JP3536521B2 - 電気抵抗溶接用裏当材 - Google Patents

電気抵抗溶接用裏当材

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶接ラインのう
ち、マルチスポット溶接等に使用される電気抵抗溶接用
裏当材に関し、インダイレクト方式のほかシリーズ方式
の溶接にも応用することができ、自動車、スチール製事
務器、コンピュータ用筐体、家電製品、自動販売機等の
スポット溶接を利用する分野に広く適用可能である。
【0002】
【従来の技術】図24は従来の溶接用裏当材を使用した
インダイレクト方式のマルチスポット溶接ステーション
の要部を示した正面図、図25はその側面図である。こ
の溶接ステーションは、メインテーブル1の上面に固定
ベース2を立設し、シリンダ本体3を介して固定ベース
2の外側面に加工用シリンダアクチュエータ4を保持さ
せ、固定ベース2の上端部に揺動可能に支承した加圧ア
ーム5を設けて構成されており、該加圧アーム5の外方
側端部にシリンダアクチュエータ4の作動ロッド6を接
続させてある。
【0003】また、溶接ステーションは、加圧アーム5
の内方側端部に電気絶縁部材7及びチップホルダ8を介
して電極チップ9を保持し、固定ベース2の内側面に絶
縁部材10及び電極ホルダ11を介してバック電極12
を保持している。そして、図示しない被溶接物の側面に
接離する給電チップと電極チップ9との間に通電し、抵
抗加熱によって被溶接物のスポット溶接が行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の溶接用裏当
材の場合、バック電極12及び電極ホルダ11の一部に
溶接電流が流れるため、被溶接物の溶着不良が発生す
る、かかる溶着不良の発生を防ぐために、溶接条件を高
めに設定すると、ケーブル、チップ及びバック電極の消
耗を早めて、消耗品費増、補修及び交換工数増となり、
コストが高くなる。高電流化設定の場合であれば、さら
に使用電流量増、高サイクル化設定の場合であれば、さ
らに生産タクト(サイクルタイム)増によるコストアッ
プを招くという問題点があった。
【0005】本発明は、上述のような従来の問題点に鑑
みなされたものであって、溶接条件を高めに設定するこ
となく、被溶接物の溶着不良の発生を防ぐことができ、
消耗品費、補修及び交換工数や使用電流量又は生産タク
ト(サイクルタイム)を削減し、コスト低減を図ること
ができる電気抵抗溶接用裏当材を提供することを目的と
する。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、金属製の裏当材本体で被溶接物を支持し
スポット溶接するのに用いられる電気抵抗溶接用裏当材
において、前記裏当材本体の傾きを調整するための調整
機構を設け、該調整機構は、前記裏当材本体を支持する
裏当材ホルダと、前記裏当材本体に開けたねじ穴に突出
長さを調節自在に螺着した調整ボルトとを備え、該調整
ボルトを裏当材ホルダに当接させて前記裏当材本体の姿
勢を調整自在に保持することを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態に係る電気抵
抗溶接用裏当材について、図面を参照しながら詳細に説
明する。図1は本発明の実施の形態に係る電気抵抗溶接
用裏当材の使用状態を示す概略構成正面図、図2は図1
の側面図である。
【0008】この実施の形態に係る電気抵抗溶接用裏当
材20は、裏当材本体21の上部に電気絶縁部22を設
け、該電気絶縁部22の上に被溶接物よりも電気抵抗が
大きく熱伝導率が小さい材料からなり該被溶接物を受け
る上端部材23を設けてあり、裏当材ホルダ24によっ
て支持されており、後に詳細に説明する調整機構26に
よって傾きの調整が可能である。
【0009】図3は本発明の実施の形態に係る電気抵抗
溶接用裏当材を示す正面図、図4はその側面図、図5は
その平面図である。裏当材本体21は、機械構造用炭素
鋼(JIS記号S45C)を用いた金属製直方体からな
っており、上端に平らな接合面27を有し、前後方向に
沿って貫通するねじ穴を設けて該ねじ穴に突出長さ調節
自在に前後調整ボルト30を螺合させてあり、下面21
aに平行な上端の接合面27に電気絶縁部22が設置さ
れる。
【0010】電気絶縁部22は、裏当材本体21の四角
形の接合面27にエポキシ樹脂を主成分とするエポキシ
接着剤を均一に塗布して平板状に形成し、上面に上端部
