JP3539903B2 - 基板のダイシング方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体、電子部品の製造方法に関し、特にシリコン基板、ガリウム砒素基板、ガラス基板、ハードディスク基板、LCD基板等の薄型基板のダイシング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、携帯電話、携帯型ノートパソコン等においては、電子機器の小型化が進展している。そこでは、CSP(Chip Size Package)が不可欠となってきており、今後の急成長が予測される。CSPには、ベアチップ(ダイともいう)が用いられている。
【0003】
ダイは、通常、以下のようにして作成され使用される。シリコン基板にデバイス形成した後、図2および図3に示すように、ダイサイズ(ベアチップサイズ)にダイヤモンド刃21で切り出す(ダイシング)する。その場合、基板1をステンレス製リング20(高さ3mm)の中に配置した状態でダイシングする。
【0004】
基板1をダイシング後、ステンレス製リング20がついた状態で、半導体工場内を運搬し、また出荷のためデバイスメーカーからユーザーへ配送される。
【0005】
使用したステンレス製リング20は再利用のため、ユーザーからダイシングするデバイスメーカーに返送される。なお、図中22はモータ、矢印Aはダイシング方向を示す。
【0006】
ところで、ダイ23は、図2に示したままで、デバイス特性、特に電気特性を管理することが必須となる。つまり、デバイス完了後、電気特性を調べた結果、基板1の位置とダイ23との整合性が確保できるように、ダイ23をパッケージする直前まで基板1の位置をそのまま維持しながら搬送する必要がある。その後、パッケージ時には、ステンレス製リング20のままでダイ23が基板1から外され、パッケージできるよう(その場合、ダイの位置が決められている)自動化されている。
【0007】
以上の通り、基板1のダイシングのため使用したステンレス製リング20は再利用のためユーザーからダイシングするデバイスメーカーに返送されているので、非常にコスト高となる。
【0008】
さらに、基板1をダイシングするときに、ステンレス製リング20は、図3に示すように、基板1全周に完全には接触しておらず、基板1とリング20との間には隙間24が形成されているため矢印B方向へ移動することがあり、そのためダイシング時に基板1周辺部がステンレス製リング20に局部的に押さえ付けられることで、基板1の周辺部に加工歪みを発生したり応力集中を受け、ダイシング中に基板1が剥がれたり、チッピングを発生し、製品の歩留まりを低下させているという欠点があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記欠点を解決するものであり、その目的は、ダイシングにおける基板外周部の応力歪みの発生を小さくし、基板の欠けや割れの発生頻度を小さくできる薄型基板のダイシング方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、ダイシング後の運搬時、ダイのはずれをなくすことができ、さらにリングの回収作業をなくして製造コストを低減することができる薄型基板のダイシング方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の薄型基板のダイシング方法は、薄型基板の外周部に、弾性を有する保持材を剥離可能に取り付け、この状態で基板をダイシングする薄型基板のダイシング方法であって、該保持材が、保持部と接着剤層とを有し、該接着剤層が常温で接着力が大きく、かつ設定温度以上で接着力が低下する粘着剤組成物からなり、該接着剤層を介して保持部が薄型基板の外周部に剥離可能に接着されており、該基板をダイシングした後、該保持材をダイシング温度以上に加温した後、該保持材を基板の外周部から取り外すことを特徴とし、そのことにより上記目的が達成される。
【0014】
一つの実施態様では、前記薄型基板が、シリコン基板、ガリウム砒素基板、ガラス基板、ハードディスク基板、およびLCD基板からなる群から選択される一種である。
【0015】
本発明の作用は次の通りである。
