JP3539296B2 - インクジェットヘッドの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインク液を紙等に吐出して印字するインクジェット記録装置に用いられるインクジェットヘッドの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録装置には、ますます高解像度で高速な印刷が要求されている。この要求に応えるために、例えば特開昭9−248914号公報には次のようなインクジェットが提案されている。即ち、Si基板にドライエッチングにより穿孔することでインクキャビティを形成し、従来のインクジェットヘッド(例えば特開平7−96605号公報)に比較して、隣り合う圧力室間の壁部の面積を減少させた剛性の高いインクキャビティを得て、応答周波数が高く、高速で安定した微小なインク滴が吐出できる、すなわち、高印字品質のインクジェットヘッドが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のインクジェットヘッドのインクキャビティの加工がドライエッチングによって行なわれていることから、加工時間が長く製造効率が低いという問題点があった。
【0004】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、加工時間を短縮して製造効率を向上させたインクジェットヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
(1)本発明の一つの態様に係るインクジェットヘッドの製造方法は、インクキャビティ用凹部と、インクリザーバー用凹部と、インクキャビティ用凹部とインクリザーバー用凹部とを連結する供給路用凹部と、インク吐出用のノズルとが形成されたSi基板を構成部材とするインクジェットヘッドの製造方法において、Si基板の一方の面側をエッチングにより穿孔してインク吐出用のノズル用凹部を形成する工程と、ノズル用凹部の底部に貫通孔を形成する工程と、湿式エッチングによりインクキャビティ用凹部を形成するとともにインク吐出用のノズルを形成する工程とを有する。
(2)本発明の他の態様に係るインクジェットヘッドの製造方法は、上記(1)の製造方法において、Si基板は(110)面方位の単結晶Siである。
(3)本発明の他の態様に係るインクジェットヘッドの製造方法は、上記(1)又は(2)の製造方法において、Si基板の一方の面側をトレンチエッチングにより穿孔してインク吐出用のノズル用凹部を形成する。
(4)本発明の他の態様に係るインクジェットヘッドの製造方法は、上記(1)乃至(3)の何れかの製造方法において、レーザをノズル用凹部の底部を照射して貫通孔を形成する。
(5)本発明の他の態様に係るインクジェットヘッドの製造方法は、上記(4)の製造方法において、レーザをランダム偏光又は円偏光して照射する。
【0006】
(6)本発明の他の態様に係るインクジェットヘッドの製造方法は、上記(1)乃至(5)の何れかの製造方法において、Si基板の他方の面側に、インクキャビティ用凹部を形成した後にリザーバー用凹部を形成し、その後に、供給路用凹部を形成する。
(7)本発明の他の態様に係るインクジェットヘッドの製造方法は、上記(1)乃至(6)の何れかの製造方法において、面方位(111)の面が現れるまで湿式エッチングしてインクキャビティ用凹部を形成する。
(8)本発明の他の態様に係るインクジェットヘッドの製造方法は、上記(1)乃至(7)の何れかの製造方法において、Si基板の他方の面側を湿式エッチングにより穿孔してインクキャビティ用凹部を形成する。
(9)本発明の他の態様に係るインクジェットヘッドの製造方法は、上記(1)乃至(8)の何れかの製造方法において、Si基板の他方の面側を湿式エッチングにより穿孔して供給路用凹部を形成する。
【0007】
(10)本発明の他の態様に係るインクジェットヘッドの製造方法は、上記(1)乃至(9)の何れかの製造方法において、インクキャビティ用凹部、インクリザーバー用凹部、供給路用凹部、及びインク吐出用のノズルが形成されたSi基板に、振動板を接着し、更に、振動板にピエゾ素子を取り付けてピエゾ型インクジェットヘッドを製造する。
(11)本発明の他の態様に係るインクジェットヘッドの製造方法は、上記(1)乃至(9)の何れかの製造方法において、インクキャビティ用凹部、インクリザーバー用凹部、供給路用凹部、及びインク吐出用のノズルが形成されたSi基板に、圧力室を形成することとなる凹部を有し、その凹部に振動板が固着された基板を取り付けて静電型インクジェットヘッドを製造する。
【0008】
本発明においては、Si基板を穿孔してインクキャビティ用凹部を形成する際に、ノズル用凹部の底部に貫通孔を予め形成しておいて、その後に、貫通孔が形成されたSi基板に湿式エッチングを施して穿孔するようにしたので、インクキャビティ用凹部を形成する時間の短縮化が図られている。即ち、湿式エッチングによれば多量の基板を同時に処理できるので、1個当たり処理時間が短くなる。また、従来のインクジェットヘッドに比較して隣り合う圧力室間の壁部の面積を減少させた剛性の高いインクキャビティを形成することが可能になっており、応答周波数が高く、高速で安定した微小でインクが吐出できる、すなわち、高印字品質のインクジェットヘッドが実現されている。
【0009】
【発明の実施の形態】
実施形態1.