材23が固定される。電気絶縁部22を構成する絶縁材
料としては、アクリル樹脂やゴムであってもよい。
【0011】上端部材23は、被溶接物となる鋼板及び
各種表面処理鋼板に使用される亜鉛、アルミニウム、ニ
ッケル、銅、錫、鉛等よりも電気抵抗が大きく熱伝導率
が小さい材料を用い、上端面が平らな受面37をなして
おり、電気絶縁部22の上面に固着されて該受面37で
被溶接物を支承する。
【0012】裏当材ホルダ24は、支持部材41と、こ
の支持部材41上に立設した姿勢保持部材25と、姿勢
保持部材25の正面側の上下方向中間位置に取付けた両
姿勢保持板42とを備え、支持部材41のほぼ中央に上
下方向に沿った貫通ねじ穴を設けるとともに、姿勢保持
部材25の左右の側面壁45,46の上部及び中間位置
に横方向に沿った貫通ねじ穴をそれぞれ設けてあり、各
貫通ねじ穴にそれぞれ支持ボルト51、左右調整ボルト
55,56が貫通螺着されている。
【0013】姿勢保持部材25は、平断面がコ字形(図
6参照)をなしており、左右の側面壁45,46と背面
壁48とを一体に有し、溶接用裏当材20を余裕をもっ
て挿入可能に両側面壁45,46が間隔を置いて配設さ
れている。支持ボルト51には止めナット52が、左右
調整ボルト55,56には対応する止めナット58,5
9がそれぞれ螺合している。姿勢保持板42は、姿勢保
持部材25の正面側にねじ込んだボルト64をもって取
付けられており、裏当材本体21の正面側に当接する保
持片62を有している。
【0014】調整機構26は、裏当材本体21に開けた
ねじ穴に貫通螺着された前後調整ボルト30と、姿勢保
持部材25の左右の側面壁45,46に有するねじ穴の
それぞれに貫通螺着された左右調整ボルト55,56と
を備え、左右の側面壁45,46の間で且つ姿勢保持板
42と背面壁48との間に配置した裏当材20を支持ボ
ルト51で支持し、前後調整ボルト30及び左右調整ボ
ルト55,56の内端を裏当材本体21の側面及び背面
壁48に当接させて裏当材20の姿勢を調整自在に保持
する。前後調整ボルト30には止めナット31が螺合し
ている。
【0015】そして、調整機構26は、前後調整ボルト
30を回すことによって該前後調整ボルト30の内向き
の突出長さが調節され、裏当材20の前後の傾斜角度を
調整することができ、各左右調整ボルト55,56を回
すことによって該各左右調整ボルト55,56の内向き
の突出長さが調節され、裏当材20の左右の傾斜角度を
調整することができるようになっている。前後調整ボル
ト30は、背面壁48に貫通ねじ穴を開け、該ねじ穴に
貫通螺着させてもよい。
【0016】本発明の上記実施の形態では、裏当材本体
21の上部にエポキシ接着剤からなる電気絶縁部22を
配置することにより、裏当材本体21や裏当材ホルダ2
4の一部に溶接電流が流れるのを防ぐので、溶接条件を
高めに設定することなく、被溶接物の溶着不良の発生を
抑えることができ、溶接条件を低サイクル化若しくは低
電流化することが可能であり、ケーブル、裏当材本体2
1及び上端部材23等の消耗も抑えて、消耗品代と補修
及び交換工数の削減、低サイクル化であれば生産タクト
削減も含めてコストダウンが可能になるという利点があ
る。また、調整機構26を裏当材ホルダ24側に設け、
各調整ボルト30,55,56を外側から回すことによ
って、容易に裏当材20の傾斜を調整することができ、
被溶接物の溶接点以外の部分に裏当材20が接するのを
回避して、被溶接物に凹みや疵が発生するのを確実に防
止することができる。
【0017】なお、本発明は、上記実施の形態によって
限定されるものではなく、その要旨から逸脱しない範囲
で種々の変形が可能であり、図7〜図22に種々の変形
例を示す。これらの図において図1〜図6の場合と同一
部分又は対応する部分には同一符号を付けてある。図7
に示すように電気絶縁部22及び上端部材23の相互合
わせ面を逆傾斜させて上端部材23の受面37を裏当材
本体21の下面21aに平行にしたもの、図8に示すよ
うに裏当材本体21の接合面27と電気絶縁部22の下
面とを相互に逆傾斜させて上端部材23の受面37を裏
当材本体21の下面21aに平行にしたもの、図9に示
すように裏当材本体21及び上端部材23のそれぞれの
上面をその下面と平行にして、電気絶縁部22の上面を
その下面に対し傾斜させることによって受面37を傾斜
させてもよく、図10に示すように裏当材本体21の接
合面27をその下面21aに対し傾斜させてもよく、図