【0016】
薄型基板の外周部を弾性を有する保持材で保持し、その状態で基板をダイシングするので、ダイシング時に基板外周部が加工歪みを発生したり、局部的な応力集中を受けることがなく、従って、ダイシング時に基板が割れたり、チッピングを発生することを低減できる。ダイシング後に保持材は基板外周部から適宜取り外される。
【0017】
特に、保持材を保持部と接着剤層とで構成し、接着剤層が常温で接着力が大きく、かつ設定温度以上で接着力が低下する粘着剤組成物からなり、該接着剤層を介して保持部が基板の外周部に剥離可能に接着されているものでは、ダイシング加工中は保持材を確実に基板外周部に接着させておきながら、ダイシング加工後では加温することにより容易に保持材を基板の外周部から取り外すことができることにより、取り外しが容易であると共にウエハ等の基板に接着剤層の成分が残留して汚染することもない。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明の方法に使用する基板(好適には半導体ウエハである)の外周部の保持材10は、図1に示すように、基板1の外周部に取り外し可能に取り付けられ基板1の外周部を保持するものである。本発明で基板1の外周部とは、基板1の外周端面およびその近傍の基板表裏面をいう。保持材10の具体的構成は以下のものがあげられる。
(1)弾性を有する保持部11と接着剤層12とを有するもの。ここで、接着剤層12は公知の感圧性接着剤からなるものでもよいが、常温で接着力が大きくかつ設定温度以上で接着力が低下する粘着剤組成物からなるものが好ましい。
(2)ゴム等の弾性部材からなるテープ状あるいはループ状のもので、保持材10の弾性力により基板1の外周部に取り付けるもの。
【0020】
上記(1)の場合、保持部11としては、ゴムまたは熱可塑性エラストマーからなる弾性部材が好ましく使用され、その断面形状は限定するものではないが、例えば、図1に示すような形状のものが使用でき、特に基板1の外周部を嵌合する凹溝13を内面に有する矩形状のものが好ましい。保持部11の厚みは、基板1の厚みよりやや大きいものがよく、図1に示すように、保持材10によって基板1は機台面から離れた状態に保持される。
【0021】
上記公知の感圧接着剤としては、以下のものが挙げられる。
【0022】
天然ゴム接着剤;スチレン/ブタジエンラテックスベース接着剤;ABAブロック共重合体型の熱可塑性ゴム(Aは熱可塑性ポリスチレン末端ブロックを示し、Bはポリイソプレン、ポリブタジエンまたはポリ(エチレン/ブチレン)のゴム中間ブロックを示す);ブチルゴム;ポリイソブチレン;ポリアクリレート;及び酢酸ビニル/アクリルエステル共重合体のようなアクリル接着剤;ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、及びポリビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテルの共重合体。特に、エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート等からなるアクリル系感圧接着剤が好ましい。
【0023】
また、上記接着剤層12を構成し得る粘着剤組成物としては以下があげられる。
【0024】
上記のような公知の感圧接着剤と側鎖結晶化可能ポリマーとを含有し、該ポリマーが、温度T1から少なくとも15℃以上高い温度T2に加温することにより接着剤組成物の粘着性が低下するのに必要な量だけ該組成物中に存在するものである。具体的には、接着剤組成物が、感圧接着剤と、該接着剤組成物に対して1〜30重量%の側鎖結晶化可能ポリマーとを含有し、該側鎖結晶化可能ポリマーが、炭素数16以上(特に炭素数16〜50,好ましくは炭素数16〜24)の直鎖状アルキル基を側鎖とするアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを主成分とするものである。
【0025】
上記温度T1は、通常、室温(20℃〜25℃)であり、従って温度T2は35℃以上(好ましくは40℃〜100℃)である。
【0026】