図3は本発明の実施形態1に係るインクジェットヘッドの主要部分の斜視図(一部断面を含む)である。図4はそのA−A断面図であり、図5は平面図である。このインクジェットヘッドは、Si基板1に、その表面に対して垂直方向に深く穿孔して形成されたインクキャビティ用凹部2、インクリザーバー用凹部4、インクキャビティ用凹部2とインクリザーバー用凹部4とを連通する供給路用凹部(オリフィス用凹部)3、及び各インクキャビティ用凹部2に対応してそれぞれ設けられたインク吐出用のノズル35がそれぞれ形成されている。なお、本実施形態においては、図5に示されるように、1個のキャビティ用凹部2に対応して3個の細いオリフィス用凹部3が設けられている。そして、このSi基板1の凹部2,3,4を覆うようにして振動板20が取り付けられ、そして、その上にピエゾ素子等のアクチュエータ部品が取り付けられてインクジェットヘッドが形成される(図2(d)参照)。このSi基板には(110)面方位の単結晶Siが用いられる。
【0010】
図1及び図2は上記のインクジェットヘッドの製造方法を示した工程図である。
(a)例えば板厚150ミクロンのSi基板1の両面に酸化膜11,12をそれぞれ形成し、次いで、酸化膜11にインク吐出用のノズル35に対応したパターンをフォトエッチングにより形成する(図1(a))。
(b)そして、トレンチエッチングによりインク吐出用のノズル35に対応したノズル用凹部5を形成する(図1(b))。このトレンチエッチングによれば異方性が良く深堀りができるという利点がある。
(c)その後、そのノズル用凹部5に酸化膜13を形成する(図1(c))。
(d)酸化膜11,12,13の全面をドライエッチングし、ノズル用凹部5の底部にSi基板1が露出するようにする(図1(d))。但し、このとき、ノズル用凹部5の側壁5aに酸化膜13が残るようにする。
(e)酸化膜12にインクリザーバー用凹部4に対応したパターンをフォトエッチングにより形成する(図1(e))。
(f)また、酸化膜12に供給路用凹部3に対応したパターンをフォトエッチングにより形成する(図1(f))。
【0011】
(g)レーザ光をノズル用凹部5の底部に照射して貫通孔5bを形成する(図1(g))。このとき、レーザ光をランダム偏光又は円偏光して照射する。このように偏光を施して照射すると、貫通孔5bの直進性が確保される。
(h)次に、Si基板1をエッチング液に浸漬して湿式エッチングを行ってインクキャビティ用凹部2を形成する(図1(h))。このときのエッチングは(111)面が現れるまで行われることになる。このインクキャビティ用凹部2が形成されることでインク吐出用のノズル35も形成される。
(i)そして、酸化膜12のリザーバー用凹部4に相当する部分についてドライエッチングを行ない(図1(i))、これよりリザーバー用凹部4に相当する部分のSi基板1が露出することとなる。
【0012】
(j)続いて、Si基板1について湿式エッチングを行ない(図1(j))、インクリザーバー用凹部4を形成する。
(k)酸化膜12についてドライエッチングを行なう(図2(k))。これより供給路用凹部3に相当する部分のSi基板1が露出する。
(l)更にまた、Si基板1について湿式エッチングを行う(図2(l))。これにより供給路用凹部3が形成される。
(m)酸化膜11,12を湿式エッチング等により剥離した後、インク保護膜となる酸化膜(0.1〜0.3μm)13を形成する(図2(m))。
(n)上記のように加工されたSi基板1に振動板20を接着して、インクキャビティ32、インクリザーバー34及び供給路用凹部(オリフィス用凹部)33を形成する。更に、振動板20に駆動部品であるPZT(ピエゾ素子)20を接着するとともにインクパイプ22を接続して、ピエゾ型のインクジェットヘッドが得られる(図2(n))。
【0013】
実施形態2.
