JP3539610B2 - 硬質ポリウレタンフォーム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬質ポリウレタンフォームに関する。さらに詳しくは、耐低温収縮性に優れ、建築材料などに好適に使用しうる硬質ポリウレタンフォームに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、硬質ポリウレタンフォームは、主として、例えば、電気冷蔵庫や建築材料の断熱ボードなどに用いられている。従来の硬質ポリウレタンフォームは、発泡剤としてトリクロロフルオロメタン(以下、CFC−11という)などの特定フロンが用いられていたため、比較的、断熱性および低温寸法安定性に優れていた。
【0003】
しかし、近年の特定フロンの使用規制により、該特定フロンを発泡剤として使用することができなくなったため、今日では、発泡剤として、建築材料の断熱ボード分野では、1,1,1−ジクロロフルオロエタン(以下、HCFC−141bという)が用いられている。
【0004】
しかしながら、HCFC−141bには、ポリウレタンへの浸透性が高く、発泡ポリウレタンの強度を低下させるという欠点がある。したがって、HCFC−141bを発泡剤として用いる場合には、従来のCFC−11を発泡剤として用いた場合と対比して、あらかじめ15〜20%程度も密度が高くなるように設計しなければならないため、製造コストが高くなるという欠点がある。
【0005】
前記欠点を解消するために、例えば、ポリウレタンフォームの主原料であるイソシアネート成分やポリオール成分の官能基数を調整することにより、該ポリウレタンフォームの強度を向上させ、低温寸法安定性を改良する方法が提案されている(特開平1−287124号公報、特開平3−126711号公報)。しかしながら、かかる方法を採用した場合には、得られる硬質ポリウレタンフォームの低温寸法安定性は、たかだか5%程度しか向上しないという欠点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、低温寸法安定性に優れた硬質ポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の要旨は、
有機ポリイソシアネート、原料ポリオール、架橋剤として水酸基価が1200以上であるポリオール、発泡剤、触媒として一般式(I):
【0008】
【化2】
【0009】
(式中、Rは炭素数2〜9のアルキレン基、nは3〜7の平均重合度を示す)
で表わされるアミノアルコールおよび助剤から製造され、厚さ1〜20cmを有する板状の硬質ポリウレタンフォーム
に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の硬質ポリウレタンフォームは、前記したように、有機ポリイソシアネート、原料ポリオール、架橋剤、発泡剤、触媒および助剤から製造され、厚さ1〜20cmを有する板状の硬質ポリウレタンフォームであり、密度24〜32kg/m3 を有し、平均セル径比〔セルの短径/長径〕が0.6〜1.0であり、短径方向の圧縮強度が1.2kg/cm2 以上であることを特徴とするものである。
【0011】
従来、ポリウレタンを構成している原料の官能基数を多くすることにより、ポリウレタンフォームの強度を高める方法が提案されているが、かかる方法を採用した場合には、その反面、セルの形状が異方化するため、物理的強度が低下し、低温寸法安定性の向上を充分に図ることができない。
【0012】
これに対して、本発明においては、得られる硬質ポリウレタンフォームの圧縮強度が1.2kg/cm2 以上となるように調整すると同時に、短径方向の平均セル径比が特定の範囲内となるように調整されているので、驚くべきことに、かかる硬質ポリウレタンフォームは、従来のCFC−11が発泡剤として用いられた硬質ポリウレタンフォームと同等以上の優れた低温寸法安定性を示し、しかもHCFC−141bが発泡剤として用いられた従来の硬質ポリウレタンフォームと対比して約20%以上の密度の低減を図ることができるという、製造コストの大幅な削減が可能となる。
【0013】
本発明においては、板状の硬質ポリウレタンフォームの厚さは、例えば、ノギスなどを用いて測定することができる。前記板状の硬質ポリウレタンフォームの厚さは、各種用途に要求される断熱性を考慮して、1cm以上、好ましくは2cm以上とされ、またコストを考慮して、20cm以下、好ましくは10cm以下とされる。
【0014】