11及び図12に示すように上端部材23の平断面積を
小さく形成して電気絶縁部22の上面のほぼ中央に固着
することもでき、図13に示すように上端部材23を電
気絶縁部22の凹部22aに上面がほぼ面一となるよう
に埋め込んでもよく、図14及び図15に示すように裏
当材本体21及び上端部材23の平断面積をほぼ同じに
し電気絶縁部22だけを大きくして両者の間に介在させ
たものでもよく、これらのいずれによっても前述と同様
の効果が得られる。
【0018】また、調整機構26は、図16及び図17
に示すように、裏当材本体21の両側面にもねじ穴を設
け、該ねじ穴に左右調整ボルト32,33をねじ込んで
いずれも裏当材本体21の側面及び背面に突出させて構
成することも可能であり、図18及び図19に示すよう
に、上下の位置にそれぞれ別々の左右調整ボルト32
a,32b,33a,33bを設けてもよい。これら
は、調整ボルトが全て裏当材本体21にあり、上端部材
23が研削するのに十分な厚みを採れない場合や、加工
・研磨が容易でない材質の場合に適している。また、図
20〜図21に示すように、裏当材ホルダ24の側面壁
45,46及び背面壁48にねじ穴を設け該ねじ穴に各
調整ボルト55,56,57を螺着させ、裏当材ホルダ
24のみに調整ボルトを設ける構成としてもよく、図2
2に示すように、裏当材ホルダ24の背面壁48の下端
に円弧状曲面48aを形成し、裏当材ホルダ24全体を
傾斜自在に支持することも可能である。
【0019】
【実施例】本発明の実施例について、プレス機械によっ
てヘミング加工を施した板厚0.65mmのインナパネ
ルと板厚0.75mmのアウタパネル部品とを互いに溶
着させて四輪自動車のドアパネルを溶接により構成する
場合を例として説明する。インダイレクト方式マルチス
ポット溶接ステーションにおいて、従来のクロム銅製裏
当材と、外寸法を同等にして作製した本発明に係る裏当
材とを比較する。本発明に係る裏当材本体21の材質と
して機械構造用炭素鋼(JIS記号S45C)、電気絶
縁部22にエポキシ系接着剤(商品名セメダインE−1
08)、上端部材23としてステンレススティール(J
IS記号SUS630)製のチップを使用した。
【0020】先ず、従来の溶接用裏当材にて溶接条件を
設定しておき、その後に、溶接用裏当材のみを本発明に
係る溶接用裏当材20に交換して溶接サイクル数を減ら
した。従来の溶接用裏当材では、18サイクルの溶接サ
イクルが必要であったが、本発明に係る溶接用裏当材2
0の場合では、11サイクルにて十分な溶着が得られ
た。
【0021】次に、再度従来の溶接用裏当材に交換し、
本発明に係る溶接用裏当材20の場合と同一条件で溶接
して、溶着不良が起きることを確認した後、設定電流を
順次上げて、十分な溶着が得られまでにさらに1000
Aが必要であることが判明した。
【0022】図23は従来の溶接用裏当材を用いて溶接
条件を設定し、通電した場合のチップホルダ8及び電極
チップ9を通流する電流A0と、同一条件で、外形寸法
も同一に合わせた本発明に係る溶接用裏当材20を用
い、通電した場合のチップホルダ8及び電極チップ9を
通流する電流A1とを測定し、縦軸にサイクル数C、横
軸に電流をとってグラフに表したものである。このグラ
フでは、通電初期の第1〜3サイクル、定常状態にはい
る第4サイクル、定常状態にある第11サイクルの夫々
を比較すると、いずれも本発明に係る溶接用裏当材20
を用いた場合の方が、通流する電流値が高く、定常状態
のサイクル数が7サイクルも少ないにもかかわらず、1
サイクル当たりの電流値(実効電流値)も6100Aか
ら6200Aに改善することができることを示してい
る。
【0023】表1は上記グラフに表れた電流値を数値と
して掲げたものである。
【0024】
【表1】
【0025】このように本発明に係る溶接用裏当材20
を使用すると、溶接用裏当材20自体や裏当材ホルダ2
4に無駄に流れる電流が減少し、実効電流値が増加する
のである。
【0026】
【発明の効果】本発明は、裏当材本体の上部に電気絶縁
部を設け、該電気絶縁部の上に被溶接物を受ける上端部
材を設けたことにより、電気絶縁部で裏当材本体や裏当
材ホルダへの電流が阻止され、実効電流値が増加するの
で、溶接条件を高めに設定することなく、被溶接物の溶
着不良の発生を抑えることができ、ケーブルや溶接用裏
当材自体等の消耗を抑制し、消耗品の補修と取換工数を
削減することができ、被溶接物よりも電気抵抗が大きく