また、アクリル系感圧接着剤を使用することにより、ポリマーとの相互作用をもつため、所定温度では接着剤層12内に該ポリマーが良好に分散して粘着性を発揮すると共に、所定温度以上の加熱によりポリマーがブリードアウトし易くなり剥離性を良好に発揮する。
【0027】
接着剤層12を有する保持材10は、例えば、常温で接着剤組成物に溶剤を混ぜて、保持部11の片面に塗布し、乾燥して溶剤を揮散させることにより得ることができる。
【0028】
得られた保持材10は、基板1(例えば、シリコンウエハ)のダイシング前において、基板1の外周部へ接着剤層12を介して保持部11を取り付ける。保持材10がテープ状の場合には適宜寸法に切断して基板1外周部に貼り付ければよく、保持材10が基板1の外周部の周長に比べて長さがやや短いループ状の場合には、基板1の外周部の周囲に弾性的に巻回することによって取り付けてもよい。接着剤層12は、常温(20〜30℃)で高い接着力(1600g/25mmの剥離力)を有することにより、基板ダイシング時に、保持材10が基板1外周部から剥離することがない。
【0029】
基板1には、シリコン基板、ガリウム砒素基板、ガラス基板、ハードディスク基板、およびLCD基板からなる群から選択される一種がある。
【0030】
次に、基板1をダイシングする方法の一例を説明する。
【0031】
基板1の外周部に保持材10を取り付ける。基板1の外周部が図1のように形成されている場合には、内面に凹溝13を有する保持材10を使用し、保持材10の凹溝13内に基板1の外周部を嵌合する状態で保持材10を取り付ける。この場合、基板1は機台上面からやや浮いた状態となる。
【0032】
この状態で基板1をダイシングすると、基板1の外周部は弾性を有する柔軟な保持材10で保持されていることにより、ダイシング時の歪みや局部的な応力集中が基板1に作用することがない。
【0033】
このようにして基板1をダイシングしたものを、半導体工場内を運搬し、また出荷のためデバイスメーカーからユーザーへ配送される。ユーザーでは、従来例で説明したように、ダイをパッケージし、適宜、保持材10を剥離する。保持材10を剥離するには、手あるいは工具を用いて剥離することができ、保持材10が接着剤層12を有する場合には、熱風を基板1の外周部に吹き付けたり、加温室へ配置し、あるいは熱水を基板1の外周部にかけることにより保持材10を基板1の外周部から容易に剥離することができる。すなわち、上記した感熱性接着剤層12は、所定温度以上の加温によって接着性が大きく低下するので(例えば、常温の1/10以下に低下するので)、保持材10を基板1の外周部から容易に剥離することができる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。なお、以下で「部」は重量部を意味する。
(実施例1)
A.ポリマーの調製
(合成例1)
ステアリルアクリレート95部、アクリル酸5部、ドデシルメルカプタン5部、及びカヤエステルHP−70(化薬アクゾ社製)1部を混合し、80℃で5時間撹拌してこれらのモノマーを重合させた。得られたポリマーの分子量は8,000、融点は50℃であった。
(合成例2)
ドコシルアクリレート95部、アクリル酸5部、ドデシルメルカプタン5部、及びカヤエステルHP−70(化薬アクゾ社製)1部を混合し、80℃で5時間撹拌してこれらのモノマーを重合させた。得られたポリマーの分子量は8,000、融点は60℃であった。
(合成例3)
2−エチルヘキシルアクリレート92部、2−ヒドロキシエチルアクリレート8部、及びトリゴノックス23−C70(化薬アクゾ社製)0.3部を酢酸エチル/ヘプタン(70/30)150部の中に混合し、55℃で3時間撹拌後、80℃に昇温し、カヤエステルHP−70 0.5部を加え、2時間攪拌してこれらのモノマーを重合させた。得られたポリマーの分子量は600,000であった。
B.保持材の作製
上記合成例1と合成例3とで得られたポリマーを10部対100部の割合で混合し、タッキファイヤーとしてスーパーエステルA125(荒川化学社製)を合成例3のポリマーに対して10重量%配合した。このポリマー溶液に架橋剤としてコロネートL45(日本ポリウレタン社製)を合成例3のポリマー100部に対して0.3部添加した。この溶液を図1に示すような断面を有するループ状ゴムの内面に塗布、乾燥して接着剤層12を形成し保持材10を得た。上記保持材を用いて基板1の外周部に取り付けて基板をダイシングした。