前記硬質ポリウレタンフォームの密度は、スキン層を含む全体の密度を意味する。前記硬質ポリウレタンフォームの密度は、例えば、建材などの用途に要求される強度や寸法安定性の観点から、24kg/m3 以上、好ましくは26kg/m3 以上とされ、また製造コストの観点から、32kg/m3 以下、好ましくは30kg/m3 以下とされる。
【0015】
また、前記硬質ポリウレタンフォームの短径方向の圧縮強度は、該硬質ポリウレタンフォームの長さ方向に対して右端部分または左端部分を一辺3cmの立方体に裁断し、オートグラフによって測定することができる。前記硬質ポリウレタンフォームの短径方向の圧縮強度は、寸法安定性の観点から、1.2kg/cm2 以上、好ましくは1.4kg/cm2 以上とされる。
【0016】
本発明において、前記硬質ポリウレタンフォームの平均セル径比〔セルの短径/長径〕とは、硬質ポリウレタンフォームの厚さ方向において、その厚さの中心から±25%の範囲内でかつ該硬質ポリウレタンフォームの長さ方向に対して右端部分または左端部分で存在するすべてのセルに対する平均値をいう。前記平均セル径比は、寸法安定性の観点から、0.6以上、好ましくは0.7以上とされる。
【0017】
本発明の硬質ポリウレタンフォームにおいては、前記したように、短径方向の圧縮強度が1.2kg/cm2 以上であって、平均セル径比が0.6〜1.0であり、また密度が24〜32kg/m2 を有すればよく、かかる硬質ポリウレタンフォームに用いられる原料の組成についてはとくに限定がない。
【0018】
かかる硬質ポリウレタンフォームの原料の組成としては、例えば、有機ポリイソシアネート、原料ポリオール、触媒、発泡剤、架橋剤、助剤などがあげられるが、本発明は、かかる成分およびその使用量によって限定されるものではない。なお、本発明に好適に使用しうる原料の例を以下に述べる。
【0019】
前記有機ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、平均官能基数が3以上のポリメリックMDI、イソシアネート基を2個以上有する芳香族系、脂肪族系または脂環族系ポリイソシアネート、それらの変性ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートやそれらの変性ポリイソシアネート;カルボジイミド変性物、ビュレット変性物、2量体、3量体などをはじめ、それらのポリイソシアネートと活性水素化合物との末端イソシアネート基含有プレポリマーなどがあげられる。これらの有機ポリイソシアネートは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0020】
前記原料ポリオールとしては、例えば、官能基の数が3〜8であり、水酸基価が250〜700であるポリオールなどがあげられる。
【0021】
前記原料ポリオールの具体例としては、例えば、通常の二塩基酸と多価アルコールとを反応させて得られるポリエステルポリオールをはじめ、グリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ショ糖などの多価アルコール;トリエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、イソホロンジアミンなどの多価アミンにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加して得られたポリエーテルポリオールなどをあげることができる。これらのポリオールは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
前記架橋剤としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどのグリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン;エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどの脂肪族ポリアミン;4,4−ジフェニルメタンジアミンなどの芳香族ジアミンなどがあげられる。これらの架橋剤は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。これらの架橋剤のなかでは、グリセリン、エチレングリコールなどに代表される水酸基価1200以上のポリオールは、得られる硬質ポリウレタンフォームの強度を向上させる観点から、本発明において好適に使用しうるものである。
【0023】
前記水酸基価1200以上のポリオールに代表される架橋剤の使用量は、前記原料ポリオール100重量部に対して、得られる硬質ポリウレタンフォームの強度を向上させる観点から、5重量部以上、好ましくは7重量部以上であることが望ましく、また表面材との接着性の向上の観点から、15重量部以下、好ましくは10重量部以下であることが望ましい。