熱伝導率が小さい材料からなる上端部材を用いることに
より、上端部材と裏当材本体とを別部材にて作製できる
ので、上端部材のみを電極材料、本体を一般用構造材料
とし、製造上の自由度を増加させるとともにコストダウ
ンを可能にするという効果を奏する。また、裏当材本体
又は裏当材ホルダに裏当材の傾きを調整するための調整
機構を設けることにより、被溶接物の傾斜に合わせ上端
部材を傾けて片当たりをなくして、被溶接物に凹み等の
疵が付くのを確実に防止することができ、被溶接物の不
良品をなくし、コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る電気抵抗溶接用裏当
材の使用状態を示す概略構成正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電気抵抗溶接用裏当
材を示す正面図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】図3の平面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る電気抵抗溶接用裏当
材の使用状態を示す概略構成平面図である。
【図7】図3の変形例を示す正面図である。
【図8】図7の変形例を示す正面図である。
【図9】図8の変形例を示す正面図である。
【図10】図9の変形例を示す正面図である。
【図11】図3の別の変形例を示す正面図である。
【図12】図11の平面図である。
【図13】図11の変形例を示す正面図である。
【図14】図3のさらに別の変形例を示す正面図であ
る。
【図15】図14の平面図である。
【図16】本発明の実施の形態に係る調整機構の変形例
を示す正面図である。
【図17】図16の平面図である。
【図18】図16の変形例を示す正面図である。
【図19】図18の平面図である。
【図20】本発明の実施の形態に係る調整機構の別の変
形例を示す正面図である。
【図21】図20の側面図である。
【図22】図20の変形例を示す正面図である。
【図23】同一の溶接条件で、従来の溶接用裏当材を用
いた場合と本発明に係る溶接用裏当材を用いた場合と
の、チップホルダ及び電極チップを通流する電流A0と
電流A1とを比較測定して表したグラフである。
【図24】従来の溶接用裏当材の使用状態を示す正面図
である。
【図25】従来の溶接用裏当材の使用状態を示す側面図
である。
【符号の説明】
20 電気抵抗溶接用裏当材 21 裏当材本体 22 電気絶縁部 23 上端部材 24 裏当材ホルダ 25 姿勢保持部材 26 調整機構 27 接合面 30 前後調整ボルト 37 受面 42 姿勢保持板 51 支持ボルト 55,56 左右調整ボルト
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−31585(JP,A) 特開 平6−170548(JP,A) 特開 平9−85462(JP,A) 特公 昭41−20607(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 11/11 B23K 11/36

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属製の裏当材本体で被溶接物を支持し
    スポット溶接するのに用いられる電気抵抗溶接用裏当材
    において、 前記裏当材本体の傾きを調整するための調整機構を
    け、 該調整機構は、前記裏当材本体を支持する裏当材ホルダ
    と、前記裏当材本体に開けたねじ穴に突出長さを調節自
    在に螺着した調整ボルトとを備え、 該調整ボルトを裏当材ホルダに当接させて前記裏当材本
    体の姿勢を調整自在に保持する ことを特徴とする電気抵
    抗溶接用裏当材。
  2. 【請求項2】 金属製の裏当材本体で被溶接物を支持し
    スポット溶接するのに用いられる電気抵抗溶接用裏当材
    において、 前記裏当材本体の傾きを調整するための調整機構を
    け、 該調整機構は、前記裏当材本体を支持する裏当材ホルダ
    と、該裏当材ホルダに開けたねじ穴に突出長さを調節自
    在に螺着した調整ボルトとを備え、 該調整ボルトを前記裏当材本体に当接させて裏当材本体
    の姿勢を調整自在に保持する ことを特徴とする電気抵抗
    溶接用裏当材。
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