【0035】
保持材の接着剤層は、常温(20〜30℃)で高い接着力(1600g/25mmの剥離力)を有しているので、ダイシング時に保持材が基板外周部から剥離することはなかった。
【0036】
基板100枚についてダイシング工程を行ったところ、良品は94枚得られた。ダイシング後は、60℃に温度を昇温させることで接着剤層が基板の外周部から容易に剥離し、20g/25mm以下で保持材を取り外すことができた。
(実施例2)
上記合成例2と合成例3とで得られたポリマーを10部対100部の割合で混合し、タッキファイヤーとしてスーパーエステルA125(荒川化学社製)を合成例3のポリマーに対して10重量%配合した。このポリマー溶液に架橋剤としてコロネートL45(日本ポリウレタン社製)を合成例3のポリマー100部に対して0.3部添加した。この溶液を図1に示すような断面を有するテープ状ゴムの内面に塗布、乾燥して接着剤層12を形成し保持材10を得た。
【0037】
上記保持材を用いて基板の外周部に取り付けたこと以外は、実施例1と同様にして基板をダイシングした。
【0038】
その結果、基板100枚についてダイシング工程を行ったところ、良品は98枚得られた。ダイシング後は、60℃に温度を昇温させることで接着剤層が基板の外周部から容易に剥離し、20g/25mm以下で保持材を取り外すことができた。
(比較例1)
保持材を使用することなく、図2および図3に示すステンレス製リングを用いて基板を保持したこと以外は、実施例1と同様にして基板をダイシングした。
【0039】
その結果、基板100枚についてダイシング工程を行ったところ、良品は88枚得られた。
【0040】
上記の結果から以下のことがわかる。
【0041】
保持材によって基板の周囲を弾性的に保持しダイシングするので、ダイシング時の応力集中や歪みを緩和させることができる。これに対して比較例では、ステンレス製リングによって基板の周囲を保持するため、シリコン基板の周辺部に加工歪みを発生したり、応力集中を受け、ダイシング中に基板が割れたり、チッピングを発生する。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、基板のダイシングにおける基板外周部の応力歪みや残留応力の発生を小さくし、基板の欠けや反りの発生頻度を小さして、製品の歩留まりを向上し、品質の安定化を図ることができる。
【0043】
また、ダイシング後では、基板の外周部に保持材を取り付けた状態で基板を保管し、あるいは運搬できるので、基板の破損等が防止でき、またユーザー側で保持材を取り外して廃棄すればよいので、従来のステンレス製リングを使用する場合のようにリングの返送を不要とし、保持材を使い捨てにできるので、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の保持材の一実施例をウエハの外周部に取り付けた状態を示す要部断面図である。
【図2】従来のステンレス製リングで基板を保持してダイシングした状態を示す斜視図である。
【図3】基板のダイシング工程を示す概略図である。
【符号の説明】
1 基板
10 保持材
11 保持部
12 接着剤層

Claims (2)

  1. 薄型基板の外周部に、弾性を有する保持材を剥離可能に取り付け、この状態で基板をダイシングする薄型基板のダイシング方法であって、
    該保持材が、保持部と接着剤層とを有し、該接着剤層が常温で接着力が大きく、かつ設定温度以上で接着力が低下する粘着剤組成物からなり、該接着剤層を介して保持部が薄型基板の外周部に剥離可能に接着されており、
    該基板をダイシングした後、該保持材をダイシング温度以上に加温した後、該保持材を基板の外周部から取り外すことを特徴とする薄型基板のダイシング方法。
  2. 前記薄型基板が、シリコン基板、ガリウム砒素基板、ガラス基板、ハードディスク基板、およびLCD基板からなる群から選択される一種である請求項1に記載のダイシング方法。
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