図6は本発明の実施形態2に係るインクジェットヘッドの製造方法を示した工程図である。本実施形態においては、図6(g)に示される静電型インクジェットヘッドを製造するものとする。
【0014】
(a)まず、Si基板51にB(ボロン)をドーピングしてBドープ層52を形成する(図6(a))。
(b)そして、Bドープ層52側に酸化膜53を形成する(図6(b))。
(c)それを、パイレックスガラス54と陽極接合する(図6(c))。このパイレックスガラス54には圧力室を形成するための凹部54aが形成されており、その凹部54aには個別電極となるITO膜55が固着されている。
(d)その後、Si基板51の上面側をエッチングする(図6(d))。このエッチングはBドープ層52で停止することとなる。
【0015】
(e)以上のようにして形成されたものに、図2(m)の基板(キャビテイ用凹部等を形成するためのもの)を貼付ることにより、インクキャビティ32、インクリザーバー34及び供給路用凹部(オリフィス用凹部)33が形成される(図6(e))。なお、ここで用いられる基板は図2(m)の基板に更に開孔部7を設けたものである。この貼り付けには、例えば接着、Au−Si共晶接合、パイレックスガラスをスパッタした後の陽極接合等がある。
(f)そして、マスク・ドライエッチングにより電極取り出し口56を形成する(図6(f))。
(g)共通電極57を形成して配線処理を行い、撥水処理58、封止材59による圧力室60の封止等の最終の組み立て処理を行う(図6(g))。
【0016】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、Si基板を穿孔してインクキャビティを生成する際に、予めレーザを照射して貫通孔を形成し、その後にSi基板に湿式エッチングを施して穿孔するようにしたので、インクキャビティを生成する時間の短縮化が図られている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係るインクジェットヘッドの製造方法を示した工程図(その1)である。
【図2】本発明の実施形態1に係るインクジェットヘッドの製造方法を示した工程図(その2)である。
【図3】本発明の実施形態1に係るインクジェットヘッドの主要部分の斜視図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】図3の平面図である。
【図6】本発明の実施形態2に係るインクジェットヘッドの製造方法を示した工程図である。
【符号の説明】
1 Si基板
2 インクキャビティ用凹部
3 供給路(オリフィス)用凹部
4 インクリザーバー用凹部
5 インク吐出用のノズル用凹部
35 インク吐出用のノズル
Claims (11)
- インクキャビティ用凹部と、インクリザーバー用凹部と、前記インクキャビティ用凹部と前記インクリザーバー用凹部とを連結する供給路用凹部と、インク吐出用のノズルとが形成されたSi基板を構成部材とするインクジェットヘッドの製造方法において、
Si基板の一方の面側をエッチングにより穿孔してインク吐出用のノズル用凹部を形成する工程と、該ノズル用凹部の底部に貫通孔を形成する工程と、湿式エッチングにより前記インクキャビティ用凹部を形成するとともにインク吐出用のノズルを形成する工程とを有することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。 - 前記Si基板は(110)面方位の単結晶Siであることを特徴とする請求項1記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- Si基板の一方の面側をトレンチエッチングにより穿孔して前記ノズル用凹部を形成することを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- レーザを前記ノズル用凹部の底部に照射して前記貫通孔を形成することを特徴とする請求項1乃至3の何れか記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- レーザをランダム偏光又は円偏光して照射することを特徴とする請求項4記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- 前記Si基板の他方の面側に、前記インクキャビティ用凹部を形成した後に前記リザーバー用凹部を形成し、その後に、前記供給路用凹部を形成することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- 面方位(111)の面が現れるまで湿式エッチングして前記インクキャビティ用凹部を形成することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- 前記Si基板の他方の面側を湿式エッチングにより穿孔して前記インクキャビティ用凹部を形成することを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- 前記Si基板の他方の面側を湿式エッチングにより穿孔して前記供給路用凹部を形成することを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- 前記インクキャビティ用凹部、前記インクリザーバー用凹部、前記供給路用凹部、及びインク吐出用のノズルが形成されたSi基板に、振動板を接着し、更に、前記振動板にピエゾ素子を取り付けてピエゾ型インクジェットヘッドを製造することを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- 前記インクキャビティ用凹部、前記インクリザーバー用凹部、前記供給路用凹部、及びインク吐出用のノズルが形成されたSi基板に、圧力室を形成することとなる凹部を有し、該凹部に振動板が固着された基板を取り付けて静電型インクジェットヘッドを製造することを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
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