【0024】
前記発泡剤としては、例えば、1,1,1−ジクロロフルオロエタン、水、イソペンタン、ノルマルペンタン、シクロペンタンなどの低沸点炭化水素、窒素ガス、空気、二酸化炭素などのガスなどがあげられる。これらの発泡剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。これらの発泡剤のなかでは、1,1,1−ジクロロフルオロエタンは、断熱性および原料の溶解性に優れたものであるから、本発明においては、好適に使用しうるものである。
【0025】
前記発泡剤の使用量は、該発泡剤の種類によって異なるので一概には決定することができない。前記発泡剤として、例えば、水を用いる場合には、該水の使用量は、通常、原料ポリオール100重量部に対して、0.5〜4重量部、なかんづく1.5〜3重量部程度であればよい。また、前記発泡剤として、例えば、1,1,1−ジクロロフルオロエタンを用いる場合には、該1,1,1−ジクロロフルオロエタンの使用量は、通常、原料ポリオール100重量部に対して、20〜40重量部、なかんづく25〜35重量部程度であればよい。
【0026】
前記触媒としては、一般式(I):
【0027】
【化3】
【0028】
(式中、Rは炭素数2〜9のアルキレン基、nは3〜7の平均重合度を示す)
で表わされるアミノアルコール、オクタン酸カリウムなどの脂肪酸アルカリ金属塩、有機錫化合物が用いられる。一般式(I)で表わされるアミノアルコールは、発泡反応を優先して促進させ、セル形状を球状化させる効果に優れたものであるので、本発明において好適に使用することができるものである。
【0029】
前記助剤としては、例えば、界面活性剤、整泡剤、着色剤、難燃剤、安定化剤、相溶化剤などがあげられるが、本発明はかかる例示のみに限定されるものではない。前記助剤の使用量は、特に限定がなく、本発明の目的が阻害されない範囲内で適宜調整すればよい。なお、本発明においては、耐低温収縮性をより向上させるという観点から、シリコーン系界面活性剤などの界面活性剤を用いることが望ましい。
【0030】
本発明においては、硬質ポリウレタンフォームを製造する際には、ダブルコンベアを用いた、いわゆる連続法を用いることができる。
【0031】
図1は、前記連続法に用いられる成形ラインの概略説明図である。
【0032】
図1において、ダブルコンベアを構成している上コンベア1aと下コンベア1bとの間で、硬質ポリウレタンフォーム2が成形される。下コンベア1b上には、矢印A方向に下面材3bが搬送される。
【0033】
上面材3aおよび下面材3bとしては、例えば、スチールシート、アルミニウムシート、クラフト紙、ポリエチレンシートなどの樹脂シート、ガラスファイバーシートなどがあげられる。
【0034】
下面材3b上には、ミキシングヘッド4から、硬質ポリウレタンフォームの原料5が吐出流延される。そののち、流延された硬質ポリウレタンフォームの原料5上に、上コンベア1aによって上面材3aが貼付される。
【0035】
得られる硬質ポリウレタンフォームの厚さは、上コンベア1aと下コンベア1bとの間隙を調整することによって行なうことができる。硬質ポリウレタンフォームの原料5が発泡する際に、硬質ポリウレタンフォーム2は、上面材3aおよび下面材3bと一体化され、矢印B方向の搬送され、本発明の板状の硬質ポリウレタンフォーム2が得られる。
【0036】
かくして得られる硬質ポリウレタンフォームは、必要により、所定の長さとなるように、例えば、切断刃物6などを用いて裁断すればよい。
【0037】
本発明の硬質ポリウレタンフォームは、厚さ1〜20cmを有する板状の硬質ポリウレタンフォームであり、密度24〜32kg/m3 を有し、平均セル径比が0.6〜1.0であり、短径方向の圧縮強度が1.2kg/cm2 以上であるので、優れた耐低温収縮性を呈するものである。
【0038】
したがって、本件発明の硬質ポリウレタンフォームは、例えば、建築材料などに好適に使用しうるものである。
【0039】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0040】
実施例1〜2、比較例1〜4および参考例1〜3
硬質ポリウレタンフォームの原料として、以下の成分を用いた。
【0041】
〔有機ポリイソシアネート〕
クルードMDI〔日本ポリウレタン(株)製、商品名:MR200〕
【0042】
〔原料ポリオール〕
原料ポリオールA:トリレンジアミン系ポリエーテルポリオール〔旭硝子(株)製、商品名:455AR〕
原料ポリオールB:シュークローズ系ポリエーテルポリオール〔住友バイエルウレタン(株)製、商品名:PEP1350〕
