示す概略説明図。
【図７】片面印刷における同印刷機の要部を示す概略説明図。
【図８】両面印刷における同印刷機の要部を示す概略説明図。
【図９】同印刷機の要部を示す概略断面平面図。
【図１０】図９の要部拡大図。
【図１１】従来の他の枚葉印刷機の要部を示す概略斜視図。
【符号の説明】
１…枚葉紙、２…貯え胴、３…反転胴、４…圧胴、５…グリッパ、６…紙吸着装置、７…反転グリッパ、８，９…爪、１０…爪軸、１１…爪管、１２…歯車、１３…セグメントギヤ、１４…回動ピン、１５…グリッパ駆動用カムフォロア、１６…胴軸、１７…フレーム、１８…制御カム、１９…軸受け、２０…エアシリンダ、２１…切替棒、２２…切替用カムフォロア、２３…スライダ、２４…カム溝、２５…円筒ガイド部、２６…駆動用長孔（カム溝）、２６ａ…端部壁面、２７…切欠部、２８…抑え板、２９…連結部材、２９ａ…脚部、３０…ガイドレール、３１…ガイド用長孔、３２…主軸

Claims (2)

1. 枚葉紙を把持する反転グリッパ（７）を備えた反転胴（３）の軸方向外側に、外周面に片面印刷時用のカム面と両面印刷時用のカム面とが反転胴（３）の軸方向に沿って並設された制御カム（１８）が、反転胴（３）の軸方向に沿って移動可能に配設され、反転胴（３）の端部に設けたグリッパ駆動用カムフォロア（１５）が反転胴（３）の回転に伴ってカム面上を当接しながら周回することにより反転グリッパ（７）が駆動制御され、片面印刷と両面印刷との切替に際して、制御カム（１８）を反転胴（３）の軸方向に移動させることによって、グリッパ駆動用カムフォロア（１５）が当接するカム面を切り替えるよう構成された両面印刷可能な枚葉印刷機であって、制御カム（１８）を反転胴（３）の軸方向に沿ってガイドする固定ガイド部と、制御カム（１８）に径方向外方に向けて突設された切替用カムフォロア（２２）と、該切替用カムフォロア（２２）が係合するカム溝（２６）を有するスライダ（２３）と、切替用カムフォロア（２２）が反転胴（３）の軸方向に往復移動するようにスライダ（２３）を往復駆動するスライダ駆動部とを備え、切替用カムフォロア（２２）は、両面印刷への切替時にはカム溝（２６）の長手方向一端部から他端部まで移動し、片面印刷への切替時にはカム溝（２６）の長手方向他端部から一端部まで移動すると共に、切替完了時においては、カム溝（２６）の長手方向の各端部壁面（２６ａ）が切替用カムフォロア（２２）を押圧することにより、制御カム（１８）を固定ガイド部に反転胴（３）の軸方向と略直交する方向に押圧付勢するように構成され、固定ガイド部として、反転胴（３）の軸方向に沿って直線状に形成されて切替用カムフォロア（２２）が係合するガイドレール（３０）を備え、切替完了時において、切替用カムフォロア（２２）をカム溝（２６）の端部壁面（２６ａ）とガイドレール（３０）とによって反転胴（３）の軸方向と略直交する方向に挟持することを特徴とする両面印刷可能な枚葉印刷機。
2. 枚葉紙を把持する反転グリッパ（７）を備えた反転胴（３）の軸方向外側に、外周面に片面印刷時用のカム面と両面印刷時用のカム面とが反転胴（３）の軸方向に沿って並設された制御カム（１８）が、反転胴（３）の軸方向に沿って移動可能に配設され、反転胴（３）の端部に設けたグリッパ駆動用カムフォロア（１５）が反転胴（３）の回転に伴ってカム面上を当接しながら周回することにより反転グリッパ（７）が駆動制御され、片面印刷と両面印刷との切替に際して、制御カム（１８）を反転胴（３）の軸方向に移動させることによって、グリッパ駆動用カムフォロア（１５）が当接するカム面を切り替えるよう構成された両面印刷可能な枚葉印刷機であって、制御カム（１８）に径方向外方に向けて突設された切替用カムフォロア（２２）と、該切替用カムフォロア（２２）が係合するカム溝（２６）を有するスライダ（２３）と、切替用カムフォロア（２２）が反転胴（３）の軸方向に往復移動するようにスライダ（２３）を往復駆動するスライダ駆動部と、制御カム（１８）を反転胴（３）の軸方向に沿ってガイドすべく、反転胴（３）の軸方向に沿って直線状に形成されて切替用カムフォロア（２２）が係合するガイドレール（３０）とを備え、切替用カムフォロア（２２）は、両面印刷への切替時にはカム溝（２６）の長手方向一端部から他端部まで移動し、片面印刷への切替時にはカム溝（２６）の長手方向他端部から一端部まで移動すると共に、切替完了時においては、カム溝（２６）の長手方向の各端部壁面（２６ａ）が切替用カムフォロア（２２）を押圧することにより、切替用カムフォロア（２２）をカム溝（２６）の端部壁面（２６ａ）とガイドレール（３０）とによって反転胴（３）の軸方向と略直交する方向に挟持するように構成されていることを特徴とする両面印刷可能な枚葉印刷機。

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