原料ポリオールC:グリセリン系ポリエーテルポリオール〔三井東圧化学(株)製、商品名:MN700〕
原料ポリオールD:マンニッヒ系ポリエーテルポリオール〔三井東圧化学(株)製、商品名:R200〕
【0043】
〔触媒〕
触媒A:N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン〔花王(株)製、商品名:カオライザーNo.1〕
触媒B:N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン〔花王(株)製、商品名:カオライザーNo.3〕
触媒C:ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル〔花王(株)製、商品名:カオーライザーNo.12P〕
触媒D:アミノアルコール〔花王(株)製、一般式(I)において、Rが炭素数6の直鎖アルキレン基であり、かつ平均重合度(n)が3.7であるアミノアルコール〕
【0044】
〔発泡剤〕
発泡剤A:水
発泡剤B:トリクロロフルオロメタン〔ダイキン工業(株)製、商品名:ダイフロン−11〕
発泡剤C:1,1,1−ジクロロフルオロエタン〔セントラル硝子(株)製、商品名:HCFC141b〕
【0045】
〔架橋剤〕
グリセリン〔花王(株)製、精製グリセリン〕
【0046】
〔整泡剤〕
シリコーン系整泡剤〔日本ユニカー(株)製、商品名:L5340〕
【0047】
〔難燃剤〕
燐系難燃剤〔大八化学(株)製、商品名:TCPP〕
【0048】
表1に示す原料のうち、有機ポリイソシアネート以外の原料をあらかじめ混合し、20℃の温度に調整した。これに、20℃の有機ポリイソシアネートをイソシアネートインデックスが105〜110となるように添加したのち、ミキシングヘッドで混合し、図1に示される下面材3b(クラフト紙)上に吐出し、流延させた。そののち、原料5の発泡時に上面材3a(クラフト紙)を貼付し、硬質ポリウレタンフォームの厚さが4cmとなるように成形し、さらに幅1m、長さ2mに裁断し、断熱ボードを得た。
【0049】
得られた断熱ボードの密度、圧縮強度および平均セル径比を以下の方法にしたがって調べた。その結果を表1に併記する。
【0050】
(A)密度
断熱ボードの重量を体積(厚さ4cm×幅1m×長さ2m)で除し、ボードの全体密度を求める。
【0051】
(B)圧縮強度
ボードの長さ方向に対して右端部分(図1中の2R部分)を一辺の長さが3cmとなるように裁断し、短径方向の圧縮強度を測定する。
【0052】
(C)平均セル径比
得られた断熱ボードの右端を進行方向に対して垂直に切断した面(図1中の2RF部分)を電子顕微鏡(35倍)で撮影し、映像化されたセル構造を画像処理し、厚さ方向において、その厚さの中心点から±25%の範囲(±1cm部分)内のセル径比(セルの短径/長径)を3点計測し、その平均値を求める。
【0053】
次に、得られた断熱ボードの物性として、耐低温収縮性を以下の方法にしたがって調べた。その結果を表1に併記する。
〔耐低温収縮性(低温寸法安定性の指標)〕
得られた断熱ボード〔厚さ4cm×幅1m×長さ2m〕を成形から1時間経過後に−30℃の雰囲気中に24時間放置したのち、かかる断熱ボードの体積を測定し、その体積変化率を耐低温収縮性の指標とする。
【0054】
【表1】
【0055】
表1に示された結果から、実施例1〜2で得られた硬質ポリウレタンフォームは、いずれも、密度が24〜32kg/m3 の範囲内にあり、また圧縮強度が1.2kg/cm2 以上であり、平均セル径比が0.6〜1.0の範囲内にあることから、従来のCFC11が用いられた比較例1で得られた硬質ポリウレタンフォームと同等以上の耐低温収縮性を有するものであることがわかる。
【0056】
また、比較例2〜4で得られた硬質ポリウレタンフォームは、密度、圧縮強度および平均セル径比のいずれかの点で劣るので、耐低温収縮性に劣るものであることがわかる。
【0057】
【発明の効果】
本発明の硬質ポリウレタンフォームは、低温寸法安定性に優れたものであるので、建築材料などをはじめ、各種断熱材などに好適に使用しうるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の硬質ポリウレタンフォームを製造する際に用いられる成形ラインの概略説明図である。
【符号の説明】
1a 上コンベア
1b 下コンベア
2 硬質ポリウレタンフォーム
3a 上面材
3b 下面材
4 ミキシングヘッド
5 硬質ポリウレタンフォームの原料
6 切断用刃物
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